JP2000226470A - 樹脂添加剤 - Google Patents

樹脂添加剤

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JP2000226470A
JP2000226470A JP11026319A JP2631999A JP2000226470A JP 2000226470 A JP2000226470 A JP 2000226470A JP 11026319 A JP11026319 A JP 11026319A JP 2631999 A JP2631999 A JP 2631999A JP 2000226470 A JP2000226470 A JP 2000226470A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 樹脂添加剤 【解決手段】 無機粒子の表面をタンニン酸で処理し、
次に糖類で処理した後、更にカップリング剤で表面処理
して得られる樹脂添加剤。該樹脂添加剤は熱可塑性樹脂
の加熱、溶融時に樹脂に熱安定性を付与すると同時にI
ZOT衝撃強度の低下を防止する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はポリカーボネート樹
脂(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ
エチレンテレフタレート(PET)あるいは、これらどう
しのブレンド、あるいはこれらの1つ、または複数の樹
脂に他の樹脂がブレンドされたような熱可塑性樹脂が各
種成形工程において加熱溶融されるときに熱分解を起こ
し、機械的性質が低下する。この時の熱分解を防ぎ、か
つ衝撃強度を大きく低下させない樹脂添加剤に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】樹脂材料、特にPC、
PBT、PETの各樹脂は熱溶融における分子量の低下
が激しく、このため各成形工程で与えられる熱や、混練
時のせん断応力によって分子量が著しく低下していた。
従って、製品のリサイクルはもちろんのこと、成形時に
発生するスプール、ランナーのリサイクルは困難であっ
た。また、本発明者らの研究によれば、タンニン酸によ
って表面処理された無機粒子を前述のような樹脂に添加
することによって加熱、溶融時の樹脂の分子量低下を抑
制することはできたが、IZOT衝撃強度は低下すると
いう課題があった。本発明は無機粒子の表面をタンニン
酸溶液に接触せしめて処理し、かつその上から糖類にて
表面処理し、更にカップリング剤で表面処理して多層の
表面処理を行うことによって、タンニン酸による樹脂の
熱安定化と糖類による、衝撃応力の緩和を図り、次にカ
ップリング剤によって無機粒子とマトリックス樹脂との
結合を強固にして樹脂の劣化防止とIZOT衝撃強度の
低下防止を同時に果たす樹脂添加剤を提供することを目
的とする。
【0003】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、無機粒子
をタンニン酸によって表面処理し、これを更に糖類で表
面処理後カップリング剤で更に表面処理することによっ
て得られた樹脂添加剤を熱可塑性樹脂に添加することに
より、該樹脂の加熱、溶融時の分子量低下を抑制し、か
つIZOT衝撃強度の低下を防止することができること
を見出した。
【0004】本発明で用いられる無機粒子は特に限定さ
れず、本発明の目的に有効に使用し得るものであればい
かなる無機粒子でもよく、具体的に例示すればシリカ、
無水シリカ、シリカゲルあるいはタルク、クレー、マイ
カ、ケイ酸アルミニウム、カオリナイトなどのシリカ
塩、のほかアルミナやアルミン酸塩などのその塩などが
挙げられる。なお無機材料としてガラス状態にある無機
物質すなわちガラスも本発明で使用することができ、酸
化物ガラス特にカイ酸塩ガラス、ガラス繊維の粉末、ガ
ラスビーズ、ガラスバルーン、フライアッシュなど各種
のものが使用できる。またカーボンやカーボン繊維の粉
末なども無機粒子として使用することができる。これら
のうちシリカ粉末などは天然にも産出することから経済
性に優れ特に好ましく使用される。また使用される無機
粒子の粒径や形状などは特に限定されず、その種類、使
用目的に応じて適宜選択して使用される。
【0005】次に本発明で用いられるタンニン酸は加水
分解によって(2)式で示される没食子酸を生成する多
価フェノール化合物であり、広く自然界の植物に含まれ
る。タンニン酸には加水分解型と縮合型の2種類がある
といわれているが、いづれも天然化合物であるため、構
造の異なるタンニン酸が多数存在する。本発明で用いら
れるタンニン酸はどちらであっても構わない。またタン
ニン酸はタンニンとも呼ばれており、本発明では特に区
別はしない。
【0006】代表的な加水分解型タンニンであるチャイ
ナタンニン(Chinese gallotannin)を(1)式に示し
た。更に、チャイナタンニンに関して述べるなら、没食
子酸基10個がブドウ糖残基の周囲に、かつ同一表面上
に配座し、更に2個の没食子酸基を垂直方向に結合させ
たものであることが明らかになっている。しかし、化合
物中心は必ずしもブドウ糖に限られることもなく、セル
ローズ系の化合物であったりする。また、タンニン酸の
加水分解で得られる(2)式の没食子酸のジデプシドな
ども使用することができる。この様にタンニン酸は広く
自然界の植物に含まれる化合物であるため、部分的に化
学構造が異なることは、容易に類推される。本発明で
は、加水分解型タンニンと縮重合型タンニンの区別もし
ないで、同意語として用いることができる。(3)式と
(4)式に、化学構造が異なるタンニンとしてケブロタ
ンニン(3)及びトルコタンニン(4)を示した。
【0007】なお染料固定効果や皮のナメシ効果を持つ
多価フェノール化合物を「合成タンニン」と言われてい
るが、本発明では、この合成タンニンの中で本発明の目
的に効果的に用いられる化合物も使用することができ
る。現在タンニン酸は、日用品としてはインク、医薬用
としては止血剤、工業用としては皮の鞣し剤や染色の時
の媒染剤として用いられている。タンニン酸は水や低級
アルコールにきわめて良く溶けるため、高濃度の溶液と
して用いることができる。
【0008】
【化1】 無機粒子のタンニン酸処理は、タンニン酸の溶液に無機
粒子を加えて撹拌することによりタンニン酸を吸着させ
た後、無機粒子を濾別、乾燥することにより行なわれ
る。この場合タンニン酸の使用量は処理される無機粒子
に対してタンニン酸を0.5〜6.0重量%(wt%)
の量で含む溶液で処理することが望ましい。タンニン酸
の量が0.5wt%より少ないと樹脂の熱安定効果がな
く、また6.0wt%より多くても効果は変わらず、そ
れ以上の使用は無意味である。次にタンニン酸処理で用
いられるタンニン酸の溶媒としては、水、低級アルコー
ル類、テトラヒドロフラン、トルエン、ベンゼン、アセ
トン、アセトニトリル、各種ケトン類、エステル類など
が用いられるが、好ましくは、水、低級アルコールが用
いられる。本発明で用いられるタンニン酸溶液の濃度と
しては、無機粒子表面に吸着させる際の温度におけるタ
ンニン酸の飽和濃度以下で有れば、特に限定は無く、い
かなる濃度のものでも使用できる。また、無機粒子にタ
ンニン酸を吸着させる際の温度は特に限定されないが、
通常室温で実施される。またタンニン酸は2種類以上を
使用することもできる。
【0009】本発明で用いられる糖類は単糖類、少糖類
及び多糖類を含みいろいろのものが使用し得る。特に砂
糖、ブドウ糖、麦芽糖、果糖などが好都合であるが、ア
ントシアンやアントシアニジン、サポニンなどの多糖類
及びこれらの誘導体であってももちろん構わない。糖類
はカップリング剤と同様の働きをなすため、カップリン
グ剤と同量を用いればよく、その使用範囲はタンニン酸
処理された無機粒子に対し、0.4〜4.2wt%が好
ましい。糖類の量が少なすぎると効果が無く、多すぎる
と可塑剤的な働きをすることによって樹脂の機械的強度
が低下する。
【0010】タンニン酸処理された無機粒子(粒子1と
略称する)の糖類による処理は例えば水などの溶媒に処
理すべき粒子1の0.4〜4.2wt%に相当する糖類
を溶解し、これに該処理すべき粒子1を加えて十分に撹
拌して糖類を吸着させ、次いで処理された粒子1を濾
別、乾燥して糖類処理された粒子1(粒子2と略称す
る)を得る方法が、使用されるが、この場合、溶媒に対
する糖類及び粒子1の添加順序はどちらが先であっても
よい。また糖類による処理条件については特に限定はな
く、処理温度、処理時間及び用いられる溶媒の種類や量
などについては使用される無機粒子や糖類の種類や量な
どに応じて適宜選択して実施される。なお、使用する糖
類は2種以上を用いることもできる。また、糖類による
処理方法はこれに限定されずどのような方法でも差支え
ない。ここで得られた粒子2は更に次のカップリング剤
による表面処理を受ける。
【0011】カップリング剤は、本発明ではシラン系カ
ップリング剤が好ましく用いられその中でも末端基がエ
ポキシ基、ビニル基、アミノ基などのものが好ましく使
用される。これらのシラン系カップリング剤としては具
体的には、例えばビニルトリエトキシシラン、γ−メタ
アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシ
ドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピ
ルトリエトキシシランおよびトリフロロプロピルメチル
ジメトキシシランなどを挙げることができるが、特に好
ましいシラン系カップリング剤としてはγ−メタアクリ
ロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシ
プロピルトリメトキシシラン、トリフロロプロピルメチ
ルジメトキシシランなどを挙げることができる。カップ
リング剤は、タンニン酸処理された無機粒子の重量に対
し、0.4〜4.2wt%で用いられ、更に好ましくは
0.8〜2.5wt%で用いる。カップリング剤による
表面処理量が少ないと効果が無く、多すぎるとカップリ
ング剤が可塑剤的役割を樹脂中で果し、樹脂の機械的特
性を低下させるので好ましくない。
【0012】粒子2のカップリング剤による処理は、い
ろいろな方法で実施することができるが、例えば水また
はトルエン、キシレンなどの有機溶媒中にカップリング
剤処理される粒子2の製造に用いられた粒子1の0.4
〜4.2wt%に相当するカップリング剤を添加した
後、これにカップリング剤処理される粒子2を加えて十
分に撹拌混合してカップリング剤を吸着させ、次いで処
理された粒子2を濾別、乾燥してカップリング剤処理さ
れた粒子2(本発明の樹脂添加剤)を得るという方法で
実施される。この場合、溶媒に対するカップリング剤及
び粒子2の添加順序はどちらが先であってもよい。また
カップリング剤による処理条件については特に限定はな
く、処理温度、処理時間、用いる溶媒の種類や量などに
ついては、使用される無機粒子の種類やカップリング剤
の種類及びこれらの使用量などに応じて適宜選択して実
施される。またカップリング剤は2種以上を用いること
もできる。
【0013】なお、カップリング剤による処理方法とし
ては、この他に粒子2にカップリング剤またはカップリ
ング剤の溶液を直接スプレーする方法があり、この場合
には、スプレー後、スプレー処理された粒子2を密閉容
器中で室温乃至約40℃の温度で数日〜約1ヶ月くらい
放置すると一層効果的である。また粒子2とカップリン
グ剤及び樹脂を同時に溶融混練する方法なども使用でき
るが、本発明ではこれらの方法に限定されることはな
く、いかなる方法を使用してもよい。
【0014】また本発明の樹脂添加剤を製造する場合の
無機粒子の処理順序は通常最初にタンニン酸処理を行な
い、次いで糖類による処理を行ない、最後にカップリン
グ剤による処理が行なわれるが、この処理順序はこれに
限定されず、どのような順序でも行なうことができる。
【0015】本発明の樹脂添加剤が添加される対象とな
る樹脂は特に限定されないがポリカーボネート樹脂、あ
るいは熱可塑性ポリエステル、中でもポリエチレンテレ
フタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが好都合
である。更にこれらどうしのブレンド、及びこれらの1
つ、または複数の組み合わせと他の樹脂とのブレンド樹
脂例えばPC/ABS、PBT/ABS、PC/PB
T、PC/PETおよびPC/ポリスチレンなどのブレ
ンド樹脂が好ましく用いられる。
【0016】なお、本発明の樹脂添加剤は、一般に樹脂
に対して0.5〜3.5wt%添加して使用される。
【0017】タンニン酸によって表面処理された無機粒
子は表面にタンニン酸の分子が強固に付着している。一
方、樹脂が熱分解する場合ラジカル分子を発生させる
が、このラジカル分子を安定分子に変化させれば樹脂の
分解を抑制できる。タンニン酸は多くの水酸基を持ち、
この水酸基が樹脂の分解によって発生するラジカルを補
足する。しかし無機粒子の表面に強固に付着したタンニ
ン酸の外側にも水酸基が数多く並んでいると考えられ、
その結果、マトリックス樹脂と濡れ性があまりないと考
えられる。そのため、樹脂と粒子が強固に結合しないこ
とになる。従ってIZOT衝撃強度はもとの樹脂本来の
値よりも大きく低下することになる。これをタンニン酸
と糖によって表面処理された無機粒子をカップリング剤
によってマトリックス樹脂と強固に接着することによ
り、樹脂の安定化とIZOT衝撃強度の低下を抑制する
という2つのことが可能になると思われる。一方、糖類
がタンニン層と、カップリング剤層の間にあることによ
り、樹脂に加わる応力を分散する、いわゆるクッション
の役割を果たすことにより、大きなIZOT衝撃強度を
得ることができる。しかし本発明はかかる理由によって
制約されるものではない。
【0018】このようにして得られたタンニン酸処理さ
れた無機粒子は熱可塑性樹脂の加熱、溶融時の分子量低
下を抑制し、更にその上を糖類、更にカップリング剤に
よって処理された無機粒子は、前述のように樹脂の分子
量低下を抑制するだけでなく、IZOT衝撃強度の更に
大きい樹脂とするような樹脂添加剤となる。
【0019】
【実施例】以下さらに実施例及び比較例により本発明を
詳しく説明する。
【0020】実施例1 300mlビーカーに純水200ml取り、これにタン
ニン酸(小宗科学(株)製チャイナタンニン;試薬1
級)を3g溶解した。これにシリカ粉末(UniminSpecia
lity Minerals Inc. 製IMSIL A−25;平均粒
径3.2μm)を100g投入した。タンニン酸の量は
この場合3wt%に当たる。これをガラス棒で10分間
撹拌した。さらにブッフナーロートを用いて吸引ろ過
し、乾燥機(大和科学(株)製D−30型)にて60℃
24Hr乾燥しこれを便宜上TN3と呼ぶ。純水20
0mlに2gのブドウ糖(和光純薬工業(株)製 試薬
特級)を溶解し、TN3を加え、ガラス棒で10分撹拌
し、ブッフナーロートでろ過し、同様に60℃ 24H
r乾燥した。これをTNB3と呼ぶ。次にキシレン20
0mlに2gのシランカップリング剤(信越化学工業
(株)製KBM503)を加え、軽く溶解したものの中
にTNB3を加えた。ガラス棒で10分撹拌後同様にブ
ッフナーロートでろ過し、同様に乾燥機にて60℃ 1
Hr乾燥しキシレンのにおいがないことを確認した。こ
れをPC樹脂(帝人化成(株)製パンライトL−125
0 Mn:24700、Mw:60800、Mw/M
n:2.46、IZOT衝撃強度:66kgfcm/c
m)10kgに加え紙袋の中で混合したところ、多少袋
の底の方で粉とペレットが別れたところがあったが、概
ねペレットをまぶすような状態で混合することができ
た。この樹脂を射出成形機(東芝機械IS−170型)
のホッパーに全量投入し、ノズル温度280℃、射出圧
995kgf/cm2、保圧595kgf/cm2、射出時
間、1.61sec、保圧時間21.4secで各種試
験片が共取り可能な金型を用いて成形して各種試験片を
製造した。IZOT衝撃試験片はJIS K7110、
引張り強度試験片はJIS K7113、曲げ強度試験
片はJIS K7203に準拠しており、更に2.5m
m×127mm×254mmの平板が同時に成形できる
金型を用いて成形した。この時の成形品を図1に示し
た。
【0021】同成形条件でPC材料の100%のリサイ
クルを試み、成形した試験片を総て粉砕機(日水化工
(株)FNSK−15D 1.5kW)を用いて粉砕し
た。粉砕された樹脂は再度、除湿乾燥機((株)カワタ
製DR−30Z型)、及び温調機((株)加藤理器製作
所製DN2−20−3型)を用いて110℃、4Hr乾
燥し、同条件で射出成形を4回繰り返した。IZOT衝
撃試験片はJIS K7110に準拠した大きさであ
る。これを東洋精機製作所(株)製JISLD型IZO
T試験機を用いVノッチは同社製B3515型にてVノ
ッチを入れた。このようにして衝撃強度を求めたところ
67kgfcm/cmであった。更に、この試験片の一
部を採取してこれを共栓付き三角フラスコにテトラヒド
ロフラン(THF)溶媒と共に入れ、この複合系を0.0
5wt%の濃度となる様に調整後、室内に一昼夜放置し
て複合系を溶解した。これを、マイクロフィルター(倉
敷紡績(株)製、GLクロマトディスク13N、非水
系)を用いてシリカ粒子を濾過、除去し、PC分子量測
定試料とした。平均分子量の測定は、あらかじめ標準ポ
リスチレン(PRESSURE CHEMICAL Co. 製 Standard P
S、Mw/Mn=1.06)をTHF溶媒に試料と同濃
度で溶解し、分子量とカラム排出時間の検量線から相対
的に換算して求めた。結果を表1に記載した。
【0022】比較例1 なにも入れないPCを用いて射出成形した以外は実施例
1と同条件でIZOT衝撃強度を測定した。結果を表1
に併せて記載した。
【0023】比較例2 実施例1の中で、タンニン酸処理を行っただけのものに
替えた以外は、全く同様にしてIZOT衝撃強度及び分
子量を測定した。結果を表1に示す。
【0024】実施例2 無水シリカに対し実施例1と同様に同じ操作でタンニン
酸3wt%で処理をしたTN3を5kgほど作った。こ
の中より100gづつ分けてブドウ糖を0.4、0.
7、1.5、2.0、3.0、4.0wt%を加え、更
にカップリング剤は2wt%に固定して処理を行った。
便宜上これをTNS0.4、TNS0.7、TNS1.
5、TNS2.0、TNS3.0、TNS4.0、と呼
ぶ。これを実施例1と同様にしてIZOT衝撃強度を測
定した結果を表1に併せて記載する。このようにシラン
カップリング剤処理をしたものはIZOT衝撃強度の低
下が少ない。
【0025】比較例3 実施例2の中で行っていなかった0.2並びに4.5w
t%のブドウ糖を加えたもの以外は実施例2と全く同様
の処理を行い、IZOT衝撃強度を測定したところ、表
1のようになった。このようにブドウ糖の量が少ない場
合IZOT衝撃強度は比較的小さく、多くてもあまり効
果が得られない。
【0026】実施例3 実施例1の中でPCをPBT樹脂(ポリプラスチック
(株)製ジュラネックス3200)、PET((株)ク
ラレ製クラペット1030)、PC/ABSアロイ(宇
部サイコン(株)製ウベロイCX10A)、PBT/A
BS(ダイセル化学工業(株)製ノバロイ−B、B15
00)に変えた以外は実施例1と全く同様に行った。結
果を表1に併せて記載する。
【0027】比較例4 実施例3で用いたそれぞれの樹脂を、何も添加せずその
まま実施例1と同様に成形を繰り返しIZOT衝撃強度
を測定した。結果を表1に併せて記載する。このよう
に、無添加のものはIZOT衝撃強度が低下しているこ
とがよく分かる。
【0028】
【表1】 実施例4 実施例1のブドウ糖の代わりに砂糖(市販グラニュー
糖)を用いた以外は実施例1と全く同様に行った。結果
はIZOT衝撃強度で65kgfcm/cmを得た。
【0029】実施例5 実施例1のブドウ糖に替えてサポニン(和光純薬工業
(株)製 茶の実製)を用いた以外は実施例1と全く同
様に行った。結果はIZOT衝撃強度で63kgfcm
/cmを得た。
【0030】実施例6 実施例1のブドウ糖に替えてデキストリン(和光純薬工
業(株)製 化学用)を用いた以外は実施例1と全く同
様に行った。結果はIZOT衝撃強度で59kgfcm
/cmを得た。
【0031】
【発明の効果】前記の実施例及び比較例で示されたよう
にタンニン酸処理しただけではIZOT衝撃強度は低下
するが、糖類処理及びカップリング剤処理を重ねて行う
ことにより、分子量の低下を抑制することができ更にI
ZOT衝撃強度の低下を抑制することができる。従って
本発明の樹脂添加剤を用いることによって樹脂の熱安定
化と機械的強度の低下防止を併せて達成することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例で用いられた機械的強度測定用
の試験片共取り品である。
【符号の説明】
(a) 落錘試験板 (b) 引張試験片 (c) 熱変形温度試験片 (d) IZOT衝撃強度試験片 (e) 圧縮試験片 (f) 曲げ強度試験片 (g) 色見本板 (h) 樹脂溜り (i) 溶融樹脂の導入口
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成11年11月1日(1999.11.
1)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項2
【補正方法】変更
【補正内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0002
【補正方法】変更
【補正内容】
【0002】
【発明が解決しようとする課題】樹脂材料、特にPC、
PBT、PETの各樹脂は熱溶融における分子量の低下
が激しく、このため各成形工程で与えられる熱や、混練
時のせん断応力によって分子量が著しく低下していた。
従って、製品のリサイクルはもちろんのこと、成形時に
発生するスプール、ランナーのリサイクルは困難であっ
た。また、本発明者らの研究によれば、タンニン酸によ
って表面処理された無機粒子を前述のような樹脂に添加
することによって加熱、溶融時の樹脂の分子量低下を抑
制することはできたが、IZO衝撃強度は低下すると
いう課題があった。本発明は無機粒子の表面をタンニン
酸溶液に接触せしめて処理し、かつその上から糖類にて
表面処理し、更にカップリング剤で表面処理して多層の
表面処理を行うことによって、タンニン酸による樹脂の
熱安定化と糖類による、衝撃応力の緩和を図り、次にカ
ップリング剤によって無機粒子とマトリックス樹脂との
結合を強固にして樹脂の劣化防止とIZO衝撃強度の
低下防止を同時に果たす樹脂添加剤を提供することを目
的とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0003
【補正方法】変更
【補正内容】
【0003】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、無機粒子
をタンニン酸によって表面処理し、これを更に糖類で表
面処理後カップリング剤で更に表面処理することによっ
て得られた樹脂添加剤を熱可塑性樹脂に添加することに
より、該樹脂の加熱、溶融時の分子量低下を抑制し、か
つIZO衝撃強度の低下を防止することができること
を見出した。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正内容】
【0017】タンニン酸によって表面処理された無機粒
子は表面にタンニン酸の分子が強固に付着している。一
方、樹脂が熱分解する場合ラジカル分子を発生させる
が、このラジカル分子を安定分子に変化させれば樹脂の
分解を抑制できる。タンニン酸は多くの水酸基を持ち、
この水酸基が樹脂の分解によって発生するラジカルを補
足する。しかし無機粒子の表面に強固に付着したタンニ
ン酸の外側にも水酸基が数多く並んでいると考えられ、
その結果、マトリックス樹脂と濡れ性があまりないと考
えられる。そのため、樹脂と粒子が強固に結合しないこ
とになる。従ってIZO衝撃強度はもとの樹脂本来の
値よりも大きく低下することになる。これをタンニン酸
と糖によって表面処理された無機粒子をカップリング剤
によってマトリックス樹脂と強固に接着することによ
り、樹脂の安定化とIZO衝撃強度の低下を抑制する
という2つのことが可能になると思われる。一方、糖類
がタンニン層と、カップリング剤層の間にあることによ
り、樹脂に加わる応力を分散する、いわゆるクッション
の役割を果たすことにより、大きなIZO衝撃強度を
得ることができる。しかし本発明はかかる理由によって
制約されるものではない。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正内容】
【0018】このようにして得られたタンニン酸処理さ
れた無機粒子は熱可塑性樹脂の加熱、溶融時の分子量低
下を抑制し、更にその上を糖類、更にカップリング剤に
よって処理された無機粒子は、前述のように樹脂の分子
量低下を抑制するだけでなく、IZO衝撃強度の更に
大きい樹脂とするような樹脂添加剤となる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正内容】
【0020】実施例1 300mlビーカーに純水200ml取り、これにタ
ンニン酸(小宗科学(株)製チャイナタンニン;試薬1
級)を3g溶解した。これにシリカ粉末(Unimin Speci
ality Minerals Inc. 製IMSIL A−25;平均粒
径3.2μm)を100g投入した。タンニン酸の量は
この場合3wt%に当たる。これをガラス棒で10分間
撹拌した。さらにブッフナーロートを用いて吸引ろ過
し、乾燥機(大和科学(株)製D−30型)にて60℃
24Hr乾燥しこれを便宜上TN3と呼ぶ。純水20
0mlに2gのブドウ糖(和光純薬工業(株)製 試薬
特級)を溶解し、TN3を加え、ガラス棒で10分撹拌
し、ブッフナーロートでろ過し、同様に60℃ 24H
r乾燥した。これをTNB3と呼ぶ。次にキシレン20
0mlに2gのシランカップリング剤(信越化学工業
(株)製KBM503)を加え、軽く溶解したものの中
にTNB3を加えた。ガラス棒で10分撹拌後同様にブ
ッフナーロートでろ過し、同様に乾燥機にて60℃ 1
Hr乾燥しキシレンのにおいがないことを確認した。こ
れをPC樹脂(帝人化成(株)製パンライトL−125
0 Mn:24700、Mw:60800、Mw/M
n:2.46、IZO衝撃強度:66kgfcm/c
m)10kgに加え紙袋の中で混合したところ、多少袋
の底の方で粉とペレットが別れたところがあったが、概
ねペレットをまぶすような状態で混合することができ
た。この樹脂を射出成形機(東芝機械IS−170型)
のホッパーに全量投入し、ノズル温度280℃、射出圧
995kgf/cm、保圧595kgf/cm、射出
時間、1.61sec、保圧時間21.4secで各種
試験片が共取り可能な金型を用いて成形して各種試験片
を製造した。IZO衝撃試験片はJIS K711
0、引張り強度試験片はJIS K7113、曲げ強度
試験片はJIS K7203に準拠しており、更に2.
5mm×127mm×254mmの平板が同時に成形で
きる金型を用いて成形した。この時の成形品を図1に示
した。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正内容】
【0021】同成形条件でPC材料の100%のリサイ
クルを試み、成形した試験片を総て粉砕機(日水化工
(株)FNSK−15D 1.5kW)を用いて粉砕し
た。粉砕された樹脂は再度、除湿乾燥機((株)カワタ
製DR−30Z型)、及び温調機((株)加藤理器製作
所製DN2−20−3型)を用いて110℃、4Hr乾
燥し、同条件で射出成形を4回繰り返した。IZO
撃試験片はJIS K7110に準拠した大きさであ
る。これを東洋精機製作所(株)製JISLD型IZO
試験機を用いVノッチは同社製B3515型にてVノ
ッチを入れた。このようにして衝撃強度を求めたところ
67kgfcm/cmであった。更に、この試験片の一
部を採取してこれを共栓付き三角フラスコにテトラヒド
ロフラン(THF)溶媒と共に入れ、この複合系を0.0
5wt%の濃度となる様に調整後、室内に一昼夜放置し
て複合系を溶解した。これを、マイクロフィルター(倉
敷紡績(株)製、GLクロマトディスク13N、非水
系)を用いてシリカ粒子を濾過、除去し、PC分子量測
定試料とした。平均分子量の測定は、あらかじめ標準ポ
リスチレン(PRESSURE CHEMICAL Co. 製 Standard P
S、Mw/Mn=1.06)をTHF溶媒に試料と同濃
度で溶解し、分子量とカラム排出時間の検量線から相対
的に換算して求めた。結果を表1に記載した。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正内容】
【0022】比較例1 なにも入れないPCを用いて射出成形した以外は実施例
1と同条件でIZO衝撃強度を測定した。結果を表1
に併せて記載した。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正内容】
【0023】比較例2 実施例1の中で、タンニン酸処理を行っただけのものに
替えた以外は、全く同様にしてIZO衝撃強度及び分
子量を測定した。結果を表1に示す。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正内容】
【0024】実施例2 無水シリカに対し実施例1と同様に同じ操作でタンニン
酸3wt%で処理をしたTN3を5kgほど作った。こ
の中より100gづつ分けてブドウ糖を0.4、0.
7、1.5、2.0、3.0、4.0wt%を加え、更
にカップリング剤は2wt%に固定して処理を行った。
便宜上これをTNS0.4、TNS0.7、TNS1.
5、TNS2.0、TNS3.0、TNS4.0、と呼
ぶ。これを実施例1と同様にしてIZO衝撃強度を測
定した結果を表1に併せて記載する。このようにシラン
カップリング剤処理をしたものはIZO衝撃強度の低
下が少ない。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正内容】
【0025】比較例3 実施例2の中で行っていなかった0.2並びに4.5w
t%のブドウ糖を加えたもの以外は実施例2と全く同様
の処理を行い、IZO衝撃強度を測定したところ、表
1のようになった。このようにブドウ糖の量が少ない場
合IZO衝撃強度は比較的小さく、多くてもあまり効
果が得られない。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正内容】
【0027】比較例4 実施例3で用いたそれぞれの樹脂を、何も添加せずその
まま実施例1と同様に成形を繰り返しIZO衝撃強度
を測定した。結果を表1に併せて記載する。このよう
に、無添加のものはIZO衝撃強度が低下しているこ
とがよく分かる。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正内容】
【0028】
【表1】 実施例4 実施例1のブドウ糖の代わりに砂糖(市販グラニュー
糖)を用いた以外は実施例1と全く同様に行った。結果
はIZO衝撃強度で65kgfcm/cmを得た。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正内容】
【0029】実施例5 実施例1のブドウ糖に替えてサポニン(和光純薬工業
(株)製 茶の実製)を用いた以外は実施例1と全く同
様に行った。結果はIZO衝撃強度で63kgfcm
/cmを得た。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正内容】
【0030】実施例6 実施例1のブドウ糖に替えてデキストリン(和光純薬工
業(株)製 化学用)を用いた以外は実施例1と全く同
様に行った。結果はIZO衝撃強度で59kgfcm
/cmを得た。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正内容】
【0031】
【発明の効果】前記の実施例及び比較例で示されたよう
にタンニン酸処理しただけではIZO衝撃強度は低下
するが、糖類処理及びカップリング剤処理を重ねて行う
ことにより、分子量の低下を抑制することができ更にI
ZO衝撃強度の低下を抑制することができる。従って
本発明の樹脂添加剤を用いることによって樹脂の熱安定
化と機械的強度の低下防止を併せて達成することができ
る。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図面の簡単な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例で用いられた機械的強度測定用
の試験片共取り品である。
【符号の説明】 (a) 落錘試験板 (b) 引張試験片 (c) 熱変形温度試験片 (d) IZO衝撃強度試験片 (e) 圧縮試験片 (f) 曲げ強度試験片 (g) 色見本板 (h) 樹脂溜り (i) 溶融樹脂の導入口 ─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成12年2月2日(2000.2.2)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項5
【補正方法】変更
【補正内容】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4J002 AA001 CF001 CF061 CF071 CG001 DA016 DE146 DE186 DJ006 DJ016 DJ036 DJ046 DJ056 DL006 FA086 FA106 FB086 FB096 FB106 FB116 FB136 FB146 FB266 FD016 4J037 AA17 AA18 AA24 AA26 AA27 AA30 CB09 CB11 CB23 CB26 CC02 CC24 EE02 EE28 EE43 FF30

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 無機粒子の表面をタンニン酸で処理し、
    次に糖類で表面処理した後、更にカップリング剤で表面
    処理したことを特徴とする樹脂添加剤。
  2. 【請求項2】 タンニン酸で表面処理された無機粒子を
    該無機粒子の0.4〜4.2wt%に該当する糖類で表
    面処理し、更にこの粒子をタンニン酸で表面された無機
    粒子の0.4〜4.2wt%のカップリング剤を用いて
    表面処理した請求項1記載の樹脂添加剤。
  3. 【請求項3】 糖類が、糖及び多糖類であり、またはこ
    れらの混合物であることを特徴とする請求項1記載の樹
    脂添加剤。
  4. 【請求項4】 カップリング剤がシラン系カップリング
    剤であることを特徴とする請求項1記載の樹脂添加剤。
  5. 【請求項5】 無機粒子がシリカ、アルミナ、またはこ
    れらの塩、またはガラスであることを特徴とする請求項
    1記載の樹脂添加剤。
  6. 【請求項6】 添加する樹脂が熱可塑性カーボネート系
    樹脂、またはこのカーボネート系樹脂を含んだ熱可塑性
    樹脂であることを特徴とする請求項1記載の樹脂添加
    剤。
  7. 【請求項7】 添加する樹脂が熱可塑性ポリエステル系
    樹脂、またはこの樹脂を含んだ熱可塑性樹脂であること
    を特徴とする請求項1記載の樹脂添加剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPWO2004009711A1 (ja) * 2002-07-19 2005-11-17 白石工業株式会社 改質炭酸カルシウム及びこれを含むポリマー組成物並びにそれらの製造方法
JP2006225444A (ja) * 2005-02-15 2006-08-31 Tohoku Ricoh Co Ltd 熱可塑性樹脂組成物及び熱可塑性樹脂成形体
JP2006233006A (ja) * 2005-02-24 2006-09-07 Tohoku Ricoh Co Ltd 難燃剤及び難燃性樹脂組成物
WO2013018707A1 (ja) * 2011-08-03 2013-02-07 国立大学法人京都大学 加熱・加圧により硬化する縮合型タンニン含有組成物
JP2014210259A (ja) * 2013-04-02 2014-11-13 富士電機株式会社 樹脂膜形成方法

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