明 細 書
ガラス物品およびその製造方法
技術分野
[0001] 本発明は、適度に低い可視光透過率を有するガラス物品に関する。特に、乗り物 の窓に、プライバシー保護用窓ガラスとして用いて有用な、灰色系の色調を有するガ ラス物品に関する。本発明は、さらに、そのガラス物品の製造方法に関する。
背景技術
[0002] 近年、自動車用窓ガラスとして様々な色調のガラスが提案されている。そのうち自 動車後部窓ガラスには、プライバシー保護の見地から比較的可視光透過率の低 ヽガ ラスが好んで用いられる。このようなガラスには次のようなものがある。
[0003] 特開 2001— 19471号公報には、 Fe O (全鉄)を 0. 7〜1. 6wt%、 FeOを 0. 10
2 3
〜0. 23wt%、 CoOを 0. 010〜0. 100wt%、 NiOを 0. 010〜0. 100wt%、 Seを 0〜0. 0008wt%含む濃グリーン色ガラスが開示されている。
[0004] 特表 2003— 522706号公報には、 Fe Oを 0. 25〜0. 65重量0 /0、 CoOを 150〜
2 3
250重量 ppm、 Seを 5重量 ppm未満含む、 4. 85mmの厚さで全光透過率が 15% 以上のグレーガラス組成物が開示されている。
[0005] 本出願人は、特開平 10— 114540号公報で、 1. 2〜2. 2重量%の Fe Oに換算
2 3 した全酸ィ匕鉄(T— Fe O )、 0. 001〜0. 03重量0 /0の CoO、 0〜0. 0008重量0 /0の
2 3
Se、及び 0〜0. 2重量%の?^0を含む、中性色に近い青緑色系ないし深緑色系を 有する紫外線赤外線吸収低透過ガラスを開示した。
[0006] 周知な灰色系色調を有するガラスは、 V、ずれも高 、濃度のセレンを含有して 、た。
セレンは環境に与える影響が大きぐかつ非常に揮散し易い物質である。そこでセレ ンの使用は避けることが好ま 、。
[0007] 本出願人が特開平 10— 114540号公報で開示したガラスでは、セレンの含有量が 少ないが、その色調は青緑色系ないし深緑色系であり、灰色色調のガラスは得られ ない。
[0008] 特開 2001—19471号公報に開示されているガラスもまた、セレンの含有量が少な
いが、その色調は濃グリーン色に限定されてしまう。
[0009] また、特表 2003— 522706号公報に開示されているガラス組成物は、セレンの含 有量が少なぐかつ色調はグレーである。しかし、このガラス組成物には、 Fe Oの含
2 3 有量が比較的少な 、ために、紫外線透過率が高くなりすぎると 、う問題がある。 発明の開示
[0010] これらの状況に鑑み、本発明は、灰色系の色調を有し、適度に低い可視光透過率 を有するガラス物品を提供することを目的とし、さらに好ましくは、低い日射透過率と 低い紫外光透過率を有するガラス物品を提供することを目的とする。あわせて、その ガラス物品の製造方法を提供することを目的とする。
[0011] すなわち、本発明は、質量%で表示した基礎ガラス組成として、
SiO 65〜80%,
2
Al O 0〜5%,
2 3
MgO 0〜: L0%,
CaO 5〜15%,
MgO + CaO 5〜15%,
Na O 10〜18%,
2
K Ο 0〜5%,
2
Na O+K O 10〜20%,
2 2
Β Ο 0〜5%
2 3
を含み、さらに、実質的に、
T-Fe O 0. 6~1. 0%
2 3
(ただし、 T-Fe Oは、全ての鉄化合物を Fe Oに換算した、全酸化鉄含有量であ
2 3 2 3
る),
TiO 0. 026〜0. 8%,
2
CeO 0〜2. 0%,
2
CoO 0. 01〜0. 03%,
Se 0〜0. 0008%,
NiO 0. 06〜0. 20%
力もなる着色成分を含むガラス組成物を用い、厚み 3. 1mmに換算した A光源での 可視光透過率が、 15〜40%の範囲にあり、灰色色調を示す、ガラス物品を提供する
[0012] また、本発明は、上記ガラス組成物よりなる板状成形体を得る工程 Aと、
上記ガラス組成物のガラス転移点よりも高温状態にある板状成形体を、毎秒 4K以 上の速度で冷却する工程 Bと、
を含む、灰色色調を示すガラス物品の製造方法を提供する。
[0013] 本発明のガラス物品に用いるガラス組成物によれば、 T— Fe O , CoO,および Ni
2 3
oを適切な含有量で含むので、適度に低い可視光透過率を有し、灰色系色調を有 するガラス物品を、環境に与える負荷を大きくすることなく提供することができる。
[0014] さらに、本発明の好ま 、ガラス物品は、上述のガラス組成物力もなるガラス物品を 、所定の冷却速度以上に急速に冷却してなるので、灰色系色調を有するガラス物品 を、容易に提供することができる。
[0015] また、本発明のガラス物品に用いる好ましいガラス組成物は、 CeOを必須成分とし
2
て含む。 CeOを適切な含有量で含ませることにより、低い紫外線透過率を兼ね備え
2
たガラス物品を容易に提供することができる。
[0016] 本発明のガラス物品に用いるより好ましいガラス組成物によれば、上述の NiOの含 有量の範囲をより適切に限定しているので、灰色系色調を有するガラス物品を、より 容易に提供することができる。
図面の簡単な説明
[0017] [図 1]本発明の実施例および比較例において、風冷強化したガラス物品と、徐冷した ガラス物品の色座標を示す図である。
[図 2]本発明の実施例において、ガラス物品の色座標の、冷却速度に対する依存性 を示す図である。
発明を実施するための最良の形態
[0018] 本発明のガラス物品に用いるガラス組成物における基礎ガラス組成の限定の理由 は以下の通りである。なお、以下では、質量%を単に%と略記する。
[0019] (SiO )
SiOは、ガラスの骨格を形成する必須成分である。 SiOの含有量が 65%未満では
2 2
、ガラス組成物の耐久性が低下する。一方、 SiOの含有量が 80%を超えると、ガラス
2
融液の粘性が上昇し、熔融清澄が困難になる。したがって、 SiOの含有量は、 65%
2
〜80%である必要がある。さらに、上述の耐久性と熔融清澄との観点から、 SiOの
2 含有量の下限は 69%以上であることが好ましぐ 70%以上であることがより好ましい 。また、 SiOの含有量の上限は 75%以下であることが好ましぐ 73%以下であること
2
力 り好ましい。
[0020] (Al O )
2 3
Al Oは、必須の成分ではないが、組成物の耐久性を高めるために使用される成
2 3
分である。耐久性を高める効果は、 Al Oの含有量が 0. 1%以上であるときに顕著で
2 3
ある。そのため、 Al Oの含有量の下限は、 0. 1%以上であることが好ましぐ 1. 0%
2 3
以上であることがより好ましい。一方、 Al Oは熔融が困難な成分である。 Al Oの含
2 3 2 3 有量が、 5%を超えるとガラス中に未熔融の異物として残存し、さらにガラス融液中の 気泡を抜けに《する。したがって、 Al O
2 3の含有量の上限は、 5%以下である必要が あり、 2. 5%以下が好ましぐ 1. 8%以下がより好ましい。
[0021] (MgO)
MgOは、必須成分ではないが、ガラス組成物の耐久性を向上させるとともに、ガラ ス組成物の失透温度やガラス融液の成形時の粘度を調整するのに用いられる。 Mg Oの含有量が 10%を超えると、ガラス組成物の失透温度が上昇する。本発明におい ては、 MgOの含有量は、 10%を上限とする。 MgOの含有量は、 2%を超えて 10%以 下が好ましぐ 2. 5〜5. 5%がさらに好ましい。
[0022] (CaO)
CaOは、 MgOと同様に、ガラス組成物の耐久性を向上させるとともに、ガラス組成 物の失透温度やガラス融液の成形時の粘度を調整するのに用いられる必須の成分 である。 CaOが 5%未満では、これらの効果に乏しく 15%を超えると失透温度が上昇 する。
[0023] なお、 MgOと CaOの合計が 5%未満では、ガラス組成物の耐久性が低下し、 15% を超えると、失透温度が上昇する。 MgOと CaOの合計は、好ましくは 13%以下であ
る。
[0024] (Na O, K O)
2 2
Na Oはガラスの熔融性を高める必須成分であり、その含有量が 10%未満ではガ
2
ラスの熔融が困難になる。一方、その含有量が 18%を超えると、ガラス組成物の耐久 性が低下する。好ましい Na Oの含有量の下限は、 12%以上である。 K Oは、ガラス
2 2
の熔融を促進する任意成分である。 K Oの原料は、他の成分の原料と比較して高価
2
なので、 K Oの含有量が多いと、ガラスの原料コストが高くなる。 K Oの含有量は 5%
2 2 以下であることが好ましぐ 2%以下であることがより好ましい。さらに、 Na Oと K Oの
2 2 合計が、 10%未満では熔融促進効果が乏しぐ 20%を越えるとガラスの耐久性が低 下する。好ましい Na Oと K Oの合計の上限は、 16%以下である。
2 2
[0025] (B O )
2 3
B Oは、必須成分ではないが、ガラス組成物の耐久性向上や熔融性向上の効果
2 3
に加え、紫外線の波長域の吸収を強める働きをもつ成分である。 B O
2 3の含有量が多 くなると、紫外波長域の吸収の影響が可視波長域に及ぶようになり、ガラス組成物の 色調が黄色味を帯び易くなる。また、 B O
2 3は揮発しやすい成分であるため、ガラス融 液の成形時に不都合が生じる虞がある。これらの理由から、 B O 5
2 3の含有量は %を 上限とする。好ましくは 0〜2%未満の範囲である。
[0026] 本発明のガラス物品に用 、るガラス組成物における着色成分の限定の理由は以下 の通りである。なお、以下では、%は質量%を、 ppmは質量百万分率を意味する。
[0027] (酸化鉄)
酸化鉄は、ガラス中では Fe Oと FeOの形で存在する。本明細書においては、酸ィ匕
2 3
鉄の含有量を、 Fe Oに換算した全酸化鉄含有量として表わし、 T-Fe Oと略記す
2 3 2 3 る。また、 FeOの含有量については、 Fe Oに換算した FeOの、 T— Fe Oに対する
2 3 2 3 質量比の百分率として表わし、その値を FeO比と略記する。
[0028] Fe Oは可視光領域の短波長側力 紫外波長領域に吸収ピークを持ち、 FeOは可
2 3
視光領域の長波長側から赤外波長領域に吸収ピークを持つ。したがって、 Fe O
2 3は 主に紫外線吸収能を高める成分であり、 FeOは主に赤外線吸収能を高める成分で ある。
[0029] 本発明のガラス物品に用いるガラス組成物では、 T— Fe Oを 0. 6〜1. 0%とする
2 3
。 T—Fe Oが 0. 6%未満では、そのガラス組成物を用いたガラス物品の可視光透
2 3
過率が高くなりすぎ、プライバシー保護の効果が得られない。 T—Fe Oが 1. 0%を
2 3
超えると、そのガラス組成物を用いたガラス物品の可視光透過率が低くなりすぎ、窓 用ガラスとしての視認性が低下する。また、ガラス物品の色調が緑色系統を示すよう になり、灰色系統の色調が得られなくなるので、好ましくない。さらに、 T—Fe Oが 1
2 3
. 0%を超える場合、ガラス原料を熔融する際に炎の輻射熱が熔融ガラス上面部で著 しく吸収される。このため、ガラス熔融時に、熔融窯底部付近まで十分に加熱すること が困難になるため、好ましくない。より好ましい T—Fe Oの含有量の下限は 0. 70%
2 3
以上であり、上限は 0. 95%未満である。
[0030] さらに、本発明のガラス物品に用いるガラス組成物では、 Fe Oに換算した FeOの
2 3
含有量を、 0. 15-0. 35%の範囲にすることが好ましい。このようにすることによって 、本発明のガラス物品に、好ましい熱線吸収能を、さらに与えることができる。この場 合、全太陽光エネルギー透過率 (T )を、 40%以下にすることができる。より好ましい
G
Fe Oに換算した FeOの含有量の範囲は、 0. 18〜0. 30%である。
2 3
[0031] さらに、本発明のガラス組成物に用いるガラス組成物では、 FeO比を、 20〜35%と することが好ましい。 FeO比を 20%以上にすることによって、本発明のガラス物品の 全太陽光エネルギー透過率を、より容易に 40%以下とすることができる。一方、 FeO 比が 35%を超える場合、ガラス融液に、シリカリッチの筋やシリカスカムを生じる虞が あり、製造したガラス物品の中に、 Niに起因する着色欠点が生じる虞がある。また、 F eO比が 35%を超えると、 FeOの含有量が多くなりすぎるため、可視光透過率が小さ くなりすぎる。好ましい FeO比の上限は、 30%以下である。
[0032] (CoO)
本発明のガラス物品に用いるガラス組成物では、 CoOと Fe Oとを共存させ、さらに
2 3
Seまたは NiOの少なくとも一方を共存させることによって、所望の灰色色調のガラス 物品を、より容易に得ることができる。本発明のガラス物品に用いるガラス組成物にお ける CoOの含有量は、 0. 01〜0. 03%である。 CoOの含有量を 0. 01%以上にす ることによって、所望の色調を得ることができ、 0. 015%以上にすることによって、所
望の色調をより容易に得ることができる。一方、 CoOの含有量が 0. 03%を越えると 可視光透過率が小さくなりすぎる。 CoOの含有量の上限は、好ましくは 0. 025%以 下であり、より好ましくは 0. 02%未満である。
[0033] (NiO)
NiOは、刺激純度を低減し、所望の色調を得るための必須の成分である。 NiOの 含有量は 0. 06-0. 20%とする。 NiOの含有量が 0. 20%を越えると、可視光透過 率が低くなりすぎるとともに、製造したガラス物品の中に、 Niに起因する着色欠点が 生じる虞がある。 NiOの含有量が 0. 06%未満であると、ガラス物品の色調、とりわけ 風冷強化後のガラス物品の色調が所望の灰色色調とならない虞がある。好ましい Ni Oの含有量の範囲は、 0. 10%より大きく 0. 20%以下である。
[0034] (CeO )
2
CeOは、必須成分ではないが、紫外線の吸収に有効な成分である。また、 FeO比
2
を調整してガラス物品の色調を調整するためにも有効な成分である。セリウムイオン は、ガラス中で、 Ce3+および/または Ce4+の形で存在する。このうち、特に Ce3+は、紫 外波長域の光吸収が大きぐ可視波長域での光吸収が少ない。 CeO
2は、その含有 量が少量 (0. 5%未満を例示する)である場合、ガラス組成物の酸化還元平衡を、酸 化側に動かし、 FeO比を減少させる効果が強い。その結果、ガラス物品の色調を、よ り容易に灰色にできると共に、 Fe O
2 3を増加させ、ガラス物品の紫外線透過率を、より 容易に低減させることができる。また、 CeOを、所定の含有量以上 (0. 5%以上を例
2
示する)含有させると、 CeOによる紫外線吸収効果をより容易に発揮させることがで
2
きる。なお、 CeOは、高価な原料であるので、これを多く含むことは、コスト的に好ま
2
しくない。本発明のガラス物品に用いるガラス糸且成物では、 CeOの含有量を 2. 0%
2
以下とする。好ましい CeOの含有量の上限は 1. 2%以下である。上述の紫外線吸
2
収の観点からは、 CeOを 0. 10%以上含有させることが好ましい。
2
[0035] (TiO )
2
TiOは、紫外線の吸収を高めるための必須の成分である。その紫外線吸収能は、
2
FeOと共存する際に、特に顕著である。本発明のガラス物品に用いるガラス組成物 には、 0. 8%を上限として、添加することができる。 TiOの含有量が 0. 8%を超えると
、ガラス組成物の色調が、黄色みを帯び始める。他方、紫外線の吸収効果を十分に 得るためには、 TiOの含有量が 0. 026%程度必要である。好ましい TiOの含有量
2 2 の範囲は、 0. 5%以下であり、より好ましくは 0. 03-0. 1%である。
[0036] (Se)
Seは、補助的着色成分であり、必須の成分ではない。 Seは、ガラス組成物にピンク 系の着色効果をもたらす。ピンク系の着色は、 CoOによる着色の補色であるので、ガ ラス組成物の着色の刺激純度を効果的に低減することができ、ガラス物品の色調を 灰色系統にするために有効である。一方、 Seは環境に与える負荷が大きいので、本 発明のガラス糸且成物では、 Seの含有量は、 0. 0008%以下であり、 0. 0004%以下 であることが好ましい。なお、本発明のガラス組成物に Seを含有させる場合、バッチ 中に含まれる Seの 10%〜30%力 ガラス中に残存すると考えることができる。さらに 好ましくは、本発明のガラス組成物は、実質的に Seを含まない。
[0037] なお、「実質的に含まない」とは、不可避不純物として含まれる場合までも排除する 趣旨ではなぐ例えば、 0. 0003%未満であることを意味する。
[0038] (その他の成分)
本発明のガラス物品に用いるガラス組成物は、上述の基礎ガラス成分および着色 成分以外に、補助的着色剤,不純物および Zまたは還元剤として、その他の成分を 含むことができる。その他の成分は、 MnO, V O , MoO , CuO, Cr O , SnO , Y
2 5 3 2 3 2 2
Oおよび希土類酸ィ匕物力 なる群力 選ばれた 1種類以上の酸ィ匕物であり、その他
3
の成分の含有量は、合計で 1%以下である。さらに、本発明のガラス組成物には、 Zn Oを 0. 1%以下、好ましくは 0. 005-0. 050%の含有量で含むことができる。 ZnO を含有させることによって、製造したガラス物品の中に、 Niに起因する着色欠点を発 生しにくくすることができる。
[0039] (冷却速度)
本発明のガラス物品は、毎秒 4K以上の速度で冷却された上述のガラス組成物から なるガラス板を用いることが好ましい。なお、本明細書において、上述の冷却速度は 、そのガラス組成物のガラス転移点 (Tg)より 100°C高い温度から、 Tgより 10°C低い 温度までの平均冷却速度とする。より好ましくは、本発明のガラス物品は、風冷強化
された前記ガラス組成物からなるガラス板を用いる。風冷強化は、所定の温度以上に 加熱したガラス板の表面に、冷却用気体を吹き付けて急冷することによって、ガラス 板に概ね 90〜: L lOMPaの表面圧縮応力を印加できる方法であれば、公知の方法で 行なうことができる。上述の急冷における冷却速度としては、毎秒 50K以上 100K以 下を例示できる。本発明のガラス物品は、毎秒 4K以上の速度で冷却されたガラス板 、好ましくは風冷強化されたガラス板を用いることによって、より容易に灰色系の色調 を有することができる。風冷強化は、ガラス転移点 (Tg)を含む温度域で行うことがで きる。
[0040] 例えば、本発明のガラス物品に用いるガラス板は、公知のフロート法によって製造 することができる。この場合、次の手順で上記風冷強化を実施できる。まず、上述の ガラス組成物カゝらなるガラス融液よりガラスリボン (板状成形体)を得る。次に、このガ ラスリボンを、上述のガラス組成物のガラス転移点よりも高温状態に保ったままコンペ ァに載せて冷却室に搬送し、その冷却室内にて上記風冷強化を行う。このように、ガ ラス融液カゝらガラスリボンを得る工程 Aと、ガラスリボンを風冷強化する工程 Bとを連続 して行うことにより、消費エネルギーを抑制しつつ、本発明のガラス物品に用いるガラ ス板を能率的に製造することができる。もちろん、風冷強化のタイミングが上記に限定 されるわけではなぐ一度徐冷されたガラス板を再びガラス転移点よりも高温に加熱し 、風冷強化を行ってもよい。例えば、本発明のガラス物品が自動車用窓ガラスである 場合には、 自動車の窓枠に適合する形状にガラス板を曲げ成形する必要がある。こ の曲げ成形は、一般に、フロート法などの方法で得たガラス板 (板状成形体)を所定 の大きさに切断し、その後、加熱およびプレスすることにより実施される。したがって、 この曲げ成形工程の冷却時に、上記風冷強化を実施することが可能である。
[0041] なお、風冷強化は、ガラスリボンまたはガラス板の温度力 ガラス転移点未満に達 するまで、例えばガラス転移点よりも 100〜300°C低い温度に達するまで実施するこ とができる。また、冷却用気体の種類は、空気、窒素、希ガスなど、特に限定されない 力 通常は、常温の空気が用いられる。
[0042] (冷却速度によって色調を異ならせたガラス)
本発明のガラス物品には、冷却速度の調整によって色調を異ならせたガラス組成
物を用いることができる。本発明のガラス物品は、徐冷したときの色調力 厚み 3. lm mに換算した C光源での CIE (国際照明委員会: Commission Internationale d'Eclaira ge) LAB表色系で表わした a *が一 9〜一 4, b *が一 5〜13の範囲内であるガラス 組成物からなるガラス板を用いることが好ましい。より好ましくは、 a *が一 9〜一 4, b *が一 1〜13、さらに好ましくは、 a *が一 9〜一 6, b *が 3〜9の範囲内である上述 のガラス板を用いる。
[0043] 上述のガラス板を毎秒 4K以上の速度で冷却してなるガラス物品は、より容易に灰 色系統の色調を有することができる。上述のガラス板を風冷強化してなるガラス物品 は、さらに容易に灰色系統の色調を有することができる。
[0044] (冷却速度による色調の変化)
本発明のガラス物品において、冷却速度によって色調が変化するメカニズムは、完 全には解明されて 、な 、が、発明者らは以下のように考えて 、る。
[0045] ガラス中で、 NiOは Ni2+の形で存在する。 Ni2+は、その配位数によって、吸収ピーク 波長が異なることが知られている。ガラス中において、 Ni2+が 6配位にあるとき、その 吸収は 430nm付近に存在し、ガラスに黄褐色の着色を与え、一方、 4配位にあるとき 、その吸収は 500〜650nm付近に存在し、ガラスに赤紫色の着色を与えることが知 られている。
[0046] 本発明のガラス物品においては、ガラス転移点より高温に加熱してから、所定以上 の冷却速度で冷却することによって、ガラス中の Ni2+の少なくとも一部,好ましくは過 半を 4配位にさせることができると考えている。そして、上述の 4配位の Ni2+に起因す る吸収を積極的に利用することによって、 Seを微量,あるいは実質的に含有しなくて も、灰色系統の色調を得ることができる。
実施例
[0047] 以下、本発明のガラス物品について、表を参照しながらより詳細に説明する。
[0048] [実施例 1〜25]
(ガラス板の製造)
ガラス板を以下の手順に従って作製した。基礎ガラス成分の原料として、珪砂,苦 灰石,石灰石,ソーダ灰,芒硝および炭酸カリウムを用いた。着色成分の原料として
、酸化第二鉄,酸化チタン,酸化セリウム,酸化コバルト,金属セレン,酸化ニッケル および炭素系還元剤を用いた。上述の原料を、所定の割合 (表 1, 2参照)で混合し、 ガラス原料バッチ (以下バッチと呼ぶ)を調合した。
[0049] 調合したバッチは、白金ルツボの中で熔融および清澄した。まず、このルツボを 14 50°Cに設定した電気炉で 4時間保持してバッチを熔融 '清澄した。その後、ガラス融 液を炉外で鉄板上に、厚さが約 6mmになるように流し出し、冷却固化してガラス体を 得た。このガラス体には引き続いて徐冷操作を施した。徐冷操作は、このガラス体を 6 50°Cに設定した別の電気炉の中で 30分保持した後、その電気炉の電源を切り、室 温まで冷却することによって行なった。この徐冷操作における冷却速度は、毎秒約 0 . 1Kであった。この徐冷操作を経たガラス体に、通常のガラス加工技術を適用して切 断 '研削'光学研磨を行ない、 1辺が約 5cm,厚み 3. 1mmの略正方形であって、両 側の主平面が光学研磨されたガラス板を作製した。
[0050] (ガラス板の組成,ガラス転移点)
上述のガラス板の基礎ガラス組成を表 1に、着色成分の含有量を表 2に示す。基礎 ガラス組成については、全ての実施例で同一であり、着色成分を除いて合計が 100 %になるように示した。表 2中の値は、ガラス板の作製に用いたガラス組成物に対す る各着色成分の割合を示し、 X線蛍光分析法,化学分析法または炎光分析法など、 その成分に適した汎用の分析方法を用いた、定量分析値である。なお、表中の含有 量は、全て質量%表示である。また、熱膨張係数,ガラス転移点および降伏点につ いては、着色成分によってそれほど大きな影響を受けないので、着色成分を含まな い基礎ガラス組成におけるそれらの値で代表して示した。なお、熱膨張係数,ガラス 転移点および降伏点は、示差熱膨張計 (EXSTAR6000TMAZSS型、セイコーィ ンスツルメンッ (株)製)を用いて測定した。
[0051] [表 1]
Si02 72.2
Al203 1.6
組成 MgO 3.2
質量% CaO 8.2
Na20 14.2
K20 0.6
熱膨張係数
92
( X 1 0— 7K— 1)
ガラス転移点
物性 550
Tg (°C)
(風冷強化品) 実施例 17 18 19 20 21 22 23 24 25 分析組成 NiO 0.200 0.122 0.122 0.122 0.122 0.122 0.122 0.1 15 0.122
CoO 0.0300 0.0159 0.0159 0.0180 0.0200 0.0180 0.0200 0.0185 0.0175 質量? 4 Se 0 0 0 0 0 0 0 0.0004 0
Ce02 1.00 0.497 0.497 0.500 0.500 0.500 0.500 0.800 0.700
Ti02 0.100 0.026 0.026 0.026 0.026 0.026 0.026 0.050 0.048
T-Fe203 0.800 0.952 0.952 0.979 0.979 0.979 0.979 0.900 0.940
FeO比率(%) 22.5 27.1 31.5 23.6 24.1 32.2 31.6 24.0 23.5
[0053] (風冷強化ガラス物品の製造)
次に、上述のガラス板に風冷強化処理を施し、風冷強化したガラス板力もなるガラ ス物品(実施例 1〜25)を作製した。この風冷強化処理は、上述のガラス板を 700°C に設定した電気炉で 180秒間保持して加熱した後、加熱したガラス板に常温の空気 を吹き付けて急冷することによって行なった。この急冷における冷却速度は、 650〜 550°Cの温度範囲で毎秒約 80〜: LOOKであった。この強化処理の結果、上述のガラ ス物品の全てに、概ね 90〜: L lOMPaの範囲の表面圧縮応力が印加されていた。
[0054] (風冷強化ガラス物品の光学特性)
次に、上述の風冷強化ガラス物品の色調と、光学特性を評価した。色調について は、上述の風冷強化ガラス物品の反射光を肉眼で観察した。また、光学特性の評価 は、通常の紫外〜近赤外波長域の分光光度計を用いて行なった。表 3に、上述の風 冷強化ガラス物品の特性を示す。表 3において、 Yは CIE標準の A光源を用いて測
A
定した可視光透過率、 Tは全太陽光エネルギー透過率、 T は ISO— 9050に規定
G UV
した紫外線透過率を示す。 dおよび Pは、 CIE標準の C光源を用いて測定した主 e
波長および刺激純度を示す。 L *は、 CIEの規定による明度、 a *および b *は、 CIE 標準の規定による色度を示す。 X, yは、それぞれ、 CIE XYZ表色系における色度 座標を示す。
[0055] [表 3]
(風冷強化品) 実施例 1 2 3 4 5 6 7 8 光学特性 板厚 (mm) 3.10 3.10 3.14 3.12 3.10 3.12 3.12 3.12
YA (%) 24.4 27.6 25.1 24.7 24.4 23.9 23.9 24.3
TG (%) 16.8 35.3 30.5 29.4 27.2 25.5 25.9 27.8
X 0.2897 0.3231 0.3130 0.3127 0.3099 0.3099 0.3120 0.31 14 y 0.3107 0.3476 0.3299 0.3305 0.3284 0.3294 0.3319 0.3296
L* 55.52 61.77 57.27 56.90 56.69 56.20 56.13 56.49
*
a -3.85 -2.43 -3.46 - 3.74 -3.99 -4.31 - 4.35 -3.86
-4.44 9.83 3.67 3.75 2.93 3.15 3.97 3.36 色調 灰 灰 灰 灰 灰 灰 灰 灰
A d (nm) 585.0 545.5 560.4 559.2 550.6 550.3 556.9 555.8
Pe ( ) 8.2 11.8 4.5 4.6 3.3 3.5 4.8 4.0
Tuv (%) 3.2 11.8 12.0 11.6 12.1 10.8 9.7 10.7
実施例 1〜25の風冷強化ガラス物品は、いずれも厚さ 3. 1mmで A光源を用いて 測定した可視光透過率 (Y )が 15〜40%の範囲にあり、灰色色調を示した。
[0057] 実施例 2〜9, 11, 13〜18および 24の風冷強化ガラス物品は、いずれも厚さ 3. 1 mmで C光源を用いて測定した主波長( λ d)が 530〜580nmの範囲であった。
[0058] 実施例 3〜9, 18-21, 23および 25の風冷強化ガラス物品は、いずれも厚さ 3. 1 mmで C光源での CIE LAB表色系で表わした a *が— 5〜0, 1) *が—1〜4の範囲 内にあった。
[0059] 実施例 1〜25の風冷強化ガラス物品は、いずれも厚さ 3. lmmで ISO 9050に規 定された紫外線透過率 (T )が 15%以下であった。
UV
[0060] 上述の結果から、風冷強化したガラス板力 なるガラス物品は、灰色色調を示し、 かつ比較的低い可視光透過率を有する。特に実施例 3〜9, 18および 24のガラス物 品は、 C光源を用いて測定した主波長( λ d)が 530〜580nmの範囲であり、 C光源 での CIE LAB表色系で表わした a *がー 5〜0, b *がー 1〜4の範囲内にあり、さら に ISO 9050に規定された紫外線透過率 (T )が 15%以下であるので、プライバシ
UV
一保護用窓ガラスとして乗り物の窓に好適に用いることができる。
[0061] [実施例 41〜65]
(徐冷ガラス物品の製造)
実施例 1〜25と同様の手順でガラス体を作製し、実施例 1〜25と同様に加工を行 なうことによって、 1辺が約 5cm,厚み 3. lmmの略正方形であって、両側の主平面 が光学研磨されたガラス板を作製した。上述のガラス板の基礎ガラス組成を表 1に、 着色成分の含有量を表 4に示す。このガラス板を、そのまま、徐冷ガラス物品(実施 例 41〜65)として用いた。
[0062] [表 4]
(1ホ /"Π ππ) 実施例 41 42 43 44 45 46 47 48 分析組成 NiO 0.100 0.150 0.122 0.122 0.122 0.122 0.122 0.122
CoO 0.0300 0.0100 0.0160 0.0159 0.0159 0.0159 0.0159 0.0164 質量% Se 0 0 0 0 0 0 0 0
Ce02 2.00 0.100 0.450 0.497 0.497 0.696 0.895 0.696
Ti02 0.600 0.800 0.026 0.026 0.026 0.026 0.026 0.026
T-Fe203 0.600 0.900 0.980 0.952 0.952 0.953 0.953 0.953
FeO比率(W 36.7 20.0 18.2 20.1 23.3 25.フ 24.7 22.3
[0063] (徐冷ガラス物品の光学特性)
次に、上述の徐冷ガラス物品の色調と、光学特性を評価した。評価の方法は、実施 例 1〜25と同じである。その結果を、表 5に示す。
[0064] [表 5]
(徐冷品) 実施例 41 42 43 44 45 46 47 48 光学特性 板厚 (mm) 3.10 3.10 3.14 3.12 3.10 3.12 3.12 3.12
YA (%) 24.7 32.6 28.5 27.9 27.8 27.4 27.3 27.8
TG (%) 16.7 36.2 31.2 30.0 28.0 26.5 26.6 28.6
X 0.2875 0.3297 0.3182 0.3173 0.3148 0.3151 0.3168 0.3164 y 0.3224 0.3582 0.3449 0.3448 0.3434 0.3449 0.3469 0.3449
L* 57.81 63.64 60.49 59.93 59.95 59.58 59.45 59.87
*
a -4.98 -7.51 -6.66 -6.87 -7.28 -7.62 -7.62 -7.19
-0.92 12.19 8.12 7.93 7.29 7.66 8.32 7.84 色調 灰 灰 灰 灰 灰 灰 灰 灰 λ d (nm) 490.0 577.1 562.6 561.7 558.9 558.9 560.6 560.6
Pe (%) 5.6 15.0 9.9 9.6 8.6 9.1 10.1 9.4
Tuv (%) 5.5 12.4 14.5 14.0 14.7 13.1 1 1.8 13.0
実施例 41〜65の徐冷ガラス物品は、いずれも厚さ 3. 1mmで A光源を用いて測定 した可視光透過率 (Y )が 15〜40%の範囲にあり、灰色色調を示した。
[0066] 実施例 42〜51, 53〜62および 65の徐冷ガラス物品は、いずれも厚さ 3. 1で C光 源を用いて測定した主波長( λ d)が 530〜580nmの範囲であった。
[0067] 実施例 41の徐冷ガラス物品は、厚さ 3. 1mmで C光源での CIE LAB表色系で表 わした a *がー 5〜0, b *がー 1〜4の範囲内にあった。
[0068] 実施例 41〜53および 55〜65の徐冷ガラス物品は、いずれも厚さ 3. 1mmで ISO
9050に規定された紫外線透過率 (T )が 15%以下であった。
UV
[0069] 実施例 41〜65の徐冷ガラス物品は、いずれも厚さ 3. lmmで C光源での CIE LA B表色系で表わした a *がー 9〜一 4, b *がー 5〜13の範囲内にあった。
[0070] 上述の結果から、徐冷したガラス板力 なるガラス物品は、灰色色調を示し、かつ 比較的低い可視光透過率を有する。特に実施例 41のガラス物品は、 C光源での CI E LAB表色系で表わした a *がー 5〜0, b *がー 1〜4の範囲内にあり、さらに ISO 9050に規定された紫外線透過率 (T )が 15%以下であるので、風冷強化ガラス
UV
物品と同様に、プライバシー保護用窓ガラスとして乗り物の窓に好適に用いることが できる。
比較例
[0071] 比較例 80a〜85a, 80b〜85bは、特開平 10— 114540号公報に開示されている ガラス組成物力もなるガラス板を用いたガラス物品である。比較例 80a〜85aには、 徐冷されたガラス板力 比較例 80b〜85bには、風冷強化されたガラス板が用いられ ている。何れのガラス物品も、青緑色系または深緑色系色調を有するが、灰色系色 調は示さな 、。その組成および光学特性を表 6に示す。
[0072] [表 6]
比較例 80a ! 80b 81 a 81 b 82a 82b 組成 Si02 71 71 71 71 71 71
Al203 1.6 1.6 1.6 1.6 1.6 1.6
MgO 3.6 3.6 3.6 3.6 3.6 3.6
CaO 7.7 7.7 7.7 7.7 7.7 7.7 卜 Na20 13.7 13.7 13.7 13.7 13.7 13.7
K20 0.9 0.9 0.9 0.9 0.9 i 0.9 質量% NiO 0.0330 0.0330 0.0330 0.0330 0.0330 0.0330
CoO 0.0120 0.0120 0.0125 0.0125 0.0120 0.0120
Se 0 0 0 0 0 0
Ce02 0 0 0 0 0 0
Ti02 0.03 0.03 0.03 0.03 0.03 0.03
T-Fe203 1.3 1.3 1.3 1.3 1.3 1.3
FeO比率(%) 17 17 17 17 17 17 光学特性 YA (%) 38.8 37.2 37.2 35.9 37.8 36.3
TG (%) 31.4 31.2 30.5 30.5 30.3 29.9
L* 69.50 58.38 68.37 67.25 68.79 67.59
3 - 9.47 -8.31 -9.45 -8.32 -9.48 -8.36 b* 0.78 0.59 0.14 0.01 -0.31 -0.34 色調 緑 緑 緑 緑 緑 緑 λ d (nm) 498.9 498.5 496.9 496.5 495.8 495.5
Pe (%) 4.89 4.43 5.56 0.58 5.99 5.42
6.73 5.06 6.35 4.73 6.99 5.14 風冷強化の有無 徘 有 有 m- 有 比較例 83a 83b 84a 84b 85a 85b 組成 Si02 71 71 71 71 71 71
Al203 1.6 1.6 1.6 1.6 1.6 1.6
MgO 3.6 3.6 3.6 3.6 3.6 3.6
CaO 7.7 7.7 7.7 7.7 7.7 7.7
Na20 13.7 13.7 13.7 13.7 13.7 13.7
K20 0.9 0.9 0.9 0.9 0.9 0.9 質量% NiO 0.1000 0.1000 0.1000 0.1000 0.0900 0.0900
CoO 0.0190 0.0190 0.0180 0.0180 0.0190 0.0190
Se 0 0 0 0 0 0
Ce02 0 0 0 0 0 0
Ti02 0.03 0.03 0.03 0.03 0.03 0.03
T-Fe203 1.3 1.3 1.3 1.3 1.3 1.3
FeO比率 (%) 16 16 18 18 19 19 光学特性 YA (%) 20.2 1 7.8 20.2 17.7 20.4 18.1
TG (%) 21.7 21.2 20.3 19.7 19.8 19.3
L* 52.54 49.63 52.63 49.54 53.01 50.27 a* -9.1 -6.27 -9.39 -6.25 -9.64 -6.76 b* 6.72 3.77 6.19 2.96 3.39 0.69 色調 緑 綠 綠 綠 緑 綠 λ d (nm) 550.3 542.4 545.9 529.1 514.9 499.5
Pe (%) 8.16 4.46 7.22 3.28 4.1 4.36
Tuv (%) 5.86 4.18 6.78 4.84 6.56 4.74 風冷強化の有無 無 有 有 有
[0073] (風冷強化ガラス物品と徐冷ガラス物品の比較)
組成が同一で、冷却速度が異なるガラス板力 なるガラス物品の色調の違いを、上 述の実施例 1〜25 (風冷強化品)と実施例 41〜65 (徐冷品)とで比較した。表 2およ び表 4から分力るように、実施例 1〜25と実施例 41〜65は、一対一で対応している。 それらについて、 CIE LAB表色系で表示した色座標図を図 1に示す。全ての実施 例において、風冷強化することによって、その物品の色座標は、右下、かつ原点に近 い方向に移動していることが分かる。つまり、風冷強化されたガラス板を用いることに よって、灰色色調でより中性色のガラス物品を容易に得ることができる。特に、実施例 43〜49, 58〜65力示すように、徐冷したときの上述の色座標が、 a *が一 9〜一 6, b *が 3〜9の範囲にあるガラス板を用いると、より容易に、 a *がー 5〜0, b *がー 1 〜4の範囲にあるガラス物品を得ることができる。
[0074] つまり、フロート法などの方法で得られたガラス板やガラスリボンのような板状成形 体が、厚み 3. 1mmに換算した C光源での CIE LAB表色系で表わした a *が— 9〜 -4, b *がー 5〜13の範囲内のものであるとき、 a *がー 5〜0, b *がー 1〜4の範 囲内となる (この範囲に変化する)ように、上記ガラス板やガラスリボンを風冷強化する ことができる。このようにすれば、灰色色調で中性色の強いガラス物品を容易に得る ことができる。
[0075] 他方、比較例 80a〜85aおよび 80b〜85bのガラス物品については、徐冷したとき の上述の色座標が、 a *が一 9〜一 4, b *が一 5〜13の範囲内にない。特に a *が 9より小さい。そのため、そのガラス板を風冷強化したガラス物品は、 a *がー 5〜0 , b *が— 1〜4の範囲内になぐ灰色系色調を示さな力つたといえる。
[0076] さらに、本実施例においては、徐冷したガラス物品と、風冷強化したガラス物品との 間での色座標上の距離が、比較例と比べて大きいことが分かる。したがって、本発明 のガラス物品によって、灰色系色調のガラス物品をより容易に提供することができる。
[0077] (冷却速度,および風冷強化ガラス物品の再徐冷による色調の変化)
さらに、実施例 25の組成であって、厚さ 3. lmm,約 5cm角の略正方形のガラス板 を、毎秒 0. 1, 4, 18および 95Kの冷却速度で冷却してなるガラス物品を作製した。 それらのガラス物品の光学特性を、上述の実施例と同様の手法で評価した。その結
果を、表 7および図 2に示す,
[0078] [表 7]
[0079] 表 7および図 2より明らかなように、冷却速度を毎秒 4Κ以上としたとき、そのガラス物 品の色座標が、 a *が一 5〜0, b *が一 1〜4の範囲内になった。
[0080] また、実施例 25に記載した風冷強化ガラス板力もなるガラス物品に、再徐冷を施し 、再徐冷ガラス物品を作製した。この再徐冷は、実施例 25のガラス物品を、電気炉中 で 650°Cまで 6時間かけて加熱し、その電気炉の中で 30分保持した後、その電気炉 の電源を切り、室温まで冷却することによって行なった。この再徐冷ガラス物品の光 学特性を、上述の実施例と同様の手法で評価した。その結果を、表 7に示す。
[0081] 表 7より明らかなように、風冷強化ガラス板力 なるガラス物品に、再徐冷を施すと、 その光学特性は、徐冷したガラス板力もなるガラス物品のそれと、測定誤差の範囲内 で同一になることが分力つた。
[0082] したがって、これら実施例のガラスを自動車用等の車両用窓ガラスや建築物用窓ガ ラス等として用いた場合には、室内内装材に対する優れた劣化防止効果およびブラ ィパシー保護効果が期待される。
産業上の利用可能性
[0083] 本発明のガラス組成物およびそのガラス組成物力 なるガラス物品は、そのプライ パシー保護効果を要求される用途、例えば車両用窓ガラスや建築物用窓ガラスなど に好適に用いることができる可能性がある。