本発明の車両用自動変速機は、好適には、走行用の駆動力源としてのエンジンに連結されたトルクコンバータと駆動輪との間の動力伝達経路に設けられた有段式の自動変速機である。前記クラッチは、好適には、互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型クラッチ等の油圧式摩擦係合装置であり、油圧制御回路から供給される油圧に応じてその係合乃至解放が制御されるものである。前記クラッチは必ずしも湿式でなくともよく、乾式クラッチ或いは噛合クラッチ等も好適に適用される。
前記複数のクラッチが、係合により前記変速機ケースに対して前記回転要素を直接連結するものを含まないとは、係合により変速機ケースの内周側に対して回転要素を直接連結する所謂ブレーキを含まないとの意味である。すなわち、本発明の車両用自動変速機においては、所謂クラッチのみの係合乃至解放の組み合わせにより前記自動変速機において成立可能な複数の変速段全てを選択的に成立させるものである。
本発明の車両用自動変速機は、好適には、3組の遊星歯車装置を備え、各遊星歯車装置におけるサンギヤ、キャリア、リングギヤを含む複数の回転要素を6つのクラッチにより相互に係合乃至解放させる形式の自動変速機であって、それら6つのクラッチのうち4つのクラッチの係合及び2つのクラッチの解放により前進8速、後進1速を選択的に成立させる自動変速機である。
前記3組の遊星歯車装置は、好適には、各遊星歯車装置のギヤ比(歯車の歯数)が何れも等しいものである。斯かる構成によれば、車両用自動変速機に用いられる遊星歯車装置を共通化できると共に、前記車両用自動変速機における各変速段のギヤ比に関して、実用的な態様のギヤ比を実現できるという利点がある。
前記複数の遊星歯車装置のサンギヤ、キャリア、及びリングギヤがそれぞれ独立に前記回転要素を構成するとは、各サンギヤ、キャリア、及びリングギヤが相互に連結されていないという意味である。換言すれば、前記自動変速機に設けられた複数のクラッチが何れも解放された状態においては、各サンギヤ、キャリア、及びリングギヤがそれぞれ独立に相対回転可能とされる。
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例である車両用自動変速機10の構成を説明する骨子図である。以下の説明に用いる図面において、各部の寸法比等は必ずしも正確には描かれていない。図1に示すように、本実施例の自動変速機10は、例えばFF(前置エンジン前輪駆動)型車両等に好適に用いられる横置き用の装置であり、入力回転要素である入力軸12の回転を変速して出力回転要素である出力歯車14から出力する。この入力軸12は、トルクコンバータ20のタービン軸に連結されており、走行用の駆動力源であるエンジン16のクランク軸18から出力された駆動力が前記トルクコンバータ20を介して前記入力軸12に入力される。前記出力歯車14から出力された駆動力は、図示しない差動歯車装置及び車軸等を介して図示しない左右一対の駆動輪へ伝達される。前記自動変速機10は、中心線に対して略対称的に構成されており、図1においては中心線の下半分を省略して図示している。以下の各実施例についても同様である。
前記自動変速機10は、車体に取り付けられる非回転部材としての変速機ケース28内において、例えば「0.6」程度の所定のギヤ比ρ1を有するシングルピニオン型の第1遊星歯車装置22、例えば「0.6」程度の所定のギヤ比ρ2を有するシングルピニオン型の第2遊星歯車装置24、及び「0.6」程度の所定のギヤ比ρ3を有するシングルピニオン型の第3遊星歯車装置26を共通の中心軸上に備えて構成されている。すなわち、前記自動変速機10に備えられた前記第1遊星歯車装置22、第2遊星歯車装置24、及び第3遊星歯車装置26(以下、特に区別しない場合には遊星歯車装置22、24、26という)は、何れもギヤ比が等しいものである。
前記第1遊星歯車装置22は、サンギヤS1、複数のピニオンギヤP1、それらピニオンギヤP1を自転及び公転可能に支持するキャリヤCA1、ピニオンギヤP1を介してサンギヤS1と噛み合うリングギヤR1を回転要素(回転部材)として備えている。前記第2遊星歯車装置24は、サンギヤS2、複数のピニオンギヤP2、それらピニオンギヤP2を自転及び公転可能に支持するキャリヤCA2、ピニオンギヤP2を介してサンギヤS2と噛み合うリングギヤR2を回転要素として備えている。前記第3遊星歯車装置26は、サンギヤS3、複数のピニオンギヤP3、それらピニオンギヤP3を自転及び公転可能に支持するキャリヤCA3、ピニオンギヤP3を介してサンギヤS3と噛み合うリングギヤR3を回転要素として備えている。
前記自動変速機10においては、前記第1遊星歯車装置22のサンギヤS1が非回転部材である変速機ケース28に連結されている。前記第2遊星歯車装置24のサンギヤS2が入力回転要素である前記入力軸12に連結されている。前記第3遊星歯車装置26のリングギヤR3が出力回転要素である前記出力歯車14に連結されている。前記3つの遊星歯車装置22、24、26におけるサンギヤS1、S2、S3(以下、特に区別しない場合にはサンギヤSという)、キャリアCA1、CA2、CA3(以下、特に区別しない場合にはキャリアCAという)、及びリングギヤR1、R2、R3(以下、特に区別しない場合にはリングギヤRという)は、後述するクラッチC1~C6が解放された状態においては何れも相互に相対回転可能に設けられている。換言すれば、前記サンギヤS、キャリアCA、及びリングギヤRは、それぞれが相互に連結されない個別の部材として設けられている。すなわち、本実施例の自動変速機10においては、前記遊星歯車装置22、24、26におけるサンギヤS、キャリアCA、及びリングギヤRがそれぞれ独立に前記変速機ケース28に対して相対回転可能に設けられた複数の回転要素に対応する。
前記自動変速機10は、前記複数の回転要素すなわち前記遊星歯車装置22、24、26におけるサンギヤS、キャリアCA、及びリングギヤRのうち2つの回転要素相互間にそれぞれ設けられ、係合により各回転要素相互の相対回転を阻止するが解放により各回転要素相互の相対回転を許容する複数のクラッチとして第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、第4クラッチC4、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6(以下、特に区別しない場合にはクラッチCという)を備えている。これらのクラッチCは、好適には、何れも従来の車両用自動変速機においてよく用いられている係合要素としての油圧式摩擦係合装置であって、例えば互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型クラッチ等であり、図示しない油圧制御回路に備えられたリニアソレノイド弁の励磁、非励磁や電流制御に応じて供給される油圧により係合状態が切り換えられるようになっている。前記クラッチCは、必ずしも湿式クラッチでなくともよく、乾式クラッチ或いは噛合クラッチ(ドグクラッチ)等も好適に適用される。すなわち、前記自動変速機10では、各クラッチCにより、対応する1対の回転要素相互の相対回転を阻止する係合状態(動力伝達状態)と、それら回転要素相互の相対回転を許容する解放状態(動力遮断状態)とが、前記油圧制御回路から供給される油圧に応じて切り換えられるように構成されている。
前記クラッチCは、何れも前記変速機ケース28に対して相対回転可能に設けられた回転要素相互間に設けられたものである。換言すれば、前記変速機ケース28の内周側等に形成されたブレーキ溝に嵌合された複数枚の摩擦板を有する油圧式摩擦係合装置のごとき、係合により前記変速機ケース28に対して前記回転要素を直接連結する所謂ブレーキは前記自動変速機10には設けられておらず、少なくとも前記自動変速機10における変速には関与しない。すなわち、前記自動変速機10は、前記変速機ケース28に対して相対回転可能に設けられた回転要素相互間を選択的に連結する複数のクラッチCのみにより、成立可能な全ての変速段を選択的に成立させるものである。
すなわち、前記自動変速機10においては、前記第1遊星歯車装置22のリングギヤR1と前記第2遊星歯車装置24のリングギヤR2との間に、それらリングギヤR1及びリングギヤR2を選択的に連結させる第1クラッチC1が設けられている。前記第1遊星歯車装置22のキャリアCA1と前記第2遊星歯車装置24のリングギヤR2との間に、それらキャリアCA1及びリングギヤR2を選択的に連結させる第2クラッチC2が設けられている。前記第1遊星歯車装置22のリングギヤR1と前記第3遊星歯車装置26のサンギヤS3との間に、それらリングギヤR1及びサンギヤS3を選択的に連結させる第3クラッチC3が設けられている。前記第1遊星歯車装置22のキャリアCA1と前記第3遊星歯車装置26のキャリアCA3との間に、それらキャリアCA1及びキャリアCA3を選択的に連結させる第4クラッチC4が設けられている。前記第2遊星歯車装置24のキャリアCA2と前記第3遊星歯車装置26のサンギヤS3との間に、それらキャリアCA2及びサンギヤS3を選択的に連結させる第5クラッチC5が設けられている。入力回転要素である前記入力軸12と前記第3遊星歯車装置26のキャリアCA3との間に、それら入力軸12及びキャリアCA3を選択的に連結させる第6クラッチC6が設けられている。
図2は、前記自動変速機10において複数の変速段を選択的に成立させる際の係合要素の作動状態を説明する作動表である。この図2の作動表は、前記自動変速機10において成立させられる各変速段と前記クラッチCの作動状態との関係をまとめたものであり、「○」は係合、空欄は解放をそれぞれ表している。以下の図5等の説明において同じである。前記自動変速機10では、前記クラッチC1~C6の係合乃至解放による、その自動変速機10に備えられた9つの回転要素である前記遊星歯車装置22、24、26のサンギヤS1、S2、S3、キャリアCA1、CA2、CA3、リングギヤR1、R2、R3の連結状態の組み合わせに応じて、第1変速段「1st」~第8変速段「8th」の8つの前進変速段が成立させられると共に、後進変速段「R」の後進変速段が成立させられる。
図2に示すように、前記自動変速機10においては、前記第2クラッチC2、第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第5クラッチC5の係合により変速比「4.062」の第1速ギヤ段「1st」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第5クラッチC5の係合により変速比「2.500」の第2速ギヤ段「2nd」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第6クラッチC6の係合により変速比「1.562」の第3速ギヤ段「3rd」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第4クラッチC4、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6の係合により変速比「1.290」の第4速ギヤ段「4th」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第3クラッチC3、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6の係合により変速比「1.000」の第5速ギヤ段「5th」が成立させられる。前記第2クラッチC2、第3クラッチC3、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6の係合により変速比「0.813」の第6速ギヤ段「6th」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6の係合により変速比「0.727」の第7速ギヤ段「7th」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、及び第6クラッチC6の係合により変速比「0.625」の第8速ギヤ段「8th」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第4クラッチC4、及び第5クラッチC5の係合により変速比「4.444」の後進変速段「R」が成立させられる。前記クラッチCが全て解放されることによりニュートラル状態が成立させられる。
換言すれば、前記自動変速機10においては、前記第1クラッチC1及び第6クラッチC6の解放により前記第1速ギヤ段「1st」が成立させられる。前記第2クラッチC2及び第6クラッチC6の解放により前記第2速ギヤ段「2nd」が成立させられる。前記第2クラッチC2及び第5クラッチC5の解放により前記第3速ギヤ段「3rd」が成立させられる。前記第2クラッチC2及び第3クラッチC3の解放により前記第4速ギヤ段「4th」が成立させられる。前記第2クラッチC2及び第4クラッチC4の解放により前記第5速ギヤ段「5th」が成立させられる。前記第1クラッチC1及び第4クラッチC4の解放により前記第6速ギヤ段「6th」が成立させられる。前記第3クラッチC3及び第4クラッチC4の解放により前記第7速ギヤ段「7th」が成立させられる。前記第4クラッチC4及び第5クラッチC5の解放により前記第8速ギヤ段「8th」が成立させられる。前記第3クラッチC3及び第6クラッチC6の解放により前記後進変速段「R」が成立させられる。
すなわち、前記自動変速機10においては、前記6つのクラッチC1~C6のうち何れか4つのクラッチが係合させられると共に、残り2つのクラッチが解放させられることにより、前記第1変速段「1st」~第8変速段「8th」の8つの前進変速段、及び後進変速段「R」の何れかが選択的に成立させられる。換言すれば、前記自動変速機10の変速に関与する係合要素は、何れも係合により各回転要素相互の相対回転を阻止するが解放により各回転要素相互の相対回転を許容する装置(クラッチ)であって、係合により前記変速機ケース28に対して前記回転要素を直接連結する装置(ブレーキ)を含まず、前記6つのクラッチC1~C6の係合乃至解放の組み合わせにより前記自動変速機10において成立可能な複数の変速段すなわち前記第1変速段「1st」~第8変速段「8th」の8つの前進変速段、及び後進変速段「R」の全てを選択的に成立させるものである。
図2の係合表から明らかなように、前記自動変速機10における変速段の切り替え(単一変速)は、変速前に係合させられている4つのクラッチのうち何れか1つのクラッチが解放させられると共に、変速前に解放されている2つのクラッチのうち何れか1つのクラッチが係合させられることにより行われる。例えば、第1速ギヤ段から第2速ギヤ段への変速は、前記第2クラッチC2が解放させられると共に、前記第1クラッチC1が係合させられることにより行われる。すなわち、前記自動変速機10においては、少なくとも前進変速段においては、飛び変速を除く全ての変速段の切り替えに関して、1つのクラッチの掴み替えによる所謂クラッチ・トゥ・クラッチ変速が行われる。
図3は、前記自動変速機10において、変速段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。この図3の共線図は、横軸方向において各遊星歯車装置22、24、26のギヤ比ρの相対関係を示し、縦軸方向において相対的回転速度を示す二次元座標である。横線X1は回転速度零を示している。上側の横線X2は回転速度「1.0」すなわち前記入力軸12の回転速度NINを示している。9本の縦線Y1~Y9は、右から順にY1が前記第1遊星歯車装置22のリングギヤR1、Y2がキャリアCA1、Y3がサンギヤS1、Y4が前記第2遊星歯車装置24のリングギヤR2、Y5がキャリアCA2、Y6がサンギヤS2、Y7が前記第3遊星歯車装置26のリングギヤR3、Y8がキャリアCA3、Y9がサンギヤS3それぞれの相対回転速度を示している。前記縦線Y1~Y9の間隔は、前記遊星歯車装置22、24、26の各ギヤ比ρ1、ρ2、ρ3に応じて定められている。すなわち、前記第1遊星歯車装置22における3つの回転要素に対応する縦線Y1~Y3、前記第2遊星歯車装置24における3つの回転要素に対応する縦線Y4~Y6、前記第3遊星歯車装置26における3つの回転要素に対応する縦線Y7~Y9それぞれに関して、サンギヤSとキャリアCAとの間が1に対応するものとされ、キャリアCAとリングギヤRとの間がρに対応するものとされる。
図3の共線図を用いて表現すれば、前記自動変速機10において、前記リングギヤR1が前記第1クラッチC1を介して前記リングギヤR2に選択的に連結されると共に、前記第3クラッチC3を介して前記サンギヤS3に選択的に連結される。前記キャリアCA1が前記第2クラッチC2を介して前記リングギヤR2に選択的に連結されると共に、前記第4クラッチC4を介して前記キャリアCA3に選択的に連結される。前記サンギヤS1が非回転部材である前記変速機ケース28に連結されている。前記キャリアCA2が前記第5クラッチC5を介して前記サンギヤS3に選択的に連結される。前記サンギヤS2が入力回転要素としての前記入力軸12に連結されると共に、前記第6クラッチC6を介して前記キャリアCA3と選択的に連結される。前記リングギヤR3が出力回転要素としての前記出力歯車14に連結されている。図3の共線図では、前記入力軸12の回転速度すなわち入力回転速度NINを白抜丸印で、非回転部材である前記変速機ケース28との連結部分すなわち回転速度零を黒塗丸印でそれぞれ示しており、以下の共線図の説明において同じである。
図3の共線図においては、前記6つのクラッチC1~C6の係合により前記自動変速機10における9つの回転要素が選択的に連結され、相互に連結された回転要素相互の回転速度が等しくなっている。例えば、第1速ギヤ段「1st」の成立時には、図2の係合表に示すように前記第2クラッチC2、第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第5クラッチC5が係合されている。従って、前記第2クラッチC2及び第4クラッチC4の係合により、前記キャリアCA1、リングギヤR2、及びキャリアCA3が一体的に連結され、図3の共線図に横線(破線)Xaで示すように、縦線Y2で示される前記キャリアCA1の回転速度、縦線Y4で示される前記リングギヤR2の回転速度、及び縦線Y8で示される前記キャリアCA3の回転速度が何れも等しくなっている。前記第3クラッチC3及び第5クラッチC5の係合により、前記リングギヤR1、キャリアCA2、及びサンギヤS3が一体的に連結され、図3の共線図に横線(破線)Xbで示すように、縦線Y1で示される前記リングギヤR1の回転速度、縦線Y5で示される前記キャリアCA2の回転速度、及び縦線Y9で示される前記サンギヤS3の回転速度が何れも等しくなっている。
前述のように、各変速段の成立時における前記6つのクラッチC1~C6の係合乃至解放の組み合わせに応じて各回転要素の回転速度の相対関係が定まる。図3においては前記第1速ギヤ段「1st」に対応する関係を直線L1で、前記第2速ギヤ段「2nd」に対応する関係を直線L2で、前記第3速ギヤ段「3rd」に対応する関係を直線L3で、前記第4速ギヤ段「4th」に対応する関係を直線L4で、前記第5速ギヤ段「5th」に対応する関係を直線L5で、前記第6速ギヤ段「6th」に対応する関係を直線L6で、前記第7速ギヤ段「7th」に対応する関係を直線L7で、前記第8速ギヤ段「8th」に対応する関係を直線L8で、前記後進ギヤ段「R」に対応する関係を直線LRで、それぞれ示している。図3の共線図においては、前記自動変速機10において成立し得る全ての変速段に係る各回転要素の回転速度の相対関係を1つの図面で表すために、前記直線L1~L8、LRは前記遊星歯車装置22、24、26相互間においては必ずしも直線となっていないが、前記6つのクラッチC1~C6の係合に応じて各遊星歯車装置22、24、26における回転要素の回転速度が等しく表されることで、各変速段における前記自動変速機10の9つの回転要素の相対的な回転速度を余さず表している。以下の共線図の説明において同じである。
図3に示すように、前記自動変速機10では、前記第2クラッチC2、第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第5クラッチC5が係合させられることにより定まる直線L1と、出力回転要素である前記出力歯車14に連結された前記リングギヤR3の回転速度を示す縦線Y7との交点で第1速ギヤ段「1st」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第5クラッチC5が係合させられることにより定まる直線L2と、縦線Y7との交点で第2速ギヤ段「2nd」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第6クラッチC6が係合させられることにより定まる直線L3と、縦線Y7との交点で第3速ギヤ段「3rd」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第4クラッチC4、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6が係合させられることにより定まる直線L4と、縦線Y7との交点で第4速ギヤ段「4th」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第3クラッチC3、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6が係合させられることにより定まる直線L5と、縦線Y7との交点で第5速ギヤ段「5th」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第2クラッチC2、第3クラッチC3、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6が係合させられることにより定まる直線L6と、縦線Y7との交点で第6速ギヤ段「6th」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6が係合させられることにより定まる直線L7と、縦線Y7との交点で第7速ギヤ段「7th」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、及び第6クラッチC6が係合させられることにより定まる直線L8と、縦線Y7との交点で第8速ギヤ段「8th」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第4クラッチC4、及び第5クラッチC5が係合させられることにより定まる直線LRと、縦線Y7との交点で後進ギヤ段「R」における前記出力歯車14の回転速度が示される。
続いて、本発明の他の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。以下の説明において、実施例相互に共通する部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
図4は、本発明の他の実施例である車両用自動変速機30の構成を説明する骨子図である。この図4に示すように、本実施例の自動変速機30は、前記実施例の自動変速機10と同様に、前記変速機ケース28内において、例えば「0.6」程度の所定のギヤ比ρ1を有するシングルピニオン型の第1遊星歯車装置22、例えば「0.6」程度の所定のギヤ比ρ2を有するシングルピニオン型の第2遊星歯車装置24、及び「0.6」程度の所定のギヤ比ρ3を有するシングルピニオン型の第3遊星歯車装置26を共通の中心軸上に備えて構成されている。すなわち、前記自動変速機30に備えられた3つの遊星歯車装置22、24、26は、何れもギヤ比が等しいものである。前記第1遊星歯車装置22のサンギヤS1が非回転部材である変速機ケース28に連結されている。前記第2遊星歯車装置24のリングギヤR2が出力回転要素である前記出力歯車14に連結されている。
前記自動変速機30においては、前記3つの遊星歯車装置22、24、26それぞれにおけるサンギヤS、キャリアCA、及びリングギヤRを含んで複数の回転要素が構成されている。前記第2遊星歯車装置24のサンギヤS2及び前記第3遊星歯車装置26のキャリアCA3が相互に連結されており、一体の回転要素として構成されている。すなわち、本実施例の自動変速機30においては、前記第1遊星歯車装置22におけるサンギヤS1、キャリアCA1、リングギヤR1、前記第2遊星歯車装置24におけるサンギヤS2(キャリアCA3)、キャリアCA2、リングギヤR2、前記第3遊星歯車装置26におけるサンギヤS3、リングギヤR3が前記変速機ケース28に対して相対回転可能に設けられた複数の回転要素に対応する。
前記自動変速機30には、前記複数の回転要素相互間に前記クラッチC1~C6が設けられている。すなわち、入力回転要素である前記入力軸12と前記第2遊星歯車装置24のキャリアCA2との間に、それら入力軸12及びキャリアCA2を選択的に連結する第1クラッチC1が設けられている。前記第1遊星歯車装置22のリングギヤR1と相互に連結された前記第2遊星歯車装置24のサンギヤS2及び前記第3遊星歯車装置26のキャリアCA3との間に、それらリングギヤR1及び相互に連結されたサンギヤS2及びキャリアCA3を選択的に連結する第2クラッチC2が設けられている。前記第1遊星歯車装置22のキャリアCA1と前記第2遊星歯車装置24のキャリアCA2との間に、それらキャリアCA1及びキャリアCA2を選択的に連結する第3クラッチC3が設けられている。前記第1遊星歯車装置22のリングギヤR1と前記第3遊星歯車装置26のリングギヤR3との間に、それらリングギヤR1及びリングギヤR3を選択的に連結する第4クラッチC4が設けられている。前記第1遊星歯車装置22のキャリアCA1と前記第3遊星歯車装置26のリングギヤR3との間に、それらキャリアCA1及びリングギヤR3を選択的に連結する第5クラッチC5が設けられている。前記入力軸12と前記第3遊星歯車装置26のサンギヤS3との間に、それら入力軸12及びサンギヤS3を選択的に連結する第6クラッチC6が設けられている。
図5は、前記自動変速機30において複数の変速段を選択的に成立させる際の係合要素の作動状態を説明する作動表である。この図5に示すように、前記自動変速機30においては、前記第2クラッチC2、第3クラッチC3、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6の係合により変速比「4.062」の第1速ギヤ段「1st」が成立させられる。前記第2クラッチC2、第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第6クラッチC6の係合により変速比「2.500」の第2速ギヤ段「2nd」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、及び第4クラッチC4の係合により変速比「1.562」の第3速ギヤ段「3rd」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第6クラッチC6の係合により変速比「1.290」の第4速ギヤ段「4th」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第4クラッチC4、及び第6クラッチC6の係合により変速比「1.000」の第5速ギヤ段「5th」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6の係合により変速比「0.813」の第6速ギヤ段「6th」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第4クラッチC4、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6の係合により変速比「0.727」の第7速ギヤ段「7th」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第4クラッチC4、及び第5クラッチC5の係合により変速比「0.625」の第8速ギヤ段「8th」が成立させられる。前記第3クラッチC3、第4クラッチC4、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6の係合により変速比「4.444」の後進変速段「R」が成立させられる。前記クラッチCが全て解放されることによりニュートラル状態が成立させられる。
換言すれば、前記自動変速機30においては、前記第1クラッチC1及び第4クラッチC4の解放により前記第1速ギヤ段「1st」が成立させられる。前記第1クラッチC1及び第5クラッチC5の解放により前記第2速ギヤ段「2nd」が成立させられる。前記第5クラッチC5及び第6クラッチC6の解放により前記第3速ギヤ段「3rd」が成立させられる。前記第2クラッチC2及び第5クラッチC5の解放により前記第4速ギヤ段「4th」が成立させられる。前記第3クラッチC3及び第5クラッチC5の解放により前記第5速ギヤ段「5th」が成立させられる。前記第3クラッチC3及び第4クラッチC4の解放により前記第6速ギヤ段「6th」が成立させられる。前記第2クラッチC2及び第3クラッチC3の解放により前記第7速ギヤ段「7th」が成立させられる。前記第3クラッチC3及び第6クラッチC6の解放により前記第8速ギヤ段「8th」が成立させられる。前記第1クラッチC1及び第2クラッチC2の解放により前記後進変速段「R」が成立させられる。
すなわち、前記自動変速機30においては、前記6つのクラッチC1~C6のうち何れか4つのクラッチが係合させられると共に、残り2つのクラッチが解放させられることにより、前記第1変速段「1st」~第8変速段「8th」の8つの前進変速段、及び後進変速段「R」の何れかが選択的に成立させられる。換言すれば、前記自動変速機30の変速に関与する係合要素は、何れも係合により各回転要素相互の相対回転を阻止するが解放により各回転要素相互の相対回転を許容する装置(クラッチ)であって、係合により前記変速機ケース28に対して前記回転要素を直接連結する装置(ブレーキ)を含まず、前記6つのクラッチC1~C6の係合乃至解放の組み合わせにより前記自動変速機30において成立可能な複数の変速段すなわち前記第1変速段「1st」~第8変速段「8th」の8つの前進変速段、及び後進変速段「R」の全てを選択的に成立させるものである。
図5の係合表から明らかなように、前記自動変速機30における変速段の切り替え(単一変速)は、変速前に係合させられている4つのクラッチのうち何れか1つのクラッチが解放させられると共に、変速前に解放されている2つのクラッチのうち何れか1つのクラッチが係合させられることにより行われる。例えば、第1速ギヤ段から第2速ギヤ段への変速は、前記第5クラッチC5が解放させられると共に、前記第4クラッチC4が係合させられることにより行われる。すなわち、前記自動変速機30においては、少なくとも前進変速段においては、飛び変速を除く全ての変速段の切り替えに関して、1対のクラッチの掴み替えによる所謂クラッチ・トゥ・クラッチ変速が行われる。
図6は、前記自動変速機30において、変速段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。この図6の共線図における9本の縦線Y1~Y9は、右から順にY1が前記第3遊星歯車装置26のリングギヤR3、Y2がキャリアCA3、Y3がサンギヤS3、Y4が前記第2遊星歯車装置24のリングギヤR2、Y5がキャリアCA2、Y6がサンギヤS2、Y7が前記第1遊星歯車装置22のリングギヤR1、Y8がキャリアCA1、Y9がサンギヤS1それぞれの相対回転速度を示している。前記リングギヤR2及びキャリアCA3は相互に連結されているため、縦軸Y6に対応する回転速度と縦軸Y2に対応する回転速度は等しいものとなっている。前記縦線Y1~Y9の間隔は、前記遊星歯車装置22、24、26の各ギヤ比ρ1、ρ2、ρ3に応じて定められている。すなわち、前記第3遊星歯車装置26における3つの回転要素に対応する縦線Y1~Y3、前記第2遊星歯車装置24における3つの回転要素に対応する縦線Y4~Y6、前記第1遊星歯車装置22における3つの回転要素に対応する縦線Y7~Y9それぞれに関して、サンギヤSとキャリアCAとの間が1に対応するものとされ、キャリアCAとリングギヤRとの間がρに対応するものとされる。
図6の共線図を用いて表現すれば、前記自動変速機30において、前記サンギヤS2及びキャリアCA3が相互に連結されている。前記入力軸12が前記第1クラッチC1を介して前記キャリアCA2に選択的に連結されると共に、前記第6クラッチC6を介して前記サンギヤS3に選択的に連結される。前記サンギヤS1が非回転部材である前記変速機ケース28に連結されている。前記キャリアCA1が前記第3クラッチC3を介して前記キャリアCA2に選択的に連結されると共に、前記第5クラッチC5を介して前記リングギヤR3に選択的に連結される。前記リングギヤR1が前記第2クラッチC2を介して前記サンギヤS2に選択的に連結されると共に、前記第4クラッチC4を介して前記リングギヤR3に選択的に連結される。前記リングギヤR2が出力回転要素としての前記出力歯車14に連結されている。
図6に示すように、前記自動変速機30では、前記第2クラッチC2、第3クラッチC3、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6が係合させられることにより定まる直線L1と、出力回転要素である前記出力歯車14に連結された前記リングギヤR2の回転速度を示す縦線Y4との交点で第1速ギヤ段「1st」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第2クラッチC2、第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第6クラッチC6が係合させられることにより定まる直線L2と、縦線Y4との交点で第2速ギヤ段「2nd」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、及び第4クラッチC4が係合させられることにより定まる直線L3と、縦線Y4との交点で第3速ギヤ段「3rd」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第6クラッチC6が係合させられることにより定まる直線L4と、縦線Y4との交点で第4速ギヤ段「4th」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第4クラッチC4、及び第6クラッチC6が係合させられることにより定まる直線L5と、縦線Y4との交点で第5速ギヤ段「5th」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6が係合させられることにより定まる直線L6と、縦線Y4との交点で第6速ギヤ段「6th」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第4クラッチC4、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6が係合させられることにより定まる直線L7と、縦線Y4との交点で第7速ギヤ段「7th」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第4クラッチC4、及び第5クラッチC5が係合させられることにより定まる直線L8と、縦線Y4との交点で第8速ギヤ段「8th」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第3クラッチC3、第4クラッチC4、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6が係合させられることにより定まる直線LRと、縦線Y4との交点で後進ギヤ段「R」における前記出力歯車14の回転速度が示される。
図7は、本発明の更に別の実施例である車両用自動変速機40の構成を説明する骨子図である。この図7に示すように、本実施例の自動変速機40は、前記変速機ケース28内において、例えば「0.62」程度の所定のギヤ比ρ1を有するシングルピニオン型の第1遊星歯車装置22、例えば「0.6」程度の所定のギヤ比ρ2を有するシングルピニオン型の第2遊星歯車装置24、及び「0.6」程度の所定のギヤ比ρ3を有するダブルピニオン型の第3遊星歯車装置42を共通の中心軸上に備えて構成されている。前記第3遊星歯車装置42は、サンギヤS4、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP4、それらピニオンギヤP4を自転及び公転可能に支持するキャリヤCA4、ピニオンギヤP4を介してサンギヤS4と噛み合うリングギヤR4を回転要素(回転部材)として備えている。前記第3遊星歯車装置42のキャリアCA4が非回転部材である変速機ケース28に連結されている。前記第1遊星歯車装置22のリングギヤR1が出力回転要素である前記出力歯車14に連結されている。
前記自動変速機40においては、前記3つの遊星歯車装置22、24、42それぞれにおけるサンギヤS、キャリアCA、及びリングギヤRを含んで複数の回転要素が構成されている。前記第1遊星歯車装置22のサンギヤS1及び前記第2遊星歯車装置24のキャリアCA2が相互に連結されており、一体の回転要素として構成されている。すなわち、本実施例の自動変速機40においては、前記第1遊星歯車装置22におけるサンギヤS1(キャリアCA2)、キャリアCA1、リングギヤR1、前記第2遊星歯車装置24におけるサンギヤS2、リングギヤR2、前記第3遊星歯車装置42におけるサンギヤS4、キャリアCA4、リングギヤR4が前記変速機ケース28に対して相対回転可能に設けられた複数の回転要素に対応する。
前記自動変速機40には、前記複数の回転要素相互間に前記クラッチC1~C6が設けられている。すなわち、入力回転要素である前記入力軸12と前記第1遊星歯車装置22のキャリアCA1との間に、それら入力軸12及びキャリアCA1を選択的に連結する第1クラッチC1が設けられている。前記第1遊星歯車装置22のキャリアCA1と前記第3遊星歯車装置42のリングギヤR4との間に、それらキャリアCA1及びリングギヤR4を選択的に連結する第2クラッチC2が設けられている。前記第2遊星歯車装置24のリングギヤR2と前記第3遊星歯車装置42のリングギヤR4との間に、それらリングギヤR2及びリングギヤR4を選択的に連結する第3クラッチC3が設けられている。前記第2遊星歯車装置24のリングギヤR2と前記第3遊星歯車装置42のサンギヤS4との間に、それらリングギヤR2及びサンギヤS4を選択的に連結する第4クラッチC4が設けられている。相互に連結された前記第1遊星歯車装置22のサンギヤS1及び前記第2遊星歯車装置24のキャリアCA2と前記第3遊星歯車装置42のサンギヤS4との間に、それらサンギヤS4及び相互に連結されたサンギヤS1及びキャリアCA2を選択的に連結する第5クラッチC5が設けられている。前記入力軸12と前記第2遊星歯車装置24のサンギヤS2との間に、それら入力軸12及びサンギヤS2を選択的に連結する第6クラッチC6が設けられている。
図8は、前記自動変速機40において複数の変速段を選択的に成立させる際の係合要素の作動状態を説明する作動表である。この図8に示すように、前記自動変速機40においては、前記第2クラッチC2、第3クラッチC3、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6の係合により変速比「4.167」の第1速ギヤ段「1st」が成立させられる。前記第2クラッチC2、第4クラッチC4、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6の係合により変速比「2.551」の第2速ギヤ段「2nd」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第4クラッチC4、及び第5クラッチC5の係合により変速比「1.382」の第3速ギヤ段「3rd」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第4クラッチC4、及び第6クラッチC6の係合により変速比「1.298」の第4速ギヤ段「4th」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、及び第6クラッチC6の係合により変速比「1.000」の第5速ギヤ段「5th」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第3クラッチC3、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6の係合により変速比「0.811」の第6速ギヤ段「6th」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第6クラッチC6の係合により変速比「0.727」の第7速ギヤ段「7th」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第5クラッチC5の係合により変速比「0.625」の第8速ギヤ段「8th」が成立させられる。前記第2クラッチC2、第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第6クラッチC6の係合により変速比「4.444」の後進変速段「R」が成立させられる。前記クラッチCが全て解放されることによりニュートラル状態が成立させられる。
換言すれば、前記自動変速機40においては、前記第1クラッチC1及び第4クラッチC4の解放により前記第1速ギヤ段「1st」が成立させられる。前記第1クラッチC1及び第3クラッチC3の解放により前記第2速ギヤ段「2nd」が成立させられる。前記第3クラッチC3及び第6クラッチC6の解放により前記第3速ギヤ段「3rd」が成立させられる。前記第3クラッチC3及び第5クラッチC5の解放により前記第4速ギヤ段「4th」が成立させられる。前記第4クラッチC4及び第5クラッチC5の解放により前記第5速ギヤ段「5th」が成立させられる。前記第2クラッチC2及び第4クラッチC4の解放により前記第6速ギヤ段「6th」が成立させられる。前記第2クラッチC2及び第5クラッチC5の解放により前記第7速ギヤ段「7th」が成立させられる。前記第2クラッチC2及び第6クラッチC6の解放により前記第8速ギヤ段「8th」が成立させられる。前記第1クラッチC1及び第5クラッチC5の解放により前記後進変速段「R」が成立させられる。
すなわち、前記自動変速機40においては、前記6つのクラッチC1~C6のうち何れか4つのクラッチが係合させられると共に、残り2つのクラッチが解放させられることにより、前記第1変速段「1st」~第8変速段「8th」の8つの前進変速段、及び後進変速段「R」の何れかが選択的に成立させられる。換言すれば、前記自動変速機40の変速に関与する係合要素は、何れも係合により各回転要素相互の相対回転を阻止するが解放により各回転要素相互の相対回転を許容する装置(クラッチ)であって、係合により前記変速機ケース28に対して前記回転要素を直接連結する装置(ブレーキ)を含まず、前記6つのクラッチC1~C6の係合乃至解放の組み合わせにより前記自動変速機40において成立可能な複数の変速段すなわち前記第1変速段「1st」~第8変速段「8th」の8つの前進変速段、及び後進変速段「R」の全てを選択的に成立させるものである。
図8の係合表から明らかなように、前記自動変速機40における変速段の切り替え(単一変速)は、変速前に係合させられている4つのクラッチのうち何れか1つのクラッチが解放させられると共に、変速前に解放されている2つのクラッチのうち何れか1つのクラッチが係合させられることにより行われる。例えば、第1速ギヤ段から第2速ギヤ段への変速は、前記第3クラッチC3が解放させられると共に、前記第4クラッチC4が係合させられることにより行われる。すなわち、前記自動変速機40においては、少なくとも前進変速段においては、飛び変速を除く全ての変速段の切り替えに関して、1対のクラッチの掴み替えによる所謂クラッチ・トゥ・クラッチ変速が行われる。
図9は、前記自動変速機40において、変速段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。この図9の共線図における9本の縦線Y1~Y9は、右から順にY1が前記第3遊星歯車装置42のキャリアCA4、Y2がリングギヤR4、Y3がサンギヤS4、Y4が前記第2遊星歯車装置24のリングギヤR2、Y5がキャリアCA2、Y6がサンギヤS2、Y7が前記第1遊星歯車装置22のリングギヤR1、Y8がキャリアCA1、Y9がサンギヤS1それぞれの相対回転速度を示している。前記サンギヤS1及びキャリアCA2は相互に連結されているため、縦軸Y5に対応する回転速度と縦軸Y9に対応する回転速度は等しいものとなっている。前記縦線Y1~Y9の間隔は、前記遊星歯車装置22、24、42の各ギヤ比ρ1、ρ2、ρ3に応じて定められている。すなわち、前記第3遊星歯車装置42における3つの回転要素に対応する縦線Y1~Y3、前記第2遊星歯車装置24における3つの回転要素に対応する縦線Y4~Y6、前記第1遊星歯車装置22における3つの回転要素に対応する縦線Y7~Y9それぞれに関して、サンギヤSとキャリアCAとの間が1に対応するものとされ、キャリアCAとリングギヤRとの間がρに対応するものとされる。
図9の共線図を用いて表現すれば、前記自動変速機40において、前記サンギヤS1及びキャリアCA2が相互に連結されている。前記入力軸12が前記第1クラッチC1を介して前記キャリアCA1に選択的に連結されると共に、前記第6クラッチC6を介して前記サンギヤS2に選択的に連結される。前記キャリアCA4が非回転部材である前記変速機ケース28に連結されている。前記キャリアCA1が前記第2クラッチC2を介して前記リングギヤR4に選択的に連結される。相互に連結された前記サンギヤS1及びキャリアCA2が前記第5クラッチC5を介して前記サンギヤS4に選択的に連結される。前記リングギヤR2が前記第3クラッチC3を介して前記リングギヤR4に選択的に連結されると共に、前記第4クラッチC4を介して前記サンギヤS4に選択的に連結される。前記リングギヤR1が出力回転要素としての前記出力歯車14に連結されている。
図9に示すように、前記自動変速機40では、前記第2クラッチC2、第3クラッチC3、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6が係合させられることにより定まる直線L1と、出力回転要素である前記出力歯車14に連結された前記リングギヤR1の回転速度を示す縦線Y7との交点で第1速ギヤ段「1st」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第2クラッチC2、第4クラッチC4、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6が係合させられることにより定まる直線L2と、縦線Y7との交点で第2速ギヤ段「2nd」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第4クラッチC4、及び第5クラッチC5が係合させられることにより定まる直線L3と、縦線Y7との交点で第3速ギヤ段「3rd」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第4クラッチC4、及び第6クラッチC6が係合させられることにより定まる直線L4と、縦線Y7との交点で第4速ギヤ段「4th」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、及び第6クラッチC6が係合させられることにより定まる直線L5と、縦線Y7との交点で第5速ギヤ段「5th」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第3クラッチC3、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6が係合させられることにより定まる直線L6と、縦線Y7との交点で第6速ギヤ段「6th」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第6クラッチC6が係合させられることにより定まる直線L7と、縦線Y7との交点で第7速ギヤ段「7th」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第5クラッチC5が係合させられることにより定まる直線L8と、縦線Y7との交点で第8速ギヤ段「8th」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第2クラッチC2、第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第6クラッチC6が係合させられることにより定まる直線LRと、縦線Y7との交点で後進ギヤ段「R」における前記出力歯車14の回転速度が示される。
図10は、本発明の更に別の実施例である車両用自動変速機50の構成を説明する骨子図である。この図10に示すように、本実施例の自動変速機50は、前記変速機ケース28内において、例えば「0.64」程度の所定のギヤ比ρ1を有するシングルピニオン型の第1遊星歯車装置22、例えば「0.64」程度の所定のギヤ比ρ2を有するシングルピニオン型の第2遊星歯車装置24、及び「0.64」程度の所定のギヤ比ρ3を有するダブルピニオン型の第3遊星歯車装置42を共通の中心軸上に備えて構成されている。すなわち、前記自動変速機50に備えられた3つの遊星歯車装置22、24、42は、何れもギヤ比が等しいものである。前記第2遊星歯車装置24のサンギヤS2が非回転部材である変速機ケース28に連結されている。前記第1遊星歯車装置22のリングギヤR1が出力回転要素である前記出力歯車14に連結されている。
前記自動変速機50においては、前記3つの遊星歯車装置22、24、42それぞれにおけるサンギヤS、キャリアCA、及びリングギヤRを含んで複数の回転要素が構成されている。前記第1遊星歯車装置22のサンギヤS1及び前記第3遊星歯車装置42のリングギヤR4が相互に連結されており、一体の回転要素として構成されている。すなわち、本実施例の自動変速機50においては、前記第1遊星歯車装置22におけるサンギヤS1(リングギヤR4)、キャリアCA1、リングギヤR1、前記第2遊星歯車装置24におけるサンギヤS2、キャリアCA2、リングギヤR2、前記第3遊星歯車装置42におけるサンギヤS4、キャリアCA4が前記変速機ケース28に対して相対回転可能に設けられた複数の回転要素に対応する。
前記自動変速機50には、前記複数の回転要素相互間に前記クラッチC1~C6が設けられている。すなわち、入力回転要素である前記入力軸12と前記第1遊星歯車装置22のキャリアCA1との間に、それら入力軸12及びキャリアCA1を選択的に連結する第1クラッチC1が設けられている。前記第1遊星歯車装置22のキャリアCA1と前記第2遊星歯車装置24のキャリアCA2との間に、それらキャリアCA1及びキャリアCA2を選択的に連結する第2クラッチC2が設けられている。前記第2遊星歯車装置24のリングギヤR2と相互に連結された前記第1遊星歯車装置22のサンギヤS1及び前記第3遊星歯車装置42のリングギヤR4との間に、それらリングギヤR2及び相互に連結されたサンギヤS1及びリングギヤR4を選択的に連結する第3クラッチC3が設けられている。前記第2遊星歯車装置24のリングギヤR2と前記第3遊星歯車装置42のサンギヤS4との間に、それらリングギヤR2及びサンギヤS4を選択的に連結する第4クラッチC4が設けられている。前記第2遊星歯車装置24のキャリアCA2と前記第3遊星歯車装置42のサンギヤS4との間に、それらキャリアCA2及びサンギヤS4を選択的に連結する第5クラッチC5が設けられている。前記入力軸12と前記第3遊星歯車装置42のキャリアCA4との間に、それら入力軸12及びキャリアCA4を選択的に連結する第6クラッチC6が設けられている。
図11は、前記自動変速機50において複数の変速段を選択的に成立させる際の係合要素の作動状態を説明する作動表である。この図11に示すように、前記自動変速機50においては、前記第2クラッチC2、第3クラッチC3、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6の係合により変速比「4.705」の第1速ギヤ段「1st」が成立させられる。前記第2クラッチC2、第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第6クラッチC6の係合により変速比「2.778」の第2速ギヤ段「2nd」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、及び第4クラッチC4の係合により変速比「1.694」の第3速ギヤ段「3rd」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第4クラッチC4、及び第6クラッチC6の係合により変速比「1.355」の第4速ギヤ段「4th」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6の係合により変速比「1.000」の第5速ギヤ段「5th」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第3クラッチC3、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6の係合により変速比「0.792」の第6速ギヤ段「6th」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第4クラッチC4、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6の係合により変速比「0.709」の第7速ギヤ段「7th」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第5クラッチC5の係合により変速比「0.610」の第8速ギヤ段「8th」が成立させられる。前記第2クラッチC2、第4クラッチC4、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6の係合により変速比「4.340」の後進変速段「R」が成立させられる。前記クラッチCが全て解放されることによりニュートラル状態が成立させられる。
換言すれば、前記自動変速機50においては、前記第1クラッチC1及び第4クラッチC4の解放により前記第1速ギヤ段「1st」が成立させられる。前記第1クラッチC1及び第5クラッチC5の解放により前記第2速ギヤ段「2nd」が成立させられる。前記第5クラッチC5及び第6クラッチC6の解放により前記第3速ギヤ段「3rd」が成立させられる。前記第3クラッチC3及び第5クラッチC5の解放により前記第4速ギヤ段「4th」が成立させられる。前記第3クラッチC3及び第4クラッチC4の解放により前記第5速ギヤ段「5th」が成立させられる。前記第2クラッチC2及び第4クラッチC4の解放により前記第6速ギヤ段「6th」が成立させられる。前記第2クラッチC2及び第3クラッチC3の解放により前記第7速ギヤ段「7th」が成立させられる。前記第2クラッチC2及び第6クラッチC6の解放により前記第8速ギヤ段「8th」が成立させられる。前記第1クラッチC1及び第3クラッチC3の解放により前記後進変速段「R」が成立させられる。
すなわち、前記自動変速機50においては、前記6つのクラッチC1~C6のうち何れか4つのクラッチが係合させられると共に、残り2つのクラッチが解放させられることにより、前記第1変速段「1st」~第8変速段「8th」の8つの前進変速段、及び後進変速段「R」の何れかが選択的に成立させられる。換言すれば、前記自動変速機50の変速に関与する係合要素は、何れも係合により各回転要素相互の相対回転を阻止するが解放により各回転要素相互の相対回転を許容する装置(クラッチ)であって、係合により前記変速機ケース28に対して前記回転要素を直接連結する装置(ブレーキ)を含まず、前記6つのクラッチC1~C6の係合乃至解放の組み合わせにより前記自動変速機50において成立可能な複数の変速段すなわち前記第1変速段「1st」~第8変速段「8th」の8つの前進変速段、及び後進変速段「R」の全てを選択的に成立させるものである。
図11の係合表から明らかなように、前記自動変速機50における変速段の切り替え(単一変速)は、変速前に係合させられている4つのクラッチのうち何れか1つのクラッチが解放させられると共に、変速前に解放されている2つのクラッチのうち何れか1つのクラッチが係合させられることにより行われる。例えば、第1速ギヤ段から第2速ギヤ段への変速は、前記第5クラッチC5が解放させられると共に、前記第4クラッチC4が係合させられることにより行われる。すなわち、前記自動変速機50においては、少なくとも前進変速段においては、飛び変速を除く全ての変速段の切り替えに関して、1対のクラッチの掴み替えによる所謂クラッチ・トゥ・クラッチ変速が行われる。
図12は、前記自動変速機50において、変速段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。この図12の共線図における9本の縦線Y1~Y9は、右から順にY1が前記第3遊星歯車装置42のキャリアCA4、Y2がリングギヤR4、Y3がサンギヤS4、Y4が前記第2遊星歯車装置24のリングギヤR2、Y5がキャリアCA2、Y6がサンギヤS2、Y7が前記第1遊星歯車装置22のリングギヤR1、Y8がキャリアCA1、Y9がサンギヤS1それぞれの相対回転速度を示している。前記サンギヤS1及びリングギヤR4は相互に連結されているため、縦軸Y2に対応する回転速度と縦軸Y9に対応する回転速度は等しいものとなっている。前記縦線Y1~Y9の間隔は、前記遊星歯車装置22、24、42の各ギヤ比ρ1、ρ2、ρ3に応じて定められている。すなわち、前記第3遊星歯車装置42における3つの回転要素に対応する縦線Y1~Y3、前記第2遊星歯車装置24における3つの回転要素に対応する縦線Y4~Y6、前記第1遊星歯車装置22における3つの回転要素に対応する縦線Y7~Y9それぞれに関して、サンギヤSとキャリアCAとの間が1に対応するものとされ、キャリアCAとリングギヤRとの間がρに対応するものとされる。
図12の共線図を用いて表現すれば、前記自動変速機50において、前記サンギヤS1及びリングギヤR4が相互に連結されている。前記入力軸12が前記第1クラッチC1を介して前記キャリアCA1に選択的に連結されると共に、前記第6クラッチC6を介して前記キャリアCA4に選択的に連結される。前記キャリアCA1が前記第2クラッチC2を介して前記キャリアCA2に選択的に連結される。前記サンギヤS2が非回転部材である前記変速機ケース28に連結されている。前記キャリアCA2が前記第5クラッチC5を介して前記サンギヤS4に選択的に連結される。前記リングギヤR2が前記第3クラッチC3を介して前記相互に連結されたサンギヤS1及びリングギヤR4に選択的に連結されると共に、前記第4クラッチC4を介して前記サンギヤS4に選択的に連結される。前記リングギヤR1が出力回転要素としての前記出力歯車14に連結されている。
図12に示すように、前記自動変速機50では、前記第2クラッチC2、第3クラッチC3、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6が係合させられることにより定まる直線L1と、出力回転要素である前記出力歯車14に連結された前記リングギヤR1の回転速度を示す縦線Y7との交点で第1速ギヤ段「1st」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第2クラッチC2、第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第6クラッチC6が係合させられることにより定まる直線L2と、縦線Y7との交点で第2速ギヤ段「2nd」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、及び第4クラッチC4が係合させられることにより定まる直線L3と、縦線Y7との交点で第3速ギヤ段「3rd」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第4クラッチC4、及び第6クラッチC6が係合させられることにより定まる直線L4と、縦線Y7との交点で第4速ギヤ段「4th」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6が係合させられることにより定まる直線L5と、縦線Y7との交点で第5速ギヤ段「5th」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第3クラッチC3、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6が係合させられることにより定まる直線L6と、縦線Y7との交点で第6速ギヤ段「6th」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第4クラッチC4、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6が係合させられることにより定まる直線L7と、縦線Y7との交点で第7速ギヤ段「7th」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第5クラッチC5が係合させられることにより定まる直線L8と、縦線Y7との交点で第8速ギヤ段「8th」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第2クラッチC2、第4クラッチC4、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6が係合させられることにより定まる直線LRと、縦線Y7との交点で後進ギヤ段「R」における前記出力歯車14の回転速度が示される。
図13は、本発明の更に別の実施例である車両用自動変速機60の構成を説明する骨子図である。この図13に示すように、本実施例の自動変速機60は、前記変速機ケース28内において、例えば「0.64」程度の所定のギヤ比ρ1を有するシングルピニオン型の第1遊星歯車装置22、例えば「0.64」程度の所定のギヤ比ρ2を有するシングルピニオン型の第2遊星歯車装置24、及び「0.64」程度の所定のギヤ比ρ3を有するダブルピニオン型の第3遊星歯車装置42を共通の中心軸上に備えて構成されている。すなわち、前記自動変速機50に備えられた3つの遊星歯車装置22、24、42は、何れもギヤ比が等しいものである。前記第2遊星歯車装置24のサンギヤS2が非回転部材である変速機ケース28に連結されている。前記第1遊星歯車装置22のリングギヤR1が出力回転要素である前記出力歯車14に連結されている。
前記自動変速機60において、前記3つの遊星歯車装置22、24、42それぞれにおけるサンギヤS1、S2、S4、キャリアCA1、CA2、CA4、リングギヤR1、R2、R4は、前記クラッチC1~C6が解放された状態においては何れも相互に相対回転可能に設けられている。換言すれば、前記サンギヤS、キャリアCA、及びリングギヤRは、それぞれが相互に連結されない個別の部材として設けられている。すなわち、本実施例の自動変速機60においては、前記遊星歯車装置22、24、42におけるサンギヤS、キャリアCA、及びリングギヤRがそれぞれ独立に前記変速機ケース28に対して相対回転可能に設けられた複数の回転要素に対応する。
前記自動変速機60には、前記複数の回転要素相互間に前記クラッチC1~C6が設けられている。すなわち、入力回転要素である前記入力軸12と前記第1遊星歯車装置22のキャリアCA1との間に、それら入力軸12及びキャリアCA1を選択的に連結する第1クラッチC1が設けられている。前記第1遊星歯車装置22のキャリアCA1と前記第2遊星歯車装置24のキャリアCA2との間に、それらキャリアCA1及びキャリアCA2を選択的に連結する第2クラッチC2が設けられている。前記第1遊星歯車装置22のサンギヤS1と前記第2遊星歯車装置24のリングギヤR2との間に、それらサンギヤS1及びリングギヤR2を選択的に連結する第3クラッチC3が設けられている。前記第1遊星歯車装置22のサンギヤS1と前記第3遊星歯車装置42のリングギヤR4との間に、それらサンギヤS1及びリングギヤR4を選択的に連結する第4クラッチC4が設けられている。前記第2遊星歯車装置24のリングギヤR2と前記第3遊星歯車装置42のサンギヤS4との間に、それらリングギヤR2及びサンギヤS4を選択的に連結する第5クラッチC5が設けられている。前記第2遊星歯車装置24のキャリアCA2と前記第3遊星歯車装置42のサンギヤS4との間に、それらキャリアCA2及びサンギヤS4を選択的に連結する第6クラッチC6が設けられている。
図14は、前記自動変速機60において複数の変速段を選択的に成立させる際の係合要素の作動状態を説明する作動表である。この図14に示すように、前記自動変速機60においては、前記第2クラッチC2、第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第6クラッチC6の係合により変速比「4.705」の第1速ギヤ段「1st」が成立させられる。前記第2クラッチC2、第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第5クラッチC5の係合により変速比「2.778」の第2速ギヤ段「2nd」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、及び第4クラッチC4の係合により変速比「1.694」の第3速ギヤ段「3rd」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第4クラッチC4、及び第5クラッチC5の係合により変速比「1.355」の第4速ギヤ段「4th」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第4クラッチC4、及び第6クラッチC6の係合により変速比「1.000」の第5速ギヤ段「5th」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第6クラッチC6の係合により変速比「0.792」の第6速ギヤ段「6th」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第4クラッチC4、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6の係合により変速比「0.709」の第7速ギヤ段「7th」が成立させられる。前記第1クラッチC1、第3クラッチC3、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6の係合により変速比「0.610」の第8速ギヤ段「8th」が成立させられる。前記第2クラッチC2、第4クラッチC4、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6の係合により変速比「4.340」の後進変速段「R」が成立させられる。前記クラッチCが全て解放されることによりニュートラル状態が成立させられる。
換言すれば、前記自動変速機60においては、前記第1クラッチC1及び第5クラッチC5の解放により前記第1速ギヤ段「1st」が成立させられる。前記第1クラッチC1及び第6クラッチC6の解放により前記第2速ギヤ段「2nd」が成立させられる。前記第5クラッチC5及び第6クラッチC6の解放により前記第3速ギヤ段「3rd」が成立させられる。前記第3クラッチC3及び第6クラッチC6の解放により前記第4速ギヤ段「4th」が成立させられる。前記第3クラッチC3及び第5クラッチC5の解放により前記第5速ギヤ段「5th」が成立させられる。前記第2クラッチC2及び第5クラッチC5の解放により前記第6速ギヤ段「6th」が成立させられる。前記第2クラッチC2及び第3クラッチC3の解放により前記第7速ギヤ段「7th」が成立させられる。前記第2クラッチC2及び第4クラッチC4の解放により前記第8速ギヤ段「8th」が成立させられる。前記第1クラッチC1及び第3クラッチC3の解放により前記後進変速段「R」が成立させられる。
すなわち、前記自動変速機60においては、前記6つのクラッチC1~C6のうち何れか4つのクラッチが係合させられると共に、残り2つのクラッチが解放させられることにより、前記第1変速段「1st」~第8変速段「8th」の8つの前進変速段、及び後進変速段「R」の何れかが選択的に成立させられる。換言すれば、前記自動変速機60の変速に関与する係合要素は、何れも係合により各回転要素相互の相対回転を阻止するが解放により各回転要素相互の相対回転を許容する装置(クラッチ)であって、係合により前記変速機ケース28に対して前記回転要素を直接連結する装置(ブレーキ)を含まず、前記6つのクラッチC1~C6の係合乃至解放の組み合わせにより前記自動変速機60において成立可能な複数の変速段すなわち前記第1変速段「1st」~第8変速段「8th」の8つの前進変速段、及び後進変速段「R」の全てを選択的に成立させるものである。
図14の係合表から明らかなように、前記自動変速機60における変速段の切り替え(単一変速)は、変速前に係合させられている4つのクラッチのうち何れか1つのクラッチが解放させられると共に、変速前に解放されている2つのクラッチのうち何れか1つのクラッチが係合させられることにより行われる。例えば、第1速ギヤ段から第2速ギヤ段への変速は、前記第6クラッチC6が解放させられると共に、前記第5クラッチC5が係合させられることにより行われる。すなわち、前記自動変速機60においては、少なくとも前進変速段においては、飛び変速を除く全ての変速段の切り替えに関して、1対のクラッチの掴み替えによる所謂クラッチ・トゥ・クラッチ変速が行われる。
図15は、前記自動変速機60において、変速段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。この図15の共線図における9本の縦線Y1~Y9は、右から順にY1が前記第3遊星歯車装置42のキャリアCA4、Y2がリングギヤR4、Y3がサンギヤS4、Y4が前記第2遊星歯車装置24のリングギヤR2、Y5がキャリアCA2、Y6がサンギヤS2、Y7が前記第1遊星歯車装置22のリングギヤR1、Y8がキャリアCA1、Y9がサンギヤS1それぞれの相対回転速度を示している。前記縦線Y1~Y9の間隔は、前記遊星歯車装置22、24、42の各ギヤ比ρ1、ρ2、ρ3に応じて定められている。すなわち、前記第3遊星歯車装置42における3つの回転要素に対応する縦線Y1~Y3、前記第2遊星歯車装置24における3つの回転要素に対応する縦線Y4~Y6、前記第1遊星歯車装置22における3つの回転要素に対応する縦線Y7~Y9それぞれに関して、サンギヤSとキャリアCAとの間が1に対応するものとされ、キャリアCAとリングギヤRとの間がρに対応するものとされる。
図15の共線図を用いて表現すれば、前記自動変速機60において、前記入力軸12が前記第1クラッチC1を介して前記キャリアCA1に選択的に連結される。前記キャリアCA1が前記第2クラッチC2を介して前記キャリアCA2に選択的に連結される。前記サンギヤS1が前記第3クラッチC3を介して前記リングギヤR2に選択的に連結されると共に、前記第4クラッチC4を介して前記リングギヤR4に選択的に連結される。前記リングギヤR2が前記第5クラッチC5を介して前記サンギヤS4に選択的に連結される。前記キャリアCA2が前記第6クラッチC6を介して前記サンギヤS4に選択的に連結される。前記リングギヤR1が出力回転要素としての前記出力歯車14に連結されている。
図15に示すように、前記自動変速機60では、前記第2クラッチC2、第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第6クラッチC6が係合させられることにより定まる直線L1と、出力回転要素である前記出力歯車14に連結された前記リングギヤR1の回転速度を示す縦線Y7との交点で第1速ギヤ段「1st」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第2クラッチC2、第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第5クラッチC5が係合させられることにより定まる直線L2と、縦線Y7との交点で第2速ギヤ段「2nd」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、及び第4クラッチC4が係合させられることにより定まる直線L3と、縦線Y7との交点で第3速ギヤ段「3rd」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第4クラッチC4、及び第5クラッチC5が係合させられることにより定まる直線L4と、縦線Y7との交点で第4速ギヤ段「4th」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第4クラッチC4、及び第6クラッチC6が係合させられることにより定まる直線L5と、縦線Y7との交点で第5速ギヤ段「5th」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第6クラッチC6が係合させられることにより定まる直線L6と、縦線Y7との交点で第6速ギヤ段「6th」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第4クラッチC4、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6が係合させられることにより定まる直線L7と、縦線Y7との交点で第7速ギヤ段「7th」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1、第3クラッチC3、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6が係合させられることにより定まる直線L8と、縦線Y7との交点で第8速ギヤ段「8th」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第2クラッチC2、第4クラッチC4、第5クラッチC5、及び第6クラッチC6が係合させられることにより定まる直線LRと、縦線Y7との交点で後進ギヤ段「R」における前記出力歯車14の回転速度が示される。
図16は、本発明の更に別の実施例である車両用自動変速機70の構成を説明する骨子図である。この図16に示すように、本実施例の自動変速機70は、前記変速機ケース28内において、所定のギヤ比ρ1を有するダブルピニオン型の第1遊星歯車装置72と、所定のギヤ比ρ2を有するシングルピニオン型の第2遊星歯車装置24とを、共通の中心軸上に備えて構成されている。前記第1遊星歯車装置72は、サンギヤS5、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP5、それらピニオンギヤP5を自転及び公転可能に支持するキャリヤCA5、ピニオンギヤP5を介してサンギヤS5と噛み合うリングギヤR5を回転要素(回転部材)として備えている。前記第1遊星歯車装置72のサンギヤS5及び前記第2遊星歯車装置24のサンギヤS2が相互に連結されている。前記第2遊星歯車装置24のキャリアCA2が非回転部材である変速機ケース28に連結されている。前記第1遊星歯車装置72のリングギヤR5が出力回転要素である前記出力歯車14に連結されている。
前記自動変速機70には、前記複数の回転要素相互間に前記クラッチC1~C5が設けられている。すなわち、入力回転要素である前記入力軸12と前記第1遊星歯車装置72のキャリアCA5との間に、それら入力軸12及びキャリアCA5を選択的に連結する第1クラッチC1が設けられている。相互に連結された前記第1遊星歯車装置72のサンギヤS5及び前記第2遊星歯車装置24のサンギヤS2と前記入力軸12との間に、それらサンギヤS5(S2)及び入力軸12を選択的に連結する第2クラッチC2が設けられている。前記第1遊星歯車装置72のキャリアCA5と前記第2遊星歯車装置24のリングギヤR2との間に、それらキャリアCA5及びリングギヤR2を選択的に連結する第3クラッチC3が設けられている。相互に連結された前記第1遊星歯車装置72のサンギヤS5及び前記第2遊星歯車装置24のサンギヤS2と前記第2遊星歯車装置24のリングギヤR2との間に、それらサンギヤS5(S2)及びリングギヤR2を選択的に連結させる第4クラッチC4が設けられている。
図17は、前記自動変速機70において複数の変速段を選択的に成立させる際の係合要素の作動状態を説明する作動表である。この図17に示すように、前記自動変速機70においては、前記第1クラッチC1及び第3クラッチC3の係合により変速比「2.143」の第1速ギヤ段「1st」が成立させられる。前記第1クラッチC1及び第4クラッチC4の係合により変速比「1.333」の第2速ギヤ段「2nd」が成立させられる。前記第1クラッチC1及び第2クラッチC2の係合により変速比「1.000」の第3速ギヤ段「3rd」が成立させられる。前記第2クラッチC2及び第3クラッチC3の係合により変速比「4.211」の後進ギヤ段「R」が成立させられる。前記クラッチCが全て解放されることによりニュートラル状態が成立させられる。
換言すれば、前記自動変速機70においては、前記第2クラッチC2及び第4クラッチC4の解放により前記第1速ギヤ段「1st」が成立させられる。前記第2クラッチC2及び第3クラッチC3の解放により前記第2速ギヤ段「2nd」が成立させられる。前記第3クラッチC3及び第4クラッチC4の解放により前記第3速ギヤ段「3rd」が成立させられる。前記第1クラッチC1及び第4クラッチC4の解放により前記後進ギヤ段「R」が成立させられる。
すなわち、前記自動変速機70においては、前記4つのクラッチC1~C4のうち何れか2つのクラッチが係合させられると共に、残り2つのクラッチが解放させられることにより、前記第1変速段「1st」~第3変速段「3rd」の3つの前進変速段、及び後進変速段「R」の何れかが選択的に成立させられる。換言すれば、前記自動変速機70の変速に関与する係合要素は、何れも係合により各回転要素相互の相対回転を阻止するが解放により各回転要素相互の相対回転を許容する装置(クラッチ)であって、係合により前記変速機ケース28に対して前記回転要素を直接連結する装置(ブレーキ)を含まず、前記4つのクラッチC1~C4の係合乃至解放の組み合わせにより前記自動変速機70において成立可能な複数の変速段すなわち前記第1変速段「1st」~第3変速段「3rd」の3つの前進変速段、及び後進変速段「R」の全てを選択的に成立させるものである。
図17の係合表から明らかなように、前記自動変速機70における変速段の切り替え(単一変速)は、変速前に係合させられている2つのクラッチのうち何れか1つのクラッチが解放させられると共に、変速前に解放されている2つのクラッチのうち何れか1つのクラッチが係合させられることにより行われる。例えば、第1速ギヤ段から第2速ギヤ段への変速は、前記第3クラッチC3が解放させられると共に、前記第4クラッチC4が係合させられることにより行われる。すなわち、前記自動変速機70においては、少なくとも前進変速段においては、飛び変速を除く全ての変速段の切り替えに関して、1対のクラッチの掴み替えによる所謂クラッチ・トゥ・クラッチ変速が行われる。
図18は、前記自動変速機70において、変速段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。この図18の共線図における9本の縦線Y1~Y6は、左から順にY1が前記第1遊星歯車装置72のサンギヤS5、Y2がリングギヤR5、Y3がキャリアCA5、Y4が前記第2遊星歯車装置24のサンギヤS2、Y5がキャリアCA2、Y6がリングギヤR2それぞれの相対回転速度を示している。前記縦線Y1~Y6の間隔は、前記遊星歯車装置72、24の各ギヤ比ρ1、ρ2に応じて定められている。すなわち、前記第1遊星歯車装置72における3つの回転要素に対応する縦線Y1~Y3、前記第2遊星歯車装置24における3つの回転要素に対応する縦線Y4~Y6それぞれに関して、サンギヤSとキャリアCAとの間が1に対応するものとされ、キャリアCAとリングギヤRとの間がρに対応するものとされる。
図18の共線図を用いて表現すれば、前記自動変速機70において、前記キャリアCA5が前記第1クラッチC1を介して入力回転要素である前記入力軸12に選択的に連結されると共に、前記第3クラッチC3を介して前記リングギヤR2に選択的に連結される。相互に連結された前記サンギヤS5及びサンギヤS2が前記第2クラッチC2を介して前記入力軸12に選択的に連結されると共に、前記第4クラッチC4を介して前記リングギヤR2に選択的に連結される。前記キャリアCA2が非回転部材である前記変速機ケース28に連結されている。前記リングギヤR5が出力回転要素としての前記出力歯車14に連結されている。
図18に示すように、前記自動変速機70では、前記第1クラッチC1及び第3クラッチC3が係合させられることにより定まる直線L1と、出力回転要素である前記出力歯車14に連結された前記リングギヤR5の回転速度を示す縦線Y2との交点で第1速ギヤ段「1st」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1及び第4クラッチC4が係合させられることにより定まる直線L2と、縦線Y2との交点で第2速ギヤ段「2nd」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第1クラッチC1及び第2クラッチC2が係合させられることにより定まる直線L3と、縦線Y2との交点で第3速ギヤ段「3rd」における前記出力歯車14の回転速度が示される。前記第2クラッチC2及び第3クラッチC3が係合させられることにより定まる直線LRと、縦線Y2との交点で後進ギヤ段「R」における前記出力歯車14の回転速度が示される。
このように、前記第1実施例の自動変速機10、第2実施例の自動変速機30、第3実施例の自動変速機40、第4実施例の自動変速機50、第5実施例の自動変速機60、第6実施例の自動変速機70によれば、前記複数のクラッチCは、係合により前記変速機ケース28に対して前記回転要素を直接連結するものを含まず、且つ、前記複数のクラッチCの係合乃至解放の組み合わせにより前記自動変速機10等において成立可能な複数の変速段全てを選択的に成立させるものであることから、前記変速機ケース28の内周側にブレーキ用溝を形成する必要がなく、簡単な加工により製造することができる。すなわち、製造段階における加工を簡単なものにできる車両用自動変速機10等を提供することができる。
前記第1実施例の自動変速機10、第2実施例の自動変速機30、第3実施例の自動変速機40、第4実施例の自動変速機50、第5実施例の自動変速機60、第6実施例の自動変速機70によれば、前記複数の変速段は、それぞれ前記複数のクラッチCのうち何れか2つのクラッチCの解放により成立させられるものであるため、製造段階における加工を簡単なものにできることに加え、変速段の成立時に解放されているクラッチCを可及的に少なくすることで引き摺りを抑制することができる。
前記第1実施例の自動変速機10、第2実施例の自動変速機30、第3実施例の自動変速機40、第4実施例の自動変速機50、第5実施例の自動変速機60、第6実施例の自動変速機70によれば、前記変速段の切り替えは、前記2つのクラッチCのうち何れか1つのクラッチCが係合させられると共に、前記2つのクラッチCを除く何れか1つのクラッチCが解放させられることにより行われるものであるため、所謂クラッチ・トゥ・クラッチ変速を行う実用的な態様の自動変速機10等を簡単な加工により製造することができる。
前記第1実施例の自動変速機10、第2実施例の自動変速機30、第3実施例の自動変速機40、第4実施例の自動変速機50、第5実施例の自動変速機60によれば、3つの遊星歯車装置22、24、26(乃至42)と、6つの前記クラッチCとを、備え、前記複数の回転要素は、前記3つの遊星歯車装置22等それぞれにおけるサンギヤS、キャリアCA、及びリングギヤRを含んで構成されるものであり、前記複数の変速段は、それぞれ前記6つのクラッチCのうち何れか4つのクラッチCが係合させられると共に残り2つのクラッチCの解放により成立させられるものであるため、実用的な態様の自動変速機10等を簡単な加工により製造することができる。
前記第1実施例の自動変速機10、第5実施例の自動変速機60によれば、複数の遊星歯車装置22等を備え、各遊星歯車装置22等のサンギヤS、キャリアCA、及びリングギヤRがそれぞれ独立に前記回転要素を構成するものであるため、実用的な態様の自動変速機10等を簡単な加工により製造することができる。
前記第1実施例の自動変速機10によれば、何れもシングルピニオン型の第1遊星歯車装置22、第2遊星歯車装置24、及び第3遊星歯車装置26と、前記第2遊星歯車装置24のサンギヤS2に連結された入力回転要素としての入力軸12と、前記第1遊星歯車装置22のリングギヤR1と前記第2遊星歯車装置24のリングギヤR2との間を選択的に連結させる第1クラッチC1と、前記第1遊星歯車装置22のキャリアCA1と前記第2遊星歯車装置24のリングギヤR2との間を選択的に連結させる第2クラッチC2と、前記第1遊星歯車装置22のリングギヤR1と前記第3遊星歯車装置26のサンギヤS3との間を選択的に連結させる第3クラッチC3と、前記第1遊星歯車装置22のキャリアCA1と前記第3遊星歯車装置26のキャリアCA3との間を選択的に連結させる第4クラッチC4と、前記第2遊星歯車装置24のキャリアCA2と前記第3遊星歯車装置26のサンギヤS3との間を選択的に連結させる第5クラッチC5と、前記入力軸12と前記第3遊星歯車装置26のキャリアCA3との間を選択的に連結させる第6クラッチC6と、前記第3遊星歯車装置26のリングギヤR3に連結された出力回転要素としての出力歯車14とを、含み、前記第1遊星歯車装置22のサンギヤS1が前記変速機ケース28に連結されたものであるため、実用的な態様の自動変速機10を簡単な加工により製造することができる。
前記第2実施例の自動変速機30によれば、何れもシングルピニオン型の第1遊星歯車装置22、第2遊星歯車装置24、及び第3遊星歯車装置26と、入力回転要素としての入力軸12と前記第2遊星歯車装置24のキャリアCA2との間を選択的に連結させる第1クラッチC1と、前記第1遊星歯車装置22のリングギヤR1と相互に連結された前記第2遊星歯車装置24のサンギヤS2及び前記第3遊星歯車装置26のキャリアCA3との間を選択的に連結させる第2クラッチC2と、前記第1遊星歯車装置22のキャリアCA1と前記第2遊星歯車装置24のキャリアCA2との間を選択的に連結させる第3クラッチC3と、前記第1遊星歯車装置22のリングギヤR1と前記第3遊星歯車装置26のリングギヤR3との間を選択的に連結させる第4クラッチC4と、前記第1遊星歯車装置22のキャリアCA1と前記第3遊星歯車装置26のリングギヤR3との間を選択的に連結させる第5クラッチC5と、前記入力軸12と前記第3遊星歯車装置26のサンギヤS3との間を選択的に連結させる第6クラッチC6と、前記第2遊星歯車装置24のリングギヤR2に連結された出力回転要素としての出力歯車14とを、含み、前記第1遊星歯車装置22のサンギヤS1が前記変速機ケース28に連結されたものであるため、実用的な態様の自動変速機30を簡単な加工により製造することができる。
前記第3実施例の自動変速機40によれば、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置22、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置24、及びダブルピニオン型の第3遊星歯車装置42と、入力回転要素としての入力軸12と前記第1遊星歯車装置22のキャリアCA1との間を選択的に連結させる第1クラッチC1と、前記第1遊星歯車装置22のキャリアCA1と前記第3遊星歯車装置42のリングギヤR4との間を選択的に連結させる第2クラッチC2と、前記第2遊星歯車装置24のリングギヤR2と前記第3遊星歯車装置42のリングギヤR4との間を選択的に連結させる第3クラッチC3と、前記第2遊星歯車装置24のリングギヤR2と前記第3遊星歯車装置42のサンギヤS4との間を選択的に連結させる第4クラッチC4と、相互に連結された前記第1遊星歯車装置22のサンギヤS1及び第2遊星歯車装置24のキャリアCA2と前記第3遊星歯車装置42のサンギヤS4との間を選択的に連結させる第5クラッチC5と、前記入力軸12と前記第2遊星歯車装置24のサンギヤS2との間を選択的に連結させる第6クラッチC6と、前記第1遊星歯車装置22のリングギヤR1に連結された出力回転要素としての出力歯車14とを、含み、前記第3遊星歯車装置42のキャリアCA4が前記変速機ケース28に連結されたものであるため、実用的な態様の自動変速機42を簡単な加工により製造することができる。
前記第4実施例の自動変速機50によれば、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置22、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置24、及びダブルピニオン型の第3遊星歯車装置42と、入力回転要素としての入力軸12と前記第1遊星歯車装置22のキャリアCA1との間を選択的に連結させる第1クラッチC1と、前記第1遊星歯車装置22のキャリアCA1と前記第2遊星歯車装置24のキャリアCA2との間を選択的に連結させる第2クラッチC2と、相互に連結された前記第1遊星歯車装置22のサンギヤS1及び前記第3遊星歯車装置42のリングギヤR4と前記第2遊星歯車装置24のリングギヤR2との間を選択的に連結させる第3クラッチC3と、前記第2遊星歯車装置24のリングギヤR2と前記第3遊星歯車装置42のサンギヤS4との間を選択的に連結させる第4クラッチC4と、前記第2遊星歯車装置24のキャリアCA2と前記第3遊星歯車装置42のサンギヤS4との間を選択的に連結させる第5クラッチC5と、前記入力軸12と前記第3遊星歯車装置42のキャリアCA4との間を選択的に連結させる第6クラッチC6と、前記第1遊星歯車装置22のリングギヤR1に連結された出力回転要素としての出力歯車14とを、含み、前記第2遊星歯車装置24のサンギヤS2が前記変速機ケース28に連結されたものであるため、実用的な態様の自動変速機50を簡単な加工により製造することができる。
前記第5実施例の自動変速機60によれば、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置22、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置24、及びダブルピニオン型の第3遊星歯車装置42と、入力回転要素としての入力軸12と前記第1遊星歯車装置22のキャリアCA1との間を選択的に連結させる第1クラッチC1と、前記第1遊星歯車装置22のキャリアCA1と前記第2遊星歯車装置24のキャリアCA2との間を選択的に連結させる第2クラッチC2と、前記第1遊星歯車装置22のサンギヤS1と前記第2遊星歯車装置24のリングギヤR2との間を選択的に連結させる第3クラッチC3と、前記第1遊星歯車装置22のサンギヤS1と前記第3遊星歯車装置42のリングギヤR4との間を選択的に連結させる第4クラッチC4と、前記第2遊星歯車装置24のリングギヤR2と前記第3遊星歯車装置42のサンギヤS4との間を選択的に連結させる第5クラッチC5と、前記第2遊星歯車装置24のキャリアCA2と前記第3遊星歯車装置42のサンギヤS4との間を選択的に連結させる第6クラッチC6と、前記第1遊星歯車装置22のリングギヤR1に連結された出力回転要素としての出力歯車14とを、含み、前記第2遊星歯車装置24のサンギヤS2が前記変速機ケース28に連結されたものであるため、実用的な態様の自動変速機60を簡単な加工により製造することができる。
前記第6実施例の自動変速機70によれば、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置72及びシングルピニオン型の第2遊星歯車装置24と、入力回転要素としての入力軸12と前記第1遊星歯車装置72のキャリアCA5との間を選択的に連結させる第1クラッチC1と、前記入力軸12と相互に連結された前記第1遊星歯車装置72のサンギヤS5及び前記第2遊星歯車装置24のサンギヤS2との間を選択的に連結させる第2クラッチC2と、前記第1遊星歯車装置72のキャリアCA5と前記第2遊星歯車装置24のリングギヤR2との間を選択的に連結させる第3クラッチC3と、相互に連結された前記第1遊星歯車装置72のサンギヤS5及び前記第2遊星歯車装置24のサンギヤS2と前記第2遊星歯車装置24のリングギヤR2との間を選択的に連結させる第4クラッチC4と、前記第1遊星歯車装置72のリングギヤR5に連結された出力回転要素としての出力歯車14とを、含み、前記第2遊星歯車装置24のキャリアCA2が前記変速機ケース28に連結されたものであるため、実用的な態様の自動変速機70を簡単な加工により製造することができる。
前記第1実施例の自動変速機10、第2実施例の自動変速機30、第4実施例の自動変速機50、及び第5実施例の自動変速機60によれば、3つの遊星歯車装置22、24、26(乃至42)のギヤ比ρ1、ρ2、ρ3が何れも等しいものであるため、自動変速機10等に用いられる遊星歯車装置22等を共通化できると共に、各変速段のギヤ比に関して実用的な態様のギヤ比を実現できる。
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。