JP2000314047A - 凹凸感のある織物及びその製造方法 - Google Patents

凹凸感のある織物及びその製造方法

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JP2000314047A
JP2000314047A JP11119403A JP11940399A JP2000314047A JP 2000314047 A JP2000314047 A JP 2000314047A JP 11119403 A JP11119403 A JP 11119403A JP 11940399 A JP11940399 A JP 11940399A JP 2000314047 A JP2000314047 A JP 2000314047A
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Mitsuaki Kitada
充秋 北田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】従来の高速織機を使うことができ、緯糸にコイ
ル状捲縮発現能をもつコンジュゲート糸を用い、熱水処
理を施すことにより、染色加工の特殊技術を付加するこ
となく、織物表裏に立体的な凹凸柄を有する織物及びそ
の織物を安価に製造する方法を提供する。 【解決手段】緯糸が捲縮発現能を有するコンジュゲート
糸からなり、該コンジュゲート糸の捲縮発現により織物
表裏に立体的な凹凸柄を有することを特徴とする織物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コンジュゲー糸を
緯糸に配し、緯糸の収縮及び特性を利用して織物表面に
ジャガード風の凹凸柄を安価に表現した織物及びその製
造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、織物表面に柄を表現する手法
として広く知られているのが特殊織機(タペット、ドビ
ー、ジャガード織機など)を使い、開口装置を機械的に
操作して複雑な柄を表現するのが一般的である。また、
染色加工面からは代表的なプリント加工を始め、エンボ
ス加工、オパール加工など、目的、織物品種、最終用途
などに応じて使用されている。中でも、織物表裏に梨地
や楊柳調の柄を付加する手法としてエンボス加工が多様
されている。特に、合成繊維は熱可塑性特性を有してお
り、この特性を活かした技術と言える。
【0003】しかしながら、前述の特殊織機においては
高速運転に限界があり、必然的にWJL、AJL織機と
比較すると生産性が劣り、一方、染色加工面から開発さ
れたエンボス加工、オパール加工などは生産技術が確立
され、品質的にも安定したものであるが、通常の染色工
程と比較してコストアップとなることは避けられない。
また、適用素材の汎用面から制約を受けるなどの欠点が
ある。
【0004】一方、近年衣服の着用快適性をを求めるニ
ーズの点から、布帛に適度なストレッチ性を付加するこ
とが一般化している。その観点から前述の従来技術で
は、必要とするストレッチ性を得ることは難しいのが現
状である。
【0005】また、従来より緯糸に強撚の片撚(S又は
Z方向)を使用した楊柳織物が表裏凹凸柄として良く知
られているが、凹凸柄が画一的な縦縞調になり、ジャガ
ード調の柄表現は困難であった。さらに、織編物に立体
的で幾何学的な凹凸感を付与する後加工技術としてプリ
ーツ加工が上げられる。プリーツ加工はストレッチ性に
富んだ布帛を製造できるが、プリーツ加工技術によるコ
ストアップが障害になっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上記従
来の技術的発想から脱却し、上記従来技術の問題点を解
決するため鋭意検討した結果、本発明に到達したもので
ある。
【0007】本発明の目的は、従来の高速織機を使うこ
とができ、緯糸にコイル状捲縮発現能をもつコンジュゲ
ート糸を用い、熱水処理を施すことにより、染色加工の
特殊技術を付加することなく、織物表裏に立体的な凹凸
柄を有する織物及びその織物を安価に製造する方法を提
供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の目的を
達成するため以下の構成を採用する。すなわち、 (1)緯糸が捲縮発現能を有するコンジュゲート糸から
なり、該コンジュゲート糸の捲縮発現により織物表裏に
立体的な凹凸柄を有することを特徴とする織物。
【0009】(2)前記捲縮発現能を有するコンジュゲ
ート糸が、沸水処理を施すことによりけん縮及びトルク
を発現するものであることを特徴とする前記(1)に記
載の織物。
【0010】(3)前記コンジュゲート糸が、互いに熱
収縮特性の異なる少なくとも2成分のポリエステル重合
体が並列的あるいは芯鞘的に接合されてなるものである
ことを特徴とする前記(1)または(2)に記載の織
物。
【0011】(4)前記熱収縮性の異なる少なくとも2
成分のポリエステル重合体が、、低粘度ポリエステル
と、高粘度ポリエステル成分からなるものであることを
特徴とする前記(3)に記載の織物。
【0012】(5)前記捲縮発現能を有するコンジュゲ
ート糸の収縮応力が、0.265cN/dtex以上で
あることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに
記載の織物。
【0013】(6)前記立体的な凹凸柄が、織物表面の
凸部が織物裏面から見ると凹部を形成し、織物表面の凹
部が、織物裏面から見ると凸部を形成した状態になって
いることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに
記載の織物。
【0014】(7)緯方向に5%以上のストレッチ率を
有することを特徴とする前記(1〜6のいずれかに記載
の織物。
【0015】(8)緯糸に捲縮発現能を有するコンジュ
ゲート糸を使用した織物に80℃以上の熱水処理を施
し、緯方向のコイル状の捲縮発現力により経方向にラン
ダムで立体的な凹凸柄を織物表裏に表現することを特徴
とする織物の製造方法。
【0016】(9)前記(8)において、熱水処理を施
した後、120℃以上で熱セットを施すことを特徴とす
る織物の製造方法。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明は、熱水処理によるコイル
状捲縮発現能を有するコンジュゲート糸を織物の緯糸に
用い、熱水処理後にジャガード風の凹凸柄を織物表裏に
発現させ、その形態及びストレッチ性を製品まで維持す
ることを特徴とするものである。
【0018】本発明は、タテ方向に幾何学的模様がラン
ダムで立体的に柄を構成した、ジャガード風の凹凸柄を
織物表裏に発現させるものである。
【0019】図1は本発明に係るジャガード風の凹凸柄
の織物表面の繊維の形状の一例を示す織物表面写真であ
る。
【0020】図1の織物表面のイ部が凸部をロ部が凹部
を形成し、逆に、織物裏面から見るとイ部が凹部をロ部
が凸部を形成する状態になる。図2はあるヨコ断面の織
物表裏の凹凸状態のモデルを示す。このような明確な形
態は、実質的に熱水処理後の状態が最も顕著であり、横
方向に伸長されると次第に平面的になり、柄としての効
果は残るが、凹凸感は消滅する方向にある。また、凹凸
柄の模様、大きさ、凹凸高さなどは、織物組織、密度、
経糸の種類(生糸、複合糸、撚糸有無、収縮特性の大小
など)、コンジュゲート糸の特性(コイル状の捲縮発現
能、熱水収縮性等)により変化するので、展開用途に応
じて、風合い面を加味して広範囲に選択できるものであ
る。
【0021】凹凸柄発生の条件としては緯糸にコンジュ
ゲート糸を用いることである。これは、コンジュゲート
糸の有するコイル状の捲縮発現による布帛収縮により経
糸が不規則な隆起現象を発揮して織物表裏に立体的、か
つジャガード風の凹凸柄を形成されるものと推察され
る。一方、従来の楊柳調織物は緯糸に用いる強撚糸の解
撚トルクにより、経糸を部分的に押上げ凹凸感を発現さ
せている。このように、織物表面に凹凸を作りだす緯糸
の力が、本発明はコイル状捲縮発現であり、一方、楊柳
織物は強撚糸の解撚トルクである点が大きな違いであ
る。
【0022】次に本発明の緯糸に用いるコンジュゲート
糸は、たとえば、互いに熱収縮特性の異なる少なくとも
2成分のポリエステル重合体が並列的あるいは芯・鞘的
に接合したコンジュゲート糸を使用する。このコンジュ
ゲート糸は、仮撚り加工やその他の糸加工によってけん
縮構造を付与されたものではなく、熱収縮特性差による
自己けん縮及びトルク発現能を有する。換言すれば、本
発明のポリエステルからなるけん縮性コンジュゲート糸
は、熱収縮特性差による自己けん縮発現力を有し、この
潜在けん縮発現能力を有して、沸水処理を施すことによ
って、けん縮及びトルクを発現するものである。
【0023】本発明において用いられるコンジュゲート
糸は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートか
らなるポリエステルマルチフィラメント糸を対象とし、
通常熱収縮特性を異にする2種類のポリエステル重合体
を使用する。この熱収縮性を異にするポリエステル重合
体としては、ポリエステルホモポリマーで重合度を異に
するもの、テレフタール酸成分および/またはエチレン
グリコール成分以外の第3成分を共重合させたもの、他
のポリマーをブレンドしたものであってもよい。
【0024】具体的に、本発明で用いられる熱収縮性の
異なるポリエステル重合体としては、ポリエチレンテレ
フタレート単独またはエチレンテレフタレート単位80
モル%以上を含むコポリエステルが好ましい。コポリエ
ステルの共重合成分としては、イソフタル酸、金属スル
ホネート基を有するイソフタール酸、ビスフェノール
類、ネオペンチルグリコールあるいは1、6−シクロヘ
キサンジオールなどの成分が使用可能である。また、ポ
リエステル中に、艶消し剤、紫外線吸収剤、染色性改良
成分、および顔料など他の改良剤を配合することができ
る。
【0025】本発明のコンジュゲート糸は、弛緩熱処理
によって螺旋状けん縮を発現する特性を有することが重
要である。そして、このような特性を有するコンジュゲ
ート糸を得るには、ポリエステルポリマーの特性、紡
糸、延伸条件等が重要である。
【0026】熱収縮性の異なる2成分のポリエステル重
合体としては、一方を低粘度ポリエステルとし、他方を
高粘度成分とするものが好ましく使用される。ホモポリ
エステルの場合、上記低粘度ポリエステル成分の極限粘
度は0.35〜0.55の範囲、高粘度ポリエステル成
分の極限粘度は0.65〜0.85の範囲にすることが
好ましい。低粘度ポリエステル成分の極限粘度が0.3
5未満であると溶融粘度が低くなるため製糸が難しくな
る。また、低粘度ポリエステル成分の極限粘度が0.5
5を超えるとコンジュゲート糸の捲縮発現力が乏しくな
り、コイル状けん縮の発現能力が低下する。また、高粘
度ポリエステル成分の極限粘度が0.85を超えると溶
融粘度が高くなるため、紡糸、延伸が難しくなる。ま
た、高粘度ポリエステル成分の極限粘度が0.65未満
であるとけん縮発現力が乏しくなる傾向を示す。
【0027】低粘度ポリエステル成分と高粘度ポリエス
テル両者間の極限粘度成分差は0.20〜0.40の範
囲が好ましい。ただし、一方に共重合ポリエステル成分
を使用する場合は、両者成分の極限粘度差はさらに接近
させることが可能である。
【0028】ここで、極限粘度[η]は、温度25℃に
おいてオルソクロロフェノール溶液として求めたもので
ある。
【0029】ここで用いられるコンジュゲート糸につい
ては、2種類のポリエステル重合体を紡糸するに当り、
低粘度ポリエステル成分と高粘度ポリエステル成分につ
いて好適な複合比がある。すなわち、低粘度ポリエステ
ル成分と高粘度ポリエステル成分の複合比は、重量比で
35〜65:65〜35が好ましく、40〜60:60
〜40がさらに好ましい。
【0030】また、コンジュゲート糸の複合形態は、2
成分を並列的あるいは芯・鞘的配置したいずれの形態で
もよいが、並列的形態の方が潜在けん縮の発現力(コイ
ル径が大きく、発現けん縮数が多い)が高いので好まし
い。
【0031】紡糸された未延伸糸、半延伸糸の延伸は、
公知の延伸装置で延伸することが可能であり、未延伸
糸、半延伸糸の強伸度特性に対して得られる延伸糸の強
伸度レベル、毛羽の発生のない条件で大きい収縮応力が
得られる条件に設定することが望ましい。収縮応力の大
きい方が、コンジュゲート糸のけん縮発現能を高めるこ
とができ、それによって、後工程における織編物のけん
縮発現による収縮が促進されジャガード風の凹凸柄が得
られ易い。
【0032】延伸糸として、コンジュゲート糸を構成す
るマルチフィラメントの単繊維繊度は、1.1〜15d
texが好ましく、より好ましくは2〜10dtexで
ある。1.1dtexより細い領域では現状の技術水準
では製糸が難しい点もあるが、螺旋状コイル形成に限界
があり、また15dtexより大きいと、螺旋構造のた
め、衣料用途ではストレート構造よりは柔らかいが、風
合いが硬くなる傾向を示す。
【0033】また、コンジュゲート糸の収縮応力は、高
い方が潜在けん縮の発現を高めるために好ましい。その
ため、本発明では、収縮応力は0.265cN/dte
x以上とすることが好ましい。収縮応力(TS)は下記
により求めたものである。<収縮応力(TS)> 常温から250℃近辺まで加熱したときの収縮応力変化
をUゲージ(歪み計)で検出し、X,Yレコーダーに記
録する。試長:100mm、昇温速度2.5℃/se
c、初荷重:(0.0882cN/dtex×2)gで
昇温する。チャートから最大応力(g)とピーク温度
(℃)を読みとる。(cNはセンチニュートン)また、
本発明のコンジュゲート糸の伸度特性としては、小さい
方がよく、好ましくは35%以下、より好ましくは30
%以下、さらに好ましくは27%である。伸度と収縮応
力は相関関係にあり、収縮応力を大きくするには延伸時
の温度を低くし延伸倍率を高くして、収縮応力を大き
く、そして伸度を小さくする。
【0034】本発明の緯糸に用いるコンジュゲート糸
は、実質的にノントルク糸の態様をしていることが好ま
しい。換言するとコンジュゲート糸には追撚を施すこと
なく使用するのが好ましい。これは、実撚を付与するこ
とにより、原糸(元糸)の捲縮発現能の低下、すなわち
ヨコ方向の布帛収縮が低下する起因になり、熱水処理後
の織物表裏の凹凸感発現がシボ状の方向になり、ジャガ
ード風の凹凸柄からは遠ざかるものになるからである。
【0035】本発明の織物の特徴は織物表裏にジャガー
ド風の凹凸柄を有するとともに、緯方向に5%以上のス
トレッチ率を合わせ有することにある。ヨコ方向のスト
レッチ率が5%未満では着用時の伸縮性が不十分で、着
用快適感が損なわれる。好ましくは10%以上である。
ヨコ方向のストレッチ率は、染色加工工程の中間セッ
ト、仕上セットにおけるヨコ方向の幅出し率の設定が重
要な要素になる。ストレッチ率(%)は以下の方法で求
めたものである。
【0036】 ストレッチ率(%)={(L1−L)/L}×100 ここで、L :つかみ間隔(mm) L1:1.8kgまで引延した時のつかみ間隔(mm) 次に、本発明の製造方法について説明する。
【0037】織物を構成する経糸には、綿、ウール、麻
等の天然繊維や、ポリエステル、ポリアミド、アクリ
ル、ポリプロピレン等の合成繊維、レーヨン、トリアセ
テート等の半合性繊維など素材の種類、スパンやフィラ
メント、加工糸や生糸、それらを撚糸したもの、或いは
仮撚、混繊、合撚等の複合形態をなすものなど、特に規
制されるものではない。市場の要求ニーズに応じて適宜
選択できる。また、経糸の繊度は、特に規制されるもの
ではなく、例えば、22dtexのモノフィラメントを
使った薄地から300dtexの加工糸を使った厚地ま
で凹凸柄を表現することができる。
【0038】織物表裏のジャガード風の凹凸柄表現は織
物組織、経糸密度、経糸収縮特性との関係が深い。織物
組織は熱水処理によるヨコ方向収縮が起こりやすい組
織、換言すれば織物交錯点を少なくした組織が好まし
い。具体的には、平組織よりもヨコ糸浮きの多いツイ
ル、朱子組織である。また、経糸密度は通常の設定範囲
であれば問題ない。経糸収縮特性は、沸水収縮率が小さ
い方が緯糸の収縮挙動への影響が小さくなり、良好な凹
凸感が得られる。逆に、沸水収縮率が大きいと緯糸の収
縮は束縛され目標とする凹凸感が得られなくなる。その
意味で、経糸の沸水収縮率は20%以下が好ましく、よ
り好ましくは15%以下である。
【0039】使用される織機は、経糸糸種、織物規格等
に対応して選択され、本発明の緯糸に用いるコンジュゲ
ート糸に影響されるものではない。すなわち、WJLや
AJL等の高速織機からフライ織機の低速織機まで使用
できる。
【0040】次に、布帛の熱水処理は緯糸のコンジュゲ
ート糸のコイル状の捲縮発現が十分に行われるリラック
ス方法が好ましい。その観点から、経糸に張力のかから
ないように設計された液流リラックスM/Cでの加工が
好ましい。また、リラックス温度は、コンジュゲートコ
イル状糸の捲縮発現が十分促進される上から80℃以上
が好ましい。80℃未満では、捲縮発現が不足しヨコ横
方向の収縮が十分発揮されず満足する凹凸感が得られな
い。さらに、布帛のリラックス投入も、40℃程度の低
温より始め、除々昇温して80℃以上に設定し、同時に
布帛に外力を施し収縮を促進する方法が好ましい。
【0041】リラックス後の布帛は適度なストレッチ性
と表面の凹凸感を満足する範囲に幅出し率を設定し、1
20℃以上の熱セットを行なう。120℃未満では、凹
凸柄のセット性が不十分で製品品質面の、特に洗濯収
縮、乾熱収縮等が基準範囲を超える問題が出てくる。好
ましは、130℃以上、より好ましくは150℃以上で
ある。次に、布帛は必要に応じてアルカリ処理を行な
い、その後、染色、仕上セットを行ない製品になる。
【0042】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて説明する。 (実施例1)経糸にポリエステルマルチフィラメント糸
83dtex−24フィラメントのS150T/mを用
い3/1ツイル組織の経糸密度92本/2.54cmに
設定した。緯糸のコンジュゲートマルチ糸は、極限粘度
が0.40のポリエチレンテレフタレート100%から
なる低粘度成分と、極限粘度が0.75のポリエチレン
テレフタレートからなる高粘度成分とを、重量複合比5
0:50で並列型に貼り合わせたコンジュゲートマルチ
フィラメント未延伸糸を紡糸した後、通常の延伸機によ
り延伸を行ない、100dtex−24フィラメントを
得て、緯糸密度105本/2.54cmに設定し、AJ
L織機で製織した。
【0043】このマルチフィラメント糸の繊維特性を、
JIS L1023「化学繊維フィラメント糸試験方
法」およびJIS L1096「合成繊維フィラメント
かさ高加工糸試験方法」に基づいて測定した結果、繊度
110.6dtex、強度3.26cN/dtex、沸
水収縮率4.0%、収縮応力:0.357cN/dte
xであった。
【0044】得られた生機を次のように染色加工した。
即ち、生機を40℃に投入し、液流リラックス方式によ
る110℃でリラックス熱水処理した。このときの幅収
縮率(生機―リラックス後/生機)は68%で織物表面
の凹凸感は良好であった。
【0045】次に、乾熱190℃、幅出し率(セット幅
―リラックス幅/リラックス幅)94%でピンテンター
方式により中間熱セットし、10%のアルカリ減量をし
て、130℃で染色した後、乾熱160℃、有幅でピン
テンター方式で仕上セットし、仕上密度142×114
本/2.54cmの製品に上がった。得られた仕上品は
織物表裏にジャガード風の柄と立体的な凹凸感を合わせ
持つ、これまでにない表面感をしたものであった。ま
た、織物のヨコ方向のストレッチ率も45%で、非常に
ストレッチ性に富んだ織物になりカジュアル用途のパン
ツ、ブラウス等に最適な商品になった。 (実施例2、実施例3)実施例1と同様の経糸、緯糸を
使い実施例2は組織を2/2ツイルで生機密度を92×
100本/2.54cm、実施例3は組織を平にして生
機密度を100×74本/2.54cmで製織し、実施
例1と同様の染色加工方法・工程を施し製品にした。得
られた実施例2の織物はジャガード風の凹凸柄を持ち、
ストレッチ率38%の織物になった。また、実施例3
は、実施例1、2のツイル組織とは違ったジャガード風
の柄を呈した表面感になったが凹凸感はやや浅いものに
なった。なお、ヨコ方向のストレッチ率は22%であっ
た。 (実施例4、実施例5)実施例1と同様の組織、緯糸を
使い実施例4は、経糸に通常のDTY太物ポリエステル
加工糸167/2dtex−48フィラメント糸にS3
00T/mの甘ヨリを施した糸を配し、生機密度を45
×50本/2.54cmの規格で製織した。また、実施
例5は経糸にポリエステル22dtex−1のモノフィ
ラメント糸を配し、生機密度145×130本/2.5
4cmの規格で製織した。次に、実施例4、5の生機を
実施例1と同様の染色加工方法・工程を施し製品にし
た。
【0046】得られた実施例4の製品は非常に肉感に富
み、且つジャガード風の凹凸柄を持ち、ストレッチ率4
0%に富んだ織物になった。また、実施例5の製品は非
常薄く、軽い上にジャガード風の凹凸柄を持ち、ストレ
ッチ率65%に富んだ織物で、ヤング層のカジュアルウ
エアーの重着として適したものになった。 (比較例1)実施例1の経糸、組織を用いて、緯糸に通
常のポリエステル延伸糸167dtex−48フィラメ
ント糸に、追撚撚り数としてS1600T/mを施し、
生機密度92×100本/2.54cmで製織した。得
られた織物を通常のポリエステル楊柳織物の染色加工方
法・工程で加工し製品にした。得られた織物は、従来の
楊柳調の表面感、すなわち、タテ縞の細幅凹凸を呈し、
本発明の特徴とするジャガード風の柄を持つ凹凸感とは
異なるものになった。また、ヨコ方向のストレッチ率が
3.5%と小さく機能性に劣るものであった。(比較例
2、3)実施例1の経糸及び組織を用い、比較例2は緯
糸にポリエステル高収縮糸111dtex−48フィラ
メントを配し、実施例1と同様の規格で製織し、実施例
1と同様の染色加工方法・工程で加工し製品にした。得
られた製品は、織物表面に凹凸感がなく、ストレッチ性
の全くない織物であった。
【0047】また、比較例3は緯糸にポリエステル延伸
糸の1ヒーター仮撚加工糸111dtex−24フィラ
メントを配し、実施例1と同様の規格で製織し、実施例
1と同様の染色加工方法・工程で加工し製品にした。得
られた製品は、ストレッチ性は有しているが、織物表面
に部分的なシワ発生があるのみであった。 (比較例4)実施例1の経糸及び組織を用い、実施例1
の緯糸に追撚S300T/mを施し実施例1と同様の規
格で製織し、実施例1と同様の染色加工方法・工程で加
工し製品にした。得られた製品は、織物表面に細かいシ
ボ状の凹凸感が発生し、本発明の狙いとするジャガード
風の柄を持ち、凹凸感のある織物とは異なる織物表面感
になった。 (比較例5)経糸に高収縮糸の83dtex−24フィ
ラメントを配し、実施例1と同様の織物規格で製織し、
実施例1と同様の染色仕上法、工程で加工し製品にし
た。得られた織物は織物表裏の凹凸感が浅く、柄が不明
確のもであった。
【0048】以上の結果を表1にまとめて示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【発明の効果】本発明によれば、従来から使用している
ポリエステルフィラメント織物をはじめとする各種の経
糸に、緯糸としてコンジュゲートマルチフィラメント糸
を使用し、熱水処理を施すことにより織物表裏にジャガ
ード風の柄をした凹凸感のある表面感が得られる。ま
た、織物はヨコ方向のストレッチ性にも富み、コスト的
にも安価で生産でき、カジュアル用途に最適な商品にな
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るジャガード風の凹凸柄の織物表面
の繊維の形状の一例を示す織物表面写真である。
【図2】本発明に係るジャガード風の凹凸柄のヨコ断面
の一例を示すモデル図である。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】緯糸が捲縮発現能を有するコンジュゲート
    糸からなり、該コンジュゲート糸の捲縮発現により織物
    表裏に立体的な凹凸柄を有することを特徴とする織物。
  2. 【請求項2】前記捲縮発現能を有するコンジュゲート糸
    が、沸水処理を施すことによりけん縮及びトルクを発現
    するものであることを特徴とする請求項1に記載の織
    物。
  3. 【請求項3】前記コンジュゲート糸が、互いに熱収縮特
    性の異なる少なくとも2成分のポリエステル重合体が並
    列的あるいは芯鞘的に接合されてなるものであることを
    特徴とする請求項1または2に記載の織物。
  4. 【請求項4】前記熱収縮性の異なる少なくとも2成分の
    ポリエステル重合体が、、低粘度ポリエステルと、高粘
    度ポリエステル成分からなるものであることを特徴とす
    る請求項3に記載の織物。
  5. 【請求項5】前記捲縮発現能を有するコンジュゲート糸
    の収縮応力が、0.265cN/dtex以上であるこ
    とを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の織物。
  6. 【請求項6】前記立体的な凹凸柄が、織物表面の凸部が
    織物裏面から見ると凹部を形成し、織物表面の凹部が、
    織物裏面から見ると凸部を形成した状態になっているこ
    とを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の織物。
  7. 【請求項7】緯方向に5%以上のストレッチ率を有する
    ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の織
    物。
  8. 【請求項8】緯糸に捲縮発現能を有するコンジュゲート
    糸を使用した織物に80℃以上の熱水処理を施し、緯方
    向のコイル状の捲縮発現力により経方向にランダムで立
    体的な凹凸柄を織物表裏に表現することを特徴とする織
    物の製造方法。
  9. 【請求項9】請求項8において、熱水処理を施した後、
    120℃以上で熱セットを施すことを特徴とする織物の
    製造方法。
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