JP2000110041A - 絹の玉糸調スラブ糸及びその製造方法 - Google Patents

絹の玉糸調スラブ糸及びその製造方法

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JP2000110041A
JP2000110041A JP11045195A JP4519599A JP2000110041A JP 2000110041 A JP2000110041 A JP 2000110041A JP 11045195 A JP11045195 A JP 11045195A JP 4519599 A JP4519599 A JP 4519599A JP 2000110041 A JP2000110041 A JP 2000110041A
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slab
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silk
thermoplastic multifilament
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Juichi Takeda
重一 武田
Yasushi Komura
恭史 香村
Nobuhiro Yamaguchi
展弘 山口
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Mitsubishi Rayon Co Ltd
Original Assignee
Mitsubishi Rayon Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】スラブ形態に自然なムラ感があり、後工程通過
性に優れ、布帛としたときにインターレースマークの目
立たない絹の玉糸調スラブ糸の製造方法と、絹の玉糸調
スラブ糸とを提供する。 【解決手段】熱可塑性マルチフィラメント糸Faをオーバ
ーフィード量OFa が5%≦OFa ≦20% で閉塞箱体(5) のメ
ッシュ底部(5a)へ向けて供給し、同閉塞箱体(5) 内のエ
ア攪乱流域において前記糸条Faにもつれや絡みを発生さ
せた後、エアが逆噴射するスラブ形成ノズル(6) を通っ
て前記箱体(5) から引き出し、前記糸条Faにスラブを形
成する。その後、他の熱可塑性マルチフィラメント糸Fb
をオーバーフィード量OFb が0.7%≦OFa ≦5%で供給して
前記糸条Faに合糸し、混繊交絡させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱可塑性マルチフ
ィラメント糸からなる絹の玉糸調スラブ糸と、その製造
方法とに関するものであり、従来得ることのできなかっ
たスラブの長短や太さの変化に自然なムラ感があり、布
帛とした場合に、特殊な意匠表面効果が得られ且つイン
ターレースマーク、ループ、スナール、ネップ等の発生
を抑制できる絹の玉糸調スラブ糸と、その製造方法とに
関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の絹の玉糸調スラブ糸を製造する方
法としては、例えば特公昭49−6508号公報に、マ
ルチフィラメント糸を供給ジェットからメッシュ底部を
もつ閉塞箱体内の前記メッシュ底部に向けてオーバーフ
ィード状態でエアにより噴出し、同閉塞箱体内のエア攪
乱流域により前記マルチフィラメント糸にもつれや絡み
を発生させた後、エアを逆噴射するスラブ形成ジェット
を通過させてスラブを形成して前記閉塞箱体から引き出
す際に、同スラブ形成ジェット内で前記マルチフィラメ
ント糸と他のマルチフィラメント糸とを一緒にし、その
後、合糸−インターレースジェットを通過させ、トルク
ジェットにより仮撚りするスラブ糸の製造方法が開示さ
れている。
【0003】また、例えば特開昭60−99035号公
報には、一方のマルチフィラメント糸をフリクションロ
ーラに巻回接触させた後、流体噴射攪乱ノズルに導入す
ると共に、他方のマルチフィラメント糸を供給ローラに
より前記攪乱ノズルに導入し、両マルチフィラメント糸
を合流させてスラブ糸を製造する方法が開示されてい
る。かかる製造方法においては、前記攪乱ノズルからの
圧力流体の供給量を変化させることにより、同ノズルの
糸条引取力を変化させ、前記一方のマルチフィラメント
糸の同ノズルへの供給量を増減させて、長さ方向に繊度
斑を形成するものである。
【0004】更に、特開昭54−120756号公報に
開示されている製造方法によれば、先ず、糸条を貯留ボ
ックスにオーバーフィードの状態で供給し、同ボックス
内に一時的に貯留した後、前記糸条を先細状の円錐筒内
に間欠的に供給し、同糸条の進行方向と逆方向に流体を
衝突させて糸条にもつれを生じさせながら引き出すこと
で、スラブ糸が製造される。
【0005】かかる上述した公報に開示されたスラブ糸
の製造方法においては、糸条や流体の供給量を変化させ
たり、或いは糸条や流体を間欠的に供給する場合にその
時間を制御することで、例えばスラブの長短や太さをあ
る程度変化させることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うなスラブの長短や太さの変化では不十分であり、絹の
玉糸調スラブ糸と言われる自然なムラ感のあるスラブを
得ることができない。更に、これらの技術はいずれも圧
縮空気を用いてマルチフィラメント糸にもつれや絡みを
発生させ、他のマルチフィラメント糸を合流させてスラ
ブを形成させるためにスラブ部分にループ、スナール、
ネップなどが発生しやすく、後工程で悪影響を及ぼし、
後工程通過性が低下する原因となる。また、このように
スラブ部分にループ、スナール、ネップなどが発生した
スラブ糸は、布帛に織編成した場合に、その布帛表面に
ループ、スナール、ネップなどが発現することとなり、
布帛の品位が低下してしまう。更には、両マルチフィラ
メント糸を合糸した後の混繊交絡条件によっては、圧縮
空気により糸の長手方向に集束状態の強い部分と弱い部
分が生じ、かかるスラブ糸を布帛に織編成した場合に、
布帛には集束状態の異なる部分が斑点のように筋状に現
れる、いわゆるインターレースマークが目立ちやすくな
り、布帛の外観を損なうこととなる。
【0007】本発明はかかる間題点を解決すべくなされ
たものであり、従来、得ることのできなかったスラブの
長短や太さの変化に自然なムラ感のある絹の玉糸調スラ
ブ糸とその製造方法とを提供することを目的としてい
る。更には、ループやたるみが少なく後工程での通過性
が良好で、また、布帛に織編成した場合に、布帛に特殊
意匠表面効果を付与し且つインターレースマーク、ルー
プ、スナール、ネップなどの布帛表面の欠点が目立たな
いスラブ糸とその製造方法とを提供することをも目的と
するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】そこで本発明は、糸条の
長手方向に部分的にスラブが形成された熱可塑性マルチ
フィラメント糸Faと他の熱可塑性マルチフィラメント
糸Fbとが混繊交絡された絹の玉糸調スラブ糸であっ
て、スラブの形成された前記熱可塑性マルチフィラメン
ト糸Faと前記他の熱可塑性マルチフィラメント糸Fb
との沸水収縮率の差が6%以上であることを特徴とする
絹の玉糸調スラブ糸、主要な構成としている。
【0009】本発明の絹の玉糸調スラブ糸を構成する熱
可塑性マルチフィラメント糸Fa,Fbは、例えば、ポ
リエステルマルチフィラメント糸、ポリアクリロニトリ
ルマルチフィラメント糸、ポリアミドマルチフィラメン
ト糸などの熱可塑性合成マルチフィラメント糸や、アセ
テートマルチフィラメント糸などの熱可塑性マルチフィ
ラメント糸を用いることが可能であり、かかる素材は目
的や用途に応じて選択することができる。また、用いる
熱可塑性マルチフィラメント糸の糸断面形態や繊度、染
色特性等に関しても特に限定されるものでなく、得よう
とする意匠の効果、色調効果及び風合いなどを考慮して
選択すればよい。
【0010】かかる絹の玉糸調スラブ糸は、スラブの形
成された前記熱可塑性マルチフィラメント糸Faと、前
記他の熱可塑性マルチフィラメント糸Fbとの沸水収縮
率の差が6%以上であるため、かかるスラブ糸を布帛に
織編成したのちに、染色工程や仕上げ工程などで加熱処
理を施すと、一方の熱可塑性マルチフィラメント糸が他
方の熱可塑性マルチフィラメント糸よりも大きく収縮す
る。このとき本発明の絹の玉糸調スラブ糸おける混繊交
絡されて集束の強い部分と弱い部分とが異なるふくらみ
挙動を示す。その結果、布帛におけるインターレースマ
ークとなる部分がそれ以外の部分のふくらみにより見え
にくくなり、インターレースマークが目立たず、外観に
優れた布帛が得られる。
【0011】この一方の熱可塑性マルチフィラメント糸
と、他の熱可塑性マルチフィラメント糸とは沸水収縮率
の差が6%以上であることが必要であり、前記沸水収縮
率の差が8%以上であることが好ましい。前記沸水収縮
率の差が6%未満であると、上述の布帛におけるインタ
ーレースマークとなる部分以外の部分のふくらみが小さ
く、そのためインターレースマークを十分に隠蔽するこ
とができない。
【0012】また、スラブの形成された前記熱可塑性マ
ルチフィラメント糸Faの沸水収縮率が前記他の熱可塑
性マルチフィラメント糸Fbの沸水収縮率よりも大きい
ことが好ましく、その場合には、インターレースマーク
が目立たず、スラブ部分にループやスナール、ネップな
どが発生するのを効果的に防止できる。
【0013】更に、前記熱可塑性マルチフィラメント糸
Fa,Fbの少なくとも1方をシックアンドシン糸とす
ることが好ましい。その場合には、布帛に織編成した際
に、絹の玉糸使い調の布帛表面効果を付与できると共
に、シックアンドシン糸の糸長方向の繊度斑による異色
効果や交絡斑などを布帛に付与することが可能となる。
また、かかるシックアンドシン糸に熱処理を施してシッ
ク部を脆化させた後、緊張処理により毛羽を誘発させる
ことにより、毛羽を発生させた特殊なスラブ部を有する
絹の玉糸調スラブ糸を得ることも可能となる。
【0014】また、前記熱可塑性マルチフィラメント糸
Fa,Fbの少なくとも1方が分散染料で染色可能であ
り、他方を分散染料以外の染料で染色可能、例えばカチ
オン染料で染色可能として、染色特性の異なる糸組み合
わせとすることもできる。その場合には、特殊染色処理
により、布帛に絹の玉糸使い調の布帛表面効果と、更に
異色染色効果をも付与することができる。
【0015】或いは、前記熱可塑性マルチフィラメント
糸Fa,Fbの少なくとも1方をアセテートマルチフィ
ラメント糸とすることもでき、その場合には、布帛に絹
の玉糸使い調の布帛表面効果と、更にはアセテートマル
チフィラメント糸独特の清涼感や優雅な光沢感とを付与
することができる。
【0016】また、前記熱可塑性マルチフィラメント糸
Fa,Fbの少なくとも1本が高配向未延伸ポリエステ
ルマルチフィラメント糸とすることも好ましい。その場
合には、かかるマルチフィラメント糸の糸特性から、他
の延伸糸では容易に得ることができない紡錘形状の特異
スラブをもつ絹の玉糸調スラブ糸を得ることが可能とな
り、かかるスラブ糸により、布帛の意匠効果のバリエー
ションが広がる。
【0017】なお、用いる熱可塑性マルチフィラメント
糸の単繊維繊度も特に限定されるものではないが、単繊
維繊度を大きくする、例えば6dTex以上とすること
で、得られた織編物の風合いにシャリ感やドライ感をよ
り効果的に付与することができる。一方、単繊維繊度を
小さくする、例えば1.5dTex以下とすることでソ
フト感を効果的に付与することができる。
【0018】更に本発明は、スラブの長短や太さの変化
に自然なムラ感のある絹の玉糸調スラブ糸を製造するた
めに、熱可塑性マルチフィラメント糸Faを供給ノズル
からメッシュ底部をもつ閉塞箱体内の前記メッシュ底部
に向けてオーバーフィード状態でエアにより噴出し、同
閉塞箱体内のエア攪乱流域において熱可塑性マルチフィ
ラメント糸Faにもつれや絡みを発生させ、同熱可塑性
マルチフィラメント糸Faを、エアを糸条の進行方向と
逆方向に噴射するスラブ形成ノズルを通過させてスラブ
を形成しながら前記閉塞箱体から引き出し、スラブの形
成された前記熱可塑性マルチフィラメント糸Faと他の
熱可塑性マルチフィラメント糸Fbとを合糸ガイド部に
おいて合糸した後、両熱可塑性マルチフィラメント糸F
a,Fbを混繊交絡させる絹の玉糸調スラブ糸の製造方
法であって、前記熱可塑性マルチフィラメント糸Faの
オーバーフィード量OFaを5%≦OFa≦20%とす
ること、及び前記他の熱可塑性マルチフィラメント糸F
bのオーバーフィード量OFbを0.7%≦OFb≦5
%とすることを含んでなることを特徴とする絹の玉糸調
スラブ糸の製造方法を他の主要な構成としている。
【0019】本発明にあっては、メッシュ底部をもつ閉
塞箱体内に熱可塑性マルチフィラメント糸Faをいかに
開繊させて貯留するかでスラブの形態がほぼ決定され
る。このスラブの形態は次工程の解舒性や布帛形成後の
物性に影響を及ぼすため、極めて重要となる。前記マル
チフィラメント糸Faを開繊させるのは供給ノズルであ
る。この供給ノズルとしては、インターレースノズル、
旋回流ノズル、推進ノズルなど多種多様の流体ノズルが
あり、そのいずれをも使用可能であり、目的とする加工
糸形態や設備の設置スペースなどの制約に鑑みて任意に
選択が可能である。
【0020】なお、本発明者らがかかる供給ノズルにつ
いて検討を行った結果、エアの推進方向が糸の進行方向
に対して平行に噴射するタイプのノズルは、開織効果が
大きく好ましいことがわかった。例えば、デュポン社製
のTypeXノズルは、開繊性が極めて良好である。
【0021】また、前記閉塞箱体のメッシュ底部とは、
例えば全面に金網メッシュが張設されているようなメッ
シュ構造をもつ底部のことをいう。前記マルチフィラメ
ント糸Faは上述した供給ノズルからエアにより前記メ
ッシュ底部に噴出、激突されて開繊する。ここで仮に前
記閉塞箱体の底部が金網メッシュではなく板材で閉塞さ
れている場合には、前記供給ノズルから噴射された圧縮
エアは前記板材で跳ね返り、その風圧により糸条が吹き
上げられてマルチフィラメント糸が適切に貯留、開繊さ
れない。そのため、前記閉塞箱体の底部はメッシュ底部
とすることが重要となり、更には、メッシュの粗さによ
っても開繊程度に影響を及ぼし、前記メッシュ底部に
は、15〜30メッシュ(2.54cm当たりの本数)
の金網を用いることが好ましい。
【0022】更に、前記スラブ形成ノズルも特にその構
造が限定されるものではなく、目的とする加工糸形態や
設置スペース、設備費などの設備面での制約に鑑みて適
宜選択が可能である。一般的には、単純な推進ノズルを
採用することができ、同ノズルの糸道形状はストレート
状やラッパ状など、いずれの形状であってもよい。但
し、前記スラブ形成ノズルは、糸の進行方向とは逆に閉
塞箱体内へエアを逆噴射させなければならい。これは、
エアのシゴキにより一定以上のもつれや絡みのみを取り
出してスラブを形成するためであり、糸の進行方向にエ
アを噴射すると、スラブが全く形成されない。
【0023】また、前記スラブ形成ノズルのノズルエア
圧はスラブ長さの規制や加工安定性に影響を及ぼすた
め、その設定は重要となる。前記スラブ形成ノズルのノ
ズルエア圧を上げるほどスラブ長さは短くなると共に加
工安定性が向上し、一方、前記ノズルエア圧を下げるほ
どスラブ長さは長くなり、また加工安定性が悪化する傾
向がある。このスラブ形成ノズルのノズルエア圧の適正
値は、例えば単純な推進ノズルを用いた場合には、0.
08〜0.3MPaである。更に、前記供給ノズルと前
記スラブ形成ノズルとは前記閉塞箱体の上面に対して互
いに向かい合う任意の角度で配することができるが、安
定したスラブ形成には両ノズルを前記閉塞箱体の上面に
対して直交する方向に、互いに平行に配することが望ま
しい。また、前記供給ノズル及びスラブ形成ノズルの間
隔がスラブ長さや加工安定性に影響を及ぼす。その好ま
しい間隔は、50〜150mmの範囲である。
【0024】更に、絹の玉糸調スラブ糸におけるスラブ
の形態変化に最も影響を及ぼすファクターとして、前記
マルチフィラメント糸Faの供給量、即ちオーバーフィ
ード量OFaが挙げられる。前記マルチフィラメント糸
Faのオーバーフィード量OFaにより前記スラブの形
態変化が自由自在となり、オーバーフィード量OFaを
上げるに従ってスラブの発生頻度が増し、スラブ長さも
長くなるが、加工の安定性は悪化する。従って、前記ス
ラブ形成ノズルのノズルエア圧と前記マルチフィラメン
ト糸Faのオーバーフィード量OFaとを互いに調整
し、スラブ形態と加工の安定性を考慮しながら好適な条
件を設定すれば良い。
【0025】好ましくは前記マルチフィラメント糸Fa
のオーバーフィード量OFaの適正範囲は5%以上20
%以下である。更に好適には、前記マルチフィラメント
糸Faのオーバーフィード量OFaは8%以上17%以
下である。前記マルチフィラメント糸Faのオーバーフ
ィード量OFaが5%未満では、スラブの発生頻度が少
なく且つスラブ形状も小さいものとなり、目的とする布
帛への意匠効果が得られない。一方、前記マルチフィラ
メント糸Faのオーバーフィード量OFaが20%を越
える場合には、スラブの発生頻度は増加し、更にはスラ
ブ長が過剰に長くなるため、加工安定性及び後工程の通
過性に問題が生じる。
【0026】かかる絹の玉糸調スラブ糸の集束性は集束
ノズルと他のマルチフィラメント糸Fbの供給量とによ
り大きく左右される。前記集束ノズルとしてはインター
レースノズル、タスランノズル又は旋回流ノズルのいず
れを採用することも可能であるが、インターレースノズ
ルが最も集束性が良く好ましい。
【0027】また、他のマルチフィラメント糸Fbの供
給量は、少ないほど交絡が悪くなるが糸条全体に光沢が
付与される。一方、供給量が多いほど交絡が良くなる反
面、糸条の光沢に欠ける。かかる観点から、前記他のマ
ルチフィラメント糸Fbのオーバーフィード量OFbの
適正範囲は0.7%以上5%以下である。前記他のマル
チフィラメント糸Fbのオーバーフィード量OFbが
0.7%未満では光沢感が低下し、一方、5%を越える
とループなどが発生しやすくなり、加工安定性及び後工
程通過性が低下すると共に、布帛としたときの品位が低
下する。
【0028】前記他のマルチフィラメント糸Fbは、
0.7%以上3%以下のオーバーフィード量OFbで供
給しエア交絡させることが好ましく、更には、1%以上
2%以下のオーバーフィード量OFbであることが好ま
しい。更に、他のマルチフィラメント糸Fbは前記閉塞
箱体の下流で前記マルチフィラメント糸Faに合糸さ
せ、エア交絡させることが望ましい。また、前記他のマ
ルチフィラメント糸Fbとしてカチオンダイアブル糸を
用いれば、異色効果に富んだ絹の玉糸調スラブ糸が得ら
れる。
【0029】更に、前記供給ノズルの先端から前記メッ
シュ底部までの距離Dは、スラブ長さに影響を及ぼすた
め、目的とするスラブ長さに応じて適宜変更すればよい
が、30mm<D<150mmであることが好ましい。
前記距離Dが30mm以下ではメッシュ底部で跳ね返っ
た糸条が前記供給ノズル又はエジェクターの先端に衝突
して、前記糸条が閉塞箱体内に適正に貯留されず、スラ
ブが形成されない。また、前記距離Dが150mm以上
では前記供給ノズルからエアにより噴出された糸条の推
進力が低下し加工不安定となる。更に前記距離Dは60
mm以上100mm以下であることが好ましい。
【0030】また、前記マルチフィラメント糸Faの開
繊性は、特に、前記供給ノズルのエア消費流量によって
大きく影響される。基本的には前記供給ノズルのエア消
費流量は0.2Nm3 /hr以上1.7Nm3 /hr以
下であることが好ましい。同エア消費流量が0.2Nm
3 /hr未満では、スラブが形成される熱可塑性マルチ
フィラメント糸Faの推進力が低下し、加工不安定にな
りやすい。一方、前記エア消費流量が1.7Nm3 /h
rを越える場合には、スラブが形成される熱可塑性マル
チフィラメント糸Faの推進力が極めて高くなり、糸の
集束性も高まって開繊されにくくなるため、もつれや絡
みの形成が不十分となりやすい。なお、このエア消費流
量については、糸条の素材、フィラメント数、或いは油
剤の種類や付着量などに応じて、上述の範囲内で適宜選
択すればよい。
【0031】更に、本発明では、前記供給ノズルの先端
部にエジェクターを付設することにより糸条の開織性を
より一層向上させることを見いだした。これは同エジェ
クターを供給ノズルの先端部に付設することにより、供
給ノズルから噴射されたエアが拡散されると同時にマル
チフィラメント糸も拡散、即ち開繊された状態で閉塞箱
体内に貯留されるためである。
【0032】なお、前記エジェクターとしては、中心角
θが20°以下で拡径する円錐形状をなし、長さLが5
0mm以下の糸道を有するものを採用し、同エジェクタ
ーの先端から前記メッシュ底部までの距離Dを30mm
<D<150mmとすることが好ましい。このエジェク
ターの中心角θが大きいほど、前記エア及び糸条の拡散
程度が高まるが、メッシュ底部に噴射するエアの勢い及
び糸条のメッシュ底部への衝突の勢いが低下し、加工が
不安定となる。また逆に、中心角θが小さいと開繊効果
がなくなるため、前記中心角θは20°以下、更には6
°以上20°以下の範囲が好ましい。更にエジェクター
の糸道長さLは長いほど、前記供給ノズルから噴射され
たエア圧力が減圧されるのため、加工安定性を考慮した
場合に、前記エジェクターの糸道長さLは50mm以
下、更には20mm以上50mm以下であることが好ま
しい。特に前記供給ノズルに推進ノズルを用いる場合に
は、マルチフィラメント糸が殆ど開繊されないため、前
記エジェクターを付設することにより開繊効果が著しく
向上され、非常に長いスラブをもつ絹の玉糸調スラブ糸
が得られる。
【0033】更に、前記エジェクターを付設した場合の
供給ノズルと閉塞箱体の上面との設置角度は特に限定さ
れるものではなく、加工安定性等を考慮して適宜設定さ
れるものであるが、好ましくは前記閉塞箱体の上面に対
して直交する方向或いはスラブ形成ノズルの下部に向け
た方向で設置される。
【0034】なお、上述のスラブ形成がなされたマルチ
フィラメント糸Faは部分的に強力の弱いところがあ
る。これは閉塞箱体内で総フィラメントの何本かのもつ
れ、絡みによりスラブを形成し、残りのフィラメントで
強力を保持しているためである。従って、後工程での高
次加工でトラブルを防ぐために、本発明の絹の玉糸調ス
ラブ糸では、他の熱可塑性マルチフィラメント糸Fbを
上述のスラブが形成されたマルチフィラメント糸Faと
合糸して、集束ノズルで交絡させている。そのため、本
発明の絹の玉糸調スラブ糸は、糸条としての強力を保持
すると共に十分な集束性ををなえており、後工程の通過
性が向上している。
【0035】しかしながら、本発明にあっては、更に、
ループやたるみが少なく後工程での通過性が良好な絹の
玉糸調スラブ糸を製造するために、上述した絹の玉糸調
スラブ糸の製造方法において、スラブの形成される前記
熱可塑性マルチフィラメント糸Faは熱収縮性を有して
おり、混繊交絡処理が施された前記絹の玉糸調スラブ糸
に連続的に乾熱処理を施すことが好ましい。
【0036】上述した混繊交絡処理が施されただけの乾
熱処理が施されていない絹の玉糸調スラブ糸は、前記マ
ルチフィラメント糸Faにもつれや絡みにより角のある
スラブ部分が形成されている。このスラブ部分の発生頻
度やスラブの長さ等は、上述したように、前記スラブ形
成ノズルのエア圧を適宜調整することによりある程度コ
ントロールすることが可能であり、自然なスラブパター
ンを得ることができる。よって、得られるスラブ形態も
細いスラブから太いスラブまでバラエティに富んだナチ
ュラルなスラブ形態ではある。
【0037】この乾熱処理の施されていない絹の玉糸調
スラブ糸を、例えば織編成などの後工程にそのまま使用
した場合、特にスラブの太い部分でトラブルが発生する
場合があり、後工程におけるチーズからの解舒不良や、
製織時におけるスラブ糸のフィーダーからの解舒不良な
どにより製織性に影響を及ぼすこともある。これらトラ
ブルの原因は、貯留された糸のもつれや絡み方によって
大小のスラブがランダムに形成されるが、スラブの形成
される前記マルチフィラメント糸Faの糸種やフィラメ
ント数、太さなどによってスラブの形成状況が大きく異
なることにあり、例えばスラブ部分と道中部にループが
発生したり、集束性が不十分となる。そのため、後加工
の解舒不良によるトラブルが発生する場合があった。
【0038】しかしながら、本発明では、混繊交絡処理
が施された絹の玉糸調スラブ糸に、更に連続的に乾熱処
理を施すことにより、上述のスラブ糸における角状のス
ラブ部分が熱収縮して丸みを帯びたスラブ部分となり、
解舒性や製織性に問題のない後工程通過性に優れた絹の
玉糸調スラブ糸が得られる。
【0039】更に、乾熱処理が施された前記スラブ糸
は、スラブが形成されるマルチフィラメント糸Faの沸
水収縮率や、乾熱処理時の温度及びオーバーフィード量
によって、スラブ形状や布帛に織編成した場合のインタ
ーレースマークの発現に相違が見られることがわかっ
た。
【0040】そこで、スラブが形成される前記マルチフ
ィラメント糸Faには沸水収縮率が10%以上、好まし
くは18%以上、更に好ましくは40%以上の熱可塑性
マルチフィラメント糸を使用し、前記他のマルチフィラ
メント糸Fbには沸水収縮率が10%以下の熱可塑性マ
ルチフィラメント糸を使用することが好ましい。
【0041】また、前記乾熱処理時のオーバーフィード
量及び温度により、得られたスラブ糸におけるスラブ形
態が異なるものとなる。前記乾熱処理時のオーバーフィ
ード量は2%以上6%以下とすることが好ましく、更に
は、前記オーバーフィード量は2.5以上5%以下であ
ることが好ましい。乾熱処理時のオーバーフィード量が
2%未満では、糸収縮応力のために糸に作用する張力が
極めて大きくなり、糸質の低下や糸切れなどが発生しや
すくなり、一方、乾熱処理時のオーバーフィード量が6
%を越えると乾熱処理時に糸タルミが発生し、加工が困
難になりやすい。
【0042】また、乾熱処理温度については、温度を高
くするほどスラブ形態はきれいになる反面、糸条全体が
硬くなるため、適正温度としては150℃以上245℃
以下であり、更には乾熱処理温度を170℃以上240
℃以下とすることが好ましい。乾熱処理温度が150℃
未満の場合には、スラブ部分における十分な糸収縮が得
られず、後工程通過性の著しい向上は望めず、また、2
45℃を越えると糸のダメージが大きくなり、また、現
在の各種加工機におけるヒータ設備の能力では負荷が大
きくなると共に、錘間差等の調整も困難となる。
【0043】更には、スラブが形成される前記熱可塑性
マルチフィラメント糸Faは複屈折率が0.035〜
0.08の高配向未延伸ポリエステルマルチフィラメン
ト糸であり、前記他の熱可塑性マルチフィラメント糸F
bは沸水収縮率が10%以下であることが好ましい。こ
のように、前記マルチフィラメント糸Faに高配向未延
伸ポリエステルマルチフィラメント糸を用いることによ
り、更に高次加工性に良好なスラブ形態が得られる。な
お、当然に高配向未延伸ポリエステルマルチフィラメン
ト糸は60%以上の高熱収縮率を有しているため、乾熱
処理時におけるヒータ温度は、上述の高収縮糸を用いた
ときよりも高温度にする必要があり、適正温度としては
210〜230℃が良い。また、商品としてはスラブ糸
の沸水収縮率を少なくとも10%以下に留めないと、染
色や仕上げ工程でのトラブルが発生する。この熱収縮挙
動はヒータ温度、ヒータ長さ、ヒータの種類、即ち接触
タイプか非接触タイプであるかの条件によって当然異な
るものであるが、熱収縮を抑える方法はいかなる手段で
も何らさしつかえない。
【0044】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施の形態
について図面を参照して具体的に説明する。図1は本発
明による絹の玉調スラブ糸の製造方法を実施するための
好適な製造装置の概略図であり、図2は前記装置の一部
である閉塞箱体の裏面からの透過斜視図である。
【0045】製造装置20では、熱可塑性マルチフィラ
メント糸Faはフィードローラー1からガイド2を介し
て供給ノズル3を通って閉塞箱体5内へと導入される。
同閉塞箱体5は、図2に示すように、その底部5aがメ
ッシュで構成されている。同箱体5の前記底部5aに対
向する上部には、前記供給ノズル3とスラブ形成ノズル
6とが互いに間隔を開けて、それら端部を前記メッシュ
底部5aに対して垂直に前記箱体5内へ突出させた状態
で設置されている。なお、本発明の製造方法にあって
は、前記供給ノズル3の先端から前記メッシュ底部5a
までの距離Dは、30mm<D<150mmに設定する
ことが好ましい。また、本製造装置20では、前記供給
ノズル3を前記メッシュ底部5aに対して垂直に配して
いるが、この供給ノズル3の設置角度は特に限定される
ものではなく、加工安定性などを考慮して適宜設定可能
であるが、好適には、同供給ノズル3は本製造装置20
のようにメッシュ底部5aに対して垂直な方向に、或い
はスラブ形成ノズル6の下部に向けた方向に設置する。
【0046】前記供給ノズル3からエアにより噴出され
た前記糸条Faは前記メッシュ底部5aに衝突する。こ
のとき、同閉塞箱体5内へ供給された熱可塑性マルチフ
ィラメント糸Faは、過供給された分だけ貯留させた
後、エア攪乱流域において同マルチフィラメント糸Fa
ももつれや絡みが発生する。なお、本発明の製造方法に
あっては、前記供給ノズル3のエア消費流量を1.7N
3 /hr以下に設定することが好ましく、更には前記
エア消費流量を0.2Nm3 /hr以上に設定すること
が好ましい。
【0047】かかるもつれや絡みが発生した糸条Fa
は、前記スラブ形成ノズル6を通過して閉塞箱体5の外
部へと導出される。このスラブ形成ノズル6では糸の進
行方向とは逆方向にエアが噴射されており、もつれや絡
みが発生した前記糸条Faはエアのシゴキにより一定以
上の強さで形成されているもつれや絡みのみを取り出し
て間欠的にスラブが形成される。
【0048】その後、スラブが形成された糸条Faは合
糸ガイド8においてフィードローラ7から供給された他
のマルチフィラメント糸Fbと合糸される。その後、両
糸条Fa,Fbはガイド9を通って集束ノズル10によ
り混繊交絡処理が施されて絹の玉糸調スラブ糸fが得ら
れ、同スラブ糸fはデリベリーローラ11を介してワイ
ンダー13に巻き取られる。
【0049】なお、本発明の製造方法にあっては、上記
製造装置において、熱可塑性マルチフィラメント糸Fa
のオーバーフィード量OFaは5%≦OFa≦20%に
設定され、且つ他の熱可塑性マルチフィラメント糸Fb
のオーバーフィード量OFbは、0.7%≦OFa≦5
%に設定される。
【0050】上述の装置により得られた本発明の絹の玉
糸調スラブ糸fは、図3に示すように、部分的にスラブ
が形成されたマルチフィラメント糸Faと、他のマルチ
フィラメント糸Fbとからなり、同絹の玉糸調スラブ糸
fは、前記マルチフィラメント糸Faのスラブが形成さ
れた部分と前記他のマルチフィラメント糸Fbとが混繊
交絡して形成されたスラブ部分Xと、マルチフィラメン
ト糸Faのスラブが形成されていない部分と他のマルチ
フィラメント糸Fbとが混繊交絡して形成された部分Y
とが交互に発現している。
【0051】このスラブ部分Xの長短や太さの変化には
自然なムラ感があり、製織性にも優れたものである。な
お、このスラブ部分Xは、前記スラブ形成ノズル6のエ
ア圧を適宜調整することにより、更に、その発生頻度や
長さなどをある程度コントロールすることが可能であ
り、より自然なスラブパターンを得ることができる。よ
って、得られるスラブ形態も細いスラブから太いスラブ
までバラエティに富んだナチュラルなスラブ形態とな
る。
【0052】また、本発明の好適な絹の玉糸調スラブ糸
fは、一方の熱可塑性マルチフィラメント糸の沸水収縮
率が他方の熱可塑性マルチフィラメント糸よりも大きく
なっている。そのため、布帛に織編成した後、染色工程
や仕上げ工程などで熱処理を施した場合に、一方の熱可
塑性マルチフィラメント糸が他方の熱可塑性マルチフィ
ラメント糸より大きく収縮する。この時、本発明のスラ
ブ糸では混繊交絡されて集束が強い部分と弱い部分とが
異なるふくらみ挙動を示すこととなり、結果として布帛
におけるインターレースマークとなる部分がそれ以外の
部分のふくらみにより見えにくくなり、インターレース
マークが目立たない。
【0053】図4は本発明による絹の玉調スラブ糸の製
造方法を実施するための他の好適な製造装置20′の概
略図であり、図5は前記装置で使用されているエジェク
ターの縦断面図である。本装置20′は供給ノズル3の
先端にエジェクター4が配設されている点で上述した装
置20と異なるが、その他の構成については上記装置2
0と同一であり、それら同一の構成には同一の符号を付
している。
【0054】前記供給ノズル3の先端にエジェクター4
が付設されている同装置20′では、供給ノズル3から
噴射されたエアが前記エジェクター4により案内されて
拡散されると同時に、同エジェクター4を通過する熱可
塑性マルチフィラメント糸Faも同様に拡散され、より効
果的に開繊される。このように、前記マルチフィラメン
ト糸Faが開繊された状態で前記閉塞箱体に貯留される
ため、もつれや絡みが十分に形成される。
【0055】なお、前記エジェクター4の構造は格別に
限定されるものではく、目的とする加工糸形態や加工安
定性に応じて適宜設計が可能である。好適な例として
は、例えば図5に示すように、上流側から下流側へ向け
て中心角θが20°以下、好ましくは6°以上20°以
下の角度で拡径する円錐形状の糸道4aを有する構造で
ある。更に、前記糸道4aの長さLは50mm以下、好
ましくは20mm以上50mm以下であることが好まし
い。また、前記エジェクター4を付設した供給ノズル3
の場合では、前記エジェクター4の先端から前記メッシ
ュ底部5aまでの距離Dが、30mm<D<150mm
となるように設定することが好ましい。
【0056】図6は本発明による絹の玉糸調スラブ糸の
製造方法を実施するための更に他の好適な製造装置2
0″の概略図である。本装置20″はデリベリーローラ
11とワインダー13との間に、乾熱ヒータ12が設置
されている点で上述した装置20と異なるが、その他の
構成については上記装置20と同一であり、それら同一
の構成には同一の符号を付している。
【0057】同装置20″では、図3に示す絹の玉糸調
スラブ糸fに更に乾熱ヒータ12により連続的に乾熱処
理が施された後、ワインダー13に巻き取られる。この
乾熱処理が施された絹の玉糸調スラブ糸Fを図7に示
す。このスラブ糸Fは図3に示す乾熱処理前のスラブ糸
fにおける角状のスラブ部分Xが乾熱処理を施すことに
より熱収縮して、丸みを帯びたスラブ部分X′となり、
解舒性や製織性に問題のないスラブ糸Fとなる。
【0058】なお、本発明による絹の玉糸調スラブ糸の
製造方法にあっては、前記乾熱ヒータ12の処理温度は
150℃以上245℃以下に設定されており、好ましく
は170℃以上240℃以下に設定されている。乾熱処
理温度が150℃未満であるとスラブ部分Xにおける十
分な糸収縮が得られず、一方、乾熱処理温度が245℃
を越えると得られたスラブ糸のダメージが大きくなり、
また現在の各種加工機におけるヒータ設備能力では負荷
が大きいと共に、錘間差等の調整も困難なものとなりや
すい。
【0059】また、乾熱処理時のオーバーフィード量は
2%以上6%以下、好ましくは2.5%以上5%以下に
設定されている。同オーバーフィード量が2%未満で
は、糸収縮応力のために糸にかかる張力が極めて大きく
なり、糸質の低下や糸切れ等が発生しやすくなり、一
方、5%を越えると乾熱処理時に糸タルミが発生し、加
工困難なものとなりやすい。
【0060】以下、上述した製造装置を使用して、本発
明の製造方法により得られた実施例及び、本発明の絹の
玉糸調スラブ糸の実施例について、比較例を参照し具体
的に説明する。なお、以下の表において、得られたスラ
ブ糸のスラブ形態(ケバ、ループの状態)、布帛とした
ときの表面のインターレースマークの状態、ケバ、ルー
プの状態については、目視にて評価し、優れているもの
には◎、良好なものは○、若干欠点が認められるものの
本発明の範囲内にあるものは△、問題があるものは×と
した。後工程通過性についても同様に、優れているもの
には◎、良好なものは○、糸切れなどの問題が若干発生
するものの、製造に支障がない範囲であるものには△、
糸切れなどの問題が多発し製造に支障をきたすような場
合には×とした。
【0061】先ず、請求項7〜請求項10に係る発明に
ついて、具体的な実施例及び比較例を挙げて説明する。
【0062】(実施例1〜8及び比較例1〜6)スラブ
が形成される熱可塑性マルチフィラメント糸Faとして
75dTex/36fのポリエステル延伸糸を、他の熱
可塑性マルチフィラメント糸Fbとして75dTex/
24fのカチオン可染性ポリエステル延伸糸を使用し
た。上述した図1に示す製造装置において、供給ノズル
3としてデュポン社製のTypeXノズルを使用し、エ
ア流量は1.5Nm3 /hr、ノズル圧は0.03MP
aに設定した。スラブ形成ノズル6には推進ノズルを使
用し、ノズル圧は0.5MPaとした。更に集束ノズル1
0はインターレースノズルを採用し、ノズル圧は0.3
MPaとした。また、実施例8では前記供給ノズル3に
エジェクター4を付設している図4に示す製造装置を採
用している。かかる装置により以下の各表に示す条件で
絹玉調糸を製造し、得られた絹玉調糸を緯糸に用いて製
織した布帛を、カチオン片染めしてスラブの形態を評価
した。
【0063】・実施例1〜3 糸速のみを表1に示すように変更した。その結果、糸速
が高速なほどきれいなスラブ形態が得られたが、スラブ
の長さには影響は見られなかつた。
【0064】
【表1】
【0065】・実施例1,4,5及び比較例1,2 糸条Faのオーバーフィード量OFaのみを表2に示す
ように変更した。その結果、糸条Faのオーバーフィー
ド量OFaはスラブの形成頻度に大きな影響を及ぼし、
糸条Faのオーバーフィード量OFaが3%ではスラブ
の形成が非常に少なく、オーバーフィード量OFaが大
きくなるほどスラブの発現頻度が増加すると共にスラブ
長さも長くなり、オーバーフィード量OFaが22%以
上では加工不安定となった。
【0066】
【表2】
【0067】・実施例1,6及び比較例3,4 糸条Fbのオーバーフィード量OFb のみを表3に示す
ように変更した。その結果、糸条Fbのオーバーフィー
ド量OFbが0.5%と少ない場合には、スラブ形態に
問題があり、また、糸条Fbのオーバーフィード量OF
bが5.5%と多い場合には加工が不安定となった。
【0068】
【表3】
【0069】・実施例1,7及び比較例5,6 供給ノズルの先端とメッシュ底部との距離Dを表4に示
すように変更した。その結果、距離Dはスラブ長さに大
きく影響し、距離Dが長いほど長いスラブが得られる
が、距離Dが150mmと長すぎると加工安定性が低下
する。逆に距離Dを短くするほどスラブ長さが短くな
り、スラブの形成頻度が多くなるが、距離Dが30mm
では閉塞箱体のメッシュ底部で跳ね返った糸条がノズル
に衝突して、閉塞箱体内で糸条がうまく貯留されず、所
望のスラブが形成されない。
【0070】
【表4】
【0071】・実施例8 供給ノズルの先端部に、上流側から下流側へ向けて中心
角θが8°で拡径する円錐形状の糸道4aをもつエジェ
クター4を付設している、図4に示す製造装置により絹
玉調糸を製造した。その結果、実施例1よりもスラブ形
態は良好で、非常に長いスラブが得られた。
【0072】
【表5】
【0073】(実施例9〜16及び比較例7〜12)ス
ラブが形成される熱可塑性マルチフィラメント糸Faと
して75dTex/21fのアセテート糸を、他の熱可塑性
マルチフィラメント糸Fbとして75dTex/24fのポ
リエステル延伸糸を使用した。図1に示す製造装置にお
いて、供給ノズル3としてニノス社製のタスランノズル
を使用し、エア流量は1.0Nm3/hr、ノズル圧は0.2
MPaに設定した。スラブ形成ノズル6には推進ノズル
を使用し、ノズル圧は0.1MPaとした。更に集束ノ
ズル10はインターレースノズルを採用し、ノズル圧は
0.2MPaとした。また、実施例16では前記供給ノ
ズル4の先端部に、上流側から下流側へ向けて中心角θ
が8°で拡径する円錐形状の糸道4aをもつエジェクタ
ー4を付設している図4に示す製造装置を採用して絹玉
調糸を製造した。これら装置により以下の表6に示す条
件で絹玉調糸を製造し、得られた絹玉調糸を緯糸に用い
て製織した布帛を、分散染めしてスラブの形態を評価し
た。
【0074】
【表6】
【0075】得られた絹の玉糸調スラブ糸について上述
した実施例1〜8及び比較例1〜6と同様の比較評価を
行ったところ、糸条Fa及び糸条Fbのオーバーフィー
ド量及び供給ノズルとメッシュ底部との距離Dといった
加工条件と、得られた糸条のスラブ形態とは、上述と同
様の相関が得られた。なお、実施例9〜16は糸条Faを
アセテート糸に変更したことで、上述の実施例1〜8の
ポリエステル延伸糸の場合よりも集束性がよく、上品な
スラブ形態が得られた。
【0076】(実施例17〜19及び比較例13、1
4)スラブが形成される熱可塑性マルチフィラメント糸
Faとして75dTex/21fのアセテート糸を、他の熱
可塑性マルチフィラメント糸Fbとして75dTex/24
fのポリエステル延伸糸を使用した。図1に示す製造装
置において、供給ノズル3としてニノス社製のタスラン
ノズルを使用し、エア流量は1.0Nm3/hr、ノズル圧は
0.2MPaに設定した。スラブ形成ノズル6には推進
ノズルを使用し、ノズル圧は0.1MPaとした。ま
た、集束ノズル10はインターレースノズルを採用し、
ノズル圧は0.2MPaとし、更に、糸条Fbのオーバ
ーフィード量OFb及び機械停止回数を以下の表7に示
すように変更した。得られた絹玉調糸を緯糸に用いて製
織した布帛を、分散染めして集束性及び光沢を評価し
た。また、比較例14は、絹糸を緯糸に用いて製織した
布帛を分散染めして集束性及び光沢を評価した。表7に
示すように、集束条件を適切に設定することで、非常に
集束性及び製繊性が良好で、絹糸にも劣らない優れた光
沢をもつ糸条が得られるものである。
【0077】
【表7】
【0078】(実施例20及び比較例15)実施例20
では、スラブが形成される熱可塑性マルチフィラメント
糸Faとして、沸水収縮率(BWS)が18%である8
3dTex/36fのポリエステルマルチフィラメント
糸を、他の熱可塑性マルチフィラメント糸Fbとして、
沸水収縮率(BWS)が8%である83dTex/24
fのカチオン可染性ポリエステルマルチフィラメント糸
を使用した。前記供給ノズル3にエジェクター4を付設
している図4の製造装置において、供給ノズル3として
デュポン社製のTypeXノズルを使用し、エア流量は1.
5Nm3/hr、ノズルエア圧は0.03MPa に設定した。ス
ラブ形成ノズル6には推進ノズルを使用し、ノズルエア
圧は0.1MPaとした。更に集束ノズル10はインタ
ーレースノズルを採用し、ノズルエア圧は0.5MPa
とした。また、エジェクター4は、中心角θが8゜、
長さLが50mmの円錐形状の糸道4aを有するものを使
用した。かかる装置により以下の表8に示す条件で、加
工速度を100m/分に設定して絹の玉調スラブ糸を製
造した。比較例15は、実施例20と同様の2種の熱可
塑性マルチフィラメント糸Fa,Fbを、実施例20と
同一の装置におけるフィードローラ1から同時に供給し
て、両熱可塑性フィラメントFa、Fbにスラブを形成
した。得られたスラブ糸のスラブ形態(ケバ、ループ)
の状態を評価すると共に、同スラブ糸を用いて織編成し
た後、染色仕上げ工程を施し、後工程通過性と布帛にお
けるインターレースマーク及びケバ、ループの状態につ
いて評価した。
【0079】
【表8】
【0080】実施例20では、加工時に熱可塑性マルチ
フィラメント糸Faが供給ノズルから噴射された後の開
繊性が極めて良好であることが確認され、糸条Faには
もつれや絡みが良好に形成されていた。また、得られた
スラブ糸は微小なループが若干散見されるものであった
が、同スラブ糸を用いて織編成した後、染色仕上げ工程
を施したところ、後工程通過性には特に問題がなかっ
た。更に、得られた布帛表面はインターレースマークが
目立たず、ケバ、ループ等の欠点も低減されており、且
つ絹の玉糸を用いたような極めて良好な特殊意匠スラブ
効果が見られた。比較例15では、両熱可塑性マルチフ
ィラメント糸Fa,Fb共にスラブを形成しているた
め、得られたスラブ糸は強度が低く、そのスラブ形態も
毛羽やループの発生が多いものであった。かかるスラブ
糸は工程通過性が悪く、布帛の形成が困難であった。
【0081】以上に述べたように、本発明の請求項7〜
請求項10に係る発明にあっては、1本以上の熱可塑性
マルチフィラメント糸を用いて圧縮エアによりスラブを
形成する際、用途によってはエジェクターを付設した供
給ノズルから噴射された熱可塑性マルチフィラメント糸
Faを一旦閉塞箱体内に貯留した後、エア攪乱流域によ
り同マルチフィラメント糸Faにもつれや絡みを発生さ
せ、更に逆噴射させた流体ノズルから引き出してもつれ
や絡みをしごいてスラブを形成し、引続き他の熱可塑性
マルチフィラメント糸Fbを交絡させる。このとき、糸
条Fa,Fbのオーバーフィード量OFa,OFbを適
正条件に設定することにより、スラブ形態が長短や太さ
の変化に自然なムラ感のある優れたものとなり、また集
束性が向上し製織性にも優れた絹玉調糸を安価に製造す
ることが可能となる。
【0082】次に、請求項11〜請求項14に係る発明
について、具体的な実施例及び比較例を挙げて説明す
る。
【0083】(実施例21〜23)スラブが形成される
熱可塑性マルチフィラメント糸Faとして、それぞれ沸
水収縮率(BWS)の異なる83dTex/36fのポ
リエステルマルチフィラメント糸を使用し、他の熱可塑
性マルチフィラメント糸Fbとして、各実施例とも同一
の、沸水収縮率が8%である83dTex/36fのカ
チオン可染性ポリエステル延伸糸を使用して、上述の図
6に示すスラブ糸の製造装置を用いた本発明のスラブ糸
の製造方法により、下記の条件でスラブ糸を製造した。 供給ノズル(TypeXノズル) :ノズルエア圧 0.05MPa スラブ形成ノズル :ノズルエア圧 0.1 MPa 集束ノズル(インターレースノズル):ノズルエア圧 0.05MPa 糸速 :100m/分 乾熱処理時のオーバーフィード量 :2.5% 乾熱処理温度 :200℃ Fa/Fbオーバーフィード量 :6.5/2.0% 更に、得られた絹の玉糸調スラブ糸を織物の緯糸に用い
て製織した布帛をカチオン片染めし、インターレースマ
ーク及びスラブ形態について評価した。
【0084】
【表9】
【0085】いずれの実施例も、スラブが形成される熱
可塑性マルチフィラメント糸Faのオーバーフィード量
OFaを6.5%、他のマルチフィラメント糸Fbのオ
ーバーフィード量OFbを2.0%と本発明の範囲内に
設定しているため、スラブ形態が長短や太さの変化に自
然なムラ感のある優れたものとなり、更には、連続的に
乾熱処理を施しているため、スラブ部分が丸みを帯びた
ものとなり、布帛への製織工程での工程通過性が良好で
あった。更には、スラブが形成される熱可塑性マルチフ
ィラメント糸Faの沸水収縮率が高い程、得られた織物
はインターレースマークが目立ちにくく、スラブ形状も
きれいな織物布帛が得られた。
【0086】(実施例24〜実施例36)スラブが形成
されるマルチフィラメント糸Faとして、複屈折率が
0.04である55dTex/12fのポリエステル高
配向未延伸糸を使用し、他のマルチフィラメント糸Fb
として、83dTex/24fのカチオン可染性ポリエ
ステル延伸糸を使用して、上述した図6に示す装置を用
いて本発明の製造方法により、下記、及び表10に示す
加工条件でスラブ糸を製造した。 供給ノズル(TypeXノズル) :ノズルエア圧 0.05MPa スラブ形成ノズル :ノズルエア圧 0.1 MPa 集束ノズル(インターレースノズル):ノズルエア圧 0.5 MPa Fa/Fbオーバーフィード量 :14.5/2.0% 得られた絹の玉糸調スラブ糸について、JIS規格L1
013にて糸の沸水収縮率(BWS)を測定した。ま
た、得られた絹の玉糸調スラブ糸を織物の緯糸に用いて
製織した布帛をカチオン片染めし、インターレースマー
ク及びスラブ形態を評価した。
【0087】
【表10】
【0088】実施例24〜27では乾熱処理時のオーバ
ーフィード量を0〜7.5%まで変更し、乾熱処理時の
オーバーフィード量の相違による影響について検討し
た。その結果、特に0〜5%の場合にスラブ形態がすぐ
れた糸条が得られた。また、インターレースマークにつ
いては乾熱処理時のオーバーフィード量とは関係がな
く、いずれの実施例においても殆ど目立たず優れたもの
であった。しかしながら、どの実施例でもスラブ部分の
残留収縮率が高いために、染色処理時にスラブ部分にお
いて収縮が発生した。また、実施例28〜34では乾熱
処理温度を変更してその影響を調べた。乾熱処理温度が
220℃以上の場合には、得られたスラブ糸は通常に近
い沸水収縮率となり、織物のインターレースマークは殆
ど目立たないが、スラブ部分の収縮が若干みられる。更
に、実施例25及び26で糸速を低速に変更し影響を調
べたところ、得られたスラブ糸の沸水収縮率が低下して
殆どなくなり、織物にはインターレースマークもなくス
ラブ形状のきれいな織物布帛が得られた。
【0089】このように、請求項11〜請求項14に係
る発明は、2種のマルチフィラメント糸Fa,Fbを所
定のオーバーフィード量で供給することにより、スラブ
形態が長短や太さの変化に自然なムラ感のある優れたも
のとなり、更には、連続的に乾熱処理を施しているた
め、スラブ部分が収縮してループやたるみが低減された
丸みを帯びたものとなり、後工程通過性が格段に向上す
る。更には、前記マルチフィラメント糸Faに沸水収縮
率10%以上のポリエステル延伸糸を用い、他の糸条F
bに沸水収縮率10%以下のポリエステル延伸糸を用い
ることにより、乾熱処理が施されたスラブ糸を織編成し
て得られた布帛はインターレースマークの目立たない外
観に優れた布帛となる。更に前記マルチフィラメント糸
Faに高配向未延伸ポリエステルマルチフィラメント糸
を用いた場合には、より高品質な紡錘形の絹玉調スラブ
織物が得られる。
【0090】以上、述べたように、本発明の製造方法に
より得られた絹の玉糸調スラブ糸は、スラブ形態が長短
や太さの変化に自然なムラ感のある優れたものとなり、
更に連続的に乾熱処理が施されている場合には、スラブ
部分が収縮してループやたるみが低減された丸みを帯び
たものとなり、後工程通過性が格段に向上するものであ
るが、更に、請求項1〜請求項6に係る本発明の絹の玉
糸調スラブ糸では、布帛とした場合のインターレースマ
ークが殆どみられない優れたものとなる。以下にその具
体的な実施例を示す。
【0091】(実施例37,38及び比較例16)実施
例37では、スラブが形成される熱可塑性マルチフィラ
メント糸Faとして沸水収縮率(BWS)が18%であ
る83dTex/36fのポリエステルマルチフィラメ
ント糸を、他の熱可塑性マルチフィラメント糸Fbとし
て沸水収縮率が8%である83dTex/24fのカチ
オン可染性ポリエステマルチフィラメント糸を採用し、
実施例38では、スラブが形成される糸条Faに沸水収
縮率が0.5%である83dTex/21fのジアセテ
ートマルチフィラメント糸を、他の糸条Fbに沸水収縮
率が8%である83dTex/24fのカチオン可染性
ポリエステマルチフィラメント糸を、比較例16では、
スラブが形成される糸条Faに沸水収縮率が2%である
83dTex/20fのトリアセテートマルチフィラメ
ント糸を、他の糸条Fbに沸水収縮率が7.5%である
55dTex/36fのポリエステマルチフィラメント
糸を使い、図1の製造装置を用いて次表11の条件で加
工速度100m/分として絹の玉糸調スラブ糸を製造し
た。なお、供給ノズル3にはデュポン社製のTypeX
ノズルを、スラブ形成ノズル6には単純な推進ノズルを
使用し、集束ノズル10にはインターレースノズルを採
用した。更に、得られたスラブ糸を用いて織編成した
後、染色仕上げ工程を施して後工程通過性及び布帛の形
態について評価を行った。
【0092】
【表11】
【0093】実施例37,38はいずれも、本発明の製
造方法により製造されているため、得られたスラブ糸
は、そのスラブの形態が長短や太さの変化に自然なムラ
感のある優れたものとなり、織編成及び染色仕上げ工程
での工程通過性も良好であった。更に、実施例37及び
38については、特に、スラブが形成される熱可塑性マ
ルチフィラメント糸Faと他の熱可塑性マルチフィラメ
ント糸Fbとの沸水収縮率の差が6%以上の糸組合せで
あるため、かかる組合せのスラブ糸から得られた布帛で
はインターレースマークが目立たず、ループ等の欠点も
著しく抑制され、且つ、絹の玉糸を用いたような特殊意
匠スラブ効果を呈するものであった。一方、比較例16
は2種の糸条Fa,Fbの沸水収縮率の差が8%未満で
あるため、得られたスラブ糸には微小なループが見ら
れ、かかるスラブ糸を用いた布帛にも布帛表面にループ
が散見されており、また、インターレースマークについ
ても、実施例36及び37と比較すると若干、目立つも
のであった。また、実施例37ではカチオン染色及び分
散染色の2種類の染色を行うことで、上述の効果に加え
て異色染色効果をも得られるものである。また、実施例
38ではアセテート繊維に独特の風合いである清涼感を
も付与することができる。
【0094】(実施例39及び比較例17)実施例39
では、スラブが形成される熱可塑性マルチフィラメント
糸Faに沸水収縮率(BWS)が18%である83dT
ex/36fのポリエステルマルチフィラメント糸を、
他の熱可塑性マルチフィラメント糸Fbに沸水収縮率が
8%である83dTex/36fのカチオン可染性ポリ
エステマルチフィラメント糸を採用し、比較例17では
スラブが形成される糸条Faに沸水収縮率が8%である
83dTex/36fのポリエステルマルチフィラメン
ト糸を、他の糸条Fbに沸水収縮率が8%である83d
Tex/36fのカチオン可染性ポリエステマルチフィ
ラメント糸を採用して、図6に示す製造装置を用いて、
下表12の条件で加工速度100m/分で絹の玉糸調ス
ラブ糸の製造を行った。なお、供給ノズルにはデュポン
社製のTypeXノズルを、スラブ形成ノズルには単純
な推進ノズルを使用し、集束ノズルにはインターレース
ノズルを採用した。更に、得られたスラブ糸を用いて織
編成した後、染色仕上げ工程を施して後工程通過性及び
布帛の形態について評価を行った。
【0095】
【表12】
【0096】実施例39は、スラブ形態が長短や太さの
変化に自然なムラ感のある優れたものとなり、更に連続
的に乾熱処理が施されているため、スラブ部分が収縮し
てループやたるみが低減された丸みを帯びたものとな
り、布帛への織編成及び布帛の染色仕上げ工程での工程
通過性が格段に優れたものである。しかも、2種の糸条
Fa,Fbの沸水収縮率の差が6%以上の糸組合せである
ため、染色仕上げ後の布帛は、表面のインターレースマ
ークも目立たず、ループ等の欠点も抑制され、且つ、絹
の玉糸使い布帛調でスラブ部が丸みを帯びた特殊な意匠
スラブ効果を呈する布帛となった。
【0097】一方、比較例17は、2種の糸条Fa,F
bの沸水収縮率の差が6%未満の糸組合せであるため、
得られたスラブ糸には微小ループが散見され、かかるス
ラブ糸を用いて布帛に織編成し、染色仕上げ工程を施し
たところ、後工程の通過性が実施例39と比べて僅かに
悪く、また、得られた布帛表面にもループが散見され、
実施例39と比べインターレースマークが目立ってい
た。
【0098】このように、請求項1〜請求項6に係る本
発明の絹の玉糸調スラブ糸では、2種の糸条を所定の沸
水収縮率とすることで、鰓得たスラブ糸を布帛とし、染
色等の熱処理を施すことで、布帛表面に特殊な意匠表面
効果を付与することができ、且つインターレースマーク
やループ、スナール、ネップ等の布帛表面の欠点を極
力、抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法を実施するための絹の玉糸調
スラブ糸の製造装置の概略図である。
【図2】上記装置の一部である閉塞箱体の裏面側からの
透過斜視図である。
【図3】本発明の絹の玉糸調スラブ糸の平面図である。
【図4】本発明の製造方法を実施するための他の絹の玉
糸調スラブ糸の製造装置の概略図である。
【図5】上記装置の一部であるエジェクターの縦断面図
である。
【図6】本発明の製造方法を実施するための他の絹の玉
糸調スラブ糸の製造装置の概略図である。
【図7】本発明の他の絹の玉糸調スラブ糸の平面図であ
る。
【符号の説明】
1 フィードローラ 2 ガイド 3 供給ノズル 4 エジェクター 5 閉塞箱体 5a メッシュ底部 6 スラブ形成ノズル 7 フィードローラ 8 合糸ガイド 9 ガイド 10 集束ノズル 11 デリベリーローラ 12 乾熱ヒータ 13 ワインダー 20 絹の玉糸調スラブ糸の製造装置 L エジェクター糸道長 θ エジェクター中心角 D 供給ノズル先端とメッシュ底部との距離 f 絹の玉糸調スラブ糸 F 乾熱処理後の絹の玉糸調スラブ糸 Fa 熱可塑性マルチフィラメント糸 Fb 熱可塑性マルチフィラメント糸 X スラブ部分 Y 他の部分
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) D02J 1/06 D02J 1/06 (72)発明者 山口 展弘 愛知県名古屋市東区砂田橋四丁目1番60号 三菱レイヨン株式会社商品開発研究所内 Fターム(参考) 4L036 AA01 MA04 MA05 MA33 MA39 PA41 RA03 RA28 UA16

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 糸条の長手方向に部分的にスラブが形成
    された熱可塑性マルチフィラメント糸Faと他の熱可塑
    性マルチフィラメント糸Fbとが混繊交絡された絹の玉
    糸調スラブ糸であって、 スラブの形成された前記熱可塑性マルチフィラメント糸
    Faと前記他の熱可塑性マルチフィラメント糸Fbとの
    沸水収縮率の差が6%以上であることを特徴とする絹の
    玉糸調スラブ糸。
  2. 【請求項2】 スラブの形成された前記熱可塑性マルチ
    フィラメント糸Faの沸水収縮率が前記他の熱可塑性マ
    ルチフィラメント糸Fbの沸水収縮率よりも大きい請求
    項1記載の絹の玉糸調スラブ糸。
  3. 【請求項3】 前記熱可塑性マルチフィラメント糸F
    a,Fbの少なくとも1方がシックアンドシン糸である
    請求項1記載の絹の玉糸調スラブ糸。
  4. 【請求項4】 前記熱可塑性マルチフィラメント糸F
    a,Fbの1方が分散染料で染色可能であり、他方が分
    散染料以外の染料で染色可能である請求項1記載の絹の
    玉糸調スラブ糸。
  5. 【請求項5】 前記熱可塑性マルチフィラメント糸F
    a,Fbの少なくとも1方がアセテートマルチフィラメ
    ント糸である請求項1記載の絹の玉糸調スラブ糸。
  6. 【請求項6】 前記熱可塑性マルチフィラメント糸F
    a,Fbの少なくとも1方が高配向未延伸ポリエステル
    マルチフィラメント糸である請求項1記載の絹の玉糸調
    スラブ糸。
  7. 【請求項7】 熱可塑性マルチフィラメント糸Faを供
    給ノズルからメッシュ底部をもつ閉塞箱体内の前記メッ
    シュ底部に向けてオーバーフィード状態でエアにより噴
    出し、同閉塞箱体内のエア攪乱流域において熱可塑性マ
    ルチフィラメント糸Faにもつれや絡みを発生させ、同
    熱可塑性マルチフィラメント糸Faを、エアを糸条の進
    行方向と逆方向に噴射するスラブ形成ノズルを通過させ
    てスラブを形成しながら前記閉塞箱体から引き出し、ス
    ラブの形成された前記熱可塑性マルチフィラメント糸F
    aと他の熱可塑性マルチフィラメント糸Fbとを合糸ガ
    イド部において合糸した後、両熱可塑性マルチフィラメ
    ント糸Fa,Fbを混繊交絡させる絹の玉糸調スラブ糸
    の製造方法であって、前記熱可塑性マルチフィラメント
    糸Faのオーバーフィード量OFaを5%≦OFa≦2
    0%とすること、及び前記他の熱可塑性マルチフィラメ
    ント糸Fbのオーバーフィード量OFb を0.7%≦OFb
    ≦5%とすることを含んでなることを特徴とする絹の玉
    糸調スラブ糸の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記供給ノズルの先端から前記メッシュ
    底部までの距離Dを30mm<D<150 mmとしてなる請
    求項7記載の絹の玉糸調スラブ糸の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記供給ノズルのエア消費流量を0.2
    Nm3 /hr以上1.7Nm3 /hr以下とする請求項
    7又は8記載の絹の玉糸調スラブ糸の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記供給ノズルの先端部にエジェクタ
    ーを付設してなる請求項7〜9のいずれかに記載の絹の
    玉糸調スラブ糸の製造方法。
  11. 【請求項11】 少なくともスラブの形成される前記熱
    可塑性マルチフィラメント糸Faは熱収縮性を有してお
    り、混繊交絡処理が施された前記絹の玉糸調スラブ糸に
    連続的に乾熱処理を施すことを特徴とする請求項7〜1
    0のいずれかに記載の絹の玉糸調スラブ糸の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記乾熱処理は、オーバーフィード量
    が2%以上6%以下で、且つ温度が150℃以上245
    ℃以下の条件下でなされる請求項11記載の絹の玉糸調
    スラブ糸の製造方法。
  13. 【請求項13】 スラブが形成される前記熱可塑性マル
    チフィラメント糸Faは沸水収縮率が10%以上であ
    り、前記他の熱可塑性マルチフィラメント糸Fbは沸水
    収縮率が10%以下である請求項11又は12記載の絹
    の玉糸調スラブ糸の製造方法。
  14. 【請求項14】 スラブが形成される前記熱可塑性マル
    チフィラメント糸Faは複屈折率が0.035〜0.0
    8の高配向未延伸ポリエステルマルチフィラメント糸で
    あり、前記他の熱可塑性マルチフィラメント糸Fbは沸
    水収縮率が10%以下である請求項11又は12記載の
    絹の玉糸調スラブ糸の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN103320930A (zh) * 2013-05-16 2013-09-25 桐乡锦瑞化纤有限公司 涤纶双涤双异彩丽丝的生产装置及生产工艺
CN113337931A (zh) * 2021-04-22 2021-09-03 杭州勤想实业有限公司 一种全真丝均匀可控仿麻竹节纱的生产方法

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