JP2000087174A - フェライト地に微細な黒鉛を有する鋳鉄及びその製造方法 - Google Patents

フェライト地に微細な黒鉛を有する鋳鉄及びその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】砂型鋳造によって製造される微細な黒鉛を有す
る鋳鉄及びその製造方法であって、Tiを全く添加する
ことなく、且つ冷し金を使用することなく、しかも、基
地組織をフェライト組織になした微細な黒鉛を有する鋳
鉄を得ることを目的とする。 【解決手段】C:1.5〜2.75重量%、Si:2.
5〜5.5重量%、かつC%≧−Si%/2+4,M
n:0.5重量%以下、残部実質的にFeからなり、注
湯前に希土類−Si合金を0.030〜0.075重量
%添加するフェライト地に微細な黒鉛を有する鋳鉄であ
り、微細な黒鉛を生ずる組成の溶湯へ、注湯前に希土類
−Si合金を0.030〜0.075重量%添加し、前
記希土類−Si合金の添加後、砂型に注湯するフェライ
ト地に微細な黒鉛を有する鋳鉄の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、砂型鋳造によって
製造される微細な黒鉛を有する鋳鉄及びその製造方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】黒鉛が微細に晶出した共晶黒鉛鋳鉄は、
コンプレッサーのスクロールおよびシリンダ部品として
多く使用されており、最近ではその製造方法に砂型を用
いたものが実用化されている。その一つの方法として本
出願人は先に、元来添加量を増すことによって共晶黒鉛
を晶出させていたTi(チタン)の添加量を、逆に減少
させて共晶黒鉛鋳鉄を共晶させる提案をおこなっている
(特願平10−29238号)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、先の提案を
さらに究明していく過程で生まれたものであって、Ti
を全く添加することなく、且つ冷し金を使用することな
く、しかも、基地組織をフェライト組織になした微細な
黒鉛を有する鋳鉄を得ることを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、C:1.5〜
2.75重量%、Si:2.5〜5.5重量%、かつC
%≧−Si%/2+4,Mn:0.5重量%以下、残部
実質的にFeからなり、注湯前に希土類−Si合金を
0.030〜0.075重量%添加するフェライト地に
微細な黒鉛を有する鋳鉄であり、C:1.5〜2.75
重量%、Si:2.5〜5.5重量%、かつC%≧−S
i%/2+4,Mn:0.5重量%以下、残部実質的に
Feからなり微細な黒鉛を生ずる組成の溶湯へ、注湯前
に希土類−Si合金を0.030〜0.075重量%添
加し、前記希土類−Si合金の添加後、砂型に注湯する
フェライト地に微細な黒鉛を有する鋳鉄の製造方法であ
る。通常、Tiを添加しないで砂型に注湯すると、黒鉛
は片状黒鉛となるが、希土類−Si合金を注湯前に0.
030〜0.075重量%添加することによって微細な
黒鉛組織が得られるのである。ここで希土類−Si合金
は希土類金属を25%から30%含むものが望ましい。
これにかわり、希土類金属を99.8%含むミッシュメ
タルを使用する方法もあるが歩留まりのバラツキが大き
く、これによる黒鉛組識のバラツキを避けるために25
%から30%含む希土類−Si合金を使用した。また微
細な黒鉛とは100ミクロン以下の大きさの黒鉛をい
う。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明は、介在物欠陥の多いTi
を添加する方法に変わるものとして究明を続けたひとつ
の結果として、偶然にも希土類−Si合金を添加したこ
とから生まれたものである。そこで、希土類−Si合金
を添加した数多くのサンプルより、注湯前に希土類−S
i合金を添加することで微細な黒鉛を有する鋳鉄が安定
して得られることを突き止めたのであり、特に主成分に
ついては、次のことが明らかとなったのである。 Cの含有量について 1.5%以下の場合には、溶湯の流動性が悪く鋳込みに
支障を来たす。 2.75%以上の場合には、黒鉛が片状黒鉛となって生
じる。 Siの含有量について 2.5%以下の場合には、5%を超える量のパーライト
が析出する。パーライトが析出すると硬度が高くなるこ
とと、フェライトとパーライトが混在する為に切削後の
表面粗さが悪くなったり表面にうねりが生じたりする。
従って一般的にパーライト率5%以下が望ましいとされ
ている。5.5%以上の場合には、硬すぎて切削に支障
を来たす。 C%≦−Si%/2+4の場合はパーライトが析出す
る。この関係式は、Maurer,Holtzhaus
enの組織図を参考に実施例に示す化学組成の溶湯のフ
ェライト率から導いたものである。 Mnの含有量について 0.5%を超えると5%を超える量のパーライトが析出
する。 希土類−Si合金添加量について 0.030%以下では黒鉛を微細化することができな
い。0.075%以上では黒鉛が擬球状(いわゆる芋虫
状)化する。
【0006】
【実施例】以下今回の究明の過程について説明する。ま
ず、希土類−Si合金の添加量と黒鉛の微細化率を調査
確認した。溶湯の化学組成は、C:2.3〜2.6重量
%、Si:4.2〜4.8重量%のものを用いた。希土
類−Si合金を取鍋の底に置き、それをカバー材で覆
い、所定の化学組成に調整した溶湯を炉から取鍋に注い
だ。この取鍋の溶湯をテストピースの鋳型に注湯した。
テストピースは、直径108mm、厚さ32mmとし、テス
トピースの表面には渦巻状の溝を有する。黒鉛の微細化
率とはテストピース中心部おいて100ミクロン以下の
黒鉛が占める面積率である。この調査において、希土類
−Si合金の添加は溶解炉の溶湯中に添加すると希土類
の効果の減衰が速いために効果がない。従って、注湯
前、即ち出湯時もしくは取鍋の溶湯の移し替えをする場
合には移し替え時に添加を行う必要がある。通常では移
し替えをしない場合が一般的であるので本実施例におい
ては出湯時に添加した。
【0007】図1にその結果を示す。図1は希土類合金
添加量と黒鉛微細化率の関係を示す図であり、これによ
ると、出湯時に希土類−Si合金を0.030〜0.0
75重量%添加することによって微細な黒鉛が生ずるこ
とが明らかとなり、50%以上の微細化率を望む場合に
は希土類−Si合金を0.035〜0.065重量%の
範囲で添加すればよく、さらに完全な微細化組織を得る
ためには希土類−Si合金を0.045〜0.060重
量%の範囲で添加すればよいことが解明できた。
【0008】さらにこの希土類−Si合金を添加するこ
とによってフェライト地に微細な黒鉛を有する鋳鉄を生
ずる基地組織の範囲を調べた。表1は、調査した基地組
織の化学組成とその結果を示すものである。さらに図2
は表1を図化したものであり、求めようとする必要範囲
を解りやすく示したものである。
【0009】
【表1】
【0010】表1はテストした16種類の溶湯の化学組
成ならびに物性値を示し、詳細にはその溶湯を鋳込みし
たテストピースの中心部の黒鉛微細化率、フェライト化
率、表面硬さ、ならびに溶湯の流動性を示した。溶湯の
流動性はテストピースの角部のアールの付き具合ならび
にバリの出具合で良否を判定した。図2にCおよびSi
量と基地組識ならびに黒鉛形状の関係を示した。尚、希
土類−Si合金の添加量は、0.050%である。
【0011】C%=−Si%/2+4の直線より上で基
地はフェライトとなり、C=2.75%以下で黒鉛は微
細であり、Si=5.5%以下で硬さが適切である。従
って、C%=−Si%/2+4、C=1.50%、C=
2.75%、およびSi=5.5%の直線で囲まれるハ
ッチングで示す範囲が望ましい化学組成である。
【0012】図3乃至図5は資料番号16のテストピー
スの基地組識を示す顕微鏡写真である。図3は表面近く
であり、極めて微細な共晶状黒鉛が析出している。図4
は表面から7mmのところであり微細な黒鉛が析出してい
る。図5は表面に形成する溝下1.5mmでテストピース
の中心部の組織であり、図4よりも長い黒鉛が析出して
いるが100ミクロン以下の微細な黒鉛である。基地は
すべてフェライト率100%である。
【0013】
【発明の効果】本発明によれば、Ti(チタン)を添加
することなく微細な黒鉛を有する鋳鉄を製造することが
できるので、介在物欠陥が皆無となり製品の不良率を大
巾に改善できる。また、基地組織が完全にフェライト組
織であるために、特に被削性に優れ加工効率が大幅に向
上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】希土類合金添加量と黒鉛微細化率の関係を示す
【図2】CおよびSi量と基地組識ならびに黒鉛形状の
関係を示す図
【図3】資料番号16の表面近くの基地組識を示す顕微
鏡写真
【図4】資料番号16の表面から7mm部分の基地組識を
示す顕微鏡写真
【図5】資料番号16の溝下1.5mmの基地組識を示す
顕微鏡写真
【符号の説明】
なし
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宮地 哲夫 広島県府中市元町77番地の1 株式会社北 川鉄工所内 (72)発明者 北川 潔 広島県府中市元町77番地の1 株式会社北 川鉄工所内 Fターム(参考) 4K014 BA03 BB06 BC11 BD08

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C:1.5〜2.75重量%、Si:2.
    5〜5.5重量%、かつC%≧−Si%/2+4,M
    n:0.5重量%以下、残部実質的にFeからなり、注
    湯前に希土類−Si合金を0.030〜0.075重量
    %添加するフェライト地に微細な黒鉛を有する鋳鉄。
  2. 【請求項2】C:1.5〜2.75重量%、Si:2.
    5〜5.5重量%、かつC%≧−Si%/2+4,M
    n:0.5重量%以下、残部実質的にFeからなり微細
    な黒鉛を生ずる組成の溶湯へ、注湯前に希土類−Si合
    金を0.030〜0.075重量%添加し、前記希土類
    −Si合金の添加後、砂型に注湯するフェライト地に微
    細な黒鉛を有する鋳鉄の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2002146468A (ja) * 2000-11-02 2002-05-22 Kitagawa Iron Works Co Ltd 高い振動減衰能を有する鋳鉄およびその製造方法
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