JP3539160B2 - 脱スケール性、表面性状および生産性に優れたステンレス鋼の製造方法 - Google Patents

脱スケール性、表面性状および生産性に優れたステンレス鋼の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、脱スケール性、表面性状および生産性に優れたステンレス鋼の製造方法に関し、特に熱延スケールが付着したままの熱延ステンレス鋼帯をそのまま冷間圧延することにより、良好な脱スケールの下に、表面品質に優れたステンレス鋼を生産性良く製造しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】
熱間圧延後のステンレス鋼帯の表面は、通常、酸化スケールで覆われている。このような熱延鋼帯を、そのまま冷間圧延工程に送ると、スケールに起因した表面疵やクラックなどの表面欠陥が発生するため、従来は、冷間圧延前に熱延スケールを取り除く必要があると考えられてきた。
ここに、熱延鋼帯あるいは熱延後焼鈍した鋼帯の表面スケールを除去する手段としては、ショットブラストなどの機械的処理と、硫酸や硝酸と弗酸の混酸などを用いた酸洗処理すなわち化学的処理とに大別でき、一般的には両者を併用して脱スケールを行っている。
従って、ステンレス鋼帯の製造工程においては、一般に、熱延ステンレス鋼帯の脱スケール処理と冷延−仕上げ焼鈍後の脱スケール処理の2度の脱スケール工程が必要とされてきた。
【0003】
この点、低合金鋼(普通鋼を含む。以下同じ)では、例えば特開昭52-21245号公報や特開昭52-21246号公報に開示されているように、熱延スケールを除去することなく直接、冷間圧延を行い、冷間圧延と脱スケールを同時に行う鋼板の製造方法が検討されてきた。
この方法は、ウスタイト(FeO)を含有するスケールが極めて剥離し易いことを活用して、冷間圧延により板厚調整と脱スケールとを同時に行おうとするものである。
【0004】
また、特開昭54−133460号公報には、熱延鋼帯を40%以上の圧下率で冷間圧延した後、ショットブラストまたは含粒高圧水を噴射して脱スケールを完了させる方法が、特開昭57-41821号公報には、熱延後のコイルを冷却水中に浸漬して冷却したのち、圧下率:4〜40%未満で圧延して大部分のスケールを除去したのち、さらに機械的スケール除去処理を行うことからなる鋼ストリップのスケール除去方法が開示されている。
しかしながら、これらの方法は、熱延スケール中にウスタイトをほとんど生成しないステンレス鋼に適用することはできない。しかも、これらの方法では、剥離したスケールが次のスタンドでロールと鋼材面の間に噛み込まれ、ロールや鋼板の表面疵の原因となる場合があった。
【0005】
さらに、特開昭52-52157号公報には、黒皮鋼材を冷間圧延するロール出側の鋼材面に、圧延油と水のエマルジョンを 20 kg/cm2以上の高圧で噴射することによって、スケールを剥離すると同時に排除する圧延方法が開示されている。
しかしながら、ステンレス鋼の熱延スケールは、低炭素鋼のスケールと比較すると強固であるために、この方法を適用した場合、スケールの剥離が不均一となり、かえってスケールの食い込み欠陥の原因となる場合があった。
【0006】
一方、黒皮冷延により脱スケールを行わない技術としては、たとえば特開昭56-62896号公報および特開昭56-86621号公報に、黒皮冷延に先立ち、水溶性樹脂化合物を主成分とする組成物を熱延板表面に塗布し、潤滑圧延を行う技術が提案されている。この技術は、鋼板表面を樹脂によって保護することにより、黒皮冷延中にスケールが破砕微細化して板表面から剥離し、圧延油中に混入することに起因したロールおよび圧延ラインの汚染を防止すると共に、圧延荷重の低減およびロール磨耗の低減を図ったものである。
しかしながら、この方法では、樹脂皮膜を塗布するための設備および工程が必要なだけでなく、冷延後に直火加熱方式以外の焼鈍炉にて焼鈍する場合には、樹脂皮膜を除去する工程も必要となる等の不利があった。
【0007】
ところで、この発明で対象とするステンレス鋼の熱延スケールは、上述したような低合金鋼のそれとは大きく異なっている。
すなわち、低合金鋼の熱延スケールは、主にウスタイト(FeO)やマグネタイト(Fe3O4 )からなっているのに対し、ステンレス鋼では、鋼中にCrやNiのような合金元素を多量の含むため、その熱延スケールは、Feの他にCrや微量のMnなどを含んだスピネル系(M3O4)およびコランダム系(M2O3)の酸化物を主体としたものとなり、スケールの厚さ自体は低合金鋼のスケールと比較して薄いにも拘らず、脱スケール性は大幅に劣っている。
【0008】
そのため、熱延ステンレス鋼の酸洗設備は、低合金鋼のそれと比較して長大なものとなり、多大な設備費用が必要となる。また、通板速度も遅くする必要があり、さらには酸液も高濃度の硫酸、弗酸、硝酸などを使用するため、ランニングコストにも多大な経費を必要とすることから、生産性の低下を招くだけでなく、ステンレス鋼の製造コストを高める原因となっていた。
従って、熱延ステンレス鋼帯の酸洗工程が省略でき、最終の仕上げ酸洗のみで脱スケールを完了でき、しかも鋼板の表面性状が良好であるような製造方法が開発できれば、工程省略および生産性の向上による低コスト化のメリットは極めて大きい。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述したとおり、ステンレス鋼の熱延スケールは、低合金鋼の熱延スケールとは組成が大きく異なっていることもあって、ステンレス鋼に関して黒皮冷延する技術はこれまで知られていなかった。
【0010】
この発明は、上記の現状に鑑み開発されたもので、これまで必須と考えられていたステンレス鋼の熱延スケールの脱スケール工程を省略し、しかも黒皮冷延中にスケールが破砕微細化して板表面から剥離し圧延油中に混入することによるロールおよび圧延ラインの汚染を防止し、かつスケールに起因した表面疵やクラックなどの欠陥もない、表面性状に優れたステンレス鋼板の有利な製造方法を提案することを目的とする。
また、この発明は、低合金鋼スケールと比較して、脱スケール性が著しく劣っているステンレス鋼の熱延スケールを効率的に除去する手段を提案することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
さて、発明者らは、熱延ステンレス鋼の熱延板脱スケールを省略し、熱延スケールを付着させたまま冷間圧延を行ったとしても、スケール疵などの表面欠陥を発生させることのない圧延方法(黒皮冷延)について鋭意検討した結果、黒皮ステンレス鋼を直接冷間圧延するに当たり、黒皮スケールの粉砕剥離が進行すると表面疵やロール磨耗に伴う鋼板表面の荒れが顕著となることを見出した。
そして、かかる黒皮スケールの粉砕剥離を抑制するには、圧延ロールの粗度および冷延圧下率が重要であることを新たに見出し、この発明を完成させるに至ったのである。
【0012】
すなわち、この発明は、Cr含有量が10wt%以上で、熱間圧延を経て鋼板表面にスケールが付着したままの熱延ステンレス鋼板を、デスケーリングすることなしに、ロール粗度Raが 1.0μm 以下の圧延ロールによって、1パスまたは複数パスの合計圧下率が5%以上40%以下の条件下で冷間圧延を行うことを特徴とする、脱スケール性、表面性状および生産性に優れたステンレス鋼の製造方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を具体的に説明する。
さて、ステンレス鋼は、その合金組成および常温での金属組織により、主要合金成分がCrで常温でフェライト組織を呈するフェライト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼よりも炭素、窒素などの元素の含有量が多く常温でマルテンサイト組織を有するマルテンサイト系ステンレス鋼、Crの他に8wt%程度のNiを含有するオーステナイト系ステンレス鋼、さらに常温でフェライトとオーステナイトの混合組織からなる二相ステンレス鋼に大別される。
ここに、熱延工程で生成するスケールは主としてCr含有量に依存し、Cr量が10wt%以上になると、いずれの鋼種であってもウスタイト(FeO)の生成量が非常に少なくなり(生成量:5wt%未満)、Fe, Cr, Oを主成分とするスピネル系またはコランダム系の酸化物を主体としたものになる。
従って、この発明では、成分組成については、Cr含有量が10wt%以上の熱延素材を対象にするものとし、母相の金属組織形態には依存しない。
それ故、Cr含有量がステンレス鋼の規準に満たないSUH 409 (11%Cr)などの耐熱鋼も対象とすることができる。なお、Cr含有量の上限については、経済性および加工性の面から30wt%程度とすることが望ましい。
【0014】
次に、この発明に従う黒皮冷延における圧下率の限定理由について説明する。図1に、黒皮圧延前の鋼板表面の走査型電子顕微鏡(SEM )写真を、また図2には、30%の圧下率で黒皮圧延を行った鋼板表面のSEM 写真を示す。
図2に示したように、黒皮圧延を行うと、表面の熱延スケールには圧延方向と直角方向に微細な亀裂が発生するようになる。
このように、圧下率が40%までは表面スケールは圧延により変形し圧下率に対応して圧延方向に直角な方向に微細な亀裂が生じるのみであり、鋼板表面からのスケールの剥離はほとんど生じなかった。
この点、合計の圧下率が40%を超えると、図3に50%圧下の例を示すように、スケールは鋼板表面から欠落するようになった。
【0015】
これらの圧延材を、焼鈍、酸洗して、酸洗性および鋼板表面性状を調査したところ、圧下率が5%未満では、常法と比較して酸洗性の向上が見られなかった。これに対し、合計の冷延圧下率が5〜40%の範囲では酸洗性が向上し、従来法よりも高速で酸洗することができた。
この理由は、圧延により、その圧下率に応じてスケールが展伸減厚され、薄スケール化する効果、ならびに圧延によりスケールに導入される微小なクラックが酸液の浸透に有効に作用するためと推察される。
なお、黒皮冷延後の焼鈍雰囲気によっては新たなスケールの生成が生じるが、その場合でも微小スケールクラック部に生成するスケール厚さは熱延スケール部と比較すると極僅かであるので、酸浸透に有効に作用する。また、酸洗前にショットブラストなどの機械的脱スケール手段を併用する場合にも、この微小クラックを起点として剥離が進行するので脱スケール性が向上する。
【0016】
しかしながら、圧下率が40%を超えると、酸洗などの脱スケール工程後でも地鉄へのスケールの食い込み残りが残存するようになり、耐食性などの品質に悪影響を及ぼす。
この原因については明らかではないが、圧下率が40%を超えるとスケールが鋼板表面から欠落する割合が急激に増加することが影響しているものと考えられる。すなわち、スケールの欠落部分が増加すると、スケールが残存している部分すなわち鋼板表面より凸な部分は圧延により地鉄部分に押し込まれながら圧延されるようになり、これがスケール残りとして残存するものと考えられる。
さらに、欠落したスケールがロールとスタンドの間に挟まれて圧延されることもスケール噛み込み欠陥の原因と考えられる。
【0017】
そこで、この発明では、冷間圧延における圧下率を5〜40%の範囲に限定したのである。より好ましい範囲は10〜30%である。
なお、この圧下率は1パスあるいは複数パスの合計圧下率がこの範囲にあれば良く、その圧下配分は特に制限されない。
【0018】
しかしながら、上記の圧下率を満足する黒皮圧延を行った場合でも、スケールの剥離が生じ、鋼板およびロール表面の荒れおよびスケール噛み込み欠陥が発生する場合が生じた。
そこで、発明者らはその原因について検討したところ、ステンレス黒皮の圧延挙動には、圧下率と共に、使用する圧延ロールの表面状態が大きく影響していることが判明した。
【0019】
すなわち、使用する圧延ロールの表面粗度Raが 1.0μm 以下では熱延スケールの剥離挙動に対する影響は小さいけれども、Raが 1.0μm を超える粗さになるとスケールの剥離がより低圧下率で生じるようになり、鋼板およびロール表面の荒れおよびスケール噛み込み欠陥が生じるようになった。
そこで、この発明では、圧下率の他、使用するロールの表面粗度を 1.0μm 以下に限定したのである。より好ましい範囲は 0.8μm 以下である。
【0020】
なお、かようなステンレス黒皮材の冷間圧延に際し、ステンレス鋼の冷間圧延において一般的に使用されている鉱物油や合成エステル系の圧延油などを潤滑剤として用いることができるのはいうまでもない。
また、ロール径については、あまりに小径すぎるとスケール噛み込み欠陥が生じるので、タンデム圧延で通常使用される 450〜650 mm程度とするのが好ましく、このロール径であれば、生産性の面でも有利である。
【0021】
その他の製造条件について述べると、スラブ加熱温度は1000〜1300℃程度、熱間圧延仕上げ温度は 700〜1050℃程度、また巻取り温度は 900℃以下程度とするのが好適である。
【0022】
【実施例】
実施例1
表1に鋼種Aで示す組成になるステンレス鋼スラブを、表2にイで示す条件、すなわちスラブ加熱温度(SRT):1150℃、熱延仕上げ温度(FDT):850 ℃、巻取り温度(CT):750 ℃の条件で熱間圧延し、板厚:2.0 mmの熱延コイルを製造した。
得られた熱延板について、AA系電解液(10%アセチルアセトン−1%テトラメチルアンモニウムクロライド−メタノール溶液)を用いたアノード溶解により、鋼板表面近傍の地鉄を微量溶解してスケールを電解抽出し、単位面積当たりのスケール採取重量より平均スケール量を算出したところ、17.9 g/m2 であった。
【0023】
この鋼板から、圧延試験用に厚み:2.0 mm、幅:100 mm、長さ:150 mmの熱延鋼板を切り出し、1スタンドのラボ圧延機にてスケール除去を行わないまま黒皮圧延を行った。この際、圧延ロールとしては、表面粗度Raがほぼ 0.5μm のロールを用いた。また、潤滑油として、市販の鉱物油系の乳化タイプの圧延油を5%エマルジョンとしてロール噛み込み口にスプレーする潤滑圧延を、表3に示す種々の圧下率で行った。
かくして得られた冷延板のスケール剥離率について調べた結果を、表3に併記する。
なお、スケールの剥離状況は、圧延後の鋼板表面を目視観察すると共に、鋼板を各圧下率で黒皮圧延した後、先に示した電解抽出法によりスケール量を求め、以下の式を用いてスケール剥離率を計算した。
剥離率(%)=M1 /M0 × 100
0 : 未冷延黒皮材の抽出スケール量(g/m2
1 : 黒皮冷延後の抽出スケール量(g/m2
【0024】
【表1】
Figure 0003539160
【0025】
【表2】
Figure 0003539160
【0026】
【表3】
Figure 0003539160
【0027】
表3に示したとおり、合計の圧下率が40%以内であれば、スケールの剥離はほとんど生じていない。
【0028】
次に、得られたステンレス黒皮冷延板を、以下に示す条件で焼鈍後、酸洗により脱スケールした。
焼鈍条件X: 900℃×30秒間、燃焼雰囲気中で焼鈍
焼鈍条件Y: 900℃×30秒間、(5%水素+95%窒素)雰囲気中で焼鈍
酸洗条件x:ショットブラスト→ 200 g/l硫酸水溶液(80℃)中に20秒浸漬→(100 g/l硝酸+20 g/l弗酸)水溶液(60℃)中に20秒浸漬
酸洗条件y: 200 g/l硫酸ナトリウム水溶液(80℃)中で 30 C/dm2 の電解 →(60 g/l硝酸+30 g/l弗酸)水溶液(60℃)中に30秒浸漬→ 100 g/l硝酸水溶液(50℃)中で 30 C/dm2 の電解
酸洗条件z: 100 g/l硝酸、10 g/l塩酸水溶液(50℃)中にて 150 C/dm2で30秒の電解酸洗
【0029】
脱スケール性は、目視判定(○:スケール残り発見されず、△:微小スケール残りあり、×:スケール残りあり)および耐食性試験で評価した(鋼板表面に微小なスケールが残存していると、その部分は地鉄部分より耐食性に劣るため発錆起点となり易い)。
耐食性試験は、6×8cmの試験片を、35℃で5%のNaCl溶液を用いた10時間の塩水噴霧試験(SST)(JIS Z 2371)を施し、試験片全体の発錆起点数に応じてランク分けした。(○:0個/試験片、△:1〜2個/試験片、×:3個/試験片以上)。なお、表1の鋼種Aの鋼板の表面を研削、研磨(800 番エメリー研磨仕上げ)した試料を同一条件で試験したところ発錆は見られなかった。
これらにより、黒皮圧延材の脱スケール性および表面性状について調べた結果を表4に示す。
【0030】
【表4】
Figure 0003539160
【0031】
同表から明らかなように、黒皮圧延をしていないもの(No.1, 2)および圧下率がこの発明よりも小さいもの(No.3, 4)は、脱スケール処理後にもスケールが残存しており、SST 試験でも発錆が見られた。また、これらの脱スケールを完了させるためにはより長い酸洗時間が必要であった。
これに対し、圧下率が5〜40%とこの発明の適正範囲を満足するもの(No.5〜11)はいずれも、圧延によるスケール剥離が少なく、ライン汚染もない。また、焼鈍、脱スケール後の評価でも、脱スケール性およびSST 試験結果とも良好であり、スケール食い込み等が生じることのない製品を得ることができた。
しかしながら、圧下率がこの発明範囲を超えた場合(No.12〜15)には、スケール剥離率が急増し、脱スケール後の表面にスケール残りが目視で確認できなかった試料でも、SST 試験で発錆が見られ、微小なスケールの食い込みが残存していることが推定された。
【0032】
実施例2
実施例1で用いたものと同一の熱延コイルから、圧延試験用に厚み:2.0 mm、幅:100 mm、長さ:150 mmの熱延鋼板を切り出し、1スタンドのラボ圧延機にてスケール除去を行わないまま黒皮圧延を行った。この際、使用するロールの表面粗度をRaで約 0.2μm 〜 2.3μm まで種々変化させて合計圧下率が30%となるような圧延とした。潤滑条件は実施例1と同様である。
得られた鋼板に、実施例1のXタイプの焼鈍およびxタイプの酸洗を施し、脱スケール性およびSST 試験による耐食性について調査した。
得られた結果を表5に示す。
【0033】
【表5】
Figure 0003539160
【0034】
同表に示したとおり、圧下率がこの発明の範囲を満たしていても、圧延に使用するロールの表面粗度が高い条件で圧延したもの(No.19, 20)は、スケールの剥離率が高く、脱スケール処理後にもスケールの食い込み残りが存在することが判る。
【0035】
実施例3
表1に鋼種B〜Dで示す組成になるステンレス鋼スラブを、生産用の熱延工場で表2にロ〜ニで示す条件で板厚:2.0mm の熱延コイルを製造した。これを生産用の冷延工場で5スタンドからなる冷間圧延機(ロール粗度:Ra=0.6 〜0.4 μm )を用いて合計圧下率が40%の黒皮冷延を行った。
得られたステンレス黒皮冷延板を以下に示す条件で焼鈍、酸洗脱スケールした。
焼鈍条件X: 900℃×30秒間、燃焼雰囲気中で焼鈍
焼鈍条件Y: 900℃×30秒間、(5%水素+95%窒素)雰囲気中で焼鈍
焼鈍条件Z:1150℃×30秒間、燃焼雰囲気中で焼鈍
酸洗条件x:ショットブラスト→ 200 g/l硫酸水溶液(80℃)中に20秒浸漬→(100 g/l硝酸+20 g/l弗酸)水溶液(60℃)中に20秒浸漬
酸洗条件y: 200 g/l硫酸ナトリウム水溶液(80℃)中で 30 C/dm2 の電解 →(60 g/l硝酸+30 g/l弗酸)水溶液(60℃)中に30秒浸漬→ 100 g/l硝酸水溶液(50℃)中で 30 C/dm2 の電解
酸洗条件z: 100 g/l硝酸、10 g/l塩酸水溶液(50℃)中にて 150 C/dm2で30秒の電解酸洗
【0036】
脱スケール処理後の鋼板について、実施例1と同様の評価を行った。
得られた結果を表6に示す。
ただし、それぞれの鋼板の表面を研削、研磨(800 番エメリー研磨仕上げ)した試料を10時間のSST 試験したところ、鋼Bでは研磨面でも発錆が見られたため、試験時間を3時間に短縮して評価を行った。同様に、素材生地の耐食性を考慮してSST 試験時間を鋼Cでは10時間、鋼Dでは20時間とした。
【0037】
【表6】
Figure 0003539160
【0038】
表6に示したとおり、黒皮圧延を行わなかった試料(No.21〜22, 25, 28)ではいずれの脱スケール条件でも微小なスケール残りが見られ、脱スケールを十分に行うには酸洗時間を延長するなどの対策が必要であった。
これに対し、この発明法に従い圧下率:40%で黒皮冷延を行ったもの(No.23〜24, 26〜27, 29)はいずれも、微小スケール食い込みに起因する発錆も見られず、良好な脱スケール性を示した。さらに、黒皮圧延中のスケール剥離量もほとんどないので冷延ラインの汚染も見られなかった。
【0039】
【発明の効果】
かくして、この発明によれば、これまで必須と考えられ、しかも生産性を阻害する原因となっていた熱延スケールの脱スケール工程を省略して、直接冷間圧延を行うことが可能となった。
また、この際、黒皮冷延中にスケールが破砕微細化し、板表面から剥離して、圧延油中に混入することによるロールおよび圧延ラインの汚染を効果的に防止することができ、その結果、スケールに起因した表面疵やクラックなどの欠陥がない表面性状に優れたステンレス鋼板を得ることができるようになった。
さらに、この発明によれば、低合金鋼スケールと比較して著しく脱スケール性が劣っているステンレス鋼の熱延スケールを、従来の脱スケール法によるよりも、より効率的に除去することが可能となり、酸洗ラインの増速による生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】黒皮圧延前の鋼板表面を走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】30%の圧下率で黒皮圧延を行った鋼板表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】50%の圧下率で黒皮圧延を行った鋼板表面の走査型電子顕微鏡写真である。

Claims (1)

  1. Cr含有量が10wt%以上で、熱間圧延を経て鋼板表面にスケールが付着したままの熱延ステンレス鋼板を、デスケーリングすることなしに、ロール粗度Raが 1.0μm 以下の圧延ロールによって、1パスまたは複数パスの合計圧下率が5%以上40%以下の条件下で冷間圧延を行うことを特徴とする、脱スケール性、表面性状および生産性に優れたステンレス鋼の製造方法。
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