明細書 高純度リン脂質の製造方法およびその方法で得られた高純度のスフインゴミエリ ンとプラズマローゲン型グリセ口リン脂質 技術分野
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本発明は、 生物系素材、 好ましくは家禽類から、 機能性食品素材、 医薬品素材 、 化粧品素材などとして有用な高純度スフインゴミエリン、 特にヒ ト型スフイン ゴミエリンおよび高純度プラズマローゲン型ダリセロリン脂質を、 簡単な操作で 収率よく製造する方法、 並びにこの方法で得られた高純度スフインゴミエリンお よび高純度プラズマローゲン型グリセ口リン脂質に関するものである。 背景技術
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脂質とは、 分子中に長鎖脂肪酸または類似の炭化水素鎖をもち、 生体内に存在 するか、 生物に由来する物質を指す。 この脂質は、 単純脂質と複合脂質に分類す ることができる。 単純脂質は、 C、 Hおよび Oより構成され、 一般にアセトンに 可溶で、 単純脂質のトリァシルグリセロールは動物体では、 脂肪組織にエネルギ 一の貯蔵体として存在する。 一方、 複合脂質は、 リン酸の Pや塩基の Nなどを含 む脂質群である。 したがって、 複合脂質は、 疎水性部分 (脂肪酸部分) と親水性 部分 (リン酸や塩基の部分) からなり、 両親媒性を示し、 一般的には、 前記単純 脂質がアセトンに可溶であるのに対し、 複合脂質はアセトンに不溶である。 この ような複合脂質は生体膜の構成成分となっている。
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前記複合脂質は、 (1 ) グリセ口リン脂質 [ホスファチジルコリン (別名レシ チン) 、 ホスファチジルエタノールァミンなどが属する。 ] 、 (2 ) スフインゴ リン脂質 (スフインゴミエリン、 セラミ ドシリアチンなどが属する。 ) 、 (3 ) スフインゴ糖脂質 (セレブ口シド、 スルファチド、 ガンダリオシドなどが属する
。 ) 、 および (4 ) グロセロ糖脂質 (微生物や高等植物に存在するジァシルグリ セロールに種々の糖が結合したものなどがある。 ) に大別することができる。 な お、 前記 (2 ) スフインゴリン脂質および (3 ) のスフインゴ糖脂質を総称して スフインゴ脂質と呼ばれる。
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前記グリセ口リン脂質は、 グリセ口リン酸を骨格にもつリン脂質の総称で、 ホ スファチジルコリン (レシチン) 、 ホスファチジルエタノールァミン、 ジホスフ イチジルグリセロールなどがある。 このグリセ口リン脂質は、 非極性部分が脂肪 酸のエステルであるものが多いがビュルエーテル結合をもつプラズマローゲン型 のものもある。
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このグリセ口リン脂質は、 生体膜の構成成分として重要であるが、 中でもブラ ズマローゲン型のグリセロリン脂質は、 ビュルエーテル結合のラジカル感受性が 高いため、 抗酸化性を有するリン脂質として、 近年注目されている。 最近、 ブラ ズマローゲン型ダリセロリン脂質が、 細胞膜の抗酸化性分であるひ—トコフエ口 ール (ビタミン E ) とは異なった機構により、 コレステロールを含むリン脂質膜 の酸化安定性に寄与していることが報告されており (例えば、 非特許文献 1参照 。 ) 、 またプラズマローゲン型グリセ口リン脂質は、 細胞膜ゃリポタンパク質の 抗酸化性に関与するだけでなく、 細胞の情報伝達システムに重要な役割を有する ことが指摘されている (例えば、 非特許文献 2参照) 。
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このようなプラズマローゲン型グリセ口リン脂質は、 痴呆症における脳の神経 細胞死を防止する作用が期待されているが、 安全で大量に入手可能な供給源は見 当たらないのが実状である。
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一方、 スフインゴ脂質は、 スフインゴシンなどの長鎖塩基をもつ脂質の総称で 、 前述したように主としてスフインゴ糖脂質とスフインゴリン脂質からなる。 ス フインゴ糖脂質は、 糖と長鎖脂肪酸の外に、 長鎖塩基であるスフインゴシンまた はフイ トスフインゴシン、 その他を含むものである。 最も単純なスフインゴ糖脂
質は、 セレブロシドであるが、 さらにそれに硫酸基のついたスルファチド、 中性 糖が数分子ついたセラミ ドオリゴへキソシド、 シアル酸のついたガンダリオシド などがある。 これらの物質は、 細胞表層に存在し、 認識機構に関与するものと考 えられている。
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スフインゴリン脂質は、 セラミ ド 1—リン酸の誘導体とセラミ ド 1—ホスホン 酸の誘導体に分けられ、 前者ではスフインゴミエリン、 後者ではセラミ ドシリア チン (セラミ ドアミノェチルホスホン酸) がよく知られている。
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これらのスフインゴ脂質は、 近年、 その分解代謝物であるセラミ ド、 スフイン ゴシン、 スフインゴシン一 1—リン酸などが細胞内の情報伝達に関与することが 明らかにされ、 注目されている。 また、 スフインゴ脂質は、 コレステロールなど とともに、 「ラフト」 と呼ばれる膜微小ドメインの形成に関与し、 この微小ドメ ィンが情報伝達の場として重要な役割を果たすことが明らかにされてきたことに より、 ますます注目の度を増している。
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このようなスフインゴ脂質は、 従来牛脳から抽出され、 利用されていたが、 安 全性の問題から、 現在穀物や真菌由来のものが利用されている。 しかしながら、 これらの穀物や真菌由来のスフインゴ脂質を構成するスフインゴィ ド塩基組成は 、 哺乳動物のものとは異なるため、. ヒ ト型のスフインゴ脂質と比べて生体利用性 が低いという問題があった。
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ところで、 食品、 動物組織などの総脂質から比較的多量のスフインゴミエリン を製造するためには、 ケィ酸などを使用したカラムクロマトグラフィーで段階的 に溶出して製造する力、 あるいは、 溶媒分画法で段階的に分画して製造されてい る。 いずれも、 複雑な手順が必要である。 溶媒分画法では総脂質にアセトンを加 えて複合脂質 (リン脂質) を沈殿させ (不溶部) 、 その不溶部をエーテルで洗つ てグリセ口リン脂質を除いたものを粗スフインゴ脂質画分とする方法が一般的で ある。 この画分にはスフインゴミエリンだけでなくセレブロシドなどのスフィン
ゴ糖脂質も含まれる。
[001 2]
一方、 鶏皮のリン脂質には、 ヒ ト型スフインゴミエリンおよびプラズマローゲ ン型グリセ口リン資質が多く含まれていることが知られている。
[001 3]
非特許文献 1 「J. L i p i d Re s. 」 、 第 44巻、 第 164〜: 1 71頁 ( 2003年)
非特許文献 2 「J. Mo 1. Ne u r o s c i . 」 、 第 16卷、 263〜 27 2頁; d i s c u s s i o n 279〜 284頁 (2001年) 発明の開示
発明が解決しようとする課題
[0014]
本発明は、 このような事情のもとで、 生物系素材から、 高純度のスフインゴミ エリン、 特にヒ ト型スフインゴミエリンおよび高純度プラズマローゲン型グリセ 口リン脂質を、 簡単な操作で収率よく製造する方法を提供することを目的とする ものである。 課題を解決するための手段
[0015]
本発明者らは、 前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、 生物系素材 に特定の工程を施すことにより、 その目的を達成し得ることを見出し、 この知見 に基づいて本発明を完成するに至った。
[001 6]
すなわち、 本発明は、
(1) (A) 生物系素材から抽出された乾燥総脂質を、 脂肪族炭化水素系溶剤 と水溶性ケトン系溶剤との混合溶剤で抽出処理し、 スフインゴミエリンを主体と する不溶部と、 可溶部とに分離する工程、 (B) 前記 (A) 工程で得られたスフ インゴミエリンを主体とする不溶部を、 脂肪族炭化水素系溶剤と水溶性ケトン系
溶剤との混合溶剤で洗浄処理し、 粗製スフインゴミエリンを得る工程、 (C) 前 記 (A) 工程で得られた可溶部を溶媒除去処理したのち、 水溶性ケトン系溶剤で 洗浄処理して粗製プラズマローゲン型グリセ口リン脂質を得る工程、 (D) 前記 (B) 工程で得られた粗製スフインゴミエリンに、 ダリセロリン脂質加水分解酵 素ホスホリパーゼを作用させて混在するグリセ口リン脂質群を加水分解処理した のち、 溶媒分配法により、 純度 9◦%以上のスフインゴミエリンを取得する工程 、 および (E) 前記 (C) 工程で得られた粗製プラズマローゲン型グリセ口リン 脂質に、 ダリセロリン脂質加水分解酵素ホスホリパーゼを作用させて混在する他 のダリセロリン脂質群を加水分解処理したのち、 溶媒分配法により、 純度 40 % 以上のプラズマローゲン型グリセ口リン脂質を取得する工程、 を含むことを特徴 とする高純度リン脂質の製造方法、
(2) 生物系素材が、 家禽類である上記 (1) 項に記載の高純度リン脂質の製 造方法、
(3) 家禽類が、 産卵廃鶏および Zまたは種鶏廃鶏である上記 (2) 項に記載 の高純度リン脂質の製造方法、
(4) 産卵廃鶏が、 強制換羽処理された産卵鶏から得られたものである上記 ( 3) 項に記載の高純度リン脂質の製造方法、
(5) 脂肪族炭化水素系溶剤が、 n キサンである上記 (1) (4) 項の いずれか 1項に記載の高純度リン脂質の製造方法、
(6) 水溶性ケトン系溶剤が、 アセトンである上記 (1) (5) 項のいずれ か 1項に記載の高純度リン脂質の製造方法、
(7) 上記 (1) (6) 項のいずれか 1項に記載の製造方法で得られ、 純度 が 90%以上であることを特徴とする高純度スフインゴミエリン、
(8) 上記 (1) (6) 項のいずれか 1項に記載の製造方法で得られ、 純度 が 40%以上であることを特徴とする高純度プラズマローゲン型グリセ口リン脂 質、
(9) 純度が 90%以上のプラズマローゲン型ホスファチジルコリンである上 記 (8) 項に記載の高純度プラズマローゲン型グリセ口リン脂質、 および
(10) 純度が 90%以上のプラズマローゲン型ホスファチジルエタノールアミ
ンである上記 (8) 項に記載の高純度プラズマローゲン型グリセ口リン脂質、 を提供するものである。 発明の効果
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本発明によれば、 生物系素材、 好ましくは家禽類から、 機能性食品素材、 医薬 品素材、 化粧品素材などとして有用な高純度スフインゴミエリン、 特にヒ ト型ス フインゴミエリンおよび高純度プラズマローゲン型グリセ口リン脂質を、 簡単な 操作で収率よく製造する方法、 並びにこの方法で得られた高純度スフインゴミエ リンおよび高純度プラズマローゲン型グリセ口リン脂質を提供することができる
図面の簡単な説明
[0018]
[図 1 _ 1] 実施例において、 鶏皮から総脂質を抽出する工程図である。
[図 1一 2] 実施例において、 鶏ムネ肉から総脂質を抽出する工程図である
[図 2] 実施例において、 鶏皮総脂質から、 粗製プラズマローゲンと粗製ス フインゴミエリンを抽出する工程図である。
[図 3] 実施例において、 鶏皮由来リン脂質類の HP LCチャートである。
[図 4]' 実施例において、 粗製スフインゴミエリンから、 精製スフインゴミ エリンを製造する工程図である。
[図 5] 実施例において、 鶏ムネ肉総脂質から、 粗製プラズマローゲン (混 合物) と粗製スフインゴミエリンを製造する工程図である。
[図 6] 実施例において、 粗製プラズマローゲンから、 精製プラズマローゲ ン (混合物) を製造する工程図である。
[図 7] 実施例において、 鶏ムネ肉由来リン脂質類の HP LCチャートであ る。
[図 8] 実施例において、 精製プラズマローゲンの高純度化とその分離方法
の説明図である 発明を実施するための最良の形態
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本発明の高純度リン脂質の製造方法は、 以下に示す (A) 工程、 (B ) 工程、 ( C ) 工程、 (D ) 工程および (E ) 工程から構成されている。
[ 0 0 2 0 ]
C (A) 工程]
この (A) 工程は、 生物系素材から抽出された乾燥総脂質を、 脂肪族炭化水素 系溶剤と水溶性ケトン系溶剤との混合溶剤で抽出処理し、 スフインゴミエリンを 主体とする不溶部と、 可溶部とに分離する工程である。
[ 0 0 2 1 ]
当該 (A) 工程において、 原材料として用いる生物系素材としては、 スフイン ゴミエリン、 特にヒ ト型スフインゴミエリンおよびプラズマローゲン型グリセ口 リン脂質を含むものであればよく、 特に制限されず、 種々の生物系素材を用いる ことができるが、 入手性、 目的物質の含有量、 および経済性などの観点から、 家 禽類が好ましく、 中でも産卵廃鶏やブロイラーの種鶏廃鶏 (雌雄) が好ましい。 部位としては、 表皮ゃムネ肉などの外に、 内臓、 首、 手羽先、 脚、 頭部、 ガラな どを用いることができる。
前記産卵廃鶏は、 産卵鶏が廃鶏化されたものである。 例えば白色羽系統 (ジュ リア) や褐色羽系統 (ポリスブラウン、 ソニァ) の産卵鶏を平均 5 5 0日齢で間 引きし、 数日絶食させ、 廃鶏化する。
この産卵廃鶏としては、 強制換羽処理された産卵鶏から得られたものが、 下記 の理由により好ましい。
上記強制換羽処理は、 約 5 0 0日齢過ぎの産卵効率が低下した産卵鶏を 1 0〜 1 4日間程度絶食させて、 強制的に羽根を抜く操作を行うことであり、 この処理 により、 産卵鶏の機能が再生され、 さらに、 2 0 0日間程度、 採卵期間を延長さ せることができる。 この強制換羽処理された産卵鶏の廃鶏化については、 上記に 準ずる。
なお、 上記の強制換羽処理された、 約 7 0 0日齢の産卵鶏を再度強制換羽処理 を施し、 最大 9 0 0日齢程度まで採卵期間を延長することもある (この処理をダ ブル強制換羽処理という。 ) 。
産卵鶏の好適な廃鶏化時期は、 5 0 0 9 5 0日齢、 より好ましくは 5 5 0 9 0 0日齢、 さらに好ましくは 6 0 0 7 5 0日齢である。
産卵鶏、 特に 5 0 0日齢以上の養鶏条件では、 他の鶏と比べて高いストレスが 掛かっており、 その結果、 産卵率向上という形で機能が再生されることからも明 らかなように、 加齢状態では含有率が低下する各種機能発現成分、 例えばホルモ ン、 ビタミン類、 サイト力インなどの微量成分などの分泌量が亢進し、 加齢に伴 う含有量の低下が抑えられることが考えられる。
一方、 ブロイラーの種鶏 (雌雄、 種類:チャンキー、 コブ) 廃鶏は、 平均 4 5 0日齢で廃鶏化されたものである。 ブロイラーの雄は頑健さが、 雌は健康が重視 されて育成され、 健康な受精卵を効率的に産生することが求められ、 一般的に恵 まれた飼育である。 したがって、 その廃鶏では、 機能発現成分含有量が、 最盛期 に比べて低下傾向を示すと考えられる。
このブロイラーの種鶏 (雌雄) の好適な廃鶏化時期は 3 0 0 5 5 0日齢、 よ り好ましくは 3 7 0 5 5 0日齢、 さらに好ましくは 4 0 0 4 5 0日齢である [ 0 0 2 2 ]
当該 (A) 工程においては、 まず生物系素材、 例えば産卵廃鶏や種鶏廃鶏の表 皮、 あるいはムネ肉などから、 総脂質を抽出し、 乾燥処理する。
[ 0 0 2 3 ]
鷄皮を用いる場合には、 ミンチ化や粉末化したものが好ましく、 例えば必要に 応じ、 脱脂処理し、 脂肪分をある程度除去したのち、 ミンチ化や粉末化してもよ い。 鶏表皮の脱脂処理には、 機械的方法、 温水浸漬加熱方法、 直接加熱方法、 脂 肪族炭化水素系溶媒 (n キサン) による方法などを採用することができる。 鶏ムネ肉を用いる場合には、 ムネ肉ミンチを用いることが好ましい。
[ 0 0 2 4 ]
次に、 前記鶏皮ミンチや粉末または鶏ムネ肉ミンチから、 溶剤を用いて総脂質
を抽出し、 乾燥して乾燥総脂質を得る。 溶剤としては特に制限はなく、 種々の溶 剤を用いることができるが、 n—へキサンとイソプロパノールとの混合溶剤が好 ましい。 n—へキサンとイソプロパノールとの混合溶剤は、 容量比で、 通常 8 : 2 4 : 6、 好ましくは 7 : 3 5 : 5である。
[0025]
抽出処理は、 常法に従って行うことができ、 また抽出液は、 常法に従い、 ロー タリエバポレーターなどを用いて溶剤を留去させることにより、 あるいは窒素ガ スを導入することなどにより、 乾燥総脂質が得られる。
[0026]
このようにして得られた乾燥総脂質を、 脂肪族炭化水素系溶剤と水溶性ケトン 系溶剤との混合溶剤で抽出処理し、 スフインゴミエリンを主体とする不溶部 (以 下、 粗スフインゴミエリンと称することがある。 ) と、 可溶部とに分離する。
[0027]
当該 (A) 工程において、 乾燥総脂質の抽出処理に用いられる混合溶剤の一成 分である脂肪族炭化水素系溶剤としては、 例えば n—ペンタン、 イソペンタン、 n—へキサン、 イソへキサン、 n—ヘプタン、 イソヘプタン、 シクロペンタン、 シクロへキサンなどが挙げられ、 これらは 1種を単独で用いてもよく、 2種以上 を混合して用いてもよいが、 これらの中で n—へキサンが好適である。
[0028]
また、 前記混合溶剤の他方の成分である水溶性ケトン系溶剤としては、 例えば ァセトンおよび またはメチルェチルケトンなどを用いることができるが、 これ らの中でァセトンが好適である。
[0029]
混合溶剤として、 n キサンとアセトンとの混合物を用いる場合、 その割合 は、 容量比で 4 : 6 6 : 4が好ましく、 4. 5 : 5. 5 5. 5 : 4. 5がよ り好ましい。
[0030]
また、 この混合溶剤の使用量は、 乾燥総脂質 l g当たり、 通常 10 30mL 程度である。 この混合溶剤の量が 1 OmL未満では、 抽出処理を十分に行うこと
ができず、 不溶部中のスフインゴミエリンの純度低下や回収率の低下を招くおそ れがある。 一方 30mLを超えると、 その量の割にはスフインゴミエリンの純度 や回収率の向上効果が発揮されにくい。 混合溶剤の好ましい使用量は、 乾燥総脂 質 l g当たり、 1 5〜25mLである。 抽出処理は常法に従って行うことができ る。
[0031]
抽出処理液は、 遠心分離処理を施すことにより、 可溶部とスフインゴミエリン を主体とする不溶部に分離することができる。
[0032]
[ (B) 工程]
この (B) 工程は、 前記 (A) 工程で得られたスフインゴミエリンを主体とす る不溶部を、 脂肪族炭化水素系溶剤と水溶性ケトン系溶剤との混合溶剤で洗浄処 理し、 粗製スフインゴミエリンを得る工程である。
[0033]
前記 (B) 工程において、 洗浄処理に用いられる混合溶剤の成分である脂肪族 炭化水素系溶剤および水溶性ケトン系溶剤については、 前記 (A) 工程で説明し たとおりである。
[0034]
混合溶剤として、 n—へキサンとアセトンとの混合物を用いる場合、 その割合 は、 容量比で 4 : 6〜6 : 4が好ましく、 4. 5 : 5. 5〜5. 5 : 4. 5がよ り好ましい。
このようにして、 粗製スフインゴミエリンが得られる。
[0035]
[ (C) 工程]
この (C) 工程は、 前記 (A) 工程で得られた可溶部を溶媒除去処理したのち 、 水溶性ケトン系溶剤で洗浄処理して粗製ブラズマローゲン型ダリセロリン脂質 を得る工程である。
[0036]
当該 (C) 工程における水溶性ケトン系溶剤としては、 例えばアセトンおよび
ノまたはメチルェチルケトンなどを用いることができるが、 これらの中でァセト ンが好適である。
[0037]
当該 (C) 工程においては、 まず、 前記 (A) 工程で得られた可溶部中の溶媒 を留去したのち、 残分を前記水溶性ケトン系溶剤で洗浄処理することにより、 粗 製プラズマローゲン型グリセ口リン脂質が得られる。
[0038]
[ (D) 工程]
この (D) 工程は、 前記 (B) 工程で得られた粗製スフインゴミエリンに、 グ リセロリン脂質加水分解酵素ホスホリパーゼを作用させて混在するグリセ口リン 脂質群を加水分解処理したのち、 溶媒分配法により、 純度 90%以上のスフイン ゴミエリンを取得する工程である。
[0039]
当該 (D) 工程においては、 まず前記 (B) 工程で得られた粗製スフインゴミ エリンに酵素ホスホリパーゼを作用させ、 該粗製スフインゴミエリン中に混在す るグリセ口リン脂質群を加水分解処理する。 この酵素反応においては、 酵素ホス ホリパーゼの使用量は、 粗製スフインゴミエリン 1 gに対して、 通常 0. 1 5〜 0. 45 g程度、 好ましくは 0. 2〜0. 3 gである。 反応温度は、 通常 30〜 70°C程度、 好ましくは 45〜55°Cであり、 pHは、 通常 3. 5〜5. 5程度 、 好ましくは 4〜 5である。 また、 反応時間は、 1〜 5時間程度で充分である。
[0040]
このようにして、 酵素反応を行ったのち、 溶媒分配法により、 スフインゴミエ リンを分離する。 溶媒分配法に用いられる溶剤としては、 脂肪族炭化水素系溶剤 と、 水溶性ケトン系溶剤との組合わせが好ましく、 脂肪族炭化水素系溶剤として は n—へキサンが、 水溶性ケトン系溶剤としてはアセトンが好適である。 n—へ キサンとアセトンの組合わせを用いる場合、 それらの使用割合は、 容量比で通常 4 : 6〜6 : 4が好ましく、 4. 5 : 5. 5〜5. 5 : 4. 5がより好ましい。
[0041]
溶媒分配法により分別処理後、 氷冷下で 1時間静置後遠心分離により固液を分
離し得られた固形分を、 脂肪族炭化水素系溶剤と水溶性ケトン系溶剤との混合溶 剤、 好ましくは容量比 4 : 6〜6 : 4の n—へキサンとアセトンとの混合溶剤で 洗浄処理し、 氷冷下で 1時間静置後遠心分離などの手段で固液分離することによ り、 純度 90 %以上、 好ましくは 95 %以上、 より好ましくは 99 %以上の高純 度スフインゴミエリンが得られる。
[0042]
[ (E) 工程]
この (E) 工程は、 前記 (C) 工程で得られた粗製プラズマローゲン型グリセ 口リン脂質に、 ダリセロリン脂質加水分解酵素ホスホリパ一ゼを作用させて混在 する他のダリセロリン脂質群を加水分解処理したのち、 溶媒分配法により、 純度
40%以上のプラズマローゲン型グリセ口リン脂質を取得する工程である。
[0043]
当該 (E) 工程においては、 まず、 前記 (C) 工程で得られた粗製プラズマ口 一ゲン型グリセ口リン脂質に酵素ホスホリパーゼを作用させ、 該粗製プラズマ口 一ゲン型グリセ口リン脂質中に混在する他のグリセ口リン脂質群を加水分解処理 する。 この酵素反応においては、 酵素ホスホリパーゼの使用量は、 粗製プラズマ ローゲン型グリセ口リン脂質 1 gに対して、 通常 0. 1 5〜0. 45 g程度、 好 まくは 0. 2〜0. 3 gである。 反応温度は、 通常 30〜70°C程度、 好ましく は 45〜55°Cであり、 pHは、 通常 3. 5〜5. 5程度、 好ましくは 4〜 5で ある。 また、 反応時間は、 1〜5時間程度で充分である。
[0044]
このようにして、 酵素反応を行ったのち、 溶媒分配法により、 プラズマローゲ ン型グリセ口リン脂質を抽出する。 溶媒分配法に用いられる溶剤としては、 脂肪 族炭化水素系溶剤と、 低級アルコール系溶剤との組合わせが好ましく、 脂肪族炭 化水素系溶剤としては n ^キサンが、 低級アルコール系溶剤としてはィソプロ パノールが好適である。 n—へキサンとイソプロパノールの組合わせを用いる場 合、 これらの使用割合は、 容量比で、 通常 8 : 2〜4 : 6、 好ましくは 7 : 3〜
5 : 5である。
[0045]
溶媒分配法により抽出処理後、 脂肪族炭化水素系溶剤層を水洗し、 該溶剤を留 去して得た固形分を、 脂肪族炭化水素系溶剤と水溶性ケトン系溶剤との混合溶剤
、 好ましくは容量比 4 : 6〜6 : 4の n—へキサンとアセトンとの混合溶剤で洗 浄処理し、 遠心分離などの手段で固液分離することにより、 純度 40%以上、 好 ましくは 95%以上、 より好ましくは 99%以上の高純度プラズマローゲン型グ リセロリン脂質が得られる。
また、 プラズマローゲン型ホスファチジルコリンとして、 純度 95%以上、 好 ましくは 99. 5%以上のものを得ることができ、 プラズマローゲン型ホスファ チジルエタノールァミンとして、 純度 95%以上、 好ましくは 99. 5%以上の ものを得ることができる。
[0046]
本発明の方法によれば、 原材料として鶏皮を用いる場合、 脱油濃縮鶏皮から、 通常純度 90%以上の高純度スフインゴミエリンを 0. 2〜0. 6質量%程度、 および純度 40 %以上の高純度 ·混合プラズマ口一ゲン型グリセロリン脂質を 0 . 3〜 2質量。 /0の割合で得ることができる。 原材料としてムネ肉を用いる場合、 通常純度 40%以上の高純度 ·混合プラズマローゲン型グリセ口リン脂質を 0. 2〜1質量0 /0程度、 及び純度 90%以上の高純度スフインゴミエリンを 0. 01 〜 0. 1質量%の割合で得ることができる。
[0047]
スフインゴミエリンは、 セラミ ドの第一級アルコール性ヒ ドロキシル基とコリ ンリン酸がリン酸ジエステル結合したもので、 下記の式 ( I )
[0048]
[化 1]
(式中、 R— COは脂肪酸残基を示す。 )
の構造を有し、 通常動物体の脳組織のみならず、 臓器組織にも広く存在する。
[0049]
本発明の方法で得られる鶏表皮由来の高純度スフインゴミエリンを構成するス フインゴイ ド塩基は、 大部分が 4—トランス一スフイングニン (スフインゴシン ) であることから、 当該スフインゴミエリンは、 生体利用性の高いヒ ト型スフィ ンゴミエリンである。
[0050]
スフインゴミエリンは、 その分解代謝物であるセラミ ド、 スフインゴシン、 ス フインゴシン一 1—リン酸などが脂肪内の情報伝達に関与することが明らかにさ れており、 またコレステロールなどとともに、 「ラフト」 と呼ばれる膜微小ドメ ィンの形成に関与し、 この微小ドメィンが情報伝達の場として重要な役割を果た すことが明らかにされている。 さらに、 スフインゴミエリンは、 皮膚の保湿効果 や大腸がん予防効果などが期待されている。
[0051]
一方、 本発明の方法で得られる高純度プラズマローゲン型グリセ口リン脂質に は、 主としてホスファチジルエタノールァミン (PE) が含まれており、 一部ホ スファチジルコリン (PC) が含まれている。 前記 PEは、 約 80質量%がプラ ズマローゲン型であり、 また PCにも約 30質量%のプラズマローゲン型が含ま れている。
[0052]
下記の式 (II) および式 (III) に、 それぞれジァシル型グリセ口リン脂質お よびプラズマローゲン型ダリセロリン脂質の構造を示す。
[0053]
R\ R2=長鎖肪肪族基
+
X=-CH2CH2NH2 一 CH2CH2N(CH3)3
[ 0 0 5 4 ]
通常のグリセ口リン脂質 (レシチン) は、 式 (II) で示されるようにグリセ口 ールの s n— 1 ( 1位) に脂肪酸ァシル基とのエステル結合をもつが、 プラズマ ローゲン型は、 式 (ΠΙ) で示されるようにグリセロールの s n— 1にァルケ二 ル基をもつビュルエーテル結合を有している。
[ 0 0 5 5 ]
なお、 Xがアミノエチル基である場合、 ホスファチジルエタノールァミンであ り、 Xがトリメチルアミノエチル基である場合、 ホスファチジルコリンである。
[ 0 0 5 6 ]
本発明においては、 酵素ホスホリパーゼを作用させることにより、 主として上 記式 (Π) で示される通常のグリセ口リン脂質群を加水分解し、 純度 9 0 %以上 の高純度スフインゴミエリンおよび純度 4 0 %以上の高純度プラズマローゲン型 ダリセロリン脂質を製造する。
[ 0 0 5 7 ]
前記プラズマローゲン型グリセ口リン脂質は、 ビュルエーテル結合のラジカル 感受性が高いため抗酸化性リン脂質として注目されており、 コレステロールを含 むリン脂質膜の酸化安定性に寄与していることが知られている。 またプラズマ口 一ゲン型グリセ口リン脂質は、 細胞膜ゃリポタンパク質の抗酸化性に関与するだ
けでなく、 細胞の情報伝達システムに重要な役割を有することが指摘されている 。 このようなプラズマローゲン型グリセ口リン脂質は、 痴呆症における脳の神経 細胞死を防止する作用や、 ァテローム性動脈硬化症の発症予防効果などが期待さ れている。
[0058]
本発明はまた、 前述した本発明の方法を用いて得られ、 純度が 90%以上であ る高純度スフインゴミエリンおよび純度が 40%以上である高純度プラズマロー ゲン型グリセ口リン脂質をも提供する。 実施例
[0059]
次に、 本発明を実施例により、 さらに詳細に説明するが、 本発明は、 これらの 例によってなんら限定されるものではない。
なお、 SM、 p 1 PC、 p i PEの意味は下記のとおりである。
SM :スフインゴミエリン
p 1 P C : プラズマローゲン型ホスファチジルコリン
p 1 P E : プラズマローゲン型ホスファチジルエタノールァミン
[0060]
実施例 1 産卵廃鶏の皮由来の SMおよび p 1 PEの調製
( 1 ) 鶏皮ミンチの脱油とその凍結乾燥品から総脂質の抽出 ·分離
産卵廃鶏 (ジュリア種、 550日齢) の生皮から得られた鶏皮ミンチ ( (農事 組合法人) ェヌチキン社 (鹿児島県南九州巿知覧町郡 3669) の 8 mmサイズ 調製品) 凍結品を脱油濃縮し、 これを常法で凍結乾燥して、 図 1一 1記載の総脂 質の抽出に供した。 26. 8%の収率で総脂質を得た。
[006 1 ]
(2) 廃鶏皮由来総脂質から粗 SMの抽出
図 2における図 2— 2記載の方法で、 総脂質 10 gから粗 SMが 0. 22 g ( 収率 2. 2%) 得られた。 該粗 SMを下記の条件 (以下、 「前記の条件」 と言う 。 ) で H PLC解析を行って、 純度が 85. 6%であることを明らかにした (図
3における図 3— 1) 。
[0062]
1 ) 使用機器名 : HPLC Ag i l e n t 1 100 s y s t em (A g i l e n t Te c h n o l o g i e s, To k y o )
2) カラム: L i c h r o s p h e r e 100 D i o l (250 X 4 mm , 5 μ m) (A g i l e n t Te c h n o l o g i e s, )
3 ) 流量: 0. 8m l Z分
4) 検出: E L SD
5) 移動相
A; へキサン イソプロパノール Z酢酸 (82 : 1 7 : 1、 v/v、 0. 008%TE A)
B ; イソプロパノール /蒸留水ノ酢酸 (85 : 14 : 1、 vZv、 0. 008%TEA)
なお時間帯と移動相 Aと Bの液組成について表 1に示す。 TEA : トリェチル ァミン
[0063]
1]
[0064]
(3) 廃鶏皮由来総脂質から粗 [p 1 PE+p 1 PC] の抽出
図 2における図 2— 1記載の方法を用い、 総脂質 10 gから粗 [p 1 PE + p 1 P C] を 0. 33 g (収率 3. 3 %) 分離した。 該粗 [ p 1 P E + p 1 P C] を前記の条件で HP LC解析を行って、 純度が 36%であることを明らかにした
一
(図 3における図 3— 3) 。
[0065]
(4) 粗 SM (純度 85. 6%) の酵素による精製
図 4記載の方法で 1 gの粗製品から精製 SM0. 75 g (収率 75%) が得ら れ、 前記の条件で純度解析を行った結果、 96. 2 %であることが判明した (図 3における図 3— 2) 。
[0066]
(5) 粗 [p l PE + p l PC] (純度 36%) の酵素による精製
図 6記載と同一の酵素処理及び抽出方法で 1 gの粗製品から精製 p 1 PE0. 5 g (収率 50%) が得られ、 前記の条件で純度解析を行った結果、 95%であ ることが判明した (図 3における図 3— 4) 。
[0067]
実施例 2 産卵廃鶏ムネ肉由来の 100%p 1 PEおよび 100%p 1 PCの調 製
[0068]
(1) 産卵廃鶏 (ジュリア種、 550日齢) のムネ肉のミンチ化とその凍結乾燥 品から総脂質の抽出 '分離
産卵廃鶏の剥皮ムネ肉から得られたムネ肉ミンチ ( (農事組合法人) ェヌチキ ン社 (鹿児島県南九州市知覧町郡 3669) の 8 mmサイズ調製品) 凍結品を常 法で凍結乾燥して、 図 1一 2記載の総脂質の抽出に供した。 3 %の収率で総脂質 3 gを得た。
[0069]
(2) 廃鶏ムネ肉由来総脂質から粗 「p 1 PC + p 1 PE」 の抽出
図 5記載の方法で、 総脂質 1 O gから粗 「p l PC+p l PE」 が 1. 35 g (収率 1 3. 5%) 得られた。 該粗 「p 1 PC + p 1 PE」 を前記の条件で H P
LC解析を行って、 純度が 40. 6%であることを明らかにした (図 7における 図 7— 1) 。
[0070]
(3) 粗 「p l PC + p l PE」 の酵素処理と抽出による精製
図 6記載の方法で、 粗 「p l PC+p l PE」 1 gから精製 「p 1 PC+p 1 PE」 が 0. 65 g (収率 65%) が得られ、 前記の条件で HP LC純度解析を 行った結果、 「p 1 PC + p 1 PE」 の純度は 95. 4%であった (図 7におけ る図 7— 2) 。
[0071]
(4) 高純度 「p l PC+p 1 PE」 から 100% p I PCと 100% p 1 PE の分離 ·精製
高純度 「p l PC+p l PE」 1 gから図 8記載の方法で HP LCを通して p 1 PCと p 1 PEを分取精製し、 前者画分 0. 586 gと後者画分 0. 368 g (合計収率 95. 4 %) を得た。
前記の条件で HP L C純度解析を行った結果、 図 7における図 7— 3及び図 Ί 一 4に示した通り、 各々の純度は 100%であった。
[0072]
実施例 3 ブロイラー種鶏雄の廃鶏表皮から 100%SMと高純度 [p 1 PE + p 1 PC] および 100%p 1 P Eと 100%p 1 PCの調製
[0073]
( 1 ) 脱油ミンチ皮凍結乾燥物から総脂質の抽出 ·分離
チャンキー種鶏雄 (450日齢) の廃鶏 5羽 (平均質量 5. 9 k g) 各々の生 皮から得られた鶏皮ミンチ ( (農事組合法人) ェヌチキン社 (鹿児島県南九州巿 知覧町郡 3669) の 8 mmサイズ調製品) 凍結品を脱油濃縮し、 これを常法で 凍結乾燥して、 各々を図 1一 1記載の総脂質の抽出に供した。 平均 5. 5%の収 率 (凍結乾燥質量当たり) で総脂質を得た。
[0074]
(2) 種鶏雄廃鶏の鶏皮由来総脂質から粗 SMの抽出
図 2における図 2— 2記載の方法で、 総脂質 10 gから粗 SMが 0. 85 g ( 収率 8. 5%) 得られた。 該粗 SMを前記の条件で HP LC解析を行って、 純度 が 85%であることを明らかにした。
[0075]
(3) 種鶏雄廃鶏の鶏皮由来の粗 SM (純度 85%) の酵素による精製
図 4記載の方法で 1 gの粗製品から精製 SMO. 74 g (収率 74%) が得ら れ、 前記の条件で純度解析を行った結果、 1 00 %であることが判明した。
[00 76]
(4) 種鶏雄廃鶏の鶏皮由来総脂質から粗 [p 1 PE + p 1 PC] の抽出 図 2における図 2— 1記載の方法で、 総脂質 1 0 gから粗 [p 1 PE+ p 1 P C] が 2. 1 1 g (収率 2 1. 1 %) 得られた。 該粗 [p l PE+ p l PC] を 前記の条件で H P L C解析を行って、 純度が 40 %であることを明らかにした。
[00 7 7]
(5) 種鶏雄廃鶏の鶏皮由来粗 [p 1 PE+p 1 PC] (純度 40%) の酵素に よる精製
図 6記載と同一の酵素処理及び抽出方法で 1 gの粗製品から精製 [p 1 PE + p 1 PC] 0. 35 g (収率 3 5%) が得られ、 前記の条件で HP LC純度解析 を行つた結果、 96 %であることが判明した。
[00 78]
(6) 種鶏雄廃鶏の鶏皮由来高純度 「p 1 PE+ p 1 PC」 から 1 00%p 1 P Eと 1 00 % p 1 P Cの分離 ·精製
高純度 「p l PC+ p l PE」 1 gから図 8記載の方法で HP LCを通して p 1 PEと p 1 PCを分取精製し、 前者画分 0. 7 1 8と後者画分0. 23 g ( 合計収率 94 %) を得た。
前記の条件で H P L C解析を行った結果、 各々の純度は 1 00 %であった。
[00 7 9]
実施例 4 ブロイラー種鶏雄の廃鶏ムネ肉から高純度 [p 1 PC+ p 1 PE] お よび 1 00% p 1 PCと 1 00% p 1 PEの調製
[0080]
(1) 種鶏雄廃鶏のムネ肉のミンチ化とその凍結乾燥品から総脂質の抽出 '分離 チャンキー種鶏雄の廃鶏 (450日齢) 5羽 (平均質量 5. 9 k g) 各々の剥 皮ムネ肉から得られたムネ肉ミンチ ( (農事組合法人) ェヌチキン社 (鹿児島県 南九州巿知覧町郡 36 6 9) の 8 mmサイズ調製品) 凍結品を常法で凍結乾燥し て、 図 1一 2記載の総脂質の抽出に供した。 平均 0. 9%の収率 (生ムネ肉ミン
チ当たり) で総脂質を得た。
[0081]
(2) 種鶏雄の廃鶏ムネ肉由来総脂質から粗 [p 1 PC+p 1 PE] の抽出 図 5記載の方法で、 総脂質 10 gから粗 [p l PC+p l PE] が 3. 05 g (収率 30. 5%) 得られた。 該粗 [p 1 PC+p 1 PE] を前記の条件で HP LC解析を行って、 純度が 39. 9%であることを明らかにした。
[0082]
(3) 種鶏雄の廃鶏ムネ肉由来粗 [p 1 PC + p 1 PE] の酵素処理と抽出によ る精製
図 6記載の方法で、 粗 [p l PC + p l PE] 1 gから精製 [p 1 PC+p 1 PE] が 0. 42 g (収率 42%) が得られ、 前記の条件での HP LC純度解析 の結果、 [p l PC+p l PE] の純度が 95%であることを明らかにした。
[0083]
(4) 種鶏雄の廃鶏ムネ肉由来高純度 「p 1 PC + p 1 PE」 から 100%p 1 PCと 100%p l PEの分離 .精製
高純度 「p l PC+p l PE」 1 gから図 8記載の方法で HP LCを通して p 1 PCと p 1 PEを分取精製し、 前者画分 0. 65 gと後者画分 0. 25 g (合 計収率 90%) を得た。
前記の条件での H P L C純度解析の結果、 各々の純度は 100 %であった。
[0084]
実施例 5 種鶏雌の廃鶏表皮から 100 % SMと高純度 [ p 1 P E + p 1 P C] および 100 % p 1 P Eと 100 % p I PCの調製
[0085]
(1) 種鶏雌の廃鶏表皮ミンチから総脂質の抽出 ·分離
チャンキー種鶏雌 (450日齢) の廃鶏 5羽 (平均質量 5. 9 k g) 各々の生 皮から得られた鶏皮ミンチ ( (農事組合法人) ェヌチキン社 (鹿児島県南九州巿 知覧町郡 3669) の 8 mmサイズ調製品) 凍結品を脱油濃縮し、 これを常法で 凍結乾燥して、 各々を図 1一 1記載の総脂質の抽出に供した。 平均 27%の収率 で総脂質を得た。
[0086]
(2) 種鶏雌の廃鶏の鶏皮由来総脂質から粗 SMの抽出
図 2における図 2— 2記載の方法で、 総脂質 10 gから粗 SMが 0. 33 g ( 収率 3. 3%) 得られた。 該粗 SMを前記の条件で HP LC解析を行って、 純度 が 83%であることを明らかにした。
[0087]
(3) 種鶏雌の廃鶏皮由来粗 SM (純度 83%) の酵素による精製
図 4記載の方法で 1 gの粗製品から精製 SM0. 75 g (収率 75%) が得ら れ、 前記の条件で純度解析を行った結果、 100 %であることが判明した。
[0088]
(4) 種鶏雌の廃鶏皮由来総脂質から粗 [p 1 PE + p 1 PC] の抽出 図 2における図 2— 1記載の方法で、 総脂質 10 gから粗 [p 1 PE+p 1 P C] が 0. 24 g (収率 2. 4%) 得られた。 該粗 [p 1 PE + p 1 PC] を前 記の条件で HP LC解析を行って、 純度が 40%であることを明らかにした。
[0089]
(5) 種鶏雌の廃鶏皮由来粗 [p 1 PE+p 1 PC] (純度 40%) の酵素によ る精製
図 6記載と同一の酵素処理及び抽出方法で 1 gの粗製品から精製 [p 1 PE + p i PC] 0. 32 (収率 32%) が得られ、 前記の条件で純度解析を行った結 果、 95 %であることが判明した。
[0090]
(6) 種鶏雌の廃鶏皮由来高純度 [p 1 PE + p 1 PC] から 100%p 1 PE と 100%p 1 PCの分離 ·精製
高純度 [p 1 PE+p 1 PC] 1 gから図 8記載の方法で HP LCを通して p 1 PEと p 1 PCを分取精製し、 前者画分 0. 81 §と後者画分0. 14 g ( 合計収率 95 %) を得た。
前記の条件で H P L C純度解析の結果、 各々の純度は 100 %であった。
[0091]
実施例 6 種鶏雌の廃鶏ムネ肉から高純度 [p l PE + p l PC] と 100%p
1 PEおよび 100%p 1 PCの調製
[0092]
( 1 ) 種鶏雌の廃鶏のムネ肉のミンチから総脂質の抽出 ·分離
チャンキー種鶏雌 (450日齢) の廃鶏 5羽 (平均質量 3. 8 k g) 各々の剥 皮ムネ肉から得られたムネ肉ミンチ ( (農事組合法人) ェヌチキン社 (鹿児島県 南九州市知覧町郡 3669) の 8 mmサイズ調製品) 凍結品を常法で凍結乾燥し て、 図 1 _ 2記載の総脂質の抽出に供した。 平均 2. 35%の収率 (生ムネ肉ミ ンチ当たり) で総脂質を得た。
[0093]
(2) 種鶏雌の廃鶏ムネ肉由来総脂質から粗 [p 1 PC+p 1 PE] の抽出 図 5記載の方法で、 総脂質 10 gから粗 [p l PC+p l PE] が 5. 2 g ( 収率 52%) 得られた。 該粗 [p 1 PC+p 1 PE] を前記の条件で H PLC解 析を行って、 純度が 49%であることを明らかにした。
[0094]
(3) 種鶏雌の廃鶏ムネ肉由来粗 [p 1 PC+p 1 PE] の酵素処理と抽出によ る精製
図 6記載の方法で、 粗 [p 1 PC+p 1 PE] 1 gから精製 [p 1 PC + p 1 PE] が 0. 42 g (収率 42%) が得られ、 前記の条件による HP LC純度解 析で [p 1 PC+p 1 PE] の純度が 95%であることを明らかにした。
[0095]
(4) 種鶏雌の廃鶏ムネ肉由来高純度 [p 1 PC+p 1 PE] から 100%p 1 P Cと 100 % p 1 P Eの分離 ·精製
高純度 [P 1 PC + p 1 PE] 1 gから図 8記載の方法で HP LCを通して p 1 PCと p 1 PEを分取精製し、 前者画分 0. 65 gと後者画分 0. 25 g (合 計収率 90 %) を得た。
前記の条件での HP L Cによる純度解析の結果、 図 7における図 7 _ 3及び図 7— 4に示した通り、 各々の純度は 100%であった。
[0096]
実施例 7 産卵廃鶏の皮由来の SMおよび p 1 PEの調製
(1) 鶏皮ミンチの脱油品から総脂質の抽出 ·分離
産卵廃鶏 (強制換羽を行った 738日齢のジュリア種、 「前記」 と言う。 ) の 生皮から得られた鶏皮ミンチ ( (農事組合法人) ェヌチキン社 (鹿児島県南九州 巿知覧町郡 3669) の 8 mmサイズ調製品) 凍結品を脱油濃縮して、 図 1一 1 記載の総脂質の抽出に供した。 23. 5%の収率で総脂質を得た。
[0097]
(2) 廃鶏皮由来総脂質から粗 SMの抽出
図 2における図 2— 2記載の方法で、 総脂質 10 gから粗 SMが 0. 25 g ( 収率 2. 5%) 得られた。 該粗 SMを前記の条件で HP LC解析を行った結果、 純度は 86. 2%であった。
[0098]
(3) 廃鶏皮由来総脂質から粗 [p 1 PE + p 1 PC] の抽出
図 2における図 2— 1記載の方法を用い、 総脂質 10 gから粗 [p 1 PE + p 1 PC] を 0. 4 g (収率 4. 0%) 分離した。 該粗 [p l PE+p l PC] を 前記の条件で H P L C解析を行った結果、 純度は 38 %であった。
[0099]
(4) 粗 SM (純度 86. 2%) の酵素による精製
図 4記載の方法で 1 gの粗製品から精製 SM0. 78 g (収率 78%) が得ら れ、 前記の条件で純度解析を行った結果、 96. 9 %であることが判明した。
[0100]
(5) 粗 [p l PE+p l PC] (純度 38%) の酵素による精製
図 6記載と同一の酵素処理及び抽出方法で 1 gの粗製品から精製 p 1 PE 0. 55 g (収率 55%) が得られ、 前記の条件で純度解析を行った結果、 96. 2 %であることが判明した。
[0101]
実施例 8 産卵廃鶏ムネ肉由来の 100%p 1 PEおよび 100%p 1 PCの調 製
(1) 産卵廃鶏のムネ肉のミンチから総脂質の抽出 '分離
産卵廃鶏 (前記) の剥皮ムネ肉から得られたムネ肉ミンチ ( (農事組合法人)
ェヌチキン社 (鹿児島県南九州市知覧町郡 3669) の 8mmサイズ調製品) 凍 結品を、 図 1一 2記載の総脂質の抽出に供した。 2. 6%の収率で総脂質 2. 6 gを得た。
[0102]
(2) 廃鶏ムネ肉由来総脂質から粗 「p 1 PC+p 1 PE」 の抽出
図 5記載の方法で、 総脂質 10 gから粗 「p l PC+p l PE」 が 1. 51 g (収率 1 5. 1%) 得られた。 該粗 「p 1 PC+p 1 PE」 を前記の条件で HP LC解析を行ったところ、 純度は 4 1. 2%であった。
[0103]
(3) 粗 「p 1 PC+p 1 PE」 の酵素処理と抽出による精製
図 6記載の方法で、 粗 「p 1 PC+p 1 PE」 1 gから精製 「p 1 PC+p 1 PEj が 0. 75 g (収率 75%) が得られ、 前記の条件で HP LC純度解析を 行った結果、 「p 1 PC+p 1 PE」 の純度は 96. 2%であった。
[0104]
(4) 高純度 「p 1 PC+p 1 PE」 から 100% p 1 PCと 100% p 1 PE の分離 ·精製
高純度 「p l PC+p l PE」 1 gから図 8記載の方法で H PLCを通して p 1 PCと p 1 PEを分取精製し、 前者画分 0. 59 gと後者画分 0. 37 g (合 計収率 96. 0 %) を得た。
前記の条件で H P L C純度解析を行った結果、 各々の純度は 100 %であった
[0105]
産卵廃鶏の皮由来の SMおよび p 1 PEについて、 実施例 1と実施例 7を比較 すると、 通常の産卵廃鶏を用いた実施例 1では、 精製 p 1 PEの収率は 50%、 純度は 95%、 精製 SMの収率は 75%、 純度は 96. 2%であるのに対して、 強制換羽を行った産卵廃鶏を用いた実施例 7では、 精製 p 1 PEの収率は 55% 、 純度は 96. 2%、 精製 SMの収率は 78%、 純度は 96. 9%であった。 また、 産卵廃鶏ムネ肉由来の 「p 1 PC+p 1 PE」 について、 実施例 2と実 施例 8を比較すると、 通常の産卵廃鶏を用いた実施例 2では、 精製 「p 1 PC +
p 1 PE」 の合計収率は 95. 4%、 純度はそれぞれ 100%であるのに対して 、 強制換羽を行った産卵廃鶏を用いた実施例 8では、 精製 「p l PC + p l PE 」 の合計収率は 96. 0 %、 純度はそれぞれ 100 %であった。
このように、 強制換羽を行った産卵廃鶏は、 通常の産卵廃鶏に比べて、 精製 p 1 PEの収率および純度、 精製 SMの収率および純度、 並びに精製 「p 1 PC + p 1 PE」 の合計収率がいずれも高いことが分かる。 産業上の利用可能性
[0106]
本発明の高純度リン脂質の製造方法によれば、 家禽類などの生物系素材を原材 料に用い、 機能性食品素材、 医薬品素材、 化粧品素材などとして有用な高純度ス フインゴミエリン、 特にヒ ト型スフインゴミエリンおよび高純度プラズマローゲ ン型グリセ口リン脂質を、 簡単な操作で収率よく製造することができる。