JPH08199184A - 耐ノズル閉塞性に優れたステンレス鋼の熱間圧延用潤滑剤 - Google Patents

耐ノズル閉塞性に優れたステンレス鋼の熱間圧延用潤滑剤

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JPH08199184A
JPH08199184A JP2326295A JP2326295A JPH08199184A JP H08199184 A JPH08199184 A JP H08199184A JP 2326295 A JP2326295 A JP 2326295A JP 2326295 A JP2326295 A JP 2326295A JP H08199184 A JPH08199184 A JP H08199184A
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利郎 山田
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ステンレス鋼熱間圧延用潤滑剤を圧延ロール
表面にノズルからスプレーする場合にノズル閉塞トラブ
ルを起こさない潤滑剤を得る。 【構成】 微生物醗酵のヘテロ多糖類からなるバイオガ
ムを水に添加した粘性水溶液中に,平均粒径が0.1〜
1μmの固体潤滑剤を分散させてなる耐ノズル閉塞性に
優れたステンレス鋼の熱間圧延用潤滑剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,ステンレス鋼を熱間圧
延する際の圧延ロール表面に,微粒子状の固体潤滑剤を
水系媒体に分散させた潤滑剤をノズルからスプレーする
場合に,ノズル閉塞トラブルを防止でき且つ良好な表面
性状のステンレス鋼帯に圧延できるステンレス鋼の熱間
圧延用潤滑剤に関する。
【0002】
【従来の技術】ステンレス鋼板製品は,美麗な表面肌が
要求されるものであるから,その製造工程において表面
疵の発生を極力防止する必要がある。ところがタンデム
ミル等の熱間圧延設備でステンレス鋼を熱間圧延するさ
いに,圧延ロールに対するステンレス鋼の焼付きに起因
した疵が鋼板表面に発生することがあった。表面疵が発
生すると,たとえ軽度の疵であっても鏡面仕上げ用途に
は不適合になり,用途に制約を受けることになる。また
表面疵のあるステンレス鋼板は研磨等の表面手入れを必
要とするか,疵の程度が著しいものは製品として利用で
きずにスクラップとなる。このように,ステンレス鋼熱
間圧延時のロールへの焼付きに起因する鋼板表面疵の発
生は,歩留り低下を来し製造コストを上昇させる原因と
なる。
【0003】このような表面疵の発生を抑制するため
に,従来より圧延ロールに対する負荷の軽減,圧延条件
の選択,ロール材質の選定,潤滑剤の改良等の手段が試
みられてきた。そして,動物性油脂類,植物性油脂類,
鉱物系潤滑油,合成系潤滑油等の潤滑剤を圧延ロール表
面に供給し,表面疵を防止する方法も種々提案されてい
る。
【0004】また,圧延油に潤滑性を有する粉体を分散
混合し,この分散液をインジェクション方式により圧延
ロール表面に噴射供給する方法も検討されている。とこ
ろがこれらの方法では,噴射するノズル穴の閉塞は免れ
ず,圧延前のノズルの交換作業時間の延長や圧延中のノ
ズル閉塞によって表面疵が発生することがあった。
【0005】そこで,本発明者らは,特開昭64−83
309号公報などにおいて,送液性ならびに均一分散性
を重視して酸化鉄粉体を粘性水溶液に混合して噴射する
熱間圧延用潤滑剤を提案している。しかし,これまでに
提案した粘性水溶液のものでは,酸化鉄粉末を混合した
直後は均一な分散が得られるが,保存すると貯槽内で固
体潤滑剤の沈降が生じ,長時間安定した分散保持が得ら
れない場合があった。この分散保持が不安定であると,
熱間圧延の際に圧延ロール表面に安定した固体潤滑剤の
供給ができなくなり,ノズル閉塞が発生すること,ま
た,潤滑剤を供給するパイプの継ぎ目部分などに固体潤
滑剤が堆積し,管の詰りや潤滑剤の供給不足といった問
題も生じることが明らかになった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】以上のような背景か
ら,本発明は固体潤滑剤を良好に分散保持できる水系媒
体を得ること,ひいては,これに固体潤滑剤を分散させ
た潤滑剤をノズルで噴射する場合,圧延中,圧延前後を
通してノズル閉塞がなく,圧延される帯鋼についても良
好な表面性状をもつ製品を得るのに適したステンレス熱
間圧延用潤滑剤を得ることを目的としたものである。な
お,本明細書において「固体潤滑剤」とは潤滑機能をも
つ微粒子物質を指し,「潤滑剤」とは水系媒体に当該固
体潤滑剤を分散させた状態のものを言う。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明によれば,微生物
醗酵のヘテロ多糖類からなるバイオガムを水に添加した
粘性水溶液中に,平均粒径が0.1〜1μmの固体潤滑
剤を分散させてなる耐ノズル閉塞性に優れたステンレス
鋼の熱間圧延用潤滑剤を提供する。ここで,固体潤滑剤
は,酸化鉄,水酸化鉄,SiO2,Al2O3, CaCO3の1種また
は2種以上からなり,バイオガムは例えばキサントモナ
ス属の菌株を用いて炭水化物を発酵させて得られたキサ
ンタンガムである。
【0008】
【作用】
〔発明の詳述〕フェライト系ステンレス鋼等の熱間圧延
では圧延材とロールとの間で焼付き現象が起こり易いの
で,前述したように固体潤滑剤を液媒体に分散させてロ
ールと圧延材との間にノズル噴射することが行われてい
るが,フェライト系ステンレス鋼の圧延前には,通常,
ロール交換作業とノズル閉塞の点検及び交換作業が行わ
れる。ノズル閉塞の点検交換作業では,圧延中のノズル
閉塞を防止するために閉塞したノズルを交換するが,交
換時間が掛かり過ぎると作業性,生産性が著しく低くな
り,圧延中のノズル閉塞は固体潤滑剤の供給不足となり
焼付き起因による肌荒れを引き起こす。
【0009】そこで本発明者らは,特開昭64−833
09号公報等で提案した増粘剤配合の潤滑剤のノズル閉
塞の原因について調べたところ,次のことが判明した。
【0010】(1) 圧延前に閉塞率が高くなるのは,従来
の高分子系増粘剤を用いて潤滑剤を作製した場合,次の
圧延チャンスまでの間(フェライト系ステンレス鋼圧延
までの待機中)に配管洗浄後の残留潤滑剤が送液配管内
の水で希釈される。 (2) その結果,高分子の電気的斥力が弱まり,高分子ど
うしが凝集する。 (3) その後,待機中にノズルの先端に凝集粒が集積し,
ノズル先端で被圧延材の輻射熱によって凝集粒が乾燥さ
れ固形物となり,これによって,ノズル閉塞が発生す
る。
【0011】すなわち,ノズル閉塞の原因は潤滑剤の凝
集であり,凝集は高分子増粘剤が希釈され,濃度が薄く
なり,高分子どうしの反発が小さくなり,絡み合って固
体潤滑剤を含む高分子が凝集するためであることがわか
った。
【0012】ところが,このような凝集現象は,微生物
醗酵のバイオガムを水に添加した媒体に粒径0.1〜1
μmの固体潤滑剤を分散させた潤滑剤では軽減すること
がわかった。したがって,この潤滑剤を用いるとノズル
閉塞の問題が解決され,併せて帯鋼の表面疵発生の問題
も解決できる。その理由は必ずしも明確ではないが,本
発明の潤滑剤では,固体潤滑剤の分散粒径並びに送水管
内の水による希釈凝集粒径が小さく維持されることが有
効に作用しているものと考えられる。
【0013】本発明の潤滑剤は,通常の水道水や地下水
等の水,バイオガムおよび固体潤滑剤から構成されるも
のであるが,その主要素であるバイオガムと固体潤滑剤
について以下に具体的に説明する。
【0014】(1) バイオガム バイオガムの使用は本発明の潤滑剤において特徴的な要
素である。潤滑剤が送水管中で水で希釈されて凝集する
か否かは耐ノズル閉塞性に大きな影響を及ぼすが,本発
明者らはこの凝集の回避を目的として,水に添加したと
きに増粘性を示す多糖類に着目した。かような多糖類と
しては,デンプン,セルロース,ペクチン,キシラン,
フラクタン,マンナン,アラビヤゴム,カンテン,ラミ
ナリン,アルギン酸,グリコーゲン,イヌリン,リケニ
ン,キチン,ムコ多糖類等の多数のものがあるが,これ
ら多糖類にはその由来に基づいて植物多糖類,微生物発
酵多糖類,動物多糖類に分けられる。粘性水溶液を得る
ためだけならどの多糖類でも特に問題はないが,デンプ
ンやカンテンの植物多糖類では長時間貯蔵による固体潤
滑剤の沈降が起こり,送水管の詰りによって焼付きが発
生する。またゲル化(プリン状になる)が起きる問題も
ある。
【0015】従来の潤滑剤に使用された水溶性合成高分
子,例えばアクリル酸重合体や水溶性セルロース誘導体
(メチルセルロースやカルボキシメチルセルロース等)
は,多糖類と同様の高分子化合物ではあるが,これを増
粘剤とした場合,一応の粘性は得られるが,時間経過と
共に水分離やゲル化したりする傾向がある。安定した分
散保持を得るために添加量を増して粘度を高くすること
も可能であるが,この場合には潤滑剤の送液性が著しく
低下するようになる。また合成高分子増粘剤は元来が凝
集剤として用いられているものであるため,水で希釈さ
れた場合には凝集が著しくなる。
【0016】これに対し,微生物発酵によって得られる
ヘテロ多糖類からなるバイオガムは後述する粘度の範囲
において固体潤滑剤に対して極めて安定した分散保持能
を示し,イオンならびにpHによる影響がほとんどない
ため,従来の合成高分子増粘剤のように水で希釈された
ときに生ずる凝集は全く無く,水分離やゲル化も起こさ
ないという特徴がある。この特徴は本発明において極め
て有用に作用する。本発明で使用できるバイオガムは,
このような性質を有するものであれば,その種類は実質
的に問わないが,工業的に使用できるものとしてはキサ
ンタンガムがある。
【0017】キサンタンガムの製法等については, 例え
ば特公昭60-38118号公報, 特公平5-36033 号公報, 特公
平2-6519号公報, 特開平1-153098号公報, 特開昭52-158
93号公報, 特開昭52-105291 号公報, 特開昭58-20195号
公報, 特開昭60-47694号公報, 特開昭61-181393 号公
報, 特開昭62-84102号公報などに記載されている。これ
らの公報に記載されているように,キサンタンガムはキ
サントモナス属の菌株を用いて炭水化物を発酵させて得
られるヘテロ多糖類であり,通常のものでは分子量は数
百万で,単糖(グルコース及びマンノース),グルコン
酸塩及び酢酸塩・ピルビン基などから成る水溶性のバイ
オガムとして,粉状のものが市場で入手可能である。
【0018】バイオガムの配合量は固体潤滑剤の量に合
わせて調整することができるが,潤滑剤に対して0.0
5重量%未満では必要な粘度や潤滑剤の良好な保持・分
散性が一般に得られずノズル閉塞を起こす。他方,3重
量%を越えて配合すると粘度の上昇を招き,潤滑剤の供
給が困難となる。このため,潤滑剤に対して0.05〜
3重量%が望ましい。なお,該バイオガムは中性である
ため,圧延設備に対する腐食性を考慮する必要が無く,
排水処理環境並びに熱延鋼帯の製造性に悪影響を与えな
い。
【0019】(2) 固体潤滑剤の種類 本発明で使用できる固体潤滑剤には,シリカ,アルミ
ナ,ジルコニウム,チタン,カルシウム,マグネシウム
等の酸化物,炭酸カルシウム, グラファイト,酸化鉄,
水酸化鉄(オキシ水酸化鉄を含む)等の一種または二種
以上の配合物で差し支えない。しかし,ステンレス鋼の
熱間圧延に用いられること,排水処理されることを考え
ると鉄系の固体潤滑剤であればより好ましい。
【0020】鉄系の固体潤滑剤としては,FeO,Fe
23,Fe34,Fe(OH)2,Fe(OH)3,Fe
O(OH)の化学式で表されるものがある。ロールの焼
付き防止という点においては,Fe23を用いても差支
えないが,硬さが高いのでロールの摩耗やノズル穴の摩
耗等に影響を及ぼすきらいがある。硬さの面ではFe
O, Fe34, FeO(OH)が好ましい。しかし,
FeOは工業的に安定して得るのが困難である。またF
e(OH)2やFe(OH)3等はFeO(OH)を製造
する工程中に存在できるものであり,FeO(OH)が
工業的には最も安定して製造入手できるため実用的であ
る。
【0021】また,固体潤滑剤を二種以上配合すると表
面電位が溶液中のイオンに対して正負が逆転することも
あり,凝集粒径が大きくなることがあるため,望ましく
は単独添加が良い。この点でもFeO(OH)は自己の
持つ表面電位が大きく,凝集粒径が小さく,他の酸化物
に比べても比較的微細であるため,その単独添加が望ま
しい。
【0022】(3) 固体潤滑剤の粒径 固体潤滑剤の粒径は,潤滑剤の分散粒径,ノズル噴射
性,ロール表面への均一散布性にとってきわめて重要な
管理点である。固体潤滑剤の粒径が1μmを越えたもの
で潤滑剤を製造すると長時間の内には供給導管の継ぎ目
部等に固体潤滑剤の堆積を生じるという問題が発生す
る。また,ロール表面への供給の面からは,粗粒ほど供
給面を被覆する面積の比率が小さくなるため,同一重量
の固体潤滑剤を供給した場合の供給面の被覆効率は低下
する。この理由からも固体潤滑剤粉末の平均粒径は1μ
m未満とする必要がある。
【0023】他方,微細粉末は一般的に凝集し易い性質
を有しているため,固体潤滑剤粉末の粒径があまり小さ
いと,粘性水溶液に混合した場合に,微細粉末の凝集力
が強くなって均一に分散させるのが困難となる。このた
め,固体潤滑剤の平均粒径は0.1μm以上とする必要
がある。また,0.1μmを下回る場合の超微細粉末で
は工業的にも製造が困難となるばかりかコスト上昇を招
くため,実用的ではない。したがって,固体潤滑剤の平
均粒径は0.1以上1μm未満にする必要がある。
【0024】(4) 固体潤滑剤の配合量 固体潤滑剤の配合量は,安定したノズル噴射性,配管送
液性,耐焼付き性を得るうえで重要である。圧延後の表
面疵を防止するためには10重量%以上の固体潤滑剤の
配合量を必要とし,これにより安定した焼付き防止効果
が得られる。しかし, 30重量%を越える配合量では,
潤滑剤の経時的な分散・保持性等が劣化し,焼付き防止
効果が安定せず,また沈降による凝集でノズル閉塞が発
生し易くなる。さらに圧延ロールへ吹き付けて供給する
さいに,配合量の増加は見掛け上の粘度増加を招き,配
管送液性が低下して過大な吐出エネルギーが必要となり
設備的に大きなものとなり,実用的でない。また配合量
の増加はコスト的にも不利である。このため,固体潤滑
剤の配合量は重量%で10〜30%とする必要がある。
【0025】(5) 潤滑剤の粘度 潤滑剤の粘度は,固体潤滑剤粉末の分散保持性と潤滑剤
の送液性との観点から勘案して選定でき,特に限定する
必要はないが, 望ましくは1〜30Pa・sである。潤
滑剤の見掛けの粘度がB型粘度計測定値1Pa・s未満
においては,固体潤滑剤の均一分散保持が困難であり,
潤滑剤の貯蔵槽内での固体潤滑剤の沈降や潤滑剤供給導
管内での堆積等の問題が生じる。一方,見掛け粘度が高
くなるほど,固体潤滑剤の分散保持にとって有利とな
り,ロール表面に付着する潤滑剤の膜厚も厚くなって焼
付き防止効果を向上させるが,いたずらに粘度が高まる
と潤滑剤の供給において多大な供給エネルギーが必要と
なり,それに要する設備費用も増大し,実用性が失われ
る。したがって安定操業の点から潤滑剤の見掛けの粘度
は1〜30Pa・s,より好ましくは3〜10Pa・s
とするのがよい。なお見掛け粘度はB型回転粘度計を使
用し,ずり速度1.2/秒(常温)で測定した値であ
る。
【0026】次に,本発明に係る潤滑剤のステンレス鋼
熱間圧延における具体的な使用方法について説明する。
【0027】本潤滑剤の調合・混合後は槽に貯蔵され,
この槽からポンプを通じて圧延ロールへの導管に送られ
る。この時のポンプは適宜選定すればよいが,単純な水
に比べると粘度が高いことから通常数10kgf/cm
2程度以上の圧力が必要となり,プランジャータイプ等
のポンプを用いるのが適している。
【0028】導管によって送られる潤滑剤は先端のノズ
ルから圧延スタンド内のロール表面に向けて吹き付けら
れる。本潤滑剤を用いる圧延スタンドは特に限定される
ものではなく,ホットストリップミルにおける仕上圧延
スタンドおよび粗圧延スタンドの中から適宜選定され
る。潤滑剤を吹き付ける圧延ロールの位置としては,そ
の効果の度合いを勘案しながら適宜選定すればよい。圧
延材と接する幅全域に本潤滑剤を吹き付けても良いし,
粗圧延時の幅方向圧延での塑性変形挙動に関連して酸化
スケールの剥離が顕著なことが関与して比較的焼付きが
発生し易いと考えられる圧延材エッジ部近傍に選択的に
吹き付けてもよい。
【0029】圧延ロールに供給される本潤滑剤の量は,
送液の圧力と導管先端のノズルを選定することにより,
圧延ロールの速度等を勘案しながら調節することができ
る。このときの潤滑剤の量としては,圧延ロールが圧延
材と接触する面積に対して,0.1リットル/m2程度か
ら1リットル/m2程度が好ましい。なお,ステンレス
鋼の熱間圧延においても通常の圧延潤滑油が用いられる
ことがあるが,本発明に係る潤滑剤を用いる上で,潤滑
油の併用を妨げるものではなく,圧延荷重の低減等を目
的として潤滑油を併用しても構わない。
【0030】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明潤滑剤の効果を
示す。
【0031】固体潤滑剤の種類,粒径,配合量,増粘剤
の種類,粘度の条件を設定し,混合して各種の潤滑剤を
作製した。これらの作製に当っては,まず水に所定量の
固体潤滑剤を攪拌しながら添加して混合水を得,これに
所定の増粘剤を添加し,さらに攪拌して潤滑剤とした。
これら潤滑剤の配合例を表1に示した。
【0032】使用した増粘剤のうち,表1に記載の「微
生物多糖類」としては日本純薬社製の商品名レオジック
100を用いた。これは,キサントモナス属の菌株を用
いて炭水化物を発酵させて得られたヘテロ多糖類からな
るキサンタンガムである。また「アガロース多糖類」と
して寒天を使用し,「アミロース多糖類」としては澱粉
を用いた。比較として使用した「アクリル酸重合体」は
日本純薬社製の商品名ジュンロンを用いた。「水溶性セ
ルロースエーテル」は信越化学社製の商品名メトローズ
を用いた。
【0033】ノズル閉塞防止には固体潤滑剤が粘性水溶
液中で安定して微細に分散され,且つ焼付き防止の点で
保持されなければならない。潤滑剤の粘度が低い場合は
送液配管の中で沈降してしまう。そこで沈降度と分散性
を測定した。
【0034】沈降率は潤滑剤を製造後1週間放置し,分
離または沈降した潤滑剤の上部容積を測定し,表2に示
す基準で4段階で評価し,その結果を表1に併記した。
【0035】分散性は分散粒径で評価した。分散粒径は
水希釈凝集粒径に及ぼす影響が大きく,水希釈凝集粒径
がノズル閉塞に影響を及ぼす。そこで,レーザー回折に
より分散粒径を測定し,表2に示す4段階で評価し,そ
の結果を表1に併記した。なお,測定濃度は0.1重量
%である。
【0036】また,潤滑剤を水で希釈したさいの「水希
釈による凝集性」を次のようにして評価した。本文に記
載したように合成高分子増粘剤を用いた潤滑剤では圧延
待機中に送水管内で水によって希釈されたときに,固体
潤滑剤の2次凝集とは異なる高分子の凝集が発生する。
この水に希釈されたときの凝集粒径が小さいほどノズル
閉塞は改善される。閉塞状況は噴射ノズル径によって異
なると考えられるが,水希釈による凝集粒径が0.5m
mを越えるとノズル閉塞が発生し易い。この現象は0.
5mmの凝集粒が実質的にはアグリゲートまたはフロキ
ュレートを起こし,数個の集合体となって1mm以上の
粒径となりノズル先端穴径より大きくなってノズル閉塞
するためと考えられる。熱間圧延における一般的な噴射
ノズル径は0.5〜2mm程度であるから少なくとも凝
集粒径が0.5mm以下と考えられる。そこで,ノズル
閉塞の原因である水による希釈凝集粒径を光学顕微鏡に
て測定し,表2に示すように4段階で評価し,その結果
を表1に併記した。なお,潤滑剤の希釈濃度(固体潤滑
材を粘性水溶液に分散させてなる潤滑剤の濃度)は4重
量%である。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】これらの特性を持った各潤滑剤を用いてフ
エライト系ステンレス鋼の熱間圧延を実施した。熱間圧
延は厚さ200mm,幅1030〜1240mm,単重
10〜14トンのフェライト系ステンレス鋼(化学成
分:0.01〜0.02%C,0.46〜0.57%Si,
0.20〜0.30%Mn,18.3〜19.6%Cr,
0.11〜0.13%Ni,0.41〜0.49%Nb,
0.46〜0.58%Cu,3.5〜4.0%Al,0.1
6〜0.32%Ti,0.009〜0.013%N)のス
ラブを1200〜1250℃に加熱後,厚さ25mmの
ラフバーに粗圧延し,その後7スタンドからなる仕上げ
圧延機群にて,厚さ3.0mmのホットコイルに圧延し
た。
【0040】そのさい,仕上げ圧延機群のワークロール
替え(研削仕上げしたロールへの交換)を行った後,1
0本のスラブを連続的に熱間圧延し,この1サイクル間
では潤滑条件は一定とした。圧延後,次回圧延チャンス
まで噴射設備ならびに貯蔵槽はそのままとして再度,同
条件で10本のスラブを圧延し,その前後のノズル閉塞
の有無を調査した。
【0041】潤滑剤の噴射位置は仕上げ圧延機群の第1
〜3スタンドのワークロールに潤滑剤を供給する系を設
置し,上下それぞれ3〜4個のノズルからロール表面に
潤滑剤を吹き付けた。また,潤滑剤の供給においては,
潤滑剤貯蔵槽よりプランジャータイプのポンプにて40
kgf/mm2の圧力で導管で送液した。ノズルからロ
ールへの潤滑剤の供給量はロール面に対し約0.3リッ
トル/m2となるようにした。なお,これらの圧延にお
いて,バックアップロールには従来から用いられている
圧延油をウォーターインジェクションにより供給した。
また第1〜3の仕上げ圧延機のワークロールの材質はハ
イスロールとした。
【0042】各潤滑剤を用いて圧延したさいのノズル閉
塞性と耐焼付き性を調べ,その結果を表1に併記した。
ノズル閉塞性は圧延前後のノズル点検でチェックした。
耐焼付き性は圧延後のロール肌の判定と酸洗後の鋼板表
面肌の判定によって焼付きの有無を調べた。ノズル閉塞
性と耐焼付き性の評価は,各潤滑剤を用いて10コイル
圧延したときに,そのうち1コイルでもノズル閉塞が起
きたり焼付きが生じた場合に×とした。
【0043】表1の結果から次のことが明らかである。
【0044】No.1と2は水溶性合成高分子を増粘剤と
して用いた潤滑剤であるが,これらでは固体潤滑剤が沈
降しやすく,最もノズル閉塞に影響する水による希釈凝
集粒径も大きい。このため,結果的にノズル閉塞が発生
し,焼付きを防止できなかった。また,植物性の多糖類
を増粘剤として使用したNo.4と5の潤滑剤ではノズル
閉塞が発生し,No.4のものでは固体潤滑剤の含有量が
少ないために焼付き防止効果がなく,No.5のものでは
水希釈凝集粒径が大きいために焼付きが発生した。
【0045】これに対して微生物多糖類を増粘剤とした
No.3,6および7の本発明潤滑剤では,いずれもノズ
ル閉塞がなく且つ焼付きも抑えられた。すなわちこれら
の潤滑剤を用いることで水希釈による凝集が抑えられ,
潤滑剤供給の面で安定した噴射が可能であり,ノズル閉
塞が圧延前後で全く発生しなかった。また,製造1週間
後の水分離,ゲル化もないことから長時間保持安定性に
も優れ,またステンレス鋼の焼付き防止の面でも安定し
た効果が得られることがわかった。特にNo.3のように
固体潤滑剤としてFeO(OH)を使用したものは全く
沈降がなく,分散粒径,水希釈凝集粒径も小さく,耐ノ
ズル閉塞性と耐ロール焼付き性が極めて優れている。
【0046】
【発明の効果】以上に説明したように,本発明の潤滑剤
によれば,耐ノズル閉塞性に優れ,安定したロール表面
への噴射が可能となり,待機時のノズル配管内に堆積や
凝集が発生しないのでノズル閉塞しない。また,圧延ロ
ールの損傷も少なくなり,ロール原単位を低減させるこ
とができ,製造されたステンレス鋼板は綺麗な表面性状
を有することから,表面研削を省略することができ,生
産性良く鏡面仕上げ用途等の付加価値が高いステンレス
鋼板を製造することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C10M 103:06 E 145:40) C10N 20:02 20:06 Z 40:24 Z

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 微生物醗酵のヘテロ多糖類からなるバイ
    オガムを水に添加した粘性水溶液中に,平均粒径が0.
    1〜1μmの固体潤滑剤を分散させてなる耐ノズル閉塞
    性に優れたステンレス鋼の熱間圧延用潤滑剤。
  2. 【請求項2】 固体潤滑剤は,酸化鉄,水酸化鉄,Si
    O2, Al2O3, CaCO3の1種または2種以上からなる請求項
    1に記載の熱間圧延用潤滑剤。
  3. 【請求項3】 バイオガムはキサンタンガムである請求
    項1または2に記載の熱間圧延用潤滑剤。
  4. 【請求項4】 キサンタンガムはキサントモナス属の菌
    株を用いて炭水化物を発酵させて得られたものであり,
    潤滑剤中に0.05〜3重量%の量で配合されている請
    求項3に記載の熱間圧延用潤滑剤。
  5. 【請求項5】 見掛け粘度が1〜30Pa・sである請
    求項1,2,3または4に記載の熱間圧延用潤滑剤。
  6. 【請求項6】 水酸化鉄はFeO(OH)である請求項
    2に記載の熱間圧延用潤滑剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2001172664A (ja) * 1999-12-22 2001-06-26 Daido Metal Co Ltd 潤滑剤
JP2002506808A (ja) * 1998-03-19 2002-03-05 アジェンデ・キミケ・リウニテ・アンジェリニ・フランチェスコ・ア・チ・エレ・ア・エフェ・ソシエタ・ペル・アチオニ グリコーゲン含有眼用溶液
CN114480006A (zh) * 2022-04-01 2022-05-13 天津市金海利油脂有限公司 一种极压润滑脂及其制备方法

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