JP2011212222A - 医療用ステープラ - Google Patents
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Abstract
【課題】折り曲げ成形時のステープルとフォーミングプレートとの摺動抵抗を減少させることにより、フォーミングプレートやステープルの損傷を防ぐとともに、フォーミングプレートのリターン不良を低減できる医療用ステープラを提供する。
【解決手段】ステープルの長手方向の中央部が載置されるアンビルと、前記アンビルの上部で上下動可能なフォーミングプレートと、を備え、前記フォーミングプレートの先端部には両側に突出する脚片が設けられ、この脚片で前記アンビル上に載置されたステープルの両側を押し込むことにより、ステープルを折り曲げて成形する医療用ステープラにおいて、前記脚片のステープルとの接触部を、前記フォーミングプレートの移動方向を長軸方向とする円錐曲線で形成した。
【選択図】図3
【解決手段】ステープルの長手方向の中央部が載置されるアンビルと、前記アンビルの上部で上下動可能なフォーミングプレートと、を備え、前記フォーミングプレートの先端部には両側に突出する脚片が設けられ、この脚片で前記アンビル上に載置されたステープルの両側を押し込むことにより、ステープルを折り曲げて成形する医療用ステープラにおいて、前記脚片のステープルとの接触部を、前記フォーミングプレートの移動方向を長軸方向とする円錐曲線で形成した。
【選択図】図3
Description
本発明は、フォーミングプレートの先端部に設けられた脚片でアンビル上に載置されたステープルの両側を押し込んでステープルを成形する医療用ステープラに関する。
一般に、外科手術等において傷口を縫合する手段として縫合糸のほかに医療用ステープルが使用されている。この医療用ステープルは、クラウン部とその両側端から弯曲部を介して略直角に折り曲った針先部とから構成されている。医療用ステープラは、複数の医療用ステープルを収納したヘッド部と先頭のステープルのクラウン部の両側を押し込んで内側に折り曲げるフォーミングプレートとを備えたステープラ本体に、操作レバーを回動可能に設けたもので、操作レバーを強く握り込んで回動させることにより、フォーミングプレートの下端で先頭のステープルのクラウン部の両側を押し込んでヘッド部の打ち出し部から突出させるとともに先頭ステープルを内側に折り曲げながら両側針先部を皮膚内に刺し込んで傷口を寄せて縫合するように構成されている。
ステープルの折り曲げは特許文献1に示されるように、フォーミングプレートの先端側に形成された2つの脚片と打ち出し部の中央に設けられたアンビルとによって行われている。
すなわち、水平に設けられたアンビル上に先頭のステープルが送られ、このステープルの長手方向の中央部がアンビル上に載置される。そして、操作レバーによりフォーミングプレートが打ち出し方向に押し出されると、フォーミングプレートがアンビルの方向へと押し下げられる。そして、フォーミングプレートが押し下げられると、フォーミングプレートの先端部の脚片がステープルの両側を押し込み、ステープルを折り曲げて成形する。
ところで、上記したようにステープルを折り曲げる際には、フォーミングプレートの押し下げ動作に伴って、フォーミングプレートの脚片がステープル上をしごきながら移動することになる。このとき、ステープルとフォーミングプレートとの間で大きな摺動抵抗が発生し、脚片やステープルの表面が荒れてしまい、フォーミングプレートやステープルが損傷してしまうという問題があった。
しかも、上記したようにフォーミングプレートとステープルとの接触面が荒れてしまうと、ステープルの折り曲げ成形が完了した後にフォーミングプレートがリターンする時に、折り曲げ成形時のよりも更に大きい摺動抵抗が発生することとなり、フォーミングプレートのリターン不良の原因となるという問題があった。
そこで、本発明は上記問題点を解消し、折り曲げ成形時のステープルとフォーミングプレートとの摺動抵抗を減少させることにより、フォーミングプレートやステープルの損傷を防ぐとともに、フォーミングプレートのリターン不良を低減できる医療用ステープラを提供することをその課題とする。
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、以下を特徴とする。
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、以下の点を特徴とする。
請求項1に記載の発明は、以下の点を特徴とする。
すなわち、請求項1に記載の医療用ステープラは、ステープルの長手方向の中央部が載置されるアンビルと、前記アンビルの上部で上下動可能なフォーミングプレートと、を備え、前記フォーミングプレートの先端部には両側に突出する脚片が設けられ、この脚片で前記アンビル上に載置されたステープルの両側を押し込むことにより、ステープルを折り曲げて成形する医療用ステープラにおいて、前記脚片のステープルとの接触部は、前記フォーミングプレートの移動方向を長軸方向とする円錐曲線で形成されていることを特徴とする。
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
すなわち、前記円錐曲線は、楕円曲線であることを特徴とする。
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、上記した請求項1又は2に記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
請求項3に記載の発明は、上記した請求項1又は2に記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
すなわち、前記円錐曲線は、ステープルの折り曲げ角度が所定角度となってから折り曲げが完了するまでにおける前記脚片とステープルとの接触点の移動距離について、前記脚片上の移動距離とステープル上の移動距離とがほぼ等しい距離となる円錐曲線であることを特徴とする。
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、上記した請求項1又は2に記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
請求項4に記載の発明は、上記した請求項1又は2に記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
すなわち、前記円錐曲線は、前記脚片とステープルとの接触点がステープルの端方向へと移動する間における前記脚片とステープルとの接触点の移動距離について、前記脚片上の移動距離とステープル上の移動距離とがほぼ等しい移動距離となる円錐曲線であることを特徴とする。
(請求項5)
請求項5に記載の発明は、上記した請求項3又は4に記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
請求項5に記載の発明は、上記した請求項3又は4に記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
すなわち、前記ほぼ等しい移動距離は、0.1mm未満の差であることを特徴とする。
本発明によれば、脚片のステープルとの接触部は、フォーミングプレートの移動方向を長軸方向とする円錐曲線で形成されているため、テープルの曲げ終わり間際、つまり、曲げ終了直前から曲げ終了までの時間における、脚片とステープルとの接触点の移動距離について、脚片上の移動距離とステープル上の移動距離との差を小さくすることができ、これにより、スフォーミングプレートの脚片がステープル上を極力しごかないようにすることができる。このため、ステープルとフォーミングプレートとの間の摺動抵抗を低減させることができる。
すなわち、本発明者は、図12のグラフの線aが示すように、従来使用されてきた単一R形状の接触部を有する脚片を使用した場合には、ステープルの曲げ終わり間際において、ステープル上の接触点の移動距離が、フォーミングプレート上の接触点の移動距離と比較して急激に大きくなり、このために、ステープルの曲げ終わり間際の期間において、ステープルとフォーミングプレートとの間の摺動抵抗が急激に大きくなることを発見した。この発見によれば、このステープルの曲げ終わり間際の期間において、ステープル上の接触点の移動距離を小さくし、フォーミングプレート上の接触点の移動距離を大きくすれば、両者の移動距離の差を小さくすることができ、これによって、ステープルとフォーミングプレートとの間の摺動抵抗を小さくすることができる。そして、本願発明のような円錐曲線で形成した脚片を使用すれば、図12のグラフの「新形状」の線bが示すように、ステープルの曲げ終わり間際において、ステープル上の接触点の移動距離を小さくし、フォーミングプレート上の接触点の移動距離を大きくすることができる。このため、本発明によれば、折り曲げ成形時の摺動抵抗を減少させることができ、フォーミングプレートやステープルの損傷を防ぐとともに、フォーミングプレートのリターン不良を低減できる。
本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。
(医療用ステープラの概要)
図1(a)は本発明に係る医療用ステープラの一実施形態の非使用時の側面図、(b)はステープルの折り曲げ終了後の一部を省略して断面で示した側面図、図2はその要部の拡大図である。
図1(a)は本発明に係る医療用ステープラの一実施形態の非使用時の側面図、(b)はステープルの折り曲げ終了後の一部を省略して断面で示した側面図、図2はその要部の拡大図である。
上図において符号1はステープラ本体、2は操作レバーを示す。ステープラ本体1及び操作レバー2はいずれも合成樹脂から構成されている。ステープラ本体1は縦断面が略倒立U字形に形成され、その前部内側には医療用ステープル12を打ち出すヘッド部3が固定されている。
操作レバー2には支軸4が設けられ、この支軸4がステープラ本体1に設けられている不図示の軸支穴に支持されることで、支軸4を中心に上方向(閉じ方向)と下方向(開き方向)に回動可能にステープラ本体1に取り付けられている。また、操作レバー2の先端2a側の部分はステープラ本体1の内側のスペース(収納部)内に収納配置されている。
また、操作レバー2が閉じ方向に回動するとき、その先端2aは後述のフォーミングプレート8をヘッド部3の先端に設けられた医療用ステープル12の打ち出し部5に向けて押圧するように構成されている。
また、ステープラ本体1のヘッド部3にはフェースプレート6とマガジン部7とが設けられ、フェースプレート6の裏側にはガイドブロック9が配置されている。ガイドブロック9の両側にはフォーミングプレート8の摺動案内溝が形成され、下部には打ち出し部5が設けられている。打ち出し部5には、ステープル12の中央部分を下から支持するアンビル11が配置されている。また、ヘッド部3の底面に沿ってマガジン部7が形成され、マガジン部7には数本から数十本の医療用のステープル12が装填され、図示しない送り手段によって先頭のものから順に打ち出し部5のアンビル11上に供給されるように構成されている。
(フォーミングプレート8)
フォーミングプレート8はステープル12の両側を折り曲げるもので、打ち出し部5の上部に設けられ、ガイドブロック9の摺動案内溝にガイドされて上下方向に摺動可能に設けられている。
フォーミングプレート8はステープル12の両側を折り曲げるもので、打ち出し部5の上部に設けられ、ガイドブロック9の摺動案内溝にガイドされて上下方向に摺動可能に設けられている。
図3に示されるように、フォーミングプレート8の中央部には中央開口13が形成されている。中央開口13の上縁にはバネ受けコマ14が固定されている。そして、中央開口13の内側中央部にはフォーミングプレート8のリターン用の圧縮バネ15が配置されている。圧縮バネ15の上端部は中央開口13の上縁部18の下端に係合し、下端部15aはガイドブロック9に支持されている(図2参照)。このため、フォーミングプレート8は圧縮バネ15により常時上方の初期位置にあるように付勢されている。さらに、操作レバー2も圧縮バネ15により開き方向に付勢されている。
操作レバー2の先端2aはバネ受けコマ14の頂部16に当接するように配置されている。したがって、操作レバー2の握り込み操作によって操作レバー2は支軸4を中心に回動し、フォーミングプレート8は下方に駆動する。
次に、フォーミングプレート8の先端部(下端部)には、両側から下方に突出する脚片20が設けられ、その間には成形溝21が形成されている。この成形溝21の幅は、アンビル11の幅に対し、両端にステープル12の幅とほぼ同じ幅の間隔を加えたものとほぼ同じになるように形成されている。そして、成形溝21の上辺の中央部には押圧片23が下方に突出形成されている。
(医療用ステープラの作動態様について)
次に、上記構成の医療用ステープラの作動態様について説明する。傷口を縫合するときは、図2に示すように、ヘッド部3の先端を傷口両側の皮膚30の上に押し当て、操作レバー2を握り込むことにより、操作レバー2の先端2aはフォーミングプレート8の上端のバネ受けコマ14を下方に押し込む。これにより、フォーミングプレート8は圧縮バネ15のバネ力に抗して図4に示すように、下方に押し出される。フォーミングプレート8の両側脚片20の先端内側の接触部22が、アンビル11上に載置された先頭ステープル12の両側部分を下方に押し込むからステープル12の両側部12bは成形溝21の内側に折り曲げられ、ステープル12の針先部12cはアンビル11の両端からその中心に近づくように曲がっていく。このとき、ステープル12の中央部12aは山形に湾曲するが、この湾曲した中央部12aは押圧片23により下方に押圧される。これにより、ステープル12がアンビル11上面に接触し、真直状になると、押圧片23の下端の下降は停止し、ステープル12の折り曲げ成形が完了する。このとき、アンビル11の両端と成形溝21との間にはステープル12の幅とほぼ同じ間隔が形成されているため、ステープル12は、ほぼ90度の角度に折り曲げられることになる。
次に、上記構成の医療用ステープラの作動態様について説明する。傷口を縫合するときは、図2に示すように、ヘッド部3の先端を傷口両側の皮膚30の上に押し当て、操作レバー2を握り込むことにより、操作レバー2の先端2aはフォーミングプレート8の上端のバネ受けコマ14を下方に押し込む。これにより、フォーミングプレート8は圧縮バネ15のバネ力に抗して図4に示すように、下方に押し出される。フォーミングプレート8の両側脚片20の先端内側の接触部22が、アンビル11上に載置された先頭ステープル12の両側部分を下方に押し込むからステープル12の両側部12bは成形溝21の内側に折り曲げられ、ステープル12の針先部12cはアンビル11の両端からその中心に近づくように曲がっていく。このとき、ステープル12の中央部12aは山形に湾曲するが、この湾曲した中央部12aは押圧片23により下方に押圧される。これにより、ステープル12がアンビル11上面に接触し、真直状になると、押圧片23の下端の下降は停止し、ステープル12の折り曲げ成形が完了する。このとき、アンビル11の両端と成形溝21との間にはステープル12の幅とほぼ同じ間隔が形成されているため、ステープル12は、ほぼ90度の角度に折り曲げられることになる。
このように、ステープル12を折り曲げ成形していくと、ステープル12の足先12cは皮膚内に刺し込まれ、互いに近づき、傷口を引き寄せて縫合する。
その後、操作レバー2に対する操作力を解除すると、フォーミングプレート8は圧縮バネ15のバネ力によって上方に移動する力を受け、初期位置方向へと移動する。そして、フォーミングプレート8が初期位置にリターンすると、フォーミングプレート8のバネ受けコマ14に係合している操作レバー2も開き方向に回動して初期位置に戻る。このとき、ステープル12は戻り止め用突起(図示せず)に当って止まり、成形溝21から解放された後、ステープラを持ち上げるときにアンビル11の前方空間に移動してアンビル11から外れ、皮膚上に残る。
(脚片20とステープル12との接触点Pの移動距離について)
ところで、上述したように、フォーミングプレート8の両側脚片20の接触部22が、ステープル12の両側部12bを折り曲げるが、このとき、脚片20とステープル12とは、図4に示すように接触点Pで接触している。そして、この接触点Pは、フォーミングプレート8が押し下げられるのに従って移動する。
ところで、上述したように、フォーミングプレート8の両側脚片20の接触部22が、ステープル12の両側部12bを折り曲げるが、このとき、脚片20とステープル12とは、図4に示すように接触点Pで接触している。そして、この接触点Pは、フォーミングプレート8が押し下げられるのに従って移動する。
すなわち、脚片20上においては、図5に示すように、接触点Pは接触部22の外周に沿って矢印D1で示す上方向へと移動する。
また、ステープル12上においては、図6の矢印D2が示すように、接触点Pはステープル12の上面に沿って、まずステープル12の中央方向へと移動した後に端部方向へと移動する。すなわち、図10(a)〜(c)に示されるように、まず脚片20の内側の成形溝の先端側がステープル12の上面に当たり、次にステープル12が折れ曲がっていくにしたがって接触点Pはステープル12の中央側へと移動していき、最終的にステープル12はアンビル11と脚片20との間に挟まれた状態で約90度に折り曲げられる。脚片20はその後もさらに下降移動していくのに対し、折り曲げられたステープル12は移動しないので、接触点Pはステープル12の端部側へと移動する。
ここで、この脚片20上の接触点Pの移動距離を示すために、図5に示すように、フォーミングプレート8の面上における脚片20の移動方向をY方向、これと直交する方向をX方向と規定し、その移動距離を求めることとした。すなわち、押圧片23の先端を通過するY方向の軸をY座標軸とし、このY座標軸を基に垂直方向(フォーミングプレート8の移動方向)における脚片20上の接触点Pの位置Yを求めた。また、脚片20の内壁面と接するX方向の軸をX座標軸とし、このX座標軸を基に水平方向(ステープル12の延在方向)における脚片20上の接触点Pの位置Xを求めた。そして、この位置X及びYにより、脚片20上の接触点Pの移動距離を表すこととした。
また、ステープル12上の接触点Pの移動距離を示すために、図6に示すように、ステープル12の側部12bに対する接線から接触点Pまでの距離Sを求め、この距離Sで、ステープル12上の接触点Pの移動距離を表すこととした。
以下、従来のフォーミングプレート8を使用した場合と、本実施形態に係るフォーミングプレート8を使用した場合との例を示し、両者において上記した接触点Pの移動距離に係る差異について説明する。
まず、従来のフォーミングプレート8は、図7に示すように、脚片20の先端内側の接触部22が曲げ半径1mmの単一R形状で形成されており、この接触部22においてステープル12の両側部12bを押圧して折り曲げる。
このときの接触点Pの様子を示すのが図8であり、(a)は、ステープル12の折り曲げ角度が110度の状態を示し、(b)は、ステープル12の折り曲げ角度が100度の状態を示し、(c)ステープル12の折り曲げ角度が90度(曲げ終わり)の状態を示している。この図8が示すように、ステープル12の曲げ終わり間際、つまり、曲げ終了直前から曲げ終了までの時間においては、接触点Pは、フォーミングプレート8上ではほとんど移動することがない一方、ステープル12上では激しく移動している。すなわち、ステープル12上の接触点Pの移動距離とフォーミングプレート8上の接触点Pの移動距離との差が大きくなっている。このため、フォーミングプレート8の脚片20がステープル12上をしごきながら移動するときに、ステープル12とフォーミングプレート8との間の摺動抵抗が大きくなり、脚片20やステープル12の接触面が荒れてしまうこととなる。そして、脚片20やステープル12の接触面が荒れてしまうと、ステープル12の折り曲げ成形が完了した後にフォーミングプレート8がリターンする時に、折り曲げ成形時のよりも更に大きい摺動抵抗が発生することとなり、フォーミングプレート8のリターン不良の原因となってしまう。
このことは、図11及び図12のグラフからも明らかである。
すなわち、図11は、脚片20上の接触点Pの移動推移を示したものである。このうち、「単一R」として示した線aが、従来のフォーミングプレート8を使用した場合の接触点Pの移動推移を示すグラフである。なお、この図11は、ステープル12が5度折り曲げられる毎の接触点Pの位置をXY座標上の点で示しており、曲げ始めの180度を始点とし、曲げ終わりの90度を終点とするものである。すなわち、各度数に対応した点間の距離をみることで、ステープル12の折り曲げに伴う脚片20上の接触点Pの移動距離を見ることができるようになっている。
この図11が示すように、従来のフォーミングプレート8を使用した場合、ステープル12の曲げ終わり間際の期間においては、フォーミングプレート8上の接触点Pはほとんど移動していないことが分かる。特に、ステープル12の折り曲げ角度が100度となってから折り曲げが完了するまでにおける接触点Pの移動距離が極端に小さいことが見て取れる。
また、図12は、ステープル12上の接触点Pとフォーミングプレート8上の接触点Pとの移動距離を比較したグラフである。この図12は、縦軸にステープル12上の接触点Pの位置を示すS(図6におけるステープル12の側部12bに対する接線tから、接触点Pまでの距離S)をとり、横軸にフォーミングプレート8上の接触点Pの移動距離を示す総移動距離(図11における各点間の距離の総和。例えば、「170°」における総移動距離は、図11における「180°」の点から「175°」の点までの距離と、「175°」の点から「160°」の点までの距離と、を足したものである)をとったものである。
この図12が示すように、従来のフォーミングプレート8を使用した場合、ステープル12の曲げ終わり間際の期間においては、ステープル12上の接触点Pが激しく移動していることが分かる。特に、ステープル12の折り曲げ角度が100度となってから折り曲げが完了するまでにおけるステープル12上の接触点Pの移動距離が極端に大きいことが見て取れる。
なお、この図12において、「単一R形状」のグラフは「110°」の点を頂点として山なりとなっている。これは、前述したように、ステープル12上の接触点Pは、図6に示すD2方向に往復するように移動するためである。そして、図12を見れば、この往復移動のうち、ステープル12上の接触点Pがステープル12の端方向へと移動するときに、ステープル12上の接触点Pが激しく移動していることが分かる。
このようにステープル12上の接触点Pが激しく移動している一方、フォーミングプレート8上の接触点Pについては、図12を見ても、ステープル12の折り曲げ角度が100度となってから折り曲げが完了するまでにおいて、ほとんど移動していないことが分かる。
以上説明したように、従来のフォーミングプレート8を使用した場合には、ステープル12の曲げ終わり間際の期間において、ステープル12上の接触点Pの移動距離とフォーミングプレート8上の接触点Pの移動距離との差が大きくなっており、フォーミングプレート8の脚片20がステープル12上をしごきながら移動することとなるため、脚片20とステープル12との間で大きな摺動抵抗が発生していた。
一方、本実施形態に係るフォーミングプレート8は、図9に示すように、脚片20の先端内側の接触部22を、円錐曲線、具体的には、フォーミングプレート8の移動方向を長軸方向とする楕円曲線で形成し、この接触部22においてステープル12の両側部12bを押圧して折り曲げるようにしたものである。上記楕円曲線の長軸はフォーミングプレート8の移動方向と同じ方向に設定されている。なお、本実施形態においては、図9に示すように、楕円曲線の長軸は2mmとし、短軸は1mmとしている。また、後述するように、本実施形態においては、ステープル12の折り曲げ角度が100度となってから折り曲げが完了するまでにおける、脚片20とステープル12との接触点の移動距離について、脚片20上の移動距離とステープル12上の移動距離とがほぼ等しい距離となるように形成されている。
このときの接触点Pの様子を示すのが図10であり、(a)は、ステープル12の折り曲げ角度が110度の状態を示し、(b)は、ステープル12の折り曲げ角度が100度の状態を示し、(c)ステープル12の折り曲げ角度が90度(曲げ終わり)の状態を示している。この図が示すように、本実施形態に係るフォーミングプレート8を使用した場合には、ステープル12の曲げ終わり間際においても、フォーミングプレート8上の接触点Pの移動距離は比較的大きくなっており、ステープル12上の接触点Pの移動距離も比較的小さいものとなっている。
また、図11及び図12においても、フォーミングプレート8上の接触点Pの移動距離と、ステープル12上の接触点Pの移動距離とが、ほぼ等しいものとなっているため、フォーミングプレート8がステープル12上をなるべくしごかないように移動することができ、ステープル12とフォーミングプレート8との間の摺動抵抗が小さいものとなっている。このため、脚片20やステープル12の接触面が荒れてしまう問題を防止できるとともに、フォーミングプレート8のリターン不良を防止できるようになっている。
すなわち、図11の「新形状」のグラフが示すように、本実施形態に係るフォーミングプレート8を使用した場合、むしろ、ステープル12の曲げ始めよりも曲げ終わりの方がフォーミングプレート8上の接触点Pの移動距離が大きくなるようになっていることが分かる。従来の形状で問題となっていた、ステープル12の折り曲げ角度が100度となってから折り曲げが完了するまでにおける接触点Pの移動距離を見ても、従来と比較して約5倍程度の移動距離となっていることが分かる。
また、図12の「新形状」のグラフが示すように、本実施形態に係るフォーミングプレート8を使用した場合、ステープル12の曲げ終わり間際においても、ステープル12上の接触点Pの移動距離が小さくなっている。例えば、ステープル12の折り曲げ角度が100度となってから折り曲げが完了するまでにおける接触点Pの移動距離を見ても、その移動距離が小さくなっていることが分かる。
そして、図12によれば、ステープル12の折り曲げ角度が100度となってから折り曲げが完了するまでにおける、フォーミングプレート8上の接触点Pの移動距離は0.5〜0.6mmであり、ステープル12上の接触点Pの移動距離も0.5〜0.6mmであることが分かり、両者がほぼ等しいことが分かる。
なお、この図12において、線Bは「100°」の点を頂点として山なりとなっている。これは、前述したように、ステープル12上の接触点Pは、図6に示すD2方向に往復するように移動するためである。このため、本実施形態においては、「ステープル12の折り曲げ角度が100度となってから折り曲げが完了するまで」は、「ステープル12上の接触点Pがステープル12の端方向へと移動する間」と言い換えることもでき、この期間において、前述したように、フォーミングプレート8上の接触点Pの移動距離と、ステープル12上の接触点Pの移動距離とが、ほぼ等しいものとなっている。
以上説明したように、本実施形態に係るフォーミングプレート8を使用した場合には、ステープル12の曲げ終わり間際において、フォーミングプレート8上の接触点Pの移動距離と、ステープル12上の接触点Pの移動距離とを、ほぼ等しくすることができるため、脚片20とステープル12との間で発生する摺動抵抗を低減させることができる。これにより、フォーミングプレート8やステープル12の損傷を防ぐとともに、フォーミングプレート8のリターン不良を低減できるようになっている。
なお、上記した実施例においては、脚片20のステープル12との接触部22を楕円曲線で形成することとしたが、これに限らない。例えば、フォーミングプレート8の移動方向をY軸方向とする放物線で形成することとしても良い。
1 ステープラ本体
2 操作レバー
2a 先端
3 ヘッド部
4 支軸
5 打ち出し部
6 フェースプレート
7 マガジン部
8 フォーミングプレート
9 ガイドブロック
11 アンビル
12 ステープル
12b 両側部
12a 中央部
12c 針先部
13 中央開口
14 バネ受けコマ
15 圧縮バネ
18 上縁部
20 脚片
21 成形溝
22 接触部
23 押圧片
30 皮膚
P 脚片とステープルとの接触点
S ステープル側部接線から接触点までの距離
X 水平方向における脚片上の接触点の位置
Y 垂直方向における脚片上の接触点の位置
D1 脚片上における接触点の移動方向
D2 ステープル上における接触点の移動方向
2 操作レバー
2a 先端
3 ヘッド部
4 支軸
5 打ち出し部
6 フェースプレート
7 マガジン部
8 フォーミングプレート
9 ガイドブロック
11 アンビル
12 ステープル
12b 両側部
12a 中央部
12c 針先部
13 中央開口
14 バネ受けコマ
15 圧縮バネ
18 上縁部
20 脚片
21 成形溝
22 接触部
23 押圧片
30 皮膚
P 脚片とステープルとの接触点
S ステープル側部接線から接触点までの距離
X 水平方向における脚片上の接触点の位置
Y 垂直方向における脚片上の接触点の位置
D1 脚片上における接触点の移動方向
D2 ステープル上における接触点の移動方向
Claims (5)
- ステープルの長手方向の中央部が載置されるアンビルと、前記アンビルの上部で上下動可能なフォーミングプレートと、を備え、前記フォーミングプレートの先端部には両側に突出する脚片が設けられ、この脚片で前記アンビル上に載置されたステープルの両側を押し込むことにより、ステープルを折り曲げて成形する医療用ステープラにおいて、
前記脚片のステープルとの接触部は、前記フォーミングプレートの移動方向を長軸方向とする円錐曲線で形成されていることを特徴とする、医療用ステープラ。 - 前記円錐曲線は、楕円曲線であることを特徴とする、請求項1記載の医療用ステープラ。
- 前記円錐曲線は、ステープルの折り曲げ角度が所定角度となってから折り曲げが完了するまでにおける前記脚片とステープルとの接触点の移動距離について、前記脚片上の移動距離とステープル上の移動距離とがほぼ等しい距離となる円錐曲線であることを特徴とする、請求項1又は2記載の医療用ステープラ。
- 前記円錐曲線は、前記脚片とステープルとの接触点がステープルの端方向へと移動する間における前記脚片とステープルとの接触点の移動距離について、前記脚片上の移動距離とステープル上の移動距離とがほぼ等しい移動距離となる円錐曲線であることを特徴とする、請求項1又は2記載の医療用ステープラ。
- 前記ほぼ等しい移動距離は、0.1mm未満の差であることを特徴とする、請求項3又は4に記載の医療用ステープラ。
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