明 細 書
ステント及びその製造方法
技術分野
[0001] 本発明は、ステント及びその製造方法に関し、特に薬剤徐放性のステント及びその 製造方法に関する。
背景技術
[0002] 近年、生活習慣の欧米化に伴い、我が国においても虚血性心疾患 (狭心症、心筋 梗塞)が急速に増加しつつある。虚血性心疾患は、主として、心表面を走行する太い 冠動脈の動脈硬化症を基盤に、これに冠動脈血栓や冠れん縮が加わり惹起される。
[0003] 血管狭窄症の治療方法として、血管内で小型バルーンを拡張させ治療する血管形 成術 (PTA及び PTCA等。)が低侵襲治療法として広く行われている。しかし、この治 療法の場合、高い確率で繰り返し狭窄 (再狭窄)が生じる。この再狭窄率を低減する 手法として、ステントを留置する手技が近年普及している。
[0004] ステントは体内に留置して使用するため、生体成分に対する耐久性及び生体との 適合性が要求される。ステント等の医療用材料に耐久性を付与する方法として、ダイ ャモンド様薄膜 (DLC膜)を表面にコーティングする方法が知られている(例えば、特 許文献 1を参照。)DLC膜は、非常に平滑でィ匕学的に不活性な膜であるため、生体 成分と反応しにくいという特徴を有している。従って、ステントの基材表面に DLC膜を コーティングすることにより耐久性が高ぐ生体適合性も優れたステントが得られる。
[0005] 一方、ステント留置術においても、 20%〜30%程度の頻度で再狭窄が発生するこ とが報告されている。再狭窄が発生した場合には、再び PTCAを行う必要があり、再 狭窄の予防法及び治療法の確立は世界的な緊急課題である。
[0006] 再狭窄の予防方法として閉塞の発生を制限する薬剤によりステントの基材を被覆す る試みがなされている。例えば、特許文献 2には、薬剤を含有させたポリマー溶液を ステントの表面に噴霧したり、ステントをポリマー溶液に浸漬したりすることによりコー ティングする方法が開示されている。これにより、再狭窄を予防する薬剤が徐々に放 出されるステントが実現できる。
特許文献 1:特開平 10— 248923号公報
特許文献 2 :特表 2005— 531332号公報
特許文献 3:特表 2002— 517285号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0007] し力しながら、前記従来のステントには、コーティングしたポリマーが剥離してしまい 、継続的な薬剤の放出が困難であるという問題点がある。ステントは使用時に大きな 物理的変形を受けるため、基材表面へのポリマー溶液の噴霧等の方法により基材表 面にポリマーを物理的にコーティングした場合には、クラックが発生しポリマーが簡単 に剥離してしまう。
[0008] 特に、基材の表面が DLC膜に覆われている場合には、 DLC膜の表面が不活性で 平滑なため、ポリマーと DLC膜との物理的な相互作用が小さくなり、さらにポリマーが 剥離しやすくなる。このため、ステントから再狭窄を予防する薬剤を継続的に放出す ることができず、再狭窄を効果的に予防することができない。
[0009] 一方、リンカ一分子を用いて DLC膜の表面に生体分子をィ匕学的に固定する方法も 知られているが(例えば、特許文献 3を参照。)、この場合には生体分子を徐々に放 出することは困難である。また、リンカ一分子を用いる必要があり、生体分子の固定が 煩雑であると共に、固定できる生体分子の種類も限られるという問題がある。
[0010] 本発明は、前記従来の問題を解決し、基材の生体成分による劣化がなく且つ再狭 窄を予防する薬剤を継続的に放出するステントを実現できるようにすることを目的とす る。
課題を解決するための手段
[0011] 前記の目的を達成するため、本発明はステントを DLC膜の表面に導入された官能 基を介して、薬剤を徐放するポリマーを DLC膜の表面に固定した構成とする。
[0012] 具体的に本発明に係るステントは、環状のステント本体と、ステント本体の表面に形 成され且つ表面活性ィ匕処理されたダイヤモンド様薄膜と、ダイヤモンド様薄膜の表面 に固定され、再狭窄防止効果を有する薬剤を含有し且つ該薬剤を徐放するポリマー とを備免て ヽることを特徴とする。
[0013] 本発明のステントによれば、ステント本体の表面に形成され且つ表面活性ィ匕処理さ れたダイヤモンド様薄膜を備えて 、るため、基材の劣化がほとんどな 、ステントが実 現できる。また、ポリマーを強固に固定することができるので、ステントの使用時にステ ントが大きく変形しても、薬剤を徐放するポリマー力^テントの表面力 剥離すること がほとんどない。従って、ステントから継続的に薬剤が放出されるので、再狭窄が発 生しにく 、ステントを実現できる。
[0014] 本発明のステントにおいて、ダイヤモンド様薄膜は、膜厚が lOnm以上且つ 300η m以下であることが好ましい。このような構成とすることにより、ダイヤモンド様薄膜が ステント本体力も剥離することを防止することができ、長期の仕様に耐えるステントが 実現できる。
[0015] 本発明のステントは、ステント本体とダイヤモンド様薄膜との間に形成された中間層 をさらに備え、中間層は、珪素及び炭素の少なくとも一方を主成分とするァモルファ ス膜であることが好ましい。このような構成とすることにより、ダイヤモンド様薄膜とステ ントとの間の密着性が向上し、基材の劣化を確実に防ぐことが可能となる。
[0016] この場合において、中間層の膜厚は 5nm以上且つ lOOnm以下であることが好まし い。
[0017] 本発明のステントにお ヽてステント本体は、金属材料、セラミックス材料及び高分子 材料のいずれか 1つ又は 2つ以上力 なる複合体であることが好ましい。
[0018] 本発明のステントにおいて、ダイヤモンド様薄膜は表面に親水性の官能基が導入さ れていることが好ましい。このような構成とすることにより、ダイヤモンド様薄膜の表面 における生体適合性を向上させることができる。
[0019] 本発明のステントにおいて、ポリマーはダイヤモンド様薄膜の表面にイオン性相互 作用により固定されていていることが好ましい。このような構成とすることにより、ダイヤ モンド様薄膜の表面力 ポリマーが剥離することを確実に防止できる。
[0020] 本発明のステントにおいて、ポリマーは生体適合性ポリマーであることが好ましい。
[0021] この場合において生体適合性ポリマーは、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、ポリェチ レンォキシド、ポリエチレンカーボネート、ポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリ プロピレンカーボネート、ポリアミド、フイブリン、リン脂質の重合体、疎水親水ミクロ相
分離重合体、ヒドロキシェチルメタタリレートの重合体又は共重合体、ビュルピロリドン の重合体又は共重合体、フッ素含有モノマーの重合体又は共重合体、 Si含有モノマ 一の重合体又は共重合体及びビニルエーテルの重合体又は共重合体力 なる群か ら選択された少なくとも 1つのポリマー又はポリマーのエステルイ匕物であることが好ま しい。
[0022] 本発明のステントにおいて、ポリマーは生分解性ポリマーであることが好ましい。
[0023] この場合において、生分解性ポリマーは、ポリ乳酸、ポリダリコール酸、ポリ乳酸とポ リグリコール酸との共重合体、コラーゲン、ゼラチン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、 ポリアミノ酸、澱粉、ポリ ε一力プロラタトン、ポリエチレンサクシネート、及びポリ β—ヒドロキシアルカノエートからなる群力も選択された少なくとも 1つのポリマーであ る。
[0024] この場合において、生分解性ポリマーは可塑剤を含んでいることが好ましい。このよ うな構成とすることにより、生分解性ポリマーの生体内における分解を促進し、薬剤の 放出効率を向上させることができる。
[0025] 本発明のステントにおいて、薬剤は、抗血小板剤、抗凝固剤、アンチフイブリン、ァ ンチトロンビン、抗増殖剤、抗ガン剤、 HMG— CoA還元酵素の抑制剤、アルファィ ンターフェロン及び遺伝子工学を用いて改変した上皮細胞力 なる群力 選択され た少なくとも 1つの薬剤であることが好ましい。
[0026] 本発明に係るステントの製造方法は、ステント本体の表面にダイヤモンド様薄膜を 形成するダイヤモンド様薄膜形成工程と、ダイヤモンド様薄膜の表面に反応性の部 位を生起させる活性化工程と、活性ィ匕工程の後にダイヤモンド様薄膜の表面に再狭 窄防止効果を有する薬剤を含有するポリマーを固定するポリマー層形成工程とを備 えていることを特徴とする。
[0027] 本発明のステントの製造方法によれば、ダイヤモンド様薄膜の表面に反応性の部 位を生起させる活性ィ匕工程を備えているため、ステント本体の劣化を防止すると共に 、薬剤を含有するポリマーをダイヤモンド様薄膜の表面に強固に固定することができ る。従って、ステントの使用時にステントが大きく変形した場合においても、ポリマーが 剥離することを防ぐことができる。その結果、基材の劣化が少なく且つ継続的に薬剤
を放出するステントを実現できる。
[0028] 本発明のステントの製造方法は、ダイヤモンド様薄膜形成工程よりも前に、珪素及 び炭素を主成分とするアモルファス膜をステント本体の表面に形成する中間層形成 工程をさらに備えていることが好ましい。このような構成とすることにより、ダイヤモンド 様薄膜とステント本体との密着性を向上させることができる。
[0029] 本発明のステントの製造方法において、活性ィ匕工程はダイヤモンド様薄膜の表面 にプラズマを照射するプラズマ照射工程であることが好ま 、。この場合にお 、てプ ラズマは、アルゴン、キセノン、ネオン、ヘリウム、クリプトン、窒素、酸素、アンモニア、 水素、水蒸気、鎖式又は環式の炭化水素、酸素を含む有機化合物及び窒素を含む 有機化合物からなる群から選択された 1つの気体又は 2つ以上からなる混合気体の プラズマであることが好ましい。このような構成とすることにより、ダイヤモンド様薄膜の 表面に官能基を確実に導入することができる。
[0030] 本発明のステントの製造方法は、活性ィ匕工程とコーティング工程との間に、反応性 の部位と酸素を含む分子とを反応させることにより、ダイヤモンド様薄膜の表面に水 酸基を導入する表面処理工程をさらに備えて 、ることが好ま 、。
[0031] 本発明のステントの製造方法において、ポリマーは生体適合性ポリマー又は生分 解性ポリマーであることが好まし!/、。
発明の効果
[0032] 本発明に係るステントによれば、基材の生体成分による劣化がなく且つ再狭窄を予 防する薬剤を継続的に放出するステントを実現できる。
図面の簡単な説明
[0033] [図 1] (a)及び (b)は本発明の一実施形態に係るステントを示し、(a)は全体を示す斜 視図であり、 (b)は(a)の lb—lb線における断面図である。
[図 2]本発明の一実施例に係るステントの製造に用いたイオンィ匕蒸着装置を示す概 略図である。
[図 3]本発明の一実施例に係るステントの製造に用いたプラズマ照射装置を示す概 略図である。
符号の説明
10 ステント
11 ステント本体
12 ダイヤモンド様薄膜
13 ポリマー層
14 薬剤
21 プラズマ発生器
22 材料
31 チャンノ
32 真空ポンプ
33 電極
34 電極
35 高周波電源
36 マッチングネットワーク
発明を実施するための最良の形態
[0035] 本発明の一実施形態に係るステントについて図面を参照して説明する。図 1 (a)及 び (b)は一実施形態に係るステントであり、(a)はステントの概略の形状を示し、 (b) は(a)の lb— lb線における断面の構成を示して 、る。
[0036] 図 1 (a)及び (b)に示すように本実施形態のステント 10は、金属等力 なるステント 本体 11の表面にダイヤモンド様薄膜 (DLC膜) 12が形成されている。 DLC膜 12の 表面は活性化処理されている。活性化は、後で述べるようにプラズマ照射、紫外光( UV)照射及びオゾン処理等によって行う。
[0037] 表面が活性ィ匕処理された DLC膜 12の表面にはポリマー層 13がコーティングされ ている。 DLC膜 12の表面が活性ィ匕処理されているため、ポリマー層 13は DLC膜 12 の表面に強固に固定されている。ポリマー層 13は、再狭窄を防止するための薬剤 14 を含んでおり、薬剤 14は、ポリマー層 13から徐々に放出される。これにより、長期に わたり継続的に薬剤を放出するステントが実現できる。
[0038] 以下に、ステントの各構成要素についてさらに詳細に説明する。
[0039] ーステント本体
ステント本体 11には、特に制限はなく一般的な既知のものを用いることができる。例 えば、ステンレス鋼、ニッケルチタン(Ni— Ti)系合金、銅アルミニウムマンガン(Cu— Al— Mn)系合金、タンタリウム、コバルトクロム(Co— Cr)系合金、イリジウム、イリジゥ ムオキサイド又はニオブ等力 なる金属チューブをステントデザインにレーザを用い てカットし、電解研磨したものを用いることができる。また、金属チューブをエッチング する方法、平板金属をレーザカットして力 丸めて溶接する方法又は金属ワイヤーを 編みこむ方法等を用いて形成してもよ 、。
[0040] また、ステント本体 11は金属材料に限定されず、ポリオレフイン、ポリオレフインエラ ストマー、ポリアミド、ポリアミドエラストマ一、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマ一、ポ リエステル、ポリエステルエラストマ一、ポリイミド、ポリアミドイミド若しくはポリエーテル エーテルケトン等の高分子材料又はセラミックス若しくはヒドロキシアパタイト等の無 機材料を用いて形成してもよい。高分子材料又は無機材料をステントに加工する方 法は、本発明の効果に影響を及ぼすものではなぐ各材料に適した加工方法を任意 に選択することができる。
[0041] ダイヤモンド様薄膜の形成
ダイヤモンド様薄膜 (DLC膜) 12は、ダイヤモンドに類似したカーボンカゝらなる薄膜 であり、非常に緻密で且つ強固な膜であるため、生体成分力 ¾LC膜 12を浸透するこ とがない。このため、ステント本体 11の表面を DLC膜 12により覆うことにより、生体成 分によるステント本体 11の劣化を防止することができる。
[0042] また、ステント本体 11の材料表面には、ミクロスケール又はナノスケールの凹凸が 存在している。これらの凹凸は、生体成分が付着する際の起点となり、ステント本体 1 1への生体成分の付着は血栓等の原因となる。しかし、ステント本体 11を DLC膜 12 により覆うことにより凹凸を平滑ィ匕することができる。平滑で且つ不活性な DLC膜 12 により覆われたステント本体 11は、生体成分との相互作用が小さくなり、生体成分が ステントの表面に付着することを低減できる。
[0043] 本実施形態にぉ 、て DLC膜 12は、スパッタ法、 DCマグネトロンスパッタ法、 RFマ グネトロンスパッタ法、化学気相堆積法 (CVD法)、プラズマ CVD法、プラズマイオン 注入法、重畳型 RFプラズマイオン注入法、イオンプレーティング法、アークイオンプ
レーティング法、イオンビーム蒸着法又はレーザーアブレーシヨン法等の公知の方法 によりステント本体 11の表面に形成することができる。
[0044] DLC膜 12の膜厚は、生体成分によるステント本体 11の劣化を防止するという観点 力 は厚い方が好ましい。しかし、ステントは使用時に大きな変形が加えられる器具 であるため、 DLC膜 12の膜厚をあまりに厚くすると、変形の際にクラックが発生し、 D LC膜が剥離するという問題がある。従って、 DLC膜 12の膜厚は lOnm以上且つ 30 Onm以下とすればよぐ好ましくは 20nm以上且つ 80nm以下とする。
[0045] また、 DLC膜はステント本体 11の表面に直接形成することができる力 ステント本 体 11と DLC膜 12とをより強固に密着させるために、ステント本体 11と DLC膜 12との 間に中間層を設けてもよい。
[0046] 中間層は、ステント本体 11の材質に応じて種々のものを用いることができる力 珪 素(Si)と炭素 (C)、チタン (Ti)と炭素 (C)又はクロム (Cr)と炭素 (C)力 なるァモル ファス膜等の公知のものを用いることができる。
[0047] 中間層は、ステント本体 11の表面に均一に形成する必要があるため、ある程度の 膜厚が必要である。しかし、膜厚があまりに厚くなると成膜時間が長くなり生産性が低 下する。従って、中間層の膜厚は 5nm以上且つ lOOnm以下とすればよぐ好ましく は lOnm以上且つ 40nm以下とする。
[0048] 中間層は、公知の方法を用いて形成することができ、例えば、スパッタ法、 CVD法 、プラズマ CVD法、溶射法、イオンプレーティング法又はアークイオンプレーティング 法等を用いればよい。
[0049] —ダイヤモンド様薄膜の活性ィ匕一
DLC膜 12の表面は、先に述べたように平滑で且つ不活性であるため、 DLC膜 12 の表面にポリマーを直接コーティングしても、ポリマーはすぐに剥離してしまう。
[0050] 一方、 DLC膜 12の表面にプラズマ等を照射することにより、表面のダイヤモンド( 炭素 炭素)結合の一部を開裂させることができる。これにより、 DLC膜 12の表面に フリーラジカル又はイオン種を生起させることができる。フリーラジカル又はイオン種を 用いることにより、 DLC膜 12の表面にカルボキシル基又は水酸基等の反応しやす!/ヽ 官能基を容易に導入することができ、さらに他の官能基に置換することも可能である
[0051] DLC膜 12の表面に官能基を導入して活性ィ匕することにより、種々のポリマーを DL
C膜 12の表面に強固にコーティングすることが可能となる。
[0052] DLC膜 12の炭素 炭素結合の開裂は、例えばアルゴン (Ar)、ネオン (Ne)、ヘリ ゥム(He)、クリプトン(Cr)、キセノン (Xe)、窒素ガス (N )、酸素ガス (O )、アンモニ
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ァガス (NH )、水素ガス (H )又は水蒸気 (H O)等のガスにより発生させたプラズマ
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に DLC膜を曝すことにより行えばよい。ガスは、単独で用いても混合ガスとして用い てもよい。また、紫外光又はオゾン雰囲気における紫外光照射等によって炭素 炭 素結合を開裂させてもよい。
[0053] 開裂された炭素 炭素結合は、水と容易に反応するため、 DLC膜 12の表面に水 酸基又はカルボキシル基等を容易に導入することができる。また、ー且導入した水酸 基又はカルボキシル基等を他の官能基に変換することも容易である。例えば、 DLC 膜 12の表面に導入された水酸基は、 3 ァミノプロピルトリメトキシシラン等の官能性 アルコキシシラン誘導体、 2—メルカプト酢酸等の官能性カルボン酸誘導体、ジィソシ ァネート誘導体、 2—メタクリロイルォキシェチルイソシァネート、 2—アタリロイルォキ シェチルイソシァネート、 N—メタクリロイルスクシンイミド、又は N—アタリロイルスクシ ンイミド等と反応させることにより、アミノ基、カルボキシル基、イソシァネート基又はビ -ル基に容易に変換することができる。
[0054] DLC膜 12の表面に水酸基又はカルボキシル基を導入すれば、 DLC膜 12の表面 の親水性が向上する。これにより、 DLC膜 12自体の生体適合性を向上させることが でき好ましい。この場合において、さらに官能基の置換を行っても一部の水酸基又は カルボキシル基は置換されずに残存するため、 DLC膜 12自体の生体適合性が向上 するという効果は維持される。
[0055] プラズマ源となるガスに鎖式又は環式の炭化水素、酸素を含む有機化合物及び窒 素を含む有機化合物を用いれば、炭素 炭素結合が開裂すると共にプラズマ中の イオン種と反応するため、ガス種に応じた官能基を DLC膜 12の表面に直接導入す ることが可能である。
[0056] DLC膜 12の表面に導入する官能基の種類は、 DLC膜 12の表面に固定するポリ
マー層 13に用いるポリマーの種類に応じて適宜選択すればよい。例えば、 DLC膜 1 2の表面に導入する官能基をカルボキシル基、アミノ基又はリン酸基等のイオン性の 官能基とすれば、ポリマー中のイオン性の官能基を用いて DLC膜 12の表面にポリマ 一をイオン性相互作用(イオン結合)により固定することができる。
[0057] また、疎水性の官能基を導入することにより、ポリマーとの物理的な相互作用を高 め、ポリマーを物理的に固定してもよい。
[0058] さらに、例えば、ポリマーがイソシァネート基又はトリメトキシシラン若しくはトリェトキ シシラン等のトリアルキルォキシシラン基等の官能基を分子中に含む場合には、 DL C膜 12の表面に導入する官能基をァミノ基とすれば共有結合させることも可能である 。また 2官能性試薬を用いて DLC膜 12の表面に導入された官能基とポリマー中の官 能基とを結合してもよぐこの場合には 2官能性試薬の種類に応じて DLC膜 12の表 面に導入する官能基の種類を選択する。
[0059] ポリマー層
ポリマー層 13は、 DLC膜 12の表面にポリマーを固定することにより形成する。 DL C膜 12の表面に固定するポリマーは、活性ィ匕した DLC膜 12の表面に固定できること 及び薬剤をその中に含有し且つ薬剤を一定速度で放出する能力があるものが好まし い。さら〖こ、血小板が付着し難く且つ組織に対しても刺激性を示さないポリマーが好 ましい。
[0060] 例えば、ポリダリコール酸、乳酸とグリコール酸の共重合体、ポリ DL乳酸(DL— PL A)、ポリ L乳酸 (L— PLA)、ラクチド、ポリ力プロラタトン (PCL)、コラーゲン、ゼラチン 、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、ポリ一 L グルタミン酸、ポリ一 L リジン等のポリア ミノ酸、澱粉、ポリ一 ε—力プロラタトン、ポリエチレンサクシネート又はポリ一 j8—ヒド ロキシアルカノエート等の生分解性のポリマーを用いることができる。また、ポリ乳酸、 ポリグリコール酸又はポリ乳酸とポリダリコール酸との共重合体等の末端には極性官 能基が導入されて 、てもよ 、。
[0061] また、これに限らず、生体内で酵素的又は非酵素的に分解され、分解産物が毒性 を示さず、薬物の放出が可能なものであれば、いずれの生分解性ポリマーも利用可 能である。
[0062] さらに、生体による分解を促進し、薬剤の放出が効率よく行うために可塑剤が添カロ されていてもよい。可塑剤は、例えば酒石酸、リンゴ酸若しくはクェン酸のエステル系 の可塑剤又は他の生体に対する安全性が確認された可塑剤を用いればょ 、。
[0063] また、生体適合性を有する非分解性のポリマーを用いることも可能である。例えば、 ノ リレン、ノ リラスト、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、エチレンビュルァセテ ート、シリコン、ポリエチレンォキシド(PEO)、ポリブチルメチルアタリレート、ポリアタリ ルアミド、ポリエチレンカーボネート若しくはポリプロピレンカーボネート等のポリカー ボネート、セグメント化ポリウレタン等のポリウレタン又はポリエーテル型ポリウレタンと ジメチルシリコンとのブレンド若しくはブロック共重合体等の合成ポリマーを用いること が可能である。また、フイブリン等の天然のポリマーを用いてもよい。
[0064] なお、ポリマーの DLC膜への固定を行うために必要に応じて官能基の導入等を行 つてもよい。
[0065] 薬剤
ポリマー材料中に含有させる薬剤は、再狭窄の防止効果のある薬剤であればどの ようなものであってもよい。例えば抗血小板剤、抗凝固剤、アンチフイブリン、アンチト ロンビン、血栓溶解剤、抗増殖剤、抗ガン剤、免疫抑制剤、抗生物質及び抗炎症剤 等を用いることができる。以下に、具体的に薬剤の例を挙げる力 これは例示的に示 されたものであり、本発明を限定するものではない。
[0066] 抗血小板剤、抗凝固剤、アンチフイブリン及びアンチトロンビンとしては、へパリンナ トリウム、低分子量へパリン、ヒルジン、アルガトロバン、フオルスコリン、塩酸サルボタ レラート、パピプロスト、プロスタサイクリン、プロスタサイクリン同族体、デキストラン、 D フエ プロ アルグークロロメチルケトン(合成アンチトロンビン)、ディビリダモール 、グリコプロテイン IlbZlIIa血小板膜受容抗体、ビトロネクチン受容体拮抗物質及びト ロンビン防止剤等が挙げられる。
[0067] 血栓溶解剤としては、組織プラスミノゲン活性ィ匕因子、ストレプトキナーゼ及びゥロ キナーゼ等が挙げられる。
[0068] 抗増殖剤としては、アンギオぺプチン、カプトプリル、シラザプリル及びリシノプリル 等のアンギオテンシン変換酵素抑制剤、カルシウム溝阻止抗体、コルチシン、繊維
芽芽細細胞胞成成長長因因子子 ((FFGGFF))拮拮抗抗薬薬、、魚魚油油 ((オオメメガガ 33——脂脂肪肪酸酸))、、ヘヘススタタミミンン拮拮抗抗薬薬、、ロロババ ススタタテティィンン((HHMMGG—— CCooAA還還元元酵酵素素のの抑抑制制剤剤))、、メメトトトトレレキキササーートト、、ニニトトロロププルルシシドド、、ホホスス ホホジジエエスステテララーーゼゼ抑抑制制剤剤、、ププロロススタタググラランンジジンン抑抑制制剤剤、、セセララミミンン ((PPDDGGFF拮拮抗抗薬薬))、、セセロロ トトニニンン阻阻止止抗抗体体、、スステテロロイイドド、、チチォォププロロテテーーゼゼ抑抑制制剤剤、、トトリリァァゾゾロロピピリリミミジジンン ((PPDDGGFF拮拮抗抗 薬薬))、、酸酸化化窒窒素素、、オオーールルトトラランンススレレチチノノイインン酸酸、、 1133 シシススレレチチノノイインン酸酸並並びびにに 99 シシススレレ チチノノイインン酸酸 ((レレチチノノイインンドド))等等がが挙挙げげらられれるる。。
[0069] ままたた、、ナナイイトトロロジジェェンン ''ママススタターードド ((メメタタロロレレタタミミンン、、シシククロロホホススフフアアミミドド及及びびそそのの類類似似体体、、 メメルルフファァラランン及及びびククロロララムムブブシシルル等等をを含含むむ))、、エエチチレレンンィィミミンン、、メメチチルルメメララミミンン ((へへキキササメメチチ ルルメメララミミンン及及びびチチォォテテパパ等等をを含含むむ))、、ススルルホホンン酸酸アアルルキキルル類類 ブブススルルフファァンン複複合合物物、、二二 トトロロソソ尿尿素素類類 ((カカルルムムススチチンン((BBCCNNUU))、、 BBCCNNUU類類似似体体及及びびスストトレレププトトゾゾシシンン等等をを含含むむ)) 及及びびトトララゼゼンン ((ttrraazzeenneess)) ダダカカルルババジジンン((DDTTIICC))複複合合物物等等のの抗抗増増殖殖抗抗有有糸糸分分裂裂アアルル キキルルィィ匕匕薬薬もも用用いいるるここととががででききるる。。
[0070] ピピリリミミジジンン類類似似体体 ((フフルルォォロロウウララシシルル、、フフルルククススゥゥリリジジンン及及びびシシタタララビビンン等等))、、ププリリンン類類似似 体体 ((メメルルカカププトトププリリンン、、チチォォググァァニニンン、、ペペンントトススタタチチンン及及びび 22——ククロロロロデデオオキキシシアアデデノノシシンン 等等))及及びびそそのの他他のの抑抑制制因因子子ででももよよいい。。 白白金金配配位位錯錯体体 ((シシススブブララチチンン、、カカルルボボブブララチチンン)) 、、ププロロカカルルババジジンン、、ヒヒドドロロキキシシ尿尿素素、、ミミトト一一テテンン、、アアミミノノググルルテテチチミミドド又又ははホホルルモモンン類類((ェェ スストトロロゲゲンン等等をを含含むむ))等等のの抗抗増増殖殖有有糸糸分分裂裂代代謝謝拮拮抗抗物物質質ででももよよいい。。 LL ァァススパパララギギンン をを全全身身系系的的にに代代謝謝しし、、自自己己的的ににァァススパパララギギンンをを合合成成すするる機機能能ををももたたなないい各各種種細細胞胞をを 奪奪うう LL ァァススパパララギギナナーーゼゼ等等のの酵酵素素もも用用 、、るるここととががででききるる。。
[0071] 抗抗ガガンン剤剤ととししててははタタキキノノーールル、、タタキキソソテテーールル、、トトポポテテシシンン等等ののアアルルカカロロイイドド類類、、ァァドドレレ ァァシシンン、、ブブレレオオななどど抗抗生生物物質質類類、、 55—— FFUU等等のの代代謝謝拮拮抗抗物物質質及及びびビビンン力力アアルルカカロロイイドド 類類 ((ビビンンブブララススチチンン、、ビビンンククリリススチチンン及及びびビビノノレレルルビビンン))等等のの天天然然産産物物がが挙挙げげらられれるる。。
[0072] 免免疫疫抑抑制制剤剤ととししててはは、、シシククロロススポポリリンン、、タタククロロリリムムスス((FFKK—— 550066))、、シシロロリリムムスス((ララパパママイイ シシンン))、、ァァザザチチォォププリリンン及及びびミミココフフエエノノーールル酸酸モモフフエエチチルル等等がが挙挙げげらられれるる。。抗抗生生物物質質とと ししててはは、、ダダククチチノノママイイシシンン((ァァククチチノノママイイシシンン DD))、、ダダウウノノルルビビシシンン、、ドドキキソソルルビビシシンン及及びびィィ ダダルルビビシシンン))、、アアンントトララササイイククリリンン、、ミミトトザザンントトロロンン、、ブブレレオオママイイシシンン、、ププリリカカママイイシシンン((ミミトトララ
[0073] 抗抗炎炎症症剤剤ととししててはは、、アアススピピリリンン、、ジジピピリリダダモモーールル、、チチククロロビビジジンン、、ククロロピピドドググレレルル、、アアブブ
シキマブ、抗遊走薬(antimigratory)、抗分泌薬(ブレベルジン)、副腎皮質ステロイド (コルチソル、コルチゾン、フルド口コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、 6 α メ チルプレドニゾロン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、及びデキサメタゾン)、非ステロイ ド系薬 (サリチル酸誘導体、すなわち、アスピリン、ノ ラァミノフエノール誘導体、すな わち、ァセトミノフェン)、インドール酢酸及びインデン酢酸 (インドメタシン、スリンダク 及びエトダラック等)、ヘテロァリール酢酸(トルメチン、ジクロフェナク及びケトロラタ等
)、ァリールプロピオン酸 (イブプロフェン及びその誘導体)、アントラ-ル酸 (メフエナ ム酸及びメクロフエナム酸)、ェノール酸(ピロキシカム、テノキシカム、フエ-ルブタゾ ン及びォキシフェンタトラゾン)、ナブメトン並びに金化合物(オーラノフィン、金チォグ ルコース及び金チオリンゴ酸ナトリゥム)等が挙げられる。
[0074] 他に、アルファインターフェロン、血管形成剤、血管内皮細胞増殖因子 (VEGF)、 アンギオテンシン受容体遮断薬、酸化窒素供与体、アンチセンスオリゴヌクレオチド 類及びこれらの組み合わせ物、細胞周期抑制因子、 mTOR抑制因子、増殖因子信 号伝達キナーゼ抑制因子、レテノイド (retenoid)、サイクリン ZCDK抑制因子、 HM G補酵素レダクターゼ抑制因子 (スタチン類)並びにプロテアーゼ抑制因子等を用い ることちでさる。
[0075] また、これらの薬剤は単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。さらに、 薬剤そのものではなぐ遺伝子工学により種々の薬剤を分泌するように遺伝子を改変 した上皮細胞を用いてもょ 、。
[0076] 再狭窄防止効果を有する薬剤は、既知の方法によりポリマーに保持させればよい。
例えば、ゲル状のポリマーと所定の濃度の薬剤とを混合することにより、ポリマーに保 持させればよい。この場合、物理的な相互作用又はイオン性相互作用等によって薬 剤はポリマーに保持される。また、ポリマーの種類によってはポリマーの 3次元構造に 包摂されるようにしてもよい。ポリマーと薬剤とを混合した溶液等を用いて、ポリマーの DLC膜への固定を行えば、ポリマーによる薬剤の保持とポリマーの DLC膜への固定 とを同時に行うことができる。
[0077] ポリマーの固定
DLC膜 12の表面へのポリマーの固定は、 DLC膜 12を活性化したステント本体 11
をポリマー溶液に浸漬する方法又はポリマー溶液を DLC膜 12を活性ィ匕したステント 本体 11に噴霧若しくは滴下する方法等により行えばよい。特に、浸漬の場合には内 表面がポリマー溶液と接触しやすぐポリマーをステントに効率よく固定できるという効 果がある。
[0078] デイツビング又は噴霧等に用いるポリマー溶液の溶媒は、ポリマーの溶解性を有す る任意の溶媒を選択することができる。溶媒の揮発性等を調整するために 2つ以上の 溶媒を用いた混合溶媒としてもよい。また、ポリマーは溶媒に溶解している必要はな ぐ懸濁液、分散液等の状態であってもよい。さらに、液状のポリマーの場合には溶 媒を用いず直接用いることも可能である。また、ポリマーを溶融状態にして用いてもよ い。
[0079] ポリマー溶液の濃度は特に制限されず、ポリマー層 13の表面特性、必要とする薬 剤の保持量及び保持させた薬剤の放出挙動等を勘案して濃度を決定すればよい。
[0080] 最終的なポリマー層 13の厚さは、ステント表面におけるポリマー層 13の膜厚の均 一性と 、う観点からは厚 、方がょ 、が、あまりに厚 、とステント使用時にクラックが発 生する原因となるため、 0. 1 m以上且つ 200 μ m以下とし、好ましくは 1 μ m以上 1 00 μ m以下とする。
[0081] また、ポリマー層 13は複数の層力も構成されていてもよい。この場合、一部の層だ けが薬剤を含んでいてもよい。また、各層においてポリマーの種類を変えてもよい。 例えば、 DLC膜と接するアンダーコート層には、 DLC膜との密着性のよいポリマーを 用い、血液と触れるトップコート層のポリマーには、シリコン榭脂等の生体適合性材料 又はポリ乳酸等の生分解性ポリマーを用いればよい。また、へパリン等の抗血栓材を 含有するポリマーを用いてもよい。この場合、トップコート層のポリマーは、色相及び 光沢等の美的な効果を考慮してもよ 、。
[0082] (一実施例)
以下に、本発明に係るステントについて実施例を用いてさらに詳細に説明する。本 実施例においてステント本体 11には、長さが 19mm、径が 1. 5mm、セルの厚みが 7 5 mの Co— Cr合金製のステントを用いた。
[0083] 図 2は、本実施例において用いたイオン化蒸着装置を模式的に示したものであり、
真空チャンバ一の内部に設けられた直流アーク放電プラズマ発生器 21に、イオン源 である Ar並びにベンゼン (C H )ガスを導入することにより発生させたプラズマを、負
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電圧にバイアスしたターゲット 22に衝突させることによりターゲット 22の上に DLC膜 を固体ィ匕して成膜する通常のイオンィ匕蒸着装置である。
[0084] ステント本体 11を図 2に示すイオンィ匕蒸着装置のチャンバ内にセットし、チャンバ一 にアルゴンガス (Ar)を圧力が 10— 〜: LO— 3Pa ( 10— 3Torr〜: LO— 5Torr)となるように 導入した後、放電を行うことにより Arイオン発生させ、発生した Arイオンをステント本 体の表面に衝突させるボンバードクリーニングを約 30分間行った。
[0085] 続 、て、チャンバにテトラメチルシラン (Si (CH ) )を 3分間導入し、珪素(Si)及び
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炭素 (C)を主成分とするアモルファス状で膜厚が 20nmの中間層を形成する。
[0086] 中間層を形成した後、 C Hガスをチャンバ一に導入し、ガス圧を 10_1Paとする。 C
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Hを 30mlZminの速度で連続的に導入しながら放電を行うことにより C Hをイオン
6 6 6 化し、イオン化蒸着を約 2分間行、厚さ 30nmの DLC膜 12をステント本体 11の表面 に形成した。
[0087] DLC膜 12を形成する際の基板電圧は 1. 5kV、基板電流は 50mA、フィラメント電 圧は 14V、フィラメント電流は 30A、アノード電圧は 50V、アノード電流は 0. 6A、リフ レクタ電圧は 50V、リフレクタ電流は 6mAとした。また、形成時におけるステント本体 11の温度は約 160°Cであつた。
[0088] なお、中間層はステント本体 11と DLC膜 12との密着性を向上させるために設けて おり、ステント本体 11と DLC膜 12との密着性を十分に確保できる場合には省略して ちょい。
[0089] また、本実施例においては炭素源として C Hの単独ガスを用いたが、他の炭化水
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素原料、あるいは C Hを含む炭化水素原料と CF等のフロンガスとの混合ガスを用
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V、て、フッ素を含む DLC膜 12をステント本体 11の表面に形成してもよ 、。
[0090] 次に、ステント本体 11の表面に形成した DLC膜 12にプラズマを照射することにより
DLC膜 12の表面に官能基を導入した。図 3は本実施例にお 、て使用したプラズマ 照射装置を模式的に示して!/、る。
[0091] 図 3に示すようにプラズマ照射装置は、一般的なプラズマ照射装置であり、真空ポ
ンプ 32が接続されガス置換が可能なチャンバ一 31の底面及び胴部に電極 33及び 電極 34が設けられている。電極 33及び電極 34に、マッチングネットワーク 36を通し て高周波電源 35から高周波を印加することによりチャンバ一 31の内部にプラズマを 発生させる。
[0092] まず、 DLC膜 12を形成したステント本体 11をプラズマ照射装置のチャンバ一 31の 内部にセットし、アセチレンを流してチャンバ一 31の内圧を 133Paとした。続いて、高 周波電源 35 (アドテックプラズマテクノロジー製、 AX— 300型;周波数 13. 56MHz) を用いて 50Wの高周波を電極 33及び 34に印加して、チャンバ一 31の内部にプラズ マを発生させた。 DLC膜を形成したステントにプラズマを約 30秒間照射することによ り DLC膜 12の表面に官能基を発生させた。
[0093] また、本実施例において、 Ar又は酸素ガスを用いて、 DLC膜の表面にラジカルを 発生させ活性ィ匕させることも可能である。
[0094] 次に、薬剤 14を含有するポリマーを官能基を導入した DLC膜 12の表面に固定し、 ポリマー層 13を形成した。ポリマーには DL—ポリ乳酸を用い、薬剤 14にはラバマイ シンを用いた。プラズマ処理後、直ちにステントを 120rpmの速度で回転させながら、 その表面にポリマー及び薬剤を含む液を 0. 02mlZ分の速度で 8分間にわたりまん べんなく噴霧した。固定には 1. 5重量%の DL—ポリ乳酸、 0. 5重量%のラパマイシ ン及び 98重量0 /0のクロ口ホルムにより調製した溶液を用いた。噴霧終了後、ステント を窒素気流で 10分間乾燥し、さらに室温で 1昼夜減圧乾燥した。
[0095] 乾燥終了後、ステントの重量を測定し、ポリマーの固定量が 0. 54mgであることを 確認した。このステントを倍率 400倍の実態顕微鏡で観察した力 ポリマー層 13はス テント表面に均一にコ一ティングされており且つクラック及び剥離等の欠陥も観察さ れな力つた。次にステントをバルーンカテーテルに装着し、バルーンを加圧して、ステ ントの直径を 3. Ommまで拡張した。この時のステントの最大歪率は最大箇所で 40% であった。拡張後、カテーテルを抜き取り、ポリマー層 13を観察した力 ポリマー層 1 3にはクラックはなぐまたステント本体 11からのポリマー層 13の剥離も観察されなか つた o
[0096] 以上のように、本実施例のステントは動脈内膜肥厚を抑制し得る薬剤を含むポリマ
一が DLC膜に覆われたステントの表面に共有結合により強固に固定されている。従 つて、ステントが大きく変形した場合にも、ポリマー層にクラックが生じたり、ステントの 表面力も剥離することがない。その結果、継続的に薬剤を徐放することができ且つ基 材の劣化がほとんどな 、ステントを実現できる。
産業上の利用可能性
本発明に係るステント及びその製造方法は、基材の生体成分による劣化がなく且 つ再狭窄を予防する薬剤を継続的に放出するステントを実現でき、特に薬剤徐放性 のステント及びその製造方法等として有用である。