JP6071241B2 - 非水電解質二次電池用正極、当該非水電解質二次電池用正極の製造方法、ならびに、当該非水電解質二次電池用正極を用いた非水電解質二次電池 - Google Patents
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Description
特許文献2には、高出力化及び高容量化のための電極として、不織布状ニッケルをクロマイジング処理しクロム含有率を25質量%以上とした不織布状ニッケルクロムの多孔質集電体が記載されている。
また、特許文献3には、チタンを焼結助剤とし、スラリー発泡法により作製した多孔質アルミニウムに微細炭素繊維を付着させた高エネルギー密度の集電体が記載されている。
アルミニウム粉末が焼結した焼結金属壁を骨格とし、当該焼結金属壁によって画成された空孔同士が焼結金属壁に開いた小孔によって連通した三次元多孔質アルミニウム焼結体を集電体とし、
前記空孔中に前記電極合材が充填されており、前記焼結金属壁と電極合材とが導電助剤と高分子結合剤とから形成される塗膜を介して接触しており、
前記高分子結合剤が、メタクリル酸又はその誘導体と、極性基含有アクリル系化合物の1種以上のモノマーと、からなるアクリル共重合体であることを特徴とする非水電解質二次電池用正極とした。
本発明に係る非水電解質二次電池用正極は、金属壁によって画成された空孔を有する三次元多孔質アルミニウムを集電体とする。そして、三次元多孔質アルミニウムの空孔中にリチウムを吸蔵放出可能な正極活物質を含む電極合材が充填されており、金属壁と電極合材とが導電助剤と高分子結合剤とから形成される塗膜を介して接触していることを特徴とする。
図1に示すように、本発明に用いる三次元多孔質アルミニウムは、空孔1の周囲に金属粉末が焼結してできた壁を骨格とする多孔質焼結体である。空孔1同士はアルミニウムで構成される金属壁2(気泡膜面)によって隔てられ、金属壁2に開いた小孔3によって空孔1同士が連通している。空孔1内に充填される正極活物質を含む電極合材は、金属壁2によって包み込まれるように保持される。金属壁2の表面には、導電助剤と高分子結合剤とから成る塗膜が形成され、金属壁2と電極合材はこの塗膜を介して接触する。正極活物質を含む電極合材は、塗膜の密着力によって三次元多孔質アルミニウムに更に強固に保持される。また、塗膜を介して金属壁2と電極合材とが接触することで、塗膜を介した三次元多孔質アルミニウムと電極合材との電子電導に基づく導電性が確保される。
三次元多孔質アルミニウムの形状は、電極形状によってシート状や筒状などの任意の形状とすることができる。厚さは200μm〜2mm程度が好ましく、空孔径は10μm〜1mm程度が好ましい。ここで、空孔径とは、三次元多孔質アルミニウムの断面を観察さした際に、断面に現れた空孔の最大径をいうものとする。
三次元多孔質アルミニウムの気孔率は、80〜95%が好ましい。ここで、三次元多孔質アルミニウムの気孔率p(%)は、下記式(1)によって算出される。
p=[{hv−(hw/2.7)}/hv]×100 (1)
ここで、hv:三次元多孔質アルミニウムの全体積(cm3)
hw:三次元多孔質アルミニウムの質量(g)
2.7:アルミニウム材の密度(g/cm3)である。
三次元多孔質アルミニウムの金属壁表面に設けられる塗膜は、三次元多孔質アルミニウムと電極合材との間の導電性を付与するための導電助剤と、電極合材の保持力を付与するための高分子結合剤の混合物から形成される。
塗膜量については、全塗膜量を三次元多孔質アルミニウムの全体積で割った値、すなわち、三次元多孔質アルミニウムの単位体積当たりの塗膜量として0.001〜0.07g/cm3であるのが好ましい。この塗膜量により、塗膜を介した三次元多孔質アルミニウム集電体と電極合材との導電性、ならびに、正極活物質を含む電極合材の保持力を向上させることが出来る。塗膜量が、0.001g/cm3未満では電極合剤の保持力が不十分となり、電池において充放電サイクルを繰り返した際に電極合剤の脱落が生じて電極容量が低下する場合がある。一方、塗膜量が、0.07g/cm3を超えると、三次元多孔質アルミニウムの金属壁の小孔が塗膜によって閉塞する可能性が高くなり、三次元多孔質アルミニウムの空孔に電極合剤を充填することが困難になって電池容量が低下する場合がある。
本発明において用いる導電助剤としては、炭素粉末、金属粉末などが用いられるが、その中でも炭素粉末が好適に用いられる。炭素粉末としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ等が挙げられる。これらの中でも、高ストラクチャーで、添加量が少量でも導電性を向上させることが可能なアセチレンブラックを用いるのが好ましい。導電助剤の高分子結合剤に対する混合割合は、高分子結合剤の固形分100質量部に対して、20〜80質量部とするのが好ましい。20質量部未満では塗膜の電気抵抗が高くなり、80質量部を超えると塗膜の電極合材に対する密着性が低下し活物質を含む電極合材に対する保持力が低下する。
本発明において用いる高分子結合剤としては、電極に用いた際に活物質、電解質、電解液などと反応することなく、また、電池動作中の電位のかかった状態において電気化学的に酸化され難い材質であるのが好ましい。具体的には、アクリル酸若しくはメタクリル酸、又はこれらの誘導体を主成分とするアクリル系樹脂;セルロースや硝化綿、キトサン等の高分子多糖類;などを好適に用いることができる。
本発明に係る非水電解質二次電池用正極は、リチウムを吸蔵放出可能な活物質を含む電極合材を含有する。電極合材は、上記塗膜を介して金属壁に接触しつつ、三次元多孔質アルミニウムの空孔中に充填された状態で担持されている。電極合材は、活物質に加えて導電助剤と結着剤とを含んでいてもよい。
正極活物質としては、非水電解質二次電池に使用できるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、リン酸鉄リチウム等のリチウム金属酸化物を挙げることができる。
電極合材に導電助剤を加えることにより、電極合材における導電性も向上する。導電助剤としては、上記塗膜に用いるのと同様のものを用いることができる。
電極合材に結着剤を加えることにより、結着剤を介しての成分の結合、すなわち正極活物質同士、導電助剤同士、正極活物質と導電助剤との結合が強固になって、集電体からの活物質の脱落がより起こり難くなる。用いる結着剤としては特に限定されるものではなく、公知または市販のものを使用することができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。
本発明に係る非水電解質二次電池用正極は、まず、アルミニウム粉末と支持粉末の混合粉末を用いて三次元多孔質アルミニウムを作製する。次いで、導電助剤、高分子結合剤及び分散媒を含む懸濁液を、三次元多孔質アルミニウムの集電体の内部に含浸させ、これを乾燥して分散媒を飛散・蒸発させ、導電助剤と高分子結合剤とを含む塗膜を金属壁上に形成する。更に、電極合材を溶媒に分散したスラリーを、塗膜が形成された三次元多孔質アルミニウムの内部に含浸させ、これを乾燥して溶媒を飛散・蒸発させ、塗膜を介して金属壁に接触するように電極合材を空孔中に充填する。最後に、電極合材を充填した三次元多孔質アルミニウムをプレス処理する。
三次元多孔質アルミニウムは、アルミニウム粉末と支持粉末の混合粉末を所定の圧力で加圧成形した後、この加圧成形体を不活性雰囲気中でアルミニウム粉末の融点以上で、かつ、後述の支持粉末の融点未満の温度域での熱処理により焼結させ、その後、支持粉末を除去して製造する。
本発明で用いるアルミニウム粉末には、純アルミニウム粉末、アルミニウム合金粉末又はこれらの混合物が用いられる。使用環境下において合金成分が耐食性劣化の原因となるような場合には、純アルミニウム粉末を用いるのが好ましい。純アルミニウムとは、純度99.0mass%以上のアルミニウムである。
純アルミニウム粉末に添加元素粉末を加えた混合物を用いてもよい。このような添加元素には、マグネシウム、珪素、チタン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛等から選択される単独又は二以上の任意の組み合わせからなる複数の元素が好適に用いられる。このような混合物は、熱処理によりアルミニウムと添加元素との合金を形成する。また、添加元素の種類によっては、アルミニウムと添加元素との金属間化合物が更に形成される。このようなアルミニウムの合金や金属間化合物の含有により、様々な効果が得られる。例えば、珪素や銅などの添加元素とアルミニウムとのアルミニウム合金では、アルミニウム粉末の融点が低下し、熱処理に必要な温度を下げることができるので製造に必要なエネルギーを削減できると共に、合金化によって強度が向上する。また、アルミニウムとニッケルなど添加元素との金属間化合物が形成される際に発熱が起こって焼結が促進されると共に、金属間化合物が分散した組織が形成されることで高強度化が図れる。
また、添加元素粉末の粒径は、1〜50μmが好ましい。純アルミニウム粉末、アルミニウム合金粉末、支持粉末との十分な混合を図るためにより微細であるのが好ましく、少なくとも支持粉末より細かいものが用いられる。添加元素粉末の粒径は、アルミニウム粉末と同様にレーザー回折散乱法(マイクロトラック法)で測定したメジアン径で規定する。
本発明では支持粉末としては、アルミニウム粉末の融点よりも高い融点を有するものを用いる。また、混合粉末を金属板と複合化する場合には、アルミニウム粉末と金属板の低い方の融点よりも高い融点を有するものを用いる。このような支持粉末としては水溶性塩が好ましく、入手の容易性から塩化ナトリウムや塩化カリウムが好適に用いられる。支持粉末が除去されることで形成された空間が多孔質アルミニウムの孔になることから、支持粉末の粒径が孔径に反映される。そこで、本発明で用いる支持粉末の粒径は、10〜1000μmとするのが好ましい。支持粉末の粒径は、ふるいの目開きで規定する。従って、分級によって支持粉末の粒径を揃えることで、孔径の揃った多孔質アルミニウムが得られる。
本発明においては、混合粉末を金属板と複合化した状態で用いてもよい。金属板とは無孔の板や箔及び、有孔の金網、エキスパンドメタル、パンチングメタル等の網状体である。金属板が支持体となり多孔質アルミニム集電体の強度が向上し、更に導電性が向上する。金属板としては熱処理時に蒸発又は分解しない素材、具体的にはアルミニウム、チタン、鉄、ニッケル、銅等の金属やその合金製のものが好適に利用できる。
網状体の有孔の孔径は、接合した混合粉末から支持粉末を除去して得られる孔の径より大きくても、小さくてもよい。
網状体の有孔の開口率は、多孔質アルミニウム集電体の気孔率を損なわないためにも大きい方が好ましい。
アルミニウム粉末と支持粉末の混合割合は、それぞれの体積をVal、Vsとしてアルミニウム粉末の体積率であるVal/(Val+Vs)が5〜20%とするのが好ましく、より好ましくは5〜10%である。ここで体積Val、Vsはそれぞれの質量と比重から求めた値である。アルミニウム粉末の体積率が20%を超える場合には、支持粉末の含有率が少な過ぎるために支持粉末同士が接触することなく独立して存在することになり、支持粉末を十分に除去しきれない。除去しきれない支持粉末は、多孔質アルミニウムの腐食の原因となる。一方、アルミニウム粉末の体積率が5%未満の場合には、多孔質アルミニウムを構成する壁が薄くなり過ぎることで、多孔質アルミニウムの強度が不十分となり、取り扱いや形状維持が困難となる。
また、支持粉末をアルミニウム粉末で十分に覆れた状態を達成するために、アルミニウム粉末の粒径(dal)が支持粉末の粒径(ds)に比べて十分に小さいこと、例えば、dal/dsが0.1以下であることが好ましい。
混合粉末を成形用金型に充填する際に、混合粉末と金属板とを複合化してもよい。複合化の形態としては、混合粉末の間に金属板を挟んでも、混合粉末を金属板で挟んでも構わない。また、混合粉末と金属板の複合化を繰り返して多段にすることもできる。複合化の際にはアルミニウム粉末や支持粉末の粒径、混合割合の異なる混合粉末や、種類の異なる複数の金属板を組み合わせることもできる。
加圧成形時の圧力は、200MPa以上とするのが好ましい。十分な圧力を加えて成形することでアルミニウム粉末同士が擦れ合い、アルミニウム粉末同士の焼結を阻害するアルミニウム粉末表面の強固な酸化皮膜が破壊される。この酸化皮膜は融解したアルミニウムを閉じ込め、互いに接触することを妨げると共に、融解アルミニウムとの濡れ性に劣り、液体状のアルミニウムを排斥する作用がある。そのため、加圧成形の圧力が200MPa未満の場合にはアルミニウム粉末表面の酸化皮膜の破壊が不十分で、加熱時に融解したアルミニウムが成形体の外に滲み出し玉状のアルミニウムの塊が形成される場合がある。アルミニウム塊が存在する状態で電極を作製した場合、この玉状のアルミニウム塊がセパレータを突き破ってショートの原因となる点で弊害となる。成形圧力は使用する装置や金型が許容する限り大きい方が形成される三次元多孔質アルミニウムの壁が強固になって好ましい。しかしながら、400MPaを超えると効果が飽和する傾向がある。加圧成形体の離型性を高める目的でステアリン酸等の脂肪酸、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸、各種ワックス、合成樹脂、オレフィン系合成炭化水素等の潤滑剤を使用することが好ましい。
熱処理は使用するアルミニウム粉末の融点以上で、かつ、支持粉末の融点未満の温度で行う。混合粉末を金属板と複合化する場合には、アルミニウム粉末の融点以上で、かつ、支持粉末の融点未満の温度で熱処理を行う。また、アルミニウム粉末の融点とは、純アルミニウム又はアルミニウム合金の液相が生じる温度であり、金属板の融点とは、同様に液相が生じる温度である。液相が生じる温度まで加熱することで、アルミニウム粉末及び金属板から液相が滲み出し、液相同士が接触することでアルミニウム粉末同士、アルミニウム粉末と金属板が金属的に結合する。
焼結体中の支持粉末の除去は、支持粉末を水に溶出させて行う方法が好適に用いられる。焼結体を十分な量の水浴または流水浴に浸漬する等の方法により、支持粉末を容易に溶出することができる。支持粉末として水溶性塩を用いる場合には、これを溶出させる水は、イオン交換水や蒸留水等、不純物の少ない方が好ましいが、水道水でも特に問題は無い。浸漬時間は、通常、数時間〜24時間程度の範囲で適宜選択される。浸漬中に超音波等によって振動を与えることにより、溶出を促進することもできる。
2−1.塗膜用懸濁液の調製
上記のようにして作製した三次元多孔質アルミニウムの金属壁の表面に、導電助剤と高分子結合剤とから成る塗膜を形成する。まず、導電助剤、高分子結合剤及び分散媒から成る懸濁液を調製する。導電助剤と高分子結合剤は上述のものが用いられる。高分子結合剤を分散又は溶解させた分散媒に導電助剤を添加することにより、導電助剤、高分子結合剤及び分散媒から成る懸濁液を調製する。高分子結合剤の固形分100質量部に対して、導電助剤を固形分で20〜80質量部の割合で添加するのが好ましい。分散媒としては、水やアルコールの他、NMP等の有機溶剤を用いることもできる。また、懸濁液の粘度を調整する目的で、塗膜の性能を損なわない範囲でCMC等の増粘剤を加えてもよい。なお、懸濁液中の導電助剤と高分子結合剤との含有量(濃度)は、懸濁液の粘度等を考慮して適宜決定される。また、分散方法は特に限定されるものではなく、ボールミルやホモジナイザー等の既知の分散方法を適用できる。
三次元多孔質アルミニウムの空孔内面も含めた内部全体に、上記懸濁液を接触させこれを含浸させる。次いで、含浸しきれなかった余分の懸濁液を除去し、更に乾燥によって分散媒を飛散・蒸発させる。三次元多孔質アルミニウムに懸濁液を接触させる方法は、特に限定されるものではない。例えば、懸濁液に三次元多孔質アルミニウムを浸漬する方法、固定した三次元多孔質アルミニウム中において懸濁液を透過させる方法などが用いられる。三次元多孔質アルミニウムに懸濁液を接触させる直前、又は接触させている最中に、三次元多孔質アルミニウムを減圧状態に保持することによって懸濁液との接触を妨げる原因となる三次元多孔質アルミニウム中の空気を除去してもよい。更に、三次元多孔質アルミニウムに対する懸濁液の濡れ性を高めるために、三次元多孔質アルミニウムに懸濁液を接触させる直前に、懸濁液の分散媒と親和性の溶剤で三次元多孔質アルミニウム全体を処理してもよい。
3−1.充填用スラリーの調製
上記のようにして塗膜を形成した三次元多孔質アルミニウムの空孔内に、塗膜を介して金属壁に接触するように電極合材を充填する。
電極合材は正極活物質を含み、導電助剤及び結着剤を更に含んでいるのが好ましい。正極活物質、導電助剤及び結着剤のスラリー中の濃度は限定されるものではなく、スラリー粘度などの観点から適宜選択すれば良い。また、粘度調整に増粘剤を加えても良く、良好な分散状態とするために分散剤を加えても良い。スラリーの溶媒も特に限定されるものではないが、例えば、N‐メチル‐2‐ピロリドン、水等が好適に用いられる。結着剤としてポリフッ化ビニリデンを用いる場合には、N‐メチル‐2‐ピロリドンを溶媒に用いるのが好ましく、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を用いる場合は、水を溶媒に用いるのが好ましい。
正極活物質、導電助剤及び結着剤(必要に応じて、増粘剤及び/又は分散剤)の成分を溶媒に分散したスラリーは、例えば、圧入法などの公知の方法により多孔質アルミニウム中に充填される。圧入法としては、多孔質アルミニウムを隔膜として一方側にスラリーを配置し、他方側はスラリーの透過側とするものである。そして、他方側の透過側を減圧にしてスラリーを透過させるにことによって、多孔質アルミニウムの空孔中に上記各成分を充填するものである。これに替わって、一方側に配置したスラリーを加圧することにより、多孔質アルミニウムの孔中に上記各成分を充填してもよい。
また、圧入法に替えて、上記各成分を溶媒に分散したスラリー中に多孔質アルミニウムを浸漬し、上記各成分を多孔質アルミニウムの空孔中に拡散させる方法(以下、「浸漬法」と称する)を採用してもよい。
以上のようにして上記各成分が充填された正極は溶媒を飛散・蒸発させて乾燥されるが、乾燥条件としては、50〜200℃で1〜60分間保持するのが好ましい。
このようにして作製される非水二次電池用正極は、ロールプレス機や平板プレス機等を用いて加圧するプレス処理によって活物質を含む電極合材の電極密度が調整される。特に、平板プレス機を用いてプレス処理するのが望ましい。このようなプレス処理により、電極合材の電極密度向上率を110〜500%とすることが好ましい。電極密度向上率が110%未満では、プレス処理が不十分であり、塗膜を介して電極合材と三次元多孔質アルミニウムの金属壁との十分な接触が図れず電気抵抗が増大する場合がある。一方、電極密度向上率が500%を超えると、過剰なプレス処理により電極内部に電解液が染み込み難くなり、リチウムイオンの拡散が阻害されて電池特性が低下する場合がある。
本発明に係る非水電解質二次電池は、上記非水電解質用正極と、リチウムの吸蔵放出が可能な負極と、正負極間に配置されたセパレータと、非水電解質とを用いて組み立てられる。
負極にも、正極と同様の多孔質アルミニウム集電体を用い、その孔中に負極活物質を含む電極合材を充填してもよく、この電極合材にも、正極と同様の導電助剤と結着剤を用いてもよい。これに代えて、負極集電体と、負極活物質を含む電極合材を溶媒に分散したスラリーを負極集電体上に塗布することにより形成した電極合材層とから負極を用いてもよい。この場合にも、電極合材に導電助剤と結合剤を含有させてもよい。
正極と負極のセパレータとしては、一般的に用いられているポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などの高分子膜が用いられる。また、非水電解質としては、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)などの有機溶媒に溶解させた六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)を用いることができる。
(三次元多孔質アルミニウムの作製)
アルミニウム粉末としてアルミニウム純度99.9%、粒径3μmの純アルミニウム粉末(融点:660℃)を、支持粉末として篩目開きで300〜500μmの塩化ナトリウム粉末(融点:800℃)を用いた。これらアルミニウム粉末と支持粉末を、体積比でアルミニウム粉末:支持粉末=1:9の割合で混合して混合粉末を調製した。
上記のようにして作製した三次元多孔質アルミニウムの金属壁上に、導電助剤と高分子結合剤とを含む塗膜を形成した。なお、比較例1では、塗膜を形成しなかった。
正極活物質としてリン酸鉄リチウム100重量部、導電助剤としてアセチレンブラック5.0重量部、結着剤としてPVDF5.5重量部を用い、これらを200重量部のNMPに分散して電極合材のスラリーを調製した。
上記のプレス処理した正極試料を作用極とし、対極及び参照極にリチウム金属を用い、これらの電極間にポリプロピレン製マイクロポーラスセパレータを挟んで電池ケースに収めてコイン型電池を作製した。電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)の混合溶媒(体積比でEC:EMC=3:7)にLiPF6を1mol/L溶解させた非水電解液を用いた。
上述のように作製した電池を用いて、充放電特性の評価試験を行った。充放電試験は0.2Cの電流で4.0Vまで充電し、0.2Cと5Cの電流で放電させ、このときの0.2C放電時と5C放電時の初期放電電圧の差を測定した。ここで、1Cはその電池の電流容量(Ah)を1時間(h)で取り出す時の電流値(A)である。初期放電電圧の差が0.65V以下のものを○、0.65Vより高く0.70V以下であるものを△、0.70Vを超えるものを×とし、○及び△を合格、×を不合格とした。結果を表1に示す。
また、0.2Cで放電した時の容量を電極中の活物質の質量で割った0.2C放電容量を求めた。これが120mAh/g以上のものを○、それ未満のものを×とし、○を合格、×を不合格とした。結果を表1に示す。
0.2Cの電流で4Vまで充電し、0.2Cで2.0Vまで放電させる充放電試験を1サイクルとして、この充放電試験の500サイクル後に正極試料から正極活物質が脱落したか否かを目視観察により評価した。正極活物質の脱落がなかったものを○、正極活物質の脱落が若干見られたものを△、正極活物質の脱落が顕著に見られたものを×とし、○及び△を合格、×を不合格とした。結果を表1に示す。
上記の放電レート特性、0.2C放電容量、ならびに、500サイクル試験後の正極活物質の脱落有無の評価において、全て○の場合を総合評価が○、○と△で構成されている場合を総合評価が△、一つ以上の×が含まれている場合を総合評価が×とし、○及び△を総合評価が合格、×を総合評価が不合格とした。結果を表1に示す。
2・・金属壁
3・・小孔
Claims (10)
- リチウムを吸蔵放出可能な正極活物質を含む電極合材を含有する非水電解質二次電池用正極であって、
アルミニウム粉末が焼結した焼結金属壁を骨格とし、当該焼結金属壁によって画成された空孔同士が焼結金属壁に開いた小孔によって連通した三次元多孔質アルミニウム焼結体を集電体とし、
前記空孔中に前記電極合材が充填されており、前記焼結金属壁と電極合材とが導電助剤と高分子結合剤とから形成される塗膜を介して接触しており、
前記高分子結合剤が、メタクリル酸又はその誘導体と、極性基含有アクリル系化合物の1種以上のモノマーと、からなるアクリル共重合体であることを特徴とする非水電解質二次電池用正極。 - 前記三次元多孔質アルミニウムの単位体積当たりの前記塗膜の質量が、0.001〜0.07g/cm3である、請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極。
- 前記塗膜における高分子結合剤に対する導電助剤の固形分としての質量比率が20〜80%である、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用正極。
- 前記三次元多孔質アルミニウムが金属板と複合化されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の非水電解質二次電池用正極。
- 前記空孔中に電極合材が充填された三次元多孔質アルミニウムにおける、下記で示す電極合材の電極密度向上率が110〜500%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の非水電解質二次電池用正極。
ここで、電極において活物質を含む電極合材が占める体積をV(cm 3 )とし、電極合材の質量をW(g)とし、電極合材が充填された直後における電極合材の電極密度を(W/V)be(g/cm 3 )とし、プレス処理等により緻密にした後の電極密度を(W/V)afとした際に、電極密度向上率(%)={(W/V)af/(W/V)be}×100で示される。 - アルミニウム粉末と支持粉末の混合粉末を200MPa以上の圧力で加圧成形し、この加圧成形体を不活性雰囲気中でアルミニウム粉末の融点以上で、かつ、支持粉末の融点未満の温度での熱処理により焼結させ、その後、支持粉末を除去することにより、金属壁によって画成された空孔を有する三次元多孔質アルミニウムの集電体を製造する工程と;導電助剤、高分子結合剤及び分散媒を含む懸濁液を前記三次元多孔質アルミニウムの集電体の内部に含浸させる工程であって、前記高分子結合剤が、メタクリル酸又はその誘導体と、極性基含有アクリル系化合物の1種以上のモノマーと、からなるアクリル共重合体である工程と;前記懸濁液を内部に含浸させた三次元多孔質アルミニウムを乾燥して分散媒を飛散・蒸発させ、前記導電助剤と高分子結合剤とを含む塗膜を金属壁上に形成する工程と;リチウムを吸蔵放出可能な正極活物質を含む電極合材を溶媒に分散したスラリーを、前記塗膜が金属壁上に形成された三次元多孔質アルミニウムの内部に含浸させる工程と;前記スラリーを内部に含浸させた三次元多孔質アルミニウムを乾燥して溶媒を飛散・蒸発させ、前記塗膜を介して金属壁に接触するように電極合材を空孔中に充填する工程と;空孔中に電極合材が充填された三次元多孔質アルミニウムの集電体をプレス処理する工程と;を含むことを特徴とする非水電解質二次電池用正極の製造方法。
- 前記懸濁液において、高分子結合剤の固形分100質量部に対する導電助剤の固形分の比率が20〜80質量部である、請求項6に記載の非水電解質二次電池用正極の製造方法。
- 前記混合粉末が金属板と複合化されている、請求項6又は7に記載の非水電解質二次電池用正極の製造方法。
- 前記プレス処理する工程によって、前記空孔中に電極合材が充填された三次元多孔質アルミニウムにおける電極合材の電極密度向上率を110〜500%とする、請求項6〜8のいずれか一項に記載の非水電解質二次電池用正極の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の非水電解質二次電池用正極と、リチウムを吸蔵放出可能な負極と、これら正負極間に配置されたセパレータと、非水電解質とを備えたことを特徴とする非水電解質二次電池。
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