JPH07126684A - ステンレス鋼の熱間圧延用潤滑剤 - Google Patents

ステンレス鋼の熱間圧延用潤滑剤

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JPH07126684A
JPH07126684A JP29900193A JP29900193A JPH07126684A JP H07126684 A JPH07126684 A JP H07126684A JP 29900193 A JP29900193 A JP 29900193A JP 29900193 A JP29900193 A JP 29900193A JP H07126684 A JPH07126684 A JP H07126684A
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利郎 山田
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ステンレス鋼の熱間圧延における圧延ロール
に対するステンレス鋼の焼付きを潤滑剤によって防止
し,表面疵のない製品を得る。 【構成】 平均粒径が 0.1μm以上1μm未満の Fe2O3
粉末または Fe3O4粉末の1種もしくは2種:10重量%〜
30重量%, アクリル酸系水溶性高分子:当該潤滑剤の粘
度を1000〜50000cP(センチポアズ) とする
に充分な量,界面活性剤:0.5 〜5重量%,残部水を混
合してなるステンレス鋼の熱間圧延用潤滑剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,ステンレス鋼を熱間圧
延する際に,圧延ロールに対するステンレス鋼の焼付き
を防止し,良好な表面性状をもつ製品を得るのに適した
潤滑剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】ステンレス鋼製品は美麗な表面肌が要求
されるから,その製造工程において表面疵の発生を極力
防止する必要がある。しかし,タンデムミル等の熱間圧
延設備でステンレス鋼を熱間圧延する際に,圧延ロール
に対するステンレス鋼の焼付きに起因した疵が鋼板表面
にしばしば発生していた。
【0003】この焼付きは,熱延ロールの金属面と熱延
材の金属面とが密着する(メタルタッチする)ことによ
って引き起こされるとされている。とくにステンレス鋼
では酸化被膜(スケール)が形成し難く,形成する場合
でもその生成速度が遅い。したがって,多段圧延のさい
に前段で発生した新生面を保護するに充分なスケール層
が圧延材表面に生成されないまま次の圧延ロールに到達
し,メタルタッチが起きる機会が多くなって焼付きが多
発する。
【0004】この焼付きに起因してステンレス鋼熱延板
の表面に疵が発生すると,たとえ軽度な疵であっても鏡
面仕上げ用途には不適合になる。その結果,得られたス
テンレス鋼板の用途に制約を受ける。また表面疵のある
ステンレス鋼板は研磨等の表面手入れを別途必要とす
る。更に,疵の程度が著しいものは製品として利用でき
ずスクラップとなる。このように,鋼板表面の疵は歩留
りの低下を来し,製造コストを上昇させる原因となる。
【0005】このようなことから,熱延時における表面
疵の発生を極力抑制するために,圧延ロールに対する負
荷の軽減,圧延条件の選択,ロール材質の選定,潤滑剤
の改良等の手段が種々試みられてきた。例えば潤滑剤に
ついては,動物性油脂類,植物性油脂類,鉱物系潤滑
油,合成系潤滑油等を圧延ロール表面に供給して焼付き
を防止する方法が種々提案されている。また,圧延油に
潤滑性を有する粉体を分散混合したうえでインジェクシ
ョン方式で圧延ロール表面に供給する方法も検討されて
いる。
【0006】だがこれらの方法では,ステンレス鋼の熱
間圧延が過酷な条件下にあることもあって焼付きを完全
に防止できず,表面疵が発生する事態を招来していたの
が実状である。
【0007】一方,同一出願人に係る特開昭64─83309
号公報には, 粘性水溶液中に酸化鉄粉末を1〜30重量
%の量で分散させてなるステンレス鋼の熱間圧延用潤滑
剤が記載されている。この公報の発明は,該公報中にも
記載されているとおり,酸化スケールが生じ難いことが
ステンレス鋼熱延時の焼付きの原因となるならば,外部
から酸化鉄を積極的に補給すればこの原因が解消される
であろうという着想に基いている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは特開昭64
─83309号公報に提案された発明について,前記の着想
のもとにその後も試験研究を続けたが,当該公報に記載
された潤滑剤にあっては粘性水溶液に酸化鉄粉末を混合
した直後は均一な分散が得られるが, 潤滑剤を保存する
と貯蓄浴槽内で酸化鉄粉末の沈降が生じ, 長時間安定し
た酸化鉄粉末の分散保持が得られない場合があった。
【0009】酸化鉄粉末の分散保持が不安定であると,
熱間圧延の際に圧延ロール表面に酸化鉄粉末を安定して
供給できなくなる。このために焼付きが生じてステンレ
ス鋼に疵が発生するおそれがある。また, 当該潤滑剤を
供給する導管の継ぎ目部分などに酸化鉄が堆積し, 管の
詰りや潤滑剤の供給不足といった問題も生じることがわ
かった。
【0010】他方,近年では成分的にCr当量の高い耐
高温酸化性に優れたステンレス鋼が自動車用排ガス部材
等に用いられる傾向にある。Cr当量が高いと,それだ
け熱間圧延で生成するスケール厚が薄くなり, 焼付き疵
の発生が顕著となる。このようなCr当量の高い材料に
対しても完全に焼付きを防止できる潤滑剤は,特開昭64
─83309号公報のものを含めて,これまで開発されてい
ない。
【0011】したがって本発明は, 従来のものよりも一
層焼付き疵防止効果を高め, とくにCr当量の高いステ
ンレス鋼に対しても焼付きを起こさないで熱延できる潤
滑剤を得ることを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は,平均粒径が
0.1μm以上1μm未満の Fe2O3粉末または Fe3O4粉末
の1種もしくは2種:10重量%〜30重量%, アクリル系
水溶性高分子:混合後の潤滑剤組成物の粘度が1000
〜50000cP(センチポアズ) となるに充分な量,
界面活性剤:0.5 〜5重量%,残部:水,を混合してな
る粘度が1000〜50000cPのステンレス鋼熱間
圧延用の潤滑剤を提供する。
【0013】
【作用】特開昭64─83309号公報に提案されたような粘
性水溶液中に酸化鉄粉末を分散させる潤滑剤の場合,粘
性水溶液中への酸化鉄粉末の分散保持特性と,圧延ロー
ルに塗布された場合に被圧延材とのメタルタッチを全面
的に防止するに必要な潤滑剤の巻込特性(厳密にはロー
ルへの付着性並びにロールバイト内への巻込性)が,焼
付き完全防止のキーポイントになるとの観点にたって,
本発明者らは増粘剤の種類,酸化鉄の粉体特性,潤滑剤
の物理化学的性質等について広範な試験研究を行った。
【0014】その結果,多種多様な水溶性増粘剤のう
ち,架橋型アクリル酸重合体は他のものに比べて,前記
の分散保持特性と潤滑剤の巻込特性を顕著に向上させる
作用があり,これ自身も焼付防止作用があることを知っ
た。また,界面活性剤の使用がこれらの特性を一層有利
に発揮させることもわかった。そして,使用する酸化鉄
粉末としては 0.1μm以上1μm未満の Fe2O3または F
e3O4の球状の粉末であるのがよいことも明らかとなっ
た。
【0015】なお,酸化鉄粉末を供給する媒体として,
油脂類や潤滑油等も考えられるが,酸化鉄粉末が必ずし
も親油性を有していないため均一分散が困難である。
【0016】以下に,本発明のステンレス鋼の熱間圧延
用潤滑剤を構成する各要素の作用効果を個別に説明し,
それらの数値限定の根拠を明らかにする。
【0017】〔酸化鉄の種類〕一般に酸化鉄は FeO, Fe
3O4,Fe2O3 の化学式で表されるものがある。これらの中
では Fe2O3は硬さが最も高い。したがって,ロールの磨
耗等に関与する硬さの面では FeOやFe3O4の方がやや好
ましいが,ロールの焼付き防止という点から見れば Fe2
O3を用いても差支えない。一方, FeOは工業的に安定し
て得るのが困難である。このため酸化鉄としては Fe3O4
か Fe2O3或いはこれらの混合物を用いるのがコスト的な
面も含めて実用的である。なお, その純度は必ずしも高
純度である必要はなく, SiO2や MnO等の酸化物や金属鉄
等を不純物程度として含むものを用いることができる。
【0018】〔酸化鉄の粒径〕酸化鉄粉末の粒径は,粘
性水溶液への均一分散や分散の経時的安定性の点で,さ
らには圧延ロールに供給した場合における供給面への均
一散布性に対して重要な作用を及ぼす。酸化鉄の平均粒
径が1μm以上の場合において,10μm以下であれ
ば, 粘性水溶液の粘度を調整すれば潤滑剤混合時には均
一な分散が得られる。しかし, 潤滑剤を長期間保存した
場合に貯蔵槽内で酸化鉄粉末の沈降が生じたり, 長期間
の内には潤滑剤供給の導管の継ぎ目部等に酸化鉄の堆積
を生じるという問題が発生する。また, 供給面を被覆す
る面積の比率は粗粒ほど小さくなるため, 同一重量の酸
化鉄を供給した場合の供給面の被覆効率は低下する。こ
のため, 酸化鉄粉末の平均粒径は1μm未満とする必要
がある。
【0019】前記のように, 平均粒径が小さいと均一分
散性や供給面への被覆効率等の面で有利となるが, 平均
粒径が0.1μmを下回る場合には,粘性水溶液に混合す
る場合には, 微細粉末の凝集力が強いことから逆に均一
に分散させるのが極めて困難となる。このため, 酸化鉄
粉末の平均粒径は0.1μm以上とする必要がある。
【0020】〔酸化鉄粉末の粒子形状〕酸化鉄粉末の個
々の粒子は,直方体,針状,8面体,球状等,種々の形
状を有するものがあり,何れの形状であっても潤滑剤と
しての効果は得られるが,本発明者らは球状の酸化鉄を
用いることでより一層焼付き防止効果が得られることを
見いだした。ここで,球状とは必ずしも球面を有するこ
とを意味するものではなく,角の少ない丸みを帯びた粒
子形状を言う。
【0021】球状の酸化鉄粉末を用いた場合には,針状
の酸化鉄粉末を用いた場合に比べて酸化鉄濃度換算でお
よそ5重量%程度濃度が低くても,同等の焼付防止効果
が得られることがわかった。この理由は必ずしも明らか
でないが,球状の酸化鉄のほうがロールバイト内への巻
込性が向上し,濃度を高める場合と同等な効果が得られ
たものと考えられる。低い濃度で充分な焼付防止ができ
ることは潤滑剤の製造費低減に大きく寄与する。
【0022】〔酸化鉄の配合量〕潤滑剤組成物中の酸化
鉄の含有量は,所望のロール焼付効果を得ると同時に潤
滑剤の安定供給性を確保するために適正な範囲に規制さ
れる。酸化鉄の含有量が1重量%以上であれば,焼付き
防止効果が現れるが実際的には圧延条件の変動等により
焼付きが発生することがあり,安定した焼付き防止効果
を得るためには5重量%以上の含有量が必要となる。一
方,30重量%を越える含有量では供給安定性が経時的
に低下する傾向となり,また圧延ロール表面に潤滑剤を
吹付ける場合には過大な吐出エネルギーを必要とするこ
とになって実用上の問題が生ずる。このため,酸化鉄の
含有量は重量%で5〜30%とする必要がある。
【0023】〔増粘剤の種類〕本発明の潤滑剤組成物に
おいて,増粘剤として架橋型アクリル酸重合体を使用す
る点は特徴的な要件である。
【0024】粘性水溶液を得るための増粘剤として工業
的に使用できるものとしては各種のものが知られている
が,本発明者らは各種の増粘剤を用いて多数の試験を行
なった結果,増粘作用のある多数の水溶性高分子のうち
前記の架橋型アクリル酸重合体が酸化鉄粉末の分散保持
性とステンレス鋼の熱延時の焼付防止性に特異な作用が
あることを知った。
【0025】メチルセルロースやカルポキシメチルセル
ロース等の水溶性セルロース誘導体類を使用した場合で
も一応の粘性は得られるが,酸化鉄粉末の分散保持性は
必ずしも良好ではなく,安定した分散保持を得るために
添加量を増して粘度を高くすることが必要となる。高粘
度では酸化鉄粉末の混合が困難化するとともに潤滑剤の
送液性が著しく低下する。これに対し,架橋型アクリル
酸重合体等は後述の粘度範囲において極めて安定した酸
化鉄粉末の分散保持が得られ,且つ圧延ロールに対する
付着性においても優れている。
【0026】ここで,架橋型アクリル酸重合体は,よく
知られているように,ポリアクリル酸に架橋反応を施し
たものとアクリル酸モノマーと架橋剤とを共重合させた
ものがあるが,いずれも直鎖状ポリアクリル酸とは区別
されるものである。この架橋型アクリル酸重合体のう
ち,特殊なものでは水に溶解しないか,水を膨潤させな
いものもあるが,このようなものは本発明の潤滑剤には
使用できないことは勿論であり,本発明では水溶性の架
橋型アクリル酸重合体を使用する。
【0027】本発明で使用できる代表的な架橋型アクリ
ル酸重合体には,主成分がポリアクリル酸であるものの
ほか,主成分がポリアクリル酸ソーダまたはその共重合
体であるもの,主成分がポリアクリル酸アンモニウム等
のものがある。したがって,本発明で言う架橋型アクリ
ル酸重合体とは,ポリアクリル酸またはその塩類を主成
分とするか,それらの共重合体を主成分としてして架橋
しているもののうち水溶性のものを言う。本発明潤滑剤
において,架橋型アクリル酸重合体の配合量は酸化鉄粉
末並びに界面活性剤を配合したあとの潤滑剤の粘度が1
000〜50000cP(センチポアズ) となるに必要
な量である。
【0028】〔界面活性剤〕本発明の潤滑剤は界面活性
剤が添加される。界面活性剤の添加により,圧延ロール
への吹き付け時にロールと潤滑剤の漏れ性が向上し,ロ
ールへの付着量が著しく増加する。その結果,ロールバ
イト内への酸化鉄の巻込み量が増加し,焼付き防止に著
しい効果をもたらすことがわかった。このため,Cr当
量が高くて酸化スケールの生成速度が極めて遅いステン
レス鋼の熱延に際しても焼付きが防止できる。
【0029】このような効果をもたらす界面活性剤に
は,非イオン性界面活性剤,陽イオン性界面活性剤,陰
イオン性界面活性剤のうち,とくに非イオン性界面活性
剤のものが優れている。それらのうちでも,使用する架
橋型アクリル酸重合体との関係で適切なものを選定する
が,本発明者らはエチレングリコール脂肪酸エステルや
プロピレン脂肪酸エステル等のエステル系のものを配合
するとロールへの付着量の増加が顕著であることを見い
だした。添加量については界面活性剤の種類にもよる
が,一般に0.5重量%程度以上で効果が現れるが,5重
量%を越えるような多量の配合は逆に酸化鉄の分散保持
性を低下させるようになるので界面活性剤の添加量は0.
5〜5重量%の範囲とするのがよい。
【0030】〔潤滑剤の粘度〕本発明潤滑剤は,酸化鉄
粉末の分散保持性と潤滑剤の送液性との観点から100
0〜50000cPとすることが必要である。粘度が1
000cP未満では酸化鉄の均一分散保持が困難であ
り,潤滑剤貯蔵槽内での酸化鉄の沈降や潤滑剤供給導管
内での堆積等の問題が生じる。一方,粘度が高くなるほ
ど酸化鉄粉末の分散保持にとって有利となるが,いたず
らに粘度が高まると,酸化鉄粉末を混合する上において
均一に分散させることが著しく困難となるのみならず,
潤滑剤の供給において多大な供給エネルギーが必要とな
り,それに要する設備費用も増大して実用性が失われ
る。このため,本発明では潤滑剤粘度は1000〜50
000cPの範囲とする。
【0031】〔pH調整〕本発明潤滑剤は,架橋型アク
リル酸重合体を使用する関係上,そのままでは若干酸性
を示す。このため圧延設備に対する腐食性を考慮する
と,中性ないし弱アルカリ性にpH調整するのが好まし
い。しかし,アルカリ添加によって,架橋型アクリル酸
重合体や界面活性剤の本来の作用が望ましくない方向に
変化する場合には,アルカリ剤の種類と添加量を充分に
考慮することが必要である。
【0032】〔潤滑剤の適用方法〕本発明に係る潤滑剤
をステンレス鋼熱間圧延に適用する場合には,次のよう
に行なうのが実際的である。
【0033】本潤滑剤は混合後に槽に貯留させておき,
この槽からポンプを通じて圧延ロールへに通ずる導管に
送液する。ポンプは適宜選定すればよいが,単純な水に
比べると粘度が高いことから通常数10kgf/cm2程度以
上の圧力が必要となるので,プランジャータイプ等のポ
ンプを用いるのが適している。
【0034】該導管の先端にはノズルを取付けておき,
このノズルから圧延スタンド内のロール表面に潤滑剤を
吹付ける。本潤滑剤を吹付ける圧延スタンドは特に限定
されるものではなく, ホットストリップミルにおける仕
上圧延スタンドおよび粗圧延スタンドの中から適宜選定
し,どのロールに吹付けるかはその効果の度合いを勘案
しながら選定すればよい。吹付けにあたっては,圧延材
と接する幅全域のロール表面に吹付けても良いし, 粗圧
延時の幅方向圧延での塑性変形挙動に関連して酸化スケ
ールの剥離が顕著なことが関与して比較的焼付きが発生
し易いと考えられる圧延材エッジ部近傍に選択的に吹付
けてもよい。
【0035】圧延ロールに供給する潤滑剤量は, 送液圧
力と導管先端のノズルの容量,並びに圧延ロールの回転
速度等を勘案しながら適切に調節する。例えば圧延ロー
ルが圧延材と接触する面積に対して0.1リットル/m2程度
から数リットル/m2程度となるように調節するのがよ
い。
【0036】なお, ステンレス鋼の熱間圧延において通
常の圧延潤滑油が使用されることもあるが, 本発明に係
る潤滑剤を用いる上で, 潤滑油の併用を妨げるものでは
なく圧延荷重の低減等を目的とした潤滑油を併用しても
構わない。
【0037】
【実施例】供試した代表的な潤滑剤を表1に示した。表
1に示すように,酸化鉄は各種の粒径および形状を有す
る Fe2O3または Fe3O4を単独または混合して,これに増
粘剤を添加した粘性水溶液を分散させ,界面活性剤添加
後の潤滑剤の粘度を表示のように調節した。
【0038】使用した架橋型アクリル酸重合体は,表中
に(○)印を付したものは日本純薬株式会社製の商品名
レオジック(主成分がポリアクリル酸ソーダである架橋
型アクリル酸重合体)であり,(●)印を付したものは
和光純薬株式会社製の商品名ハイビスワコー(主成分が
ポリアクリル酸である架橋型アクリル酸重合体)であ
る。また,比較例として使用したメチルセルロースは信
越化学工業株式会社製の商品名メトローズである。
【0039】使用した界面活性剤は,表中に(△)印を
付したものは和光純薬株式会社製の商品名“エチレング
リコール”のエチレングリコール脂肪酸エステル系のも
の,また(▲)印を付したものは和光純薬株式会社製の
商品名“プロピレングリコール”のプロピレン脂肪酸エ
ステル系のものである。これらの添加量は表1において
潤滑剤中の濃度(%)で表示した。
【0040】表示の各潤滑剤をステンレス鋼の熱間圧延
に供した。圧延対象のステンレス鋼は,化学成分が0.01
〜0.02%C,0.46〜0.57%Si, 0.02〜0.30%Mn, 1
8.3〜19.6Cr, 0.11〜0.13%Ni, 0.41〜0.49%Nb,
0.46〜0.58%Cu, 3.5〜4.0%Al, 0.16〜0.32%Ti,
0.009〜0.013%Nのフエライト系ステンレス鋼であ
る。各実施例において下式に従うCr当量が約18, 20, 2
2%の3種類のステンレス鋼に層分けして実施した。
【0041】Cr当量(%)= [Cr]+2[Si] +2.5
[Al] +1.2[Mo] −30[C]−15[N] −2[Ni] −
[Mn]
【0042】潤滑剤の適用にあたっては,仕上げ圧延機
群の第1〜3スタンドのワークロールの表面に,上下そ
れぞれ3〜4個のノズルから潤滑剤を吹き付けた。各ノ
ズルへの潤滑剤の供給は,潤滑剤貯蔵槽から導管を介し
てプランジャータイプのポンプで40Kgf/mm2 の圧力で
送液した。ノズルからロールへの潤滑剤の供給量はロー
ル面に対し約0.3リットル/m2となるように調節した。
【0043】各ステンレス鋼の熱延は,いずれも厚さ2
00mm,幅1030〜1240mm,単重10〜14
トンのスラブを1200〜1250℃に加熱後,厚さ2
5mmのラフバーに粗圧延し,その後7スタンドからな
る仕上げ圧延機群にて,厚さ3.0 mmのホットコイルに
圧延した。
【0044】各潤滑剤ごとの実施において,仕上げ圧延
機群のワークロール替え(研削仕上げしたロールへの交
換)を行った後,20本のスラブを連続的に熱間圧延
し,この1サイクル間では潤滑条件は一定とし,各潤滑
剤ごとに20本の熱延コイルを製造した。
【0045】なおこれらの圧延において, バックアップ
ロールには従来から用いられている圧延油をウォーター
インジェクションにより供給した。また第1〜3の仕上
げ圧延機のワークロールはハイクロムロールを用いた。
熱間圧延後のコイルは連続焼鈍酸洗ラインを通板し,デ
スケール後のコイルについて表面肌を観察して,ロール
焼付きに起因する表面疵の発生本数を調査した。その結
果を表2に示した。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】表2に結果から,本発明の潤滑剤を用いて
熱延した番号6,7,11,12,14,15,16,
17のステンレス鋼はいずれのCr当量においても,圧
延ロール替え後20本について表面疵は発生しておら
ず,潤滑剤によってロール焼付きが防止されていること
が分かる。
【0049】これに対し,アクリル酸重合体を使用した
が,界面活性剤を混合しなかった番号1のものでは,C
r当量18%においては焼付き防止効果が認められ,表
面疵は発生しなかったが,Cr当量が20〜22%にな
ると表面疵が発生した。
【0050】また増粘剤としてメチルセルロースを用い
た番号2のものは,表面発生本数が19本であり,ほぼ
全コイルともロール焼付きに起因した表面疵が発生し,
有効に焼付き防止が図られていない。
【0051】架橋型アクリル酸重合体に界面活性剤を混
合してはいるが,粘度が本発明で規定するより低い番号
4のものは,表面疵防止に対してほとんど効果が現れて
いない。
【0052】界面活性剤の添加量が本発明で規定するよ
りも少ない番号9並びに逆に多い番号10のものはは,
Cr当量18%のステンレス鋼に対して一応の効果は認
められる。しかし,Cr当量が20〜22%と高くなる
と必ずしも十分な効果が得られていない。
【0053】酸化鉄の含有量が本発明で規定するより低
い潤滑剤を用いた番号5のものは,若干の効果は認めら
れるものの,Cr当量が高くなる程,表面疵発生本数は
多くなり,疵の発生を抑えることができていない。
【0054】また,過度に微細な酸化鉄を含む番号3な
らびに過度に粘度が高い番号13のものは,表面疵発生
本数が10〜15本となった。これは,酸化鉄の均一分
散性が悪かったことが影響していると思われるが,熱延
した後にノズルを観察すると,ノズル先端に詰まりが生
じているものがあったことから,5〜10本目辺りの熱
延時に潤滑剤が十分に供給されていなかったものと推定
される。
【0055】粒径が本発明で規定するより大きな酸化鉄
を用いた番号8においても,圧延後のノズルを観察する
とノズル詰りが観察された。このため,安定供給が困難
であることから疵発生を完全に抑えることができないこ
とがわかった。
【0056】以上の実施例結果から,潤滑剤供給の面で
も焼付き防止の面でも安定した効果が得られるのは,本
発明で規定する範囲の潤滑剤であることがわかる。
【0057】
【発明の効果】以上に説明したように,本発明の潤滑剤
によれば,耐高温酸化性に優れたCr当量の高いステン
レス鋼に対してもロール焼付きを効果的に防止し,表面
疵のない高品質の製品が得られる。このため圧延ロール
の損傷も少なくなり,ロール原単位も低減させる。そし
て,製造されたステンレス鋼板は綺麗な表面性状を有す
ることから,表面研削を省略することができ,生産性良
く鏡面仕上げ用途当の付加価値が高いステンレス鋼板を
製造することができる。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C10N 10:16 20:02 20:06 40:24 (72)発明者 田辺 一成 広島県呉市昭和町11番1号 日新製鋼株式 会社鉄鋼研究所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】平均粒径が 0.1μm以上1μm未満の Fe2
    O3粉末または Fe3O4粉末の1種もしくは2種:10重量%
    〜30重量%,アクリル酸系水溶性高分子:当該潤滑剤の
    粘度を1000〜50000cP(センチポアズ) とす
    るに充分な量,界面活性剤:0.5 〜5重量%,残部:水
    を混合してなるステンレス鋼の熱間圧延用潤滑剤。
  2. 【請求項2】Fe2O3および Fe3O4の粒子形状が球形であ
    る請求項1に記載の潤滑剤。
  3. 【請求項3】アクリル酸系水溶性高分子は架橋型アクリ
    ル酸重合体である請求項1または2に記載の潤滑剤。
  4. 【請求項4】当該潤滑剤は,ステンレス鋼熱間圧延時の
    ロール表面に供給されるものである請求項1に記載の潤
    滑剤。
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