WO2018235742A1 - 樹脂製光学部品及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
樹脂製の基材(2)と、その表面に形成された金属酸化物を含有する皮膜(3)と、基材(2)と皮膜(3)との間を連結する連結分子鎖(4)とを有する樹脂製光学部品(1)及びその製造方法である。連結分子鎖(4)は式1で表される特定構造を有する。樹脂製光学部品(1)の製造にあたっては、アルコキシシリル基又はシラノール基とアジド基とが結合したトリアジン環を有する連結分子を含有する表面処理剤を樹脂製の基材(2)に付着させ、紫外線を照射する。次いで、付着面上に金属酸化物を含有する皮膜(3)を形成する。 上記式1において、Aは任意の2価の連結基又は直接結合を示し、R1は水素又は炭素数1~6のアルキル基を示す。
Description
本出願は、2017年6月19日に出願された日本出願番号2017-119873号に基づくもので、ここにその記載内容を援用する。
本開示は、樹脂製の基材とその上に形成された皮膜とを有する樹脂製光学部品及びその製造方法に関する。
レンズ、ミラー等の光学部品は、例えば、ガラス基材と、この基材上に形成された機能性の皮膜とからなる。近年、形状自由度の向上、軽量化、原料コストの削減等のために、ガラス基材から樹脂基材への置き換えが検討されている。
樹脂基材とその上に形成された皮膜とを有する光学部品として、例えば特許文献1には、基材フィルムの表面にシリカ系微粒子を含む層等の複数の層が形成された反射防止フィルムが開示されている。
しかしながら、樹脂基材とその表面に形成された皮膜とを有する従来の光学部品は、基材と皮膜との接着性が十分とはいえない。つまり、樹脂はガラスに比べて線膨張係数が高いため、樹脂基材は高温域において変形しやすい。そのため、樹脂基材上に皮膜を形成すると、高温環境下において皮膜に大きな熱応力がかかり、クラックが発生するおそれがある。
また、高湿環境下においては、樹脂基材が吸水して膨潤するおそれがある。そのため、樹脂基材の膨潤によって皮膜が局所的に引張応力を受け、樹脂基材の収縮と共に皮膜がはく離するおそれがある。
本開示は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、樹脂製の基材と皮膜との密着性が高く、皮膜のはく離やクラックの発生を防止できる樹脂製光学部品及びその製造方法を提供しようとするものである。
本開示の一態様は、樹脂製の基材と、
上記基材の表面に形成された、金属酸化物を含有する皮膜と、
上記基材と上記皮膜との間を連結する連結分子鎖と、を有し、
上記連結分子鎖が下記式1で表される構造を有し、下記式1におけるN末端が上記基材中の炭化水素骨格の炭素原子と共有結合を形成しており、下記式1におけるO末端が上記皮膜中の金属原子と共有結合を形成している、樹脂製光学部品にある。
上記基材の表面に形成された、金属酸化物を含有する皮膜と、
上記基材と上記皮膜との間を連結する連結分子鎖と、を有し、
上記連結分子鎖が下記式1で表される構造を有し、下記式1におけるN末端が上記基材中の炭化水素骨格の炭素原子と共有結合を形成しており、下記式1におけるO末端が上記皮膜中の金属原子と共有結合を形成している、樹脂製光学部品にある。
上記式1においてAは任意の2価の連結基又は直接結合を示し、R1は水素又は炭素数1~6のアルキル基を示す。
本開示の他の態様は、炭素数1~6のアルコキシシリル基又はシラノール基とアジド基とが結合したトリアジン環を有する連結分子を含有する表面処理剤を樹脂製の基材に付着させ、
上記表面処理剤の付着面に紫外線を照射し、
上記付着面上に金属酸化物を含有する皮膜を形成する、樹脂製光学部品の製造方法にある。
上記表面処理剤の付着面に紫外線を照射し、
上記付着面上に金属酸化物を含有する皮膜を形成する、樹脂製光学部品の製造方法にある。
上記樹脂製光学部品は、基材と皮膜との間を連結する連結分子鎖を有しており、連結分子鎖が基材及び皮膜とそれぞれ共有結合を形成している。つまり、連結分子鎖を介して基材と皮膜とが共有結合という強固な化学結合によって結合している。そのため、樹脂製光学部品は基材と皮膜との密着性が高い。よって、たとえ高温環境や高湿環境にさらされても、皮膜のはく離やクラックの発生を防止することができる。
上記製造方法においては、上記特定の構造を有する連結分子を含有する表面処理剤を樹脂製の基材に付着させる。このとき、連結分子は、基材の炭化水素骨格に十分近接しやすく、基材の表面に吸着することができる。連結分子のトリアジン環が、電子吸引性の窒素原子を含み、環平面における中心垂直線を軸として非対称な構造であるため、複合的な電子の偏在状態を分子周辺に有するからであると考えられる。
次いで、表面処理剤の付着面に紫外線を照射する。これにより、トリアジン環に結合したアジド基から窒素分子が脱離すると共にナイトレンが生成する。ナイトレン生成時には、上記のごとく、連結分子は基材表面に吸着しているため、連結分子のアジド基由来のナイトレンと、基材の炭化水素骨格との間で共有結合が形成される。
次に、上記付着面に金属酸化物を含有する皮膜を形成する。これにより、連結分子のシラノール基又はアルコキシシリル基におけるケイ素と、金属酸化物中の金属原子Mとの間でSi-O-Mという共有結合が形成される。
このように、上記製造方法においては、連結分子鎖を介して基材と皮膜とを共有結合により結合させることができる。そのため、基材と皮膜との密着性に優れ、皮膜のはく離、クラックの発生を防止できる樹脂製光学部品の製造が可能になる。
以上のごとく、上記態様によれば、樹脂製の基材と皮膜との密着性が高く、皮膜のはく離やクラックの発生を防止できる樹脂製光学部品及びその製造方法を提供することができる。
(実施形態1)
樹脂製光学部品及びその製造方法に係る実施形態について、図1~図6を参照して説明する。図1及び図2に例示されるように、樹脂製光学部品1は、基材2と皮膜3とを有する。
樹脂製光学部品及びその製造方法に係る実施形態について、図1~図6を参照して説明する。図1及び図2に例示されるように、樹脂製光学部品1は、基材2と皮膜3とを有する。
基材2は樹脂製であり、炭化水素骨格を有する。基材2は、例えば環状オレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン等を含有する。基材2は、1種類の樹脂を含有していてもよいし、2種類以上の樹脂を含有していてもよい。基材2の形状は、特に限定されず、各種光学部品の用途に適した形状を有することができる。
皮膜3は基材2の表面に形成されている。皮膜3は、基材2の表面全体を覆っていてもよいし、基材2の表面を部分的に覆っていてもよい。皮膜3は、例えば、基材2に特定の機能を付与したり、機能を高めたりできる機能膜などである。
皮膜3は金属酸化物を含有する。皮膜3は、1層であってもよいし、後述の実施形態2に例示されるように2層以上の多層構造を有してしてもよい。2層以上の場合には、例えば材質が相互に異なる層とすることもできるし、材質が同じ層を含んでいてもよい。
図3に例示されるように、樹脂製光学部品1は、基材2と皮膜3との間を連結する連結分子鎖4を有する。つまり、連結分子鎖4は基材2と皮膜3とを架橋する。連結分子鎖4は、図3に例示される構造であってもよいが、下記の式1で表される構造を有することができる。
式1において、R1は水素又は炭素数1~6のアルキル基を示す。R1の炭素数が6を超える場合には製造が困難になる。また、この場合には製造時に後述の連結分子を例えばアルコールのような溶媒に溶解させることが困難になるおそれがある。R1は製造時において連結分子を溶解させる溶媒に依存する。溶媒として例えばエタノールを用いた場合にはR1はエチル基であり、例えばプロパノールを用いた場合にはR1はプロピル基である。
式1において、Aは任意の2価の連結基又は直接結合を示す。Aが直接結合の場合には、式1は以下の式1aで表される。
連結基としては、例えばアルキレン基がある。アルキレン基は、直鎖であっても分岐鎖を有していてもよい。また、アルキレン基は、エーテル、アミン、カルボキシ基、スルフィド基、ケトン等を含んでいてもよい。
式(1)におけるAは下記式2であることが好ましい。この場合には連結分子の合成が容易になる。
式2において、R2が炭素数1~6のアルキレン基である。アルキレン基は直鎖であってもよく、分岐鎖を有していてもよい。アルキレン基は、炭素数が3であるプロピレン基であることが好ましい。この場合には、連結分子の合成がより容易になる。
図3には、式1で表される連結分子鎖の例を示す。図3に例示されるように、樹脂製光学部品1においては、式1で表される連結分子鎖4のN末端が基材2中の炭化水素骨格の炭素原子と共有結合を形成している。N末端は、トリアジン環に連結したアミノ基における窒素原子のことである。このアミノ基は例えばアジド基に由来するものである。
また、樹脂製光学部品1においては、式1で表される連結分子鎖4のO末端が皮膜3中のSi等の金属原子と共有結合を形成している。O末端は、トリアジン環に直接あるいは間接的に結合したシラノール基又はアルコキシシリル基における酸素原子のことである。
皮膜3における金属酸化物としては、Si、Ti、Ta、Nb、Zr、Al、Mg等から選ばれる少なくとも1種を含有することができる。金属酸化物は、1種類の金属原子を含有する酸化物であっても、2種以上の金属を含有する複合酸化物であってもよい。
好ましくは、皮膜3の金属酸化物は、Si及びTiの少なくとも一方を含有することがよい。金属酸化物がSiを含有する場合には、皮膜3と連結分子鎖4とがシロキサン結合(つまり、-Si-O-Si-)により連結される。また、金属酸化物がTiを含有する場合には、皮膜3と連結分子鎖4とが-Ti-O-Si-結合により連結される。いずれの場合においても連結分子鎖4を介した基材2と皮膜3との結合がより強固になり、皮膜3のはく離やクラックの発生をより一層防止できる。なお、図3には、皮膜3と連結分子鎖4がシロキサン結合により連結された場合を例示している。
樹脂製光学部品1は、皮膜3として例えば反射防止膜及び増反射膜の少なくとも一方を有することができる。反射防止膜からなる皮膜3を有する場合には、樹脂製光学部品1は、例えば各種センサ等に用いられるカメラレンズ、ディスプレイ等に好適になる。増反射膜からなる皮膜3を有する場合には、樹脂製光学部品1は、例えばミラーに好適になる。
反射防止膜は、例えば2.0以上という屈曲率の高い金属酸化物を含有することができる。このような金属酸化物としては、例えばTa2O5、ZrO2、TiO2、Nb2O5等が挙げられる。
増反射膜は、例えば2.0未満という屈曲率の低い金属酸化物を含有することができる。このような金属酸化物としては、例えばSiO2、Al2O3、MgO、Y2O3等が挙げられる。
次に、樹脂製光学部品1の製造方法について説明する。まず、図4(a)に例示されるように、樹脂製の基材2の表面に表面処理剤40を付着させる。表面処理剤40の付着は、基材2の表面処理剤40への浸漬(つまり、ディッピング)、スプレー塗布等により行うことができる。
表面処理剤40は、連結分子とこれを溶解する溶媒とを含有する。連結分子は、炭素数1~6のアルコキシシリル基又はシラノール基とアジド基とが結合したトリアジン環を有する。連結分子としては、例えば下記式3で表される物質を用いることができる。式3において、A及びR1については上述の式1と同様である。
溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコールを用いることができる。その他にも、水、アセトン、ベンゼン、トルエン、キシレン等を用いることができる。溶媒としては、低級アルコールを用いることが好ましい。
例えば溶媒としてエタノールを用い、連結分子として、式3におけるAが-NHCH2CH2CH2-であり、R1がエチル基(つまり、-CH2CH3)である物質を用いる例について説明する。つまり、連結分子として下記式3aで表される物質を用いる例について説明する。
表面処理剤40を基材2に付着させると、図5(a)に例示されるように、表面処理剤40中に含まれる連結分子401が基材2の炭化水素骨格に近接し、基材2の表面に吸着することができる。これは、連結分子401のトリアジン環が、電子吸引性の窒素原子を含み、環平面における中心垂直線を軸として非対称な構造であるため、複合的な電子の偏在状態を分子周辺に有するからである。そして、図6(a)及び図6(b)に例示されるように、トリアジン環に結合したアジド基が極性を有する。したがって、たとえ基材2がポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などの極性が小さな樹脂を含有する場合であっても、その炭化水素骨格における炭素原子と水素原子との間の小さな極性部分に連結分子401は吸着することができる。つまり、連結分子401は、炭化水素骨格を有する基材2に吸着することができる。
次いで、図4(b)に例示されるように、表面処理剤40の付着面21に紫外線Hvを照射する。これにより、図6(c)に例示されるように、トリアジン環に結合したアジド基から窒素分子が脱離すると共にナイトレンが生成する。このとき、図5(a)及び図5(b)に例示されるように連結分子401は基材2の表面に吸着しているため、連結分子401のアジド基由来のナイトレンと、基材2の炭化水素骨格との間で共有結合が形成される。
図5(a)及び(b)においては、連結分子401の1つのアジド基と基材2中の炭化水素骨格の炭素原子との間で共有結合を形成している例を示している。連結分子401は、その2つのアジド基の両方が基材2中の炭素原子と共有結合を形成することもできる。
次に、付着面21に金属酸化物を含有する皮膜3を形成する。皮膜3の形成方法は特に限定されず、ディッピング、スプレー塗布、真空蒸着、スパッタリング、プラズマCVD法、ALD(つまり、原子層堆積)法などにより行うことができる。好ましくは真空蒸着がよい。
例えば酸化ケイ素を含有する皮膜3を付着面21に形成させる例について以下説明する。図5(b)に例示されるように、付着面21には連結分子401が結合しているため、皮膜3は、連結分子401が結合した付着面21上に形成される。このとき、図3に例示されるように皮膜3中の酸化ケイ素中のSi原子と、連結分子401のアルコキシシリル基との間で例えばシロキサン結合のような共有結合が形成される。
図示を省略するが、酸化ケイ素の代わりに酸化チタンを用いると、皮膜中の酸化チタンのTi原子と、連結分子のアルコキシシリル基との間でTi-O-Si結合が形成される。皮膜が酸化ケイ素や酸化チタンの代わりに他の金属原子Mの酸化物を含有する場合においても、M-O-Si結合を形成することができる。
このようにして、図3に例示されるように、基材2と皮膜3とが連結分子鎖4を介して連結され、樹脂製光学部品1を得ることができる。なお、図3においては、連結分子鎖4のSi原子が1つの酸素原子を介して皮膜3中のSi原子と共有結合を形成した例を示している。連結分子鎖4は、Si原子が、このSi原子に結合した他の2つ以上の酸素原子を介して皮膜3中の2つ以上のSi原子と共有結合を形成することもできる。
樹脂製光学部品1においては、図1~図3に例示されるように、連結分子鎖4を介して基材2と皮膜3とが共有結合により結合している。そのため、基材2と皮膜3との密着性が優れる。したがって、たとえ高温環境や高湿環境にさらされても、皮膜3のはく離やクラックの発生を防止することができる。
このような樹脂製光学部品1は、高温環境や高湿環境にさらされやすい例えば車載用途に好適である。樹脂製光学部品1が皮膜3として例えば反射防止膜を有する場合には、樹脂製光学部品1は、車載用センサカメラのレンズに好適になる。また、樹脂製光学部品1が皮膜3として例えば増反射膜を有する場合には、樹脂製光学部品1は、車載用のミラーに好適になる。
(実験例)
本例は、樹脂製光学部品の接着強度を評価する例である。まず、実施形態1と同様にして、実施例にかかる樹脂製光学部品を製造した。実施例の樹脂製光学部品は、実施形態1と同様の構成を有する。実施例の樹脂製光学部品の製造にあたっては、連結分子として式3aで表される分子を用い、酸化ケイ素の真空蒸着により皮膜を形成した。
本例は、樹脂製光学部品の接着強度を評価する例である。まず、実施形態1と同様にして、実施例にかかる樹脂製光学部品を製造した。実施例の樹脂製光学部品は、実施形態1と同様の構成を有する。実施例の樹脂製光学部品の製造にあたっては、連結分子として式3aで表される分子を用い、酸化ケイ素の真空蒸着により皮膜を形成した。
また、実施例の比較用として、表面処理剤を用いずに基材上に酸化ケイ素を含有する皮膜を形成した樹脂製光学部品を作製した。この比較例の樹脂製光学部品は、表面処理剤を用いていない点を除いて、実施例と同様の方法で得られる。
実施例及び比較例の樹脂製光学部品を相対湿度85%の高温高湿環境下で1000時間放置した後、各樹脂製光学部品についてテープはく離試験を行った。具体的には、まず、接着強度の異なる3種類のテープをそれぞれ樹脂製光学部品の皮膜に貼り付けた。テープと皮膜との接着面は5mm四方の領域である。また、テープの端部に、(株)今田製作所製のプッシュプルゲージ「SV3」を取り付けた。そして、樹脂製光学部品からテープを引きはがすときの密着強度(単位:N/5mm)をプッシュプルゲージにより測定した。
比較例においては、3種類のテープのすべてで皮膜がはく離した。これらのうち、密着力が最も弱いテープを用いてはく離試験を行ったときの密着強度は0.1N/5mmであった。
これに対し、実施例においては、3種類のテープのいずれを用いても皮膜がはく離しなかった。これらのうち、密着強度が最も強いテープを用いてはく離試験を行ったときの密着強度は1.2N/5mmであった。
つまり、基材と皮膜との間に連結分子鎖を有する実施例は、連結分子鎖を有していない比較例に比べて密着力が少なくとも12倍向上していた。また、高温高湿環境下で放置した実施例の樹脂製光学部品を目視にて観察してところ、クラックの発生、はく離はなかった。
このように、本例によれば、実施形態1のように連結分子鎖を介して基材と皮膜とを密着させることにより、密着性が向上することがわかる。このような連結構造を有する樹脂製光学部品は、高温、高湿環境下においても、優れた密着性を発揮できる。
(実施形態2)
本形態においては、多層構造の皮膜を有する樹脂製光学部品について説明する。図7に例示されるように、樹脂製光学部品1は、多層構造の皮膜3を有することができる。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
本形態においては、多層構造の皮膜を有する樹脂製光学部品について説明する。図7に例示されるように、樹脂製光学部品1は、多層構造の皮膜3を有することができる。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
多層構造の皮膜3を有する場合には、皮膜3は、酸化ケイ素又は酸化チタンを含有し、かつ基材2に面する第1層31を有することが好ましい。つまり、基材2に接触する第1層が酸化ケイ素又は酸化チタンを有することが好ましい。この場合には、連結分子鎖4と第1層31とがSi-O-Si結合又はSi-O-Ti結合により結合するため、密着性がより向上する。
また、酸化タンタルを含有する第2層32を有することが好ましい。この場合には、化学的に安定で非晶質な膜が形成されやすく、膜の隙間に水等の分子の透過を防ぐという効果が得られる。第2層32は、第1層31上に形成することができる。第2層32は、図7に例示されるように、第1層31に面し、第1層31と第2層32とを直接接触させることができる。また、第1層31と第2層32との間に図示を省略する他の層が設けられていてもよい。
図7の例示においては、2層構造の皮膜3を示すが、皮膜3は3層以上であってもよい。多層構造の皮膜3を形成する場合には、皮膜3は、上述の反射防止膜、増反射膜の他に、例えば、紫外線(つまりUV)カットフィルタ、赤外線(つまりIR)カットフィルタ、親水撥水膜、ハードコート膜等を含有することができる。
以上のように、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
Claims (18)
- 上記式2におけるアルキレン基がプロピレン基である、請求項2に記載の樹脂製光学部品。
- 上記皮膜中の上記金属酸化物がSi及びTiの少なくとも一方を含有し、上記連結分子鎖の上記O末端が上記金属酸化物のSi原子又はTi原子と共有結合を形成している、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂製光学部品。
- 上記皮膜が反射防止膜及び増反射膜の少なくとも一方を含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂製光学部品。
- 上記皮膜が多層構造を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂製光学部品。
- 上記皮膜が酸化ケイ素又は酸化チタンを含有する共に上記基材に面する第1層(31)と、酸化タンタルを含有する第2層(32)とを少なくとも有する、請求項6に記載の樹脂製光学部品。
- 上記樹脂製光学部品が車載用のレンズ又はミラーである、請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂製光学部品。
- 炭素数1~6のアルコキシシリル基又はシラノール基とアジド基とが結合したトリアジン環を有する連結分子(401)を含有する表面処理剤(40)を樹脂製の基材(2)に付着させ、
上記表面処理剤の付着面(21)に紫外線を照射し、
上記付着面上に金属酸化物を含有する皮膜(3)を形成する、樹脂製光学部品(1)の製造方法。 - 上記式2におけるアルキレン基がプロピレン基である、請求項11に記載の樹脂製光学部品の製造方法。
- 上記表面処理剤が上記連結分子と上記連結分子を溶解するアルコールとを含有する、請求項9~12のいずれか1項に記載の樹脂製光学部品の製造方法。
- 上記表面処理剤の上記基材への付着は、ディッピング又はスプレーにより行う、請求項9~13のいずれか1項に記載の樹脂製光学部品の製造方法。
- 上記皮膜として反射防止膜及び増反射膜の少なくとも一方を形成する、請求項9~14のいずれか1項に記載の樹脂製光学部品の製造方法。
- 上記皮膜として多層構造の皮膜を形成する、請求項9~15のいずれか1項に記載の樹脂製光学部品の製造方法。
- 上記皮膜として、酸化ケイ素又は酸化チタンを含有する共に上記基材に面する第1層(31)と、酸化タンタルを含有する第2層(32)とを少なくとも形成する、請求項9~16のいずれか1項に記載の樹脂製光学部品の製造方法。
- 上記皮膜の形成は、上記金属酸化物の蒸着によって行う、請求項9~17のいずれか1項に記載の樹脂製光学部品の製造方法。
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