JP2000251958A - 光電変換素子および光電気化学電池 - Google Patents

光電変換素子および光電気化学電池

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Abstract

(57)【要約】 【課題】安価で高い光電変換効率を有する色素増感光電
変換素子および光電気化学電池を提供する。 【解決手段】下記式(I)または(II)で表されるポリ
メチン色素によって増感された半導体微粒子を用いた光
電変換素子。 【化1】 式中、Q、Q’は5員または6員の含窒素ヘテロ環を完
成するために必要な原子団を表し、縮環していても置換
されていてもよい。Z、Z’は3〜9員環を完成するた
めに必要な原子団を表し、C,O,N.S,Hから選ば
れる原子により構成される。L1 〜L10は置換または無
置換基のメチン基を表す。n1 、n3 はそれぞれ0から
4までの整数を表し、n2 、n4 は0または1を表す。
R、R’は置換基を表し、W、W’は電荷を中和させる
のに必要な場合の対イオンを表す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は光電変換素子に関
し、詳しくは色素で増感された半導体微粒子を用いた光
電変換素子に関する。
【0002】
【従来の技術】太陽光発電は単結晶シリコン太陽電池、
多結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電
池、テルル化カドミウムやセレン化インジウム銅等の化
合物太陽電池が実用化もしくは主な研究開発の対象とな
っているが、普及させる上で製造コスト、原材料確保、
エネルギーペイバックタイムが長い等の問題点を克服す
る必要がある。一方、大面積化や低価格化を指向した有
機材料を用いた太陽電池もこれまでにも多く提案されて
いるが、変換効率が低く、耐久性も悪いという問題があ
った。こうした状況の中で、Nature(第353巻、第737〜
740頁、1991年)および米国特許4927721号等に、色素に
よって増感された半導体微粒子を用いた光電変換素子お
よび太陽電池、ならびにこれを作成するための材料およ
び製造技術が開示された。提案された電池は、ルテニウ
ム錯体によって分光増感された二酸化チタン多孔質薄膜
を作用電極とする湿式太陽電池である。この方式の第一
の利点は二酸化チタン等の安価な酸化物半導体を高純度
に精製することなく用いることができるため、安価な光
電変換素子を提供できる点であり、第二の利点は用いら
れる色素の吸収がブロードなため、可視光線のほぼ全て
の波長領域の光を電気に変換できることである。
【0003】色素増感光電変換素子の改良が求められる
点の一つに増感色素として高価なルテニウム錯体色素を
用いる事が挙げられ、安価な有機色素によって増感され
る光電変換素子の開発が望まれていた。有機色素によっ
て増感される光電変換素子の例としてはChemistry Lett
ers 753〜754頁(1998年)およびその参考文献な
どに記載の化合物を用いる方法が知られているが、光電
変換の効率は充分高いものではなく、また変換波長域を
自由に変化させることができなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、半導
体微粒子を高効率に増感し得る有機色素を用いることに
よって、安価かつ高い変換効率を有する色素増感光電変
換素子および光電気化学電池を提供する事である。
【0005】
【課題を解決するための手段】本課題は、以下に示す手
段により達成された。 (1) 下記式(I)または(II)で表されるポリメチ
ン色素によって増感された半導体微粒子を用いた光電変
換素子。
【0006】
【化3】
【0007】式(I)中、Qは5員または6員の含窒素
ヘテロ環を完成するために必要な原子団を表し、Qは縮
環していても置換基を有していてもよい。Zは3ないし
9員環を完成するために必要な原子団を表し、炭素原
子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子および水素原子から
選ばれる原子により構成される。L1 、L2 、L3 、L
4 およびL5 はそれぞれ独立に無置換または置換基を有
するメチン基を表す。n 1 は0から4までの整数を表
し、n2 は0または1である。Rは置換基を表す。Wは
電荷を中和させるのに必要な場合の対イオンを表す。式
(II)中、Q’はQと同義であり、Z’はZと同義であ
る。L6 、L7 、L 8 、L9 およびL10はL1 〜L5
同義である。n3 はn1 と同義であり、n4はn2 と同
義である。R’はRと同義であり、W’はWと同義であ
る。 (2) 前記式(I)または式(II)において、Zまた
はZ’によって完成される環が、下記式(III)で表され
る環であることを特徴とする(1)の光電変換素子。
【0008】
【化4】
【0009】式(III) 中、Y1 およびY2 は、それぞれ
独立に酸素原子、硫黄原子またはC(CN)R''を表
す。R''はシアノ基、カルボン酸基、カルボン酸エステ
ル基またはカルボンアミド基を表す。 (3) 式(III) において、Y1 が酸素原子であること
を特徴とする(2)の光電変換素子。 (4) 式(III) において、Y1 およびY2 が酸素原子
であることを特徴とする(2)の光電変換素子。 (5) 式(I)または(II)において、QまたはQ’
によって完成される含窒素ヘテロ環がインドレニン環、
チアゾール環、オキサゾール環、セレナゾール環、イミ
ダゾール環、2-キノリン環、4-キノリン環またはこれら
のベンゾ縮環体由来の核であることを特徴とする(1)
〜(4)のいずれかに記載の光電変換素子。 (6) 式(I)または(II)で表されるポリメチン色
素によって増感された半導体微粒子が酸化チタン微粒子
であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記
載の光電変換素子。 (7) (1)〜(6)のいずれかに記載の光電変換素
子を用いた光電気化学電池。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に本発明に使用する式
(I)、(II)の化合物について詳細に説明する。
【0011】式(I)中、Qは5員または6員の含窒素
ヘテロ環を完成するために必要な原子団を表し、Qは縮
環していてもよく、また置換基を有していてもよい。Q
で完成されるヘテロ環の好ましい例としては、ベンゾチ
アゾール核、ベンゾオキサゾール核、ベンゾセレナゾー
ル核、ベンゾテルラゾール核、2−キノリン核、4−キ
ノリン核、ベンゾイミダゾール核、チアゾリン核、イン
ドレニン核、オキサジアゾール核、チアゾール核、イミ
ダゾール核が挙げられるが、さらに好ましくはベンゾチ
アゾール核、ベンゾオキサゾール核、ベンズイミダゾー
ル核、ベンゾセレナゾール核、2−キノリン核、4-キノ
リン核、インドレニン核であり、特に好ましくはベンゾ
チアゾール核、ベンゾオキサゾール核、2−キノリン
核、4-キノリン核、インドレニン核である。環上の置換
基としては、カルボン酸、ホスホン酸、スルホン酸、ハ
ロゲン(F、Cl、Br、I)、シアノ、アルコキシ
(メトキシ、エトキシ、メトキシエトキシなど)、アリ
ーロキシ(フェノキシなど)、アルキル(メチル、エチ
ル、シクロプロピル、シクロへキシル、トリフルオロメ
チル、メトキシエチル、アリル、ベンジルなど)、アル
キルチオ(メチルチオ、エチルチオなど)、アルケニル
(ビニル、1−プロペニルなど)、アリール(フェニ
ル、チエニル、トルイル、クロロフェニルなど)などが
挙げられる。
【0012】Zは炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄
原子および水素原子から選ばれる原子により構成され
た、3ないし9員環を完成するために必要な原子団を表
す。Zによって完成される環として好ましくは4ないし
6個の炭素によって骨格が形成される環であり、より好
ましくは下記式(III) で表される環である。
【0013】
【化5】
【0014】式(III) 中、Y1 およびY2 は、それぞれ
独立に酸素原子、硫黄原子またはC(CN)R''を表
す。R''はシアノ基、カルボン酸基、カルボン酸エステ
ル基またはカルボンアミド基を表す。式(III) におい
て、Y1 は酸素原子であることが好ましく、Y1 および
2 共に酸素原子である環が特に好ましい。
【0015】L1 、L2 、L3 、L4 およびL5 はそれ
ぞれ独立に置換基を有していてもよいメチン基を表す。
置換基としては、置換または無置換のアルキル基(好ま
しくは炭素原子数1ないし12、さらに好ましくは1な
いし7のものであり、例えばメチル、エチル、プロピ
ル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、2−カル
ボキシエチル、ベンジルなど)、置換または無置換のア
リール基(好ましくは炭素原子数6ないし10、さらに
好ましくは6ないし8のものであり、例えば、フェニ
ル、トルイル、クロロフェニル、o−カルボキシフェニ
ル)、複素環基(例えば、ピリジル、チエニル、フラニ
ル、ピリジル、バルビツール酸)、ハロゲン原子(例え
ば、塩素、臭素)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、
エトキシ)、アミノ基(好ましくは炭素原子数1ないし
12、さらに好ましくは6ないし12のものであり、例
えば、ジフェニルアミノ、メチルフェニルアミノ、4−
アセチルピペラジン−1−イル)、オキソ基などが挙げ
られる。これらのメチン基上の置換基は互いに連結して
シクロペンテン環、シクロヘキセン環、スクアリリウム
環などの環を形成してもよく、あるいは助色団と環を形
成することもできる。
【0016】n1 は0から4までの整数を表し、好まし
くは0から3である。n2 は0または1である。
【0017】Rは置換基を表す。置換基として好ましく
は置換基を有してもよい芳香族基または置換基を有して
いてもよい脂肪族基であり、芳香族基の炭素原子数は好
ましくは1ないし16、さらに好ましくは5ないし6で
ある。脂肪族基の炭素原子数は好ましくは1ないし1
0、さらに好ましくは1ないし6である。無置換の脂肪
族基および芳香族基としては、メチル基、エチル基、n
−プロピル基、n−ブチル基、フェニル基、ナフチル基
等が挙げられる。
【0018】Wは電荷を中和させるのに対イオンが必要
な場合の対イオンを表す。ある色素が陽イオン、陰イオ
ンであるか、あるいは正味のイオン電荷を持つかどうか
は、その助色団及び、置換基に依存する。置換基が解離
性基を有する場合、解離して負電荷を持っても良く、こ
の場合にも分子全体の電荷はWによって中和される。典
型的な陽イオンは無機または有機のアンモニウムイオン
(例えばテトラアルキルアンモニウムイオン、ピリジニ
ウムイオン)およびアルカリ金属イオンであり、一方、
陰イオンは具体的に無機陰イオンあるいは有機陰イオン
のいずれであってもよく、例えば、ハロゲン陰イオン、
(例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオ
ン、ヨウ化物イオン)、置換アリールスルホン酸イオン
(例えば、p−トルエンスルホン酸イオン、p−クロロ
ベンゼンスルホン酸イオン)、アリールジスルホン酸イ
オン(例えば、1,3−ベンゼンジスルホン酸イオン、
1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフ
タレンジスルホン酸イオン)、アルキル硫酸イオン(例
えば、メチル硫酸イオン)、硫酸イオン、チオシアン酸
イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオ
ン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロメタ
ンスルホン酸イオンが挙げられる。さらに電荷均衡対イ
オンとしてイオン性ポリマーあるいは、色素と逆電荷を
有する他の色素を用いてもよいし、金属錯イオン(例え
ば、ビスベンゼン−1,2−ジチオラトニッケル(III)
)も可能である。
【0019】式(II)中、Q’はQと同義であり、Z’
はZと同義である。L6 〜L10はL 1 〜L5 と同義であ
る。n3 はn1 と同義であり、n4 はn2 と同義であ
る。R’はRと同義であり、W’はWと同義である。
【0020】以下に本発明の一般式(I)または(II)
で表される化合物の具体例を示すが、本発明がこれに限
定されるものでない。
【0021】
【化6】
【0022】
【化7】
【0023】
【化8】
【0024】
【化9】
【0025】
【化10】
【0026】
【化11】
【0027】
【化12】
【0028】
【化13】
【0029】本発明に用いられる一般式(I)または
(II)で表される化合物の合成は、Dyes and Pigments
第21巻227〜234頁などの文献の記載を参考にし
て行える。
【0030】本発明により使用される化合物の合成例を
示す。 〔合成例1〕 例示化合物(S−1)の合成 化合物(S−1)は下記に示したスキームに従って合成
することができる。
【0031】
【化14】
【0032】(B−1)1.2gをエタノール7ml、ト
リエチルアミン1ml混合溶媒に溶解し、加熱還流しなが
ら(A−1)1.9gを加える。その後氷冷して得られ
た結晶を吸引濾過によりろ別し、セファデックスカラム
クロマトグラフィーによって精製して(C−1)を2g
得た。この(C−1)2gをエタノール20mlに加え、
40%水酸化ナトリウム水溶液0.5mlを加えて5分間
加熱還流する。その後氷冷下2規定塩酸7mlを加えて得
られた結晶を濾別して(S−1)1gを得た。 (λmax =440nm(ε=55000)(メタノール中))
【0033】〔合成例2〕 例示化合物(S−20)の合成 化合物(S−20)は下記に示したスキームに従って合
成することができる。
【0034】
【化15】
【0035】(A−2)2.2g、(B−2)0.86
g、トリエチルアミン1gをエタノール20mlに溶解
し、5時間加熱還流した。濃縮後シリカゲルカラムクロ
マトグラフィーにて精製して得られた(C−2)0.8
7gをエタノール10mlに溶解し、5%水酸化ナトリウ
ム水溶液5mlを加えて2時間加熱還流する。その後氷冷
下希塩酸7mlを加えて得られた結晶を濾別して水洗し、
(S−20)0.75gを得た。 (λmax =630nm(ε=120000)( メタノール中))
【0036】以下に本発明の光電変換素子および光電気
化学電池の構成と材料について詳述する。本発明におい
て色素増感した光電変換素子は導電性支持体、導電性支
持体上に設置される色素により増感した半導体膜(感光
層)、電荷移動層および対極からなる。この光電変換素
子を外部回路で仕事をさせる電池用途に使用できるよう
にしたものが光電気化学電池である。感光層は目的に応
じて設計され、単層構成でも多層構成でもよい。感光層
に入射した光は色素を励起する。励起色素はエネルギー
の高い電子を有しており、この電子が色素から半導体微
粒子の伝導帯に渡され、さらに拡散によって導電性支持
体に到達する。この時色素分子は酸化体となっている。
光電気化学電池においては導電性支持体上の電子が外部
回路で仕事をしながら対極および電荷移動層を経て色素
酸化体に戻り、色素が再生する。半導体膜はこの電池の
負極として働く。なお、本発明ではそれぞれの層の境界
において(たとえば、導電性支持体の導電層と感光層の
境界、感光層と電荷移動層の境界、電荷移動層と対極の
境界など)、相互に拡散して混合していてもよい。
【0037】本発明において、半導体はいわゆる感光体
であり、光を吸収して電荷分離を行い電子と正孔を生ず
る役割を担う。色素増感された半導体では、光吸収およ
びこれによる電子および正孔の発生は主として色素にお
いて起こり、半導体はこの電子を受け取り、伝達する役
割を担う。半導体としてはシリコン、ゲルマニウムのよ
うな単体半導体の他に、金属のカルコゲニド(例えば酸
化物、硫化物、セレン化物等)に代表されるいわゆる化
合物半導体またはペロブスカイト構造を有する化合物等
を使用することができる。金属のカルコゲニドとして好
ましくはチタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジル
コニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、
セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオ
ブ、もしくはタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、
鉛、銀、アンチモン、ビスマスの硫化物、カドミウム、
鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられ
る。他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジ
ウム、カドミウム等のリン化物、ガリウムヒ素、銅−イ
ンジウム−セレン化物、銅−インジウム−硫化物等が挙
げられる。また、ペロブスカイド構造を有する化合物と
して好ましくはチタン酸ストロンチウム、チタン酸カル
シウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオ
ブ酸カリウムが挙げられる。本発明に用いられる半導体
としてより好ましくは、具体的にはSi、TiO2 、S
nO2 、Fe2 3 、WO3 、ZnO、Nb2 5、C
dS、ZnS、PbS、Bi2 3 、CdSe、CdT
e、GaP、InP、GaAs、CuInS2 、CuI
nSe2 が挙げられる。さらに好ましくはTiO2 、Z
nO、SnO2 、Fe2 3 、WO3 、Nb2 5 、C
dS、PbS、CdSe、InP、GaAs、CuIn
2 、CuInSe2 であり、最も好ましくはTiO2
である。
【0038】本発明に用いられる半導体は、単結晶で
も、多結晶でもよい。変換効率としては単結晶が好まし
いが、製造コスト、原材料確保、エネルギーペイバック
タイム等の点では、特にナノメートルからマイクロメー
トルサイズの微粒子半導体が好ましい。これらの半導体
微粒子の粒径は、投影面積を円に換算したときの直径を
用いた平均粒径で一次粒子として5〜200nmであるこ
とが好ましく、特に8〜100nmであることが好まし
い。また、分散物中の半導体微粒子(二次粒子)の平均
粒径としては0.01〜100μm であることが好まし
い。また、2種類以上の粒子サイズ分布の異なる微粒子
を混合して用いてもよく、この場合、小さい粒子の平均
サイズは5nm以下であることが好ましい。また、入射光
を散乱させて光捕獲率を向上させる目的で、粒子サイズ
の大きな、たとえば300nm程度の半導体粒子を混合し
てもよい。
【0039】導電性支持体は、金属のように支持体その
ものに導電性があるものか、または表面に導電剤層を有
するガラスもしくはプラスチックの支持体を使用するこ
とができる。後者の場合好ましい導電剤としては金属
(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、
インジウム等)、炭素、もしくは導電性の金属酸化物
(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をド
ープしたもの等)が挙げられる。上記導電剤層の厚さ
は、0.02〜10μm 程度であることが好ましい。導
電性支持体は表面抵抗が低い程よい。好ましい表面抵抗
の範囲としては100Ω/cm2 以下であり、さらに好ま
しくは40Ω/cm2 以下である。この下限には特に制限
はないが、通常0.1Ω/cm2 程度である。導電性支持
体は実質的に透明であることが好ましい。実質的に透明
であるとは光の透過率が10%以上であることを意味
し、50%以上であることが好ましく、70%以上が特
に好ましい。透明導電性支持体としてはガラスもしくは
プラスチックに導電性の金属酸化物を塗設したものが好
ましい。この中でもフッ素をドーピンクした二酸化スズ
からなる導電層を低コストのソーダ石灰フロートガラス
でできた透明基板上に堆積した導電性ガラスが特に好ま
しい。また、低コストでフレキシブルな光電変換素子ま
たは太陽電池には、透明ポリマーフィルムに上記導電層
を設けたものを用いるのがよい。透明ポリマーフィルム
には、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチ
レンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレ
ート(PEN)、シンジオクタチックポリスチレン(S
PS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカ
ーボネート(PC)、ポリアクレート(PAR)、ポリ
スルフォン(PSF)、ポリエステルスルフォン(PE
S)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフ
ィン、ブロム化フェノキシ等がある。透明導電性支持体
を用いる場合、光はその支持体側から入射させることが
好ましい。この場合、導電性金属酸化物の塗布量はガラ
スもしくはプラスチックの支持体1m2当たり0.01〜
100gが好ましい。
【0040】半導体微粒子を導電性支持体上に(導電層
を有する支持体の場合は、その導電層側に)塗設する方
法としては、半導体微粒子の分散液またはコロイド溶液
を導電性支持体上に塗布する方法、半導体微粒子の前駆
体を導電性支持体上に塗布し空気中の水分によって加水
分解して半導体微粒子膜を得る方法(ゾル−ゲル法)な
どが挙げられる。半導体微粒子の分散液を作成する方法
としては前述のゾル−ゲル法の他、乳鉢ですり潰す方
法、ミルを使って粉砕しながら分散する方法、あるいは
半導体を合成する際に溶媒中で微粒子として析出させそ
のまま使用する方法等が挙げられる。分散媒としては水
または各種の有機溶媒(例えばメタノール、エタノー
ル、イソプロピルアルコール、ジクロロメタン、アセト
ン、アセトニトリル、酢酸エチル等)が挙げられる。分
散の際、必要に応じてポリマー、界面活性剤、酸、もし
くはキレート剤などを分散助剤として用いてもよい。
【0041】一般に、半導体微粒子含有層の厚みが増大
するほど単位投影面積当たりの担持色素量が増えるため
光の捕獲率が高くなるが、生成した電子の拡散距離が増
すため電荷再結合によるロスも大きくなる。したがっ
て、半導体微粒子層には好ましい厚さが存在するが、典
型的には0.1〜100μm である。光電気化学電池と
して用いる場合は1〜30μm であることが好ましく、
2〜25μm であることがより好ましい。半導体微粒子
の支持体1m2当たりの塗布量は0.5〜400g、さら
には5〜100gが好ましい。半導体微粒子は導電性支
持体に塗布した後に粒子同士を電子的にコンタクトさせ
るため、および塗膜強度の向上や支持体との密着性を向
上させるために加熱処理することが好ましい。好ましい
加熱処理温度の範囲は40℃以上700℃未満であり、
より好ましくは100℃以上600℃以下である。また
加熱処理時間は10分〜10時間程度である。ポリマー
フィルムなど融点や軟化点の低い支持体を用いる場合
は、高温処理は支持体の劣化を招くため、好ましくな
い。また、コストの観点からもできる限り低温であるこ
とが好ましい。低温化は、先に述べた5nm以下の小さい
半導体微粒子の併用や鉱酸の存在下での加熱処理等によ
り可能である。また、加熱処理後、半導体粒子の表面積
を増大させたり、半導体粒子近傍の純度を高め、色素か
ら半導体粒子への電子注入効率を高める目的で、例えば
四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン
水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行なってもよ
い。半導体微粒子は多くの色素を吸着することができる
ように表面積の大きいものが好ましい。このため半導体
微粒子層を支持体上に塗設した状態での表面積は、投影
面積に対して10倍以上であることが好ましく、さらに
100倍以上であることが好ましい。この上限には特に
制限はないが、通常1000倍程度である。
【0042】半導体に色素を吸着させるには色素溶液中
によく乾燥した半導体微粒子を数時間浸漬する方法が一
般的である。色素の吸着は室温で行ってもよいし、特開
平7−249790号に記載されているように加熱還流
して行ってもよい。色素の吸着は半導体微粒子の塗布前
に行っても塗布後に行ってもよいし、また、半導体微粒
子と色素を同時に塗布して吸着させても良いが、塗布後
の半導体微粒子膜に吸着させるのが好ましい。半導体微
粒子膜を加熱処理する場合の色素吸着は加熱処理後に行
うことが好ましく、加熱処理後、塗布膜表面に水が吸着
する前にすばやく色素を吸着させるのが特に好ましい。
未吸着の色素は洗浄によって除去することが望ましい。
吸着する色素は1種類でもよいし、数種混合して用いて
もよい。用途が光電気化学電池である場合、光電変換の
波長域をできるだけ広くするように混合する色素が選ぶ
ことができる。色素の使用量は、全体で、支持体1m2
たり0.01〜100m モルが好ましい。また、色素の
半導体微粒子に対する吸着量は半導体微粒子1gに対し
て0.01〜1m モルが好ましい。このような色素量と
することによって、半導体における増感効果が十分に得
られる。これに対し、色素量が少ないと増感効果が不十
分となり、色素量が多すぎると、半導体に付着していな
い色素が浮遊し増感効果を低減させる原因となる。
【0043】また、会合など色素同士の相互作用を低減
する目的で無色の化合物を共吸着させてもよい。共吸着
させる疎水性化合物としてはカルボキシル基を有するス
テロイド化合物(例えばコール酸)等が挙げられる。ま
た、余分な色素の除去を促進する目的で、色素を吸着し
た後にアミン類を用いて半導体微粒子の表面を処理して
もよい。好ましいアミン類としてはピリジン、4−tert
−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン等が挙げられ
る。これらが液体の場合はそのまま用いてもよいし有機
溶媒に溶解して用いてもよい。
【0044】以下、電荷移動層と対極について詳しく説
明する。電荷移動層は色素の酸化体に電子を補充する機
能を有する層である。代表的な例としては酸化還元対を
有機溶媒に溶解した液体(電解液)、酸化還元対を有機
溶媒に溶解した液体をポリマーマトリクスに含浸したい
わゆるゲル電解質、酸化還元対を含有する溶融塩などが
挙げられる。さらには固体電解質やホール輸送材料を用
いることもできる。
【0045】本発明の電解液に用いられる電解質はI2
と各種のヨウ化物(たとえばLiI、NaI、KI、C
sI、CaI2 などの金属ヨウ化物、4級イミダゾリウ
ム化合物のヨウ素塩、4級ピリジニウム化合物のヨウ素
塩、テトラアルキルアンモニウム化合物のヨウ素塩な
ど)、Br2 と各種の臭化物(たとえばLiBr、Na
Br、KBr、CsBr、CaBr2 などの金属臭化
物、テトラアルキルアンモニウムブロマイドやピリジニ
ウムブロマイドなど4級アンモニウム化合物の臭素塩な
ど)、フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩やフェロセ
ン−フェリシニウムイオンなどの金属錯体の組み合わ
せ、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール−アルキル
ジスルフィドなどのイオウ化合物の組み合わせ、アルキ
ルビオローゲン(例えばメチルビオローゲンクロリド、
ヘキシルビオローゲンブロミド、ベンジルビオローゲン
テトラフルオロボレート)とその還元体の組み合わせ、
ポリヒドロキシベンゼン類(例えばハイドロキノン、ナ
フトハイドロキノン等)とその酸化体の組み合わせなど
を用いることができる。この中では、LiI、NaI、
KI、CsI、CaI2 の金属ヨウ化物、4級イミダゾ
リウム化合物のヨウ素塩、4級ピリジニウム化合物のヨ
ウ素塩またはテトラアルキルアンモニウム化合物のヨウ
素塩とI2 の組み合わせが好ましい。
【0046】電解液に用いる有機溶媒は、沸点が高けれ
ば電解液揮発による劣化を防ぐことができる。また光電
変化素子の短絡電流密度、変換効率等の性能上からは、
有機溶媒の粘度が低く、誘電率が大きいことが好まし
い。すなわち、粘度が低いことによっては、イオン移動
度を向上させたりする効果が得られ、誘電率が大きいこ
とによっては、有効キャリアー濃度を向上させる効果が
得られる。具体的な有機溶媒としては非プロトン性の極
性溶媒(例えばアセトニトリル、炭酸プロピレン、炭酸
エチレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシ
ド、スルホラン、1,3−ジメチルイミダゾリノン、3
−メチルオキサゾリジノン等)が挙げられる。ゲル電解
質のマトリクスに使用されるポリマーとしては例えばポ
リアクリロニトリル、ポリビニリデンフルオリド等が挙
げられる。
【0047】酸化還元対は電子のキャリアになるのであ
る程度の濃度が必要である。液体あるいはゲル電解質と
して用いる場合の溶液中の好ましい濃度としては合計で
0.01モル/リットル以上であり、より好ましくは0.1
モル/リットル以上であり、特に好ましくは0.3モル/リッ
トル以上である。この場合の上限には特に制限はないが、
通常5モル/リットル程度である。
【0048】溶融塩としては例えば沃化リチウムと他の
少なくとも1種類のリチウム塩(例えば酢酸リチウム、
過塩素酸リチウム等)が挙げられ、これらにポリエチレ
ンオキシド等のポリマーを混合することにより、室温で
の流動性を高めてもよい。この場合のポリマーの添加量
は1〜50wt%である。ホール輸送材料としては芳香族
アミン類、ポリピロール、ポリチオフェン等が挙げられ
る。
【0049】対極は、光電変換素子を光電気化学電池と
したとき、光電気化学電池の正極として働くものであ
る。対極は通常前述の導電性支持体と同義であるが、強
度が十分に保たれるような構成では支持体は必ずしも必
要でない。ただし、支持体を有する方が密閉性の点で有
利である。感光層に光が到達するためには、前述の導電
性支持体と対極の少なくとも一方は実質的に透明でなけ
ればならない。本発明の光電気化学電池においては、導
電性支持体が透明であって太陽光を支持体側から入射さ
せるのが好ましい。この場合対極は光を反射する性質を
有することがさらに好ましい。光電気化学電池の対極と
しては金属もしくは導電性の酸化物を蒸着したガラスま
たはプラスチックを使用でき、また、金属薄膜を5μm
以下、好ましくは5nm〜3μm の範囲の膜厚になるよう
に、蒸着やスパッタリングなどの方法により形成して作
成することもできる。本発明では白金を蒸着したガラス
もしくは蒸着やスパッタリングによって形成した金属薄
膜を対極とすることが好ましい。
【0050】本発明の光電気化学電池では構成物の劣化
や内容物の揮散を防止するために電池の側面をポリマー
や接着剤等で密封するのが好ましい。
【0051】
【実施例】以下、本発明を実施例によって具体的に説明
する。 実施例1 1.二酸化チタン粒子含有塗布液の作製 オートクレーブ温度を230℃にした以外はバーブのジ
ャーナル・オブ・アメリカン・セラミック・ソサイエテ
ィ 80巻3157頁記載の方法と同様の方法で二酸化
チタン濃度11重量%の二酸化チタン分散物を得た。で
きた二酸化チタン粒子の平均サイズは約10nmであっ
た。この分散物に二酸化チタンに対し30重量%のポリ
エチレングリコール(分子量20000、和光純薬製)
を添加し、混合し塗布液を得た。
【0052】2.色素を吸着した二酸化チタン電極の作
成 フッ素をドープした酸化スズをコーティングした透明導
電性ガラス(日本板硝子製、表面抵抗は約10Ω/cm2)
の導電面側にこの塗布液をドクターブレードで140μ
m の厚みで塗布し、25℃で30分間乾燥した後、電気
炉(ヤマト科学製マッフル炉FP−32型)で450℃
にて30分間焼成した。二酸化チタンの塗布量は15g
/m2であり、膜厚は10μm であった。ガラスを取り出
し冷却した後、表1に示す色素のエタノール溶液(3×
10-4モル/リットル)に3時間浸漬した。色素の染着した
ガラスを4−tert−ブチルピリジンに15分間浸漬した
後、エタノールで洗浄し自然乾燥させた。色素の塗布量
は、色素の種類に応じ、適宜0.1〜10 mモル/m2
範囲から選択した。
【0053】3.光電気化学電池の作成 上述のようにして作成した表1に示した色素により色増
感されたTiO2 電極基板(2cm×2cm)それぞれにつ
いて、これと同じ大きさの白金蒸着ガラスと重ね合わせ
た(図1参照)。次に、両ガラスの隙間に毛細管現象を
利用して電解液(アセトニトリルとN−メチル−2−オ
キサゾリジノンの体積比90対10の混合物を溶媒とし
た沃素0.05モル/リットル、沃化リチウム0.5モル/
リットルの溶液)をしみこませ、TiO2 電極中に導入し、
表1のそれぞれの色素で増感された光電気化学電池を得
た。本実施例により、図1に示したとおり、導電性ガラ
ス1(ガラス上に導電剤層2が設層されたもの)、Ti
2 電池3、色素層4、電解液5、白金層6およびガラ
ス7が順に積層された光電気化学電池が作成された。
【0054】4.光電変換波長と光電変換効率の測定 本発明の光電変換素子の光電変換能をオプテル社製のIP
CE (Incident Photonto Current Conversion Efficienc
y) 測定装置によって測定した。それぞれの色素を用い
た光化学電池が最大変換能を示す波長とその波長の単色
光での光電変換効率を表1にまとめた。
【0055】
【表1】
【0056】本発明のいずれかの色素も高い光電変換特
性が認められる。
【0057】
【発明の効果】本発明により、比較的安価な有機色素を
用いた、高い光電変換特性を有する色素増感光電変換素
子および光電気化学電池が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で作成した光電気化学電池の構成を示す
断面図である。
【符号の説明】
1 導電性ガラス 2 導電剤層 3 TiO2 電極 4 色素層 5 電解質 6 白金層 7 ガラス
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岡崎 正樹 神奈川県南足柄市中沼210番地 富士写真 フイルム株式会社内 Fターム(参考) 5F051 AA14 5H032 AA06 AS16 EE02 EE16 EE20

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記式(I)または(II)で表されるポ
    リメチン色素によって増感された半導体微粒子を用いた
    光電変換素子。 【化1】 式(I)中、Qは5員または6員の含窒素ヘテロ環を完
    成するために必要な原子団を表し、Qは縮環していても
    置換基を有していてもよい。Zは3ないし9員環を完成
    するために必要な原子団を表し、炭素原子、酸素原子、
    窒素原子、硫黄原子および水素原子から選ばれる原子に
    より構成される。L1 、L2 、L3 、L 4 およびL5
    それぞれ独立に無置換または置換基を有するメチン基を
    表す。n 1 は0から4までの整数を表し、n2 は0また
    は1である。Rは置換基を表す。Wは電荷を中和させる
    のに必要な場合の対イオンを表す。式(II)中、Q’は
    Qと同義であり、Z’はZと同義である。L6 、L7
    8 、L9 およびL10はL1 〜L5 と同義である。n3
    はn1 と同義であり、n4はn2 と同義である。R’は
    Rと同義であり、W’はWと同義である。
  2. 【請求項2】 前記式(I)または式(II)において、
    ZまたはZ’によって完成される環が、下記式(III)で
    表される環であることを特徴とする請求項1の光電変換
    素子。 【化2】 式(III) 中、Y1 およびY2 は、それぞれ独立に酸素原
    子、硫黄原子またはC(CN)R''を表す。R''はシア
    ノ基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基またはカル
    ボンアミド基を表す。
  3. 【請求項3】 式(III) において、Y1 が酸素原子であ
    ることを特徴とする請求項2の光電変換素子。
  4. 【請求項4】 式(III) において、Y1 およびY2 が酸
    素原子であることを特徴とする請求項2の光電変換素
    子。
  5. 【請求項5】 式(I)または(II)において、Qまた
    はQ’によって完成される含窒素ヘテロ環がインドレニ
    ン環、チアゾール環、オキサゾール環、セレナゾール
    環、イミダゾール環、2-キノリン環、4-キノリン環また
    はこれらのベンゾ縮環体由来の核であることを特徴とす
    る請求項1〜4のいずれかに記載の光電変換素子。
  6. 【請求項6】 式(I)または(II)で表されるポリメ
    チン色素によって増感された半導体微粒子が酸化チタン
    微粒子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか
    に記載の光電変換素子。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれかに記載の光電変
    換素子を用いた光電気化学電池。
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