WO2013065789A1 - 弾性表面波センサ - Google Patents
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Abstract
Description
本願は、2011年11月1日に出願された特願2011-240492号、2011年11月1日に出願された特願2011-240493号、及び2011年12月22日に出願された特願2011-281611号、に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
この特許文献1においては、圧電性基板と、前記圧電性基板の表面上に所定のパターンで形成され弾性表面波の送信を行う送信電極部と、前記圧電性基板の表面上に所定のパターンで形成され前記弾性表面波の受信を行う受信電極部と、を含む送受信電極部と、前記送信電極部と前記受信電極部との間に形成され、検体である液体が導入される検出領域と、前記送受信電極部を外部から密閉するよう覆う封止構造と、を備える弾性表面波センサが開示されている。この弾性表面波センサは、前記検出領域に導入された検体である液体に応じて送信電極部から受信電極部への弾性表面波の伝搬特性が変化する。また、この弾性表面波センサにおいては、前記送信電極部と前記検出領域との間及び前記検出領域と前記受信電極部との間のうちの少なくとも一方に金属により形成され、前記弾性表面波のエネルギーを前記圧電性基板の表面に集中させるためのダミー電極部を備える。
この特許文献1においては、圧電性基板上に、送信電極部を構成するIDTと受信電極部を構成するIDTとの間に、検体である液体が導入される検出領域(センサ表面となる領域)を備えた弾性表面波センサが開示されている。この弾性表面波センサでは、滴下された液体試料による検査領域の表面弾性波の伝搬速度(または位相)の変化量を測定することで、液体試料に検体が含まれているか否か、検体の濃度等を検出する。
そのため、センサ表面は剥き出しの構造をとる必要があり、表面に傷などの損傷が発生しやすく、簡易に測定できないという問題があった。
また、滴下される溶液が確実にセンサ表面を覆い隠すことが、測定の精度を十分に確保するために要請されるが、溶液を滴下する方法ではこの要請に応えることができないという問題もあった。
また、滴下される溶液が所望の測定時間中に揮発などによって維持できないという問題もあった。
また、特許文献1記載の技術では、封止構造を設けるため、製造コストがかかるという問題があった。
また、特許文献1記載の技術では、送信電極と受信電極間の幅、及び検出領域の幅が長い場合、検体の濃度が高い液体試料を検出領域に滴下すると、センサ面と検体との反応が飽和する。反応が飽和した場合、表面弾性波伝播損失が大きくなるため、表面弾性波の振幅が小さくなり、あるいは0になる。表面弾性波の振幅が0になった場合、弾性表面波センサは、液体試料中の検体を検出が困難になるという課題があった。
また、本発明は、製造コストを削減できる弾性表面波センサを提供する。
また、本発明は、検体の検出が容易な弾性表面波センサを提供することを目的としている。
本発明の一態様の弾性表面波センサにおいては、前記多孔性基材は、平面視において前記検出領域に重ならない部分を有することが好ましい。
本発明の一態様の弾性表面波センサにおいては、前記多孔性基材は、目的物と反応する物質を含む反応層または目的物以外を除去するフィルタ層のうち少なくとも1つの層を備えることが好ましい。
本発明の一態様の弾性表面波センサにおいては、前記電極は2対の電極対であって、前記検出領域は、前記2対の電極のうち一方の電極対と電気的に接続する短絡型反応領域と、前記2対の電極のうち他方の電極対と電気的に接続しない開放型反応領域と、を有することが好ましい。
本発明の一態様の弾性表面波センサにおいては、前記電極は複数の電極対であって、複数の前記電極対各々の間に設けられた前記多孔性基材に、目的物と反応する異なる反応物をそれぞれ有することが好ましい。
本発明の一態様の弾性表面波センサにおいては、前記多孔性基材は、前記圧電素子に接しない部分を有することが好ましい。
本発明の一態様の弾性表面波センサにおいては、前記多孔性基材は、目的物と反応する物質を含む反応層または目的物以外を除去するフィルタ層のうち少なくとも1つの層を備えることが好ましい。
本発明の一態様の弾性表面波センサにおいては、前記圧電素子は、前記電極と電気的に接続しない領域を有する第1の部分と、前記電極と電気的に接続する薄膜を有する第2の部分とを備えることが好ましい。
本発明の一態様の弾性表面波センサにおいては、前記電極は複数の電極対であって、複数の前記電極対各々の間に設けられた多孔性基材に、目的物と反応する反応物をそれぞれ有することが好ましい。
本発明の一態様の弾性表面波センサにおいては、前記多孔性基材は、前記弾性表面波の伝播方向に、液体が毛細管現象により浸潤することが好ましい。
本発明の一態様の弾性表面波センサにおいては、前記多孔性基材は、目的物と反応する異なる反応物を溶液の浸潤する方向にそれぞれ分散して形成されることが好ましい。
本発明の一態様の弾性表面波センサにおいては、前記多孔性基材は、第1領域と、第2領域と、を有し、前記第1領域と前記第2領域とが、前記弾性表面波の伝播方向に交互に形成され、前記第1領域の浸潤速度が、前記第2領域の浸潤速度より速いことが好ましい。
本発明の一態様の弾性表面波センサにおいては、前記多孔性基材は、複数の前記第1領域における前記弾性表面波の伝播方向の長さが各々異なることが好ましい。
本発明の一態様の弾性表面波センサにおいては、前記多孔性基材は、複数の前記第2領域における前記弾性表面波の伝播方向の長さが各々異なることが好ましい。
本発明によれば、製造コストを削減できる。
本発明によれば、毛細管現象を有する多孔性基材を、検査領域に設けたため、検査領域全体を一時に濡らさない。このため、溶液中の検体の濃度が濃い場合においても、検出信号が飽和せず、検体の検出が容易となる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1A及び図1Bは、第1実施形態に係るSAWセンサの概略的な模式図である。
図1Aは、SAWセンサ1の概略的な上面図であり、図1BはSAWセンサ1を切断面Aから見た概略的な断面図である。
SAWセンサ1は、圧電素子基板10(圧電素子)、送信電極11-1a、送信電極11-1b、受信電極11-2a、受信電極11-2b、反応領域薄膜12、多孔性基材13、封止構造14-1、及び封止構造14-2を含んで構成される。
圧電素子基板10は、SAWを伝播する基板である。圧電素子基板10は、水晶基板である。
また、受信電極11-2a、及び受信電極11-2bは、受信側電極部を構成する櫛歯状のパターンにより形成された金属電極である。以下、受信電極11-2a、及び受信電極11-2bを総称してIDT11-2と呼ぶ。
IDT11-1、及びIDT-11-2(総称してIDT11と呼ぶ)は、圧電素子基板10上に構成される電極である。IDT11は、対向した一対の電極である。IDT11は、例えば、アルミニウム薄膜によって構成される。
圧電素子基板10と反応領域薄膜12との重なる部分が、検体である液体が導入される検出領域(センサ表面となる領域)となる。
多孔性基材13は、滴下された溶液を、毛細管現象により多孔性基材13内及び反応領域薄膜12の表面に移送し、保持する。
つまり、SAWセンサ1は、滴下された溶液を多孔性基材13内部及び反応領域薄膜12の表面に保持する。
溶液中の抗原は、反応領域薄膜12上に担持された抗体と反応し、反応領域薄膜12上の特定領域に抗原抗体結合物を生成する。
すなわち、反応領域薄膜12では、その表面に抗原を含んだ液体試料を滴下することにより、反応領域薄膜12上に担持された抗体と、液体試料中の抗原との間で抗原抗体反応が起こる。その結果、反応領域薄膜12上には、反応領域薄膜12上に担持した抗体と抗原が結合した抗原抗体結合物が生成する。なお、反応領域薄膜12の材料としては、金以外であっても抗体を担持できる材料であれば、様々な材料が採用される。
なお、図1A及び図1Bに示すように、多孔性基材13は、反応領域薄膜12よりも大きいため、反応領域薄膜12からはみ出しているが、多孔性基材13は、必ずしも図示したように反応領域薄膜12からはみ出さなくてもよく、反応領域薄膜12と平面視において同じ面積になるように重ねても、或いは平面視において反応領域薄膜12の内側に位置するように面積を小さく配置してもよい。多孔性基材13が、反応領域薄膜12の特定領域を覆うように配置されていればよい。
封止壁15-1は、IDT11-1を覆う壁であり、圧電素子基板10上に矩形状に形成される。封止壁15-1は、例えば、感光性樹脂により構成される。
また、封止天井16-1は、封止壁15-1の上側を塞ぎ、IDT11-1を外部から密閉するための天井である。封止天井16-1は、封止天井16-1の平面領域内に封止壁15-1が収まるように封止壁15-1の上側に配置される。封止天井16-1は、例えば、ガラス基板で構成される。なお、封止壁15-1と封止天井16-1との間には、不図示の接着層が設けられ、封止壁15-1と封止天井16-1との間を密封して接着する。
封止構造14-1は、IDT11-1を外部から密閉してIDT11-1上に空間を形成するように覆い、IDT11-1が液体と接触することを防ぐ封止構造である。
これら封止構造14-1、及び封止構造14-2により、検出領域における雰囲気(例えば、湿度)の変化があったとしても、IDT11-1、及びIDT11-2は、その影響を受けにくくなる。
また、図1A及び図1Bでは、多孔性基材13を封止構造14-1、及び封止構造14-2の封止天井と重なるように配置する構造が示されているが、多孔性基材13は、反応領域薄膜12が配置されるセンサの検出領域を覆うように配置されていれば、封止天井と重なるように配置する必要はない。もっとも、多孔性基材13を封止天井と重ならないように配置する場合であって、多孔性基材13が表面弾性波の進む方向に大きくずれた(目ズレした)としても、封止構造14-1、及び封止構造14-2が、それぞれIDT11-1、及びIDT11-2を保護するので、IDTが溶液で濡れることはなく、IDTの弾性波送信動作または弾性波受信動作に影響を与えることはない。
図2において、図1A及び図1Bと同様な構成については同じ符号を付し、その説明を省略する。なお、図2において、図1A及び図1Bに示した反応領域薄膜12、封止構造14-1、及び封止構造14-2は省略している。
IDT11-1は、後述するバースト回路22から、送信信号であるバースト信号が入力される。IDT11-1は、入力されたバースト信号に対応するSAWを圧電素子基板10の表面に励起する。IDT11-2は、圧電素子基板10の表面を伝播してきたSAWを電気信号に変換する。IDT11-2は、受信した電気信号(検出信号と呼ぶ)を後述する位相・振幅検出回路23に出力する。
なお、符号Sを付した領域は、溶液が滴下される多孔性基材13の一部を表す。領域Sは、IDT11-1とIDT11-2とが配置された方向に垂直方向にあって、かつ、多孔性基材13の外側に延びる方向に形成された多孔性基材13の一部の領域である。
SAWセンサ1の測定者が、例えば、図2に示すマイクロピペット17を用いて溶液をこの領域Sに溶液を滴下すると、多孔性基材13は、滴下された溶液を、毛細管現象により多孔性基材13内及び反応領域薄膜12の表面に移送し、保持する。
つまり、多孔性基材13が、平面視において検出領域に重ならない部分を有していても、多孔性基材13が溶液を反応領域薄膜12の表面に移送し、保持することで、反応領域薄膜12の特定領域、例えば、表面(検出領域)全体を、滴下された溶液により濡らすことができる。
交流信号源21は、例えば、250MHzの正弦波交流信号を発生する。交流信号源21は、生成した交流信号をバースト回路22に出力する。
バースト回路22は、交流信号源21から入力された交流信号を、周期的なバースト信号に変換する。ここで、バースト信号の周期は、SAWが圧電素子基板10の表面のIDT11-1からIDT11-2までの間を進行するのに要する時間より大きくなるようにする。バースト回路22は、生成したバースト信号をSAWセンサ1のIDT11-1及び位相・振幅検出回路23に出力する。
なお、バースト回路22はSAWセンサ1から出力される信号に含まれる主とする信号以外の直達波や他のバルク波などを含むノイズ等の妨害信号が十分に小さい場合には必要なく、連続波を用いてよい。
PC24は、位相・振幅検出回路23から入力された位相変化と振幅の減衰量に基づいて、表面の抗体と特異的に反応した溶液中の抗原の量と種類を判定し、判定結果を表示する。
具体的には、SAWセンサ1の測定者は、まず、抗原を含まない溶媒を図2に示す領域Sに滴下し、反応領域薄膜12上を溶媒で濡らし、SAWの伝播時間による位相変化を測定する(ブランクテスト)。次に、SAWセンサ1の測定者は、SAWセンサ1を他のサンプル(SAWセンサ1)に取り替えて、抗原を含んだ溶液を、そのサンプルの図2に示す領域Sに滴下し、その伝播時間による位相変化を測定する。溶媒に対応する位相変化と溶液に対応する位相変化との差が、抗原抗体反応によって反応領域薄膜12に生成した抗原抗体結合物に起因する位相の変化量となる。PC24は、ブランクテストをした時の位相変化をメモリ内に記憶しておき、この位相変化と、溶液を滴下して得られる位相変化との差を算出することで、位相の変化量を算出する。PC24は、位相の変化量に基づいて、溶液に含まれる抗原を特定する。振幅の減衰量についても同様であり、振幅の減衰量の変化量に基づいて、溶液に含まれる抗原を特定する。
なお、測定者は、利用する溶媒でのSAWの位相変化が予め判明していれば、溶媒でのSAWの位相変化を測定する必要はない。
また、利用する溶媒でのSAWの伝播時間が予め判明していない場合でも、抗原を含んだ溶液の滴下直後の位相と振幅とを基準として、それ以降の変化の差を取ることで溶液中の抗原の量と種類とを判定し、判定結果を表示することも可能である。
これにより、SAWセンサ1は、滴下される試料溶液が多孔性基材13内に保持されるため、溶液自体の揮発を抑制することができる。また、SAWセンサ1は、滴下される溶液を確実に反応領域薄膜12の予め定めた特定の領域と接触させることができ、正確な測定が可能となる。また、SAWセンサ1は、圧電素子基板10上に直接溶液を滴下しないため、測定者が溶液を滴下するときに、マイクロピペット等の滴下器具が反応領域薄膜12(センサ表面)に直接接触し、センサ表面に傷などの損傷を発生させることがなくなり、簡易に正確な測定が可能となる。
また、液体を表面反応領域上に保持することができるため、検体である液体が導入された後、SAWセンサ1を縦に或いは横にして振動等によって液体が保持されなくなったりする問題や、検体に触れてしまうなどの問題も発生しない。
以下、図面を参照しながら本発明の第2実施形態について詳しく説明する。
なお、以下に示す実施形態の説明では、図面において前述と同様な構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
第2実施形態では、多孔性基材13が、フィルタ機能、及び反応場の機能を持つ物質で構成された層を有する場合について説明をする。
図4A及び図4Bは、第2実施形態に係るSAWセンサ1Bの構成を示す模式図である。なお、図4A及び図4Bにおいて、図1A、図1B、及び図2と同一の構成については同じ符号を付し、その説明を省略する。
図4Aは、SAWセンサ1Bの概略的な上面図である。図4BはSAWセンサ1BをC断面から見た概略的な断面図である。図4A及び図4Bに示すように、SAWセンサ1Bは、圧電素子基板10、IDT11、反応領域薄膜12、多孔性基材13B、封止構造14-1、及び封止構造14-2を含んで構成される。
多孔性基材13Bは、図4Bに示すように、フィルタ層13B-1、反応層13B-2、及び保水層13B-3を含んで構成され、反応領域薄膜12の上にフィルタ層13B-1、反応層13B-2、及び保水層13B-3の順に重ねられるように配置される。
なお、図4Aでは、最上層の保水層13B-3が示されており、多孔性基材13Bの面積が、図1A及び図1Bと異なり、反応領域薄膜12と同じ面積となる場合を示している。もちろん、上述の通り、多孔性基材13と反応領域薄膜12との重なる部分によって面積が定められる特定の領域が形成される限り、両者が同じ面積である必要はない。
反応層13B-2には、予め試料と反応する反応物が分散されて保持されている。反応層13B-2は、細孔を有するセルロースやニトロセルロース等の材料から構成される層である。反応層13B-2では、フィルタ層13B-1を透過し反応層13B-2に移送された反応物と、予め反応層13B-2に分散された、試料と反応する反応物とが反応する。反応層13B-2で生成した生成物は、溶液の浸潤に従って、保水層13B-3へ移送される。例えば、目的物質が抗原である場合は、反応層13B-2には第1抗体を分散させておく。反応層13B-2で生成した抗原抗体結合物は溶液の浸潤に従って、保水層13B-3へ移送される。
例えば、目的物質が抗原である場合は、反応領域薄膜12には、第2抗体を担持させておく。保水層13B-3から移送された抗原と第1抗体との抗原抗体複合体は、反応領域薄膜12上の第2抗体と反応する。
また、多孔性基材13Bは、試料と反応する物質を含む反応層13B-2を備える。これにより、試料が単独で反応領域薄膜12に付着する場合に比べて、検出する試料の質量が大きくなる。従って、SAWセンサ1Bは、試料が単独で反応領域薄膜12に付着する場合に比べて、より大きな信号の変化を検出することができる。その結果、正確な測定が可能となる。
なお、フィルタ層13B-1及び反応層13B-2を配置する順番は逆でもかまわない。また、反応層13-B2及び保水層13-B3に代えて、反応と保水両方の機能を持つ一枚の層膜が採用されてもよい。
以下、図面を参照しながら本発明の第3実施形態について詳しく説明する。
第3実施形態では、反応領域薄膜12が導電性及び絶縁性を持つ2つの部分によって構成される場合について説明をする。
図5A及び図5Bは、第3実施形態に係るSAWセンサ1Cの構成を示す模式図である。なお、図5A及び図5Bにおいて、図1A、図1B、図2、図4A、及び図4Bと同一の構成については同じ符号を付し、その説明を省略する。
図5AはSAWセンサ1Cを上面から見た構成を示す模式図である。図5BはSAWセンサ1CをD断面から見た構成を示す模式図である。図5A及び図5Bに示すように、SAWセンサ1Cは、圧電素子基板10、多孔性基材13、送信電極61A-1a、送信電極61A-1b、受信電極61A-2a、受信電極61A-2b(これらを総称してIDT61Aと呼ぶ)、送信電極61B-1a、送信電極61B-1b、受信電極61B-2a、受信電極61B-2b(これらを総称してIDT61Bと呼ぶ)、短絡型反応領域62-1、開放型反応領域62-2、封止構造14-1、及び封止構造14-2を含んで構成される。
図5Bに示すように、短絡型反応領域62-1は、圧電素子基板10上に設けられている。短絡型反応領域62-1は、金などの導電性を持つ薄膜から構成される薄膜である。短絡型反応領域62-1は、電気的に接地されているIDT61A-1a及びIDT61A-2aと電気的に接触している。
また、開放型反応領域62-2は、圧電素子基板10上に設けられており、圧電素子基板10の表面における領域である。
短絡型反応領域62-1と開放型反応領域62-2は、IDT61AとIDT61Bが配置される方向に、略平行に配置される。短絡型反応領域62-1と開放型反応領域62-2は、それぞれ矩形形状であり、互いに接している。短絡型反応領域62-1の面積と開放型反応領域62-2の面積の合計は、多孔性基材13Bの面積と略同一である。もちろん、上述の通り、多孔性基材13と短絡型反応領域62-1及び開放型反応領域62-2との重なる部分によって面積が定められる特定の領域が形成される限り、両者が同じ面積である必要はない。また、短絡型反応領域62-1の面積と開放型反応領域62-2の面積は略等しいが、同じであってもよく、ある割合で異なる面積となっていてもよい。
なお、ここでは反応領域を矩形形状として図示しているが、反応領域の形状は矩形形状に限定される必要はなく、他の形状であってもよい。
以下、図面を参照しながら本発明の第4実施形態について詳しく説明する。第4実施形態では、SAWセンサ1Dが3つの測定チャネル(チャネルA、チャネルB、チャネルC)を備え、3つの測定チャネルに対応する多孔性基材が、それぞれ異なる抗体を分散させた領域を有する場合について説明をする。
図6に示すように、SAWセンサ1Dは、圧電素子基板10、送信電極71A-1a、送信電極71A-1b、受信電極71A-2a、受信電極71A-2b(総称してIDT71Aと呼ぶ)、送信電極71B-1a、送信電極71B-1b、受信電極71B-2a、受信電極71B-2b(総称してIDT71Bと呼ぶ)、送信電極71C-1a、送信電極71C-1b、受信電極71C-2a、受信電極71C-2b(総称してIDT71Cと呼ぶ)、反応領域薄膜12(図6において不図示)、多孔性基材73、封止構造14-1、及び封止構造14-2を含んで構成される。
多孔性基材73は、それぞれ異なる一次抗体を分散させた領域73A、領域73B、領域73Cを含んで構成される。
IDT71A、IDT71B、IDT71Cは、チャネルA、チャネルB、チャネルCを伝播するSAWを生成、受信する。
その結果、SAWの伝達時間はチャネル毎に異なる。SAWセンサ1Dは、チャネル毎に異なる伝達時間を示す。
なお、第4実施形態では、チャネル数を3としたが、チャネル数はいくつでもよい。
また、IDTの材料としては、アルミニウム以外であっても導電性の高い金属であれば、他の材料が採用されてもよい。
なお、上記の第1~第4実施形態では、反応領域薄膜は、抗体が配置された構造を有するだけではなく、抗原が配置された構造が採用されてもよく、或いは、検知しようとする物に特異的に反応する材料又は構造によって反応領域薄膜が構成されていれば、反応領域薄膜は上記の実施形態に限定されない。
また、上記の第1~第4実施形態では、反応領域薄膜12は抗体を担持し、抗原を測定したが、抗原を測定するのでなければ、反応領域薄膜12を設ける必要は無い。
また、IDT11の電極構造について、図示した構造に限定されることなく、例えば、電極構造において、弾性表面波の波長をλとして櫛形電極の幅をλ/4、λ/8としてもよいし、或いは電極構造を一方向性電極(FEUDT:Floating Electrode Uni Directional Transducer)等にしてもよい。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
以下に示す各実施形態では、前述と同様な構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
圧電素子基板110は、SAWを伝播する基板である。圧電素子基板110は、水晶基板である。
IDT111(Inter Digital Transducer)は、圧電素子基板110上に構成される電極である。IDT111は、櫛形の電極である。IDT111は、対向した一対の電極である。IDT111は、アルミニウム薄膜によって構成される。
多孔性基材113は、反応領域薄膜112に接して設けられる基材である。多孔性基材113は、例えば、ニトロセルロースなどの物質から構成される。多孔性基材113は、反応領域薄膜112を完全に覆い、尚且つIDT111と接触しないように固定される。多孔性基材113は、例えば、反応領域薄膜112の外部四隅を接着して固定される。多孔性基材113は、滴下された溶液を保持し、その内部、及び表面に溶液を浸潤させる。
符号Sを付した領域は、溶液が滴下される領域の一例である。多孔性基材113は、符号Sを付した領域に滴下された溶液を、毛細管現象により多孔性基材113内及び反応領域薄膜112の表面に移送し保持する。
ここで、バースト信号の周期は、SAWが圧電素子基板110の表面の送信電極111-1a、111-1b(図8A及び図8B)から受信電極111-2a、111-2bまでの間を進行するのに要する時間より大きくなるようにする。バースト回路22は、生成したバースト信号をSAWセンサ101及び位相・振幅検出回路23に出力する。
なお、バースト回路22はSAWセンサ101から出力される信号に含まれる主とする信号以外の直達波や他のバルク波などを含むノイズ等の妨害信号が十分に小さい場合には必要なく、連続波でよい。
PC24は、位相・振幅検出回路23から入力された位相変化と振幅変化に基づいて、表面の抗体と特異的に反応した溶液中の抗原の量と種類を判定し、判定結果を表示する。
なお、測定者は、利用する溶媒でのSAWの位相変化が予め判明していれば溶媒でのSAWの位相変化を測定する必要はない。
なお、PC24は、利用する溶媒でのSAWの伝播時間が予め判明していない場合でも、抗原を含んだ溶液の滴下直後の伝播時間と振幅を基準として、それ以後の変化の差を取ることで溶液中の抗原の量と種類を判定し、判定結果を表示するようにしてもよい。
反応領域薄膜112では、その表面に抗原を含んだ液体試料を滴下することにより、反応領域薄膜112上に担持された抗体と、液体試料中の抗原との間で抗原抗体反応が起こる。
その結果、反応領域薄膜112上には、反応領域薄膜112上に担持した抗体と抗原が結合した抗原抗体結合物が生成する。なお、反応領域薄膜112の材料としては、金以外であっても抗体を担持できる材料であれば、様々な材料が採用される。
以下、図面を参照しながら本発明の第6実施形態について詳しく説明する。
図9A及び図9Bは、第6実施形態に係るSAWセンサ101Aの概略的な模式図である。図9AはSAWセンサ101Aの概略的な上面図である。図9BはSAWセンサ101AをB断面から見た概略的な断面図である。図9A及び図9Bに示すように、SAWセンサ101Aは、圧電素子基板110、送信電極111-1a、111-1b、受信電極111-2a、111-2b(送信電極111-1a、111-1b、受信電極111-2a、111-2bを総称してIDT111と呼ぶ)、反応領域薄膜112、多孔性基材113及び疎水性基材114A-1、114A-2を含んで構成される。
第6実施形態では、多孔性基材113が、疎水性基材114A-1、114A-2に接着などによって接続され、疎水性基材114A-1、114A-2がIDT111の上面を覆うように配置された場合について説明をする。
ここで、溶液が浸潤しない材質とは、例えば、プラスチック(ポリエチレン、等)である。疎水性基材114A-1、114A-2は、図示するように多孔性基材113のIDT111側(IDT111に近い位置に配置されている)の対向する両辺に各々接続している。多孔性基材113に滴下された試料溶液は、毛細管現象により多孔性基材113の全体に渡って浸潤する。一方、疎水性基材114A-1、114A-2には、溶液が浸潤しないため、IDT111が溶液で濡れることはない。なお、多孔性基材113は、例えば、反応領域薄膜112の四隅を接着して固定される。
これにより、SAWセンサ101Aは、送信電極111-1a、111-1b及び受信電極111-2a、111-2bが溶液によって濡れることがなくなり、正確な測定が可能となる。また、送信電極111-1a、111-1b及び受信電極111-2a、111-2bの表面が疎水性基材114A-1、114A-2により覆われることにより、送信電極111-1a、111-1b及び受信電極111-2a、111-2bを保護することができる。
以下、図面を参照しながら本発明の第7実施形態について詳しく説明する。
第7実施形態では、多孔性基材113が、フィルタ機能、及び反応場の機能を持つ物質で構成された層を有する場合について説明をする。
図10A及び図10Bは、第7実施形態に係るSAWセンサ101Bの構成を示す模式図である。図10AはSAWセンサ101Bの概略的な上面図である。図10BはSAWセンサ101BをC断面から見た概略的な断面図である。図10A及び図10B示に示すように、SAWセンサ101Bは、圧電素子基板110、IDT111、反応領域薄膜112、多孔性基材113Bを含んで構成される。
多孔性基材113Bは、フィルタ層113B-1、反応層113B-2、及び保水層113B-3を含んで構成される。
反応層113B-2には、予め試料と反応する反応物が分散されて保持されている。反応層113B-2は、細孔を有するセルロースやニトロセルロース等の材料から構成される層である。反応層113B-2では、フィルタ層113B-1を透過し反応層113B-2に移送された反応物と、予め反応層113B-2に分散された、試料と反応する反応物とが反応する。反応層113B-2で生成した生成物は、溶液の浸潤に従って、保水層113B-3へ移送される。例えば、目的物質が抗原である場合は、反応層113B-2には第1抗体を分散させておく。反応層113B-2で生成した抗原抗体結合物は溶液の浸潤に従って、保水層113B-3へ移送される。
例えば、目的物質が抗原である場合は、反応領域薄膜112には、第2抗体を担持させておく。保水層113B-3から移送された抗原と第1抗体との抗原抗体複合体は、反応領域薄膜112上の第2抗体と反応する。
以下、図面を参照しながら本発明の第8実施形態について詳しく説明する。
第8実施形態では、反応領域薄膜112が導電性及び絶縁性を持つ2つの部分によって構成される場合について説明をする。
図11A及び図11Bは、第8実施形態に係るSAWセンサ101Cの構成を示す模式図である。図11AはSAWセンサ101Cを上面から見た構成を示す模式図である。図11BはSAWセンサ101CをD断面から見た構成を示す模式図である。図11A及び図11Bに示すように、SAWセンサ101Cは、圧電素子基板110、多孔性基材113、IDT161A-1a、161A-1b、161A-2a、161A-2b(これらを総称してIDT161Aと呼ぶ)、IDT161B-1a、161B-1b、161B-2a、161B-2b(これらを総称してIDT161Bと呼ぶ)、短絡型反応領域(第2の部分)162-1、及び開放型反応領域(第1の部分)162-2を含んで構成される。
開放型反応領域162-2は、圧電素子基板110上に設けられており、圧電素子基板110表面である。
短絡型反応領域162-1は、金などの導電性を持つ薄膜から構成される薄膜である。短絡型反応領域162-1は、電気的に接地されているIDT161A-1a及びIDT161A-2aと電気的に接触している。
以下、図面を参照しながら本発明の第9実施形態について詳しく説明する。第9実施形態では、SAWセンサ101Dが3つの測定チャネル(チャネルA、チャネルB、チャネルC)を備え、3つの測定チャネルに対応する多孔性基材172A、172B、172Cが、それぞれ異なる抗体を分散させた部分を有する場合について説明をする。
多孔性基材173は、それぞれ異なる一次抗体を分散させた領域173A、173B、173Cを含んで構成される。
IDT171A、171B、171Cは、チャネルA、チャネルB、チャネルCを伝播するSAWを生成、受信する。
なお、上記の第5~第9実施形態では、IDT111(含む161A、171A、171B、及び171C)は、アルミニウム以外であっても導電性の高い金属であれば、他の材料が採用されてもよい。
なお、上記の第5~第9実施形態では、反応領域薄膜は、抗体が配置された構造を有するだけでなく、抗原が配置された構造が採用されてもよく、また、検知しようとする物に特異的に反応する材料又は構造によって反応領域薄膜が構成されていれば、反応領域薄膜は上記の実施形態に限定されない。
なお、上記の第5~第9実施形態では、反応領域薄膜112は抗体を担持し、抗原を測定したが、抗原を測定するのでなければ、反応領域薄膜112を設ける必要は無い。
なお、上記の第5~第9実施形態では、IDT111は、電極構造について図示した構造に限定されることなく、例えば、λ/4、λ/8、一方向性電極(FEUDT:Floating electrode unidirectional transducers)等でもよい。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
以下に示す各実施形態では、前述と同様な構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
図13A及び図13Bは、本発明の第10実施形態で用いるSAWセンサ201を示す模式図である。図13Aは、SAWセンサ201の概略的な上面図であり、図13BはSAWセンサ201を切断面Aから見た概略的な断面図である。図13A及び図13Bに示すように、SAWセンサ201は、圧電素子基板210(圧電素子)、送信電極211-1a、送信電極211-1b、受信電極211-2a、受信電極211-2b、反応領域薄膜212、多孔性基材213、封止構造214-1、及び封止構造214-2を含んで構成される。また、図13Aにおいて、SAWセンサ201の長手方向(SAWの伝播方向)をx軸方向で表し、短手方向をy軸方向で表す。図13Bにおいて、SAWセンサ201の長手方向をx軸方向で表し、厚み方向をz軸方向で表す。
なお、図13A及び図13Bに示すように、多孔性基材213は、反応領域薄膜212と平面視において同じ面積になるように重ねても、或いは平面視において反応領域薄膜212の内側に位置するように面積を小さく配置してもよい。多孔性基材213が、反応領域薄膜212の特定領域を覆うように配置されていればよい。
以下、図面を参照しながら本発明の第11実施形態について説明する。第11実施形態では、多孔性基材が、それぞれ異なる抗体を分散させた場合について説明をする。なお、センス回路20は、第1実施形態で示した図3においてSAWセンサ201が、第11実施形態のSAWセンサ201aに置き換えた構成である。
以下、図面を参照しながら本発明の第12実施形態について説明する。第12実施形態では、多孔性基材が、溶液の浸潤速度が異なる領域を持つ場合について説明をする。
Claims (17)
- 弾性表面波を伝播する圧電素子と、
電気信号と表面弾性波との変換を行う電極と、
前記圧電素子に接触し、液体が浸潤する多孔性基材と、
を備えることを特徴とする弾性表面波センサ。 - 前記弾性表面波の伝播路に配置され、検体である液体が導入される検出領域と、 前記電極が液体と接触することを防ぐ封止構造と、
を備え、
前記多孔性基材は、前記検出領域に接触する
ことを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波センサ。 - 前記多孔性基材は、平面視において前記検出領域に重ならない部分を有することを特徴とする請求項2に記載の弾性表面波センサ。
- 前記多孔性基材は、目的物と反応する物質を含む反応層または目的物以外を除去するフィルタ層のうち少なくとも1つの層を備えることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の弾性表面波センサ。
- 前記電極は2対の電極対であって、
前記検出領域は、前記2対の電極のうち一方の電極対と電気的に接続する短絡型反応領域と、前記2対の電極のうち他方の電極対と電気的に接続しない開放型反応領域と、を有することを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の弾性表面波センサ。 - 前記電極は複数の電極対であって、複数の前記電極対各々の間に設けられた前記多孔性基材に、目的物と反応する異なる反応物をそれぞれ有することを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の弾性表面波センサ。
- 前記電極は、2対の電極対であって、
前記多孔性基材は、薄膜を介して前記圧電素子に接触し、前記多孔性基材に接続され、前記各電極に接する部分が疎水性基材からなることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波センサ。 - 前記多孔性基材は、前記圧電素子に接しない部分を有することを特徴とする請求項7に記載の弾性表面波センサ。
- 前記多孔性基材は、目的物と反応する物質を含む反応層または目的物以外を除去するフィルタ層のうち少なくとも1つの層を備えることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の弾性表面波センサ。
- 前記圧電素子は、前記電極と電気的に接続しない領域を有する第1の部分と、
前記電極と電気的に接続する薄膜を有する第2の部分と、
を備えることを特徴とする請求項7から請求項9のいずれか一項に記載の弾性表面波センサ。 - 前記電極は複数の電極対であって、
複数の前記電極対各々の間に設けられた多孔性基材に、目的物と反応する反応物をそれぞれ有することを特徴とする請求項7から請求項10のいずれか一項に記載の弾性表面波センサ。 - 前記弾性表面波の伝播路に配置され、検体である液体が導入される検出領域を備え、
前記多孔性基材は、前記検出領域に接触し、
液体が毛細管現象により前記多孔性基材に浸潤する
ことを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波センサ。 - 前記多孔性基材は、前記弾性表面波の伝播方向に、液体が毛細管現象により浸潤することを特徴とする請求項12に記載の弾性表面波センサ。
- 前記多孔性基材は、目的物と反応する異なる反応物を溶液の浸潤する方向にそれぞれ分散して形成されることを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の弾性表面波センサ。
- 前記多孔性基材は、第1領域と、第2領域と、を有し、前記第1領域と前記第2領域とが、前記弾性表面波の伝播方向に交互に形成され、前記第1領域の浸潤速度が、前記第2領域の浸潤速度より速いことを特徴とする請求項12から請求項15のいずれか一項に記載の弾性表面波センサ。
- 前記多孔性基材は、複数の前記第1領域における前記弾性表面波の伝播方向の長さが各々異なることを特徴とする請求項15に記載の弾性表面波センサ。
- 前記多孔性基材は、複数の前記第2領域における前記弾性表面波の伝播方向の長さが各々異なることを特徴とする請求項15又は請求項16に記載の弾性表面波センサ。
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