WO2013145752A1 - 非水電解質二次電池用電極及びこれを用いた非水電解質二次電池 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明で用いる多孔質アルミニウム集電体は、所定の体積割合で混合したアルミニウム粉末と支持粉末の混合粉末を加圧成形した後に、その成形体を不活性雰囲気中で熱処理して焼結し、最終的に支持粉末を除去することで得られる。また、混合粉末を金属板と複合化してもよい。図1に示すように、多孔質アルミニウム集電体は、支持粉末が除去された孔と、その孔の周囲を形成する焼結したアルミニウム粉末の結合金属粉末壁とによって構成される。結合金属粉末壁には多くの微細な孔が形成されており、孔同士がこれら微細孔によって連結したオープンセル型の構造となっている。
p=[{hv-(hw/2.7)}/hv]×100(1)
ここで、
hv:プレス処理前の多孔質アルミニウム集電体の全体積(cm3)
hw:プレス処理前の多孔質アルミニウム集電体の質量(g)
2.7:アルミニウム材の密度(g/cm3)である。
本発明で用いるアルミニウム粉末には、純アルミニウム粉末、アルミニウム合金粉末又はこれらの混合物が用いられる。使用環境下において合金成分が耐食性劣化の原因となるような場合には、純アルミニウム粉末を用いるのが好ましい。純アルミニウムとは、純度99.0mass%以上のアルミニウムである。
純アルミニウム粉末に添加元素粉末を加えた混合物を用いてもよい。このような添加元素には、マグネシウム、珪素、チタン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛等から選択される単独又は二以上の任意の組み合わせからなる複数の元素が好適に用いられる。このような混合物は、熱処理によりアルミニウムと添加元素との合金を形成する。また、添加元素の種類によっては、アルミニウムと添加元素との金属間化合物が更に形成される。このようなアルミニウムの合金や金属間化合物の含有により、様々な効果が得られる。例えば、珪素や銅などの添加元素とアルミニウムとのアルミニウム合金では、アルミニウム粉末の融点が低下し、熱処理に必要な温度を下げることができるので製造に必要なエネルギーを削減できると共に、合金化によって強度が向上する。また、アルミニウムとニッケルなど添加元素との金属間化合物が形成される際に発熱が起こって焼結が促進されると共に、金属間化合物が分散した組織が形成されることで高強度化が図れる。
また、添加元素粉末の粒径は、1~50μmが好ましい。純アルミニウム粉末、アルミニウム合金粉末、支持粉末との十分な混合を図るためにより微細であるのが好ましく、少なくとも支持粉末より細かいものが用いられる。添加元素粉末の粒径は、アルミニウム粉末と同様にレーザー回折散乱法(マイクロトラック法)で測定したメジアン径で規定する。
本発明では支持粉末としては、アルミニウム粉末の融点よりも高い融点を有するものを用いる。また、混合粉末を金属板と複合化する場合には、アルミニウム粉末と金属板の低い方の融点よりも高い融点を有するものを用いる。このような支持粉末としては水溶性塩が好ましく、入手の容易性から塩化ナトリウムや塩化カリウムが好適に用いられる。支持粉末が除去されることで形成された空間が多孔質アルミニウムの孔になることから、支持粉末の粒径が孔径に反映される。そこで、本発明で用いる支持粉末の粒径は、100~1000μmとするのが好ましい。支持粉末の粒径は、ふるいの目開きで規定する。従って、分級によって支持粉末の粒径を揃えることで、孔径の揃った多孔質アルミニウムが得られる。
本発明においては、混合粉末を金属板と複合化した状態で用いてもよい。金属板とは無孔の板や箔及び、有孔の金網、エキスパンドメタル、パンチングメタル等の網状体である。金属板が支持体となり多孔質アルミニム集電体の強度が向上し、更に導電性が向上する。金属板としては熱処理時に蒸発又は分解しない素材、具体的にはアルミニウム、チタン、鉄、ニッケル、銅等の金属やその合金製のものが好適に利用できる。
網状体の有孔の孔径は、接合した混合粉末から支持粉末を除去して得られる孔の径より大きくても、小さくてもよい。
網状体の有孔の開口率は、多孔質アルミニウム集電体の気孔率を損なわないためにも大きい方が好ましい。
アルミニウム粉末と支持粉末の混合割合は、それぞれの体積をVal、Vsとしてアルミニウム粉末の体積率であるVal/(Val+Vs)が5~20%とするのが好ましく、より好ましくは10~15%である。ここで体積Val、Vsはそれぞれの質量と比重から求めた値である。アルミニウム粉末の体積率が20%を超える場合には、支持粉末の含有率が少な過ぎるために支持粉末同士が接触することなく独立して存在することになり、支持粉末を十分に除去しきれない。除去しきれない支持粉末は、多孔質アルミニウムの腐食の原因となる。一方、アルミニウム粉末の体積率が5%未満の場合には、多孔質アルミニウムを構成する壁が薄くなり過ぎることで、多孔質アルミニウムの強度が不十分となり、取り扱いや形状維持が困難となる。
また、支持粉末をアルミニウム粉末で十分に覆れた状態を達成するために、アルミニウム粉末の粒径(dal)が支持粉末の粒径(ds)に比べて十分に小さいこと、例えば、dal/dsが0.10以下であることが好ましい。
混合粉末を成形用金型に充填する際に、混合粉末と金属板とを複合化してもよい。複合化の形態としては、混合粉末の間に金属板を挟んでも、混合粉末を金属板で挟んでも構わない。また、混合粉末と金属板の複合化を繰り返して多段にすることもできる。複合化の際にはアルミニウム粉末や支持粉末の粒径、混合割合の異なる混合粉末や、種類の異なる複数の金属板を組み合わせることもできる。
加圧成形時の圧力は、200MPa以上とするのが好ましい。十分な圧力を加えて成形することでアルミニウム粉末同士が擦れ合い、アルミニウム粉末同士の焼結を阻害するアルミニウム粉末表面の強固な酸化皮膜が破壊される。この酸化皮膜は融解したアルミニウムを閉じ込め、互いに接触することを妨げると共に、融解アルミニウムとの濡れ性に劣り、液体状のアルミニウムを排斥する作用がある。そのため、加圧成形の圧力が200MPa未満の場合にはアルミニウム粉末表面の酸化皮膜の破壊が不十分で、加熱時に融解したアルミニウムが成形体の外に滲み出し玉状のアルミニウムの塊が形成される場合がある。アルミニウム塊が形成されたことで多孔質アルミニウムの気孔率は狙いよりも高くなる。従って、このようなアルミニウムの塊の形成は、多孔質アルミニウムの気孔率が制御できなくなってしまう点で弊害となる。また、アルミニウム塊の形成によって形状が崩れ、これを除去しなければならなくなる点でも問題となる。成形圧力は使用する装置や金型が許容する限り大きい方が形成される多孔質アルミニウム壁が強固になって好ましい。しかしながら、400MPaを超えると効果が飽和する傾向がある。加圧成形体の離型性を高める目的でステアリン酸等の脂肪酸、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸、各種ワックス、合成樹脂、オレフィン系合成炭化水素等の潤滑剤を使用することが好ましい。
熱処理は使用するアルミニウム粉末の融点以上で、かつ、支持粉末の融点未満の温度で行う。アルミニウム粉末の融点とは、純アルミニウム又はアルミニウム合金の液相が生じる温度である。液相が生じる温度まで加熱することで、アルミニウム粉末から液相が滲み出し、液相同士が接触することでアルミニウム粉末同士が金属的に結合する。
焼結体中の支持粉末の除去は、支持粉末を水に溶出させて行う方法が好適に用いられる。焼結体を十分な量の水浴または流水浴に浸漬する等の方法により、支持粉末を容易に溶出することができる。水に溶出した支持粉末は、金属粉末壁に形成された微細孔を介して焼結体から除去される。支持粉末として水溶性塩を用いる場合には、これを溶出させる水は、イオン交換水や蒸留水等、不純物の少ない方が好ましいが、水道水でも特に問題は無い。浸漬時間は、通常、数時間~24時間程度の範囲で適宜選択される。浸漬中に超音波等によって振動を与えることにより、溶出を促進することもできる。
本発明に係る非水電解質二次電池用電極としては、正極と負極のいずれも適用可能できる。このような電極は、リチウムを吸蔵放出可能な活物質を含む電極合材を含有する。電極合材は、上述の多孔質アルミニウム集電体の孔中に充填された状態で担持されている。電極合材は、活物質に加えて導電助剤と結着剤とを含んでいてもよい。
また、圧入法に替えて、上記各成分を溶媒に分散したスラリー中に多孔質アルミニウム集電体を浸漬し、上記各成分を多孔質アルミニウム集電体の孔中に拡散させる方法(以下、浸漬法と称する)を採用してもよい。
圧入法及び浸漬法において、スラリー中の電極合材は、結合金属粉末壁に形成された微細孔を介して多孔質アルミニウムの孔中に充填される。
以上のようにして上記各成分が充填された電極は、50~200℃で溶媒を飛散させて乾燥される。
本発明に係る非水電解質二次電池は、上記のようにして製造される電極と、電間に配置されたセパレータと、非水電解質とを用いて非水電解質二次電池に組み立てられる。なお、正極及び負極の両方、又は、正極のみを上記電極によって構成するのが好ましいが、負極のみを上記電極によって構成してもよい。
まず、本発明に係る非水電解質二次電池用電極に用いる多孔質アルミニウム集電体を以下のようにして作製した。
アルミニウム粉末として、粒径の異なる下記純アルミニウム粉末(A1、A3)を用いた。支持粉末として、粒径の異なる塩化ナトリウム粉末(B1~B4)、ならびに、粒径605μmの塩化カリウム(C1)を用いた。表1に示すように、各粉末を所定の体積割合で混合し、混合粉末を調製した。
A1:メジアン径3μm(融点:660℃)
A3:メジアン径17μm(融点:660℃)
B1:粒径925μm(ふるい目開き中央値)(融点:800℃)
B2:粒径605μm(ふるい目開き中央値)(融点:800℃)
B3:粒径400μm(ふるい目開き中央値)(融点:800℃)
B4:粒径120μm(ふるい目開き中央値)(融点:800℃)
<塩化カリウム粉末>
C1:粒径605μm(ふるい目開き中央値)(融点:776℃)
正極活物質として炭素被覆リン酸鉄リチウム;導電助剤としてアセチレンブラック;結着剤としてPVDFを、表2に記載の重量部で用いた。そして、上記の合計を100重量部として溶媒であるNMP200重量部に分散してスラリーを調製した。
プレス処理前における多孔質アルミニウム集電体の気孔率は、上記式(1)に従って求めた。
da/dpは次のようにして求めた。まず、daについては、SEM観察により得た活物質の断面画像を数値計算し、これを円相当直径に算出して粒径daを求めた。10個の活物質試料について同様の観察を行い、算術平均値をもって粒径daを決定した。dpについては、電極合材を充填していない多孔質アルミニウム試料の断面をSEM観察し、10以上の孔について長径又は直径を測定し、算術平均値をもって孔径dpを決定した。以上のようにして決定したdaとdpから、da/dpを求めた。
プレス処理前の電極合材充填量は、次のようにして求めた。まず、多孔質アルミニウムの質量を、多孔質アルミニウムを構成する素材(アルミニウム材)の密度で割って多孔質アルミニウム集電体を構成する素材の体積を求め、電極体積からこの体積を差し引いて空間体積(cm3)を求めた。次に、電極合材を充填する前の多孔質アルミニウム集電体試料の質量をプレス処理後の正極質量から差し引いて電極合材の質量(g)を求めた。そして、電極合材の質量(g)を空間体積(cm3)で割り算して空間の単位体積当たりの電極合材の質量を求め、これを電極合材充填量とした。電極合材充填量は、0.7g/cm3以上を合格とし、それ未満を不合格とした。
プレス処理前後の電気抵抗比は、次のようにして求めた。正極の電極合材を充填した後であってプレス処理前の多孔質アルミニウム試料と、これにプレス処理を施した正極試料とを用い、それぞれの試料において長さ方向に沿って10mmの間隔で四つの電極端子を設けた。そして、それぞれの試料の電気抵抗を四端子法により測定した。プレス処理前の試料の電気抵抗Rbに対するプレス処理後の試料の電気抵抗Raの比(Ra/Rb)が、1.5以下の場合を合格とし、それを超える場合を不合格とした。
上記のプレス処理した正極試料を作用極に用いた2極式評価セルを作製した。対極にはリチウム金属を用いた。電解液として、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートの混合溶媒(体積比で3:7)にLiPF6を1.3mol/L溶解させた非水電解液を用い、セパレータとして、微多孔質ポリエチレン膜を用いた。外装体には、ポリプロピレンブロックを加工した樹脂製容器を用い、作用極及び対極に設けた各端子の開放端部が外部露出するように電極群を収納封口した。
上述のように作製した評価セルを用いて性能試験を行い、正極活物質の単位質量当たりの電極容量を以下のようにして求めた。
作製した評価セルを0.2Cで4Vまで充電した後、0.2Cで放電し、放電時に電圧が2Vを下回るまでに流れた電流と放電に要した時間の積を電極容量とした。この電極容量を正極試料に充填された活物質の質量で割った値を、正極活物質の単位質量当たりの電極容量とした。ここで、正極試料に充填された活物質の質量は、電極合材を充填する前の多孔質アルミニウム集電体試料の質量をプレス処理後の正極質量から差し引いて電極合材の質量(g)を求め、これに正極合材中の正極活物質の質量割合を掛けることによって求めた。
正極活物質の単位質量(1g)当たりの電極容量を表2に示す。100mAh/g以上を合格とし、それ未満を不合格とした。
2・・・多孔質アルミニウム壁
3・・・多孔質アルミニウムの孔
4・・・多孔質アルミニウム壁の損傷部分
da・・・活物質の粒径
dp・・・多孔質アルミニウムの孔径
Claims (3)
- リチウムを吸蔵放出可能な活物質を含む電極合材を含有する非水電解質二次電池用電極であって、80~95%の気孔率を有する多孔質アルミニウムを集電体としてその孔中に前記電極合材が充填されており、前記活物質の粒径daと多孔質アルミニウムの孔径dpがda/dp≦0.10を満たすことを特徴とする非水電解質二次電池用電極。
- 前記電極合材が、活物質に加えて導電助剤と結着剤とを含み、全電極合材に対する活物質の割合が85~95質量%である、請求項1に記載の非水電解質二次電池用電極。
- 請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用電極を正極及び負極の少なくとも一方とし、正負極間に配置されたセパレータと、非水電解質とを備えたことを特徴とする非水電解質二次電池。
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