JP3842906B2 - フェライト地に微細な黒鉛を有する鋳鉄及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、砂型鋳造によって製造される微細な黒鉛を有する鋳鉄及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
黒鉛が微細に晶出した共晶黒鉛鋳鉄は、コンプレッサーのスクロールおよびシリンダ部品として多く使用されており、最近ではその製造方法に砂型を用いたものが実用化されている。
その一つの方法として本出願人は先に、元来添加量を増すことによって共晶黒鉛を晶出させていたTi(チタン)の添加量を、逆に減少させて共晶黒鉛鋳鉄を共晶させる提案をおこなっている(特願平10−29238号)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、先の提案をさらに究明していく過程で生まれたものであって、Tiを全く添加することなく、且つ冷し金を使用することなく、しかも、基地組織をフェライト組織になした微細な黒鉛を有する鋳鉄を得ることを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、C:1.5〜2.75重量%、Si:2.5〜5.5重量%、かつC%≧−Si%/2+4,Mn:0.5重量%以下、残部Feおよび不可避的不純物からなり、注湯前に希土類−Si合金を0.030〜0.075重量%添加するフェライト地に微細な黒鉛を有する鋳鉄であり、C:1.5〜2.75重量%、Si:2.5〜5.5重量%、かつC%≧−Si%/2+4,Mn:0.5重量%以下、残部Feおよび不可避的不純物からなる溶湯を鋳型へ注湯するに際し、前記溶湯が注湯前に希土類−Si合金を0.030〜0.075重量%添加され、注湯されるフェライト地に微細な黒鉛を有する鋳鉄の製造方法である。
通常、Tiを添加しないで砂型に注湯すると、黒鉛は片状黒鉛となるが、希土類−Si合金を注湯前に0.030〜0.075重量%添加することによって微細な黒鉛組織が得られるのである。ここで希土類−Si合金は希土類金属を25%から30%含むものが望ましい。これにかわり、希土類金属を99.8%含むミッシュメタルを使用する方法もあるが歩留まりのバラツキが大きく、これによる黒鉛組識のバラツキを避けるために25%から30%含む希土類−Si合金を使用した。また微細な黒鉛とは100ミクロン以下の大きさの黒鉛をいう。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明は、介在物欠陥の多いTiを添加する方法に変わるものとして究明を続けたひとつの結果として、偶然にも希土類−Si合金を添加したことから生まれたものである。そこで、希土類−Si合金を添加した数多くのサンプルより、注湯前に希土類−Si合金を添加することで微細な黒鉛を有する鋳鉄が安定して得られることを突き止めたのであり、特に主成分については、次のことが明らかとなったのである。
▲1▼Cの含有量について
1.5%以下の場合には、溶湯の流動性が悪く鋳込みに支障を来たす。
2.75%以上の場合には、黒鉛が片状黒鉛となって生じる。
▲2▼Siの含有量について
2.5%以下の場合には、5%を超える量のパーライトが析出する。パーライトが析出すると硬度が高くなることと、フェライトとパーライトが混在する為に切削後の表面粗さが悪くなったり表面にうねりが生じたりする。従って一般的にパーライト率5%以下が望ましいとされている。
5.5%以上の場合には、硬すぎて切削に支障を来たす。
▲3▼C%≦−Si%/2+4の場合はパーライトが析出する。この関係式は、Maurer,Holtzhausenの組織図を参考に実施例に示す化学組成の溶湯のフェライト率から導いたものである。
▲4▼Mnの含有量について
0.5%を超えると5%を超える量のパーライトが析出する。
▲5▼ 希土類−Si合金添加量について
0.030%以下では黒鉛を微細化することができない。
0.075%以上では黒鉛が擬球状(いわゆる芋虫状)化する。
【0006】
【実施例】
以下今回の究明の過程について説明する。
まず、希土類−Si合金の添加量と黒鉛の微細化率を調査確認した。溶湯の化学組成は、C:2.3〜2.6重量%、Si:4.2〜4.8重量%のものを用いた。希土類−Si合金を取鍋の底に置き、それをカバー材で覆い、所定の化学組成に調整した溶湯を炉から取鍋に注いだ。この取鍋の溶湯をテストピースの鋳型に注湯した。テストピースは、直径108mm、厚さ32mmとし、テストピースの表面には渦巻状の溝を有する。黒鉛の微細化率とはテストピース中心部おいて100ミクロン以下の黒鉛が占める面積率である。
この調査において、希土類−Si合金の添加は溶解炉の溶湯中に添加すると希土類の効果の減衰が速いために効果がない。従って、注湯前、即ち出湯時もしくは取鍋の溶湯の移し替えをする場合には移し替え時に添加を行う必要がある。通常では移し替えをしない場合が一般的であるので本実施例においては出湯時に添加した。
【0007】
図1にその結果を示す。図1は希土類合金添加量と黒鉛微細化率の関係を示す図であり、これによると、出湯時に希土類−Si合金を0.030〜0.075重量%添加することによって微細な黒鉛が生ずることが明らかとなり、50%以上の微細化率を望む場合には希土類−Si合金を0.035〜0.065重量%の範囲で添加すればよく、さらに完全な微細化組織を得るためには希土類−Si合金を0.045〜0.060重量%の範囲で添加すればよいことが解明できた。
【0008】
さらにこの希土類−Si合金を添加することによってフェライト地に微細な黒鉛を有する鋳鉄を生ずる基地組織の範囲を調べた。
表1は、調査した基地組織の化学組成とその結果を示すものである。さらに図2は表1を図化したものであり、求めようとする必要範囲を解りやすく示したものである。
【0009】
【表1】
【0010】
表1はテストした16種類の溶湯の化学組成ならびに物性値を示し、詳細にはその溶湯を鋳込みしたテストピースの中心部の黒鉛微細化率、フェライト化率、表面硬さ、ならびに溶湯の流動性を示した。溶湯の流動性はテストピースの角部のアールの付き具合ならびにバリの出具合で良否を判定した。図2にCおよびSi量と基地組識ならびに黒鉛形状の関係を示した。尚、希土類−Si合金の添加量は、0.050%である。
【0011】
C%=−Si%/2+4の直線より上で基地はフェライトとなり、C=2.75%以下で黒鉛は微細であり、Si=5.5%以下で硬さが適切である。従って、C%=−Si%/2+4、C=1.50%、C=2.75%、およびSi=5.5%の直線で囲まれるハッチングで示す範囲が望ましい化学組成である。
【0012】
図3乃至図5は資料番号16のテストピースの基地組識を示す顕微鏡写真である。図3は表面近くであり、極めて微細な共晶状黒鉛が析出している。図4は表面から7mmのところであり微細な黒鉛が析出している。図5は表面に形成する溝下1.5mmでテストピースの中心部の組織であり、図4よりも長い黒鉛が析出しているが100ミクロン以下の微細な黒鉛である。基地はすべてフェライト率100%である。
【0013】
【発明の効果】
本発明によれば、Ti(チタン)を添加することなく微細な黒鉛を有する鋳鉄を製造することができるので、介在物欠陥が皆無となり製品の不良率を大巾に改善できる。また、基地組織が完全にフェライト組織であるために、特に被削性に優れ加工効率が大幅に向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】希土類合金添加量と黒鉛微細化率の関係を示す図
【図2】CおよびSi量と基地組識ならびに黒鉛形状の関係を示す図
【図3】資料番号16の表面近くの基地組識を示す顕微鏡写真
【図4】資料番号16の表面から7mm部分の基地組識を示す顕微鏡写真
【図5】資料番号16の溝下1.5mmの基地組識を示す顕微鏡写真
【符号の説明】
なし
Claims (3)
- C:1.5〜2.75重量%、Si:2.5〜5.5重量%、かつC%≧−Si%/2+4、Mn:0.5重量%以下、残部Feおよび不可避的不純物からなり、注湯前に希土類−Si合金を0.030〜0.075重量%添加するフェライト地に微細な黒鉛を有する鋳鉄。
- C:1.5〜2.75重量%、Si:2.5〜5.5重量%、かつC%≧−Si%/2+4、Mn:0.5重量%以下、残部Feおよび不可避的不純物からなる溶湯を鋳型へ注湯するに際し、前記溶湯が注湯前に希土類−Si合金を0.030〜0.075重量%添加され、注湯されるフェライト地に微細な黒鉛を有する鋳鉄の製造方法。
- 前記希土類−Si合金が希土類金属を25%〜30%含む請求項2記載のフェライト地に微細な黒鉛を有する鋳鉄の製造方法。
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