WO2011078294A1 - 医療用ステープラ - Google Patents

Abstract

　医療用ステープラは、打ち出し部（５）と、アンビル（１１）と、フォーミングプレート（８）と、を備える。打ち出し部（５）から、ステープル（１２）が打ち出される。アンビル（１１）は、打ち出し部（５）の上側に配置され、ステープル（１２）の左右方向の中央部（１２ａ）を下方から支持する。フォーミングプレート（８）は、アンビル（１１）の上側に上下動可能に配置される。フォーミングプレート（８）の下端側の左右両側には、下側に突出する一対の脚片（２０）が設けられる。一対の脚片（２０）の間に、成形溝（２１）が形成される。フォーミングプレート（８）には、脚片（２０）を左右方向に撓み可能にする脆弱部（２５，２６，３３，３４）が設けられる。

Description

医療用ステープラ

　本発明は、ステープルの脚部を安定的に略直角に折り曲げする医療用ステープラに関する。 

　一般に、外科手術等において傷口を縫合する手段として縫合糸のほかに医療用ステープルが使用されている。この医療用ステープルは、クラウン部とその両側端から弯曲部を介して略直角に折り曲った針先部とから構成されている。医療用ステープラは、ステープラ本体と、ステープラ本体に対して回動可能な操作レバーとからなる。ステープラ本体は、複数の医療用ステープルを収納したヘッド部と、先頭のステープルのクラウン部の両側を押し込んで内側に折り曲げるフォーミングプレートと、を備える。操作レバーを強く握り込んで回動させると、フォーミングプレートの下端で先頭のステープルのクラウン部の両側が押されることによって、針先部が内側に折り曲げられながら皮膚内に刺し込まれて、傷口が縫合される。

　特許文献１に示されるように、ステープルの折り曲げは、フォーミングプレートの先端（下端）側に形成された成形溝と打ち出し部に設けられたアンビルとによって行われる。成形溝は主に溝底部とその両側の溝壁部とから構成される。溝底部に対して溝壁部は直角に形成されている。アンビルは水平に、つまり打ち込み方向と直交するように設けられている。はじめに、先頭のステープルがアンビル上に送られる。このとき、ステープルのクラウン部の両側はアンビルからはみ出ている。次に、操作レバーによりフォーミングプレートを打ち出し方向に押し出すことにより、ステープルのアンビル両端からはみ出した部分が溝壁部によって下方に押される。この結果、クラウン部の両側部分が内側に略直角に折り曲げられ、傷口が縫合される。傷口縫合後は、フォーミングプレートを初期位置にリターンさせつつ、アンビルをステープルと皮膚との間から外す。

　ところで、ステープルの脚片はできるだけ直角に折り曲げるのが好ましい。そのためにはフォーミングプレートの溝壁部とアンビルとの間の間隔をできるだけ小さくすればよい。しかしながら、ステープルには元の形状に戻ろうとするスプリングバックが発生するため、ステープルの折り曲げ部と溝壁部との間に強い摩擦力が発生する。したがって、溝壁部とアンビルとの間の間隔が小さすぎると、ステープルの折り曲げが終了した後にフォーミングプレートが初期位置にリターンすることができないという問題が発生する。そこで、従来のステープラにおいては、ステープルの脚片の曲げ角度が直角よりも大きくならざるを得なかった。

米国特許第５０３８９９１号明細書

　本発明の一以上の実施例は、ステープルの脚片を安定的により直角に近く折り曲げることができるとともに、フォーミングプレートを円滑確実にリターンさせることができる医療用ステープラを提供する。

　本発明の一以上の実施例によれば、医療用ステープラは、ステープル１２が打ち出される打ち出し部５と、打ち出し部５の上側に配置されステープル１２の中央部１２ａを支持するためのアンビル１１と、アンビル１１の上側に上下動可能に配置されたフォーミングプレート８と、を備える。フォーミングプレート８は、フォーミングプレート８の下端側の左右両側に設けられ下側に突出する一対の脚片２０と前記一対の脚片２０の間に形成された成形溝２１とからなる成形部２２と、前記成形部の２２の上側に形成され前記脚片２０を左右方向に撓み可能にする脆弱部２５，２６，３３，３４と、を備える。 

図１（ａ）は、典型的実施例の医療用ステープラの非使用時の側面図である。図１（ｂ）は、医療用ステープラの一部を省略して断面で示した側面図であり、ステープルの折り曲げ終了後の状態を示す。 図２は、医療用ステープラの要部の拡大図である。 図３は、フォーミングプレートの正面図である。 図４は、初期位置におけるフォーミングプレートとステープルとの位置関係を示す正面図である。 図５は、フォーミングプレートによるステープルの折り曲げ初期の状態を示す正面図である。 図６は、フォーミングプレートによるステープルの折り曲げ終了時の状態を示す正面図である。 図７は、脚片の撓み状態の説明図である。 図８は、フォーミングプレートのリターン時の状態を示す正面図である。 図９（ａ）は、フォーミングプレートの変形例に係る図である。図９（ｂ）は、フォーミングプレートの別の変形例に係る図である。 図１０（ａ）は、アンビルの変形例を示す正面図である。図１０（ｂ）は、アンビルの別の変形例を示す正面図である。図１０（ｃ）は、アンビルの更に別の変形例を示す正面図である。 図１１は、図１０（ａ）のアンビルを使用した場合における、ステープルの折り曲げ終了直前の状態を示す部分拡大正面図である。 図１２は、図１０（ａ）のアンビルを使用した場合における、ステープルの折り曲げ終了後の状態を示す部分拡大正面図である。 図１３は、図１０（ａ）のアンビルを使用した場合における、フォーミングプレートのリターン時の部分拡大正面図である。 図１４（ａ）は、別の変形例に係るフォーミングプレートの正面図である。図１４（ｂ）は、図１４（ａ）の14b－14b断面図である。 図１５は、更に別の変形例のフォーミングプレートの正面図である。 図１６は、図１５のフォーミングプレートによるステープルの折り曲げ終了時の状態を示す正面図である。 図１７は、図１５のフォーミングプレートのリターン時の状態を示す正面図である。

　以下、図面を参照して、本発明の典型的実施例と、その変形例について説明する。

　図１（ａ）は、本発明の典型的実施例の医療用ステープラの側面図であり、医療用ステープラの非使用時の状況を示す。図１（ｂ）は、ステープルの折り曲げ終了後の医療用ステープラを一部を省略して断面で示した側面図である。図２は、医療用ステープラの要部の拡大図である。

　符号１はステープラ本体、２は操作レバーを示す。ステープラ本体１及び操作レバー２はいずれも合成樹脂から構成されている。ステープラ本体１は縦断面が略逆Ｕ字形に形成される。ステープラ本体１の前部内側には医療用ステープルを打ち出すヘッド部３が固定されている。

　操作レバー２は、支軸４を中心に上方向（閉じ方向）と下方向（開き方向）に回動可能にステープラ本体１に取り付けられている。操作レバー２の先端２ａ側の部分は、ステープラ本体１の内側のスペース（収納部）内に収納配置されている。

　操作レバー２が閉じ方向に回動するとき、その先端２ａは、フォーミングプレート８をヘッド部３の先端に設けられた医療用ステープルの打ち出し部５に向けて押圧するように構成されている。

　ステープラ本体１のヘッド部３には、フェースプレート６とマガジン７とが設けられる。フェースプレート６の裏側には、ガイドブロック９が配置されている。ガイドブロック９の両側には、フォーミングプレート８の摺動案内溝が形成されている。ガイドブロック９の下部には、打ち出し部５が設けられている。打ち出し部５には、ステープルの中央部分を下から支持するアンビル１１が配置されている。ヘッド部３の底面に沿ってマガジン７が設けられる。マガジン７には、数本から数十本の医療用のステープル１２が装填される。図示しない送り手段によって、マガジン７内のステープルは、先頭のものから順に打ち出し部５のアンビル１１上に供給されるように構成されている。

　フォーミングプレート８は、ステープル１２の両側を折り曲げるものである。フォーミングプレート８は、打ち出し部５の上部に設けられ、ガイドブロック９の摺動案内溝にガイドされて上下方向に摺動可能に設けられている。

　図３及び図４に示されるように、フォーミングプレート８の中央部には中央開口１３が形成されている。中央開口１３の上縁にはバネ受けコマ１４が固定されている。中央開口１３の内側中央部には、フォーミングプレート８のリターン用の圧縮バネ１５が配置されている。圧縮バネ１５の上端部は、中央開口１３の上縁部１８の下端に係合する。圧縮バネ１５の下端部１５ａは、ガイドブロック９に支持されている（図２参照）。このため、フォーミングプレート８は圧縮バネ１５により常時上方の初期位置にあるように付勢されている。さらに、操作レバー２も圧縮バネ１５により開き方向に付勢されている。（なお、フォーミングプレート８を常時上方の初期位置にあるように付勢する構造は、上記のような中央開口１３に圧縮バネ１３を配置する構造に限定されない。付勢手段を別の部分に配置してもよい。フォーミングプレート８は、中央会口１３を有さなくてもよい。）

　操作レバー２の先端２ａは、バネ受けコマ１４の頂部１６に当接するように配置されている。したがって、操作レバー２の握り込み操作によって操作レバー２は支軸４を中心に回動し、フォーミングプレート８は下方に駆動する。

　フォーミングプレート８の先端部（下端部）には、左右両側から下方に突出する一対の脚片２０と、脚片２０の間の成形溝２１と、が設けられる。一対の脚片２０と成形溝２１とから成形部２２が構成される。成形溝２１の上辺の中央部から、押圧片２３が下方に突出している。

　フォーミングプレート８の成形部２２の上側に、横長の開口部２４が形成されている。（フォーミングプレート８が中央開口１３を有する場合、開口部２４は、成形部２２の上側であって、中央開口１３の下側に位置する。）この開口部２４は、成形部２２の上部、すなわち押圧片２３の上部の両側部と脚片２０の上部を脆弱にする脆弱部２５、２６を設けるために形成される。開口部２４によって、押圧片２３の上縁部２５と脚片２０の上部２６の剛性がフォーミングプレート８の他の部分よりも低くなるので、上縁部２５は上下方向に、脚片２０は左右の幅方向に撓み変形可能となる。

　なお、アンビル１１の両端と成形溝２１との間には、ステープルの幅とほぼ同じ間隔ｗ(図４参照)が形成されている。また、脚片２０の上部に形成された脆弱部２６の中心は、脚片２０の中心よりも外側寄りに設けられている。

　次に、前記構成の医療用ステープラの作動態様について説明する。傷口を縫合するときは、はじめに、ヘッド部３の先端を傷口両側の皮膚３０の上に押し当て操作レバー２を握り込むと、操作レバー２の先端２ａがフォーミングプレート８の上端のバネ受けコマ１４を下方に押し込む。これにより、フォーミングプレート８は圧縮バネ１５のバネ力に抗して図４の状態から図５のように下方に押し出される。そして、フォーミングプレート８の両側脚片２０の先端が、アンビル１１上に載置された先頭ステープル１２の両側部分を下方に押し込む。その結果、ステープル１２の両側部１２ｂは、成形溝２１の内側に折り曲げられ（すなわち両側部１２ｂが互いに近づく方向に折り曲げられ）、ステープル１２の針先部１２ｃはアンビル１１の両端からその左右方向の中心に近づくように曲がっていく。ステープルの中央部１２ａは山形に湾曲するので、図６に示されるように、成形部２２の押圧片２３がステープルの中央部１２ａを下方に押圧する。これにより、ステープル１２がアンビル１１上面に接触し、真直状になると、押圧片２３の下端の下降は停止する。

　アンビル１１の両端と成形溝２１との間にはステープル１２の幅とほぼ同じ間隔ｗが形成されている。また、フォーミングプレート８の成形部２２の上部は、横長の開口部２４によって脆弱部２５、２６が形成されているために剛性が低下している。加えて、フォーミングプレート８の押圧片２３によってステープル１２がアンビル１１上面に接触して停止しても、脚片２０上部の脆弱部には荷重が下方に向けて加えられ続ける。しかも、左右方向において、脚片２０の上部に形成された脆弱部２６の中心は、脚片２０の中心よりも外側寄りに設けられている。したがって、図７に示されるように、この下向きの外側荷重により脚片２０には押圧片２３の上部を中心とする回転モーメントが発生する。このため、脚片２０はフォーミングプレート８の幅方向の内側に撓み変形する（すなわち、両脚片２０が、左右方向において、互いに近づく）。この結果、ステープルの脚片２０をさらに内側に押圧して安定的により直角に近く折り曲げることができる。

　そして、操作レバー２を移動端まで移動させていく中でステープル１２の足先１２ｃは皮膚内に刺し込まれ、互いに近づき、傷口を引き寄せて縫合する。

　その後、操作レバー２に対する操作力を解除すると、フォーミングプレート８は圧縮バネ１５のバネ力によって上方に移動する力を受ける。このとき、アンビル１１の両端と成形溝２１との間にはステープル１２の幅とほぼ同じ間隔が形成されているから、通常であれば、ステープル１２の折り曲げ部と成形溝２１の溝壁部との間に強い摩擦力が発生することになる。しかし、上述のように、成形部２２の上部の脆弱部２６により脚片２０は左右に撓み可能となっている。このため、図８に示されるように、フォーミングプレート８を引き上げて押圧片２３がステープルから離れると、脚片２０が固有弾性によって外側に撓んで戻る。さらに、ステープルの折り曲げに対するスプリングバックによりフォーミングプレート８は初期状態よりも外側に変形することができるから、ステープル１２との摩擦力は低減する。したがって、フォーミングプレート８は円滑かつ確実にリターン作動する。フォーミングプレート８が初期位置にリターンすると、フォーミングプレート８のバネ受けコマ１４に係合している操作レバー２も開き方向に回動して初期位置に戻る。このとき、ステープル１２は戻り止め用突起（図示せず）に当って止まり、成形溝２１から解放された後、ステープラを持ち上げるときにアンビル１１の前方空間に移動してアンビル１１から外れ、皮膚上に残る。

　上述のように、傷口縫合時にフォーミングプレート８を作動させてステープル１２を折り曲げて成形溝２１の中央に形成された押圧片２３がステープルの中央部をアンビル１１上に押圧して停止しても、脆弱部２６には荷重が下方に向けて加えられ続けるから、この下向きの荷重により脚片２０は内側に撓み変形する。このため、ステープルの脚片２０をさらに内側に押圧して安定的により直角に近く折り曲げることができる。

　また、フォーミングプレート８のリターン時には、ステープル１２と成形溝２１との間に強い摩擦力が発生したとしても、脆弱部２６により脚片２０は左右に撓み可能となっており、フォーミングプレート８を引き上げるときに外側に撓み、ステープルとの摩擦力は低減するから、フォーミングプレート８は円滑かつ確実にリターン作動することができる。

　なお、開口部２４の形状は、上記の実施形態に限定されない。例えば、押圧片２３がステープルを圧下したときに、押圧片２３の上縁部２５が均等に変形すると、ステープル１２の中央部１２ａも湾曲してしまうので、この部分は変形しにくいように、図９（ａ）に示されるように、押圧片２３の上縁部の中央２８には強度を確保するためにこの部分の開口部２４を小さくして肉を多く残すか、あるいはこの部分を避けて開口部２４を形成するようにしてもよい。また、図９（ｂ）に示されるように、フォーミングプレート８の外側縁の一部２９を切り欠いて中央の開口部２４があまり大きくならないように調整してもよい。このように、脆弱部は、成形部２２の上部に形成された開口部２４によって形成されているから、簡単な構造によって脆弱部を形成することができるとともに、開口部２４の形状を変えることによって、脆弱部のうちでもどの部位の強度を強くし、どの部位の強度を弱くするか調整することができる。

　また、上記の実施形態においては成形溝２１の上部に形成された開口部２４によって脆弱部２５，２６を形成することとしたが、これに限らない。

　例えば、図１４（ａ）および図１４（ｂ）に示すように、開口部２４の代わりに、他の部分と比較して肉厚の薄い薄肉部３１を設けてもよい。このような薄肉部３１を脆弱部として設けた場合でも、開口部２４を設けた場合と同様に、薄肉部３１及びその周囲が変形し易く形成されている。このため、ステープル１２を折り曲げ動作したときには、脚片２０が内側に撓み変形し、ステープルの脚片２０を内側に押圧することで、安定的により直角に近く折り曲げることができる。そして、フォーミングプレート８のリターン時には、フォーミングプレート８を引き上げるときに脚片２０が外側に撓み、ステープルとの摩擦力は低減するから、フォーミングプレート８は円滑かつ確実にリターン作動することができる。

　また、他の変形例として、図１５～１７に示すようなフォーミングプレート８を使用してもよい。このフォーミングプレート８は、図１５に示すように、開口部２４を設ける代わりに、成形溝２１を更に深く切欠いた形状としたものである。このように成形溝２１に切欠３２を設けることにより、この切欠３２の上部及び側部に脆弱部３３，３４を形成している。このようなフォーミングプレート８を使用した場合でも、開口部２４を設けた場合と同様に作用する。

　すなわち、図１６に示すように、ステープル１２を折り曲げ動作したときには、フォーミングプレート８の押圧片２３によってステープル１２がアンビル１１上面に接触して停止しても、脚片２０上部の脆弱部には荷重が下方に向けて加えられ続けるため、この下向きの外側荷重により脚片２０には押圧片２３の上部を中心とする回転モーメントが発生し、脚片２０はフォーミングプレート８の幅方向の内側に撓み変形する。これにより、ステープルの脚片２０をさらに内側に押圧して安定的により直角に近く折り曲げることができる。

　また、フォーミングプレート８のリターン時には、成形部２２の上部の脆弱部３４により脚片２０は左右に撓み可能となっているので、図１７に示されるように、フォーミングプレート８を引き上げて押圧片２３がステープルから離れると、脚片２０が固有弾性によって外側に撓んで戻り、さらにステープルの折り曲げに対するスプリングバックによりフォーミングプレート８は初期状態よりも外側に変形することができるから、ステープル１２との摩擦力は低減する。したがって、フォーミングプレート８は円滑かつ確実にリターン作動することができる。

　また、アンビル１１の上面は平坦なものに限らず、図１０（ａ）～図１０（ｃ）に示すように、押圧片２３と相対する位置が凹陥しているものとしても良い。

　例えば、図１０（ａ）に示すように、アンビル１１の両端から中央に行くに従って徐々に下方に凹陥するように形成し、この凹陥部１１ａで押圧片２３を受けることとしても良い。このとき、アンビル１１の上面全体が凹陥部１１ａを形成しているため、アンビル１１両端の角部１１ｃは鋭角を形成することとなっている。

　また、図１０（ｂ）に示すように、アンビル１１の両端付近に平坦部１１ｂを設け、この平坦部１１ｂの端から中央に行くに従って徐々に下方に凹陥するように形成し、この凹陥部１１ａで押圧片２３を受けることとしても良い。このとき、図１０（ｂ）に示すように、アンビル１１両端の角部１１ｃは直角を形成するようになっている。

　また、図１０（ｃ）に示すように、アンビル１１の両端付近に平坦部１１ｂを設け、この平坦部１１ｂそれぞれの内側端部に段差を設け、この段差に挟まれた中央の平坦な凹陥部１１ａで押圧片２３を受けることとしても良い。このとき、図１０（ｃ）に示すように、アンビル１１両端の角部１１ｃは直角を形成するようになっている。

　図１１～１３は、図１０（ａ）に示すアンビル１１を使用した場合における、ステープル１２の折り曲げ動作を説明する図である。

　図１１は、ステープル１２の折り曲げ終了直前の状態を示す図である。この図が示すように、ステープル１２の折り曲げ部が直角となる位置までフォーミングプレート８が押し下げられている状態でも、アンビル１１の上面が凹陥していることにより、アンビル１１上面とステープル１２の中央部１２ａとの間に間隙が生じるようになっている。

　この状態から更にフォーミングプレート８を押し下げると、図１２に示すように、成形部２２の押圧片２３がステープル１２の中央部１２ａを下方に押圧し、ステープル１２の中央部１２ａがアンビル１１上面の凹陥部１１ａに接触したときに、押圧片２３の下端の下降が停止する。このとき、ステープル１２は、アンビル１１の凹陥部１１ａに沿うように中央が下方へ湾曲し、これにより、ステープル１２の折り曲げ部はやや鋭角に折り曲がるようになっている。

　そして、フォーミングプレート８のリターン時には、図１３に示すように、押圧片２３がステープル１２の押圧を解除することにより、ステープル１２の折り曲げ部がやや曲げ戻りして直角となるようになっている。

　なお、ここでは図１０（ａ）に示すアンビル１１を使用した場合について説明したが、図１０（ｂ）及び（ｃ）に示すアンビル１１を使用した場合においても同様に作用することは言うまでもない。

　このように、上面が凹陥したアンビル１１を用いることにより、折り曲げ完了後のステープル１２の曲げ戻りを考慮しても、ステープル１２の折り曲げ部を直角に近いものとすることができ、フォーミングプレート８とステープル１２との摺動抵抗を低減することができる。

　なお、図１０（ａ）～図１０（ｃ）のいずれの変形例のアンビル１１も、図９（ａ）および図９（ｂ）の変形例、図１４（ａ）および図１４（ｂ）の変形例、図１５の変形例のいずれのフォーミングプレート８とも組み合わせて使用することができる。

　本発明の実施例では、医療用ステープラは、ステープル１２が打ち出される打ち出し部５と、打ち出し部５の上側に配置されステープル１２の中央部１２ａを支持するためのアンビル１１と、アンビル１１の上側に上下動可能に配置されたフォーミングプレート８と、を備える。フォーミングプレート８は、フォーミングプレート８の下端側の左右両側に設けられ下側に突出する一対の脚片２０と一対の脚片２０の間に形成された成形溝２１とからなる成形部２２と、成形部の２２の上側に形成され脚片２０を左右方向に撓み可能にする脆弱部２５，２６，３３，３４と、を備える。

　脆弱部２５，２６は、成形溝２１の上側に形成された開口部２４によって形成されてもよい。

　脆弱部２５，２６は、成形溝２１の上側に形成された薄肉部３１によって形成されてもよい。

　脆弱部３３，３４は、成形溝２１に連続して形成された切り欠き３２によって形成されてもよい。

　フォーミングプレート８は、成形溝２１の中で下側に突出する押圧片２３を、備えてもよい。アンビル１１の上面１１ａは、押圧片と相対する位置が凹陥してもよい。アンビル１１の両端１１ｃは、直角又は鋭角な角部を形成してもよい。

　上記の構造によれば、ステープルの成形時に、フォーミングプレートの両側の脚片がアンビル上のステープルの両側を下方に押圧して折り曲げるとともに、フォーミングプレートの成形部の中央部に形成された押圧片によってステープルの中央部が湾曲しないようにアンビル上に押圧したとき、押圧片はアンビル上面に接触して停止しても、脚片上部の脆弱部には荷重が下方に向けて加えられ続ける。しかも、脚片の上部に形成された脆弱部の中心は、脚片の中心よりも外側寄りに設けられている。したがって、この下向きの外側荷重により脚片には押圧片の上部を中心とする回転モーメントが発生するから、脚片はフォーミングプレートの幅方向の内側に撓み変形する。このため、ステープルの脚片をさらに内側に押圧して安定的により直角に近く折り曲がるように成形することができる。

　その後、フォーミングプレートが初期位置に戻るときは、アンビルの両端と成形溝との間にはステープルの幅とほぼ同じ間隔が形成されているので、通常であればステープルの折り曲げ部と成形溝の溝壁部との間に強い摩擦力が発生することになるが、しかし、成形部の上部の脆弱部により脚片は左右に撓み可能となっているので、フォーミングプレートが上昇すると、脚片が固有弾性によって外側に撓んで戻り、さらにステープルの折り曲げに対するスプリングバックによりフォーミングプレートは初期状態よりも外側に変形することができるから、ステープルとの摩擦力は低減する。したがって、フォーミングプレートは円滑かつ確実にリターン作動する。

　脆弱部を成形溝の上部に形成された開口部によって形成する場合は、簡単な構造によって脆弱部を形成することができるとともに、開口部の形状を変えることによって、脆弱部のうちでもどの部位の強度を強くし、どの部位の強度を弱くするか調整することができる。

　アンビルの上面のフォーミングプレートの押圧片と相対する位置が凹陥している場合は、ステープルの中央部は、フォーミングプレートの押圧片により折り曲げ部よりも下方へ押圧される。このため、ステープルの折り曲げ部は折り曲げ終了時においてやや鋭角に折り曲がることになり、折り曲げ完了後のステープルの曲げ戻りを考慮しても、ステープルの折り曲げ部を直角に近いものとすることができ、フォーミングプレートとステープルとの摺動抵抗を低減することができる。

１　　ステープラ本体
２　　操作レバー
８　　フォーミングプレート
１１　アンビル
１２　ステープル
２１　成形溝
２２　成形部
２３　押圧片
２４　開口部
２５、２６　脆弱部

Claims (5)

1. 　ステープル（１２）が打ち出される打ち出し部（５）と、
   　前記打ち出し部（５）の上側に配置され、前記ステープル（１２）の中央部（１２ａ）を支持するためのアンビル（１１）と、
   　前記アンビル（１１）の上側に上下動可能に配置されたフォーミングプレート（８）と、
   　を具備し、
   　前記フォーミングプレート（８）は、
   　前記フォーミングプレート（８）の下端側の左右両側に設けられ下側に突出する一対の脚片（２０）と、前記一対の脚片（２０）の間に形成された成形溝（２１）と、からなる成形部（２２）と、
   　前記成形部の（２２）の上側に形成され、前記脚片（２０）を左右方向に撓み可能にする脆弱部（２５，２６，３３，３４）と、
   　を有する、
   　医療用ステープラ。
2. 　前記脆弱部（２５，２６）は、前記成形溝（２１）の上側に形成された開口部（２４）によって形成されている、請求項１に記載の医療用ステープラ。
3. 　前記脆弱部（２５，２６）は、前記成形溝（２１）の上側に形成された薄肉部（３１）によって形成されている、請求項１に記載の医療用ステープラ。
4. 　前記脆弱部（３３，３４）は、前記成形溝（２１）に連続して形成された切り欠き（３２）によって形成されている、請求項１に記載の医療用ステープラ。
5. 　前記フォーミングプレート（８）は、前記成形溝（２１）上辺から下側に突出する押圧片（２３）を、更に有し、
   　前記アンビル（１１）の上面（１１ａ）は、前記押圧片と相対する位置が凹陥し、
   　前記アンビル（１１）の両端（１１ｃ）は、直角又は鋭角な角部を形成している、
   　請求項１から４のいずれか１つに記載の医療用ステープラ。 

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