明 細 書
低屈折率被膜形成用塗布液、その製造方法及び反射防止材
技術分野
[0001] 本発明は、ポリシロキサンを含有する低屈折率被膜形成用塗布液、その製造方法
、該塗布液から形成される低屈折率被膜、及び該被膜を有する反射防止材に関する
〇
背景技術
[0002] 従来、基材の表面に、該基材の屈折率よりも小さい低屈折率を有する被膜を形成 させると、該被膜の表面から反射する光の反射率が低下することが知られている。そ してこのような低下した光反射率を示す低屈折率被膜は、光反射防止膜として利用 され、種々の基材表面に適用されている。
[0003] 例えば、特許文献 1には、 Mg源としてのマグネシウム塩やアルコキシマグネシウム 化合物などと、 F源としてのフッ化物塩とを反応させて生成させた MgF微粒子のアル コール分散液、又はこれに膜強度向上のためにテトラアルコキシシランなどを加えた 液を塗布液とし、これをガラス基材上に塗布し、温度 100〜500°Cで熱処理し、基材 上に低屈折率を示す反射防止膜を形成させる方法が開示されている。
[0004] また、特許文献 2には、テトラアルコキシシランなどの加水分解重縮合物であって、 平均分子量の異なる 2種以上とアルコールなどの溶剤とを混合してコーティング液と なし、該コーティング液力 被膜を形成するに当たって上記混合の際の混合割合、 相対湿度のコントロールなどの手段を加えて被膜を作製することが開示されている。 被膜は 250°C以上の温度で加熱することに得られ、 1. 21〜; 1. 40の屈折率を示し、 50〜200nmの径を有するマイクロピット又は凹凸を有し、厚さ 60〜160nmを有する 。被膜はガラス基板上に形成され低反射ガラスが製造されてレ、る。
[0005] また、特許文献 3には、ガラスと、その表面に形成させた高屈折率を有する下層膜 と、更にその表面に形成させた低屈折率を有する上層膜とからなる低反射率ガラス が開示されている。上層膜の形成は、 CF (CF ) C H Si (OCH )などポリフルォロ
3 2 2 2 4 3 3
カーボン鎖を有する含フッ素シリコーン化合物と、これに対し 5〜90質量%の Si (〇C
H )などシランカップリング剤とを、アルコール溶媒中、酢酸など触媒の存在下に室
3 4
温で加水分解させた後、濾過することにより調製された共縮合体の液を上記下層膜 上に塗布し、温度 120〜250°Cで加熱する方法に行なわれている。
[0006] また、特許文献 4には、 Si (OR) で示されるケィ素化合物と、 CF (CF ) CH CH S
4 3 2 n 2 2 i COR1) で示されるケィ素化合物と、 R2CH OHで示されるアルコールと、蓚酸とを特
3 2
定比率に含有する反応混合物を水の不存在下に温度 40〜180°Cで加熱することに よりポリシロキサンの溶液を生成させた塗布液が開示されて!/、る。この塗布液を基材 表面に塗布し、温度 80〜450°Cで熱硬化させることにより、 1. 28-1. 38の屈折率 と 90〜 115度の水接触角を有する被膜が形成されている。
[0007] 特許文献 1:特開平 05— 105424号公報
特許文献 2:特開平 06— 157076号公報
特許文献 3:特開昭 61— 010043号公報
特許文献 4:特開平 09— 208898号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0008] 上記のような各種表示装置等に用いられる反射防止膜は、近年、液晶やプラズマ などの表示装置の大型化、軽量化や薄型化が進む中、これに使用される反射防止 基材、特に反射防止フィルムは、軽量化や高透明化などの目的からフィルム厚を薄く する傾向にあり、熱によって受けるダメージが大きくなることが問題となっている。その ため、フィルムがダメージを受けない程度の低温処理で反射防止基材を得ることが可 能な比較的低温で硬化する熱硬化型の被膜形成用塗布液への要望が以前にも増 して望まれていた。し力もながら、上記のごとき従来の低屈折率被膜の硬化温度は、 必ずしも充分に低いものでなぐ硬化温度をさらに低めることが望まれている。
[0009] 力、くして、本発明の目的は、比較的低レ、温度で硬化し、高硬度の耐擦傷性、及び に低屈折率と!/、ういずれの点でも優れた被膜を形成できる低屈折率被膜形成用塗 布液、その製造方法、さらに、該被膜形成用塗布液から得られる被膜、及び該被膜 を使用する反射防止材を提供することにある。
課題を解決するための手段
[0010] 本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、含フッ素有機基が ケィ素原子に結合されたポリシロキサン (A)と、炭素数が 3〜; 12の含フッ素アミン化 合物 (B)と、有機溶媒 (C)と、を含有する塗布液から得られる被膜が、比較的低い温 度で硬化し、高硬度の耐擦傷性、及び低屈折率を有することを見出した。
本発明にお!/、て、上記塗布液から形成される被膜が何故に上記の優れた特性を 有するかのメカニズムについては必ずしも明らかではないが、本発明の塗布液に含 有されるポリシロキサン (A)と炭素数が 3〜; 12の含フッ素ァミン化合物(B)とが存在 することで、低!/、屈折率及び高!/、耐擦傷性を有する被膜が得られる。
[0011] 力、くして、本発明は、上記の知見に基づくものであり、以下の要旨を有するものであ
(1)含フッ素有機基がケィ素原子に結合されたポリシロキサン (A)と、炭素数が 3〜1 2の含フッ素ァミン化合物(B)とを含有し、それらが有機溶媒 (C)に溶解されてなるこ とを特徴とする低屈折率被膜形成用塗布液。
(2)ポリシロキサン (A)が、含フッ素有機基が結合したケィ素原子を全ケィ素原子中 の 5〜40モル%を有する上記(1)に記載の塗布液。
(3)含フッ素ァミン化合物(B)が、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換さ れた、直鎖状のァミン又は環構造を有する脂肪族ァミンである上記(1)又は(2)に記 載の塗布液。
(4)有機溶媒(C)が、炭素数が 1〜6のアルコール及び炭素数が 3〜; 10のグリコール エーテルからなる群から選ばれる少なくとも 1種である上記(1)〜(3)のいずれかに 記載の塗布液。
(5)ポリシロキサン (A)を、その有するケィ素原子を二酸化ケイ素に換算して 0· ;!〜 1 5質量%含有し、含フッ素ァミン化合物(B)を上記ポリシロキサン (A)のケィ素原子の 1モルに対して 0· 01-0. 2モル含有する上記(1)〜(4)のいずれかに記載の塗布 液。
(6)さらに、式(1)で表されるケィ素化合物(D)を含有する上記(1)〜(5)の!/、ずれ かに記載の塗布液。
(式中、
R
2、 R
3及び R
4はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数 1〜5の飽和炭化 水素基を表し、 nは 2以上の整数を表す。 )
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の塗布液を加熱硬化して得られる低屈折率被 膜。
(8)上記(8)に記載の低屈折率被膜が、より高い屈折率を有する基材の表面上に形 成された反射防止材。
(9)含フッ素有機基が結合したケィ素原子を有するポリシロキサン (A)の有機溶媒( C)溶液に対して、炭素数が 3〜; 12の含フッ素ァミン化合物 (B)を混合することを特徴 とする低屈折率被膜形成用塗布液の製造方法。
(10)含フッ素有機基が結合したケィ素原子を有するポリシロキサン (A)の有機溶媒( C)の溶液が、含フッ素有機基が結合したケィ素原子を有するアルコキシシランの有 機溶媒(C)の溶液を、該アルコキシシランのアルコキシ基の 1モルに対して 0. 2〜2 モルの酸の存在下に重縮合して得られる上記(9)に記載の製造方法。
発明の効果
[0012] 本発明によれば、比較的低い温度で硬化し、高硬度の耐擦傷性、及び低屈折率を 有する被膜形成用塗布液、及びその効率的な製造方法が提供される。また、本発明 によれば、該塗布液から得られる高硬度の耐擦傷性に優れる低屈折率被膜を使用 する反射防止材が提供される。
発明を実施するための最良の形態
[0013] 以下に本発明についてさらに詳細に説明する。
<ポリシロキサン(A) >
本発明の低屈折率被膜形成用塗布液 (以下、単に、被膜形成用塗布液、又は塗 布液とも言う。 )に含有される含フッ素有機基がケィ素原子に結合されたポリシロキサ
ン (A) (以下、単に、ポリシロキサン (A)とも言う)は、主骨格中のケィ素原子に結合し 、フッ素原子で置換された有機基 (本発明では、含フッ素有機基と言う。)を有するポ リシロキサン、換言すると、フッ素原子で置換された有機側鎖がケィ素原子に結合し た部位を有するポリシロキサンである。
上記の含フッ素有機基としては、一部又は全部がフッ素原子で置換された有機基、 通常は、一部の水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基や、一部の水素原 子がフッ素原子で置換されたエーテル結合を含むアルキル基などであることが多い。 含フッ素有機基が有するフッ素原子の数は特に限定されない。
[0014] 含フッ素有機基の炭素数が 12を超える場合は、後記する有機溶媒 (C)への溶解 性が不充分となる場合がある。そのため、炭素数が好ましくは 3〜 12、より好ましくは 炭素数が 3〜; 10の有機基である。含フッ素有機基のなかでも、末端にパーフルォロ アルキル基を有し、かつ該基に炭化水素アルキレン基が結合した基は、透明性の高 い被膜を得易いので好ましい。含フッ素有機基の好ましい具体例として、トリフルォロ プロピル基、トリデカフルォロォクチル基、ヘプタデカフルォロデシル基、ペンタフノレ オロフェニルプロピル基等が挙げられる力 S、これに限定されるものではなレ、。
ポリシロキサン (A)は、上記の如き含フッ素有機基を 1種有していてもよいし、複数 種を有していてもよい。
[0015] ポリシロキサン (A)は、塗布液中で均質な溶液を形成する状態であれば特に限定 されない。特に、上記した含フッ素有機基が結合したケィ素原子力 ポリシロキサン( A)の全ケィ素原子中の 5〜40モル%である場合、水の接触角が 90度以上の被膜 が得られやすぐ均質なポリシロキサン (A)の溶液を得られやすいので好ましい。さら に、含フッ素有機基を結合したケィ素原子が、ポリシロキサン (A)の全ケィ素原子中 の 10〜40モル%である場合、反射率をより低下できるため好ましい。また、含フッ素 有機基を結合したケィ素原子力 ポリシロキサン (A)の全ケィ素原子中の 5〜25モル %である場合、耐擦傷性をより高くできるために好ましい。
上記の理由を総合すると、含フッ素有機基を結合したケィ素原子が、ポリシロキサン (A)の全ケィ素原子中の 10〜25モル0 /0であるのが特に好ましい。
[0016] 含フッ素有機基を持つポリシロキサン (A)を得る方法は特に限定されない。一般的
には、上記した含フッ素有機基を有するアルコキシシラン、又は該アルコキシシランと それ以外のアルコキシシランとを重縮合して得られる。なかでも、含フッ素有機基を持 つアルコキシシランとテトラアルコキシシラン、さらに必要に応じて前記以外のアルコ キシシラン (以下、その他のアルコキシシランともいう。)とを重縮合する場合、安定で 均質なポリシロキサン (A)の溶液が得られ易いので好まし!/、。
[0017] 上記含フッ素有機基を持つアルコキシシランとしては、下記の式(2)で表されるァ ルコキシシランが挙げられる。式中、 R5は含フッ素有機基であり、 R6は炭素数 1〜5の 炭化水素基である。
[化 2]
力、かるアルコキシシランの好まし!/、具体例としては、トリフルォロプロピルトリメトキシ
シシラン、ヘプタデカフルォロデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
また、含フッ素有機基を持つアルコキシシランと重縮合されるテトラアルコキシシラン の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロボキシシ ラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。テトラアルコキシシランは一種単独で使用 してあよいし、複数種を併用することあできる。
[0018] また、その他のアルコキシシランは、含フッ素有機基以外の有機基及び/又は水 素原子がケィ素原子に結合したアルコキシシランである。このような、その他のアルコ キシシランの具体例は以下に挙げられる。トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチ ルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ェチルトリメトキシシラン、ェチルトリエト キシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシ シラン、ブチノレトリエトキシシラン、ペンチノレトリメトキシシラン、ペンチノレトリエトキシシ ン、ォクチルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン 、へキサデシルトリメトキシシラン、へキサデシルトリエトキシシラン、ォクタデシルトリメ
トキシシラン、ォクタデシルトリエトキシシラン、フエニルトリメトキシシラン、フエニルトリ エトキシシラン、ビュルトリメトキシシラン、ビュルトリエトキシシラン、 Ίーァミノプロピル トリメトキシシラン、 Ί—ァミノプロピルトリエトキシシラン、 Ί—グリシドキシプロピルトリ メトキシシラン、 Ίーグリシドキシプロピノレトリエトキシシラン、 Ίーメタクリロキシプロピ
コキシシランなどが挙げられる。その他のアルコキシシランは一種単独で使用してもよ いし、複数種を併用することもできる。
[0019] ポリシロキサン (Α)を得るために用いる、含フッ素有機基を持つアルコキシシランの 使用量は、ポリシロキサン (Α)が有機溶媒 (C)中で均質な溶液状態であり、本発明 の効果を損なわない限りにおいて限定されない。なかでも、含フッ素有機基を持つァ ルコキシシランが、全アルコキシシランの 5〜40モル%である場合、水の接触角が 90 度以上の被膜が得られやすぐ均質なポリシロキサン (Α)の溶液を得られやすいの で好ましい。また、含フッ素有機基を持つアルコキシシラン力 全アルコキシシランの 10〜40モル%である場合、反射率をより低下できるため好ましい。また、含フッ素有 機基を結合したケィ素原子力 ポリシロキサン (Α)の全ケィ素原子中の 5〜25モル% である場合、耐擦傷性をより高くできるために好ましい。
上記の理由を総合すると、含フッ素有機基を結合したケィ素原子が、ポリシロキサン (Α)の全ケィ素原子中の 10〜25モル0 /0であるのが特に好ましい。
[0020] 含フッ素有機基を有するポリシロキサン (Α)は、一般的には公知の方法で、加水分 解、重縮合して得ること力できる。最も広く知られている方法としては、アルコキシシラ ンが溶媒に溶解した溶液に、純水又は純水と溶媒の混合溶媒を滴下などの方法で 加え、温度 40°C以上で数時間以上加熱、攪拌する加水分解法である。この方法に おいて用いる純水の量は、完全加水分解及び部分加水分解の目的に応じて任意に 選択される。通常は、アルコキシシランの全アルコキシ基に対して 0. 4〜4倍モルの 量である。本発明においては、完全加水分解又は部分加水分解のいずれを用いて あよい。
上記の加水分解法においては、加水分解、重縮合の反応を促進するために、酸触 媒又はアルカリ触媒を使用することが一般的である。この酸触媒としては、塩酸、硫 酸や硝酸などの無機酸や、酢酸、蓚酸、蟻酸などの有機酸が挙げられる。アルカリ触 媒としては、ナトリウム、カリウム、アンモニアなどの無機アルカリや、各種ァミンが用い られる。加熱温度及び加熱時間は、適宜必要に応じて選択できる。例えば、 50°Cで 24時間、加熱、攪拌したり、還流下で 8時間加熱、攪拌するなどの方法が挙げられる 。なお、アルコキシシランが加水分解、重縮合する限りにおいては、加熱せずに、室 温下で攪拌する方法も使用可能である。
[0021] また、別法として、含フッ素有機基を有するポリシロキサン (A)を得る方法としては、 好ましくは、含フッ素有機基を持つアルコキシシランと、必要に応じてテトラアルコキ シシラン、及びその他のアルコキシシランの有機溶媒の溶液を蓚酸の存在下に加熱 して重縮合する方法が挙げられる。具体的には、予め、アルコールに蓚酸を加えて 蓚酸のアルコール溶液とした後、該溶液を加熱した状態で、上記の各種のアルコキ シシランを混合する方法である。
上記蓚酸の存在量は、使用するアルコキシシランが有する全アルコキシ基の 1モル に対し、好ましくは 0. 2〜2モルとされる。上記加熱は、液温が好ましくは 0〜; 180°C で行うことができ、また、液の蒸発、揮散などが起こらないように、好ましくは、還流管 を備え付けた容器中の還流下で数十分〜十数時間行われる。
[0022] 上記含フッ素有機基を有するポリシロキサン (A)を得る場合、アルコキシシランを複 数種用いる場合は、アルコキシシランを予め混合した混合物として使用してもよいし、 複数種のアルコキシシランを順次反応系に添加してもよい。
アルコキシシランを重縮合する際には、有機溶媒中におけるアルコキシシランの全 ケィ素原子を二酸化ケイ素に換算した濃度 (以下、 SiO換算濃度という。)が、好まし
2
くは 20質量%以下、特に好ましくは 4〜; 15質量%の範囲で加熱されることが好適で ある。このような濃度範囲を選択することにより、ゲルの生成を抑え、均質なポリシロキ サン (A)の溶液を得ること力 Sできる。
[0023] 上記アルコキシシランを重縮合する際に用いられる有機溶媒 (以下、重合溶媒とも 言う)は、アルコキシシランを溶解するものであれば特に限定されない。一般的には、
アルコキシシランの重縮合反応によりアルコールが生成するため、アルコール類ゃァ ルコール類と相溶性の良好な有機溶媒が用いられる。このような有機溶媒の具体例 としては、メタノーノレ、エタノーノレ、プロパノール、 n—ブタノールなどのアルコーノレ、 ェ チレングリコーノレモノメチノレエーテノレ、エチレングリコーノレモノェチノレエーテノレ、ジェ チレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノェチルエーテルなど のグリコールエーテルなどが挙げられる。上記の有機溶媒は複数種混合して用いて あよい。
[0024] また、本発明において、含フッ素有機基を有するポリシロキサン (A)は、上記した方 法で得られた溶液をそのままポリシロキサン (A)の溶液としてもよいし、必要に応じて 、上記した方法で得られた溶液を、濃縮したり、溶媒を加えて希釈したり又は他の溶 媒で置換して、ポリシロキサン (A)の溶液としてもよ!/、。
他の溶媒で置換する場合、その溶媒 (以下、置換溶媒ともいう。)は重縮合に用い たと同じ溶媒でもよいし、別の溶媒でもよい。この溶媒は、ポリシロキサン (A)が均一 に溶解する限りにおいて特に限定されず、一種でも複数種でも任意に選択して用い ること力 Sでさる。
[0025] 上記置換溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、 2—プロパノール、ブタノ 一ノレ、ジアセトンアルコールなどのアルコール類;アセトン、メチルェチルケトン、メチ ノレイソブチルケトンなどのケトン類;エチレングリコーノレ、プロピレングリコーノレ、へキシ レングリコーノレなどのグリコーノレ類;メチノレセロソノレブ、ェチノレセロソノレブ、ブチノレセロ ソノレブ、ェチノレカノレビトーノレ、ブチノレカノレビトーノレ、ジエチレングリコーノレモノメチノレ エーテノレ、プロピレングリコーノレモノメチノレエーテノレ、プロピレングリコーノレモノブチノレ エーテルなどのグリコールエーテル;酢酸メチルエステル、酢酸ェチルエステル、乳 酸ェチルエステルなどのエステル類などが挙げられる。
[0026] <含フッ素ァミン化合物(B)〉
本発明の塗布液に含有される、炭素数が 3〜; 12の含フッ素ァミン化合物(B) (以下 、含フッ素ァミン化合物(B)とも言う。)は、含フッ素有機基、すなわち、水素原子の一 部又は全部がフッ素原子で置換された有機基であり、好ましくは、直鎖状のァミン、 又は環構造を有する脂肪族ァミンである。より好ましくは、末端にパーフルォロアルキ
ル基を有し、かつ該基に炭化水素アルキレン基が結合した基、又は全部がフッ素原 子で置換された(パーフルォロ)有機基であり、さらに好ましくは、パーフルォロアルキ ル基を有するァミン化合物である。なかでも、末端にパーフルォロアルキル基を有し 、かつ該基に炭化水素アルキレン基が結合した炭素数が 3〜; 12の基が好ましい。含 フッ素ァミン化合物(B)の炭素数が 3〜; 12の場合、基材上において充分な成膜性が 得られ易い。特に含フッ素ァミン化合物(B)の炭素数は 4〜8が好まし!/、。
[0027] なお、不飽和アルキル基、又は芳香族を含むアルキル基を有するァミン化合物でも 、急激なゲル化を引き起こすことなぐ被膜の硬化を促進する結果が得られるが、そ の場合、得られる被膜の屈折率が高くなるため、反射防止機能が低下する傾向にあ る。このため、含フッ素ァミン化合物(B)としては、直鎖の末端にパーフルォロアルキ ル基を有し、かつ該基に炭化水素アルキレン基が結合した、炭素数が好ましくは 4〜 10、より好ましくは 4〜8のァミンが好適である。本発明では、含フッ素ァミン化合物( B)を複数種用いてもよい。
[0028] 含フッ素ァミン化合物(B)の具体例を以下に挙げるが、これに限定されるものでは ない。好ましい直鎖状のフルォロアルキルァミンとして、 CF CH CH NH、 CF CF
3 2 2 2 3 2
CH NH、 CF CF CH CH NH、 CF (CF ) CH NH、 CF (CF ) CH CH N
2 2 3 2 2 2 2 3 2 2 2 2 3 2 2 2 2
H 、 CF (CF ) CH NH、 CF (CF ) CH CH NH、 CF (CF ) CH NH、 CF
2 3 2 3 2 2 3 2 3 2 2 2 3 2 4 2 2 3
(CF ) CH CH NH、 CF (CF ) CH NH、 CF (CF ) CH CH NH、 CF (C
2 4 2 2 2 3 2 5 2 2 3 2 5 2 2 2 3
F ) CH NH、 CF (CF ) CH CH NH、 CF (CF ) CH NH、 CF (CF ) CH
2 6 2 2 3 2 6 2 2 2 3 2 7 2 2 3 2 7 2
CH NH、 CF (CF ) CH NH、 CF (CF ) CH CH NH、 CF (CF ) CH NH
2 2 3 2 8 2 2 3 2 8 2 2 2 3 2 9 2
、 CF (CF ) CH CH NH、 CF (CF ) CH NH、 CF (CF ) CH CH NH、
2 3 2 9 2 2 2 3 2 10 2 2 3 2 10 2 2 2
CF (CF ) CH NH、 CF (CF ) CH CH NH等が挙げられる。
3 2 11 2 2 3 2 11 2 2 2
[0029] 含フッ素ァミン化合物(B)の他の具体例としては、下記の式 (A— 1)、(A— 2)、 (A - 3) (A— 4)等が挙げられる。
[0030] 含フッ素ァミン化合物(B)は、塩の形態で使用してもよいが、この場合には、塗布液 の安定性が向上する場合がある。また、直鎖状の脂肪族ァミンは、急激なゲル化を 引き起こすことなぐ被膜の硬化を促進する効果が高いので好ましい。更に、直鎖状 の含フッ素アルキルアミンは、それ以外の含フッ素ァミンと比べて、充分な成膜性が 得られ易い。
[0031] 本発明の塗布液における含フッ素ァミン化合物(B)の含有量は、ポリシロキサン (A )の全ケィ素原子の合計量の 1モルに対し、含フッ素ァミン化合物(B)におけるァミノ 基由来の窒素原子が好ましくは 0. 01-0. 2モル、より好ましくは 0. 03-0. 1モル になるようにするのが好ましい。上記窒素原子 0. 01モル以上の場合、低温で硬化し 易いので好ましぐ逆にまた、 0. 2モル以下の場合、被膜が透明で、ムラがなぐ高い 被膜の硬度を得易いので好ましレ、。
[0032] <有機溶媒 (C)〉
本発明の塗布液に含有される有機溶媒 (C)は、含フッ素有機基がケィ素原子に結 合されたポリシロキサン (A)、炭素数が 3〜; 12の含フッ素ァミン化合物(B)、及び、必
要に応じて含有される下記するケィ素化合物(D)を溶解するものある限りいずれもも のも使用できる。
力、かる有機溶媒(C)の具体例としては、メタノール、エタノール、 2—プロパノール、 ブタノール、ジアセトンアルコールなどの脂肪族アルコール類;シクロペンチルアルコ コール、シクロへキサノールなどの脂環式アルコール;ベンジルアルコール、シンナミ ノレアルコールなどの芳香族アルコール;アセトン、メチルェチルケトン、メチルイソブチ ノレケトンなどのケトン類;エチレングリコーノレ、プロピレングリコーノレ、へキシレングリコ 一ノレなどのグリコーノレ類;メチノレセロソノレブ、ェチノレセロソノレブ、ブチノレセロソノレブ、ェ チノレ: ¾ノレヒ"トーノレ、フチノレ: ¾ノレヒ"トーノレ、ジエチレングリ 一ノレモノメチノレエーテノレ、 プロピレングリコーノレモノメチノレエーテノレ、プロピレングリコーノレモノブチノレエーテノレ などのグリコールエーテル;酢酸メチルエステル、酢酸ェチルエステル、乳酸ェチル エステルなどのエステル類などが挙げられる。これらの単独、又は複数の有機溶媒が 併用される。
[0033] なかでも、炭素数が好ましくは 1〜6、より好ましくは 1〜4のアルコール及び炭素数 が好ましくは 3〜10、より好ましくは 3〜7のグリコールエーテルからなる群から選ばれ る少なくとも 1種の使用が好ましレ、。
[0034] <ケィ素化合物(D)〉
本発明の被膜形成用塗布液には、さらに、下記の式(1)で表される化合物であるケ ィ素化合物 (D)が含有されるのが好ましい。これにより、被膜の耐擦傷性をさらに高 めること力 Sできる。力、かるケィ素化合物(D)は、ポリシロキサン (A)の全ケィ素原子を SiO ίこ換算した 1モノレ ίこ対し、好ましく (ま 0. 01—0. 55モノレ、特 ίこ好ましく (ま 0. 01
2
〜0· 2モル含有されるのが好適である。
[0035] [化 4]
式(1)における、
R
2、 R
3及び R
4は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数;!〜 5 の飽和炭化水素基を表し、 nは 2以上、好ましくは 2〜50の整数を表す。炭素数;!〜 5 の飽和炭化水素基の具体例としては、メチル基、ェチル基、プロピル基、ブチル基な どが挙げられる。
ケィ素化合物(D)は、式(1)で表される化合物の複数種が混合したものでもよい。 その場合、 nが 2以上の整数であることが好ましぐより好ましくは 4以上の整数である
〇
[0036] 上記ケィ素化合物(D)を得る方法は特に限定されないが、例えば、テトラアルコキ シシランをアルコール等の有機溶媒中で加水分解縮合する方法で得ることができる。 その際、加水分解は、部分加水分解でも、完全加水分解でもいずれであってもよい。 完全加水分解の場合は、理論上、テトラアルコキシシラン中の全アルコキシド基の 0. 5倍モルの水を加えればよいが、通常は 0. 5倍モルより過剰量の水を加えるのが好 ましい。他方、部分加水分解の場合は、 0. 5倍モル以下の水の量でよいが、 0. 2〜 0. 5倍モルが好ましい。
上記原料のテトラアルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエ トキシシラン、テトラプロボキシシラン、テトラブトキシシランなどが挙げられ、市販品と して容易に入手可能である。
[0037] 上記ケィ素化合物(D)を得る反応に用いる水の量は、所望により適宜選択すること ができる力 テトラアルコキシシラン中の全アルコキシド基の 0. 5〜2. 5倍モルが好ま しい。また、反応では、通常、加水分解 ·縮合反応を促進する目的で、塩酸、硫酸、 硝酸、酢酸、蟻酸、蓚酸、燐酸、フッ酸、マレイン酸などの酸、アンモニアなどのアル カリ及び塩酸、硫酸、硝酸などの金属塩などの触媒が用いられる。
また、アルコキシシランが溶解した溶液を加熱することで、更に、重縮合を促進させ ることも一般的である。その際、加熱温度及び加熱時間は所望により適宜選択でき、 例えば、室温〜 100°Cで 0. 5〜48時間加熱 '撹拌したり、還流下で 0. 5〜48時間 加熱 ·撹拌するなどの方法が挙げられる。
[0038] 上記反応において、テトラアルコキシシランを重縮合する際に用いられる有機溶媒 は、テトラアルコキシシランを溶解するものであれば特に限定されない。一般的には、
テトラアルコキシシランの重縮合反応によりアルコールが生成するため、アルコール 類やアルコール類と相溶性の良好な有機溶媒が用いられる。
このような有機溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、 n— ブタノーノレなどのァノレコーノレ、エチレングリコーノレモノメチノレエーテノレ、エチレングリコ ールモノェチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリ コールモノェチルエーテルなどのグリコールエーテルなどが挙げられる。上記の有機 溶媒は複数種混合して用いてもょレ、。
[0039] このようにして得られるケィ素化合物(D)の溶液は、 SiO換算濃度が好ましくは 30
2
質量%以下とされる。この濃度範囲において任意の濃度を選択することにより、ゲル の生成を抑え、均質な溶液を得ることができる。
なお、ケィ素化合物(D)としては、市販品を用いることもできる。例えば、いずれもコ ルコート社製である、メチノレシリケート 51、メチルシリケート 53A、ェチルシリケート 40 、ェチルシリケート 48、 SS— C1等が挙げられる。
[0040] <その他の成分〉
本発明の低屈折率被膜形成用塗布液には、本発明の効果を損なわない限りにお いて、ポリシロキサン (A)、ァミン化合物(B)、有機溶媒 (C)、及びケィ素化合物(D) 以外のその他の成分、例えば、無機微粒子、レべリング剤、界面活性剤、水などの媒 体が含有されていてもよい。
無機微粒子としては、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、チタニア微粒子、フッ化マグ ネシゥム微粒子などの微粒子が好ましぐコロイド溶液のものが特に好ましい。このコ ロイド溶液は、無機微粒子粉を分散媒に分散したものでもよいし、市販品のコロイド 溶液であってもよい。
[0041] 本発明の塗布液においては、無機微粒子を含有させることにより、形成される硬化 被膜の表面形状やその他の機能を付与することが可能となる。無機微粒子としては、 その平均粒子径 (ま 0. 001—0. 2〃111力《好ましく、更に (ま 0. 001—0. 1〃 m力好ま しい。無機微粒子の平均粒子径が 0. 2 111を超える場合には、塗布液によって形成 される硬化被膜の透明性が低下する場合がある。
無機微粒子の分散媒としては、水又は有機溶剤を挙げることができる。コロイド溶液
としては、塗布液の安定性の観点から、 pH又は pKaが好ましくは 2〜10、特には 3〜 7であるのが好ましい。
[0042] 上記コロイド溶液の分散媒に用いる有機溶媒としては、メタノール、 2—プロパノー ノレ、エチレングリコーノレ、ブタノーノレ、エチレングリコーノレモノプロピノレエーテノレなどの アルコール類;メチルェチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;トルエン、 キシレンなどの芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルァセトアミド、 N— メチルピロリドンなどのアミド類;酢酸ェチル、酢酸ブチル、 γ ブチロラタトンなどの エステル類;テトラヒドロフラン、 1 , 4 ジォキサンなどのエーテル類を挙げることがで きる。
なかでも、アルコール類又はケトン類が好ましい。これら有機溶剤は、単独で又は 2 種以上を混合して分散媒として使用することができる。
また、上記レべリング剤及び界面活性剤などは、公知のものを用いることができ、特 に市販品は入手が容易なので好ましい。
[0043] <被膜形成用塗布液〉
本発明の被膜形成用塗布液の調製は、ポリシロキサン (Α)、含フッ素ァミン化合物 (Β)、及び必要に応じてケィ素化合物(D)やその他成分を含有し、それらが有機溶 媒 (C)に溶解した溶液である。本発明においては、前記の塗布液が得られる限り、そ の調製方法は限定されない。例えば、上記の各成分を、使用する有機溶媒 (C)中に 順次、添加し混合してもよい。この場合、各成分の添加順序は特に限定されない。ま た、各成分をそれぞれ使用する有機溶媒 (C)中に溶解した溶液を混合してもよい。 特に、含フッ素ァミン化合物 (Β)と有機溶媒 (C)との混合溶液に対し、ポリシロキサン (Α)の溶液を混合する場合は、析出物の発生を抑制できるので好ましい。
[0044] なかでも、ポリシロキサン (Α)が有機溶媒 (C)の溶液として得られる場合には、ポリ シロキサン (Α)の溶液をそのまま塗布液に用いることができるので好ましい。ポリシ口 キサン (Α)が有機溶媒 (C)の溶液として得られる場合には、上記したように、含フッ素 有機基が結合したケィ素原子を有するアルコキシシランを有機溶媒 (C)の溶液を、 該アルコキシシランのアルコキシ基の 1モルに対して好ましくは 0. 2〜2モルの蓚酸 の存在下に重縮合して得るのが好ましレ、。
[0045] また、本発明の塗布液には、その pHの調整を目的として、ポリシロキサン (A)の溶 液に予め酸を混合することができる。酸の量は、ポリシロキサン (A)のケィ素原子の 1 モルに対して 0. 01-2. 5モノレカ S好ましく、より好ましくは 0. ;!〜 2モルであるのが好 適である。
上記で用いる酸としては。塩酸、硝酸、硫酸、リン酸の無機酸;蟻酸、酢酸、リンゴ酸 等のモノカルボン酸類;蓚酸、クェン酸、プロピオン酸、コハク酸等の多価カルボン酸 類等の有機酸が挙げられる。これらのうち、溶液状態の酸はそのまま用いることがで きる力 重合溶媒で希釈して用いるのが好ましい。それ以外の酸は、塗布液に含有さ れる重合溶媒に適当な濃度で溶解して用いることが好ましレ、。
[0046] 本発明の被膜形成用塗布液中には、ポリシロキサン (A) 1 該ポリシロキサン (A) の有するケィ素原子を二酸化ケイ素に換算して好ましくは 0. ;!〜 15質量%、より好ま しくは 0. 5〜; 10質量%含有され、かつ含フッ素ァミン化合物(B)がポリシロキサン (A )のケィ素原子の 1モノレに対して 0· 01—0. 2モノレ、好ましくは 0. 03—0. 1モル含有 される。
また、ケィ素化合物(D)が含有される場合、ケィ素化合物(D)は、ポリシロキサン( A)の有するケィ素原子 1モルに対し、好ましくは 0· 03-0. 55モル、より好ましくは 0 . 05—0. 45モル含有されるのが好適である。
[0047] 本発明では、被膜形成用塗布液中の SiO固形分換算濃度が、好ましくは 0. ;!〜 1
2
5質量%、より好ましくは 0. 5〜; 10質量%であるのが好適である。 SiO濃度が 0. 1質
2
量%以上の場合、一回の塗布で所望の膜厚を得易ぐまた、 15質量%以下で、溶液 のポットライフがより安定し易い。ここで言うところの SiO固形分換算濃度とは、塗布
2
液中のケィ素原子を二酸化ケイ素に換算した濃度を意味する。例えば、塗布液中に ポリシロキサン (A)のみが含有される場合には、ポリシロキサン (A)のケィ素原子を二 酸化ケィ素に換算した濃度を意味し、また、塗布液中にポリシロキサン (A)及びケィ 素化合物(D)が含有される場合には、ポリシロキサン (A)とケィ素化合物(D)のケィ 素原子の合計量を二酸化ケイ素に換算した濃度を意味する。
上記の塗布液は、必要に応じて、有機溶媒を添加して SiO固形分換算濃度を上
2
記範囲になるように調製される力 これに用いられる有機溶媒は、ポリシロキサン (A)
を製造する際のアルコキシシランの重縮合に用いる有機溶媒や、ポリシロキサン (A) の溶液の濃縮や、希釈又は他の有機溶媒に置換する際に用いる有機溶媒を用いる ことができる。有機溶媒は、一種でも複数種でも任意に選択して用いることができる。
[0048] 本発明における被膜形成用塗布液の具体例を以下に挙げる。
[1]ポリシロキサン (A)と含フッ素ァミン化合物 (B)とを含有し、それらが有機溶媒 (C )に溶解した塗布液。
[2]ポリシロキサン (A)と含フッ素ァミン化合物(B)とケィ素化合物(D)とを含有し、そ れらが有機溶媒 (C)に溶解した塗布液。
[3]上記 [ 1 ]又は [2]に無機微粒子を含有させた塗布液。
[4]上記 [ 1 ]又は [2]又は [3]にレベリング剤や界面活性剤を含有させた塗布液。
[0049] <被膜の形成〉
本発明の低屈折率被膜形成用塗布液は、基材に塗布し、熱硬化することで所望の 被膜を得ること力できる。塗布方法は、公知又は周知の方法を採用できる。例えば、 ディップ法、フローコート法、スプレー法、ノ ーコート法、グラビアコート法、ローノレコー ト法、ブレードコート法、エアーナイフコート法などの方法を採用できる。
基材としては、プラスチック、ガラス、セラミックスなどからなる基材が挙げられる。プ ラスチックとしては、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アタリレート、ポリエーテルサルホン、 ポリアリレート、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、ポリトリ メチルペンテン、ポリオレフイン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ(メタ)アクリロニトリル 、トリアセチルセルロース、ジァセチルセルロース、アセテートブチレートセルロースな どのシートやフィルムなどが挙げられる。
[0050] 基材の表面上に形成する被膜の厚さは、塗膜の厚みによっても調節することができ るが、塗布液の SiO換算濃度を調節することによつても容易に調節することができる
[0051] 基材に形成された塗膜は、温度 20〜; 150°Cでそのまま熱硬化させてもよいが、これ に先立ち、温度 20〜100°Cで乾燥させた後、熱硬化してもよい。その際、乾燥に要 する時間は、 10秒間〜 6分間が好ましい。
熱硬化に要する時間は、所望の被膜特性に応じて適宜選択することができる力 通
常、 1時間〜 7日間である。低い硬化温度を選択する場合は、硬化時間を長くするこ とで充分な耐擦傷性を有する被膜が得られ易い。
また、本発明の撥水性被膜形成用塗布液は、 150°Cを超える硬化温度であっても 耐擦傷性に優れた被膜を得ることができる。その際、基材の耐熱温度に合わせて、 硬化温度と硬化時間を調整することが好ましい。
[0052] <反射防止材等の用途〉
本発明の塗布液から形成される被膜は、上記のように屈折率が例えば 1. 4以下と いう低屈折率を有しているため、特に、反射防止材としての用途に好適に用いること ができる。
本発明の被膜を反射防止材に使用する場合、本発明の被膜より高い屈折率を有 する基材上に本発明の被膜を形成することで容易に光反射防止能を付与することが できる。すなわち、本発明の被膜よりも高い屈折率を有するプラスチックフィルムゃガ ラスのような基材の表面に本発明の被膜を形成することにより反射防止フィルムや反 射防止ガラス等の反射防止基材とすることができる。
本発明の被膜は、基材表面に単一の被膜として形成しても有効である力 高屈折 率を有する単数又は複数の下層を形成する被膜の上に本発明の被膜を形成した積 層構造を有する反射防止体としても有効である。
[0053] 本発明の被膜は、テレビ、ガラス製のブラウン管、コンピューターのディスプレイ、ガ ラス表面を有する鏡、ガラス製ショウケースなどの光の反射防止が望まれる分野に好 適に用いることができる。
更に、本発明の被膜は、それ自体の水の接触角が 90度以上であるので、撥水性を 有し、また、指紋や油性インキが拭き取りやすいという防汚性の点で充分な実用性を 有しており、温度 20〜150°Cという比較的低温での硬化処理においても充分に硬化 できるため、反射防止基材の製造工程においても非常に有利である。
本発明の被膜は、上記の利点をも有するので、特に、液晶、プラズマなどの表示装 置やディスプレイモニター等の反射防止フィルムに有用である。
実施例
[0054] 以下に、合成例、及び実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本
発明は下記の合成例、及び実施例に制限して解釈されるものではない。
本実施例における略語の説明。
TEOS:テトラエトキシシラン
CS - 8 :ォクチルトリエトキシシラン
MEA:モノエタノールァミン
BA:ベンジルァミン
FN-07 : 1H, 1H—ヘプタフルォロブチルァミン
FN- 15 : 1H, 1H—ペンタデカフノレォロオタチノレアミン
IPA : 2—プロパノール
cHexOH:シクロへキサノーノレ
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
下記合成例における測定法を以下に示す。
[0055] [残存アルコキシシランモノマー測定法]
ポリシロキサン (A)の溶液中の残存アルコキシシランモノマーをガスクロマトグラフィ 一(以下、 GCと言う。)で測定した。
GC測定は、島津製作所社製、 Shimadzu GC— 14Bを用い、下記の条件で測定 した。
カラム:キヤビラリ一力ラム CBP1— W25— 100 (長さ 25mm、直径 0· 53mm,肉 厚丄 β m)
カラム温度:開始温度 50°Cから 15°C/分で昇温して到達温度 290°C (保持時間 3 分)とした。
サンプル注入量: 1 ,1 L、インジェクション温度: 240°C、検出器温度: 290°C、キヤリ ヤーガス:窒素(流量 30mL/分)、検出方法: FID法。
[0056] [合成例 1]
還流管を備えつけた 4つ口反応フラスコにメタノール 57. 26gを投入し、攪拌下に 蓚酸 18. Olgを少量づっ添加して、蓚酸のメタノール溶液を調製した。次いでこの溶 液を加熱し、還流下に TEOS (17. 71g)と FS— 13 (7. 02g)の混合物を滴下した。
滴下後、 5時間還流し、室温まで放冷してポリシロキサン (A)の溶液 (PF— 1)を調製 した。このポリシロキサン (A)の溶液(PF— 1)を GCで測定したところ、アルコキシシラ ンモノマーは検出されなかった。
[0057] [合成例 2]
還流管を備えつけた 4つ口反応フラスコにエタノール 31 · 78gと蓚酸 0. 18gと純水 10. 80gを投入し、攪拌下に TEOS29. 16gと FS— 1328. 08gを添加して、混合溶 液を調製した。次いでこの溶液を加熱して 3時間還流し、その後室温まで放冷してポ リシロキサン (A)の溶液(PF— 2A)を調製した。このポリシロキサン (A)の溶液(PF - 2A)を GCで測定したところ、アルコキシシランモノマーは検出されな力、つた。 一方で、還流管を備えつけた 4つ口反応フラスコにエタノール 81 · 99gと蓚酸 18. Olgと投入し、攪拌下に 5時間加熱して酸性溶液 (PF— 2B)を調製した。
そして、ポリシロキサン (A)の溶液(PF— 2Α) 50· 00gと酸性溶液(PF— 2Β) 50. 00gを混合し、ポリシロキサン (A)の溶液 (PF - 2)を調製した。
[0058] [合成例 3]
還流管を備えつけた 4つ口反応フラスコにエタノール 47. 36gと蓚酸 0. 18gと純水 10. 80gを投入し、攪拌下に TEOS41. 66gを添加して、混合溶液を調製した。次 V、でこの溶液を加熱して 3時間還流し、その後室温まで放冷してケィ素化合物(D)の 溶液 (PS)を調製した。この溶液を GCで測定したところ、アルコキシシランモノマーは 検出されなかった。
[0059] [合成例 4]
還流管を備えつけた 4つ口反応フラスコにメタノール 60. 13gを投入し、攪拌下に 蓚酸 18. Olgを少量づっ添加して、蓚酸のメタノール溶液を調製した。次いでこの溶 液を加熱し、還流下に TEOS (17. 71g)と CS— 8 (4. 15g)の混合物を滴下した。滴 下後、 5時間還流し、室温まで放冷してポリシロキサンの溶液 (PC)を調製した。この ポリシロキサンの溶液(PC)を GCで測定したところ、アルコキシシランモノマーは検出 されなかった。
[0060] [実施例;!〜 4]
有機溶媒 (IPA、 PGME及び cHexOHの混合溶媒)に含フッ素ァミン化合物(B)
を加え、撹拌しながら 5%塩酸水溶液(1. 22g)をゆっくりと加え pHを調整した。次い で、ポリシロキサン (A)の溶液とケィ素化合物(D)の溶液を加えて、被膜形成用塗布 液(Q1〜Q4)を調製した。
その際、有機溶媒 (C)、含フッ素ァミン化合物(B)、ポリシロキサン (A)の溶液及び ケィ素化合物(D)の溶液は、表 1に示すものを用い、実施例 1及び実施例 2において は、ケィ素化合物(D)の溶液を用いな力、つた。
[表 1]
[0062] [比較例;!〜 4]
表 2に示す組成で、有機溶媒(C) (IPA、 PGME及び cHexOHの混合溶媒)にアミ ン化合物を加え、撹拌しながらポリシロキサン (A)の溶液とケィ素化合物(D)の溶液 を加えて、被膜形成用塗布液 (T1〜T4)を調製した。
その際、比較例 1及び比較例 3においては、ァミン化合物及びケィ素化合物(D)の 溶液を用いな力、つた。また、比較例 2においてはケィ素化合物(D)の溶液を用いなか つた。
[0063] [比較例 5及び 6]
有機溶媒(C) (IPA、 PGME及び cHexOHの混合溶媒)にァミン化合物を加え、 撹拌しながら 5%塩酸水溶液(1. 22g)をゆっくりと加えた。次いで、ポリシロキサンの 溶液 (PC)を加えて、被膜形成用塗布液 (T5及び T6)を調製した。
その際、有機溶媒、ァミン化合物及びポリシロキサンの溶液 (PC)は、表 2に示すも のを用い、比較例 5においては、ァミン化合物を用いな力、つた。
[0065] <保存安定性〉
塗布液を温度 25°Cで 1ヶ月間静置した後に、孔径 0. 45 111、内径 18mm、長さ 2 2mmの非水系ポリテトラフルォロエチレンフィルター(倉敷紡績社製クロマトディスク 1 3N)で lOOcc濾過し、濾過できたものを〇、 目詰まりが生じたものを Xとした。
この結果を表 3に示す。
[0066] <硬化膜評価〉
調製した塗布液(Q1〜Q4及び T1〜T6)を、下記に示す処理を施したハードコー ト付きトリァセチルセルロース(以下、 HC—TACと言う。)フィルム(フィルム厚 80〃 m 、波長 550nmにおける反射率が 4. 5%)にバーコ一ター(No. 6)を用いて塗布し、 塗膜を形成した。温度 23°Cで 30秒間放置した後、クリーンオーブン中、 100°Cで 5 分間乾燥させた。次いで温度 90°Cで 15時間硬化させた。得られた硬化被膜につい て、水接触角、油性ペン拭き取り性、指紋拭き取り性、密着性、反射率及び耐擦傷性 を評価した。
また、屈折率は次の様にして形成した硬化膜を用いて測定した。調製した塗布液( Q1〜Q4及び T1〜T6)を、シリコンウェハー上にスピンコートして塗膜を形成した後 、温度 23°Cで 30秒間放置してから、クリーンオーブン中、 100°Cで 5分間乾燥させ、 次いで温度 90°Cで 15時間硬化させ、膜厚が lOOnmの硬化被膜を得た。
硬化被膜の評価方法は下記の通りであり、評価結果は表 3及び表 4に示す。
[0067] [TACフィルム表面処理方法]
日本製紙社製ハードコート付き HC— TACフィルム(フィルム厚 80 m)を 40°Cに
加熱した 5質量%水酸化カリウム(KOH)水溶液に 3分間浸漬してアルカリ処理を行 つた後、水洗した。次いで、 0. 5質量%の硫酸 (H SO )水溶液(液温 23°C)に 30秒
2 4
間浸漬して中和させ、水洗、乾燥した。
[水接触角]
協和界面科学社製の自動接触角計 CA— Z型を使用して、純水 3マイクロリットルを 滴下したときの接触角を測定した。
[油性ペン拭き取り性]
硬化被膜表面に、ぺんてる社製油性ペンを用いて施されたインクを、旭化成社製 ベンコット M— 3を用いて拭き取り、その取り易さを目視で判定した。インクが完全に 拭き取れたものを〇、それ以外を Xとした。
[0068] [指紋拭き取り性]
硬化被膜表面に指紋を付着させ、旭化成社製ベンコット M— 3を用いて拭き取り、 その取り易さを目視で判定した。指紋が完全に拭き取れたものを〇、それ以外を Xと した。
[密着性]
基材上の硬化被膜に lmm間隔で碁盤の目状に 100点カットし、セロテープ (登録 商標、ニチバン社製 24mm幅)を硬化被膜と強く貼り付けた後、セロテープを急激 に剥がして硬化被膜の剥離の有無を目視により確認した。剥離がないものを〇、剥 離があるものを Xとした。
[反射率]
島津製作所社製の分光光度計 UV3100PCを使用して、波長 550nmの光を入射 角 5度で硬化被膜に入射させて、反射率を測定した。
[0069] [耐擦傷性]
硬化被膜を、 日本スチールウール社製スチールウール # 0000を用いて、 400g/ cm2で 10往復擦り、硬化被膜表面の傷の付き方を目視で判定した。
判定基準は以下のとおり。
A :傷無し〜 5本、 B :傷 6〜; 10本、 C :傷 1;!〜 20本、 D :傷 2;!〜 30本、 E :傷 31本以 上
[屈折率]
溝尻光学社製のエリプソメタ一 DVA— 36Lを使用して、波長 633nmの光における 屈折率を測定した。
[0070] [表 3]
[0071] [表 4]
[0072] 表 3及び表 4に示されるように、実施例;!〜 4では、 90°Cの硬化温度で、耐擦傷性が B以上の優れた特性と、 1. 370以下の屈折率と 1. 3%以下の反射率という優れた光 学特性を有する被膜が得られた。そして、塗布液 (Q1〜Q4)の保存安定性も良好で あり、温度 23°Cで 6ヶ月間保存後も安定であった。
更に、実施例 1〜4の被膜では、水接触角が 100度以上という特性が示された。
[0073] 一方、含フッ素ァミン化合物を有しない塗布液 (T;!〜 4)を用いた比較例 1〜4は、 9 0°Cの硬化温度では、耐擦傷性と屈折率あるいは反射率が不十分であった。ァミン 化合物を含有していない場合、耐擦傷性が D以下と低いものであった。一方で、弗 素を有しないァミン化合物を使用する場合、得られる被膜は耐擦傷性は B以上が得
られ、且つ反射率は 1. 5以上、屈折率は 1. 380以上と高いものであった。
また、表 3及び表 4に示されるように、実施例 1〜4の被膜は、指紋拭き取り性及び 油性ペン拭き取り性という防汚特性に優れ、且つ基材との密着性が高いものであつ た。
また、フッ素原子で置換されて!/、な!/、有機基を持つポリシロキサンを用いた塗布液 (T5〜T6)では、防汚特性も低ぐ高い反射率の被膜を与え不十分なものであった。 産業上の利用可能性
本発明の低屈折率被膜形成用塗布液は、保存安定性に優れ、温度 20°C〜; 150°C という低温の熱処理で充分に硬化し且つ低屈折率で耐擦傷性に優れる低屈折率被 膜を提供できる。そのため、特に、反射防止基材に好適に用いることができ、とりわけ 、表示素子用の反射防止フィルムに好適に用いることができる。
また、前記のような被膜を形成する方法は、本発明の低屈折率被膜形成用塗布液 の優れた保存安定性と共に、工業的に有用である。 なお、 2006年 11月 14曰に出願された曰本特許出願 2006— 308444号の明細書 、特許請求の範囲、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示と して、取り入れるものである。