JP2000318011A5 - - Google Patents
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Description
【書類名】明細書
【発明の名称】 成形用金型
【特許請求の範囲】
【請求項1】相対向する固定側金型及び可動側金型に形成したキャビティを囲むように配置される熱媒体の温調用流路と、前記温調用流路に熱媒体の供給を行う入口接続部と、前記温調用流路から熱媒体の排出を行う出口接続部とが設けられた成形用金型において、
前記温調用流路を通る熱媒体からの伝熱により生じる熱溜まり部が前記キャビティの外周部から略等しい距離に生じるように、前記温調用流路が設けられていることを特徴とする成形用金型。
【請求項2】前記温調用流路は、前記キャビティの外周部から略等しい距離になるように配置されて前記キャビティを囲むキャビティ温調部、前記入口接続部及び前記キャビティ温調部に接続される第1の供給側流路、前記キャビティ温調部から熱媒体の流出を行う第2の流出側流路、前記第2の流出側流路から流出した熱媒体の前記キャビティ温調部への供給を行う第2の供給側流路、及び前記キャビティ温調部及び前記出口側接続部に接続される第1の流出側流路を有し、
前記第1の流出側流路及び第1の供給側流路と、前記第2の流出側流路及び第2の供給側流路とが、前記キャビティ温調部に対して対称な位置になるように設けられていることを特徴とする請求項1記載の成形用金型。
【請求項3】前記第1の供給側流路及び第1の流出側流路との間の距離と、前記第2の供給側流路及び第2の流出側流路の間の距離とが、略同一寸法に設定されていることを特徴とする請求項2記載の成形用金型。
【請求項4】前記第1の供給側流路及び前記第1の流出側流路の間の距離、並びに前記第2の供給側流路及び前記第2の流出側流路の間の距離が、前記第1の供給側流路と前記第2の流出側流路とを接続するキャビティ温調部及び、前記第2の供給側流路と前記第1の流出側流路とを接続するキャビティ温調部の間の距離よりも短いことを特徴とする請求項2又は3のいずれかに記載の成形用金型。
【請求項5】前記温調用流路は、複数のキャビティ温調部間を接続する少なくとも2以上の接続流路を有することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の成形用金型。
【請求項6】前記温調用流路は、固定側金型を構成する固定側型板及び固定側取付板の少なくとも一つ、並びに可動側金型を構成する可動側型板及び受け板又は可動側取付板の少なくとも一つにそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の成形用金型。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形品を射出成形によって成形する成形用金型に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチックなどの溶融した材料を成形用金型内に射出し冷却固化させて所望する形状に成形するのに際しては、成形用金型の温度制御(例えば金型の温度維持や冷却)は、材料の固化速度によって固化後の成形品の寸法変化に影響を及ぼす。すなわち、成形品中に固化速度の速い箇所と遅い箇所とがあると、成形品に局部的にひけ等が発生したり、成形品どうしで寸法の狂いが発生する。従って、成形においては、成形用金型の温度制御は極めて重要な要素であり、種々の工夫がなされている。例えば、金型内部に温度制御された水や油などの熱媒体を通す温調用流路を設け、熱媒体の流量、温度等を制御することによって金型の温度を制御することがなされている。
【0003】
図19はこのような熱媒体を金型内に供給して成形するため、実開平6−50825号公報に記載された従来の成形用金型を示し、100は可動側金型の可動側型板である。この可動側型板100には図示を省略した固定側金型の固定側型板が対向して配置される。可動側型板100及び固定側型板には、レンズなどの成形品を成形するためのキャビティ110,120,130,140が複数設けられている。これらのキャビティ110,120,130,140にはランナ150及びゲート160を介して溶融樹脂が供給されて成形が行われる。
【0004】
この成形用金型では、可動側型板100及び固定側型板の内部に温調用流路170が設けられると共に、断熱部材180,190が設けられている。温調用流路170は複数のキャビティ110,120,130,140を囲んでおり、内部には熱媒体200が流通する。断熱部材180,190は熱媒体の出口側に近いキャビティ130,140における温調用流路170の外側に、温調用流路170を囲むように設けられており、出口側の熱媒体の温度低下を抑制している。これらの構造によって金型の温度の制御を均一化し、キャビティ110,120,130,140間の温度差を低減させて、均一な冷却を行い、成形品どうしのバラツキを低減させている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
金型に温調用流路を設ける場合には、金型に熱媒体が出入りするための入口側及び出口側の連結用の流路が必要となる。この連結用の流路付近はキャビティを囲んでいる流路とは異なり金型の外周部へ向けて設けられる。
【0006】
そして、実開平6−50825号公報に示される構造では、連結用の流路周辺は連結用の流路が形成されない領域と比べて、金型に対する流路の占める割合が高くなる。このため、熱媒体を連結用の流路に流すと連結用の流路付近で熱分布が高くなる熱溜まり部が生じて、金型全体の熱分布がばらつく原因となる。従って、金型の温度を均一にすることを目的として熱媒体を通しても連結用の流路付近の温度が金型の他の部分に比べ数度高くなり、その結果、キャビティを取り囲む温調用流路がキャビティに対して一定の距離、離間して配置されていても、金型全体としての熱分布のバラツキに影響され、連結用の流路に近いキャビティの方が温度が高くなり、均一な温度制御が困難となる。
【0007】
このような構造の成形用金型を用いて、例えば、プラスチック製の光学素子であるレンズを射出成形による多数固取りで成形した場合は、成形用金型の温度のバラツキが形成品の収縮バラツキ、即ち寸法変化に強く関与してくるため、成形されたレンズの曲率半径rに数10μmのバラツキが生じる。このバラツキは光学素子の特性を大きく変化させるため、光学素子としての寸法の許容差から外れるものとならざるを得ないものとなっている。
【0008】
また、従来では、複数のキャビティを取り囲んでいる周囲の金型温度が均一にならないまま成形するため、成形条件のわずかな変動でも成形品に寸法変化が発生する。このため、量産体制における成形品の品質が不安定となる問題を有している。
【0009】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、簡単な構造で、キャビティの温度を均一にして成形の収縮バラツキを少なくすることができ、これにより、安定した成形品品質を維持して量産することが可能な成形用金型を提供することを目的とする。
【0010】
【問題点を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、相対向する固定側金型及び可動側金型に形成したキャビティを囲むように配置される熱媒体の温調用流路と、前記温調用流路に熱媒体の供給を行う入口接続部と、前記温調用流路から熱媒体の排出を行う出口接続部とが設けられた成形用金型において、前記温調用流路を通る熱媒体からの伝熱により生じる熱溜まり部が前記キャビティの外周部から略等しい距離に生じるように、前記温調用流路が設けられていることを特徴とする。
【0011】
また上記目的を達成するため、本発明は、前記温調用流路は、前記キャビティの外周部から略等しい距離になるように配置されて前記キャビティを囲むキャビティ温調部、前記入口接続部及び前記キャビティ温調部に接続される第1の供給側流路、前記キャビティ温調部から熱媒体の流出を行う第2の流出側流路、前記第2の流出側流路から流出した熱媒体の前記キャビティ温調部への供給を行う第2の供給側流路、及び前記キャビティ温調部及び前記出口側接続部に接続される第1の流出側流路を有し、前記第1の流出側流路及び第1の供給側流路と、前記第2の流出側流路及び第2の供給側流路とが、前記キャビティ温調部に対して対称な位置になるように設けられていることを特徴とする。
【0012】
また上記目的を達成するため、本発明は、前記第1の供給側流路及び第1の流出側流路との間の距離と、前記第2の供給側流路及び第2の流出側流路の間の距離とが、略同一寸法に設定されていることを特徴とする。
【0013】
また上記目的を達成するめ、本発明は、前記第1の供給側流路及び前記第1の流出側流路の間の距離、並びに前記第2の供給側流路及び前記第2の流出側流路の間の距離が、前記第1の供給側流路と前記第2の流出側流路とを接続するキャビティ温調部及び、前記第2の供給側流路と前記第1の流出側流路とを接続するキャビティ温調部の間の距離よりも短いことを特徴とする。
【0014】
また上記目的を達成するため、本発明は、前記温調用流路は、複数のキャビティ温調部間を接続する少なくとも2以上の接続流路を有することを特徴とする。
【0015】
また上記目的を達成するため、本発明は、前記温調用流路は、固定側金型を構成する固定側型板及び固定側取付板の少なくとも一つ、並びに可動側金型を構成する可動側型板及び受け板又は可動側取付板の少なくとも一つにそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示する実施の形態により具体的に説明する。なお、各実施の形態において、同一の要素は同一の符号を付して対応させてある。
【0017】
(実施の形態1)
図1及び図2は本発明の実施の形態1を示し、図1は成形用金型全体の部分破断側面図、図2はその可動側型板のパーティング面PLからの正面図である。
【0018】
固定側金型1及び可動側金型2が相対向して配置されることにより成形用金型が構成されている。固定側金型1は固定側取付板3に固定側型板4が取り付けられることにより形成されており、固定側型板4には成形品としてのレンズの光学機能面の一面を形成するための固定側入り子5が取り付けられている。可動側金型2は可動側取付板13に受け板12が取り付けられ、この受け板12に可動側型板6が取り付けられて形成されている。可動側型板6にはレンズの光学機能面の他の一面を形成するための可動側入り子7が取り付けられている。これらの固定側金型1及び可動側金型2はステンレス鋼板、炭素鋼板、アルミニウム合金、銅合金、ニッケル合金などの熱伝導性の良好な金属によって形成されるものである。
【0019】
対向している固定側入り子5及び可動側入り子7の間は、成形を行うためのキャビティ20となっている。この実施の形態において、キャビティ20は4カ所に形成されており、それぞれのキャビティ20がスプルー8、ランナ9及びゲート10に連通しており、これらを介して図示を省略した射出成形機の樹脂供給ノズルからの溶融樹脂が射出されてレンズを成形する。ランナ9はスプルー8の軸心Sを中心にして略H形状に形成されており、H形状のランナ9の各先端にゲート10が連通している。なお、この実施の形態では、スプルー8の軸心Sと金型の中心とは一致するようになっている。
【0020】
可動側型板6をパーティング面側から示す図2のように、可動側型板6は矩形の外形となっており、4箇所のキャビティ20は可動金型6の中心Oを通る相互に直交するX軸及びY軸に対し軸対象位置に配置されている。この可動側型板6には、可動側型板6に形成された4箇所のキャビティ20を囲むように、温調用流路11が設けられている。温調用流路11は温度制御された水、油などの熱媒体が内部に供給されて通るものであり、熱媒体の供給及び排出を行う入口接続部16及び出口接続部17が可動側型板6の右側面に設けられている。さらに、可動側型板6の左側面には、ブロック板14が取り付けられており、このブロック板14に、温調用流路11の一部をなすUターン流路15が温調用流路11と連通するように形成されている。
【0021】
温調用流路11は4箇所のキャビティ20の外周部から略等しい距離でキャビティ20を囲む略矩形状のキャビティ温調部21と、キャビティ温調部21の右端部分から可動側型板6の外周側に向かうように設けられ、入口接続部16及び出口接続部17にそれぞれ接続される第1の供給側流路22及び第1の流出側流路23と、キャビティ温調部21の左端部分から同様に可動側型板6の外周側に向かうように設けられ、ブロック板14のUターン流路15にそれぞれ接続される第2の流出側流路24及び第2の供給側流路25とを備えている。ここで、第1の供給側流路22及び第1の流出側流路23は横並び状に隣接して設けられると共に、第2の流出側流路24及び第2の供給側流路25も横並び状に隣接して設けられるものである。
【0022】
これらのキャビティ温調部21、第1の供給側流路22及び第1の流出側流路23、第2の流出側流路24及び第2の供給側流路25からなる温調用流路11及び前記Uターン流路15は、途中で分岐したり、断面積が変化することのない単一の流路に形成されている。また、温調用流路11の各流路は、8〜10mm程度の内径を有した直線状の孔となっていると共に、隣接する孔とは相互に干渉することのないように形成されている。
【0023】
第1の供給側流路22及び第2の流出側流路24はキャビティ20の下側に位置するキャビティ温調部21に対して熱媒体の供給及び流出を行うものであり、第2の供給側流路25及び第1の流出側流路23はキャビティ20の上側に位置するキャビティ温調部21に対して熱媒体の供給及び流出を行うものである。従って、第1の供給側流路22及び第2の流出側流路24が一組をなし、第2の供給側流路25及び第1の流出側流路23が一組をなしている。そして、これらの組となっている供給側流路及び流出側流路は、可動側型板6の中心O(スプルー8の軸心S)に対して対称の位置(この形態では、左右対称の位置)となるように配置される。これにより、組となる供給側流路及び流出側流路が、Y軸に対して左右対称の位置に配置された構造となっている。
【0024】
さらに、温調用流路11のキャビティ温調部21は、いずれのキャビティ20に対しても均等となるように配置されている。すなわち、キャビティ温調部21は各キャビティ20に対し、X軸方向ではh3の寸法を有し、Y軸方向ではh4の寸法を有して配置されている。
【0025】
以上のような温調用流路11では、入口接続部16及び出口接続部17を外部に設けられている熱媒体供給装置(図示省略)に接続することにより、熱媒体が入口接続部16から流入し、第1の供給側流路22から下側のキャビティ温調部21に流れる。そして、第2の流出側流路24から可動側型板6の外側に流れて、ブロック体14のUターン流路15に流入し、その後、Uターン流路15から第2の供給側流路25に入って、可動側型板6の内側に入り込む。この熱媒体は上側のキャビティ温調部21を流れて、第1の流出側流路23に達し、同流路23から出口接続部17を介して可動側型板6の外部に流出する。このようにUターン流路15は下側のキャビティ温調部21および上側のキャビティ温調部21を接続することから、複数のキャビティ温調部を接続する接続流路となるものである。
【0026】
この熱媒体の移動において、第1の供給側流路22と第1の流出側流路23との間及び第2の流出側流路24と第2の供給側流路25との間に、キャビティ温調部21の周囲よりも高温となる熱溜まり部30,31がそれぞれ発生する。この熱溜まり部30及び31は、第1の供給側流路22と第1の流出側流路23との間及び第2の流出側流路24と第2の供給側流路25との間を通る熱媒体からの伝熱によってそれぞれ生じるものである。
【0027】
この実施の形態では、上述したように組となっている供給側流路及び流出側流路が可動側型板6の中心Oに対して対称の位置、すなわち、Y軸に対して左右対称の位置に配置された構造となっているため、熱溜まり部30,31をY軸に対して左右対称の位置に生じさせることができる。また、熱溜まり部30の温度は第1の供給側流路22と第1の流出側流路23との距離h1によって変化し、熱溜まり部31の温度は第2の流出側流路24と第2の供給側流路25と距離h2によって変化する。この実施の形態では、かかる第1の供給側流路22と第1の流出側流路23との距離h1及び第2の流出側流路24と第2の供給側流路25と距離h2を略同一寸法に設定するものである。このように設定することにより、熱溜まり部30,31の温度を略等しくすることができる。また、各キャビティ20と熱溜まり部30,31とが略等しい距離となり、各キャビティ20、すなわち各キャビティ20内の成形品、が熱溜まり部30,31から均等に熱影響を受けることができる。
【0028】
なお、この実施の形態では、h1=h2としたが、熱溜まり部30,31の温度差を1℃以下のばらつきで管理しても、キャビティ20への熱影響を均等にすることができる。この場合には、h1とh2の寸法の差(h1−h2)を25%以下、すなわち、(h1−h2)/h1又は(h1−h2)/h2を25%以下とするに可能となるものである。さらに、以上の温調用流路11及びUターン流路15は、図1に示すように、固定側型板4に対しても同様に形成するものである。
【0029】
このような実施の形態では、熱溜まり部30,31が可動側型板6及び固定側型板4のそれぞれにパーティング面PLから見たときにY軸に対して左右対称で生じるように温調用流路11が設けられているため、固定側金型1及び可動側金型2の温度分布が左右対称になって、4箇所のキャビティ20の間の温度差を低減することができる。従って、成形される成形品は、各キャビティ20毎の温度差が極めて少ないため、各キャビティ20での温度の下降速度が等しくなる。これにより、キャビティ20間での成形品の収縮率差が少なくなり、キャビティ間での寸法バラツキのない成形品を成形することができる。
【0030】
次に、図1及び図2に示す実施の形態を具体的な数値により説明する。この例では、固定側入り子5と可動側入り子7とに、それぞれレンズの一面となる所定の曲率半径Rの球面形状を形成し、これらの組み込むことによりキャビティ20を構成した。この成形用金型に対して、142℃に加熱した温調用熱水(商品名「日石ハイテクサーム32」、日本石油化学(株)製)を入口接続部16を介して20リットル/分の流量で流し込み、4箇所のキャビティ20の温度差を比較した。その結果、各キャビティ20ともに、132.0±0.2℃の安定した温度となっており、キャビティの温度差が非常に小さいことが確認された。
【0031】
この差はポリオレフィン樹脂を用いて実際に成形した場合の成形品にも現れており、従来技術の金型で成形した場合は、成形品のキャビティ間の曲率半径Rの大きさは、Rに対して0.1%〜0.5%の差が生じていたが、この形態の金型で成形した場合は、0.03%〜0.1%の差であった。また、PMMA、PCなどの他の樹脂を成形した場合も、この実施の形態の金型によって成形した場合方がキャビティの温度差、キャビティ間の曲率半径Rの差ともに小さくなっていた。
【0032】
図3はこの実施の形態の変形々態を示す。この形態では、可動側型板6の内部に、Uターン流路15を形成するものであり、Uターン流路15はキャビティ温調部21の第2の流出側流路24及び第2の供給側流路25と連通するように可動側型板6の内部に設けられている。なお、図示を省略するが、固定側型板4の内部にも同様なUターン流路が設けられるものである。このように各型板6,4の内部にUターン流路を設けることにより、ブロック板14が不要となるため、突出部分が少ない型板とすることができる。
【0033】
図4はさらに別の変形々態を示す。この形態では、第1の供給側流路22及び第1の流出側流路23を可動側型板6及び固定側型板4(固定側型板4は図示省略)のコーナ部分に設けるものである。また、これらの第1の供給側流路22及び第1の流出側流路23に連通するキャビティ温調部21には、第2の流出側流路24及び第2の供給側流路25が設けられるが、これらの第2の流出側流路24及び第2の供給側流路25は、第1の供給側流路22及び第1の流出側流路23を設けたと反対側のコーナ部分に設けられている。そして、このコーナ部分にブロック板14が取り付けられることにより、そのUターン流路15が第2の流出側流路24及び第2の供給側流路25を連結している。この場合には、h1,h2,h3,h4を上述と同様な関係とすることにより、熱溜まり部30,31が対称の位置に発生するため、キャビティ間での寸法バラツキのない成形品を成形することができる。
【0034】
(実施の形態2)
図5〜図7は実施の形態2を示す。この実施の形態では、図6に示すように、キャビティ温調部21が4箇所のキャビティ20を均等に囲む円形となるように設けられている。この場合、各キャビティ20とキャビティ温調部21とのX軸方向の距離及びY軸方向の距離は略等しくなるように設定されると共に、各キャビティ20と第1の供給側流路22、第1の流出側流路23,第2の流出側流路24及び第2の供給側流路25との距離も略等しくなるように設定される。なお、キャビティ温調部21と、第1の供給側流路22、第1の流出側流路23,第2の流出側流路24及び第2の供給側流路25とは連通部28を介して連通している。
【0035】
図5及び図7に示すように、固定側金型1では、固定側型板4及び固定側取付板3との間の合わせ面にキャビティ温調部21が形成され、可動側金型2では、可動側型板6及び受け板12との間の合わせ面にキャビティ温調部21が形成されている。この場合、これらの合わせ面には、Oリングなどのシールリング40、35を挟み込んで熱媒体の漏れを防止している。
【0036】
また、熱媒体の漏れを防止するため、供給側流路22,25及び流出側流路23,24の型開閉方向の位置を変更している。すなわち、図7に示すように、第1の供給側流路22を可動側型板6に設けるが、この第1の供給側流路22を可動側型板6内で下方に屈曲させて、受け板12との合わせ面のキャビティ温調部21に連通させている。
【0037】
この実施の形態においても、接続流路28及び熱溜まり部30,31を均等で対称の位置に配置することにより、キャビティ20の間の温度差を低減することができる。キャビティ20の間での寸法バラツキのない成形品を成形することができる。
【0038】
(実施の形態3)
図8は実施の形態3を示す。この実施の形態では、固定側金型1の固定側取付板3及び固定側型板4の双方に温調用流路11を設けると共に、可動側金型2の可動側型板6及び受け板12の双方に温調用流路11を設けるものである。これらの温調用流路11は実施の形態1の構造となるように設けられている。従って、キャビティ温調部21と連通するUターン流路15が固定側取付板3、固定側型板4及び可動側型板6及び受け板12に設けられる。なお、この実施の形態において、固定側型板4及び可動側型板6では、熱媒体の入口接続部16及び出口接続部17が下側に設けられ、これに対し、固定側取付板3及び受け板12では、図示を省略するが、入口接続部16及び出口接続部17が上側に設けられるものである。
【0039】
この実施の形態では、温調用流路11の数が増えているため、キャビティ20との熱交換を効率良く行うことができる。また、型板4,6の他に、固定側取付板3及び受け板12に温調用流路11を設けているため、熱媒体による昇温時間及び降温時間を短縮することができる。
【0040】
なお、熱媒体は温調用流路11内を流れる間に金型との熱交換が行われるため入口接続部16、出口接続部17では熱媒体の温度差が生じ易いが、この実施の形態では、上述したように、固定側型板4及び可動側型板6では、入口接続部16及び出口接続部17が下側に設けられる一方、固定側取付板3及び受け板12では、これらが上側に設けられているため、入口接続部及び出口接続部の温度差を解消することができる。従って、実施の形態1に比べて金型の温度分布が左右対称となって、4箇所のキャビティ20間の温度差を低減することができ、各キャビティ20内で冷却が均一になって、キャビティ20間での収縮率差が少なくなり、キャビティ間でのバラツキのない成形品を成形することができる。
【0041】
図9及び図10は、温調用流路11を配設する別の形態を示す。温調用流路11は、少なくとも成形を行う固定側型板4及び可動側型板6に配置するものであれば良く、図9に示すように、可動側型板6(或いは固定側型板4)に複数、配置しても良く、可動側金型2の可動側型板6に加えて、その受け板12に配置しても良く、これらの形態に限定されるものではない。
【0042】
(実施の形態4)
図11は実施の形態4を示す。この実施の形態では、可動側型板6における入口接続部16,出口接続部17を設けた側面以外の側面にブロック板14が取り付けられており、ブロック板14に設けたUターン流路15が可動側型板6内のキャビティ温調部21にそれぞれ接続されている。また、キャビティ温調部21とそれぞれのブロック板14のUターン流路15との接続では、同一の接続構造となっている。すなわち、可動側型板6の下部側面におけるブロック板14のUターン流路15は、流出側流路24a及び供給側流路25aに接続され、左側面におけるブロック板14のUターン流路15は、流出側流路24b及び供給側流路25cに接続され、上部側面におけるブロック板14のUターン流路15は、流出側流路24c及び供給側流路25cに接続されている。
【0043】
この実施の形態においても、隣接している供給側流路と流出側流路との間に熱溜まり部32,33,34,35が発生するが、可動側型板6の中心を対称とし、且つ隣接する供給側流路及び流出側流路では、実施の形態1と同様な関係となるように設定されるものである。すなわち、供給側流路22及び流出側流路23と対称位置に配置される流出側流路24b及び供給側流路25bでは、それぞれの間隔h1及びh2が実施の形態1と同様に設定され、流出側流路24a及び供給側流路25aと対称位置に配置される流出側流路24及び供給側流路25cでは、それぞれの間隔h5及びh6が実施の形態1と同様に設定される。これにより、熱溜まり部32,33,34,35と、キャビティ20との関係が、各キャビティ20に対して同じとなる。
【0044】
このような構造とすることにより、上下対称及び左右対称な位置に熱溜まり部を生じることができ、実施の形態1に比べ金型全体での温度分布が均等になる。このため、温度差が極めて少なくなり、冷却が均一となってキャビティ20間での収縮率差が少なく、キャビティ間でのバラツキのない成形品を成形することができる。
【0045】
図12〜図14はこの実施の形態の変形々態を示す。上述したように、熱溜まり部32,33,34,35が上下対称、左右対称或いは回転対称に位置するように設定することにより、キャビティ20間での温度差がなくなって、キャビティ20間での収縮率差が少なり、バラツキのない成形を行うことができる。従って、図12に示すように、十字状に設けられた複数のキャビティ20に対して、熱溜まり部32,33,34,35が上下左右対称の位置で生じるように温調用流路11を設けても良く、図13に示すように、キャビティ温調部21を複数のキャビティ20を囲む円形に設けても良く、図14に示すように、キャビティ温調部21を擬似円形に設けても良い。
【0046】
(実施の形態5)
図15は実施の形態5を示す。この実施の形態では、キャビティ20が可動側型板6に対して、上下及び左右の対称位置に形成されており、図示を省略するが固定側型板4も同様となっている。このようなキャビティ20に対して、キャビティ温調部21が略等しい距離h3,h4となるように設けられており、これにより熱溜まり部32,33,34,35が略均等の位置に発生するようになっている。このように、上下左右対称に配置されたキャビティ部20に対して、均一な位置に熱溜まりを生じることによって、キャビティ20間の温度差が極めて少くなるため、多数個取りのキャビティに対しても適用することができる。
【0047】
(実施の形態6)
図16及び図17は実施の形態6を示し、固定側金型1及び可動側金型2のそれぞれに温調用入れ子26を用いるものである。すなわち、それぞれの金型1,2の型板6,7に対し、貫通穴を中央部分に形成し、この貫通穴に温調用入れ子26を嵌め込むものである。
【0048】
それぞれの金型1,2の温調入れ子26の内部には、キャビティ20を形成するための入れ子7,5が設けられると共に、各キャビティ20に対して実施の形態1と同様に配置された温調用流路11が設けられる。また、温調用流路11のキャビティ温調部21と連通するUターン流路15を備えたブロック板14が温調用入れ子26の左側面に取り付けられている。ブロック板14を金型に挿入するため、それぞれの型板4,6には、逃げ溝29が形成される。図17では、可動側型板6の逃げ溝29を示しているが、固定側型板4にも同様な逃げ溝が形成されるものである。
【0049】
温調用入れ子26はそれぞれの型板4,6に形成した貫通穴に、断熱層27を介して嵌め込まれる。この断熱層27としては、型板4,6との間に隙間を設けたり、セラミックスなどの熱伝導性の低い板材を設けることにより形成することができる。
【0050】
このような実施の形態では、型板6、4を分割して断熱層27を設けているため、可動側型板6の外周側および固定側型板4の外周側から熱が逃げにくくなる。このため、キャビティ20の熱交換を効率的に行うことができ、効率的な成型が可能となる。
【0051】
(実施の形態7)
図18は実施の形態7を示す。この実施の形態では、可動側型板6(固定側型板4も同様)に対して、単一のキャビティ20を形成するものである。この単一のキャビティ20に対して、キャビティ温調部21が等しい距離で囲んでいると共に、可動側型板6の3側面に設けたブロック板14のUターン流路15がキャビティ温調部21と連通している。かかる関係は、図11〜図14で示す実施の形態4と同様となっている。
【0052】
従って、この形態においても、キャビティの中心(キャビティの外周面)と、熱溜まり部との距離が等しくなるため、キャビティ20内で成形される成形品の外周部は均等に熱影響を受けることができ、均等に収縮する。このように、単一のキャビティ20に対しても、複数の熱だまりを形成することにより、特にキャビティ容量の大きな成形品に対しても均一な冷却ができ、高精度な成形品を得ることができる。
【0053】
なお、以上の実施の形態では、射出成形を行う成形用金型に対して説明し、しかも成形材料として樹脂を用いたこれに限定されるものではない。例えばメタルインジェクションに対しても適用することができ、この場合には、材料としてアルミニウム、SUS、鉄、ニッケル、タングステンカーバイト、コバルト、チタン、マグネシウムなどを使用できる。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、キャビティの温度が均一となり、キャビティ内に充填された材料の熱分布がばらつくことなく、安定した成形品品質で量産することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における成形用金型全体の部分破断側面図である。
【図2】実施の形態1における可動側型板6のパーティング方向からの正面図である。
【図3】実施の形態1の変形々態の部分側面図である。
【図4】実施の形態1の別の変形々態のパーティング方向からの正面図である。
【図5】実施の形態2の部分破断側面図である。
【図6】実施の形態2のパーティング方向からの正面図である。
【図7】図6のA−A線断面図である。
【図8】実施の形態3の成形用金型の部分破断側面図である。
【図9】実施の形態3の変形々態の側面図である。
【図10】実施の形態3の別の変形々態の側面図である。
【図11】実施の形態4のパーティング方向からの正面図である。
【図12】実施の形態4の変形々態のパーティング方向からの正面図である。
【図13】実施の形態4の別の変形々態のパーティング方向からの正面図である。
【図14】実施の形態4のさらに別の変形々態のパーティング方向からの正面図である。
【図15】実施の形態5のパーティング方向からの正面図である。
【図16】実施の形態6の成形用金型の部分破断側面図である。
【図17】実施の形態6のパーティング方向からの部分破断正面図である。
【図18】実施の形態7のパーティング方向からの正面図である。
【図19】従来の成形用金型の正面図である。
【符号の説明】
1 固定側金型
2 可動側金型
4 固定側型板
6 可動側型板
11 温調用流路
20 キャビティ
21 キャビティ温調部
30 31 32 33 34 35 熱溜まり部
【発明の名称】 成形用金型
【特許請求の範囲】
【請求項1】相対向する固定側金型及び可動側金型に形成したキャビティを囲むように配置される熱媒体の温調用流路と、前記温調用流路に熱媒体の供給を行う入口接続部と、前記温調用流路から熱媒体の排出を行う出口接続部とが設けられた成形用金型において、
前記温調用流路を通る熱媒体からの伝熱により生じる熱溜まり部が前記キャビティの外周部から略等しい距離に生じるように、前記温調用流路が設けられていることを特徴とする成形用金型。
【請求項2】前記温調用流路は、前記キャビティの外周部から略等しい距離になるように配置されて前記キャビティを囲むキャビティ温調部、前記入口接続部及び前記キャビティ温調部に接続される第1の供給側流路、前記キャビティ温調部から熱媒体の流出を行う第2の流出側流路、前記第2の流出側流路から流出した熱媒体の前記キャビティ温調部への供給を行う第2の供給側流路、及び前記キャビティ温調部及び前記出口側接続部に接続される第1の流出側流路を有し、
前記第1の流出側流路及び第1の供給側流路と、前記第2の流出側流路及び第2の供給側流路とが、前記キャビティ温調部に対して対称な位置になるように設けられていることを特徴とする請求項1記載の成形用金型。
【請求項3】前記第1の供給側流路及び第1の流出側流路との間の距離と、前記第2の供給側流路及び第2の流出側流路の間の距離とが、略同一寸法に設定されていることを特徴とする請求項2記載の成形用金型。
【請求項4】前記第1の供給側流路及び前記第1の流出側流路の間の距離、並びに前記第2の供給側流路及び前記第2の流出側流路の間の距離が、前記第1の供給側流路と前記第2の流出側流路とを接続するキャビティ温調部及び、前記第2の供給側流路と前記第1の流出側流路とを接続するキャビティ温調部の間の距離よりも短いことを特徴とする請求項2又は3のいずれかに記載の成形用金型。
【請求項5】前記温調用流路は、複数のキャビティ温調部間を接続する少なくとも2以上の接続流路を有することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の成形用金型。
【請求項6】前記温調用流路は、固定側金型を構成する固定側型板及び固定側取付板の少なくとも一つ、並びに可動側金型を構成する可動側型板及び受け板又は可動側取付板の少なくとも一つにそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の成形用金型。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形品を射出成形によって成形する成形用金型に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチックなどの溶融した材料を成形用金型内に射出し冷却固化させて所望する形状に成形するのに際しては、成形用金型の温度制御(例えば金型の温度維持や冷却)は、材料の固化速度によって固化後の成形品の寸法変化に影響を及ぼす。すなわち、成形品中に固化速度の速い箇所と遅い箇所とがあると、成形品に局部的にひけ等が発生したり、成形品どうしで寸法の狂いが発生する。従って、成形においては、成形用金型の温度制御は極めて重要な要素であり、種々の工夫がなされている。例えば、金型内部に温度制御された水や油などの熱媒体を通す温調用流路を設け、熱媒体の流量、温度等を制御することによって金型の温度を制御することがなされている。
【0003】
図19はこのような熱媒体を金型内に供給して成形するため、実開平6−50825号公報に記載された従来の成形用金型を示し、100は可動側金型の可動側型板である。この可動側型板100には図示を省略した固定側金型の固定側型板が対向して配置される。可動側型板100及び固定側型板には、レンズなどの成形品を成形するためのキャビティ110,120,130,140が複数設けられている。これらのキャビティ110,120,130,140にはランナ150及びゲート160を介して溶融樹脂が供給されて成形が行われる。
【0004】
この成形用金型では、可動側型板100及び固定側型板の内部に温調用流路170が設けられると共に、断熱部材180,190が設けられている。温調用流路170は複数のキャビティ110,120,130,140を囲んでおり、内部には熱媒体200が流通する。断熱部材180,190は熱媒体の出口側に近いキャビティ130,140における温調用流路170の外側に、温調用流路170を囲むように設けられており、出口側の熱媒体の温度低下を抑制している。これらの構造によって金型の温度の制御を均一化し、キャビティ110,120,130,140間の温度差を低減させて、均一な冷却を行い、成形品どうしのバラツキを低減させている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
金型に温調用流路を設ける場合には、金型に熱媒体が出入りするための入口側及び出口側の連結用の流路が必要となる。この連結用の流路付近はキャビティを囲んでいる流路とは異なり金型の外周部へ向けて設けられる。
【0006】
そして、実開平6−50825号公報に示される構造では、連結用の流路周辺は連結用の流路が形成されない領域と比べて、金型に対する流路の占める割合が高くなる。このため、熱媒体を連結用の流路に流すと連結用の流路付近で熱分布が高くなる熱溜まり部が生じて、金型全体の熱分布がばらつく原因となる。従って、金型の温度を均一にすることを目的として熱媒体を通しても連結用の流路付近の温度が金型の他の部分に比べ数度高くなり、その結果、キャビティを取り囲む温調用流路がキャビティに対して一定の距離、離間して配置されていても、金型全体としての熱分布のバラツキに影響され、連結用の流路に近いキャビティの方が温度が高くなり、均一な温度制御が困難となる。
【0007】
このような構造の成形用金型を用いて、例えば、プラスチック製の光学素子であるレンズを射出成形による多数固取りで成形した場合は、成形用金型の温度のバラツキが形成品の収縮バラツキ、即ち寸法変化に強く関与してくるため、成形されたレンズの曲率半径rに数10μmのバラツキが生じる。このバラツキは光学素子の特性を大きく変化させるため、光学素子としての寸法の許容差から外れるものとならざるを得ないものとなっている。
【0008】
また、従来では、複数のキャビティを取り囲んでいる周囲の金型温度が均一にならないまま成形するため、成形条件のわずかな変動でも成形品に寸法変化が発生する。このため、量産体制における成形品の品質が不安定となる問題を有している。
【0009】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、簡単な構造で、キャビティの温度を均一にして成形の収縮バラツキを少なくすることができ、これにより、安定した成形品品質を維持して量産することが可能な成形用金型を提供することを目的とする。
【0010】
【問題点を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、相対向する固定側金型及び可動側金型に形成したキャビティを囲むように配置される熱媒体の温調用流路と、前記温調用流路に熱媒体の供給を行う入口接続部と、前記温調用流路から熱媒体の排出を行う出口接続部とが設けられた成形用金型において、前記温調用流路を通る熱媒体からの伝熱により生じる熱溜まり部が前記キャビティの外周部から略等しい距離に生じるように、前記温調用流路が設けられていることを特徴とする。
【0011】
また上記目的を達成するため、本発明は、前記温調用流路は、前記キャビティの外周部から略等しい距離になるように配置されて前記キャビティを囲むキャビティ温調部、前記入口接続部及び前記キャビティ温調部に接続される第1の供給側流路、前記キャビティ温調部から熱媒体の流出を行う第2の流出側流路、前記第2の流出側流路から流出した熱媒体の前記キャビティ温調部への供給を行う第2の供給側流路、及び前記キャビティ温調部及び前記出口側接続部に接続される第1の流出側流路を有し、前記第1の流出側流路及び第1の供給側流路と、前記第2の流出側流路及び第2の供給側流路とが、前記キャビティ温調部に対して対称な位置になるように設けられていることを特徴とする。
【0012】
また上記目的を達成するため、本発明は、前記第1の供給側流路及び第1の流出側流路との間の距離と、前記第2の供給側流路及び第2の流出側流路の間の距離とが、略同一寸法に設定されていることを特徴とする。
【0013】
また上記目的を達成するめ、本発明は、前記第1の供給側流路及び前記第1の流出側流路の間の距離、並びに前記第2の供給側流路及び前記第2の流出側流路の間の距離が、前記第1の供給側流路と前記第2の流出側流路とを接続するキャビティ温調部及び、前記第2の供給側流路と前記第1の流出側流路とを接続するキャビティ温調部の間の距離よりも短いことを特徴とする。
【0014】
また上記目的を達成するため、本発明は、前記温調用流路は、複数のキャビティ温調部間を接続する少なくとも2以上の接続流路を有することを特徴とする。
【0015】
また上記目的を達成するため、本発明は、前記温調用流路は、固定側金型を構成する固定側型板及び固定側取付板の少なくとも一つ、並びに可動側金型を構成する可動側型板及び受け板又は可動側取付板の少なくとも一つにそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示する実施の形態により具体的に説明する。なお、各実施の形態において、同一の要素は同一の符号を付して対応させてある。
【0017】
(実施の形態1)
図1及び図2は本発明の実施の形態1を示し、図1は成形用金型全体の部分破断側面図、図2はその可動側型板のパーティング面PLからの正面図である。
【0018】
固定側金型1及び可動側金型2が相対向して配置されることにより成形用金型が構成されている。固定側金型1は固定側取付板3に固定側型板4が取り付けられることにより形成されており、固定側型板4には成形品としてのレンズの光学機能面の一面を形成するための固定側入り子5が取り付けられている。可動側金型2は可動側取付板13に受け板12が取り付けられ、この受け板12に可動側型板6が取り付けられて形成されている。可動側型板6にはレンズの光学機能面の他の一面を形成するための可動側入り子7が取り付けられている。これらの固定側金型1及び可動側金型2はステンレス鋼板、炭素鋼板、アルミニウム合金、銅合金、ニッケル合金などの熱伝導性の良好な金属によって形成されるものである。
【0019】
対向している固定側入り子5及び可動側入り子7の間は、成形を行うためのキャビティ20となっている。この実施の形態において、キャビティ20は4カ所に形成されており、それぞれのキャビティ20がスプルー8、ランナ9及びゲート10に連通しており、これらを介して図示を省略した射出成形機の樹脂供給ノズルからの溶融樹脂が射出されてレンズを成形する。ランナ9はスプルー8の軸心Sを中心にして略H形状に形成されており、H形状のランナ9の各先端にゲート10が連通している。なお、この実施の形態では、スプルー8の軸心Sと金型の中心とは一致するようになっている。
【0020】
可動側型板6をパーティング面側から示す図2のように、可動側型板6は矩形の外形となっており、4箇所のキャビティ20は可動金型6の中心Oを通る相互に直交するX軸及びY軸に対し軸対象位置に配置されている。この可動側型板6には、可動側型板6に形成された4箇所のキャビティ20を囲むように、温調用流路11が設けられている。温調用流路11は温度制御された水、油などの熱媒体が内部に供給されて通るものであり、熱媒体の供給及び排出を行う入口接続部16及び出口接続部17が可動側型板6の右側面に設けられている。さらに、可動側型板6の左側面には、ブロック板14が取り付けられており、このブロック板14に、温調用流路11の一部をなすUターン流路15が温調用流路11と連通するように形成されている。
【0021】
温調用流路11は4箇所のキャビティ20の外周部から略等しい距離でキャビティ20を囲む略矩形状のキャビティ温調部21と、キャビティ温調部21の右端部分から可動側型板6の外周側に向かうように設けられ、入口接続部16及び出口接続部17にそれぞれ接続される第1の供給側流路22及び第1の流出側流路23と、キャビティ温調部21の左端部分から同様に可動側型板6の外周側に向かうように設けられ、ブロック板14のUターン流路15にそれぞれ接続される第2の流出側流路24及び第2の供給側流路25とを備えている。ここで、第1の供給側流路22及び第1の流出側流路23は横並び状に隣接して設けられると共に、第2の流出側流路24及び第2の供給側流路25も横並び状に隣接して設けられるものである。
【0022】
これらのキャビティ温調部21、第1の供給側流路22及び第1の流出側流路23、第2の流出側流路24及び第2の供給側流路25からなる温調用流路11及び前記Uターン流路15は、途中で分岐したり、断面積が変化することのない単一の流路に形成されている。また、温調用流路11の各流路は、8〜10mm程度の内径を有した直線状の孔となっていると共に、隣接する孔とは相互に干渉することのないように形成されている。
【0023】
第1の供給側流路22及び第2の流出側流路24はキャビティ20の下側に位置するキャビティ温調部21に対して熱媒体の供給及び流出を行うものであり、第2の供給側流路25及び第1の流出側流路23はキャビティ20の上側に位置するキャビティ温調部21に対して熱媒体の供給及び流出を行うものである。従って、第1の供給側流路22及び第2の流出側流路24が一組をなし、第2の供給側流路25及び第1の流出側流路23が一組をなしている。そして、これらの組となっている供給側流路及び流出側流路は、可動側型板6の中心O(スプルー8の軸心S)に対して対称の位置(この形態では、左右対称の位置)となるように配置される。これにより、組となる供給側流路及び流出側流路が、Y軸に対して左右対称の位置に配置された構造となっている。
【0024】
さらに、温調用流路11のキャビティ温調部21は、いずれのキャビティ20に対しても均等となるように配置されている。すなわち、キャビティ温調部21は各キャビティ20に対し、X軸方向ではh3の寸法を有し、Y軸方向ではh4の寸法を有して配置されている。
【0025】
以上のような温調用流路11では、入口接続部16及び出口接続部17を外部に設けられている熱媒体供給装置(図示省略)に接続することにより、熱媒体が入口接続部16から流入し、第1の供給側流路22から下側のキャビティ温調部21に流れる。そして、第2の流出側流路24から可動側型板6の外側に流れて、ブロック体14のUターン流路15に流入し、その後、Uターン流路15から第2の供給側流路25に入って、可動側型板6の内側に入り込む。この熱媒体は上側のキャビティ温調部21を流れて、第1の流出側流路23に達し、同流路23から出口接続部17を介して可動側型板6の外部に流出する。このようにUターン流路15は下側のキャビティ温調部21および上側のキャビティ温調部21を接続することから、複数のキャビティ温調部を接続する接続流路となるものである。
【0026】
この熱媒体の移動において、第1の供給側流路22と第1の流出側流路23との間及び第2の流出側流路24と第2の供給側流路25との間に、キャビティ温調部21の周囲よりも高温となる熱溜まり部30,31がそれぞれ発生する。この熱溜まり部30及び31は、第1の供給側流路22と第1の流出側流路23との間及び第2の流出側流路24と第2の供給側流路25との間を通る熱媒体からの伝熱によってそれぞれ生じるものである。
【0027】
この実施の形態では、上述したように組となっている供給側流路及び流出側流路が可動側型板6の中心Oに対して対称の位置、すなわち、Y軸に対して左右対称の位置に配置された構造となっているため、熱溜まり部30,31をY軸に対して左右対称の位置に生じさせることができる。また、熱溜まり部30の温度は第1の供給側流路22と第1の流出側流路23との距離h1によって変化し、熱溜まり部31の温度は第2の流出側流路24と第2の供給側流路25と距離h2によって変化する。この実施の形態では、かかる第1の供給側流路22と第1の流出側流路23との距離h1及び第2の流出側流路24と第2の供給側流路25と距離h2を略同一寸法に設定するものである。このように設定することにより、熱溜まり部30,31の温度を略等しくすることができる。また、各キャビティ20と熱溜まり部30,31とが略等しい距離となり、各キャビティ20、すなわち各キャビティ20内の成形品、が熱溜まり部30,31から均等に熱影響を受けることができる。
【0028】
なお、この実施の形態では、h1=h2としたが、熱溜まり部30,31の温度差を1℃以下のばらつきで管理しても、キャビティ20への熱影響を均等にすることができる。この場合には、h1とh2の寸法の差(h1−h2)を25%以下、すなわち、(h1−h2)/h1又は(h1−h2)/h2を25%以下とするに可能となるものである。さらに、以上の温調用流路11及びUターン流路15は、図1に示すように、固定側型板4に対しても同様に形成するものである。
【0029】
このような実施の形態では、熱溜まり部30,31が可動側型板6及び固定側型板4のそれぞれにパーティング面PLから見たときにY軸に対して左右対称で生じるように温調用流路11が設けられているため、固定側金型1及び可動側金型2の温度分布が左右対称になって、4箇所のキャビティ20の間の温度差を低減することができる。従って、成形される成形品は、各キャビティ20毎の温度差が極めて少ないため、各キャビティ20での温度の下降速度が等しくなる。これにより、キャビティ20間での成形品の収縮率差が少なくなり、キャビティ間での寸法バラツキのない成形品を成形することができる。
【0030】
次に、図1及び図2に示す実施の形態を具体的な数値により説明する。この例では、固定側入り子5と可動側入り子7とに、それぞれレンズの一面となる所定の曲率半径Rの球面形状を形成し、これらの組み込むことによりキャビティ20を構成した。この成形用金型に対して、142℃に加熱した温調用熱水(商品名「日石ハイテクサーム32」、日本石油化学(株)製)を入口接続部16を介して20リットル/分の流量で流し込み、4箇所のキャビティ20の温度差を比較した。その結果、各キャビティ20ともに、132.0±0.2℃の安定した温度となっており、キャビティの温度差が非常に小さいことが確認された。
【0031】
この差はポリオレフィン樹脂を用いて実際に成形した場合の成形品にも現れており、従来技術の金型で成形した場合は、成形品のキャビティ間の曲率半径Rの大きさは、Rに対して0.1%〜0.5%の差が生じていたが、この形態の金型で成形した場合は、0.03%〜0.1%の差であった。また、PMMA、PCなどの他の樹脂を成形した場合も、この実施の形態の金型によって成形した場合方がキャビティの温度差、キャビティ間の曲率半径Rの差ともに小さくなっていた。
【0032】
図3はこの実施の形態の変形々態を示す。この形態では、可動側型板6の内部に、Uターン流路15を形成するものであり、Uターン流路15はキャビティ温調部21の第2の流出側流路24及び第2の供給側流路25と連通するように可動側型板6の内部に設けられている。なお、図示を省略するが、固定側型板4の内部にも同様なUターン流路が設けられるものである。このように各型板6,4の内部にUターン流路を設けることにより、ブロック板14が不要となるため、突出部分が少ない型板とすることができる。
【0033】
図4はさらに別の変形々態を示す。この形態では、第1の供給側流路22及び第1の流出側流路23を可動側型板6及び固定側型板4(固定側型板4は図示省略)のコーナ部分に設けるものである。また、これらの第1の供給側流路22及び第1の流出側流路23に連通するキャビティ温調部21には、第2の流出側流路24及び第2の供給側流路25が設けられるが、これらの第2の流出側流路24及び第2の供給側流路25は、第1の供給側流路22及び第1の流出側流路23を設けたと反対側のコーナ部分に設けられている。そして、このコーナ部分にブロック板14が取り付けられることにより、そのUターン流路15が第2の流出側流路24及び第2の供給側流路25を連結している。この場合には、h1,h2,h3,h4を上述と同様な関係とすることにより、熱溜まり部30,31が対称の位置に発生するため、キャビティ間での寸法バラツキのない成形品を成形することができる。
【0034】
(実施の形態2)
図5〜図7は実施の形態2を示す。この実施の形態では、図6に示すように、キャビティ温調部21が4箇所のキャビティ20を均等に囲む円形となるように設けられている。この場合、各キャビティ20とキャビティ温調部21とのX軸方向の距離及びY軸方向の距離は略等しくなるように設定されると共に、各キャビティ20と第1の供給側流路22、第1の流出側流路23,第2の流出側流路24及び第2の供給側流路25との距離も略等しくなるように設定される。なお、キャビティ温調部21と、第1の供給側流路22、第1の流出側流路23,第2の流出側流路24及び第2の供給側流路25とは連通部28を介して連通している。
【0035】
図5及び図7に示すように、固定側金型1では、固定側型板4及び固定側取付板3との間の合わせ面にキャビティ温調部21が形成され、可動側金型2では、可動側型板6及び受け板12との間の合わせ面にキャビティ温調部21が形成されている。この場合、これらの合わせ面には、Oリングなどのシールリング40、35を挟み込んで熱媒体の漏れを防止している。
【0036】
また、熱媒体の漏れを防止するため、供給側流路22,25及び流出側流路23,24の型開閉方向の位置を変更している。すなわち、図7に示すように、第1の供給側流路22を可動側型板6に設けるが、この第1の供給側流路22を可動側型板6内で下方に屈曲させて、受け板12との合わせ面のキャビティ温調部21に連通させている。
【0037】
この実施の形態においても、接続流路28及び熱溜まり部30,31を均等で対称の位置に配置することにより、キャビティ20の間の温度差を低減することができる。キャビティ20の間での寸法バラツキのない成形品を成形することができる。
【0038】
(実施の形態3)
図8は実施の形態3を示す。この実施の形態では、固定側金型1の固定側取付板3及び固定側型板4の双方に温調用流路11を設けると共に、可動側金型2の可動側型板6及び受け板12の双方に温調用流路11を設けるものである。これらの温調用流路11は実施の形態1の構造となるように設けられている。従って、キャビティ温調部21と連通するUターン流路15が固定側取付板3、固定側型板4及び可動側型板6及び受け板12に設けられる。なお、この実施の形態において、固定側型板4及び可動側型板6では、熱媒体の入口接続部16及び出口接続部17が下側に設けられ、これに対し、固定側取付板3及び受け板12では、図示を省略するが、入口接続部16及び出口接続部17が上側に設けられるものである。
【0039】
この実施の形態では、温調用流路11の数が増えているため、キャビティ20との熱交換を効率良く行うことができる。また、型板4,6の他に、固定側取付板3及び受け板12に温調用流路11を設けているため、熱媒体による昇温時間及び降温時間を短縮することができる。
【0040】
なお、熱媒体は温調用流路11内を流れる間に金型との熱交換が行われるため入口接続部16、出口接続部17では熱媒体の温度差が生じ易いが、この実施の形態では、上述したように、固定側型板4及び可動側型板6では、入口接続部16及び出口接続部17が下側に設けられる一方、固定側取付板3及び受け板12では、これらが上側に設けられているため、入口接続部及び出口接続部の温度差を解消することができる。従って、実施の形態1に比べて金型の温度分布が左右対称となって、4箇所のキャビティ20間の温度差を低減することができ、各キャビティ20内で冷却が均一になって、キャビティ20間での収縮率差が少なくなり、キャビティ間でのバラツキのない成形品を成形することができる。
【0041】
図9及び図10は、温調用流路11を配設する別の形態を示す。温調用流路11は、少なくとも成形を行う固定側型板4及び可動側型板6に配置するものであれば良く、図9に示すように、可動側型板6(或いは固定側型板4)に複数、配置しても良く、可動側金型2の可動側型板6に加えて、その受け板12に配置しても良く、これらの形態に限定されるものではない。
【0042】
(実施の形態4)
図11は実施の形態4を示す。この実施の形態では、可動側型板6における入口接続部16,出口接続部17を設けた側面以外の側面にブロック板14が取り付けられており、ブロック板14に設けたUターン流路15が可動側型板6内のキャビティ温調部21にそれぞれ接続されている。また、キャビティ温調部21とそれぞれのブロック板14のUターン流路15との接続では、同一の接続構造となっている。すなわち、可動側型板6の下部側面におけるブロック板14のUターン流路15は、流出側流路24a及び供給側流路25aに接続され、左側面におけるブロック板14のUターン流路15は、流出側流路24b及び供給側流路25cに接続され、上部側面におけるブロック板14のUターン流路15は、流出側流路24c及び供給側流路25cに接続されている。
【0043】
この実施の形態においても、隣接している供給側流路と流出側流路との間に熱溜まり部32,33,34,35が発生するが、可動側型板6の中心を対称とし、且つ隣接する供給側流路及び流出側流路では、実施の形態1と同様な関係となるように設定されるものである。すなわち、供給側流路22及び流出側流路23と対称位置に配置される流出側流路24b及び供給側流路25bでは、それぞれの間隔h1及びh2が実施の形態1と同様に設定され、流出側流路24a及び供給側流路25aと対称位置に配置される流出側流路24及び供給側流路25cでは、それぞれの間隔h5及びh6が実施の形態1と同様に設定される。これにより、熱溜まり部32,33,34,35と、キャビティ20との関係が、各キャビティ20に対して同じとなる。
【0044】
このような構造とすることにより、上下対称及び左右対称な位置に熱溜まり部を生じることができ、実施の形態1に比べ金型全体での温度分布が均等になる。このため、温度差が極めて少なくなり、冷却が均一となってキャビティ20間での収縮率差が少なく、キャビティ間でのバラツキのない成形品を成形することができる。
【0045】
図12〜図14はこの実施の形態の変形々態を示す。上述したように、熱溜まり部32,33,34,35が上下対称、左右対称或いは回転対称に位置するように設定することにより、キャビティ20間での温度差がなくなって、キャビティ20間での収縮率差が少なり、バラツキのない成形を行うことができる。従って、図12に示すように、十字状に設けられた複数のキャビティ20に対して、熱溜まり部32,33,34,35が上下左右対称の位置で生じるように温調用流路11を設けても良く、図13に示すように、キャビティ温調部21を複数のキャビティ20を囲む円形に設けても良く、図14に示すように、キャビティ温調部21を擬似円形に設けても良い。
【0046】
(実施の形態5)
図15は実施の形態5を示す。この実施の形態では、キャビティ20が可動側型板6に対して、上下及び左右の対称位置に形成されており、図示を省略するが固定側型板4も同様となっている。このようなキャビティ20に対して、キャビティ温調部21が略等しい距離h3,h4となるように設けられており、これにより熱溜まり部32,33,34,35が略均等の位置に発生するようになっている。このように、上下左右対称に配置されたキャビティ部20に対して、均一な位置に熱溜まりを生じることによって、キャビティ20間の温度差が極めて少くなるため、多数個取りのキャビティに対しても適用することができる。
【0047】
(実施の形態6)
図16及び図17は実施の形態6を示し、固定側金型1及び可動側金型2のそれぞれに温調用入れ子26を用いるものである。すなわち、それぞれの金型1,2の型板6,7に対し、貫通穴を中央部分に形成し、この貫通穴に温調用入れ子26を嵌め込むものである。
【0048】
それぞれの金型1,2の温調入れ子26の内部には、キャビティ20を形成するための入れ子7,5が設けられると共に、各キャビティ20に対して実施の形態1と同様に配置された温調用流路11が設けられる。また、温調用流路11のキャビティ温調部21と連通するUターン流路15を備えたブロック板14が温調用入れ子26の左側面に取り付けられている。ブロック板14を金型に挿入するため、それぞれの型板4,6には、逃げ溝29が形成される。図17では、可動側型板6の逃げ溝29を示しているが、固定側型板4にも同様な逃げ溝が形成されるものである。
【0049】
温調用入れ子26はそれぞれの型板4,6に形成した貫通穴に、断熱層27を介して嵌め込まれる。この断熱層27としては、型板4,6との間に隙間を設けたり、セラミックスなどの熱伝導性の低い板材を設けることにより形成することができる。
【0050】
このような実施の形態では、型板6、4を分割して断熱層27を設けているため、可動側型板6の外周側および固定側型板4の外周側から熱が逃げにくくなる。このため、キャビティ20の熱交換を効率的に行うことができ、効率的な成型が可能となる。
【0051】
(実施の形態7)
図18は実施の形態7を示す。この実施の形態では、可動側型板6(固定側型板4も同様)に対して、単一のキャビティ20を形成するものである。この単一のキャビティ20に対して、キャビティ温調部21が等しい距離で囲んでいると共に、可動側型板6の3側面に設けたブロック板14のUターン流路15がキャビティ温調部21と連通している。かかる関係は、図11〜図14で示す実施の形態4と同様となっている。
【0052】
従って、この形態においても、キャビティの中心(キャビティの外周面)と、熱溜まり部との距離が等しくなるため、キャビティ20内で成形される成形品の外周部は均等に熱影響を受けることができ、均等に収縮する。このように、単一のキャビティ20に対しても、複数の熱だまりを形成することにより、特にキャビティ容量の大きな成形品に対しても均一な冷却ができ、高精度な成形品を得ることができる。
【0053】
なお、以上の実施の形態では、射出成形を行う成形用金型に対して説明し、しかも成形材料として樹脂を用いたこれに限定されるものではない。例えばメタルインジェクションに対しても適用することができ、この場合には、材料としてアルミニウム、SUS、鉄、ニッケル、タングステンカーバイト、コバルト、チタン、マグネシウムなどを使用できる。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、キャビティの温度が均一となり、キャビティ内に充填された材料の熱分布がばらつくことなく、安定した成形品品質で量産することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における成形用金型全体の部分破断側面図である。
【図2】実施の形態1における可動側型板6のパーティング方向からの正面図である。
【図3】実施の形態1の変形々態の部分側面図である。
【図4】実施の形態1の別の変形々態のパーティング方向からの正面図である。
【図5】実施の形態2の部分破断側面図である。
【図6】実施の形態2のパーティング方向からの正面図である。
【図7】図6のA−A線断面図である。
【図8】実施の形態3の成形用金型の部分破断側面図である。
【図9】実施の形態3の変形々態の側面図である。
【図10】実施の形態3の別の変形々態の側面図である。
【図11】実施の形態4のパーティング方向からの正面図である。
【図12】実施の形態4の変形々態のパーティング方向からの正面図である。
【図13】実施の形態4の別の変形々態のパーティング方向からの正面図である。
【図14】実施の形態4のさらに別の変形々態のパーティング方向からの正面図である。
【図15】実施の形態5のパーティング方向からの正面図である。
【図16】実施の形態6の成形用金型の部分破断側面図である。
【図17】実施の形態6のパーティング方向からの部分破断正面図である。
【図18】実施の形態7のパーティング方向からの正面図である。
【図19】従来の成形用金型の正面図である。
【符号の説明】
1 固定側金型
2 可動側金型
4 固定側型板
6 可動側型板
11 温調用流路
20 キャビティ
21 キャビティ温調部
30 31 32 33 34 35 熱溜まり部
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