JP2000025412A - 空気入りタイヤ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 軽量化を図りながら耐久性を向上すると共
に、プライステアの発生を防止することを可能にした空
気入りタイヤを提供する。 【解決手段】 網目構造を有する金属薄板５ａをベルト
層５としてトレッド部４に埋設する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ベルト層として網
目構造を有する金属薄板を利用した空気入りタイヤに関
し、さらに詳しくは、軽量化を図りながら耐久性を向上
すると共に、プライステアの発生を防止することを可能
にした空気入りタイヤに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来の空気入りラジアルタイヤは、引き
揃えられた複数本のスチールコードをコートゴムで被覆
した２層以上のベルト層を備えている。このようなベル
ト構造においては、ベルト層は補強コードがタイヤ周方
向に対して傾斜し、かつ層間で補強コードが互いに交差
するようになっている。

【０００３】しかしながら、上記ベルト構造ではベルト
層の層間に剥離を生じやすいため耐久性を向上すること
が困難であった。また、必要強度を得るためにはベルト
層のコートゴムを十分に厚くする必要があるので軽量化
を図ることが困難になっていた。更に、補強コードが互
いに交差するように積層したベルト構造では、これらベ
ルト層が層間剪断力に応じて捩じれることによりプライ
ステアが発生するという問題もあった。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、軽量
化を図りながら耐久性を向上すると共に、プライステア
の発生を防止することを可能にした空気入りタイヤを提
供することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明の空気入りタイヤは、網目構造を有する金属薄
板をベルト層としてトレッド部に埋設したことを特徴と
するものである。このように従来のスチールコードから
なるベルト層を積層したベルト構造の替わりに、網目構
造を有する金属薄板をベルト層として使用することによ
り、ベルト層間の剥離を回避して耐久性を向上すること
ができる。しかも、従来のベルト構造がスチールコード
とゴムとの接着力により強度を保っているのに対し、上
記金属薄板からなるベルト層ではタイヤ内圧に対する引
っ張り強度が金属薄板とゴムとの接着力に関係なく得ら
れるので、高負荷時の耐久性を向上することが可能にな
る。

【０００６】また、従来のスチールコードからなるベル
ト層を積層したベルト構造を上記金属薄板からなるベル
ト層で置き換えることにより、ベルト層間のゴム層が不
要になるので、同一の必要強度を得ようとする場合にタ
イヤを軽量化することが可能になる。更に、上記金属薄
板はタイヤ中心線の両側で線対称の構造にすることが可
能であるので、プライステアの発生を防止することがで
きる。

【０００７】本発明では、上記金属薄板の両縁部にカー
カス層を結合し、該カーカス層のタイヤ幅方向両端部を
それぞれ左右一対のビード部に係止した構造にすること
が可能である。このような構造にすることにより、カー
カス層のうちベルト層と重複する部分を削減することが
可能になるので、タイヤの軽量化及びゲージダウンを促
進することができ、更には発熱を抑制して耐久性の向上
に寄与する。

【０００８】

【発明の実施の形態】以下、本発明の構成について添付
の図面を参照して詳細に説明する。図１は本発明の実施
形態からなる空気入りタイヤを例示するものである。図
において、左右一対のビード部１，１間には複数本のカ
ーカスコードからなるカーカス層２が装架されている。
このカーカス層２はタイヤ周方向Ｅ−Ｅ’に対して実質
的に９０°のコード角度で配置され、そのタイヤ幅方向
両端部がビードコア３の廻りにタイヤ内側から外側に折
り返されている。トレッド部４におけるカーカス層２の
外周側には、網目構造を有する金属薄板５ａからなるベ
ルト層５がタイヤ１周にわたって配置されている。

【０００９】ベルト層５を構成する金属薄板５ａとして
は高張力鋼等の薄板を使用することが好ましい。また、
上記金属薄板５ａの厚さは０．１〜１．０ｍｍにするこ
とが好ましい。この金属薄板５ａには四角形、六角形、
楕円形等の開口部５ｂが設けられており、これら多数の
開口部５ｂの配置により網目構造を形成している。ベル
ト層５を形成する場合、図２又は図３に示すように、金
属薄板５ａに対して多数の開口部５ｂを打ち抜くように
してもよく、或いは図４（ａ），（ｂ）に示すように、
金属薄板５ａに対して多数の切り込み５ｂ’を設け、そ
の切り込み５ｂ’の幅を広げて開口部５ｂを形成しても
よい。いずれの場合も、網目構造に成形した金属薄板５
ａに対して真鍮メッキ等のメッキ処理を施すことによ
り、金属薄板５ａとコートゴムとの接着力を高めること
が好ましい。

【００１０】上述のように網目構造に成形した金属薄板
５ａをタイヤのトレッド部４に埋設する場合、成形ドラ
ム上で金属薄板５ａを円筒状にし、その突き合わせ両端
部を接着又は溶接等の方法により互いに結合するように
してもよく、或いは予め円筒状に加工した金属薄板５ａ
をトレッド部４におけるカーカス層２の外周側に嵌め込
むようにしてもよい。

【００１１】上述のように網目構造を有する金属薄板５
ａをベルト層５として使用することにより、従来のスチ
ールコードからなるベルト層を積層したベルト構造のよ
うにベルト層間の剥離を生じることがないので耐久性を
向上することができる。しかも、金属薄板５ａからなる
ベルト層５は、複数本のスチールコードをコートゴムで
結合した従来のベルト構造とは異なって、タイヤ内圧に
対する引っ張り強度が金属薄板５ａとコートゴムとの接
着力に関係なく主として金属薄板５ａの強度に基づいて
得られるので、高負荷時の耐久性が優れている。更に、
金属薄板５ａからなるベルト層５においてはタイヤ幅方
向端末部への応力集中が小さくなるので、その端末部か
らのセパレーション故障を防止することができる。

【００１２】また、タイヤの軽量化に関しては、従来の
スチールコードからなるベルト層を積層したベルト構造
を上述の金属薄板５ａからなるベルト層５で置き換える
ことにより、ベルト層間のゴム層が不要になるので、同
一の必要強度を得ようとする場合にタイヤを軽量化する
ことができる。更に、金属薄板５ａはタイヤ中心線の両
側で線対称の構造にすることが可能であるので、従来の
ベルト構造のようにプライステアが発生することはな
い。

【００１３】図５は本発明の他の実施形態からなる空気
入りタイヤのベルト部を例示するものである。図におい
て、ベルト層５を構成する金属薄板５ａには長円形の開
口部５ｂが多数設けられている。この金属薄板５ａには
タイヤ幅方向に直線状に延在する金属部５ｃがタイヤ周
方向に所定の間隔をおいて配置されている。この金属部
５ｃはタイヤ幅方向の引っ張り張力に対して実質的に変
形しないようになっている。

【００１４】金属薄板５ａの両縁部における金属部５ｃ
に対応する位置にはカーカス層２のカーカスコード２ａ
が結合されている。これら金属薄板５ａとカーカスコー
ド２ａとを結合する方法としては、接着又は溶接のほ
か、フック等による物理的な結合等が考えられる。ま
た、１枚の薄板からカーカスコード２ａと金属薄板５ａ
とを一体的に切り出すようにしてもよい。このように金
属薄板５ａの両縁部にカーカス層２を結合した場合、図
１と同様にカーカス層２のタイヤ幅方向両端部をそれぞ
れ左右一対のビード部１，１に係止した構造にする。

【００１５】上述のようにベルト層５を構成する金属薄
板５ａの両縁部にカーカス層２を結合することにより、
従来では左右一対のビード部１，１間にわたって装架さ
れていたカーカス層２のうちベルト層５と重複する部分
を削減することが可能になる。例えば、従来のラジアル
構造においてトレッド部では２層のベルト層と１層のカ
ーカス層との合わせて３層以上必要であったものを１プ
ライで構成することが可能になる。従って、タイヤの軽
量化やゲージダウンを促進することができ、更にはタイ
ヤ走行時の発熱を抑制して耐久性を向上することができ
る。

【００１６】本発明は、網目構造を有する金属薄板をベ
ルト層として使用するものであるが、該金属薄板からな
るベルト層と従来から使用されているスチールコードか
らなるベルト層とを組み合わせて用いるようにしてもよ
い。例えば、従来ではスチールコードからなるベルト層
を４層積層していた場合に、それら４層のベルト層のう
ち２層のベルト層を単層の網目構造を有する金属薄板で
置き換えることにより、少なくとも金属薄板を配置した
部分については軽量化を図りながら耐久性を向上するこ
とができる。

【００１７】

【実施例】タイヤサイズを１１Ｒ２２．５とした空気入
りタイヤにおいて、厚さ０．５ｍｍ、幅１９０ｍｍ、周
長３０７０ｍｍの薄肉円筒形状のステンレス鋼に長楕円
（長径２０ｍｍ、短径５ｍｍ）の開口部を３８５０個設
けた網目構造を有する金属薄板をベルト層に用いた実施
例１と、複数本のスチールコードからなる２層のベルト
層を層間で補強コードが互いに交差するように積層した
従来例をそれぞれ製作した。また、上記網目構造を有す
る金属薄板の両縁部にカーカス層のカーカスコードを一
体的に切り出し、そのカーカス層のタイヤ幅方向両端部
をそれぞれ左右一対のビード部に係止した実施例２を製
作した。

【００１８】これら試験タイヤについて、下記のエッジ
セパレーション評価試験とプランジャー試験を行うと共
に、タイヤ重量を測定し、その結果を表１に示した。 エッジセパレーション評価試験：試験タイヤをドラム試
験機に装着し、空気圧８００ｋＰａ、初期荷重３０００
ｋｇ、速度４５ｋｍ／ｈの条件で走行させ、所定の時間
ごとに荷重を増大させ、ベルトエッジにセパレーション
を生じたときの荷重（初期荷重に対する比率）を測定し
た。但し、実施例１〜２のエッジセパレーションに関し
ては従来のクロスプライ間の剥離という意ではなく、ベ
ルトエッジ部を起点としたクラックによる破壊を意味す
る。

【００１９】プランジャー試験：試験タイヤをリムサイ
ズ22.5×8.25のリムに組み付けて空気圧８００ｋＰａと
し、先端が半球状の鋼製丸棒をトレッド中央部に所定の
速さで押し付けて、タイヤの破壊エネルギーを測定し
た。なお、実施例１〜２については6000Ｊのエネルギー
でも破壊を生じなかったので、その時点で試験を打ち切
った。

【００２０】

【表１】

【００２１】この表１から判るように、実施例１〜２の
空気入りタイヤはいずれも従来例に比べて４ｋｇ以上の
軽量化が達成されており、しかもエッジセパレーション
評価試験及びプランジャー試験の結果によれば従来例と
同等以上の耐久性を備えていた。

【００２２】

【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、網
目構造を有する金属薄板をベルト層としてトレッド部に
埋設したことにより、従来のスチールコードからなるベ
ルト層を積層したベルト構造に比べて軽量化を図りなが
ら耐久性を向上することができ、しかもプライステアの
発生を防止することが可能になる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示
す斜視断面図である。

【図２】本発明の空気入りタイヤのベルト層を構成する
金属薄板を例示する平面図である。

【図３】本発明の空気入りタイヤのベルト層を構成する
金属薄板を例示する平面図である。

【図４】本発明の空気入りタイヤのベルト層を構成する
金属薄板を例示するものであり、（ａ）は打ち抜き後の
平面図であり、（ｂ）は成形後の平面図である。

【図５】本発明の他の実施形態からなる空気入りタイヤ
のベルト部を示す平面図である。

【符号の説明】

１ ビード部 ２ カーカス層 ３ ビードコア ４ トレッド部 ５ ベルト層 ５ａ 網目構造を有する金属薄板

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 網目構造を有する金属薄板をベルト層と
   してトレッド部に埋設した空気入りタイヤ。
2. 【請求項２】 前記金属薄板の両縁部にカーカス層を結
   合し、該カーカス層のタイヤ幅方向両端部をそれぞれ左
   右一対のビード部に係止した請求項１に記載の空気入り
   タイヤ。