〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態に係る光学素子用の成形金型について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、成形装置100は、射出成形を行って成形品MPを作製する本体部分である射出成形機10と、射出成形機10から成形品MPを取り出す付属部分である取出装置20と、成形装置100を構成する各部の動作を統括的に制御する制御装置30とを備える。
射出成形機10は、主に横型の成形機であり、成形金型40と、固定盤11と、可動盤12と、型締め盤13と、開閉駆動装置15と、射出装置16とを備える。射出成形機10には、これに付随して金型温度調節機47、減圧装置(不図示)等も設けられている。射出成形機10は、固定盤11と可動盤12との間に成形金型40を構成する第1金型41と第2金型42とを挟持して両金型41,42を型締めすることにより成形を可能にする。
固定盤11は、可動盤12に対向して支持フレーム14の略中央に固定され、取出装置20をその上部に支持する。固定盤11の内側11aは、可動盤12の内側12aに対向しており、第1金型41を着脱可能に支持している。固定盤11には、後述するノズル16dを通す開口11bが形成されている。なお、固定盤11は、タイバーを介して型締め盤13に固定されており、成形時の型締めの圧力に耐え得るようになっている。
可動盤12は、リニアガイド15aによって固定盤11に対して進退移動可能に支持されている。可動盤12の内側12aは、固定盤11の内側11aに対向しており、第2金型42を着脱可能に支持している。なお、可動盤12には、エジェクター駆動部45が組み込まれている。このエジェクター駆動部45は、第2金型42内の成形品MPを離型するために第1金型41側に押し出すためのものである。
型締め盤13は、支持フレーム14の端部に固定されている。型締め盤13は、型締めに際して、開閉駆動装置15の動力伝達部15dを介して可動盤12をその背後から支持する。
開閉駆動装置15は、リニアガイド15aと、動力伝達部15dと、アクチュエーター15eとを備える。リニアガイド15aは、可動盤12を支持しつつ、固定盤11に対する進退方向に関して可動盤12の滑らかな往復移動を可能にしている。動力伝達部15dは、制御装置30の制御下で動作するアクチュエーター15eからの駆動力を受けて伸縮する。これにより、型締め盤13に対して可動盤12が近接したり離間したり自在に進退移動する。結果的に、固定盤11と可動盤12とを互いに近接又は離間させることができ、第1金型41と第2金型42との型締め又は型開きを行うことができる。
射出装置16は、シリンダー16a、原料貯留部16b、スクリュー駆動部16c等を備える。射出装置16は、制御装置30の制御下で適当なタイミングで動作するものであり、樹脂射出用のノズル16dから温度制御された状態で溶融樹脂(被射出溶融物)を射出することができる。射出装置16は、第1金型41と第2金型42とを型締めした状態において、固定盤11の開口11bを介して後述するスプルー口部65(図2(B)参照)にノズル16dを接触させることにより、後述する流路空間FC(図2(B)参照)に対してシリンダー16a中の溶融樹脂を所望のタイミング及び圧力で射出・供給することができる。
射出成形機10に付随して設けられた金型温度調節機47は、両金型41,42中に設けた流路に温度制御された熱媒体を循環させる。これにより、成形時に両金型41,42の温度を適切な温度に保つことができる。
取出装置20は、成形品MPを把持することができるハンド21と、ハンド21を3次元的に移動させる3次元駆動装置22とを備える。取出装置20は、制御装置30の制御下で適当なタイミングで動作するものであり、第1金型41と第2金型42とを離間させて型開きした後に、第2金型42に残る成形品MPを把持して外部に搬出する役割を有する。
制御装置30は、開閉制御部31と、射出装置制御部32と、エジェクター制御部33と、取出装置制御部34とを備える。開閉制御部31は、アクチュエーター15eを動作させることによって両金型41,42の型閉じ、型締め、型開き等を可能にする。射出装置制御部32は、スクリュー駆動部16c等を動作させることによって両金型41,42間に形成されたキャビティCV中に所望の圧力で溶融樹脂を注入させる。エジェクター制御部33は、エジェクター駆動部45を動作させることによって型開き時に第2金型42に残る成形品MPを第2金型42内から押し出させて離型を行わせる。取出装置制御部34は、取出装置20を動作させることによって型開き及び離型後に第2金型42に残る成形品MPを把持して射出成形機10外に搬出させる。
以下、成形金型40について詳しく説明する。図2(A)等に示すように、成形金型40のうち可動側の第2金型42は、AB方向に往復移動可能になっている。この第2金型42を固定側の第1金型41に向けて移動させ、両金型41,42を型合わせ面すなわちパーティング面PS1,PS2で型合わせして型締めすることにより、図2(B)に示すように、光学素子を成形するためのキャビティCVと、これに溶融樹脂を供給するための流路である流路空間FCとが形成される。
第1金型41は、固定金型であり、内側すなわちパーティング面PS1側に配置される金型部分60と、外側すなわち図1の固定盤11側に配置される取付板64とを備える。このうち、金型部分60は、複数の部分に分割された分割構造を有するものとなっている。金型部分60は、型板60aと受板60bとを有する。金型部分60において、型板60a及び受板60bはボルト等で互いに固定されている。
金型部分60のうち型板60aは、分割された部分として、型本体としてのコア部62と、型本体を囲む周辺部63とを有する。型板60aのうち周辺部63は、金属製の板状の部材であり、複数のコア部62を挿入する複数のコア保持口61aと、外部からの溶融樹脂を内部に供給するためのスプルー連結口61bとを備える。各コア保持口61aには、コア部62が挿入されており、コア部62の先端面は、光学素子の光学機能部を形成するための光学転写面61eとなっている。
受板60bは、金属製の板状の部材であり、型板60aと取付板64との間に配置され、型板60aを背後から支持している。受板60bは、型板60aと同様に、外部からの溶融樹脂を内部に供給するためのスプルー連結口61cを備える。
金型部分60の内部には、成形時に成形金型40の温度を適切な温度に保つため、熱媒体を流通させる温度調整用配管66a、温度監視用の温度計(不図示)等が形成されている。温度調整用配管66a等は、金型温度調節機47に接続される。熱媒体には、例えば油や水が用いられる。
温度調整用配管66aは、型板60aと受板60bとの間に対向するように設けられた一対の溝の組み合わせによって形成されている。図3(A)に示すように、温度調整用配管66aは、複数の光学転写面61eを結ぶ閉じた線STの周辺に沿って光学転写面61eを囲むように配置されている。そのため、温度調整用配管66aは、光学転写面61eを効率良くかつ均一に加熱するようになっている。温度調整用配管66aは、第1金型41と第2金型42とが対向する面(図2(A)等に示すパーティング面PS1)から見て円環形状を有する。本実施形態の温度調整用配管66aは、分割二重型の流路となっている。具体的には、図4(A)〜4(C)に示すように、型板60aと受板60bとの間であって温度調整用配管66aとその周囲とに亘って延び、温度調整用配管66aを流路に沿って2分する仕切りBKが設けられている。温度調整用配管66aは、隣接する表側配管HP1と奥側配管HP2とを連結口66e,66g(図3(A)等参照)を介して繋いだ2重構造となっている。つまり、温度調整用配管66aは、型板60a側の第1流路FP1に対応する表側配管HP1と、受板60b側の第2流路FP2に対応する奥側配管HP2とで構成されている。図3(A)及び図4(A)に示すように、温度調整用配管66aは、第1金型41の型板60a側の上方及び下方であって連結口66e,66gに隣接して、熱媒体を流路内に流入させる注入口66c,66dをそれぞれ有している。また、温度調整用配管66aは、第1金型41の受板60b側の上方及び下方であって連結口66e,66gに隣接して、熱媒体を流路内から流出させる出口66f,66hをそれぞれ有している。注入口66c,66d及び出口66f,66hと、これらにそれぞれ隣接する連結口66e,66gとの間には、第1及び第2流路FP1,FP2内を隔てる隔壁WAが設けられている。このように隔壁WAによって第1及び第2流路FP1,FP2を2分することで、温度調整用配管66aには2つの循環路が形成される。隣接する表側配管HP1及び奥側配管HP2を連結口66e,66gで繋いで隔壁WAで仕切るだけであるため、温度調整用配管66aは簡易な構造となっている。注入口66c,66dの数は、光学転写面61eの数よりも少なくなっている。つまり、熱媒体の注入口66c,66dは、光学転写面61e毎に設けられていなくてもよい。このように、温度調整用配管66aの構造を単純にするため注入口66c,66dの数を減らしたときにもキャビティCV間の温度差を解消することができる。
温度調整用配管66aは、全体としては一様な流路断面を有しているが、複数の光学転写面61eのうち成形時に温度が相対的に低くなる傾向にある部分に対応する第1の配管部分P1の断面積が、温度が相対的に高くなる傾向にある部分に対応する第2の配管部分P2の断面積よりも局所的に小さくなっている。すなわち、複数の光学転写面61eに沿って配置された温度調整用配管66aにおいて、第2の配管部分P2で断面積は一様ではあるが、例えば光学転写面61eに近い位置にある第1の配管部分P1では断面積の大きさが一定又は同一ではない。具体的には、図4(B)及び4(C)等に示すように、第1の配管部分P1は、熱媒体の流れを制限する阻止部材67を有しており、第2の配管部分P2よりも内径が細くなっている。阻止部材67は、着脱可能であり、第1の配管部分P1の断面積を阻止部材67の大きさに応じて所望の面積に調整することができる。これにより、成形金型40の温度を簡単に調整することができる。ここで、図4(B)は、図4(A)に示す領域ARの部分拡大斜視断面図である。図4(B)に示すように、阻止部材67は、第1の配管部分P1の横断面においてダム状に突起している。阻止部材67は、第1の配管部分P1の流路に垂直な方向(熱媒体の流れに垂直な方向)の断面において四角形状を有する。本実施形態において、阻止部材67は、環状に配置された第1流路FP1において対向する2か所に埋め込むように固定されている。阻止部材67は、第1流路FP1の断面積の約25%を塞ぐ程度の大きさを有する。型板60aには、阻止部材67を嵌め込む溝(不図示)が形成されている。阻止部材67は、この溝に圧入されて型板60aに取り付けられる。溝は、型板60aの温度調整用配管66aに沿った適所に形成することができ、阻止部材67の位置や数を適宜変更することができる。図3(A)等に示すように、本実施形態において、阻止部材67は、第1金型41の上方(C方向)にある天側と下方(D方向)にある地側との中間部分であって第1の配管部分P1に配置されている。阻止部材67の位置は、光学転写面61eの温度差によって決まる。阻止部材67を取り付ける前において、温度調整用配管66aの断面積は、略一定となっている。断面積が略一定な状態において、第1金型41を加熱すると、光学転写面61e間において、温度差が生じる傾向にある。第1の配管部分P1の位置は、阻止部材67を取り付ける前の各光学転写面61eの温度が相対的に低くなる部分となる。本実施形態のような円環構造の温度調整用配管66aでは、2つの注入口66c,66dの中間部分(CD方向に垂直な方向)が相対的に温度が低くなる傾向にある。よって、注入口66c,66dの中間部分を第1の配管部分P1として、阻止部材67が配置される。内径が相対的に細い第1の配管部分P1における熱媒体の流れは乱流となり、第2の配管部分P2における熱媒体の流れは層流となる。第1の配管部分P1における乱流の発生により、第1の配管部分P1の温度を効率的に上昇させることができ、温度が相対的に高かった第2の配管部分P2との温度差が解消する。
以下、温度調整用配管66a内の熱媒体の流れについて説明する。図3(E)において、模式的に第2流路FP2を第1流路FP1の外側に記載しているが、実際には対向している。図3(C)〜3(E)に示すように、熱媒体は、第1金型41の上方(C方向)にある天側(鉛直上方)の注入口66cと、下方(D方向)にある地側(鉛直下方)の注入口66dとから流入する。第1金型41の天側の注入口66cから流入した熱媒体は、第1流路FP1内を時計回りに流れて、第1金型41の地側の連結口66eを通過し、第2流路FP2に流入する(実線)。その後、熱媒体は、第2流路FP2内を時計回りに流れて、第1金型41の天側の出口66fから流出する(破線)。他方、第1金型41の地側の注入口66dから流入した熱媒体は、第1流路FP1内を時計回りに流れて、第1金型41の天側の連結口66gを通過し、第2流路FP2に流入する(一点鎖線)。その後、熱媒体は、第2流路FP2内を時計回りに流れて、第1金型41の地側の出口66hから流出する(二点鎖線)。
図2(A)に戻って、取付板64は、金属製の板状の部材であり、金型部分60を背後から支持している。取付板64は、金型部分60の周辺部63及び受板60bに設けたスプルー連結口61b,61cを延長するように接続されたスプルー連結口64bを有する。スプルー連結口64bの根元側には、射出装置16のノズル16dの先端部を接触させるスプルー口部65が形成されている。
第2金型42は、可動金型であり、内側すなわちパーティング面PS2側に配置される金型部分70と、外側すなわち図1の可動盤12側に配置される取付板74と、取付板74に埋め込むように形成されたエジェクター部材75とを備える。このうち、金型部分70は、複数の部分に分割された分割構造を有するものとなっている。金型部分70は、型板70aと受板70bとを有する。金型部分70において、型板70a及び受板70bはボルト等で互いに固定されている。
金型部分70のうち型板70aは、分割された部分として、型本体としてのコア部72と、型本体を囲む周辺部73とを有する。型板70aのうち周辺部73は、金属製の板状の部材であり、複数のコア部72を挿入する複数のコア保持口71aと、スプルー連結口61bに対向するコールドスラグ71bとを備える。各コア保持口71aには、コア部72が挿入されており、コア部72の先端面は、光学素子の光学機能部を形成するための光学転写面71eとなっている。周辺部73には、エジェクター部材75を構成するエジェクターピン75aを通すピン挿通口71gも形成されている。
受板70bは、金属製の板状の部材であり、型板70aと取付板74との間に配置され、型板70aを背後から支持している。受板70bは、エジェクター部材75を構成するエジェクターピン75aを通すピン挿通口71h,71iを備える。
金型部分70の内部には、第1金型41と同様に、成形時に成形金型40の温度を適切な温度に保つため、熱媒体を流通させる温度調整用配管76a、温度監視用の温度計(不図示)等が形成されている。温度調整用配管76a等は、金型温度調節機47に接続される。以下、金型部分70は、第1金型41の金型部分60と同様の構成であるため、適宜説明を省略する。
温度調整用配管76aは、型板70aと受板70bとの間に対向するように設けられた一対の溝の組み合わせによって形成されている。図3(B)に示すように、温度調整用配管76aは、複数の光学転写面71eを結ぶ閉じた線STの周辺に沿って光学転写面71eを囲むように配置されている。温度調整用配管76aは、第1金型41と第2金型42とが対向する面(図2(A)等に示すパーティング面PS2)から見て円環形状を有する。本実施形態の温度調整用配管76aは、第1金型41の温度調整用配管66aと同様に、分割二重型の流路となっている。具体的には、温度調整用配管76aは、隣接する表側配管HP1と奥側配管HP2とを連結口76e,76g(図3(F)等参照)を介して繋いだ2重構造となっている。つまり、温度調整用配管76aは、型板70a側の第1流路FP1に対応する表側配管HP1と、受板70b側の第2流路FP2に対応する奥側配管HP2とで構成されている。図3(B)に示すように、温度調整用配管76aは、第2金型42の型板70a側の上方及び下方であって連結口76e,76gに隣接して、熱媒体を流路内に流入させる注入口76c,76dをそれぞれ有している。また、温度調整用配管76aは、第2金型42の受板70b側の上方及び下方であって連結口76e,76gに隣接して、熱媒体を流路内から流出させる出口76f,76hをそれぞれ有している。注入口76c,76d及び出口76f,76hと、これらにそれぞれ隣接する連結口76e,76gとの間には、第1及び第2流路FP1,FP2内を隔てる隔壁WAが設けられている。このように隔壁WAによって第1及び第2流路FP1,FP2を2分することで、第1金型41又は金型部分60の場合と同様に、温度調整用配管76aには2つの循環路が形成される。
温度調整用配管76aは、全体としては一様な流路断面を有しているが、複数の光学転写面71eのうち成形時に温度が相対的に低くなる傾向にある部分に対応する第1の配管部分P1の断面積が、温度が相対的に高くなる傾向にある部分に対応する第2の配管部分P2の断面積よりも局所的に小さくなっている。具体的には、第1の配管部分P1は、熱媒体の流れを制限する阻止部材77を有しており、第2の配管部分P2よりも内径が細くなっている。本実施形態において、阻止部材77は、環状に配置された第1流路FP1において対向する2か所に埋め込むように固定されている。型板70aには、阻止部材77を嵌め込む溝(不図示)が形成されている。阻止部材77は、この溝に圧入されて型板70aに取り付けられる。図3(B)等に示すように、本実施形態において、阻止部材77は、第2金型42の上方(C方向)にある天側と下方(D方向)にある地側との中間部分の第1の配管部分P1に配置されている。第1の配管部分P1における乱流の発生により、第1の配管部分P1の温度を効率的に上昇させることができ、温度が相対的に高かった第2の配管部分P2との温度差が解消する。
以下、温度調整用配管76a内の熱媒体の流れについて説明する。図3(F)に示すように、熱媒体は、第2金型42の上方(C方向)にある天側(鉛直上方)の注入口76cと、下方(D方向)にある地側(鉛直下方)の注入口76dとから流入する。第2金型42の天側の注入口76cから流入した熱媒体は、第1流路FP1内を反時計回りに流れて、第2金型42の地側の連結口76eを通過し、第2流路FP2に流入する(実線)。その後、熱媒体は、第2流路FP2内を反時計回りに流れて、第2金型42の天側の出口76fから流出する(破線)。他方、第2金型42の地側の注入口76dから流入した熱媒体は、第1流路FP1内を反時計回りに流れて、第2金型42の天側の連結口76gを通過し、第2流路FP2に流入する(一点鎖線)。その後、熱媒体は、第2流路FP2内を反時計回りに流れて、第2金型42の地側の出口76hから流出する(二点鎖線)。
図2(A)に戻って、取付板74は、金属製の板状の部材であり、金型部分70を背後から支持している。取付板74は、エジェクター部材75を構成するエジェクターピン75a,75bを通すピン挿通口74g,74hを備える。
エジェクター部材75は、エジェクターピン75a,75bと、エジェクター板75dとを有する機械的な機構であり、図1のエジェクター駆動部45に駆動されて動作する。エジェクターピン75a,75bは、エジェクター板75dに連結されており、金型部分70のピン挿通口71g,71h,71i及び取付板74のピン挿通口74g,74h内で一括して進退移動させることができる。エジェクター部材75を前進状態とした場合、エジェクターピン75a,75bが前進し、このうち中央のエジェクターピン75aが金型部分70の周辺部73に設けたコールドスラグ71bの底部に突起し、他のエジェクターピン75bがコア部72を押してパーティング面PS2から突出させる。逆に、エジェクター部材75を後退状態とした場合、エジェクターピン75a,75bが後退し、このうち中央のエジェクターピン75aが金型部分70の周辺部73に設けたコールドスラグ71bの底部に引っ込み、エジェクターピン75bが引っ込んでコア部72の後退を許容する。なお、コア部72は、不図示のバネ等を付随させた構造を有しており、エジェクターピン75aから前進させる付勢力を受けなくなった場合、後退してコア保持口71aの奥に収納される。
なお、第1金型41と第2金型42とを型締めしたとき、第1金型41に組み込んだコア部62の光学転写面61eと、第2金型42に組み込んだコア部72の光学転写面71eとの間に光学素子を成形するためのキャビティCVが形成されている。第1金型41の金型部分60の型面に設けた型面部分61rと、第2金型42の金型部分70の型面に設けた型面部分71rとの間にランナー空間RUが形成される。ランナー空間RUは、図2(B)に示す流路空間FCの一部となっており、スプルー連結口61b(図2(A)参照)に連通している。
以下、図1等に示す成形装置100を用いた成形品MPすなわち光学素子の製造方法について説明する。まず、成形サイクルの前段階における初期状態において、成形金型40の温度分布を測定する。成形サイクルの前段階において、金型部分60,70内の温度調整用配管66a,76aの断面積は、調整されておらず、略一定になっている。この状態で、加熱した成形金型40の温度を測定し、光学転写面61e,71e間の温度差を測定する。得られた温度から光学転写面61e,71e間の温度差を算出し、温度が相対的に低くなる傾向にある部分に対応する配管部分を第1の配管部分P1とする。この第1の配管部分P1に阻止部材67,77を取り付け、第1の配管部分P1の断面積を初期状態よりも小さくする(温度調整工程)。本実施形態では、温度が比較的低くなる横方向(具体的には、天側と地側の中間部分)の断面積を小さくする。その後、成形サイクルの本段階において、金型温度調節機47により、両金型41,42を成形に適する温度まで加熱する。第1の配管部分P1の断面積を狭めることにより、両金型41,42を加熱すると、温度調整用配管66a,76aにおいて、熱の抵抗や圧力(乱流)が生じ、第1の配管部分P1及びその周辺の温度が上昇する。結果として、金型部分60,70内の温度調整用配管66a,76aの温度分布が均一になる。
成形金型40の温度が均一かつ安定した後、開閉駆動装置15を動作させ、可動盤12を前進させて型閉じを開始させる(型閉じ工程)。開閉駆動装置15の閉動作を継続することにより、図2(B)に示すように、第1金型41と第2金型42とを必要な圧力で締め付ける型締めが行われる。この状態で、射出成形機10において、射出装置16を動作させて、型締めされた第1金型41と第2金型42との間のキャビティCV中に、必要な圧力で溶融樹脂を注入する射出を行わせる(射出工程)。そして、射出成形機10は、キャビティCV中の樹脂圧を保つ。なお、溶融樹脂をキャビティCVに導入した後は、キャビティCV中の溶融樹脂が放熱によって徐々に冷却されるので、かかる冷却にともなって溶融樹脂が固化し成形が完了するのを待つ。次に、射出成形機10において、開閉駆動装置15を動作させて、可動盤12を後退させる型開きが行われる(型開き工程)。これに伴って、第2金型42が後退し、第1金型41と第2金型42とが離間する。次に、射出成形機10において、エジェクター駆動部45を動作させ、エジェクターピン75a,75b等の前進によって、光学素子を含む成形品MPの突き出しを行わせる。この結果、成形品MPのうち光学素子は、第1金型41側に押し出されて第2金型42から離型される(離型工程)。最後に、取出装置20を動作させて、突き出された成形品MPの適所をハンド21で把持して外部に搬出する(取出し工程)。
以上説明した光学素子用の成形金型では、温度調整用配管66a,76aの断面積が、断面積が略一定とした場合における成形時の各光学転写面61e,71eの温度分布に応じて、かかる温度分布を補償するように異なることにより、光学転写面61e,71e間の温度差を低減することができる。例えば、複数の光学転写面61e,71eのうち成形時に温度が相対的に低くなる傾向にある部分に対応する第1の配管部分P1の断面積を小さくすることで、小さくしない場合よりも第1の配管部分P1の温度が高くなる。これにより、第1及び第2金型41,42の光学転写面61e,71e間で形成されるキャビティCV間の温度差を解消することができる。そのため、多数個取りの光学素子の製造においても高精度な光学素子を成形することができる。また、温度調整用配管66a,76aの断面積を調整することにより比較的簡易に成形金型の温度調整をすることができるため、別途ヒーターや追加の配管を設ける必要がない。
なお、キャビティCV間に温度差がある場合、光学性能の差(例えば1℃≒ニュートン環(干渉縞)1本)が生じて、高精度な光学素子の多数個取りが難しくなる。
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態の光学素子用の成形金型について説明する。第2実施形態の光学素子用の成形金型は、第1実施形態の光学素子用の成形金型を変形したものであり、特に説明しない事項は、第1実施形態の光学素子用の成形金型と同様である。
図5(A)に示すように、本実施形態において、温度調整用配管66aには、第1金型41の上方にある天側と下側にある地側との中間部分において第1及び第2流路FP1,FP2内を隔てる隔壁WAが設けられている。また、この隔壁WAを挟んだ上下に、第1流路FP1と第2流路FP2とを連結する連結口66e,66gが設けられている。これにより、熱媒体は、天側と地側とですなわち鉛直方向の上下で、温度調整用配管66a内の半分を分岐して流れる。本実施形態のような分岐構造の温度調整用配管66aでは、2つの連結口66e間の中間部分である注入口66cの周囲と、2つの連結口66g間の中間部分である注入口66dの周囲とが相対的に温度が低くなる傾向にある。よって、阻止部材67は、熱媒体の注入口66c,66dに対応する第1の配管部分P1に配置されて、上下(CD方向)の頂点にある配管部分の断面積を小さくして、第1の配管部分P1の温度を上げる。
以下、温度調整用配管66a内の熱媒体の流れについて説明する。天側の注入口66cから流入した熱媒体は、図5(C)〜5(E)に示すように、第1流路FP1内を2方向に分かれて流れ、連結口66eから第2流路FP2に流入する(実線)。その後、第2流路FP2に流入した熱媒体は、天側に戻るように流れ、注入口66cの反対側に設けられた出口66fから流出する(破線)。他方、地側の注入口66dから流入した熱媒体についても同様に、第1流路FP1内を2方向に分かれて流れ、連結口66gから第2流路FP2に流入する(一点鎖線)。その後、第2流路FP2に流入した熱媒体は、地側に戻るように流れ、注入口66dの反対側に設けられた出口66hから流出する(二点鎖線)。
なお、第2金型42内の温度調整用配管76aについても、図5(B)及び5(F)に示すように、第1金型41内の温度調整用配管66aと同様の構造及び熱媒体の流れであり、説明を省略する。
(実施例)
以下、具体的な実施例について説明する。
実施例として、図3(A)等に示す温度調整用配管66a,76a(円環構造)を用いた。本実施例において、温度調整用配管66a,76aの温度が相対的に低くなる第1の配管部分P1には、図4(B)等に示すような四角形状の阻止部材67,77を設けた。阻止部材67,77は、注入口66c,66d間の中間部分の2か所に配置した。阻止部材67,77は、第1流路FP1の断面積の約25%を塞ぐ程度の大きさとなっている。温度の測定は、分解能の高い水晶温度センサーを用いて行った。得られた温度から光学転写面61e,71e間の温度差を算出した。第1金型41において、温度測定位置は、図6(A)に示すように、時計回りに配置した(1)〜(8)の測定位置のうち、太線で示す天側の測定位置(7)、地側の測定位置(4)、及び横方向の測定位置(2)、(5)である。また、第2金型42において、温度測定位置は、図6(B)に示すように、反時計回りに配置した(1)〜(8)の測定位置のうち、太線で示す天側の測定位置(7)、地側の測定位置(4)、及び横方向の測定位置(2)、(5)である。図中の温度差は、天側の測定位置(7)を基準として算出した。
比較例として、阻止部材67,77が設けられていない図3(A)等に示す温度調整用配管(円環構造)、及び図5(A)等に示す温度調整用配管(分岐構造)を用いた。比較例における測定方法及び測定位置は、実施例と同様である。
図7(A)及び図8(A)は、第1金型41における実施例及び比較例の温度測定位置と温度差との関係を説明する図である。図7(A)において、実線L1は、実施例の阻止部材67を有する温度調整用配管66a(円環構造)を示し、破線L2は、比較例の阻止部材を有しない温度調整用配管(円環構造)を示す。図8(A)において、一点鎖線L3は、比較例の阻止部材を有しない温度調整用配管(分岐構造)を示す。図7(A)に示すように、実施例の各光学転写面61e間の温度差は、いずれの測定位置間においても0.3℃以下(点線で囲った範囲)であり、温度差が極めて小さい。他方、比較例の温度差は、特に、阻止部材を有しない温度調整用配管(円環構造)では、最大1.22℃になる場合もあり、温度差が大きくなった。温度差が1.22℃の場合、多数個同時成形で得られる光学素子の光学性能にばらつきが生じるが、温度調整用配管66aの温度が低い光学転写面61e(本実施例の場合、測定位置(2)及び(5)の光学転写面)付近の配管部分に阻止部材67を設けることにより温度差が0.3℃以下と小さくなり、光学素子の光学性能を均一にする効果があることがわかる。
図7(B)及び図8(B)は、第2金型42における実施例及び比較例の温度測定位置と温度差との関係を説明する図である。第2金型42においても第1金型41と同様に、比較例、特に阻止部材を有しない温度調整用配管(円環構造)の温度差は、最大0.79℃であったが、阻止部材77を設けることで実施例の温度差が0.3℃以下と小さくなった。
なお、図8(B)に示すように、図5(A)に示す分岐構造の温度調整用配管においても、温度差が最大0.64℃となる部分があるが、この場合、温度が低い光学転写面71e(本比較例の場合、測定位置(4)及び(7)の光学転写面)付近の配管部分に阻止部材を設ければ、温度差を解消することができる。
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態において、第1金型41及び第2金型42で構成される成形金型に設けるキャビティCVの形状は、様々な形状とすることができる。すなわち、光学転写面61e,71e等によって形成されるキャビティCVの形状は、単なる例示であり、各種の光学素子の用途等に応じて適宜変更することができる。
上記実施形態において、温度調整用配管66a,76aに設ける阻止部材67,77の位置、数、面積、厚さ等は適宜変更することができる。
上記実施形態において、阻止部材67,77は、第1の配管部分P1の横断面においてダム状に突起するものとしたが、環状に突起するものとしてもよい。
上記実施形態において、温度調整用配管66a,76aに設けた阻止部材67,77は、熱媒体の流れを乱すものであればよい。また、阻止部材の表面が粗く加工されていてもよい。
上記実施形態において、熱媒体の注入口66c,66dの数は、適宜変更することができる。
上記実施形態において、温度調整用配管66a,76aに隔壁WAを設けたが、型板60a,70a及び受板60b,70bに配管用の溝を形成しないことで隔壁WAの代わりとしてもよい。
上記実施形態において、温度調整用配管66a,76aは、線STの周辺に沿って、キャビティCVに近い位置に配置していれば、第1金型41と第2金型42とが対向する面(パーティング面PS1,PS2)から見て円環形状でなくてもよい。
上記実施形態において、温度調整用配管66a,76aを第1及び第2金型41,42にそれぞれ設けたが、第1及び第2金型41,42のいずれか一方の金型にのみ設けてもよい。
上記実施形態において、キャビティCVに充填する樹脂は、熱可塑性樹脂に限らず、熱硬化性樹脂その他の各種材料とすることができる。
上記実施形態において、射出成形機10は、横型に限らず、第1金型41と第2金型42とを上下に配置する竪型の成形機とすることができる。