JP5659362B2 - 内皮細胞増殖性材料 - Google Patents

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Description

本発明は、内皮細胞増殖性材料に関し、特に内皮細胞の選択的な増殖性を有する内皮細胞増殖性材料に関する。
医療の発達と共に、血管内に留置するステントや、埋め込み式の人工心臓等の生体内で使用する医療器具の使用が増加している。しかし、医療器具を生体内に埋め込むと、生体が異物として認識するため、血栓が形成されるという問題がある。
医療器具に生じる血栓を低減する方法として、ヘパリン又はホスホリルコリン等の抗血栓性薬剤により医療器具をコーティングする方法が知られている。しかし、薬剤のコーティングは剥がれやすく効果が持続しないという問題がある。また、薬剤による副作用の問題も知られている。
そこで、薬剤にたよるのではなく、医療器具自体を抗血栓性の材料により形成したり、医療器具の表面に抗血栓性に優れた強固な皮膜を形成したりする方法が検討されている。中でも、ダイヤモンド様カーボン(DLC)膜をはじめとする炭素質膜により医療器具を覆う方法は、耐久性に優れているため特に注目されている。
さらに、炭素質膜の抗血栓性を向上させるために、炭素質膜の表面に親水性の官能基を導入したり、抗血栓性の薬剤を固定したりすることも検討されている(例えば、特許文献1を参照。)。
特開2007−195883号公報
しかしながら、炭素質膜の抗血栓性を検討する際に、血小板等の血球細胞との相互作用については検討されているが、血管内皮細胞との相互作用についてはほとんど検討されていない。
血管内皮細胞は外部からの刺激を受け、血液の線溶系動態を微妙に調整することが知られている。血管内皮細胞に機能異常が生じると線溶系の調整機能が狂い血栓が形成されてしまう。このため、医療器具の抗血栓性を向上するためには、血管内皮細胞に異常を生じさせないことが重要である。
また、ステントにより血管を拡張した場合、血管拡張時に内皮層に裂傷が生じるおそれがある。血栓を防止するためには内皮層に生じた裂傷を速やかに治癒させることが重要である。従って、ステント表面において内皮細胞が速やかに増殖することが好ましい。しかし、一般に炭素質膜は、鏡面状の平滑な表面を有している。このため、炭素質膜の表面においては、血管内皮細胞がほとんど増殖することができない。また、抗血栓性の薬剤等を表面に担持させたりするとさらに、血管内皮細胞の増殖を抑えることになる。
一方、血管平滑筋細胞が異常増殖すると、血管の再狭窄が生じることが知られている。このため、単純に細胞の増殖性を向上させるだけではなく、血管内皮細胞の増殖性を選択的に向上させる必要がある。
本発明は、前記従来の課題を解決し、血管内皮細胞の増殖性を選択的に向上した内皮細胞増殖性材料を実現できるようにすることを特徴とする。
前記の目的を達成するため、本発明は内皮細胞増殖性材料を、炭素質膜の表面にプラズマ処理層を備えている構成とする。
具体的に、本発明に係る第1の内皮細胞増殖性材料は、基材の表面に形成され、炭素が互いに結合して形成された膜本体と、膜本体の表面に形成され、膜本体を構成する炭素と結合した窒素及び酸素を有するプラズマ処理層とを備え、プラズマ処理層における窒素の酸素に対する比率は、0.3以上であることを特徴とする。
第1の内皮細胞増殖性材料は、窒素の酸素に対する比率が0.3以上であるプラズマ処理層を備えている。これにより、アミノ基等の窒素を有する官能基と、カルボキシル基等の酸素を有する官能基が材料の表面に形成されていると考えられる。従って、内皮細胞の適合性に優れた表面となり、内皮細胞が平滑筋細胞よりも増殖しやすくなる。その結果、内皮細胞の選択的な増殖性に優れた内細胞増殖性材料が実現できる。
第1の内皮細胞増殖性材料は、膜本体の表面におけるゼータ電位が−20mV以上であってもよい。
本発明に係る第2の内皮細胞増殖性材料は、基材の表面に形成され、炭素が互いに結合して形成された膜本体と、膜本体の表面に形成され、膜本体を構成する炭素と結合した酸素を有するプラズマ処理層とを備え、プラズマ処理層における酸素の炭素に対する比率は、0.1以上であることを特徴とする。
第2の内皮細胞増殖性材料は、酸素の炭素に対する比率が0.1以上であるプラズマ処理層を備えている。これにより、カルボキシル基等の酸素を有する官能基が材料の表面に形成されていると考えられる。従って、内皮細胞の適合性に優れた表面となり、内皮細胞が平滑筋細胞よりも増殖しやすくなる。その結果、内皮細胞の選択的な増殖性に優れた内細胞増殖性材料が実現できる。
第2の内皮細胞増殖性材料は、膜本体の表面におけるゼータ電位が−30mV以下であってもよい。
第1及び第2の内皮細胞増殖性材料において、プラズマ処理層の表面における内皮細胞の増殖率は、平滑筋細胞の増殖率よりも高いことが好ましい。
この場合において、内皮細胞の増殖率は、平滑筋細胞の増殖率の1.1倍以上であることが好ましい。
本発明に係る内皮細胞増殖性材料によれば、血管内皮細胞の選択的な増殖性を有する内皮細胞増殖性材料を実現できる。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、第1の実施形態に係る内皮細胞増殖性材料の断面構成を示している。内皮細胞増殖性材料とは、内皮細胞の選択増殖性に優れた材料である。図1に示すように、本実施形態の内皮細胞増殖性材料は、基材31を覆う炭素質膜32であり、炭素質膜32の表面にはプラズマ処理層32Aが形成されている。
基材31は、どのような材質であってもよい。具体的には、特に限定されるものではないが例えば、鉄、ニッケル、クロム、銅、チタン、白金、タングステン又はタンタル等の金属を基材として用いることができる。また、これらの合金である、SUS316L等のステンレス鋼、Ti−Ni合金若しくはCu−Al−Mn合金等の形状記憶合金、Cu−Zn合金、Ni−Al合金、チタン合金、タンタル合金、プラチナ合金又はタングステン合金等の合金を用いることもできる。また、アルミニウム、シリコン若しくはジルコン等の酸化物、窒化物若しくは炭化物等の生体不活性なセラミックス又はアパタイト若しくは生体ガラス等の生体活性を有するセラミックスでもよい。さらに、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、高密度ポリエチレン、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリカーボネート樹脂若しくはポリスルホン等の高分子樹脂又はポリジメチルシロキサン等のシリコンポリマー若しくはポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系ポリマー等であってもよい。
また、形状もどのような形状であってもよく、医療器具等の状態に成形されたものであっても、板材、棒材又は線材等の成形前の材料の状態であってもよい。
炭素質膜32は、ダイヤモンド様カーボン(DLC)膜等の炭素原子同士が結合して形成された膜である。また、シリコン(Si)又はフッ素(F)等を含有していてもよい。
炭素質膜32の膜厚は、特に限定されるものではないが、0.005μm〜3μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.01μm〜1μmの範囲である。
炭素質膜32は、基材31の上に直接形成されていても、中間層を介在させて形成されていてもよい。中間層は、基材の種類に応じて種々のものを用いることができるが、シリコン(Si)と炭素(C)、チタン(Ti)と炭素(C)又はクロム(Cr)と炭素(C)からなるアモルファス膜等の公知のものを用いることができる。その厚みは特に限定されるものではないが、0.005μm〜0.3μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.01μm〜0.1μmの範囲である。
プラズマ処理層32Aは、炭素質膜32の表面にプラズマ照射することにより形成されており、炭素原子と結合した窒素(N)と酸素(O)とを含んでいる。
プラズマ処理層32Aに導入された窒素がどのような状態となっているかは明確ではない。しかし、アミノ基、アミド基及びイミド基等の窒素を含む官能基(窒素性官能基)を形成していると考えられる。窒素性官能基の詳細な分析は困難であるが、X線光電子分光(XPS)測定においてN1sピークは、398.9eVに出現した。これは、アミノ基とアミド基のN1sの束縛エネルギー(400±1eV)であるためアミノ基を含む官能基が炭素質膜の表面に生成されていると考えられる。
同様に、XPS測定の結果から酸素は、C−O、C=O及びC(=O)−O等の酸素を含む官能基(酸素性官能基)を形成していると考えられる。
図2は、XPS測定により求めたプラズマ処理層32Aの窒素の酸素に対する比率(N/O)と、血管内皮細胞(ECs)及び血管平滑筋細胞(SMCs)の増殖率との関係を示している。
XPS測定には、日本電子株式会社製の光電子分光装置JPS−9010MCを用いた。X線源にはAlを用い、加速電圧が12.5kVで、エミッション電流が17.5mAの条件でX線を発生させた。試料中から任意に選択した直径5mmのエリアについて測定を行った。また、X線を試料に対して垂直に入射させ、検出角度を試料面に対して90度とすることにより、5nm程度の深さまでの組成を測定している。
結合エネルギーの測定領域は、274eV〜294eV、389eV〜409eV及び522eV〜542eVとし、それぞれC1s、N1s及びO1sのピークを得た。得られたピークの面積比を比較することにより炭素を基準とする酸素の存在比O/C及び炭素を基準とする窒素の存在比N/Cを求めた。
細胞の増殖率は次の様にして求めた。N/Oの値が異なる種々の炭素質膜がコートされた直径15mmのカバーグラスを70%エタノールにより滅菌した後、24穴の細胞培養用マルチプレート(Costar 3516、コーニング社)の底に置き、超純水により3回洗浄した。カバーグラスの表面に人冠動脈由来の内皮細胞(Cell Applications社:HCAEC)及び平滑筋細胞(Cell Applications社:HCASMC)を1×104cell/well(500μL)の密度で播種した。播種の後、温度を37℃とし、5%炭酸ガス雰囲気で4日間継続して培養を行った。培地には、Cell Applications社より販売されている各細胞専用の培地を使用し、培地交換は毎日行った。4日間培養した後の細胞増殖率をCell-Counting-Kit8(同仁化学製)を用いて求めた。測定法はキットに添付のマニュアルに従い行った。各炭素質膜における増殖率の比較は、増殖した細胞数に対応する細胞内のミトコンドリアの活性により生じるWST-8 frmazanの濃度(吸光度)をマイクロプレートリーダーを用い求め、未処理の炭素質膜における吸光度を100%とし、これに対する各サンプルの%増殖率を算出すことにより増殖性を比較検討した。
図2に示すように、プラズマ処理層32Aを有し、表面に窒素性官能基が導入された炭素質膜は、SMCsの増殖率はほとんど変化していない。一方、ECsの増殖率は、N/Oの値が大きくなるほど高くなった。これは、炭素質膜の表面にプラズマ処理により窒素と酸素とが導入されたプラズマ処理層を形成することにより、SMCsの増殖率を高くすることなく、ECsの増殖率を選択的に高くできることを示している。つまり、プラズマ処理層32Aを形成することにより、さらに、ECsの増殖性を向上した内皮細胞増殖性材料が実現できる。
ステント等の場合には、ECsの増殖率は高い方が、ステントのプラットホームが短時間に内皮細胞で覆われるため、血栓症の発生リスクが低くなる。しかし、血管フィルタ等の場合には、内皮細胞の増殖率が高すぎても詰まり等が発生するおそれがある。このため、N/Oの値は用途に応じて適宜選択すればよい。但し、ECsの増殖率がSMCsの増殖率の1.1倍以上となるN/Oが0.3以上の範囲とすることが好ましい。また、N/Oが1.5程度以下の範囲であれば製造は容易である。
このように窒素と酸素とを含むプラズマ処理層32Aを形成することによりECsの増殖率が高くなる理由は明確ではない。しかし、先に述べたように、プラズマ処理層32Aに導入された窒素は、窒素性官能基として導入され、特にアミノ基となっていると考えられる。また、酸素の一部はカルボキシル基となっていると考えられる。このように、プラズマ処理層32Aがアミノ基とカルボキシル基とを有することによりECsの増殖率が高くなるのではないかと推測される。
図3は、プラズマ処理層32Aを形成した炭素質膜32のゼータ電位と細胞増殖率との関係を示している。図3に示すように、プラズマ処理層を有していない未処理の炭素質膜よりもゼータ電位が高くなると、ECsの増殖率は大きくなるが、SMCsの増殖率はほとんど変化していない。このことからも、プラズマ処理層32Aに導入された窒素の少なくとも一部がアミノ基となっており、アミノ基の導入量が多いほどSMCsの増殖率が高くなるのではないかと推測される。
ゼータ電位の値は、高いほどECsの増殖率が高くなり好ましいが、少なくともECsの増殖率とSMCsの増殖率とに差が認められる−20mV以上とすればよい。
ゼータ電位の測定には、大塚電子株式会社製のゼータ電位・粒径測定システムELS−Zを用いた。炭素質膜が形成された試料を平板試料用セルに密着させ、セル内にモニタ用粒子を注入した。モニタ用粒子は10mMの塩化ナトリウム(NaCl)溶液中に分散させた大塚電子株式会社製のものを用いた。セル深さ方向の各レベルについてモニタ粒子の電気泳動を行い、セル内部の見かけの速度分布を測定した。電気泳動は、平均電場が17.33V/cmで、平均電流が1.02mAの条件で行った。得られた見かけの速度分布を森・岡本の式に基づいて解析することにより、炭素質膜表面の表面電位を求めた。なお、平板試料用セルは、セル表面の電荷の影響を抑えるため、ポリアクリルアミドによりコーティング処理して用いた。
以下に、本実施形態に係る内皮細胞増殖性材料の製造方法の一例を示す。まず、基材31の表面に炭素質膜32を形成する。炭素質膜32は、スパッタ法、DCマグネトロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法、化学気相堆積法(CVD法)、プラズマCVD法、プラズマイオン注入法、重畳型RFプラズマイオン注入法、イオンプレーティング法、アークイオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法又はレーザーアブレーション法等の既知の方法により形成すればよい。
例えば、スパッタ法により形成する場合には、まず、金属板等の基材31をイオン化蒸着装置のチャンバ内にセットし、ボンバードクリーニングを約30分間行う。ボンバードクリーニングは、チャンバーにアルゴンガス(Ar)を圧力が10-1Pa〜10-3Pa(10-3Torr〜10-5Torr)となるように導入した後、放電を行うことによりArイオン発生させ、発生したArイオンを基材の表面に衝突させることにより行えばよい。
続いて、チャンバにテトラメチルシラン(Si(CH34)を3分間導入し、珪素(Si)及び炭素(C)を主成分とするアモルファス状で膜厚が20nmの中間層を形成する。
中間層を形成した後、C66ガスをチャンバーに導入し、ガス圧を10-1Paとする。C66を30ml/分の速度で連続的に導入しながら放電を行うことによりC66をイオン化し、イオン化蒸着を約2分間行う。これにより、厚さが30nmのDLC膜である炭素質膜32を基材31の表面に形成する。
炭素質膜32を形成する際のターゲット電圧は例えば、1.5kV、ターゲット電流は50mA、フィラメント電圧は14V、フィラメント電流は30A、アノード電圧は50V、アノード電流は0.6A、リフレクタ電圧は50V、リフレクタ電流は6mAとすればよい。また、形成時における基材31の温度は約160℃とすればよい。
なお、基材31と炭素質膜32との密着性を向上させるために中間層を設ける例を示したが、基材31と炭素質膜32との密着性を十分に確保できる場合には省略してもよい。
次に、炭素質膜32にプラズマを照射しプラズマ処理層32Aを形成する。プラズマ照射は、例えば、図4に示すような平行平板型のプラズマ照射装置により行えばよい。プラズマ照射装置のチャンバ10内に炭素質膜を形成した基材31をセットした後、チャンバ10内の圧力を所定の圧力まで排気する。チャンバ10内の圧力を高真空状態とする場合には、ターボ分子ポンプを用いて排気を行えばよい。次に、チャンバ10内にガスを所定の流量で導入し、平行平板電極12Aと12Bとの間に高周波電力を印加することによりプラズマを発生させる。高周波電力は、マッチングボックス14を介して接続された高周波電源15を用いて印加すればよい。ガス流量の調整はマスフローコントローラ13により行えばよい。
窒素と酸素とを含むプラズマ処理層32Aは、アンモニアのプラズマを照射することにより形成すればよい。また、アルゴン(Ar)、酸素(O2)若しくはアセチレン(C22)又はこれらの混合ガス等の他のプラズマを照射した後に、アンモニアのプラズマを照射してもよい。
また、アンモニアに代えて他の塩基性窒素含有化合物を用いることも可能である。塩基性窒素含有化合物としては、一般式がNR123により示される有機アミン類(但し、R1、R2及びR3は水素、−CH3、−C25、−C37又は−C48であり、R1、R2及びR3は互いに同一であっても、異なっていてもよい。)又はベンジルアミン及びその2級、3級アミン等が挙げられる。但し、アンモニアがコスト、取り扱いの容易さから好ましい。
プラズマ照射時におけるチャンバ内の到達真空度が高い方が、ゼータ電位を高くすることができ好ましい。これは、チャンバ内の到達真空度を高くすることにより、空気中の酸素によるカルボキシル基の生成を抑えることができるためではないかと考えられる。このため、到達真空度を5×10-3Pa程度としてもよい。但し、到達真空度が2Pa程度であってもゼータ電位が十分高いプラズマ処理層を得ることが可能である。
なお、プラズマ照射装置は、どのような構造のものを用いてもよい。また、放電形式についても、どのようなものを用いてもよく、例えば平行平板方式、アフターグロー放電方式、電磁誘導型及び有磁場型等を用いればよい。プラズマ照射条件は特に限定されない。例えば、プラズマ発生用の電源としては、商用周波数(50Hz又は60Hz)、高周波(ラジオ周波数)又はマイクロ波領域等の各種の電源周波数を用いることができる。さらに、原料ガスの圧力制御方法や供給構造についても特に限定するものではない。しかし、であまりエッチングレートが大きいプラズマ照射条件を用いると、炭素質膜にダメージを与えるおそれがある。
(第2の実施形態)
以下に、本発明の第2の実施形態について図面を参照して説明する。図5は、第2の実施形態に係る内皮細胞増殖性材料の断面構成を示している。図5において図1と同一の構成要素には同一の符号を附すことにより説明を省略する。
図5に示すように、本実施形態の内皮細胞増殖性材料は、基材31を覆う炭素質膜32であり、炭素質膜32の表面にはプラズマ処理層32Bが形成されている。本実施形態のプラズマ処理層32Bは、プラズマ処理により形成された炭素原子と結合した窒素(N)成分をほとんど含まず、酸素(O)成分を含む層である。
図6は、XPS測定により求めたプラズマ処理層32Bの酸素の炭素に対する比率(O/C)と、血管内皮細胞(ECs)及び血管平滑筋細胞(SMCs)の増殖率との関係を示している。XPS測定により得られた窒素の量は1at.%以下でありほぼ痕跡量であった。
窒素成分をほとんど含まず、酸素を含むO/Cの値が0.1以上のプラズマ処理層を形成することにより、図6に示すようにSMCsの増殖率よりもECsの増殖率が高くすることができた。
O/Cの値が0.1〜0.4程度の範囲において、SMCsの増殖率よりもECsの増殖率が高くなる理由は不明である。しかし、この領域では、窒素と酸素との両方を含む場合とは異なる機構により、ECsの増殖率が高くなっていると考えられる。
図7は、プラズマ処理層のゼータ電位とECs及びSMCsの増殖率との関係を示している。図7に示すように、プラズマ処理層を有していない未処理の炭素質膜よりもゼータ電位が低くなると、ECsの増殖率が高くなっている。一方、SMCsの増殖率は、ゼータ電位が低くなってもほとんど増加していない。このことから、酸素性官能基のうちC(=O)−O成分が多い方が、ECsの増殖率が高くなるのではないかと考えられる。
以上のように、窒素をほとんど含まず、O/Cの値が0.1以上のプラズマ処理層を形成することにより、SMCsの増殖率を高くすることなく、ECsの増殖率を高くすることができ、抗血栓性に優れた内皮細胞増殖性材料を実現できる。また、ゼータ電位は未処理の炭素質膜よりも低い−30mV以下とすることが好ましい。
このような、O/Cの値が大きいプラズマ処理層32Bを形成する場合には、第1の実施形態と同様の方法により形成した炭素質膜に、酸素プラズマを照射すればよい。プラズマ処理装置は第1の実施形態と同様のものを用いることができる。また、アルゴン等の不活性ガス又はアセチレン等の炭化水素系ガスのプラズマを照射した後、酸素プラズマを照射したり、これらのガスと酸素との混合ガスのプラズマを照射してもよい。酸素プラズマを照射せず、アルゴン等の不活性ガスのプラズマを照射した場合にも、空気中の酸素によりプラズマ処理層に酸素を導入することが可能である。
各実施形態に示した内皮細胞増殖性材料は、ステント、血管フィルタ、人工弁、人工血管、ステントグラフト、ペースメーカー及び長期埋め込み型血管留置カテーテル等の医療器具並びに人工心臓等の人工臓器に用いることができる。
本発明に係る内皮細胞増殖性材料は、血管内皮細胞の増殖性を選択的に向上でき、内皮細胞の選択的な増殖性を有する内皮細胞増殖性材料等として有用である。
本発明の第1の実施形態に係る内皮細胞増殖性材料を示す断面図である。 本発明の第1の実施形態に係る内皮細胞増殖性材料における窒素の酸素に対する比率と細胞の増殖率との関係を示すグラフである。 本発明の第1の実施形態に係る内皮細胞増殖性材料のゼータ電位と細胞の増殖率との関係を示すグラフである。 本発明の第1の実施形態に係る内皮細胞増殖性材料の製造に用いるプラズマ照射装置の一例を示す概略図である。 本発明の第2の実施形態に係る内皮細胞増殖性材料を示す断面図である。 本発明の第2の実施形態に係る内皮細胞増殖性材料における酸素の炭素に対する比率と細胞の増殖率との関係を示すグラフである。 本発明の第2の実施形態に係る内皮細胞増殖性材料のゼータ電位と細胞の増殖率との関係を示すグラフである。
符号の説明
10 チャンバ
12A 平行平板電極
13 マスフローコントローラ
14 マッチングボックス
15 高周波電源
31 基材
32 炭素質膜
32A プラズマ処理層
32B プラズマ処理層

Claims (3)

  1. 基材の表面に形成され、炭素が互いに結合して形成された膜本体と、
    前記膜本体の表面に形成され、前記膜本体を構成する炭素と結合した窒素及び酸素を有するプラズマ処理層とを備え、
    前記プラズマ処理層における、前記膜本体を構成する炭素と結合した窒素の、前記膜本体を構成する炭素と結合した酸素に対する比率は、0.3以上であり、
    前記プラズマ処理層の表面における内皮細胞の増殖率は、平滑筋細胞の増殖率よりも高いことを特徴とする内皮細胞増殖材料。
  2. 前記膜本体の表面におけるゼータ電位が−20mV以上であることを特徴とする請求項1に記載の内皮細胞増殖材料。
  3. 前記内皮細胞の増殖率は、前記平滑筋細胞の増殖率の1.1倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の内皮細胞増殖材料。
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