JP3919240B2 - 耐ノズル閉塞性に優れたステンレス鋼の熱間圧延用潤滑剤 - Google Patents

耐ノズル閉塞性に優れたステンレス鋼の熱間圧延用潤滑剤 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は,ステンレス鋼を熱間圧延する際の圧延ロール表面に,微粒子状の固体潤滑剤を水系媒体に分散させた潤滑剤をノズルからスプレーする場合に,ノズル閉塞トラブルを防止でき且つ良好な表面性状のステンレス鋼帯に圧延できるステンレス鋼の熱間圧延用潤滑剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
ステンレス鋼板製品は,美麗な表面肌が要求されるものであるから,その製造工程において表面疵の発生を極力防止する必要がある。ところがタンデムミル等の熱間圧延設備でステンレス鋼を熱間圧延するさいに,圧延ロールに対するステンレス鋼の焼付きに起因した疵が鋼板表面に発生することがあった。表面疵が発生すると,たとえ軽度の疵であっても鏡面仕上げ用途には不適合になり,用途に制約を受けることになる。また表面疵のあるステンレス鋼板は研磨等の表面手入れを必要とするか,疵の程度が著しいものは製品として利用できずにスクラップとなる。このように,ステンレス鋼熱間圧延時のロールへの焼付きに起因する鋼板表面疵の発生は,歩留り低下を来し製造コストを上昇させる原因となる。
【0003】
このような表面疵の発生を抑制するために,従来より圧延ロールに対する負荷の軽減,圧延条件の選択,ロール材質の選定,潤滑剤の改良等の手段が試みられてきた。そして,動物性油脂類,植物性油脂類,鉱物系潤滑油,合成系潤滑油等の潤滑剤を圧延ロール表面に供給し,表面疵を防止する方法も種々提案されている。
【0004】
また,圧延油に潤滑性を有する粉体を分散混合し,この分散液をインジェクション方式により圧延ロール表面に噴射供給する方法も検討されている。ところがこれらの方法では,噴射するノズル穴の閉塞は免れず,圧延前のノズルの交換作業時間の延長や圧延中のノズル閉塞によって表面疵が発生することがあった。
【0005】
そこで,本発明者らは,特開昭64−83309号公報などにおいて,送液性ならびに均一分散性を重視して酸化鉄粉体を粘性水溶液に混合して噴射する熱間圧延用潤滑剤を提案している。しかし,これまでに提案した粘性水溶液のものでは,酸化鉄粉末を混合した直後は均一な分散が得られるが,保存すると貯槽内で固体潤滑剤の沈降が生じ,長時間安定した分散保持が得られない場合があった。この分散保持が不安定であると,熱間圧延の際に圧延ロール表面に安定した固体潤滑剤の供給ができなくなり,ノズル閉塞が発生すること,また,潤滑剤を供給するパイプの継ぎ目部分などに固体潤滑剤が堆積し,管の詰りや潤滑剤の供給不足といった問題も生じることが明らかになった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような背景から,本発明は固体潤滑剤を良好に分散保持できる水系媒体を得ること,ひいては,これに固体潤滑剤を分散させた潤滑剤をノズルで噴射する場合,圧延中,圧延前後を通してノズル閉塞がなく,圧延される帯鋼についても良好な表面性状をもつ製品を得るのに適したステンレス熱間圧延用潤滑剤を得ることを目的としたものである。なお,本明細書において「固体潤滑剤」とは潤滑機能をもつ微粒子物質を指し,「潤滑剤」とは水系媒体に当該固体潤滑剤を分散させた状態のものを言う。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば,微生物醗酵のヘテロ多糖類からなるバイオガムを水に添加した粘性水溶液中に,平均粒径が0.1〜1μmの固体潤滑剤を分散させてなる耐ノズル閉塞性に優れたステンレス鋼の熱間圧延用潤滑剤を提供する。ここで,固体潤滑剤は,酸化鉄,水酸化鉄,SiO2,Al2O3, CaCO3の1種または2種以上からなり,バイオガムは例えばキサントモナス属の菌株を用いて炭水化物を発酵させて得られたキサンタンガムである。
【0008】
【作用】
〔発明の詳述〕
フェライト系ステンレス鋼等の熱間圧延では圧延材とロールとの間で焼付き現象が起こり易いので,前述したように固体潤滑剤を液媒体に分散させてロールと圧延材との間にノズル噴射することが行われているが,フェライト系ステンレス鋼の圧延前には,通常,ロール交換作業とノズル閉塞の点検及び交換作業が行われる。ノズル閉塞の点検交換作業では,圧延中のノズル閉塞を防止するために閉塞したノズルを交換するが,交換時間が掛かり過ぎると作業性,生産性が著しく低くなり,圧延中のノズル閉塞は固体潤滑剤の供給不足となり焼付き起因による肌荒れを引き起こす。
【0009】
そこで本発明者らは,特開昭64−83309号公報等で提案した増粘剤配合の潤滑剤のノズル閉塞の原因について調べたところ,次のことが判明した。
【0010】
(1) 圧延前に閉塞率が高くなるのは,従来の高分子系増粘剤を用いて潤滑剤を作製した場合,次の圧延チャンスまでの間(フェライト系ステンレス鋼圧延までの待機中)に配管洗浄後の残留潤滑剤が送液配管内の水で希釈される。
(2) その結果,高分子の電気的斥力が弱まり,高分子どうしが凝集する。
(3) その後,待機中にノズルの先端に凝集粒が集積し,ノズル先端で被圧延材の輻射熱によって凝集粒が乾燥され固形物となり,これによって,ノズル閉塞が発生する。
【0011】
すなわち,ノズル閉塞の原因は潤滑剤の凝集であり,凝集は高分子増粘剤が希釈され,濃度が薄くなり,高分子どうしの反発が小さくなり,絡み合って固体潤滑剤を含む高分子が凝集するためであることがわかった。
【0012】
ところが,このような凝集現象は,微生物醗酵のバイオガムを水に添加した媒体に粒径0.1〜1μmの固体潤滑剤を分散させた潤滑剤では軽減することがわかった。したがって,この潤滑剤を用いるとノズル閉塞の問題が解決され,併せて帯鋼の表面疵発生の問題も解決できる。その理由は必ずしも明確ではないが,本発明の潤滑剤では,固体潤滑剤の分散粒径並びに送水管内の水による希釈凝集粒径が小さく維持されることが有効に作用しているものと考えられる。
【0013】
本発明の潤滑剤は,通常の水道水や地下水等の水,バイオガムおよび固体潤滑剤から構成されるものであるが,その主要素であるバイオガムと固体潤滑剤について以下に具体的に説明する。
【0014】
(1) バイオガム
バイオガムの使用は本発明の潤滑剤において特徴的な要素である。潤滑剤が送水管中で水で希釈されて凝集するか否かは耐ノズル閉塞性に大きな影響を及ぼすが,本発明者らはこの凝集の回避を目的として,水に添加したときに増粘性を示す多糖類に着目した。かような多糖類としては,デンプン,セルロース,ペクチン,キシラン,フラクタン,マンナン,アラビヤゴム,カンテン,ラミナリン,アルギン酸,グリコーゲン,イヌリン,リケニン,キチン,ムコ多糖類等の多数のものがあるが,これら多糖類にはその由来に基づいて植物多糖類,微生物発酵多糖類,動物多糖類に分けられる。粘性水溶液を得るためだけならどの多糖類でも特に問題はないが,デンプンやカンテンの植物多糖類では長時間貯蔵による固体潤滑剤の沈降が起こり,送水管の詰りによって焼付きが発生する。またゲル化(プリン状になる)が起きる問題もある。
【0015】
従来の潤滑剤に使用された水溶性合成高分子,例えばアクリル酸重合体や水溶性セルロース誘導体(メチルセルロースやカルボキシメチルセルロース等)は,多糖類と同様の高分子化合物ではあるが,これを増粘剤とした場合,一応の粘性は得られるが,時間経過と共に水分離やゲル化したりする傾向がある。安定した分散保持を得るために添加量を増して粘度を高くすることも可能であるが,この場合には潤滑剤の送液性が著しく低下するようになる。また合成高分子増粘剤は元来が凝集剤として用いられているものであるため,水で希釈された場合には凝集が著しくなる。
【0016】
これに対し,微生物発酵によって得られるヘテロ多糖類からなるバイオガムは後述する粘度の範囲において固体潤滑剤に対して極めて安定した分散保持能を示し,イオンならびにpHによる影響がほとんどないため,従来の合成高分子増粘剤のように水で希釈されたときに生ずる凝集は全く無く,水分離やゲル化も起こさないという特徴がある。この特徴は本発明において極めて有用に作用する。本発明で使用できるバイオガムは,このような性質を有するものであれば,その種類は実質的に問わないが,工業的に使用できるものとしてはキサンタンガムがある。
【0017】
キサンタンガムの製法等については, 例えば特公昭60-38118号公報, 特公平5-36033 号公報, 特公平2-6519号公報, 特開平1-153098号公報, 特開昭52-15893号公報, 特開昭52-105291 号公報, 特開昭58-20195号公報, 特開昭60-47694号公報, 特開昭61-181393 号公報, 特開昭62-84102号公報などに記載されている。これらの公報に記載されているように,キサンタンガムはキサントモナス属の菌株を用いて炭水化物を発酵させて得られるヘテロ多糖類であり,通常のものでは分子量は数百万で,単糖(グルコース及びマンノース),グルコン酸塩及び酢酸塩・ピルビン基などから成る水溶性のバイオガムとして,粉状のものが市場で入手可能である。
【0018】
バイオガムの配合量は固体潤滑剤の量に合わせて調整することができるが,潤滑剤に対して0.05重量%未満では必要な粘度や潤滑剤の良好な保持・分散性が一般に得られずノズル閉塞を起こす。他方,3重量%を越えて配合すると粘度の上昇を招き,潤滑剤の供給が困難となる。このため,潤滑剤に対して0.05〜3重量%が望ましい。なお,該バイオガムは中性であるため,圧延設備に対する腐食性を考慮する必要が無く,排水処理環境並びに熱延鋼帯の製造性に悪影響を与えない。
【0019】
(2) 固体潤滑剤の種類
体潤滑剤としては,シリカ,アルミナ,ジルコニウム,チタン,カルシウム,マグネシウム等の酸化物,炭酸カルシウム, グラファイト,酸化鉄,水酸化鉄(オキシ水酸化鉄を含む)等が挙げられるが,本発明では酸化鉄,水酸化鉄,SiO 2 ,Al 2 3 ,CaCO 3 の1種または2種以上からなるものを使用する。しかし,ステンレス鋼の熱間圧延に用いられること,排水処理されることを考えると鉄系の固体潤滑剤であればより好ましい。
【0020】
鉄系の固体潤滑剤としては,FeO,Fe23,Fe34,Fe(OH)2,Fe(OH)3,FeO(OH)の化学式で表されるものがある。ロールの焼付き防止という点においては,Fe23を用いても差支えないが,硬さが高いの
でロールの摩耗やノズル穴の摩耗等に影響を及ぼすきらいがある。硬さの面ではFeO, Fe34, FeO(OH)が好ましい。しかし,FeOは工業的に安定して得るのが困難である。またFe(OH)2やFe(OH)3等はFeO(OH)を製造する工程中に存在できるものであり,FeO(OH)が工業的には最も安定して製造入手できるため実用的である。
【0021】
また,固体潤滑剤を二種以上配合すると表面電位が溶液中のイオンに対して正負が逆転することもあり,凝集粒径が大きくなることがあるため,望ましくは単独添加が良い。この点でもFeO(OH)は自己の持つ表面電位が大きく,凝集粒径が小さく,他の酸化物に比べても比較的微細であるため,その単独添加が望ましい。
【0022】
(3) 固体潤滑剤の粒径
固体潤滑剤の粒径は,潤滑剤の分散粒径,ノズル噴射性,ロール表面への均一散布性にとってきわめて重要な管理点である。固体潤滑剤の粒径が1μmを越えたもので潤滑剤を製造すると長時間の内には供給導管の継ぎ目部等に固体潤滑剤の堆積を生じるという問題が発生する。また,ロール表面への供給の面からは, 粗粒ほど供給面を被覆する面積の比率が小さくなるため,同一重量の固体潤滑剤を供給した場合の供給面の被覆効率は低下する。この理由からも固体潤滑剤粉末の平均粒径は1μm未満とする必要がある。
【0023】
他方,微細粉末は一般的に凝集し易い性質を有しているため,固体潤滑剤粉末の粒径があまり小さいと,粘性水溶液に混合した場合に,微細粉末の凝集力が強くなって均一に分散させるのが困難となる。このため,固体潤滑剤の平均粒径は0.1μm以上とする必要がある。また,0.1μmを下回る場合の超微細粉末では工業的にも製造が困難となるばかりかコスト上昇を招くため,実用的ではない。したがって,固体潤滑剤の平均粒径は0.1以上1μm未満にする必要がある。
【0024】
(4) 固体潤滑剤の配合量
固体潤滑剤の配合量は,安定したノズル噴射性,配管送液性,耐焼付き性を得るうえで重要である。圧延後の表面疵を防止するためには10重量%以上の固体潤滑剤の配合量を必要とし,これにより安定した焼付き防止効果が得られる。しかし, 30重量%を越える配合量では,潤滑剤の経時的な分散・保持性等が劣化し,焼付き防止効果が安定せず,また沈降による凝集でノズル閉塞が発生し易くなる。さらに圧延ロールへ吹き付けて供給するさいに,配合量の増加は見掛け上の粘度増加を招き,配管送液性が低下して過大な吐出エネルギーが必要となり設備的に大きなものとなり,実用的でない。また配合量の増加はコスト的にも不利である。このため,固体潤滑剤の配合量は重量%で10〜30%とする必要がある。
【0025】
(5) 潤滑剤の粘度
潤滑剤の粘度は,固体潤滑剤粉末の分散保持性と潤滑剤の送液性との観点から勘案して選定でき,特に限定する必要はないが, 望ましくは1〜30Pa・sである。潤滑剤の見掛けの粘度がB型粘度計測定値1Pa・s未満においては,固体潤滑剤の均一分散保持が困難であり,潤滑剤の貯蔵槽内での固体潤滑剤の沈降や潤滑剤供給導管内での堆積等の問題が生じる。一方,見掛け粘度が高くなるほど,固体潤滑剤の分散保持にとって有利となり,ロール表面に付着する潤滑剤の膜厚も厚くなって焼付き防止効果を向上させるが,いたずらに粘度が高まると潤滑剤の供給において多大な供給エネルギーが必要となり,それに要する設備費用も増大し,実用性が失われる。したがって安定操業の点から潤滑剤の見掛けの粘度は1〜30Pa・s,より好ましくは3〜10Pa・sとするのがよい。なお見掛け粘度はB型回転粘度計を使用し,ずり速度1.2/秒(常温)で測定した値である。
【0026】
次に,本発明に係る潤滑剤のステンレス鋼熱間圧延における具体的な使用方法について説明する。
【0027】
本潤滑剤の調合・混合後は槽に貯蔵され,この槽からポンプを通じて圧延ロールへの導管に送られる。この時のポンプは適宜選定すればよいが,単純な水に比べると粘度が高いことから通常数10kgf/cm2程度以上の圧力が必要となり,プランジャータイプ等のポンプを用いるのが適している。
【0028】
導管によって送られる潤滑剤は先端のノズルから圧延スタンド内のロール表面に向けて吹き付けられる。本潤滑剤を用いる圧延スタンドは特に限定されるものではなく,ホットストリップミルにおける仕上圧延スタンドおよび粗圧延スタンドの中から適宜選定される。潤滑剤を吹き付ける圧延ロールの位置としては,その効果の度合いを勘案しながら適宜選定すればよい。圧延材と接する幅全域に本潤滑剤を吹き付けても良いし,粗圧延時の幅方向圧延での塑性変形挙動に関連して酸化スケールの剥離が顕著なことが関与して比較的焼付きが発生し易いと考えられる圧延材エッジ部近傍に選択的に吹き付けてもよい。
【0029】
圧延ロールに供給される本潤滑剤の量は,送液の圧力と導管先端のノズルを選定することにより,圧延ロールの速度等を勘案しながら調節することができる。このときの潤滑剤の量としては,圧延ロールが圧延材と接触する面積に対して,0.1リットル/m2程度から1リットル/m2程度が好ましい。なお,ステンレス鋼の熱間圧延においても通常の圧延潤滑油が用いられることがあるが,本発明に係る潤滑剤を用いる上で,潤滑油の併用を妨げるものではなく,圧延荷重の低減等を目的として潤滑油を併用しても構わない。
【0030】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明潤滑剤の効果を示す。
【0031】
固体潤滑剤の種類,粒径,配合量,増粘剤の種類,粘度の条件を設定し,混合して各種の潤滑剤を作製した。これらの作製に当っては,まず水に所定量の固体潤滑剤を攪拌しながら添加して混合水を得,これに所定の増粘剤を添加し,さらに攪拌して潤滑剤とした。これら潤滑剤の配合例を表1に示した。
【0032】
使用した増粘剤のうち,表1に記載の「微生物多糖類」としては日本純薬社製の商品名レオジック100を用いた。これは,キサントモナス属の菌株を用いて炭水化物を発酵させて得られたヘテロ多糖類からなるキサンタンガムである。また「アガロース多糖類」として寒天を使用し,「アミロース多糖類」としては澱粉を用いた。比較として使用した「アクリル酸重合体」は日本純薬社製の商品名ジュンロンを用いた。「水溶性セルロースエーテル」は信越化学社製の商品名メトローズを用いた。
【0033】
ノズル閉塞防止には固体潤滑剤が粘性水溶液中で安定して微細に分散され,且つ焼付き防止の点で保持されなければならない。潤滑剤の粘度が低い場合は送液配管の中で沈降してしまう。そこで沈降度と分散性を測定した。
【0034】
沈降率は潤滑剤を製造後1週間放置し,分離または沈降した潤滑剤の上部容積を測定し,表2に示す基準で4段階で評価し,その結果を表1に併記した。
【0035】
分散性は分散粒径で評価した。分散粒径は水希釈凝集粒径に及ぼす影響が大きく,水希釈凝集粒径がノズル閉塞に影響を及ぼす。そこで,レーザー回折により分散粒径を測定し,表2に示す4段階で評価し,その結果を表1に併記した。なお,測定濃度は0.1重量%である。
【0036】
また,潤滑剤を水で希釈したさいの「水希釈による凝集性」を次のようにして評価した。本文に記載したように合成高分子増粘剤を用いた潤滑剤では圧延待機中に送水管内で水によって希釈されたときに,固体潤滑剤の2次凝集とは異なる高分子の凝集が発生する。この水に希釈されたときの凝集粒径が小さいほどノズル閉塞は改善される。閉塞状況は噴射ノズル径によって異なると考えられるが,水希釈による凝集粒径が0.5mmを越えるとノズル閉塞が発生し易い。この現象は0.5mmの凝集粒が実質的にはアグリゲートまたはフロキュレートを起こし,数個の集合体となって1mm以上の粒径となりノズル先端穴径より大きくなってノズル閉塞するためと考えられる。熱間圧延における一般的な噴射ノズル径は0.5〜2mm程度であるから少なくとも凝集粒径が0.5mm以下と考えられる。そこで,ノズル閉塞の原因である水による希釈凝集粒径を光学顕微鏡にて測定し,表2に示すように4段階で評価し,その結果を表1に併記した。なお,潤滑剤の希釈濃度(固体潤滑材を粘性水溶液に分散させてなる潤滑剤の濃度)は4重量%である。
【0037】
【表1】
Figure 0003919240
【0038】
【表2】
Figure 0003919240
【0039】
これらの特性を持った各潤滑剤を用いてフエライト系ステンレス鋼の熱間圧延を実施した。熱間圧延は厚さ200mm,幅1030〜1240mm,単重10〜14トンのフェライト系ステンレス鋼(化学成分:0.01〜0.02%C,0.46〜0.57%Si,0.20〜0.30%Mn,18.3〜19.6%Cr,0.11〜0.13%Ni,0.41〜0.49%Nb,0.46〜0.58%Cu,3.5〜4.0%Al,0.16〜0.32%Ti,0.009〜0.013%N)のスラブを1200〜1250℃に加熱後,厚さ25mmのラフバーに粗圧延し,その後7スタンドからなる仕上げ圧延機群にて,厚さ3.0mmのホットコイルに圧延した。
【0040】
そのさい,仕上げ圧延機群のワークロール替え(研削仕上げしたロールへの交換)を行った後,10本のスラブを連続的に熱間圧延し,この1サイクル間では潤滑条件は一定とした。圧延後,次回圧延チャンスまで噴射設備ならびに貯蔵槽はそのままとして再度,同条件で10本のスラブを圧延し,その前後のノズル閉塞の有無を調査した。
【0041】
潤滑剤の噴射位置は仕上げ圧延機群の第1〜3スタンドのワークロールに潤滑剤を供給する系を設置し,上下それぞれ3〜4個のノズルからロール表面に潤滑剤を吹き付けた。また,潤滑剤の供給においては,潤滑剤貯蔵槽よりプランジャータイプのポンプにて40kgf/mm2の圧力で導管で送液した。ノズルからロールへの潤滑剤の供給量はロール面に対し約0.3リットル/m2となるようにした。なお,これらの圧延において,バックアップロールには従来から用いられている圧延油をウォーターインジェクションにより供給した。また第1〜3の仕上げ圧延機のワークロールの材質はハイスロールとした。
【0042】
各潤滑剤を用いて圧延したさいのノズル閉塞性と耐焼付き性を調べ,その結果を表1に併記した。ノズル閉塞性は圧延前後のノズル点検でチェックした。耐焼付き性は圧延後のロール肌の判定と酸洗後の鋼板表面肌の判定によって焼付きの有無を調べた。ノズル閉塞性と耐焼付き性の評価は,各潤滑剤を用いて10コイル圧延したときに,そのうち1コイルでもノズル閉塞が起きたり焼付きが生じた場合に×とした。
【0043】
表1の結果から次のことが明らかである。
【0044】
No.1と2は水溶性合成高分子を増粘剤として用いた潤滑剤であるが,これらでは固体潤滑剤が沈降しやすく,最もノズル閉塞に影響する水による希釈凝集粒径も大きい。このため,結果的にノズル閉塞が発生し,焼付きを防止できなかった。また,植物性の多糖類を増粘剤として使用したNo.4と5の潤滑剤ではノズル閉塞が発生し,No.4のものでは固体潤滑剤の含有量が少ないために焼付き防止効果がなく,No.5のものでは水希釈凝集粒径が大きいために焼付きが発生した。
【0045】
これに対して微生物多糖類を増粘剤としたNo.3,6および7の本発明潤滑剤では,いずれもノズル閉塞がなく且つ焼付きも抑えられた。すなわちこれらの潤滑剤を用いることで水希釈による凝集が抑えられ,潤滑剤供給の面で安定した噴射が可能であり,ノズル閉塞が圧延前後で全く発生しなかった。また,製造1週間後の水分離,ゲル化もないことから長時間保持安定性にも優れ,またステンレス鋼の焼付き防止の面でも安定した効果が得られることがわかった。特にNo.3のように固体潤滑剤としてFeO(OH)を使用したものは全く沈降がなく,分散粒径,水希釈凝集粒径も小さく,耐ノズル閉塞性と耐ロール焼付き性が極めて優れている。
【0046】
【発明の効果】
以上に説明したように,本発明の潤滑剤によれば,耐ノズル閉塞性に優れ,安定したロール表面への噴射が可能となり,待機時のノズル配管内に堆積や凝集が発生しないのでノズル閉塞しない。また,圧延ロールの損傷も少なくなり,ロール原単位を低減させることができ,製造されたステンレス鋼板は綺麗な表面性状を有することから,表面研削を省略することができ,生産性良く鏡面仕上げ用途等の付加価値が高いステンレス鋼板を製造することができる。

Claims (5)

  1. 微生物醗酵のヘテロ多糖類からなるバイオガムを水に添加した粘性水溶液中に,酸化鉄,水酸化鉄,SiO 2 ,Al 2 3 ,CaCO 3 の1種または2種以上からなる平均粒径が0.1〜1μmの固体潤滑剤を分散させてなる耐ノズル閉塞性に優れたステンレス鋼の熱間圧延用潤滑剤。
  2. バイオガムはキサンタンガムである請求項1に記載の熱間圧延用潤滑剤。
  3. キサンタンガムはキサントモナス属の菌株を用いて炭水化物を発酵させて得られたものであり,潤滑剤中に0.05〜3重量%の量で配合されている請求項に記載の熱間圧延用潤滑剤。
  4. 見掛け粘度が1〜30Pa・sである請求項1,2またはに記載の熱間圧延用潤滑剤。
  5. 水酸化鉄はFeO(OH)である請求項2に記載の熱間圧延用潤滑剤。
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