WO2009088036A1

WO2009088036A1 - 熱間加工用潤滑剤および継目無鋼管の製造方法

Info

Publication number: WO2009088036A1
Application number: PCT/JP2009/050129
Authority: WO
Inventors: Kenichi Saito; Sumio Iida
Original assignee: Sumitomo Metal Industries, Ltd.
Priority date: 2008-01-11
Filing date: 2009-01-08
Publication date: 2009-07-16
Also published as: EP2243820B1; BRPI0907375B1; EP2243820A4; JP4458167B2; JP2009167242A; MX2010007575A; BRPI0907375B8; US8024953B2; CN101910388A; EP2243820A1; US20100263422A1; BRPI0907375A2; CN101910388B

Abstract

　熱間塑性加工用潤滑剤は、酸化鉄２０～４０質量％、珪酸ナトリウム１０～３０質量％を含有し、不純物が３質量％以下で、かつ、水分を４０～６０質量％を含有するものであり、これらの成分の総合的な作用によって、潤滑性および供給性に優れ、製品の耐食性に悪影響を及ぼさない。この潤滑剤は、例えば高Ｃｒ鋼の穿孔圧延時におけるガイドシューの潤滑に用いるのに好適であり、穿孔圧延直前、望ましくは穿孔圧延開始前１秒以内に被加工材外表面に直接塗布することにより、製品外面における焼付き疵の発生防止に多大な効果を発揮する。

Description

熱間加工用潤滑剤および継目無鋼管の製造方法

　本発明は、熱間加工による継目無鋼管の製造において、被加工材と熱間加工工具（以下、単に「工具」という）との間の摩擦を軽減し、焼付きを防止することができる潤滑剤に関する。具体的には、穿孔圧延機による継目無鋼管の製造において、ビレット（被加工材）とガイドシュー（工具）との摩擦を軽減し、焼付きを防止することができる潤滑剤に関する。また、本発明は、この潤滑剤を用いた継目無鋼管の製造方法に関する。

　なお、別に記載がない限り、本明細書における用語の定義は次の通りである。
　「％」：対象物に含まれる各成分の重量百分率を表す。
　「鋼管」：Ｆｅ、Ｎｉ、Ｃｒの含有率の合計が５０％以上の金属管をいう。

　［継目無鋼管の製造方法］
　継目無鋼管は、マンネスマン方式により製造することができる。この方式は、次のステップからなる：
　（１）穿孔圧延機（ピアサー）により、ビレットを穿孔圧延し、素管（以下、「ホローシェル」という）を形成する；
　（２）延伸圧延機（例：マンドレルミル）により、ホローシェルを延伸圧延する；
　（３）定径圧延機（例：ストレッチレデューサー）により、延伸圧延したホローシェルを定径圧延する。

　穿孔圧延機は、ガイドシューを備える。穿孔圧延する際に、ビレットの外径が必要以上に増大するのを防ぐためである。穿孔圧延は、ビレットの外面がガイドシューと接触した状態で行われる。ビレットの外面とガイドシューとの間の潤滑が不十分であれば、ビレットがガイドシューに焼付く。すると、ガイドシューに焼付き疵が発生するだけでなく、ホローシェルの外面にシューマークと呼ばれる焼付き疵が発生する。

　ガイドシューには、（１）固定式のプレート型、（２）回転式のディスク型、の２種類がある。いずれの型のガイドシューでも、上記の焼付きを防止することが必要である。そのために、ビレット外面とガイドシューとの間の潤滑が十分であることがきわめて重要である。

　潤滑方法についての従来技術は、下記のものがある。

　特開昭６０－２１１１１号公報には、金属酸化物粉体からなる焼付防止剤とバインダーとの混合塗料を塗布する穿孔圧延方法が開示されている。

　特開平０７－１２６６８４号公報には、酸化鉄の粉末、アクリル酸系水溶性高分子および界面活性剤を含むステンレス鋼の熱間圧延用潤滑剤が開示されている。

　特開平１１－３５９６７号公報には、酸化鉄、珪酸ナトリウム、澱粉類、キサンタンガムを含む熱間加工用潤滑剤が開示されている。

　特許第２６３８３１７号公報には、金属酸化物粉末およびケイ酸ナトリウムを含有する水溶液からなり、粘度が２００ｃｐ以上４０００ｃｐ未満である熱間管圧延用潤滑剤を、加熱された熱間状態の被圧延材の表面にスプレー塗布すること、が記載されている。

　しかし、難加工材（例：１３％Ｃｒ鋼）を穿孔する際、これらの文献に開示される潤滑剤では、ガイドシューとホローシェルとの間の潤滑が十分でない。そのため、これらの潤滑剤では焼付き疵の発生を防止することは難しい。

　特開平７－２８４８１７号公報には、膨潤雲母水溶液に固体潤滑剤を混合した潤滑剤を、被圧延材とガイドシューとの間に供給し圧延する方法、が記載されている。しかし、この文献に開示されている潤滑剤は、被圧延材に塗布した時に突沸し、潤滑剤が被圧延材から剥がれてしまうという課題がある。そのため、この潤滑剤でも焼付き疵の発生を防止することは難しい。

　本発明の目的は、次の特性を有する熱間加工用潤滑剤を提供することである：
　（１）潤滑性に優れていること；
　（２）必要箇所への供給性に優れていること。特に、被加工材の表面にスケールが存在している場合でも、被加工材の表面に潤滑剤を円滑に供給し適切な量付着できること；
　（３）耐食性能維持性に優れていること。すなわち、潤滑剤が加工後の製品表面に残留しても、製品の耐食性を損なわないこと。

　本発明の他の目的は、本発明の潤滑剤を用いた継目無鋼管の製造方法を提供することである。

　本発明の要旨は、次の通りである。

　（Ｉ）熱間加工用潤滑剤であって、
　当該潤滑剤は酸化鉄２０～４０質量％および珪酸ナトリウム１０～３０質量％を含有し、
　不純物が３質量％以下であり、
　水分が４０～６０質量％であること、
　を特徴とする熱間加工用潤滑剤。

　（II）被加工材の表面に前記（Ｉ）に記載の熱間加工用潤滑剤を塗布し、直ちに当該被加工材を熱間加工すること、
　を特徴とする継目無鋼管の製造方法。

　本発明の熱間加工用潤滑剤は、下記の顕著な効果を有する：
　（１）潤滑性に優れていること；
　（２）供給性に優れていること；
　（３）耐食性能維持性に優れていること。

　本発明の熱間加工用潤滑剤は、潤滑性に優れている。そのため、焼付き防止に顕著な効果を発揮する。さらに本発明の潤滑剤は、供給性に優れている。そのため、高温の被加工材表面、その他供給が困難な部分へ潤滑剤を供給することができる。すなわち、被加工材表面にスケールが存在しても、被加工材の表面に十分な量の潤滑剤を付着させることができ、被加工材表面と工具との界面に潤滑剤を供給することが可能である。これらの効果により、本発明の潤滑剤は熱間加工用の潤滑剤として有効である。特に、難加工材（例：８～２５質量％のＣｒを含む鋼）の穿孔圧延において、ガイドシュー、さらには製品外面の焼付き疵の発生防止に多大な効果を発揮する。加えて、本発明の潤滑剤は、耐食性能維持性に優れている。そのため、潤滑剤が加工後の製品の表面に残留しても、製品の耐食性が劣化しない。

　本発明の潤滑剤の優れた特性は、本発明の継目無鋼管の製造方法で十分に発揮させることができる。

　［本発明の潤滑剤］
　本発明の潤滑剤は、酸化鉄を、珪酸ナトリウムと水との混合物（水ガラス）中に分散させたものである。酸化鉄は、粉末状のものが好ましい。

　本発明の潤滑剤は、上記の成分のほかに、酸化鉄を安定して分散させるための安定化剤を含有してもよい。安定化剤の含有量は、潤滑剤１リットルに対し２０～１００グラム程度がよい。

　本発明の潤滑剤は、調製の過程で不純物が混入し易い。不純物には、酸化亜鉛（ＺｎＯ）、酸化鉛（ＰｂＯ）および酸化銅（ＣｕＯ）の３種の酸化物が例示される。これら３種の酸化物は本発明の潤滑剤の性能に及ぼす影響が大きい。そのため、本発明の潤滑剤中の不純物量の上限を規定した。

　本発明の潤滑剤は、Ｃｒを多く含有する継目無鋼管の製造に好適である。特に、８～２５質量％のＣｒを含有する鋼（例：ＳＵＳ４２０Ｈ相当鋼、ＳＵＳ３０４相当鋼、２５Ｃｒ系二相ステンレス鋼）からなる継目無鋼管の製造に適している。

　本発明の潤滑剤の各成分について説明する。

　（１）酸化鉄：２０～４０質量％
　酸化鉄は、焼付き防止効果を得るために必要な成分である。酸化鉄は、酸化鉄（II）（ＦｅＯ）、酸化鉄（III）（Ｆｅ_２Ｏ_３）、酸化鉄（II、III）（Ｆｅ_３Ｏ_４）のいずれでもよい。これら酸化鉄の二種以上を含んでもよい。潤滑剤中の酸化鉄の量は、２０～４０質量％である。酸化鉄の量が２０質量％未満では、被加工材とこれに接触する部材間に焼付きが生じる。一方、酸化鉄の量が４０質量％を超えると、潤滑剤中の珪酸ナトリウム含有量に比べて酸化鉄が多過ぎ、潤滑剤の供給性が悪化する。この場合、潤滑剤が加工摺動界面（被加工材と、工具（例：ガイドシュー）との界面）へ引き込まれ難くなる。

　（２）珪酸ナトリウム：１０～３０質量％
　珪酸ナトリウムは、酸化鉄の粒子を結合する作用を有する。この作用により、酸化鉄の粒子が加工摺動界面に引き込まれやすくなる。珪酸ナトリウムは、この効果のために必要な成分である。潤滑剤中の珪酸ナトリウムの量は、無水物換算で１０～３０質量％である。潤滑剤中の珪酸ナトリウムの量が１０質量％未満では、潤滑剤の供給性が低下し、潤滑剤が加工摺動界面へ引き込まれ難くなる。潤滑剤中の珪酸ナトリウムの量が３０質量％を超えると、酸化鉄に対して珪酸ナトリウムの含有量が多過ぎ、酸化鉄による焼付き防止効果が低下する。

　（３）不純物：３質量％以下
　不純物は少ないことが望ましい。本発明の潤滑剤を調製する過程で、酸化鉄等に付随して酸化亜鉛（ＺｎＯ）、酸化鉛（ＰｂＯ）および酸化銅（ＣｕＯ）等が混入する。例えば、酸化鉄の原料として亜鉛メッキラインの酸洗スライム（slime）や製鋼スラグを使用すると、酸化亜鉛等が不純物として混入する。

　不純物が多く含まれていると、耐食性能維持性が低下し、潤滑剤が製品の表面に残留した場合に、不純物が製品の耐食性を劣化させる。不純物中の酸化物は高温で還元され、製品自体と反応して耐食性の低い合金を形成するからである。

　潤滑剤中の不純物量が３質量％以下であれば、耐食性を劣化させる作用は小さく、問題とならない。潤滑剤中の不純物量が３質量％を超えると、潤滑剤の耐食性能維持性が低下し、潤滑剤の焼付き防止効果も低下する。

　（４）水分：４０～６０質量％
　本発明の潤滑剤は、水分を含有する。潤滑剤中の水分を４０～６０質量％とすることにより、潤滑剤の供給性と潤滑性とを両立させることができる。潤滑剤中の水分が４０質量％未満では、潤滑剤の粘度が高くなる。そのため、被加工材表面へ潤滑剤を供給することが困難となり、潤滑性が低下する。水分が６０質量％を超えると、高温の被加工材表面へ潤滑剤を供給し付着したときに、突沸現象（潤滑剤中の水が激しく水蒸気化すること）が生じる。その現象により、潤滑剤が飛散し、潤滑剤が被加工材表面に十分に付着しない。この現象は、被加工材の温度が高い第１の穿孔で顕著に発生する。

　本発明の潤滑剤に含まれる珪酸ナトリウムおよび水分として、水ガラスを用いてもよい。水ガラスは、水ガラス１号（Ｎａ_２Ｏ：ＳｉＯ_２＝１：２）、水ガラス３号（Ｎａ_２Ｏ：ＳｉＯ_２＝１：３）、水ガラス４号（Ｎａ_２Ｏ：ＳｉＯ_２＝１：４）のいずれでもよい。

　（５）その他の成分
　酸化鉄の粉末を安定して分散させるために、本発明の潤滑剤に安定化剤を添加してもよい。安定化剤の例は次の通りである：ナフタリンスルフォン酸ソーダフォルマリン縮合物、スチレン・無水マレイン酸共重合樹脂のソーダ塩、ポリアクリル酸ソーダ塩、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル等。

　本発明の潤滑剤を被加工材表面に供給する方法は、限定されない。通常は、潤滑剤を被加工材の表面に直接塗布する。望ましい方法には、スプレー法（ノズルを用い潤滑剤を霧状にして噴射させる方法）がある。作業能率がよく、均一な塗布が可能だからである。本発明の潤滑剤は液体なので、スプレー法による塗布が可能である。

　本発明の熱間加工用潤滑剤は、潤滑性に優れている。そのため、特に難加工材の熱間穿孔において、ガイドシューにおける焼付き疵の発生、さらには製品の外面疵の発生を防止することができる。また、本発明の潤滑剤は、耐食性能維持性に優れている。そのため、残留した潤滑剤に起因して製品の耐食性等が損なわれることはない。

　本発明の潤滑剤は、供給性に優れている。そのため、高温の被加工材表面、その他潤滑剤の供給が困難な部分へ潤滑剤を供給することが可能である。すなわち、穿孔圧延直前に、スケールの有無にかかわらず、ビレット（被加工材）の表面に潤滑剤を塗布し付着させることができ、さらに潤滑剤を被加工材とガイドシューの間に効率的に供給することができる。望ましくは、穿孔圧延開始前の１秒以内に被加工材表面に潤滑剤を塗布する。搬送中に潤滑剤が剥離せず十分な潤滑性が得られる上、ビレット表面にスケールが存在しても、潤滑剤がスケールに強固に固着せず、穿孔時に外面疵を発生させないためである。

　本発明の潤滑剤を穿孔圧延直前に被加工材表面に直接塗布すれば、継目無鋼管の製造において、本発明の潤滑剤の優れた特性を十分に発揮させることができる。

　（実施例１）
　表１に示す成分構成の潤滑剤を用いて、マンネスマン－ピアサーによる穿孔圧延を行った。その条件は下記のとおりである。

　　被加工材の寸法：直径が２２５ｍｍ、長さが３０００ｍｍ
　　被加工材の材質：１３％Ｃｒ鋼の油井管製造用ビレット
　　穿孔圧延機：傾斜ロール方式のピアサー
　　ガイドシュー：直径が２８００ｍｍ、幅が１５０ｍｍのディスクロール
　　穿孔後のホローシェル：外径２３０ｍｍ、肉厚２１．０ｍｍ、長さ９０００ｍｍ
　　潤滑剤の供給方法：吐出圧力０．５ＭＰａで被加工材表面にスプレー

　潤滑剤を被加工材表面にスプレー塗布した後、１秒以内に穿孔圧延を行った。
　表１において、「珪酸ナトリウム」は、水ガラス３号を用いて添加した。珪酸ナトリウムの含有量は、無水物に換算した含有量である。「安定剤、その他」としては、ナフタリンスルフォン酸ソーダフォルマリン縮合物、スチレン・無水マレイン酸共重合樹脂のソーダ塩、ポリアクリル酸ソーダ塩等、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルキル、フェニルエーテル等を添加した。

　穿孔後、下記の性能を評価した。その結果を表１に併せて示す。

　（１）耐焼付き性
　耐焼付き性は、１３Ｃｒ鋼５０本を穿孔した後にガイドシューの表面を目視で検査して評価した。
　表１の「耐焼付き性」欄の記号の意味は次の通りである。
　○：良。焼付きが発生していなかったことを示す。
　△：可。軽微な焼付きが発生したことを示す。
　×：不可。広範囲にわたり著しい焼付きが発生したことを示す。

　（２）耐食性
　耐食性は、穿孔圧延後のホローシェルから試験片を採取し、沸騰６５％硝酸液に７２０時間浸漬した後の腐食の有無で評価した。
　表１の「耐食性」欄の記号の意味は次の通りである。
　○：良。腐食が認められなかったことを示す。
　×：不可。腐食が認められたことを示す。

　（３）付着性
　付着性は、熱間での塑性加工で使用される潤滑剤の潤滑性（耐焼付き性）に直接関係する調査項目であり、潤滑剤をスプレー塗布した被加工材表面を目視で検査して評価した。
　表１の「付着性」欄の記号の意味は次の通りである。
　○：良。付着性の不良部位が認められなかったことを示す。
　△：可。付着性の不良部位が若干認められたことを示す。
　×：不可。潤滑剤が付着しなかったことを示す。

　（４）突沸性
　突沸性は、表面に潤滑剤をスプレー塗布したディスクロールを被加工材と接触させた際における、潤滑剤中の水の激しい水蒸気化（突沸現象）の有無により評価した。
　表１の「突沸性」欄の記号の意味は次の通りである。
　○：良。突沸がなかったことを示す。
　△：可。突沸が若干認められたことを示す。
　×：不可。激しい突沸があったことを示す。
　突沸が生じると潤滑剤が飛散して被加工材表面に付着しないので、突沸性と付着性は同じ傾向を示す。

　（５）流動性
　流動性は、潤滑剤の供給性の良否に直接関係する調査項目であり、潤滑剤を被加工材表面にスプレーで供給する際における吐出状態により評価した。
　表１の「流動性」欄の記号の意味は次の通りである。
　○：良。潤滑剤の吐出状態が良好であったことを示す。
　△：可。それより若干悪かったことを示す。
　×：不可。吐出できなかったことを示す。

　（５）総合評価
　総合評価は、「耐焼付き性」、「耐食性」、「付着性」、「突沸性」および「流動性」の５項目全ての評価を総合した評価結果である。具体的には、５項目についてのそれぞれの評価のうち、最も悪かった評価結果を「総合評価」とした。例えば、５項目のうち１項目が×印であれば、他の４項目が全て○印であっても、「総合評価」は×印となる。５項目の調査で評価される性能のうちの一つが不可の場合、その潤滑剤は熱間での使用に供し得ないからである。
　表１の「総合評価」欄の記号の意味は次の通りである。
　○：良。５項目全てが○であることを示す。
　△：可。５項目全てが○または△であることを示す。
　×：不可。５項目のうちいずれかが×であることを示す。

　表１から次のことが示される。
　本発明例１～４は、いずれも本発明の規定を満たす。そのため、総合評価はいずれも良（○印）であった。これらの潤滑剤は、いずれも優れた性能を有する。

　比較例１は、酸化鉄の含有量が本発明の規定量より少なく、水分含有量が本発明の規定範囲を超えている。そのため、突沸が生じて潤滑剤が被加工材表面に付着せず、焼付き防止効果が認められなかった。

　比較例２は、酸化鉄が本発明の規定量より多い。そのため、流動性が若干悪く、被加工材とガイドシューの界面への円滑な付着が妨げられた。結果として、軽微な焼付きが発生した。

　比較例３は、珪酸ナトリウムが本発明の規定量より少なく、水分含有量が本発明の規定範囲を超えている。そのため、若干の突沸が生じ、付着性が低下した。結果として、広範囲の焼付きが発生した。

　比較例４は、珪酸ナトリウムが本発明の規定量を超えており、珪酸ナトリウムの含有量が酸化鉄量に対して相対的に過多である。そのため、酸化鉄による焼付き防止効果が低下した。

　比較例５は、不純物の含有量が本発明の規定範囲を超えている。そのため、耐食性の試験で腐食が生じた。

　比較例６は、水分含有量が本発明の規定範囲より若干少ない。そのため、流動性が低下し、焼付きが発生した。

　比較例７は、水分含有量が本発明の規定範囲を超えている。そのため、突沸が生じて潤滑剤が被加工材表面に付着せず、広範囲にわたり焼付きが発生した。

　（実施例２）
　潤滑剤を被加工材外表面に塗布してから穿孔圧延を開始するまでの時間が、潤滑剤の効果に及ぼす影響を確認した。

　前記表１に示した本発明例１の潤滑剤を被加工材外表面に塗布した後、穿孔圧延開始までの時間を変更した。その他の条件は実施例１と同じとした。潤滑性（実施例１の「耐焼付き性」と同一の評価）および被加工材（ホローシェル）の外面疵の発生有無を調査した。

　表２に調査結果を示す。
　表２の「潤滑性」欄の記号の意味は次の通りである。
　○：良。焼付きが発生していなかったことを示す。
　△：可。軽微な焼付きが発生したことを示す。
　×：不可。広範囲にわたり著しい焼付きが発生したことを示す。

　表２の「外面疵」欄の記号の意味は次の通りである。
　○：良。疵の発生がなかったことを示す。
　△：可。若干の疵の発生があったことを示す。
　×：不可。多数の疵の発生があったことを示す。

　表２から次のことが示される。
　潤滑剤を被加工材表面にスプレー塗布した後、穿孔圧延開始までの時間が０～１秒の場合は、潤滑性および外面疵のいずれについても良好であった。一方、穿孔圧延開始までの時間が１秒を超えると、潤滑性および外面疵のいずれも低下する傾向を示し、６０秒を超えると潤滑性が悪化し、ホローシェル外面に多数の疵が発生した。

　本発明は、熱間加工の継目無鋼管の製造に有効に利用できる。

Claims

　熱間加工用潤滑剤であって、
　当該潤滑剤は酸化鉄２０～４０質量％および珪酸ナトリウム１０～３０質量％を含有し、
　不純物が３質量％以下であり、
　水分が４０～６０質量％であること、
　を特徴とする熱間加工用潤滑剤。
　被加工材の表面に請求項１に記載の熱間加工用潤滑剤を塗布し、直ちに当該被加工材を熱間加工すること、
　を特徴とする継目無鋼管の製造方法。