JP2000266282A - 積層断熱材およびその製造方法 - Google Patents
積層断熱材およびその製造方法Info
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Abstract
わけ極低温領域でも柔軟であり、強い電磁波や放射線に
対する耐性が優れており、断熱性の時間的変化が極めて
少ないなどの性能を有する積層断熱材およびその簡便な
製造方法を提供する。 【解決手段】熱可塑性液晶ポリマーを溶融成形して得た
熱可塑性液晶ポリマー繊維と熱可塑性液晶ポリマーフィ
ルムを用いることにより、極低温領域で柔軟であり、強
い電磁波や放射線に対する耐性が優れ、さらに、断熱材
中の金属層との熱膨張係数を制御することができ接着界
面での歪みの発生を防止できるので、断熱性の時間的変
化が極めて少ない積層断熱材が提供できる。また、熱可
塑性液晶ポリマーフィルムは、加熱により容易に接着す
るので、簡便な方法で積層断熱材を製造できる。
Description
融相を形成し得る熱可塑性ポリマー(以下、これを熱可
塑性液晶ポリマーと称する)からなるフィルム(以下、
これを熱可塑性液晶ポリマーフィルムと称する)を水蒸
気や空気などの透過防止材として用い、熱可塑性液晶ポ
リマーフィルムの片面もしくは両面または内部に形成し
た金属層を電磁波遮蔽材、とりわけ放射線遮蔽材として
用いた積層断熱材に関する。さらに詳しくは、本発明に
よる積層断熱材は、その水蒸気や空気などの透過防止材
として用いる熱可塑性液晶ポリマーフィルムに由来した
優れた低透湿性、低ガス透過性により、真空状態での優
れた断熱特性を長期間維持することができるだけでな
く、優れた電磁波耐性および放射線耐性を有することか
ら、再施工が困難な部位に有利に使用される。
クなどの大型設備から家庭用冷蔵庫のような小型設備ま
で広範囲に使用されている。とりわけ、液化石油ガスタ
ンクや冷凍庫などの保冷板として、タンク容器を2重壁
構造にして、その間隙に発泡パーライト粉末を充填し、
真空封止したもの、アルミニウム蒸着されたポリエステ
ルフィルムをフィルム状プラスチック袋に加工し、微粉
末状の断熱材を充填して真空状態で密封された断熱材が
知られている(特開昭60−60396号公報)。
用途の保冷材として利用されており、その適用温度もか
なり低温から極低温領域に拡大している。例えば、冷凍
保存船では、−40℃近辺の冷凍倉庫の内部隔壁に直接
壁材として貼り付ける用途がある。このような場合に
は、素材の弾力性が要求される。さらに、積層体におい
ては積層部での歪みによるストレスを除去し、温度変化
に対する耐久性を高めることも要求される。
によって必要とされる場合がある。その一例として、原
子力分野においては強力な電磁波や放射線を遮蔽する性
能が要求される場合がある。このような要求には、素材
自体の耐久性に加えて、耐久性が向上した積層構造が必
要となっている。このような用途に適する積層断熱材に
ついては、特開平9−109323号公報において、断
熱材の素材として適切な温度範囲でガラス転移点を有し
ており熱融着が可能であり、耐熱性、耐放射線性を併せ
持つ熱可塑性ポリイミド系樹脂を用いた積層断熱材が示
されている。
ム蒸着されたポリエステルフィルムをフィルム状プラス
チック袋に加工し、微粉末状の断熱材を充填して真空状
態で密封された断熱材を極低温領域で使用すると、ポリ
エステルフィルムの特性である室温での柔軟性が失われ
る固有の性質により、衝撃による破損が発生する。ま
た、強い電磁波や放射線によってポリエステルフィルム
の強度や伸びが失われるために、使用時間が経過すると
次第に脆くなってしまい、部分的な破損や接着面での剥
離を発生する。これらの破損や接着面での剥離は、真空
断熱材の袋内圧力を上昇させるので断熱性の低下を招く
結果となる。
して熱可塑性ポリイミド系樹脂を用いた積層断熱材は、
時間の経過とともに水蒸気がプラスチックに吸収される
ために断熱性が低下する。とりわけ、プラスチック袋に
微粉末状の断熱材を充填して真空状態で密封した断熱材
に、アルミニウムを積層した熱可塑性ポリイミド系樹脂
を用いた場合には、水蒸気やガスなどの透過防止効果が
悪化するために、袋内の圧力が上昇する結果、断熱性は
時間の経過とともに劣化する。
用いる場合、液体ヘリウムなどで極低温に冷やす必要が
あり、この場合、極低温領域において放射線に対する耐
性や断熱性が劣化しないことと同時に柔軟性を失わない
ことも要求される。
領域で柔軟であり、強い電磁波や放射線に対する耐性が
あり、断熱性の時間的変化が極めて少ない積層断熱材お
よびその製造方法を提供することにある。
達成するために鋭意検討した結果、周囲がシールされた
袋状型材内に積層構造体が詰められた構造を有し、該袋
状型材が光学的異方性の溶融相を形成し得る熱可塑性ポ
リマー(以下、これを熱可塑性液晶ポリマーと称する)
からなる繊維の織布、編物または不織布から選ばれた少
なくとも1種のシート状強化材と熱可塑性液晶ポリマー
からなるフィルムとの積層体から構成され、かつ該積層
構造体が熱可塑性液晶ポリマーからなるフィルムの片面
もしくは両面または内部に金属層を形成した構造の反射
板と熱可塑性液晶ポリマーからなる繊維の織布、編物ま
たは不織布から選ばれた少なくとも1種のシート状スペ
ーサとが1枚以上交互に積層された構造を有することを
特徴とする積層断熱材およびその製造方法を見出して、
本発明を完成するに至った。
スペーサの積層を保持するので、従来のように反射板と
シート状スペーサ同士を接着または熱圧着する必要がな
く、簡便な方法で製造することができる。また、反射板
とシート状スペーサ同士を接着または熱圧着しない場
合、反射板とシート状スペーサとが密着することなく、
両者の対向面の一部分の間に間隙を生ずるので、接着ま
たは熱圧着した場合と比較して、この間隙により外部か
らのストレスの影響が小さくなり、また断熱性も向上す
る。
熱可塑性液晶ポリマー繊維や熱可塑性液晶ポリマーフィ
ルム、反射板の原料に使用される熱可塑性液晶ポリマー
フィルム、シート状スペーサの原料に使用される熱可塑
性液晶ポリマー繊維は、いずれも熱可塑性液晶ポリマー
から製造される。したがって、本発明は積層断熱材の構
成部材に共通の材料を用いているので、製品の歩留りを
向上することができる。また、各構成部材を熱可塑性液
晶ポリマーで形成しているので、強い電磁波や放射線性
に対する耐性を有するとともに、従来の積層断熱材と異
なり、低透湿性および低ガス透過性を有するので、水蒸
気やガスなどの透過を防止して、断熱性の時間変化を極
めて小さくできる。また、極低温領域であっても柔軟性
を失わない。
の原料は特に限定されるものではないが、その具体例と
して、以下に例示する(1)から(4)に分類される化
合物およびその誘導体から導かれる公知のサーモトロピ
ック液晶ポリエステルおよびサーモトロピック液晶ポリ
エステルアミドを挙げることができる。但し、光学的に
異方性の溶融相を形成し得るポリマーを得るためには、
各々の原料化合物の組み合わせには適当な範囲があるこ
とは言うまでもない。
合物(代表例は表1参照)
(代表例は表2参照)
例は表3参照)
アミンまたは芳香族アミノカルボン酸(代表例は表4参
照)
液晶ポリマーの代表例として表5に示す構造単位を有す
る共重合体(a)〜(e)を挙げることができる。
リマーとして、フィルムの所望の耐熱性および加工性を
得る目的においては、約200〜約400℃の範囲内、
とりわけ約250〜約350℃の範囲内に融点を有する
ものが好ましいが、繊維製造およびフィルム製造の点か
らは、比較的低い融点の熱可塑性液晶ポリマーの方が好
ましい。
価に入手できるものとして、4−ヒドロキシベンゾイル
構造 Iおよび6−ヒドロキシ−2−ナフトイル構造IIの
反復単位からなり、構造 Iと構造IIのモル比が65/3
5から82/18の範囲にある樹脂が挙げられ、これは
株式会社ポリプラスチックスからベクトラ(商標)とし
て販売されている。
可塑性液晶ポリマー繊維やシート状スペーサの原料に使
用される熱可塑性液晶ポリマー繊維としては、用いる熱
可塑性液晶ポリマーの種類により種々の特性を有するも
のが製造されている。したがって、織布、編物または不
織布の原料としては、型材への加工における熱可塑性液
晶ポリマーフィルムの含浸性やシート状スペーサの嵩高
さ保持性などを考慮して、繊維径、フィラメント数、目
付などが適宜選択される。繊維径、フィラメント数は通
常80デニール/10フィラメント〜300デニール/
80フィラメントであり、好ましくは100デニール/
20フィラメント〜200デニール/50フィラメント
である。また目付は通常40〜80g/m2 であり、好
ましくは50〜70g/m2 である。
入手できるものとして、4−ヒドロキシベンゾイル構造
Iおよび6−ヒドロキシ−2−ナフトイル構造IIの反復
単位からなり、構造 Iと構造IIのモル比が65/35か
ら82/18の範囲にある熱可塑性液晶ポリマーから製
造された繊維が挙げられ、これは株式会社クラレからベ
クトラン(商標)として販売されている。
フィルムは、熱可塑性液晶ポリマーを押出成形して得ら
れる。任意の押出成形法がこの目的のために適用される
が、周知のTダイ法、インフレーション法等が工業的に
有利である。特にインフレーション法では、フィルムの
機械軸方向(以下、MD方向と略す)だけでなく、これ
と直交する方向(以下、TD方向と略す)にも応力が加
えられるため、MD方向とTD方向における機械的性質
および熱的性質のバランスのとれたフィルムを得ること
ができる。
分子配向度SORを1.3以下とすることが好ましい。
該液晶ポリマーフィルムは、上記のMD方向とTD方向
における機械的性質および熱的性質のバランスが良好で
あるので、より実用性が高い。
entation Ratio )とは、分子を構成するセグメントに
ついての分子配向の度合いを与える指標をいい、従来の
MOR(Molecular Orientation Ratio)とは異な
り、物体の厚さを考慮した値である。この分子配向度S
ORは、以下のように算出される。
において、液晶ポリマーフィルムを、マイクロ波の進行
方向にフィルム面が垂直になるように、マイクロ波共振
導波管中に挿入し、該フィルムを透過したマイクロ波の
電場強度(マイクロ波透過強度)が測定される。そし
て、この測定値に基づいて、次式により、m値(屈折率
と称する)が算出される。m=(Zo/△z)X[1−
νmax /νo]ただし、Zoは装置定数、△zは物体の
平均厚、νmax はマイクロ波の振動数を変化させたと
き、最大のマイクロ波透過強度を与える振動数、νoは
平均厚ゼロのとき(すなわち物体がないとき)の最大マ
イクロ波透過強度を与える振動数である。
の回転角が0°のとき、つまり、マイクロ波の振動方向
と、物体の分子が最もよく配向されている方向であっ
て、最小マイクロ波透過強度を与える方向とが合致して
いるときのm値をm0 、回転角が90°のときのm値を
m90として、分子配向度SORがm0 /m90により
算出される。
適用分野によって、必要とされる分子配向度SORは当
然異なるが、SOR≧1.5の場合は液晶ポリマー分子
の配向の偏りが著しいためにフィルムが硬くなり、かつ
MD方向に裂け易い。熱可塑性液晶ポリマー繊維の織
布、編物または不織布と熱圧着法により積層して得られ
た型材の反りが殆どないなどの形態安定性が必要とされ
る場合には、SOR≦1.3であることが望ましい。特
に上記の反りを無くす必要がある場合には、SOR≦
1.03であることが望ましい。
リマーフィルムは、任意の厚みのものでよく、0.5m
m以下の板状またはシート状のものをも包含する。型材
の原料に使用される熱可塑性液晶ポリマーフィルムの膜
厚は、通常20〜500μmの範囲内にあることが好ま
しく、20〜200μmの範囲内にあることがより好ま
しい。フィルムの厚さが薄過ぎる場合には、フィルムの
剛性や強度が小さくなるため、得られた型材を取扱う場
合に湾曲し易い。フィルムの厚さが厚過ぎる場合には、
積層断熱材を積層する工程で積層断熱材の変形や接着不
良を招く。
液晶ポリマーフィルムの膜厚は、10〜150μmの範
囲内にあることが好ましく、20〜100μmの範囲内
にあることがより好ましい。フィルムの厚さが薄過ぎる
場合には、フィルムの剛性や強度が小さくなるため、得
られる反射板を取扱う場合に湾曲し易い。フィルムの厚
さが厚過ぎる場合には、積層断熱材を積層する工程で反
射板端面での変形や接着不良を招く。
は、シリカアエロジル、珪藻土、パーライトなどの粉末
や発泡パーライト、シリカマイクロバルーンのような中
空球状粉末が添加されていてもよく、また滑剤、酸化防
止剤などの添加剤が配合されていてもよい。
性液晶ポリマーフィルムの熱膨張係数は、該液晶ポリマ
ーフィルムの片面もしくは両面または内部に形成された
金属層の熱膨張係数と実質的に同一であることが好まし
い。熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、熱処理すること
により、該液晶ポリマーフィルムの片面もしくは両面ま
たは内部に形成された金属層の熱膨張係数と実質的に同
一にすることができる。この結果、冷凍保管倉庫などの
出入口など使用温度が極低温から室温まで繰り返し頻繁
に変化する場所などに使用された積層断熱材において、
反射板の温度変化による界面剥離の発生が防止され、時
間的な断熱性変化が発生しないので信頼性が高められ
る。
ィルムの片面もしくは両面または内部に金属層を形成す
る前または後に行ってもよい。また、該フィルムは金属
層を形成する段階で加熱されると、その熱膨張係数が変
化することがあるので、この点を事前に考慮したプロセ
スを設計する必要がある。さらに、熱処理の手段として
は特に制限はなく、熱風循環炉、熱ロール、セラミック
ヒーター、熱プレスなどを例示することができる。
性液晶ポリマーフィルムの熱膨張係数が、該フィルムの
片面もしくは両面または内部に形成した金属層の熱膨張
係数よりも大きい場合には、フィルムの融点よりも14
0℃低い温度から、該融点までの温度範囲を選択するこ
とが好ましい。この温度範囲では、フィルムの熱膨張係
数を最大で18×10-6cm/cm/℃低くすることが
できる。この熱膨張係数は処理時間によっても調整する
ことができる。
膨張係数が、該フィルムの片面もしくは両面または内部
に形成する金属層の熱膨張係数よりも小さい場合には、
熱処理の温度としては、該フィルムの融点からこの融点
より20℃高い温度までの温度範囲を選択することが好
ましい。この温度範囲では、フィルムの熱膨張係数を最
大で30×10-6cm/cm/℃大きくすることができ
る。熱膨張係数は処理時間によっても調整することがで
きる。
信頼性をより高めるためには、熱可塑性液晶ポリマーフ
ィルムの片面もしくは両面または内部に形成する金属層
の熱膨張係数をP×10-6cm/cm/℃としたとき
に、該フィルムの熱膨張係数が、(P−10)×10-6
cm/cm/℃から(P+10)×10-6cm/cm/
℃の範囲内になるように調節することが好ましい。この
範囲から外れると、金属層と該フィルムからなる基板と
の間の界面剥離の発生が多くなる傾向にある。ここで、
銅、アルミニウムなどの代表的な金属のP値は11〜3
0である。
金属層の材質としては、熱や電磁波や放射線を遮蔽する
ために使用されるような金属等から選択され、好ましく
は金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、鉄、鋼、錫、
鉛、真鍮、マグネシウム、モリブデン、銅/ニッケル合
金、銅/ベリリウム合金、ニッケル/クロム合金、およ
びこれらの混合物が挙げられる。とりわけ、放射線遮蔽
には鉛が好ましい。
ィルムと熱圧着法によって加工することにより該液晶ポ
リマーフィルムの片面もしくは両面または内部に金属層
を形成することができる。すなわち、該液晶ポリマーフ
ィルムの片面または両面に金属箔を配置して熱圧着した
り、金属箔の両面に該液晶ポリマーフィルムを配置して
熱圧着することにより製造される。熱圧着の手段として
は特に制限はなく、熱ロール、熱プレスなどを例示する
ことができる。気泡などの欠陥を含有しない反射板を製
造する場合は、真空状態で加熱および加圧のできる真空
熱プレス法により行うのが好ましい。
マーからなる繊維の織布、編物または不織布から選ばれ
た少なくとも1種のシート状強化材と熱可塑性液晶ポリ
マーからなるフィルムとの積層体から構成された型材2
枚の間に、熱可塑性液晶ポリマーからなるフィルムの片
面もしくは両面または内部に金属層を形成した構造の反
射板と熱可塑性液晶ポリマーからなる繊維の織布、編物
または不織布から選ばれた少なくとも1種のシート状ス
ペーサとを1枚以上交互に積層させ、次いで前記2枚の
型材を袋状に周囲をシールすることにより製造される。
い反射板とシート状スペーサとを1枚以上交互に重ね合
せて反射板相互の間隙を保つように積み重ねた後に、型
材の周囲を熱圧着することにより製造される。この方法
において型材の熱圧着の手段としては特に制限はなく、
インパルスシーラーのような板状加圧加熱機や金型を使
用した熱プレスなどを例示することができる。
着方法として特に好ましいのは、真空状態で加熱および
加圧のできる真空熱プレス法である。この設備を使用す
る場合には、金属製の枠を使用して型材の部分のみが加
熱されるようにすることが必要である。
して積層断熱材を積層する時に好ましい真空度は、1t
orr以下である。積層断熱材の各構成部材は、熱可塑
性液晶ポリマーからなり、その低透湿性および低ガス透
過性により、真空状態での優れた断熱特性を長時間維持
することができる。真空度が悪い場合には、常圧で製造
した積層断熱材と比べて断熱性の改善効果が少ない。な
お、このような真空状態で製造した積層断熱材は、型材
の積層を完了した後に常圧に戻されると大気圧によって
反射板やシート状スペーサが押し付けられて、反射板の
端部での衝撃異常を発生し易くなるので、シート状スペ
ーサの厚みを増やしたり、使用枚数を増やすなどの方法
を採用して反射板相互の間隙を増やすのが好ましい。
いる反射板としては、反射板を柔軟にするために金属層
が変形し易くなるようにそれを構成する金属を選択し、
また柔軟性のある熱可塑性液晶ポリマーフィルムを選択
するのが好ましい。この場合に用いられる熱可塑性液晶
ポリマーフィルムとしては、前述した4−ヒドロキシベ
ンゾイル構造 Iおよび6−ヒドロキシ−2−ナフトイル
構造IIの反復単位からなり、構造 Iと構造IIのモル比が
65/35から82/18の範囲にある熱可塑性液晶ポ
リマー樹脂から製造されるものが好ましい。
基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る
積層断熱材の構成を示す。図1(a)に示すように、積
層断熱材は、2枚の型材Dの間に、型材Dの大きさより
も小さい反射板Bとシート状スペーサCを1枚以上交互
に重ね合わせて積層したものである。図1(b)に示す
ように、積層断熱材は、2枚の型材Dの間に反射板Bと
シート状スペーサCを多数積層させた状態で、これら型
材Dの周囲を熱圧着することにより袋状に形成される。
この積層は、真空度1torr以下で行われる。
熱可塑性液晶ポリマー繊維からなる織布、編物または不
織布から選ばれた少なくとも1種のシート状強化材2
と、熱可塑性液晶ポリマーフィルムAとの積層体からな
る。反射板Bは、熱可塑性液晶ポリマーフィルムAの片
面もしくは両面または内部に例えばアルミ箔のような金
属層4を形成した構造をもつ。シート状スペーサCは、
熱可塑性液晶ポリマー繊維からなる織布、編物または不
織布から選ばれたものである。
が、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるも
のではない。なお、以下の実施例において、熱可塑性液
晶ポリマーフィルムの融点、膜厚の測定、熱伝導率の評
価および放射線暴露試験は以下の方法により行った。 (1) 融点 示差走査熱量計を用いて、フィルムの熱挙動を観察して
得た。すなわち、供試フィルムを20℃/分の速度で昇
温して完全に溶融させた後、溶融物を50℃/分の速度
で50℃まで急冷し、再び20℃/分の速度で昇温した
時に現れる吸熱ピークの位置を、フィルムの融点として
記録した。 (2)膜厚 デジタル厚み計(株式会社ミツトヨ製)を用い、得られ
たフィルムをTD方向に1cm間隔で測定し、中央部お
よび端部から任意に選んだ10点の平均値を膜厚とし
た。 (3)熱伝導率 ダイナテック社のK−マチック熱伝導率測定装置を使用
し、ASTM−C518に準じて、13℃と34℃との
温度差における値を測定した。 (4)放射線強制暴露試験 照射線量50MGyのγ線を大気圧下で積層断熱材全体
に照射した。
モル%と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸27モル%の
共重合物で、融点が280℃である熱可塑性液晶ポリマ
ーを溶融押出し、インフレーション成形法により膜厚が
50μm、円周60cm、分子配向度SORが1.05
のフィルムを得た。このフィルムを図1(a)の熱可塑
性液晶ポリマーフィルムAとする。
液晶ポリマーフィルムAを、硬質アルミ箔(株式会社東
洋アルミ製、A1N30H、厚み50μm)2枚の間に
配置し、熱プレス装置にて280℃、30kg/cm2
で5分間加熱圧着して反射板を得た。この反射板を図1
(a)の反射板Bとする。
モル%と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸27モル%の
共重合物で、融点が280℃である熱可塑性液晶ポリマ
ーから溶融紡糸法により製造された繊維(株式会社クラ
レ製、ベクトラン、50デニール)を用いて、タテ密度
およびヨコ密度が56本/インチで、目付52g/m2
に平織りしてシート状スペーサ(クッション材)を製造
した。このシート状スペーサを図1(a)のシート状ス
ペーサCとする。
スペーサCを、参考例1で得られた熱可塑性液晶ポリマ
ーフィルムA2枚の間に配置し、熱プレス装置にて28
0℃、30kg/cm2 で5分間加熱圧着して型材を得
た。この型材を図1(a)の型材Dとする。
ら縦35cm、横35cmの平板2枚を切出した。別に
参考例2で得られた反射板Bから縦30cm、横30c
mの平板4枚を、参考例3で得られたシート状スペーサ
ーCから縦30cm、横30cmの平板5枚を切り出し
た。図1(b)のように、これらの材料を中心が一致す
るように、D/C/B/C/B/C/B/C/B/C/
Dの構成に積み重ねた。その後に、幅0.5cmの2枚
の加熱板を備えた熱圧着密封装置(インパルスシーラ
ー)を使用して、型材Dの端部より2cmから2.5c
mの幅0.5cmの部分を2kg/cm2 の圧力で圧着
した状態で加熱し、圧着温度が260℃になった時点で
加熱をやめ、3秒間自然冷却し、端部4ケ所をシールし
て密閉し、袋状の積層断熱材を得た。
度の部屋に24時間放置したのちに、製造時の熱伝導率
を測定したところ、0.033kcal/mh℃であっ
た。水蒸気を早く吸収させて時間変化を測定するため
に、50℃、85%相対湿度の恒温恒湿装置内に60日
間保存したのちに、保存後の熱伝導率を測定したとこ
ろ、0.041kcal/mh℃と僅かに増加したが、
変化は許容できる程度であった。更に、放射線強制暴露
試験後に暴露後の熱伝導率を測定したところ、0.03
2kcal/mh℃と初期の断熱性を保持していた。
端部のシールを真空タンク内で行い、その真空タンク内
部の圧力を1Torrに排気した以外は、実施例1と同
様な条件で端部をシールして密閉した。その後に真空タ
ンク内に外気を入れて大気圧(760Torr)とし、
大気圧で密着した形状の積層断熱材を得た。実施例1と
同様に、20℃、65%相対湿度の部屋に24時間放置
したのちに、製造時の熱伝導率を測定したところ、0.
0041kcal/mh℃であり、実施例1よりも顕著
に低い値で断熱性の向上が確認された。実施例1と同様
に測定した保存後の熱伝導率を測定したところ、0.0
042kcal/mh℃と殆ど変化しなかった。更に、
暴露後の熱伝導率も、0.0041kcal/mh℃と
変化しなかった。
の原料である熱可塑性液晶ポリマーフィルムAの代りに
ポリエステルフィルム(厚み50μm)を用いて、熱プ
レス条件を220℃、5kg/cm2 で5分間加熱圧着
して得た反射板を用い、シート状スペーサCの原料であ
る熱可塑性液晶ポリマー繊維の代りに50デニールのポ
リエステル繊維を用いて製造したシート状スペーサを用
い、型材Dの原料として熱可塑性液晶ポリマーフィルム
Aの代りにポリエステルフィルム(厚み50μm)を、
また熱可塑性液晶ポリマー繊維の代りに50デニールの
ポリエステル繊維を用いて、熱プレス装置にて220
℃、5kg/cm2 で5分間加熱圧着して得た型材をそ
れぞれ用いて、圧着温度220℃とした以外は実施例1
と同様に積層断熱材を作製した。製造時の熱伝導率は
0.085kcal/mh℃、保存後の熱伝導率は0.
090kcal/mh℃と大きい。放射線暴露試験後に
は、積層断熱材の型材の外面のポリエステルフィルムが
黒変して脆くなっているだけでなく、放射線処理後に測
定した暴露後の熱伝導率は0.232kcal/mh℃
と極端に変化しており、断熱材としての機能が失われて
いた。さらに、内部のシート状スペーサも一部分変色し
脆くなっており、初期の弾力性が低下しているのが観察
された。
おり、熱可塑性液晶ポリマー繊維と熱可塑性液晶ポリマ
ーフィルムを用いて製造した本発明の積層断熱材は、使
用環境とりわけ極低温領域でも柔軟であり、強い電磁波
や放射線に対する耐性に優れており、断熱性の時間的変
化が極めて少ない性能を有しており、産業用のみならず
家電用の断熱材として有用である。また、本発明によれ
ば、シート状スペーサと、反射板とを接着または熱圧着
することなく積層する簡便な方法が提供されているの
で、優れた性能を有する積層断熱材を工業的に製造する
ことが可能である。
の積層状態を示す断面図であり、(b)は積層断熱材を
示す一部破断した側面図である。
シート状スペーサ(熱可塑性液晶ポリマー繊維)、D…
型材。
Claims (5)
- 【請求項1】 周囲がシールされた袋状型材内に積層構
造体が詰められた構造を有し、該袋状型材が光学的異方
性の溶融相を形成し得る熱可塑性ポリマー(以下、これ
を熱可塑性液晶ポリマーと称する)からなる繊維の織
布、編物または不織布から選ばれた少なくとも1種のシ
ート状強化材と熱可塑性液晶ポリマーからなるフィルム
との積層体から構成され、かつ該積層構造体が熱可塑性
液晶ポリマーからなるフィルムの片面もしくは両面また
は内部に金属層を形成した構造の反射板と熱可塑性液晶
ポリマーからなる繊維の織布、編物または不織布から選
ばれた少なくとも1種のシート状スペーサとが1枚以上
交互に積層された構造を有することを特徴とする積層断
熱材。 - 【請求項2】 請求項1において、 前記反射板に使用される熱可塑性液晶ポリマーからなる
フィルムが、4−ヒドロキシベンゾイル構造 Iおよび6
−ヒドロキシ−2−ナフトイル構造IIの反復単位からな
り、構造 Iと構造IIのモル比が65/35から82/1
8の範囲にあることを特徴とする積層断熱材。 - 【請求項3】 熱可塑性液晶ポリマーからなる繊維の織
布、編物または不織布から選ばれた少なくとも1種のシ
ート状強化材と熱可塑性液晶ポリマーからなるフィルム
との積層体から構成された型材2枚の間に、熱可塑性液
晶ポリマーからなるフィルムの片面もしくは両面または
内部に金属層を形成した構造の反射板と熱可塑性液晶ポ
リマーからなる繊維の織布、編物または不織布から選ば
れた少なくとも1種のシート状スペーサとを1枚以上交
互に積層させ、次いで前記2枚の型材を袋状に周囲をシ
ールすることを特徴とする積層断熱材の製造方法。 - 【請求項4】 請求項3において、 前記積層を真空度1torr以下で行うことを特徴とす
る積層断熱材の製造方法。 - 【請求項5】 請求項3または4において、 前記反射板に使用される熱可塑性液晶ポリマーフィルム
が、4−ヒドロキシベンゾイル構造 Iおよび6−ヒドロ
キシ−2−ナフトイル構造IIの反復単位からなり、構造
Iと構造IIのモル比が65/35から82/18の範囲
にあることを特徴とする積層断熱材の製造方法。
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