明 細 書
導電性高分子合成用反応促進剤、導電性高分子および固体電解コンデ ンサ
技術分野
[0001] 本発明は、導電性高分子の合成に用いられる反応促進剤と、該反応促進剤を用い て合成されてなる導電性高分子、および該導電性高分子を固体電解質として有する 固体電解コンデンサに関するものである。
背景技術
[0002] 導電性高分子を固体電解質として用いた固体電解コンデンサは、二酸化マンガン を固体電解質として用いた従来の固体電解コンデンサに比べて、発火しにくぐかつ ESR (等価直列抵抗)が低いなど、種々の特性が優れていることから、急速な勢いで 市場が拡大している。
[0003] 上記導電性高分子の製造は、一般に、化学酸化重合法で行われており、例えば、 酸化剤兼ドーパントとしてパラトルエンスルホン酸鉄などの有機スルホン酸の遷移金 属塩を用い、チォフェンやその誘導体などのモノマーを重合させることによって行わ れている(特許文献;!〜 2)。
[0004] しかしながら、この方法は、大量生産に向いているものの、酸化剤として用いた遷移 金属が導電性高分子内に残るという問題があった。そこで、遷移金属を取り除くため 、洗浄工程を入れたとしても、遷移金属は完全に取り除きにくいという性質があり、遷 移金属が導電性高分子中に残った場合の遷移金属が導電性高分子に与える影響 や、それを固体電解質として用いた固体電解コンデンサへの影響を払拭し、導電性 高分子の安定性や固体電解コンデンサの長期信頼性をより一層高めたいという要望 があった。そのため、酸化剤として遷移金属塩以外のもの、例えば、過酸化物を酸化 剤として用いることが提案されている力 S、遷移金属塩に比べて反応効率が非常に悪 力、つたり、得られた導電性高分子の導電率が非常に悪いという問題があった。
[0005] 特許文献 1 :特開平 10— 50558号公報
特許文献 2:特開 2000— 106331号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0006] 本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決し、導電性高分子の合成反応を 促進すると共に、合成された導電性高分子内に取り込まれて、導電性高分子の導電 性を向上させ得る導電性高分子合成用反応促進剤、該反応促進剤を用いて得られ る導電性高分子、および該導電性高分子を固体電解質とする長期信頼性の高い固 体電解コンデンサを提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0007] 本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、 OH基を少なくとも
1つ含有するベンゼン骨格スルホン酸またはナフタレン骨格スルホン酸由来のァニォ ンと、遷移金属カチオンを除く少なくとも 1つの 2価以上のカチオンとからなる塩を含 有する導電性高分子合成用反応促進剤を用いて導電性高分子を合成することで、 導電性高分子用モノマーの重合反応を促進して、導電率の高い導電性高分子を効 率的に得ることができ、また、その導電性高分子を固体電解質とすることによって長 期信頼性の高い固体電解コンデンサを構成することができることを見出した。
[0008] すなわち、本発明の導電性高分子合成用反応促進剤は、 OH基を少なくとも 1つ含 有するベンゼン骨格スルホン酸またはナフタレン骨格スルホン酸由来のァニオンと、 遷移金属カチオンを除く少なくとも 1つの 2価以上のカチオンとからなる塩を含有する ことを特 ί毁とするものである。
[0009] また、本発明の導電性高分子は、導電性高分子のマトリックス中に、 ΟΗ基を少なく とも 1つ含有するベンゼン骨格スルホン酸またはナフタレン骨格スルホン酸由来のァ 二オンと、遷移金属カチオンを除く少なくとも 1つの 2価以上のカチオンとからなる塩 を含有してレ、ることを特徴とするものである。
[0010] さらに、本発明の固体電解コンデンサは、上記本発明の導電性高分子を固体電解 質として有することを特徴とするものである。
発明の効果
[0011] 本発明によれば、導電性高分子合成の際のモノマーの重合反応を促進することが
でき、かつ導電率が高い導電性高分子を合成できる反応促進剤、導電率が高い導 電性高分子、および長期信頼性の高い固体電解コンデンサを提供することができる
[0012] すなわち、本発明では、導電性高分子を得るための反応促進剤として、特定の塩 を用いていて、この反応促進剤中には導電性高分子の劣化を加速させる原因となる 遷移金属(遷移金属カチオン)を含まず、また、反応促進剤に係る上記塩は、導電性 高分子中に取り込まれることでその導電性を高め得るため、モノマーを効率よく重合 させて、導電率が高くかつ耐熱性に優れた導電性高分子を提供することができる。ま た、その導電性高分子を固体電解質として用いることによって、従来より長期信頼性 の高い固体電解コンデンサを提供することができる。
[0013] 本発明の導電性高分子は、導電率が高ぐかつ遷移金属塩を含まないので、従来 の導電性高分子に見られたような遷移金属塩による急速な劣化が生じないことから、 主として、固体電解コンデンサの固体電解質に用いられる力 それ以外にも、それら の特性を生かして、例えば、バッテリーの正極活物質、帯電防止シート、帯電防止塗 料、帯電防止樹脂などの帯電防止剤、耐腐食用塗料の耐腐食剤などに好適に用い ること力 Sでさる。
発明を実施するための最良の形態
[0014] 本発明の導電性高分子合成用反応促進剤(以下、「反応促進剤」と略す)は、 OH 基を少なくとも 1つ含有するベンゼン骨格スルホン酸由来のァニオン、または OH基を 少なくとも 1つ含有するナフタレン骨格スルホン酸由来のァニオンと、少なくとも 1つの 2価以上のカチオン (遷移金属カチオンを除く)と力、らなる塩を含有するものである。
[0015] OH基を少なくとも 1つ含有するベンゼン骨格スルホン酸由来のァニオンとは、 OH 基を少なくとも 1つ含有するベンゼン骨格スルホン酸に係るスルホン酸基の H (水素) が脱離したァニオンであり、 OH基を少なくとも 1つ含有するナフタレン骨格スルホン 酸由来のァニオンとは、 OH基を少なくとも 1つ含有するナフタレン骨格スルホン酸に 係るスルホン酸基の H (水素)が脱離したァニオンである。
[0016] OH基を少なくとも 1つ含有するベンゼン骨格スルホン酸由来のァニオン、または O H基を少なくとも 1つ含有するナフタレン骨格スルホン酸由来のァニオンとしては、例
えば、フエノールスルホン酸、フエノールジスルホン酸、クレゾ一ルスルホン酸、カテコ 一ルスルホン酸、ドデシルフエノールスルホン酸、スルホサリチル酸、ナフトールスル ホン酸、ナフトールジスルホン酸、ナフトールトリスルホン酸などの各酸由来のァニォ ンが挙げられる。これらの中でも、フエノールスルホン酸由来のァニオン、タレゾール スルホン酸由来のァニオンが好ましレ、。
[0017] 本発明の反応促進剤に係る上記の塩は、上記のァユオンと、少なくとも 1つの、 2価 以上のカチオン (遷移金属カチオン以外のもの)からなるものである。上記の 2価以上 のカチオンとしては、 2価以上であって、遷移金属カチオン以外の各種無機カチオン や有機カチオンが挙げられる。上記無機カチオンとしては、例えば、マグネシウムィ オン(Mg2+)、カルシウムイオン(Ca2+)、ストロンチウムイオン(Sr2+)、バリウムイオン (Ba2+)、ラジウムイオン (Ra2+)、アルミニウムイオン (Al3+)などが好ましぐカルシゥ ムイオン、ストロンチウムイオン、ノ リウムイオン、アルミニウムイオンが特に好ましい。 また、有機カチオンとしては、例えば、エチレンジァミンイオン(+H NCH CH NH +
3 2 2 3
)、 1 , 3—プロピノレジアミンイオン ΓΗ NCH CH CH NH +)、 1 , 2—プロジァミン
3 2 2 2 3
イオン〔+H NCH CH (NH +) CH〕などが好ましぐエチレンジァミンイオンが特に
3 2 3 3
好ましい。
[0018] 反応促進剤に係る上記の塩は、上記のァニオンと上記のカチオンからなるものであ り。上記例示のァニオンと、上記例示のカチオンの組み合わせには、特に制限はな い。また、反応促進剤は、上記の塩を 1種単独で含有していてもよぐ 2種以上を含有 していてもよい。なお、上記の塩の中でも、フエノールスルホン酸カルシウム、フエノー ノレスルホン酸ストロンチウム、フエノールスルホン酸バリウム、フエノールスルホン酸ァ ノレミニゥム、フエノーノレスノレホン酸エチレンジァミンなどのフエノーノレスノレホン酸塩;ク レゾーノレスノレホン酸カノレシゥム、タレゾーノレスノレホン酸ストロンチウム、タレゾーノレスノレ ホン酸バリウム、クレゾ一ルスルホン酸アルミニウム、クレゾ一ルスルホン酸エチレンジ ァミンなどのタレゾーノレスノレホン酸塩;が好ましレ、。
[0019] 本発明の反応促進剤は、上記の塩が水に溶解してなる水溶液の形態を有すること が好ましい。また、浸透性をよくするために、少量のアルコールや界面活性剤を添カロ してもよい。なお、反応促進剤が水溶液の場合の上記塩の濃度は、好ましくは 0. lm
ol/l以上、より好ましくは 0. 5mol/l以上である。詳しくは後述する力 本発明の反 応促進剤を用いて導電性高分子を合成する際には、予め、導電性高分子を形成す るための基材(コンデンサ素子など)の表面に反応促進剤に係る上記の塩を付着さ せたり、モノマーおよび/または酸化剤を付着させた基材に、上記の塩を付着させる こと力 S好ましく、例えば水溶液の形態の反応促進剤中に基材(または、モノマーおよ び/もしくは酸化剤を付着させた基材)を浸漬する方法が好ましく採用される。その 場合、本発明の反応促進剤が上記濃度の水溶液であれば、上記のような操作によつ て、導電性高分子の合成に十分な量の塩を付着させることが可能となるため、導電 性高分子の生産性をより高めることができる。なお、水溶液中の上記塩濃度の上限 は、塩の溶解性の観点から、通常、 lmol/1程度である。
[0020] 上記の塩を合成する方法については、特に制限はないが、例えば、 OH基を少なく とも 1つ含有するベンゼン骨格スルホン酸またはナフタレン骨格スルホン酸を含有す る水溶液を、遷移金属カチオン以外の 2価以上のカチオンと任意のァニオンからなる アルカリで中和する方法が採用できる。この方法によれば、水溶液の形態の反応促 進剤を直接得ること力できる。また、後記の実施例で記載しているように、上記方法に より水溶液の形態で得られた反応促進剤から、スプレードライなどの方法により上記 塩のみを採取し、これを再度水に溶力、して水溶液の形態の反応促進剤としてもよぐ この方法によれば、反応促進剤水溶液中の上記塩の濃度を、より精密に調整できる
〇
[0021] なお、反応促進剤は、上記の塩の濃度が 5質量%の水溶液の状態で、 pHが 1以上 であること力 S好ましく、 4以上であることがより好ましい。上記の塩の濃度が 5質量%の 水溶液の状態で上記の pHである反応促進剤であれば、例えば、アルミニウム固体 電解コンデンサ用の導電性高分子の合成にも好適に用い得る。また、上記の塩の濃 度が 5質量%の水溶液の状態での反応促進剤の pHは、 10以下であることが好ましく 、 8以下であることがより好ましい。よって、例えば、上記の中和法により反応促進剤 に係る上記の塩を合成する際には、生成後の塩を含有する水溶液が、 5質量%濃度 で上記の pHを満足するように、酸とアルカリの添加量を調整することが好ましい。
[0022] なお、本発明の反応促進剤に係る上記の塩において、これを構成するァニオンとし
て、 OH基を 1つ以上有することを要件としているのは、 OH基がモノマーの重合反応 を促進させ、かつ得られる導電性高分子の導電率の向上に寄与していると考えられ るからである。その理由については、現在のところ必ずしも明確ではないが、 OH基の プロトンが重合反応を速やかに進行させ、かつ導電性高分子中に取り込まれやすく するためではないかと考えられる。また、上記の塩を構成するァニオンを、ベンゼン骨 格またはナフタレン骨格を有するものとしているのは、このような塩を取り込んだ形で 得られる導電性高分子の耐熱性を高めることができるからである。
[0023] また、理由は定かではないが、上記の塩を構成するカチオンを 2価以上のものとす ることで、モノマーの重合反応を促進させ、かつ合成される導電性高分子の耐熱性を 高めること力 Sでさる。
[0024] 本発明の反応促進剤は、導電性高分子の合成の際に、そのモノマーの重合反応 を促進して、導電性高分子の生産性を高めることができる。また、反応促進剤に係る 上記の塩は、合成された導電性高分子に酸の形で取り込まれてドーパントとして機能 し得ると共に、合成された導電性高分子の内部に塩の形で残存しても、導電性高分 子の導電性向上に寄与し得る。更に、本発明の反応促進剤は遷移金属を含有して おらず、これによる導電性高分子への影響が回避できるばかりか、上記の塩は、導電 性高分子中に取り込まれることで、上記の通り、導電性高分子の耐熱性を高める機 能も有している。よって、本発明の反応促進剤を用いて得られた導電性高分子は、 導電性や耐熱性が良好なものとなる。
[0025] すなわち、本発明の導電性高分子は、導電性高分子のマトリックス中に、本発明の 反応促進剤に係る上記の塩を含有するものであり、本発明の反応促進剤と酸化剤で ある過硫酸塩を用いてモノマーを化学酸化重合することにより得られるものが好まし い。
[0026] 本発明の導電性高分子において、マトリックスとなる導電性高分子は、チォフェンお よびその誘導体、ピロールおよびその誘導体ならびにァニリンおよびその誘導体より なる群から選択される少なくとも 1種のモノマーを重合してなる重合体が好ましい。
[0027] チォフェンの誘導体としては、例えば、 3, 4 エチレンジォキシチォフェン、 3 ァ ノレキルチオフェン、 3—アルコキシチォフェン、 3—アルキル 4 アルコキシチオフ
ェン、 3, 4—アルキルチオフェン、 3, 4—アルコキシチォフェンなどが挙げられる。ま た、ピロールの誘導体としては、例えば、 3, 4—アルキルピロール、 3, 4—アルコキ シピロールなどが挙げられる。更に、ァニリンの誘導体としては、例えば、 2—アルキ ルァニリン、 2—アルコキシァニリンなどが挙げられる。これらチォフェンの誘導体、ピ ロールの誘導体およびァニリンの誘導体における上記のアルキル基やアルコキシ基 の炭素数としては;!〜 16が好まし!/、。
[0028] 上記モノマーの重合にあたって、液状のものはそのまま使用できるが、重合反応を よりスムーズに進行させるには、上記モノマーを、例えば、メタノール、エタノール、プ ロパノール、ブタノール、アセトン、ァセトニトリルなどの有機溶媒で希釈して溶液(有 機溶媒液)状にしておくことが好ましレ、。
[0029] 上記モノマーの重合時の態様としては、導電性高分子の使用形態によっては異な る態様を採ること力好ましく、例えば、導電性高分子をフィルム状などに形成し、それ を導電性高分子の応用機器に組み込む場合は、どのような態様を採用してもよいが 、導電性高分子を固体電解コンデンサの固体電解質として用いる場合は、固体電解 コンデンサの製造工程において、コンデンサ素子の表面に直接、またはコンデンサ 素子の表面にモノマーおよび/もしくは酸化剤を付着させた後に、上記反応促進剤 に係る上記の塩を付着させ、モノマーをコンデンサ素子表面で重合させることが好ま しい。
[0030] 以下に、固体電解コンデンサのコンデンサ素子に直接導電性高分子を形成する場 合を例にとって、導電性高分子の重合態様を説明する。下記の工程 (A)、工程 (B) 、工程 (C)および工程 (D)を続けて行うことにより、導電性高分子を合成できる。
[0031] 工程 (A) (反応促進剤の塗布工程):コンデンサ素子を上記反応促進剤(通常は水 溶液にして使用)に浸漬したり、上記反応促進剤をコンデンサ素子に塗布するなどし て、反応促進剤をコンデンサ素子の微細な孔の内部にまで浸み込ませた後、乾燥し て上記の塩をコンデンサ素子表面に析出させる。コンデンサ素子の反応促進剤への 浸漬時間は、例えば 1秒〜 5分とすることが好ましい。また、反応促進剤へ浸漬して 取り出したコンデンサ素子や、反応促進剤を塗布したコンデンサ素子の乾燥の条件 は、例えば、 20〜; 100°Cで、 10秒〜 10分とすることが好ましい。
[0032] 工程 (B) (モノマーの塗布工程):濃度が 5〜; 100質量0 /0、さらに好ましくは 10〜40 質量%になるようにモノマーを有機溶媒で希釈した液 (モノマー溶液)に、工程 (A)を 経て、表面に上記の塩を析出させたコンデンサ素子を、例えば 1秒〜 5分浸漬する。
[0033] 工程 (C) (酸化剤の塗布工程):モノマー溶液に浸漬し、取り出したコンデンサ素子 を、酸化剤溶液に、例えば 1秒〜 5分浸漬し、取り出す。
[0034] 工程 (D) (重合工程):反応促進剤に係る上記の塩、モノマーおよび酸化剤を付着 させたコンデンサ素子を、 0〜; 120°C、さらに好ましくは 30〜70°Cの温度で、 1分〜 1 日、さらに好ましくは 10分〜 2時間放置して、モノマーの重合を行う。
[0035] なお、工程 (A)、工程 (B)、工程(C)および工程 (D)は、それぞれ 1回ずつ実施し て導電性高分子を合成してもよいが、これらの工程を、それぞれ複数回ずつ繰り返し て、導電性高分子を合成してもよい。また、工程 (A)、工程 (B)および工程 (C)につ いては、順序を任意に変更してもよい。
[0036] 例えば、フィルム状の導電性高分子を得る場合などでは、上記のコンデンサ素子の 代わりに、セラミック板やガラス板などの基材を用いる他は、上記工程 (A)、工程 (B) 、工程 (C)および工程 (D)に示したのと同様の操作を行って、基材表面に導電性高 分子を形成させ、その後、この導電性高分子を基材力 剥離する方法が採用できる
〇
[0037] ここで、工程 (C)における酸化剤溶液に係る酸化剤としては、過硫酸塩が好ましぐ 具体的には、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸バリウム、過硫酸有機塩 (過硫酸アン モニゥム、過硫酸アルキルアミン塩、過硫酸イミダゾール塩など)などが挙げられ、中 でも過硫酸有機塩がより好ましレ、。
[0038] 過硫酸アルキルアミン塩を構成するアルキルァミンとしては、炭素数;!〜 12のァノレ キル基を有するものが好ましぐその好適な具体例としては、例えば、後記の「OH基 およびスルホン酸基をそれぞれ 1つ以上有するベンゼン骨格スルホン酸またはナフ タレン骨格スルホン酸のアルキルアミン塩」を構成するためのアルキルァミンと同じも のが挙げられる。
[0039] また、過硫酸イミダゾール塩を構成するイミダゾールとしては、イミダゾールそのもの やイミダゾール環上の水素原子の一部が、炭素数 1〜20のアルキル基またはフエ二
ル基で置換されているものが好ましい。すなわち、上記の過硫酸イミダゾール塩とは 、過硫酸とイミダゾールで構成される塩のみならず、過硫酸とイミダゾール誘導体 (例 えば、上記の、イミダゾール環上の水素原子の一部がアルキル基やフエニル基で置 換されたイミダゾール誘導体)で構成される塩も含む概念である。なお、過硫酸イミダ ゾール塩を構成するイミダゾール (イミダゾール誘導体を含む)の好適な具体例として は、例えば、後記の「OH基およびスルホン酸基をそれぞれ 1つ以上有するベンゼン 骨格スルホン酸またはナフタレン骨格スルホン酸のイミダゾール塩」を構成するため のイミダゾール (イミダゾール誘導体を含む)と同じものが挙げられる。
[0040] 上記過硫酸塩は、通常、水溶液として用いられる。水溶液中の過硫酸塩濃度は、 例えば、好ましくは 15質量%以上、より好ましくは 20質量%以上である。なお、水溶 液中の過硫酸塩濃度の上限は、溶解度の観点から 50質量%程度である。
[0041] また、導電性高分子の合成に際しては、以下の導電性高分子用ドーパント溶液を 使用することが好ましい。かかる導電性高分子用ドーパント溶液とは、 OH基およびス ルホン酸基をそれぞれ 1つ以上有するベンゼン骨格スルホン酸またはナフタレン骨 格スルホン酸のアルキルアミン塩もしくはイミダゾール塩から選ばれる少なくとも 1種が 40質量%以上の濃度で溶解している溶液である。
[0042] 上記導電性高分子用ドーパント溶液における OH基およびスルホン酸基をそれぞ れ 1つ以上有するベンゼン骨格スルホン酸またはナフタレン骨格スルホン酸のアルキ ルァミン塩もしくはイミダゾール塩から選ばれる少なくとも 1種の塩は、導電性高分子 中に取り込まれることでドーパントとして機能する。よって、上記導電性高分子用ドー パント溶液を用いて導電性高分子を合成することで、ドーパントとしても機能する上記 反応促進剤に係る上記の塩と共に、導電性高分子用ドーパント溶液中の上記の塩 が導電性高分子中に取り込まれるため、導電性高分子の導電性を一層良好なものと すること力 Sできる。また、上記導電性高分子用ドーパント溶液の使用により、モノマー の重合反応を、より一層促進することもできる。
[0043] すなわち、本発明の反応促進剤と、上記の導電性高分子用ドーパント溶液とから構 成され、例えばそれぞれが個別にパッケージなどされて組み合わされた導電性高分 子合成用薬剤を用いて導電性高分子を合成することにより、モノマーの重合反応を、
より一層促進しつつ、優れた導電率を有する導電性高分子を得ることができる。
[0044] 上記導電性高分子用ドーパント溶液を用いて導電性高分子を合成する際には、例 えば、導電性高分子用ドーパント溶液に、更に酸化剤である過硫酸塩を添加して、 導電性高分子用酸化剤兼ドーパント溶液を調製し、この導電性高分子用酸化剤兼ド 一パント溶液を、上記の工程 (C)における酸化剤(過硫酸塩)溶液に代えて用いる方 法を採用すること力できる。
[0045] 上記の導電性高分子用ドーパント溶液に係る OH基およびスルホン酸基をそれぞ れ 1つ以上有するベンゼン骨格スルホン酸または OH基およびスルホン酸基をそれ ぞれ 1つ以上有するナフタレン骨格スルホン酸としては、例えば、フエノールスルホン 酸、フエノールジスルホン酸、クレゾ一ルスルホン酸、カテコールスルホン酸、ドデシ ノレフエノールスルホン酸、スルホサリチル酸、ナフトールスルホン酸、ナフトールジス ルホン酸、ナフトールトリスルホン酸などが挙げられる。そして、そのベンゼン骨格ス ルホン酸またはナフタレン骨格スルホン酸のアルキルアミン塩を構成するアルキルァ ミンとしては、炭素数 1〜; 12のアルキル基を有するものが好ましぐその好適な具体 例としては、例えば、メチルァミン、ェチルァミン、プロピルァミン、ブチルァミン、オタ チルァミン、ドデシルァミン、 3—エトキシプロピルァミン、 3—(2—ェチルへキシルォ キシ)プロピルァミンなどが挙げられる。
[0046] また、ベンゼン骨格スルホン酸またはナフタレン骨格スルホン酸のイミダゾール塩を 構成するイミダゾールとしては、イミダゾールそのものやイミダゾール環上の水素原子 の一部が、炭素数 1〜20のアルキル基またはフエニル基で置換されているものが好 ましい。すなわち、本明細書でいう「OH基およびスルホン酸基をそれぞれ 1つ以上 有するベンゼン骨格スルホン酸またはナフタレン骨格スルホン酸のイミダゾール塩」と は、 OH基およびスルホン酸基をそれぞれ 1つ以上有するベンゼン骨格スルホン酸ま たはナフタレン骨格スルホン酸とイミダゾールで構成される塩のみならず、 OH基およ びスルホン酸基をそれぞれ 1つ以上有するベンゼン骨格スルホン酸またはナフタレン 骨格スルホン酸とイミダゾール誘導体 (例えば、上記の、イミダゾール環上の水素原 子の一部がアルキル基やフエニル基で置換されたイミダゾール誘導体)で構成される 塩も含む概念である。
[0047] なお、ベンゼン骨格スルホン酸またはナフタレン骨格スルホン酸のイミダゾール塩を 構成するイミダゾールカ 炭素数 1〜20のアルキル基またはフエニル基で置換されて いる場合には、安価に製造でき生産性が良好な点で、イミダゾール環の 2位または 4 位が置換されて!/、ること力 Sより好ましレ、。
[0048] ベンゼン骨格スルホン酸またはナフタレン骨格スルホン酸のイミダゾール塩を構成 するイミダゾールの好適な具体例としては、例えば、イミダゾール、 1ーメチルイミダゾ ール、 2—メチルイミダゾール、 2—ェチルイミダゾール、 2—ブチルイミダゾール、 2— ゥンデシルイミダゾール、 2 フエ二ルイミダゾール、 4ーメチルイミダゾール、 4ーゥン デシルイミダゾール、 4 フエ二ルイミダゾール、 2 ェチルー 4 メチルイミダゾーノレ 、 1 , 2—ジメチルイミダゾールなどが挙げられ、特にイミダゾール、 2—メチルイミダ ゾール、 4ーメチルイミダゾールが好ましい。
[0049] 上記ドーパント溶液の溶媒としては、通常、水でょレ、が、エタノールなどの水親和性 の有機溶媒を 50体積%程度以下含んだ水性液でもよい。
[0050] 上記ドーパント溶液に過硫酸塩を添加してなる酸化剤兼ドーパント溶液では、より 高濃度であれば、導電性高分子の合成反応効率を高めることができ、また、より高い 導電率を有する導電性高分子が合成可能となる。よって、 OH基およびスルホン酸基 をそれぞれ 1つ以上有するベンゼン骨格スルホン酸またはナフタレン骨格スルホン酸 のアルキルアミン塩もしくはイミダゾール塩から選ばれる少なくとも 1種の、ドーパント 溶液中の濃度としては、 40質量%以上であることが好ましぐ 70質量%以上であるこ とがより好ましい。このような高濃度のドーパント溶液であれば、高濃度の酸化剤兼ド 一パント溶液を構成することができる。なお、 OH基およびスルホン酸基をそれぞれ 1 つ以上有するベンゼン骨格スルホン酸またはナフタレン骨格スルホン酸のアルキル アミン塩もしくはイミダゾール塩から選ばれる少なくとも 1種の、ドーパント溶液中の濃 度の上限は、例えば、 90質量%であることが好ましい。
[0051] 上記ドーパント溶液の pHは、 1以上であることが好ましぐ 4以上であることがより好 ましい。アルミニウム固体電解コンデンサに用いる導電性高分子の生成の際には、酸 化剤兼ドーパント溶液の pHを 1以上にして、アルミニウム固体電解コンデンサに係る コンデンサ素子の誘電体層の溶解を抑制することが好ましいが、ドーパント溶液の p
Hを 1以上とすることで、アルミニウム固体電解コンデンサ用の導電性高分子の生成 にも好適な酸化剤兼ドーパント溶液を容易に提供できるようになる。そして、このドー パント溶液の pHは、 10以下であることが好ましぐ 8以下であることがより好ましい。
[0052] また、上記ドーパント溶液には乳化剤を添加しておくことが好まし!/、。これは、乳化 剤を添加しておくことによって、モノマーの重合反応をより均一に進行させることがで きる酸化剤兼ドーパント溶液を構成できるからである。上記乳化剤としては、種々のも のを用いることができる力 特にアルキルアミンオキサイドが好ましい。このアルキルァ ミンオキサイドは、たとえ導電性高分子中に残ったとしても、導電性高分子の導電率 を大きく低下させたり、その導電性高分子を固体電解コンデンサの固体電解質として 用いた場合に、該コンデンサの機能を著しく低下させるようなことはない。そして、上 記アルキルアミンオキサイドにおけるアルキル基は炭素数が 1〜20のものが好ましい 。また、上記モノマーの重合反応が進行すると、それに伴って反応系の pHが低下す る力 上記アルキルアミンオキサイドはそのような pHの低下を抑制する作用も有して いる。
[0053] 上述した通り、上記の導電性高分子用ドーパント溶液は、更に過硫酸塩を添加して 、酸化剤兼ドーパント溶液として導電性高分子の合成に供することが好ましい。その 場合、酸化剤兼ドーパント溶液の濃度は、導電性高分子の生成効率、つまり上記モ ノマーの重合時の反応効率に影響を及ぼし、 、ては固体電解コンデンサの製造 効率や特性などに影響を及ぼす。よって、上記酸化剤兼ドーパント溶液中の酸化剤 兼ドーパント濃度としては、 25質量%以上が好ましぐ 30質量%以上がより好ましぐ 40質量%以上が更に好ましぐ 55質量%以上にすることが特に好ましぐまた、 80質 量%以下にすることが好ましレ、。
[0054] すなわち、酸化剤兼ドーパントの濃度が低すぎると、力、かる酸化剤兼ドーパント溶 液を使用することによる効果が小さくなることがあり、他方、 25質量%以上では、重合 反応がより進行しやすくなり、 30質量%以上、より好ましくは 40質量%以上になると、 例えば、導電性高分子の主要な用途の一つである固体電解コンデンサ(タンタル固 体電解コンデンサ、ニオブ固体電解コンデンサ、アルミニウム固体電解コンデンサな ど)の製造効率や特性面のいずれもより満足すべき結果が得られるようになり、酸化
剤兼ドーパント溶液の濃度を 55質量%以上にすると、 ESRが低ぐかつ静電容量が 高いなど、特性面でもより一層満足すべきコンデンサが得られるようになる。ただし、 酸化剤兼ドーパント溶液の濃度が 80質量%より高くなると、かえって特性が低下する 傾向がある。上記の酸化剤兼ドーパント溶液は上述したように高濃度にすることがで き、このような酸化剤兼ドーパント溶液を、本発明の反応促進剤と併用して導電性高 分子を合成することで、導電性高分子の生成効率、ひいては固体電解コンデンサの 製造効率や特性を一層向上させることができる。
[0055] また、酸化剤兼ドーパント溶液の pHも、特にアルミニウム固体電解コンデンサに関 しては重要であり、 pHが 1未満では、誘電体層が溶解されて、優れた特性が出なくな る虞があるので、酸化剤兼ドーパント溶液の pHは、 1以上であることが好ましぐ 4以 上であること力 り好ましく、 10以下であることが好ましぐ 8以下であることがより好ま しい。ただし、タンタル固体電解コンデンサやニオブ固体電解コンデンサなどは、誘 電体層の耐酸性が強いため、 pHが 1未満でも差し支えない。
[0056] 上記モノマーの重合反応が進むにつれて、反応系の pHは低くなる力 酸化剤兼ド 一パント溶液に、ドーパント溶液の乳化剤として上述したアルキルアミンオキサイドを 添加して!/、る場合 (例えば、この乳化剤を含有するドーパント溶液を用いて酸化剤兼 ドーパント溶液を構成した場合)、このアルキルアミンオキサイドが pHの低下を抑制 する作用があり、反応を均一に進行させるという作用に加えて、この面でも効果があ
[0057] 以上、酸化剤兼ドーパント溶液の濃度に関して、特に固体電解コンデンサを製造 する場合について説明してきたが、酸化剤兼ドーパント溶液の濃度は、導電性高分 子を製造する場合も重要であり、その酸化剤兼ドーパント溶液中の酸化剤兼ドーパ ント濃度としては、 25質量%以上が好ましぐ 30質量%以上がより好ましぐ 55質量 %以上がさらに好ましぐまた、 80質量%以下が好ましい。
[0058] また、上記酸化剤兼ドーパント溶液における OH基およびスルホン酸基をそれぞれ
1つ以上有するベンゼン骨格スルホン酸またはナフタレン骨格スルホン酸のアルキル アミン塩もしくはイミダゾール塩と過硫酸塩との混合比率としては、 OH基およびスル ホン酸基をそれぞれ 1つ以上有するベンゼン骨格スルホン酸またはナフタレン骨格ス
ルホン酸のアルキルアミン塩もしくはイミダゾール塩: 1モルに対し、過硫酸塩: 0· 3モ ル以上、好ましくは 0. 4モル以上であって、 2. 0モル以下、好ましくは 1. 5モル以下 であることが望ましい。過硫酸塩の混合比率が、上記比率より多い場合には、上記特 定の有機スルホン酸のアルキルアミン塩もしくはイミダゾール塩の比率が少なくなるた め、ドーパントとして硫酸イオンが多くなつてしまい、酸化剤兼ドーパント溶液を用いる ことによる導電性高分子の導電率向上効果が小さくなることがある。また、過硫酸塩 の混合比率が、上記比率より少ない場合は、導電性高分子が得られにくくなることが ある。
[0059] 上記のようにして得られる本発明の導電性高分子においては、反応促進剤に係る 上記塩由来のカチオン (遷移金属カチオン以外の 2価以上のカチオン)の含有量が 、導電性高分子全体中、 lOppm以上であることが好ましぐ 20ppm以上であることが より好ましく、 50ppm以上であることが更に好ましい。 2価以上のカチオンを上記の量 で含有する導電性高分子であれば、より耐熱性が良好となる。なお、導電性高分子 中の上記 2価以上のカチオンの含有量の上限は、特に制限はないが、通常 5000pp m程度であり、 lOOOppmであることがより好ましぐ 500ppmであることが更に好まし ぐ 300ppm以下であることが特に好ましい。また、上記導電性高分子において、上 記反応促進剤を用いることによる効果 (特に耐熱性向上効果)の確保と、反応促進剤 を多量に使用することによる経済的不利の回避のバランスを考慮すると、導電性高分 子全体中の上記 2価以上のカチオンの含有量は、 lOppm以上、より好ましくは 20pp m以上、更に好ましくは 50ppm以上であって、 lOOOppm以下、より好ましくは 500p pm以下、更に好ましくは 300ppm以下であることが望ましい。導電性高分子中の上 記 2価以上のカチオンの含有量は、後記の実施例で示す方法により測定することが できる。
[0060] 本発明の固体電解コンデンサは、上記本発明の導電性高分子を固体電解質として 有していればよぐその他の構成については、従来公知の固体電解コンデンサで採 用されている構成と同様のものが採用でき、例えば、アルミニウム固体電解コンデン サ、ニオブ固体電解コンデンサ、タンタル固体電解コンデンサなど、コンデンサ素子 の素材の選択により、種々の固体電解コンデンサの形態を取り得る。
実施例
[0061] 以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を 制限するものではなぐ前 ·後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、 全て本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下の実施例などにおいて、溶液、 希釈液、分散液などの濃度を示す%は、特にその単位を付記しない限り、質量%で ある。
[0062] まず、以下の実施例において反応促進剤として用いるフエノールスルホン酸塩ゃク レゾールスルホン酸塩の合成例を示す。
[0063] 合成例 1 (フエノールスルホン酸カルシウムの合成およびその水溶液の調製)
5%濃度のフエノールスルホン酸水溶液 lOOOgを室温下で攪拌しながら、 pHが 6 程度になるまで水酸化カルシウムをゆっくり添加し、暫く攪拌した。その後、これを 0.
4 H mのガラスフィルターで濾過してフエノールスルホン酸カルシウム水溶液を得た後
、スプレードライによりフエノールスルホン酸カルシウムの粉体を得た。
[0064] 上記のようにして得られたフエノールスルホン酸カルシウムは、 0. 5mol/lの濃度 になるように純水に溶解させ、 0. 2 mのフィルターを通して、水溶液とした。
[0065] 合成例 2 (フエノールスルホン酸ストロンチウムの合成およびその水溶液の調製) 水酸化カルシウムの代わりに、水酸化ストロンチウムを添加した以外は、合成例 1と 同様にして、フエノールスルホン酸ストロンチウムを合成し、その 0. 5mol/l濃度の水 溶液を得た。
[0066] 合成例 3 (フエノールスルホン酸バリウムの合成およびその水溶液の調製)
水酸化カルシウムの代わりに、水酸化ノ リウムを添加した以外は、合成例 1と同様に して、フエノールスルホン酸バリウムを合成し、その 0. 5mol/l濃度の水溶液を得た。
[0067] 合成例 4 (タレゾールスルホン酸カルシウムの合成およびその水溶液の調製)
フエノールスルホン酸水溶液に代えて、クレゾ一ルスルホン酸水溶液を用いた以外 は、合成例 1と同様にして、クレゾ一ルスルホン酸カルシウムを合成し、その 0. 5mol /1濃度の水溶液を得た。
[0068] 合成例 5 (フエノールスルホン酸エチレンジァミンの合成およびその水溶液の調製) 水酸化カルシウムの代わりに、エチレンジァミンを添加した以外は、合成例 1と同様
にして、フエノールスルホン酸エチレンジァミンを合成し、その 0· 5mol/l濃度の水 溶液を得た。
[0069] 合成例 6 (フエノールスルホン酸エチレンジァミンの合成およびそのポリスチレンスル ホン酸エチレンジァミン水溶液への溶解溶液の調製)
5%フエノールスルホン酸水溶液 lOOOgを室温下で攪拌しながら、 pHが 6程度にな るまでエチレンジァミンをゆっくり添加し、暫く攪拌した。その後、これを 0. 4〃mのガ ラスフィルターで濾過してフエノールスルホン酸エチレンジァミン水溶液を得た後、ス プレードライによりフエノールスルホン酸エチレンジァミンの粉体を得た。
[0070] 次に、 20%ポリスチレンスルホン酸水溶液を室温下で攪拌しながら、 pHが 5程度に なるまでエチレンジァミンをゆっくり添加した後、 20%濃度になるよう水を加えて調整 した溶液に、上記のフエノールスルホン酸エチレンジァミンの粉体を 0. 5mol/l濃度 になるよう添加して溶解し、フエノールスルホン酸エチレンジァミンを 20%ポリスチレ ンスルホン酸エチレンジァミン水溶液に 0. 5mol/l濃度になるよう溶解した溶液(pH 5)を得た。
[0071] 合成例 7 (フエノールスルホン酸エチレンジァミンの合成およびそのポリスチレンスル ホン酸エチレンジァミン水溶液への溶解溶液の調製)
5%フエノールスルホン酸水溶液 1000gを室温下で攪拌しながら、 pHが 1. 5程度 になるまでエチレンジァミンをゆっくり添加し、暫く攪拌した。その後、これを 0. 4 ^ 111 のガラスフィルターで濾過してフエノールスルホン酸エチレンジァミン水溶液を得た後 、スプレードライによりフエノールスルホン酸エチレンジァミンの粉体を得た。
[0072] 次に、 5%ポリスチレンスルホン酸水溶液を室温下で攪拌しながら、 pHが 1. 5程度 になるまでエチレンジァミンをゆっくり添加した後、蒸留により 20%濃度になるよう調 整した溶液に、上記のフエノールスルホン酸エチレンジァミンの粉体を 0. 5mol/l濃 度になるよう添加して溶解し、フエノールスルホン酸エチレンジァミンを 20%ポリスチ レンスルホン酸エチレンジァミン水溶液に 0· 5mol/l濃度になるよう溶解した溶液 (p HI . 5)を得た。
[0073] 合成例 8 (フエノールスルホン酸アルミニウムの合成およびその水溶液の調製)
10%濃度の硫酸アルミニウム水溶液 1000mlに、 2N水酸化ナトリウム水溶液を添
加することにより pH7. 6に調整した。この操作により生じた沈殿物を 4 mのフィルタ 一で濾過して回収し、 1000mlの純水に投入して 10分間攪拌することで拡散させ、 再度 4 H mのフィルターで上記沈殿物を回収した。沈殿物の純水への拡散とフィルタ 一による回収を 3回繰り返した後、回収した沈殿物を 800mlの純水に拡散させた。こ こにフエノールスルホン酸 281gを添加し、 15時間室温で攪拌した後、不溶物を 0. 4 μ mのフィルターで取り除いて、フエノールスルホン酸アルミニウムの水溶液を得た。 この水溶液をスプレードライすることで、フエノールスルホン酸アルミニウムの粉体を 得た。
[0074] 上記のようにして得られたフエノールスルホン酸アルミニウムは、 0· 5mol/lの濃度 になるように純水に溶解させ、 0. 2 mのフィルターを通して、水溶液とした。
[0075] <導電性高分子での評価〉
実施例 1
縦 40mm X横 3. 3mmのセラミックプレートに、縦方向の片端から 30mmの部分と 、他端から 10mmの部分とに分けるように、その横方向に耐熱性テープ(幅 2mm)を 貝占り付けた。次に、上記セラミックプレートの縦方向の片端から 30mmの部分の耐熱 性テープの箇所まで(29mm X 3. 3mm)を、合成例 1で調製した 0. 5mol/l濃度の フエノールスルホン酸カルシウム水溶液(pH6. 0)に浸漬し、 1分後に取り出して 100 °Cに調温した乾燥機内に 5分間放置した。その後、乾燥機力も取り出したセラミックプ レートのフエノールスルホン酸カルシウム水溶液に浸漬した部分を含む箇所を、予め 用意しておいた 35%濃度の 3, 4—エチレンジォキシチォフェンのエタノール溶液に 、耐熱性テープの箇所まで浸漬し、 1分後に取り出した。その後、このセラミツクプレ ートを 45%濃度の過硫酸アンモニゥム水溶液に浸漬し、 10秒後に取り出し、室温で 40分間放置して重合を行い、導電性高分子膜を形成させた。その後、表面の一部 が導電性高分子膜で被覆されたセラミックプレートを純水に浸漬し、 30分間放置した 後に取り出し、 70°Cで 30分間乾燥した。
[0076] フエノールスルホン酸カルシウム水溶液へのセラミックプレートの浸漬から、上記の 7 0°Cで 30分間乾燥までの一連の工程を 4回繰り返した後、 150°Cで 60分間セラミック プレートを乾燥した。その後、セラミックプレートに 5tの荷重を 5分間かけて導電性高
分子膜の厚みを均等にした。
[0077] 実施例 2
0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸カルシウム水溶液の代わりに、合成例 2で 調製した 0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸ストロンチウム水溶液(ρΗ6· 0)を 使用した以外は全て実施例 1と同様の操作を行い、セラミックプレート表面に導電性 高分子膜を形成させた。
[0078] 実施例 3
0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸カルシウム水溶液の代わりに、合成例 8で 調製した 0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸アルミニウム水溶液(pH6. 0)を使 用した以外は全て実施例 1と同様の操作を行い、セラミックプレート表面に導電性高 分子膜を形成させた。
[0079] 実施例 4
0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸カルシウム水溶液の代わりに、合成例 4で 調製した 0. 5mol/l濃度のクレゾ一ルスルホン酸カルシウム水溶液(pH6. 0)を使 用した以外は全て実施例 1と同様の操作を行い、セラミックプレート表面に導電性高 分子膜を形成させた。
[0080] 実施例 5
0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸カルシウム水溶液の代わりに、合成例 5で 調製した 0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸エチレンジァミン水溶液(pH5. 0) を使用し、該水溶液の温度を 60°Cに保った以外は全て実施例 1と同様の操作を行 い、セラミックプレート表面に導電性高分子膜を形成させた。
[0081] 実施例 6
0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸カルシウム水溶液の代わりに、合成例 6で 調製したフエノールスルホン酸エチレンジァミンを 20%ポリスチレンスルホン酸ェチレ ンジァミン水溶液に 0. 5mol/l濃度になるよう溶解した溶液 (pH5)を使用し、該溶 液の温度を 60°Cに保った以外は全て実施例 1と同様の操作を行い、セラミックプレー ト表面に導電性高分子膜を形成させた。
[0082] 実施例 7
0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸カルシウム水溶液の代わりに、合成例 7で 調製したフエノールスルホン酸エチレンジァミンを 20%ポリスチレンスルホン酸ェチレ ンジァミン水溶液に 0. 5mol/l濃度になるよう溶解した溶液(5%濃度に希釈したと きの ρΗ1 · 5)を使用し、該溶液の温度を 60°Cに保った以外は全て実施例 1と同様の 操作を行い、セラミックプレート表面に導電性高分子膜を形成させた。
[0083] 実施例 8
45%濃度の過硫酸アンモニゥム水溶液に代えて、 40%濃度の過硫酸アンモユウ ム水溶液と 70%濃度のフエノールスルホン酸 2—メチルイミダゾール水溶液(pH5. 0 )とを、容量比で 1: 1となるように混合して調製した酸化剤兼ドーパント溶液を用いた 以外は全て実施例 1と同様の操作を行い、セラミックプレート表面に導電性高分子膜 を形成させた。
[0084] 実施例 9
45%濃度の過硫酸アンモニゥム水溶液に代えて、 40%濃度の過硫酸アンモユウ ム水溶液と 70%濃度のフエノールスルホン酸 2—メチルイミダゾール水溶液(pH5. 0 )とを、容量比で 1 : 1となるように混合し、更にデシルジメチルァミンオキサイドを 0· 2 %の濃度になるように添加して調製した酸化剤兼ドーパント溶液を用いた以外は全 て実施例 1と同様の操作を行い、セラミックプレート表面に導電性高分子膜を形成さ せた。
[0085] 実施例 10
45%濃度の過硫酸アンモニゥム水溶液に代えて、 40%濃度の過硫酸アンモユウ ム水溶液と 70%濃度のフエノールスルホン酸 4ーメチルイミダゾール水溶液(pH5. 0 )とを、容量比で 1 : 1となるように混合し、更にデシルジメチルァミンオキサイドを 0· 2 %の濃度になるように添加して調製した酸化剤兼ドーパント溶液を用いた以外は全 て実施例 1と同様の操作を行い、セラミックプレート表面に導電性高分子膜を形成さ せた。
[0086] 比較例 1
0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸カルシウム水溶液の代わりに、 0. 5mol/l 濃度のフエノールスルホン酸ナトリウム水溶液(pH6. 0)を使用し、重合回数を 4回か
ら 6回に変更した以外は全て実施例 1と同様の操作を行い、セラミックプレート表面に 導電性高分子膜を形成させた。
[0087] 比較例 2
0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸カルシウム水溶液の代わりに、 0. 5mol/l 濃度のフエノールスルホン酸アンモニゥム水溶液(pH6. 0)を使用し、重合回数を 4 回から 6回に変更した以外は全て実施例 1と同様の操作を行い、セラミックプレート表 面に導電性高分子膜を形成させた。
[0088] 比較例 3
0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸カルシウム水溶液の代わりに、 0. 5mol/l 濃度の m—キシレンスルホン酸カルシウム水溶液(pH6. 0)を使用し、重合回数を 4 回から 6回に変更した以外は全て実施例 1と同様の操作を行い、セラミックプレート表 面に導電性高分子膜を形成させた。
[0089] 比較例 4
0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸カルシウム水溶液の代わりに、 0. 5mol/l 濃度の m—キシレンスルホン酸ナトリウム水溶液(pH6. 0)を使用し、重合回数を 4回 力、ら 6回に変更した以外は全て実施例 1と同様の操作を行い、セラミックプレート表面 に導電性高分子膜を形成させた。
[0090] 比較例 5
0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸カルシウム水溶液の代わりに、 0. 5mol/l 濃度のプチルナフタレンスルホン酸ナトリウム水溶液 (pH6. 0)を使用し、重合回数 を 4回から 6回に変更した以外は全て実施例 1と同様の操作を行い、セラミックプレー ト表面に導電性高分子膜を形成させた。
[0091] 比較例 6
40%濃度のパラトルエンスルホン酸第 2鉄のブタノール溶液と、 3, 4—エチレンジ ォキシチォフェンとを質量比 4 : 1で混合し、 10秒間激しく振った後、これに、実施例 1 で用いたのと同じセラミックプレートを素早く浸漬し、 5秒後に引き上げた。このセラミ ックプレートを室温で 30分間放置した後、純水に浸漬して 30分間放置した。その後 セラミックプレートを引き上げ、 50°Cで 30分間乾燥させた。
[0092] パラトルエンスルホン酸第 2鉄のブタノール溶液と 3, 4—エチレンジォキシチォフエ ンとの混合液へのセラミックプレートの浸漬から、 50°Cで 30分間乾燥するまでの一連 の工程を 5回繰り返してセラミックプレート表面に導電性高分子膜を形成させ、その 後は実施例 1と同じ操作を行った。
[0093] 実施例;!〜 10および比較例;!〜 6の導電性高分子膜の導電率を、室温 (約 25°C) 下で、 JIS K 7194の規定に準じて 4探針方式の電導度測定器 [三菱化学社製「M CP-T600 (商品名 )」 ]により測定した。その結果を「初期導電率」として表 1に示す 力 表 1の結果は、各導電性高分子膜について、それぞれ 5点ずつ測定を行い、こ れら 5点の平均値を求めて小数点以下を四捨五入して示したものである。
[0094] また、上記導電率測定後の各導電性高分子膜を、セラミックプレートごと 150°Cの 恒温槽中に静置し、 100時間貯蔵後に取り出して、上記と同じ方法により導電性高 分子膜の導電率を測定した。その結果を、「150°C、 100時間貯蔵後導電率」として 、表 1に併記する。
[0095] [表 1]
. 1 50°C、 1 00時間
初期導電率
貯蔵後導電率
(S/cm)
(S/cm)
実施例 1 68 45
実施例 2 66 43
実施例 3 62 40
実施例 4 59 40
実施例 5 70 47
実施例 6 71 48
実施例 7 78 49
実施例 8 75 55
実施例 9 87 64
実施例 1 0 88 66
比較例 1 57 21
比較例 2 56 1 9
比較例 3 41 1
比較例 4 38 0. 9
比較例 5 ( * 1 ) ( * 1 )
比較例 6 60 1
[0096] なお、表 1中、(* 1)は、セラミックプレートの表面に導電性高分子膜を良好に形成 できず、導電率測定を実施しなかったことを意味して!/、る。
[0097] 表 1から分かるように、実施例 1〜; 10の導電性高分子は、比較例 3、 4の導電性高 分子に比べて、優れた導電性を有しており、また、比較例 1〜6の導電性高分子に比 ベて耐熱性が良好である。
[0098] なお、比較例;!〜 5では、当初、実施例 1〜; 10と同様に重合回数を 4回で行ったが 、セラミックプレートの導電性高分子膜形成予定箇所の全体に導電性高分子が付着 していなかったために、重合回数を更に 2回増やした。その結果、比較例;!〜 4では、 ようやくセラミックプレートの導電性高分子膜形成予定箇所の全体を導電性高分子膜 で覆うことができた力 比較例 5では、未だ十分に導電性高分子膜が形成されていな
かった。これらに対して、実施例;!〜 10では、少ない重合回数で、良好に導電性高 分子膜が形成できており、フエノールスルホン酸由来のァニオンまたはクレゾ一ルス ルホン酸由来のァニオンと遷移金属カチオン以外の 2価以上のカチオンとの塩を含 有する反応促進剤を使用して、モノマーである 3, 4—エチレンジォキシチォフェンの 重合反応が促進されてレ、ること力分力、る。
[0099] また、同じ反応促進剤を用いた実施例 1と実施例 8〜; 10との間で比較すると(いず れも反応促進剤としてフエノールスルホン酸カルシウムを使用)、酸化剤溶液である 過硫酸アンモニゥム水溶液に代えて、フエノールスルホン酸 2—メチルイミダゾールゃ フエノールスルホン酸 4ーメチルイミダゾールなどの導電性高分子合成用ドーパントを 含んだ酸化剤兼ドーパント溶液を用いて 3, 4—エチレンジォキシチォフェンを重合さ せることにより合成した実施例 8〜; 10の導電性高分子では、ドーパントを含まない酸 化剤溶液を用いて 3, 4—エチレンジォキシチォフェンを重合させることにより合成し た実施例 1の導電性高分子よりも良好な特性が確保できており、反応促進剤と共に 上記ドーパントを含む酸化剤兼ドーパント溶液を用いたことによる効果が明らかであ つた。更に、乳化剤であるデシルジメチルァミンオキサイドを添加した上記ドーパント 溶液(上記酸化剤兼ドーパント溶液)を用いた実施例 9、 10の導電性高分子では、か かる乳化剤を添加して!/、なレ、溶液を用いた実施例 8の導電性高分子に比べて、その 特性が良好である。
[0100] 次に、実施例 1の導電性高分子膜をセラミックプレートから剥がし取り、 lOOmg分を
50mlの密栓付きバイアルに入れ、硫酸 2mlを添加して 50°Cで 1日放置した後、水で 希釈し、濾過した。この溶液を ICP測定し、検量線法により導電性高分子中のカルシ ゥムイオン量を測定したところ、 103ppmであった。
[0101] また、実施例 2、 5、 8および比較例 1、 3の導電性高分子膜について、上記と同様 にして導電性高分子中のイオン量を測定したところ、実施例 2はストロンチウムイオン が 68ppm、実施例 5はエチレンジァミンイオンが 60ppm、実施例 8はカルシウムィォ
Oppm、であった。更に、比較例 2の導電性高分子膜についても、実施例 1と同様の 操作により測定溶液を調製し、該溶液中のアンモニゥムイオンをイオンクロマトグラフ
ィ一にて測定し、その濃度を検量線法により求めたところ、 2ppmであった。
[0102] 実施例 1の導電性高分子と、比較例 1の導電性高分子とは、カチオンが 2価のカル シゥムイオンである力、 1価のナトリウムイオンであるかを除き同じ構成であるため、表 1 の結果と照らして、反応促進剤に係るカチオンが 2価以上のカチオンであることが、 導電性高分子の耐熱性向上に寄与しているものと推察される。
[0103] また、実施例 1の導電性高分子と、比較例 3の導電性高分子とは、反応促進剤に係 るァニオンが異なるだけであるため、表 1の結果と照らして、反応促進剤に係るァニォ ンカ 少なくとも 1つの OH基を含有するベンゼン骨格スルホン酸由来のァニオンで あることが、導電性高分子の初期特性 (初期導電率)および耐熱性 (貯蔵後導電率) の向上に寄与しているものと推察される。
[0104] <アルミニウム固体電解コンデンサでの評価〉
実施例 11
縦 10mm X横 3. 3mmのアルミニウムエッチド箔について、縦方向の片端から 4m mの部分と、他端から 5mmの部分とに分けるように、上記箔の横方向に幅 lmmでポ リイミド溶液を塗布し、乾燥した。次に、上記箔の縦方向の片端から 5mmの部分の、 該片端から 2mmの箇所に、陽極としての銀線を取り付けた。また、上記箔の縦方向 の片端から 4mmの部分(4mm X 3. 3mm)を、 10%濃度のアジピン酸アンモニゥム 水溶液に漬け、 13Vの電圧を印加することにより化成処理を行って誘電体被膜を形 成させ、コンデンサ素子を作製した。
[0105] 次に、前記合成例 1で調製した 0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸カルシウム 水溶液 (PH6. 0)に、上記コンデンサ素子の誘電体被膜を形成した部分を、ポリイミ ド溶液を塗布した箇所まで浸漬し、 1分後に取り出して 100°Cに調温した乾燥機内に 5分間放置した。その後、乾燥機から取り出したコンデンサ素子のフエノールスルホン 酸カルシウム水溶液に浸漬した部分を、予め用意しておいた 35%濃度の 3, 4—ェ チレンジォキシチォフェンのエタノール溶液に、ポリイミド溶液を塗布した箇所まで浸 漬し、 1分後に取り出した。その後、このコンデンサ素子を、 45%濃度の過硫酸アン モニゥム水溶液に浸漬し、 10秒後に取り出し、室温で 40分間放置して重合を行って 導電性高分子層を形成させた。その後、表面の一部が導電性高分子層で被覆され
たコンデンサ素子を純水に浸漬し、 30分間放置した後に取り出し、 70°Cで 30分間 乾燥した。
[0106] フエノールスルホン酸カルシウム水溶液へのコンデンサ素子の浸漬から、上記の 70 °Cで 30分間乾燥までの一連の工程を 8回繰り返した後、 150°Cで 60分間コンデンサ 素子を乾燥し、その後カーボンペーストおよび銀ペーストで導電性高分子層を覆い、 縦方向の端部から 3mmの箇所に陰極としての銀線を取り付け、更にエポキシ樹脂で 外装し、エージング処理を行ってアルミニウム固体電解コンデンサを得た。
[0107] 実施例 12
0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸カルシウム水溶液の代わりに、前記合成 例 2で調製した 0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸ストロンチウム水溶液(ρΗ6· 0)を使用した以外は全て実施例 11と同様の操作を行い、アルミニウム固体電解コン デンサを作製した。
[0108] 実施例 13
0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸カルシウム水溶液の代わりに、前記合成 例 4で調製した 0. 5mol/l濃度のクレゾ一ルスルホン酸カルシウム水溶液(pH6. 0) を使用した以外は全て実施例 11と同様の操作を行い、アルミニウム固体電解コンデ ンサを作製した。
[0109] 実施例 14
45%濃度の過硫酸アンモニゥム水溶液に代えて、 40%濃度の過硫酸アンモユウ ム水溶液と 70%濃度のフエノールスルホン酸 2—メチルイミダゾール水溶液(pH5. 0 )とを、容量比で 1 : 1となるように混合し、更にラウリルジメチルァミンオキサイドを 0· 1 %の濃度になるように添加して調製した酸化剤兼ドーパント溶液を用い、重合回数を 8回から 5回に変更した以外は全て実施例 11と同様の操作を行い、アルミニウム固体 電解コンデンサを作製した。
[0110] 比較例 7
0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸カルシウム水溶液の代わりに、 0. 5mol/l 濃度のフエノールスルホン酸ナトリウム水溶液(pH6. 0)を使用した以外は全て実施 例 11と同様の操作を行い、アルミニウム固体電解コンデンサを作製した。
[0111] 比較例 8
0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸カルシウム水溶液の代わりに、 0. 5mol/l 濃度のフエノールスルホン酸アンモニゥム水溶液(pH6. 0)を使用した以外は全て実 施例 11と同様の操作を行い、アルミニウム固体電解コンデンサを作製した。
[0112] 比較例 9
0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸カルシウム水溶液の代わりに、 0. 5mol/l 濃度の m—キシレンスルホン酸カルシウム水溶液(pH6. 0)を使用した以外は全て 実施例 11と同様の操作を行い、アルミニウム固体電解コンデンサを作製した。
[0113] 比較例 10
0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸カルシウム水溶液の代わりに、 0. 5mol/l 濃度の m—キシレンスルホン酸マグネシウム水溶液(pH6. 0)を使用した以外は全て 実施例 11と同様の操作を行い、アルミニウム固体電解コンデンサを作製した。
[0114] 比較例 11
0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸カルシウム水溶液の代わりに、 0. 5mol/l 濃度のプチルナフタレンスルホン酸マグネシウム水溶液 (PH6. 0)を使用した以外は 全て実施例 11と同様の操作を行い、アルミニウム固体電解コンデンサを作製した。
[0115] 比較例 12
40%濃度のパラトルエンスルホン酸第 2鉄のブタノール溶液と、 3, 4—エチレンジ ォキシチォフェンとを質量比 4 : 1で混合し、 10秒間激しく振った後、これに実施例 11 で用いたのと同じコンデンサ素子を素早く浸漬し、 5秒後に引き上げた。このコンデン サ素子を室温で 30分間放置した後、純水に浸漬して 30分間放置した。その後コン デンサ素子を引き上げ、 50°Cで 30分間乾燥した。
[0116] パラトルエンスルホン酸第 2鉄のブタノール溶液と 3, 4—エチレンジォキシチォフエ ンとの混合液へのコンデンサ素子の浸漬から、 50°Cで 30分間乾燥するまでの一連 の工程を 5回繰り返してコンデンサ素子表面の一部に導電性高分子層を形成し、そ の後、 150°Cで 60分間コンデンサ素子を乾燥し、カーボンペーストおよび銀ペースト で導電性高分子層を覆った後、縦方向の端部から 3mmの箇所に陰極としての銀線 を取り付け、更にエポキシ樹脂で外装し、エージング処理を行ってアルミニウム固体
電解コンデンサを得た。
[0117] 実施例 11〜; 14および比較例 7〜; 12のアルミニウム固体電解コンデンサについて、 静電容量および ESR (等価直列抵抗)を測定した。その結果を表 2に示すが、表 2の 結果は、静電容量、 ESRのいずれについても測定点数を 10個とし、数値はその 10 個の平均値を求めて四捨五入して示している。
[0118] 静電容量:
HEWLETT PACKARD社製の LCRメーター(4284A)を用い、 25°C、 120Hz で静電容量を測定した。
[0119] ESR:
HEWLETT PACKARD社製の LCRメーター(4284A)を用い、 25°C、 lOOkH zで ESRを測定した。
[0120] [表 2]
[0121] なお、表 2中、( * 2)は、コンデンサ素子の導電性高分子層形成予定箇所全体を、 導電性高分子層で覆うことができず、静電容量測定および ESR測定を実施しなかつ たことを意味している。
[0122] また、実施例 11〜; 14および比較例 12のアルミニウム固体電解コンデンサについて
、良品の中から無作為に選んだ 5個ずつに関し、 125°Cで 500時間放置後に、上記 と同じ方法で静電容量と ESRを測定した。その結果を表 3に示すが、表 3の結果は、 静電容量、 ESRのいずれについても測定点数 5個分の平均値を求めて四捨五入し て示している。
[0123] [表 3]
[0124] 更に、実施例 11〜; 14および比較例 12のアルミニウム固体電解コンデンサのうち、 表 3に結果を示した測定を行ったものとは別の 5個ずつについて、 85°C、 85%RHの 環境下に 1000時間放置した後に、上記と同じ方法で静電容量と ESRを測定した。 結果を表 4に示すが、その表 4の結果は、静電容量、 ESRのいずれについても測定 点数 5個分の平均値を求めて四捨五入して示している。
[0125] [表 4]
[0126] 表 2に示すように、比較例 7〜: 1 1のアルミニウム固体電解コンデンサでは、コンデン サ素子の導電性高分子層形成予定箇所全体を、導電性高分子層で覆うことができ
なかった。これに対し、実施例;!;!〜 14のアルミニウム固体電解コンデンサでは、フエ ノールスルホン酸由来のァニオンまたはクレゾ一ルスルホン酸由来のァニオンと遷移 金属カチオン以外の 2価以上のカチオンとの塩を含有する反応促進剤を使用して、 モノマーである 3, 4—エチレンジォキシチォフェンの重合反応を促進させることにより 、コンデンサ素子の導電性高分子層形成予定箇所全体を導電性高分子で均一に覆 うこと力 Sでき、良好にアルミニウム固体電解コンデンサを作製することができた。また、 表 3および表 4に示す結果から、実施例 11〜; 14のアルミニウム固体電解コンデンサ は、比較例 12のものに比べて、耐熱性および耐湿性が良好であることが分かる。
[0127] 更に、導電性高分子層の形成時に、酸化剤である過硫酸アンモニゥム水溶液に代 えて、酸化剤兼ドーパント溶液を用いた実施例 14のアルミニウム固体電解コンデン サでは、重合回数を減らしたにもかかわらず、実施例 11のアルミニウム固体電解コン デンサよりも特に ESRの値が優れており、少ない重合回数でより良好な特性のアルミ ニゥム固体電解コンデンサが得られていることも分かる。
[0128] <タンタル固体電解コンデンサでの評価〉
実施例 15
タンタル焼結体を 0. 1 %濃度のリン酸水溶液に浸漬した状態で、 20Vの電圧を印 加することにより化成処理を行って誘電体被膜を形成させた。次に、前記合成例 1で 調製した 0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸カルシウム水溶液に、上記のタンタ ル焼結体を浸潰し、 1分間放置した後引き上げて、 100°Cで 5分間乾燥した。その後 、 35%濃度の 3, 4—エチレンジォキシチォフェンのエタノール溶液に上記のタンタ ル焼結体を浸漬し、 1分後に取り出して室温で 5分間放置した。次に、 35%濃度の過 硫酸アンモニゥム水溶液に、上記のタンタル焼結体を浸漬して 5秒後に取り出し、室 温で 30分間放置して導電性高分子層を形成させた。その後、表面が導電性高分子 層で被覆されたタンタル焼結体を純水に浸漬し、 30分間放置した後に取り出し、 70 °Cで 30分間乾燥した。
[0129] フエノールスルホン酸カルシウム水溶液へのタンタル焼結体の浸漬から、上記の 70 °Cで 30分間乾燥までの一連の工程を 16回繰り返した後、カーボンペーストおよび銀 ペーストで導電性高分子層を覆って、タンタル固体電解コンデンサを作製した。
[0130] 実施例 16
0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸カルシウム水溶液の代わりに、前記合成 例 2で調製した 0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸ストロンチウム水溶液(ρΗ6· 0)を使用した以外は全て実施例 15と同様の操作を行い、タンタル固体電解コンデン サを作製した。
[0131] 実施例 17
0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸カルシウム水溶液の代わりに、前記合成 例 3で調製した 0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸バリウム水溶液(pH6. 0)を 使用した以外は全て実施例 15と同様の操作を行い、タンタル固体電解コンデンサを 作製した。
[0132] 実施例 18
0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸カルシウム水溶液の代わりに、前記合成 例 4で調製した 0. 5mol/l濃度のクレゾ一ルスルホン酸カルシウム水溶液(pH6. 0) を使用した以外は全て実施例 15と同様の操作を行い、タンタル固体電解コンデンサ を作製した。
[0133] 実施例 19
0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸カルシウム水溶液の代わりに、前記合成 例 5で調製した 0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸エチレンジァミン水溶液(pH 5. 0)を使用し、溶液の温度を 60°Cに保った以外は全て実施例 15と同様の操作を 行い、タンタル固体電解コンデンサを作製した。
[0134] 実施例 20
0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸カルシウム水溶液の代わりに、前記合成 例 6で調製したフエノールスルホン酸エチレンジァミンを 20%ポリスチレンスルホン酸 エチレンジァミン水溶液 (ρΗ5· 0)に 0· 5mol/l濃度になるよう溶解した溶液 (ρΗ5 . 0)を使用し、溶液の温度を 60°Cに保った以外は全て実施例 15と同様の操作を行 い、タンタル固体電解コンデンサを作製した。
[0135] 実施例 21
0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸カルシウム水溶液の代わりに、前記合成
例 7で調製したフエノールスルホン酸エチレンジァミンを 20%ポリスチレンスルホン酸 エチレンジァミン水溶液に 0. 5mol/l濃度になるよう溶解した溶液(5%濃度に希釈 したときの ρΗ1 · 5)を使用し、溶液の温度を 60°Cに保った以外は全て実施例 15と同 様の操作を行レ、、タンタル固体電解コンデンサを作製した。
[0136] 実施例 22
35%濃度の過硫酸アンモニゥム水溶液に代えて、 40%濃度の過硫酸アンモユウ ム水溶液と 70%濃度のフエノールスルホン酸 2 メチルイミダゾール水溶液(pH5. 0 )とを、容量比で 1: 1となるように混合して調製した酸化剤兼ドーパント溶液を用い、 重合回数を 16回から 10回に変更した以外は全て実施例 15と同様の操作を行い、タ ンタル固体電解コンデンサを作製した。
[0137] 実施例 23
35%濃度の過硫酸アンモニゥム水溶液に代えて、 40%濃度の過硫酸アンモユウ ム水溶液と 70%濃度のフエノールスルホン酸 2 メチルイミダゾール水溶液(pH5. 0 )とを、容量比で 1 : 1となるように混合し、更にデシルジメチルァミンオキサイドを 0· 2 %の濃度になるように添加して調製した酸化剤兼ドーパント溶液を用い、重合回数を 16回から 10回に変更した以外は全て実施例 15と同様の操作を行い、タンタル固体 電解コンデンサを作製した。
[0138] 実施例 24
35%濃度の過硫酸アンモニゥム水溶液に代えて、 40%濃度の過硫酸アンモユウ ム水溶液と 70%濃度のフエノールスルホン酸 4ーメチルイミダゾール水溶液(pH5. 0 )とを、容量比で 1 : 1となるように混合し、更にデシルジメチルァミンオキサイドを 0· 2 %の濃度になるように添加して調製した酸化剤兼ドーパント溶液を用い、重合回数を 16回から 10回に変更した以外は全て実施例 15と同様の操作を行い、タンタル固体 電解コンデンサを作製した。
[0139] 実施例 25
実施例 15と同様にして誘電体被膜を形成させたタンタル焼結体を、 35%濃度の 3 , 4 エチレンジォキシチォフェンのエタノール溶液に浸漬し、 1分後に取り出して室 温で 5分間放置した。次に、実施例 23で用いたのと同じ酸化剤兼ドーパント溶液に
上記タンタル焼結体を浸漬して 5秒後に取り出し、室温で 5分間放置した。その後、 前記合成例 1で調製した 0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸カルシウム水溶液( pH6. 0)に上記タンタル焼結体を浸漬して 5秒後に取り出し、室温で 30分間放置し て導電性高分子層を形成させた。その後、表面が導電性高分子層で被覆されたタン タル焼結体を純水に浸漬し、 30分間放置した後に取り出し、 70°Cで 30分間乾燥さ せた。
[0140] 3, 4—エチレンジォキシチォフェンのエタノール溶液へのタンタル焼結体の浸漬か ら、上記の 70°Cで 30分間乾燥までの一連の工程を 10回繰り返した後、カーボンぺ 一ストおよび銀ペーストで導電性高分子層を覆って、タンタル固体電解コンデンサを 作製した。
[0141] 実施例 26
35%濃度の過硫酸アンモニゥム水溶液に代えて、 40%濃度の過硫酸アンモユウ ム水溶液と 70%濃度のフエノールスルホン酸 2—メチルイミダゾール水溶液(pH5. 0 )とを、容量比で 1: 1となるように混合して調製した酸化剤兼ドーパント溶液を用い、 重合回数を 16回から 10回に変更した以外は全て実施例 19と同様の操作を行い、タ ンタル固体電解コンデンサを作製した。
[0142] 実施例 27
35%濃度の過硫酸アンモニゥム水溶液に代えて、 40%濃度の過硫酸アンモユウ ム水溶液と 70%濃度のフエノールスルホン酸 2—メチルイミダゾール水溶液(pH5. 0 )とを、容量比で 1: 1となるように混合して調製した酸化剤兼ドーパント溶液を用い、 重合回数を 16回から 10回に変更した以外は全て実施例 20と同様の操作を行い、タ ンタル固体電解コンデンサを作製した。
[0143] 実施例 28
35%濃度の過硫酸アンモニゥム水溶液に代えて、 40%濃度の過硫酸アンモユウ ム水溶液と 70%濃度のフエノールスルホン酸 2—メチルイミダゾール水溶液(pH5. 0 )とを、容量比で 1: 1となるように混合して調製した酸化剤兼ドーパント溶液を用い、 重合回数を 16回から 10回に変更した以外は全て実施例 21と同様の操作を行い、タ ンタル固体電解コンデンサを作製した。
[0144] 比較例 13
0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸カルシウム水溶液の代わりに、 0. 5mol/l 濃度のフエノールスルホン酸ナトリウム水溶液(pH6. 0)を使用した以外は全て実施 例 15と同様の操作を行い、タンタル固体電解コンデンサを作製した。
[0145] 比較例 14
0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸カルシウム水溶液の代わりに、 0. 5mol/l 濃度のフエノールスルホン酸アンモニゥム水溶液(pH6. 0)を使用した以外は全て実 施例 15と同様の操作を行い、タンタル固体電解コンデンサを作製した。
[0146] 比較例 15
0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸カルシウム水溶液の代わりに、 0. 5mol/l 濃度の m—キシレンスルホン酸カルシウム水溶液(pH6. 0)を使用した以外は全て 実施例 15と同様の操作を行い、タンタル固体電解コンデンサを作製した。
[0147] 比較例 16
0. 5mol/l濃度のフエノールスルホン酸カルシウム水溶液の代わりに、 0. 5mol/l 濃度の m—キシレンスルホン酸マグネシウム水溶液(pH6. 0)を使用した以外は全て 実施例 15と同様の操作を行い、タンタル固体電解コンデンサを作製した。
[0148] 比較例 17
40%濃度のパラトルエンスルホン酸第 2鉄のブタノール溶液と、 3, 4—エチレンジ ォキシチォフェンとを質量比 4 : 1で混合し、 10秒間激しく振った後、これに実施例 15 で用いたのと同じタンタル焼結体 (誘電体被膜形成後のタンタル焼結体)を素早く浸 漬し、 5秒後に引き上げた。このタンタル焼結体を室温で 30分間放置した後、純水に 浸漬して 30分間放置した。その後タンタル焼結体を引き上げ、 50°Cで 30分間乾燥 した。
[0149] パラトルエンスルホン酸第 2鉄のブタノール溶液と 3, 4—エチレンジォキシチォフエ ンとの混合液へのタンタル焼結体の浸漬から、 50°Cで 30分間乾燥するまでの一連 の工程を 5回繰り返してタンタル焼結体の表面に導電性高分子層を形成し、カーボ ンペーストおよび銀ペーストで導電性高分子層を覆って、タンタル固体電解コンデン サを作製した。
[0150] 実施例 15〜28および比較例 13〜17のタンタル固体電解コンデンサについて、上 記のアルミニウム固体電解コンデンサと同じ方法で静電容量および ESRの測定を行 つた。その結果を表 5に示すが、表 5の結果は、静電容量、 ESRのいずれについても 測定点数を 10個とし、数値はその 10個の平均値を求めて四捨五入して示している。
[0151] [表 5]
[0152] なお、表 5中、( * 3)は、タンタル焼結体の表面を導電性高分子層で覆うことができ ず、静電容量測定および ESR測定を実施しな力、つたことを意味して!/、る。
[0153] また、実施例 15〜28および比較例 17のタンタル固体電解コンデンサについて、良 品の中から無作為に選んだ 5個ずつに関し、 125°Cで 500時間放置後に、上記と同 じ方法で静電容量と ESRを測定した。その結果を表 6に示すが、表 6の結果は、静電 容量、 ESRのいずれについても測定点数 5個分の平均値を求めて四捨五入して示 している。
[0154] [表 6]
更に、実施例 15〜28および比較例 17のタンタル固体電解コンデンサのうち、表 6 に結果を示した測定を行ったものとは別の 5個ずつについて、 85°C、 85%RHの環 境下に 1000時間放置した後に、上記と同じ方法で静電容量と ESRを測定した。そ の結果を表 7に示すが、表 7の結果は、静電容量、 ESRのいずれについても測定点 数 5個分の平均値を求めて四捨五入して示している。
[0156] [表 7]
[0157] 表 5に示すように、比較例 13〜; 16のタンタル固体電解コンデンサでは、コンデンサ 素子であるタンタル焼結体の表面を導電性高分子で覆うことができな力 た。これに 対し、実施例 15〜28のタンタル固体電解コンデンサでは、フエノールスルホン酸由 来のァニオンまたはクレゾ一ルスルホン酸由来のァニオンと遷移金属カチオン以外 の 2価のカチオンとの塩を含有する反応促進剤を使用して、モノマーである 3, 4—ェ チレンジォキシチォフェンの重合反応を促進させることにより、コンデンサ素子である タンタル焼結体の表面を導電性高分子で均一に覆うことができ、良好にタンタル固体 電解コンデンサを作製することができた。
[0158] また、同じ反応促進剤を用いた実施例 15と実施例 22〜24との間で比較すると(い ずれも反応促進剤としてフエノールスルホン酸カルシウムを使用)、酸化剤溶液であ
る過硫酸アンモニゥム水溶液に代えて、フエノールスルホン酸 2—メチルイミダゾール やフエノールスルホン酸 4 イミダゾールなどの導電性高分子合成用ドーパントを含 んだ酸化剤兼ドーパント溶液を用いて導電性高分子を合成した実施例 22〜24は、 ドーパントを含まない酸化剤溶液を用いて導電性高分子を合成した実施例 15に比 ベて、重合回数を減らしても、タンタル固体電解コンデンサが良好に作製できており 、反応促進剤と共に酸化剤兼ドーパント溶液を用いたことによる効果が明らかであつ た。
[0159] 同様に、同じ反応促進剤を用いた実施例 26と実施例 19との間(いずれも反応促進 剤としてフエノールスルホン酸エチレンジァミンを使用)、実施例 27と実施例 20との 間〔レ、ずれも反応促進剤としてのフエノールスルホン酸エチレンジァミンを 20%ポリス チレンスルホン酸エチレンジァミン水溶液に溶解した溶液 (pH5)を使用〕、実施例 2 8と実施例 21との間〔いずれも反応促進剤としてのフエノールスルホン酸エチレンジ アミンを 20%ポリスチレンスルホン酸エチレンジァミン水溶液に溶解した溶液(5%濃 度に希釈したときの pHl . 5)を使用〕で比較すると、実施例 26は実施例 19よりも重 合回数を減らし、実施例 27は実施例 20よりも重合回数を減らし、実施例 28は実施 例 21よりも重合回数を減らしているにもかかわらず、タンタル固体電解コンデンサが 良好に作製できており、反応促進剤と共に酸化剤兼ドーパント溶液を用いたことによ る効果が明らかであった。また、表 6および表 7に示す結果から、実施例 15〜28のタ ンタル固体電解コンデンサは、比較例 17のものに比べて、耐熱性および耐湿性が良 好であることも分かる。
産業上の利用可能性
[0160] 以上説明したように、本発明によれば、導電性高分子合成の際のモノマーの重合 反応を促進することができ、かつ導電率が高い導電性高分子を合成できる反応促進 剤を提供すること力できる。また、本発明によれば、その導電性高分子合成用反応促 進剤を用いることによって、導電率が高ぐかつ耐熱性が優れた導電性高分子を提 供すること力 Sでき、その導電性高分子を固体電解質として用いることによって、長期 信頼性の高い固体電解コンデンサを提供することができる。