明 細 書
鉄錯体を触媒とする重合体の製造方法
技術分野
[0001] 本発明は、トリァザシクロノナン鉄錯体とラジカル発生剤の存在下、ラジカル重合性 単量体を重合する重合体の製造方法に関する。より詳しくは、本発明はラジカル重 合性単量体の種類、組み合わせに対して幅広い範囲で適用可能な特定の鉄触媒系 を使用し、分子量、分子構造を制御しつつ、生成した重合体の化学変換を可能にす る末端官能基をもつ重合体を製造する方法、及び重合に用いた鉄錯体を回収し、再 び重合反応に再利用できる重合体の製造法に関する。
背景技術
[0002] 従来のラジカル重合と異なり、ポリマー成長末端が化学変換可能な活性を有するリ ビングラジカル重合、例えば、原子移動ラジカル重合 (ATRP) (非特許文献 1参照。 )、ニトロキシドが介するラジカル重合 (NMP) (非特許文献 2参照。)、硫黄類化合物 を経由する可逆付加チェイントランスファーラジカル重合 (RAFT) (非特許文献 3参 照。)などは、ポリマーの分子量、モノマー残基の序列、多次元構造などを任意に制 御できることから、この 10年来多くの注目を集めて来た。その中で、特に、金属錯体 とハロゲン化合物との組み合わせによる原子移動ラジカル重合系はその広範に渡る モノマーの種類の適応性が示され、それを用いるポリマーの精密な制御方法は、ポリ マーの合成だけではなぐ基材表面 ·界面の化学修飾、デバイス構築にも広がるよう になった。
[0003] ATRP法で用いられる金属触媒は、通常その中心金属は銅、またはルテニウムで あり、それらは明確な金属錯体の構造を有するものではなぐ金属イオンとそれの配 位子となる化合物(例えばアミン類)を重合反応系に混合して力 用いることが多い。 このような重合系では、金属の触媒活性は系内の配位子と結合し、錯体を形成して から発現される。配位子と金属イオンを重合反応系に混合して用いた場合、すべて の金属が錯体を形成することはできない。これら錯体を形成してない金属は、触媒活 性を示すことができなくなる。従って、金属の触媒効率は低下し、金属濃度を増加さ
せる必要性や、高分子量のポリマーを製造する上で不適合となるなどのデメリットが 生じる。一方、金属濃度を増加させることは、重合反応後に金属を除去する工程に多 くの負荷をもたらし、また、金属の毒性による環境汚染の可能性を発生させる。また、 アミン類配位子などを余分に使うことが要求される(例えば特許文献 1および 2参照。 )。余分のアミン類配位子の使用により、重合反応において、モノマーの種類などが 変わると反応制御が困難となること、モノマー以外の化合物の混入によるポリマーの 精製が煩雑になることなど、多くの問題が提起されている。
[0004] 一般的に、 ATRP法では、活性ハロゲン有機化合物を重合開始剤として用いる。ま た、 ATRP法において、活性ハロゲン有機化合物を従来のラジカル発生剤(例えば、 過酸化物ラジカル発生剤、ァゾ系ラジカル発生剤)に置換して重合を行うこと ever se型 ATRP (R— ATRP)と呼ぶ。 R— ATRP法によれば、従来のラジカル重合プロ セスに金属触媒を加えることで、重合物の末端に反応性残基を導入することができ、 それによるブロック共重合体の合成も可能となる。従って、 R— ATRP法はハロゲン 類の開始剤を使うことなぐ既存生産プロセスにて構造が制御された重合体を得るこ とができる有用な製造法である。 R— ATRP法においても、基本的にアミン類を配位 子とする銅イオン錯体を使用する技術が多く知られており、 ATRP法と同様な問題点 、例えば、金属イオン濃度の増加、配位子濃度の増加、触媒効率の低下、ポリマー 精製の煩雑さ、ポリマーの着色などを抱えている。
[0005] 金属錯体によるリビングラジカル重合において、安全かつ安価な鉄触媒による重合 体製造は環境に優 、視点力 多くの注目を集めて!/、る。(非特許文献 4)。
[0006] ATRP法にお!、て、鉄イオンと配位子(ァミン類、フォスフィン類化合物、亜リン酸ェ ステル類)を重合性モノマーと混合して行う重合体の製造法や、または合成した鉄錯 体と重合性モノマーを混合して行う重合体製造法が開示されて ヽる (非特許文献 5、 澤本ら、第 53回高分子討論会予稿集、 2004年、 2B16, 2456頁)。例えば、 2価の 鉄イオンとアミン系配位子をモノマーと混合し、それにハロゲン開始剤を用いたメチル メタタリレートの重合法 (非特許文献 6)、または、 2価の鉄イオンとリン化合物を配位 子とする鉄錯体及びハロゲン開始剤を用いるメチルメタタリレートの重合法が報告さ れている(例えば非特許文献 7、特許文献 3)。しかし、これらの鉄触媒系での ATRP
法では、分子量が 10万台にのぼる高分子量ポリマーの合成例がほとんどない。また
、鉄錯体を回収し、それを重合反応に再利用することもできな力つた。
[0007] R—ATRPにおいても、環境に優しい鉄イオンィ匕合物を触媒とすることも検討され ている。例えば、 FeClとイソフタル酸との錯体を触媒にしたメチルメタタリレートの重
3
合 (非特許文献 8)が報告されている。この系では、分子量 5万までのポリマーを得る ことができた力 発ガン性の疑!、が強!ヽ Ν,Ν-ジメチルフオルムアミドを反応溶媒に用 いることが必要とされている。また、有機ォ-ゥムカチオンとァ-オン性である塩ィ匕鉄 系化合物で構成された鉄錯体を触媒として用いるメタタリレートやスチレンの重合 (非 特許文献 9)が報告されている。しかしながら、これらの鉄錯体または鉄イオン化合物 を用いた R— ATRPラジカル重合では、ポリマーの分子量が 2〜3万台にとどまること 、ブロック共重合体の制御が困難であること、など、改善すべき問題点が多いもので めつに。
[0008] 一方、金属触媒を用いるリビングラジカル重合系では、重合後ポリマーからの金属 の除去が大きな課題となっている。ある意味では、重合反応それ自体より、残存金属 をポリマーから除去することがリビングラジカル重合の実用化への現実的な問題でも ある。金属を除くため、ポリマーの精製工程では、錯化剤を利用するなどの方法 (特 許文献 4及び 5)が検討されて!ヽる。環境に優 ヽ鉄イオン化合物を触媒として用い ることは、銅、コバルト、ルテニウムなど他の金属イオンに比べ、無毒性であり、後処 理など工程を含めて、重合体製造の全プロセスでのメリットが大きい。し力しながら、 鉄イオンを用いるリビングラジカル重合では、銅イオン錯体系に比べて、重合効率が 低いなどの問題があり、更に、鉄触媒の不安定性、鉄触媒の再利用が困難であるな ど、製造プロセスにおける問題点も問われて 、る。
[0009] リビングラジカル重合反応において、高い触媒活性を有する鉄錯体を使用して重 合反応を行い、かつその鉄錯体を重合反応系から除去し、廃棄することなぐ簡便な 方法で回収し、それを再び重合反応触媒として利用できるような重合体の製造法の 開発は、工業的な視点力 見ても、極めて重要な課題であると考えられる。
特許文献 1 :特開平 8—41117号公報
特許文献 2 :特開 2002— 80523号公報
特許文献 3 :特許第 2, 946, 497号公報
特許文献 4 :特開 2002— 356510号公報
特許文献 5 :特開 2005— 105265号公報
非特許文献 1 : Wangら、 Macromolecules, 1995年、 28卷、 7901頁
非特許文献 2 : C. J. Hawkerら、 Macromolecules, 1996年、 29卷、 5245頁 非特許文献 3 : A. Ajayghoshら、 Macromolecules, 1998年、 31卷、 1463頁 非特許文献 4 : Matyjaszewskiら、 Chem. Rev. 2001年, 101卷, 2921頁 非特許文献 5 :澤本ら、第 53回高分子討論会予稿集、 2004年、 2B16, 2456頁 非特許文献 6 : Matyjaszewskiら、 Macromolecules, 1997年、 30卷、 8161頁 非特許文献 7 :安藤ら, Macromolecules, 1997年、 30卷、 4507頁
非特許文献 8 :Zhuら、 J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. 2001年、 39卷、 765頁 非特許文献 9 : M. Teodorescuら, Macromolecules, 2000年、 33卷、 2335頁 発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0010] 本発明が解決しょうとする課題は、ラジカル重合性単量体を比較的短時間で定量 的に重合することが可能で、高分子量でありながら末端に化学変換可能な官能基を 有する重合体およびブロック共重合体を製造できる方法を提供することであり、さらに 、重合反応後、ポリマーを汎用性溶剤中に簡便な方法で再沈殿させ、用いた鉄錯体 を溶剤中に回収し、それを再利用する重合体の製造方法を提供することである。 課題を解決するための手段
[0011] 本発明では、触媒活性を示す金属錯体として、特定のトリァザシクロノナン鉄系錯 体に注目し、本発明を完成した。
[0012] 即ち、本発明は、下記一般式(1)〜(7)
[化 1]
(式(1)中、 Feはいずれも 2価の陽イオンであり、 Xは Cl
_、 Br—又は厂を表し、 Xは
1 2
Cl_、 Br―、 CN_又は S_— Ph (Phはフエ-ル基を表す。)を表し、 Rはメチル基又は ェチル基を表す。 )
[化 2]
(式(2)中、 Feはいずれも 2価の陽イオンであり、 Xは Cl_、 Br—又は I—を表し、 Rはメ
3
チル基又はェチル基を表し、 ΑΊまァ-オンを表す。)
[化 3]
(式(3)中、 Feは 2価の陽イオンであり、 Xは Cl_、 Br 、 CN 又は S — Ph (Phはフ
4
ェニル基を表す。)又は S_— R (Rはメチル基又はェチル基を表す。)を表し、 Lは CH CN又は COを表し、 Rはメチル基又はェチル基を表し、 ΑΊまァ-オンを表す。 )
3
[化 4]
(式(4)中、 Feは 2価の陽イオンであり、 Xは Cl_、 Br", CN—又は S_— Ph (Phはフ
5
ェ-ル基を表す。)又は S_— R (Rはメチル基又はェチル基を表す。)を表し、 D+は カチオンを表し、 Rはメチル基又はェチル基を表す。 )
(式(5)中、 Feは 2価の陽イオンであり、 Xは C1 、: Br 、 CN 又は S — Ph (Phはフ
6
ェニル基を表す。)又は S_— R (Rはメチル基又はェチル基を表す。)を表し、 Lは
1 1 2
CH CN又は COを表し、 Rはメチル基又はェチル基を表す。 )
[化 6]
(式(6)中、 Feは 3価の陽イオンであり、 Xは Cl_、 Br—又は I—を表し、 Rはメチル基又 はェチル基を表す。 )
[化 7]
(式(7)中、 Feは 3価の陽イオンであり、 Xは Cl_、 Br—又は厂を表し、 Rはメチル基又
8
はェチル基を表す。 )で表される群カゝら選ばれる少なくとも一種の鉄錯体を重合触媒 とし、ラジカル重合開始剤の存在下で、少なくとも一種のラジカル重合性単量体を重 合する重合体の製造方法を提供する。
発明の効果
本発明では、上記鉄錯体とラジカル発生剤を用いることで、他の配位子を必要とせ ず、重合反応を極めて単純化でき、かつその鉄錯体の優れた触媒活性により、その ラジカル重合反応を定量的に進行させることができる。また、得られた重合体は通常 のラジカル重合では得られない活性末端を形成しているので、定量重合後、他のラ ジカル重合性単量体を加えることで、ブロック共重合体を簡便に製造することができ
る。さらに、これらの鉄錯体は重合反応終了後、ポリマーを再沈殿させる単純な作業 過程で、錯体を効率的に溶剤相へ溶かすことにより容易に回収され、これを触媒とし て再使用することができる。即ち、本発明は、上記の鉄錯体を従来のラジカル重合系 に用いることで、工業プロセスでの重合反応の制御に多くのメリットをもたらし、工業プ 口セスの高効率ィ匕及び省資源化を同時に実現することができる。
[0014] 更に、本発明の効果として、鉄錯体を用いることで、銅錯体など有毒な金属イオン 系と比較し、環境汚染を抑制することもでき、また、得られたポリマーの後処理過程も 単純ィ匕することができる。
図面の簡単な説明
[0015] [図 1]実施例 4におけるブロック共重合前後のポリマーの GPCチャートである。
[図 2]実施例 5における重合一回目(上)と重合 2回目(下)の GPCチャートである。
[図 3]実施例 6における未精製ポリマー (A)と、精製ポリマー(B)の UV— Visの吸収 スペクトルである。
[図 4]実施例 12にお 、て MMAを段階的に添カ卩した GPCチャートである。
[図 5]実施例 13におけるブロック共重合前後のポリマーの GPCチャートである。
[図 6]比較例 14における重合 1回目(上)と重合 2回目(下)の GPCチャートである。
[図 7]実施例 15におけるブロック共重合前後のポリマーの GPCチャートである。 発明を実施するための最良の形態
[0016] 本発明では、重合触媒となる金属錯体として、鉄周辺に、窒素原子にメチル基又は ェチル基を有するトリァザシクロノナン基が配位され、かつハロゲン、シァノまたはチ オールを有する鉄錯体 (Y)を使用して、これと重合開始剤とを組み合わせることで、 ラジカル重合性モノマーの重合をリビングラジカル重合形式の(ATRP)、または(R — ATRP)で進行させ、その重合を定量的に進行させることができる。更に、末端に 化学変換可能な機能性残基が結合したポリマーを得ることができる。
[0017] 本発明にお 、て使用する鉄錯体 (Y)の構造の一つとして、下記一般式(1)で表さ れる構造の鉄錯体があげられる。該構造の鉄錯体により、ラジカル重合性モノマーを 定量的に重合させて、 ATRP型重合体を製造することができる。
[0019] (式(1)中、 Feはいずれも 2価の陽イオンであり、 Xは Cl_、 Br—又は厂を表し、 Xは
1 2
Cl_、 Br―、 CN_又は S_— Ph (Phはフエ-ル基を表す。)を表し、 Rはメチル基又は ェチル基を表す。 )
[0020] 上記一般式(1)で表される鉄錯体は、 2価の鉄イオン (Fe2+)に、窒素原子にアル キル基が結合したトリァザシクロノナンキレートが配位し、その錯体中には少なくとも 一つのハロゲンが結合したカチオン、及び、 2価の鉄イオンに、窒素原子にアルキル 基が結合したトリァザシクロノナンキレートが配位したァ-オンとを有するものである。
[0021] 上記一般式(1)中のカチオンの鉄陽イオンをつなぐノヽロゲンイオンとしては、 C厂、 Br—又は I—のいずれかであればよぐ触媒活性の長期安定ィ匕のためには、それが C1 —又は Br—であることが好ましい。また、窒素原子に結合したアルキル基としてはメチ ル基またはェチル基である。
[0022] 上記一般式(1)中のァ-オン錯体の鉄陽イオンに結合しているハロゲンイオンとし ては、 C1—又は Br—を使用でき、 C1—や Br—は、触媒活性の長期安定化の面で好まし い。さらに、力かる鉄に結合した CN—であってもよぐ S_— Phであってもよい。また、 窒素原子に結合したアルキル基としてはメチル基またはェチル基である。
[0023] また、下記一般式 (2)又は一般式 (3)で表される構造のカチオン型 2核または単核 鉄錯体を鉄錯体 (Y)として使用できる。該構造の鉄錯体により、ラジカル重合性モノ マーを定量的に重合させて ATRP型重合体を製造することができる。
[0024] [化 9]
[0025] (式(2)中、 Feはいずれも 2価の陽イオンであり、 Xは Cl_、 Br—又は厂を表し、 Rはメ
チル基又はェチル基を表し、 ΑΊまァ-オンを表す。)
[0026] [化 10]
[0027] (式(3)中、 Feは 2価の陽イオンであり、 Xは Cl_、 Br", CN_又は S_— Ph (Phはフ
4
ェニル基を表す。)又は S_— R (Rはメチル基又はェチル基を表す。)を表し、 Lは CH CN又は COを表し、 Rはメチル基又はェチル基を表し、 ΑΊまァ-オンを表す。 )
3
[0028] 上記一般式 (2)又は一般式 (3)で表されるカチオン型鉄錯体は、その構造的な特 徴として、 2価の鉄イオンに、窒素原子にアルキル基が結合したトリァザシクロノナン キレートが配位し、その錯体中には少なくとも一つのハロゲンイオン、シァノイオンや 、フエ-ルチオ-ルイオン(S—— Ph)、メチルチオ-ルイオン(S—— CH )ゃェチルチ
3
ォ-ル基(S—— C H )が結合したものである。
2 5
[0029] 上記一般式(2)で表されるカチオン型鉄錯体における鉄をつなぐハロゲンイオンと しては、 Cl_、 Br—又は I—であればよぐ触媒活性の長期安定ィ匕のためには、塩素ィ オン、臭素イオンであることが好ましい。また、窒素原子に結合したアルキル基として はメチル基またはェチル基である。
[0030] 上記一般式(3)で表されるカチオン型鉄錯体における鉄をつなぐイオンとしては、
Cl_、 Br—又は I—を使用でき、また、鉄イオンに結合したシァノイオンや、フエ-ルチオ 二ルイオン、メチルチオ-ルイオン、ェチルチオ-ルイオンであればよぐ触媒活性の 長期安定ィ匕のためには、それが塩素イオン、臭素イオンであることが好ましい。また、 窒素原子に結合したアルキル基としてはメチル基またはェチル基である。
[0031] また、一般式(3)で表されるカチオン型鉄錯体における鉄には、上記イオンの他に 、 CH CN, COが結合している。
3
[0032] 上記一般式(2)又は(3)で表される鉄錯体は一価のカチオンを荷電するため、一 価の対ァ-オンを有することができる。対ァ-オンとしては、上記一般式(1)中のァ- オンと同様の金属イオンを持つ錯体型ァユオンであってもよぐまた、通常の無機ァ
ユオン、有機系ァ-オンでも良い。例えば、 2価の鉄イオンがキレート配位子に配位 された三塩化型、三臭化型ァ-オン性鉄錯体を使用できる。また、一価の対ァ-オン A—が PF―、 SbF―、 BF―、 BrO―、 NO _、 C厂、 Br",及び F—などの無機ァ-ォ
6 6 4 3 3
ンを使用してもよい。また、有機系ァ-オンとして、 CF COO", CH COO", Ph-C
3 3
oo_、長鎖アルキルスルホニル基、長鎖アルキルカルボキシ基などの脂肪族または 芳香族の対ァ-オンを使用してもょ 、。
[0033] さらに、本発明では、下記一般式 (4)で表される構造のァ-オン型単核鉄錯体を鉄 錯体 (Y)として使用できる。該構造の鉄錯体により、ラジカル重合性モノマーを定量 的に重合させて ATRP型重合体を製造することができる。
[0034] [化 11]
[0035] (式(4)中、 Feは 2価の陽イオンであり、 Xは Cl_、 Br 、 CN 又は S — Ph (Phはフ
5
ェ-ル基を表す。)又は S_— R (Rはメチル基又はェチル基を表す。)を表し、 D+は カチオンを表し、 Rはメチル基又はェチル基を表す。 )
[0036] 上記一般式 (4)で示される鉄錯体は、その構造的な特徴として、 2価の鉄イオンに 窒素原子にアルキル基が結合したトリァザシクロノナンキレートが配位し、また、かか る鉄に結合しているハロゲンイオンとしては、 Cl_、 Br—又は I一であればよぐ触媒活 性の長期安定ィ匕のためには、それが塩素イオン、臭素イオンであることが好ましい。 さらにかかる鉄イオンに結合したシァノイオンや、フエ-ル基 (Ph)が結合した硫黄ィ オン、メチル基やェチル基が結合した硫黄イオンであってもよい。また、窒素原子に 結合したアルキル基としてはメチル基またはェチル基である。
[0037] 上記一般式 (4)における D+は一価のカチオンである力 そのカチオンとしては、ァ ンモ-ゥム、フォスフォ-ゥム、スルフォ-ゥムの如く有機ォ-ゥムイオン、及びアル力 リ金属イオンなどの一価のカチオンであればょ 、。 2価の鉄力もなるカチオン性錯体 または有機ォ-ゥムカチオン、例えば、テトラエチルアンモ-ゥム、テトラプチルアン
モ-ゥム、テトラフェェ-ルアンモ-ゥム、トリメチルォクチルアンモ-ゥム、トリメチルド デシルアンモ-ゥム、テトラエチルフォスフォ-ゥム、テトラブチルフォスフォ-ゥム、テ トラフエ-ルフォスフォ-ゥム、トリフエ-ルスルフォ -ゥムであることが好適である。
[0038] さらにまた、本発明では、下記一般式 (5)で表される構造のものを鉄錯体 (Y)として 使用できる。該構造の鉄錯体により、ラジカル重合性モノマーを定量的に重合させて ATRP型重合体を製造することができる。
[0039] [化 12]
[0040] (式(5)中、 Feは 2価の陽イオンであり、 Xは Cl_、 Br 、 CN 又は S — Ph (Phはフ
6
ェニル基を表す。)又は S_— R (Rはメチル基又はェチル基を表す。)を表し、 Lは
1 1 2
CH CN又は COを表し、 Rはメチル基又はェチル基を表す。 )
3
[0041] 上記一般式 (5)で示される鉄錯体は、その構造的な特徴として、 2価の鉄イオンに 窒素原子にアルキル基が結合したトリァザシクロノナンキレートが配位して 、る。また 、力かる鉄イオンに結合しているハロゲンイオンとしては、 Cl_、 Br一又は I一であれば よぐ触媒活性の長期安定ィ匕のためには、それが塩素イオン、臭素イオンであること が好ましい。またシァノイオン、フエ二ルチオ二ルイオン、メチルチオ二ルイオン、ェチ ルチオ二ルイオンなどが結合しても良い。さらにかかる鉄に結合した配位子として、ァ セトニトリル、カルボ-ル基であってもよい。また、窒素原子に結合したアルキル基とし てはメチル基またはェチル基である。
[0042] 上記一般式(1)〜(5)で示される触媒を用いて、ラジカル重合性モノマーの重合反 応を行う場合、その重合反応において使用するラジカル重合開始剤 (Z)としては、活 性ハロゲン化合物、例えば、 a ーハロゲノカルボ-ル類化合物、 a ーハロゲノカルボ ン酸エステル類ィ匕合物、ハロゲンメチルアレン類活性メチレンィ匕合物またはポリハロ ゲンィ匕アルカン類ィ匕合物であることが好ましい。より詳しくは、 1, 1—ジクロロアセトフ ェノン、 1, 1ージクロ口アセトン、 1, 1 ジブ口モアセトフエノン、 1, 1 ジブ口モアセト
ン、などのカルボニル類化合物、または、 2—ブロモ—2—メチルプロパン酸ェチル、 (2 ブロモ 2—メチルプロパン酸アントラセ-ルメチル、 2 クロ 2, 4, 4 トリメ チルダルタル酸ジメチル、 1, 2—ビス(α ブロモプロピオ-ルォキシ)ェタンの如く エステノレ類、クロロメチノレベンゼン、ブロモメチノレベンゼン、ョードメチノレベンゼン、ジ クロロメチノレベンゼン、ジブ口モメチノレベンゼン、 1 フエニノレエチルクロライド、 1ーフ ェニルェチルブロマイドの如く活性メチレン (メチン)型アレン類または四塩ィ匕炭素、 四臭化炭素の如くポリハロゲン類の化合物などがあげられる。
[0043] ラジカル重合開始剤 (Ζ)として、三つ以上の活性点を有する重合開始剤を用いるこ とで、星型ポリマーを簡単に合成することできる。例としては、 1, 3, 5 トリクロロメチ ルベンゼン、 1 , 3, 5 トリブロモメチルベンゼン、 1, 2, 4, 5—テトラクロロメチルベン ゼン、 1, 2, 4, 5—テトラブロモメチノレベンゼン、 1, 2, 3, 4, 5, 6 へキサクロロメチ ルベンゼン、 1 , 2, 3, 4, 5, 6 へキサブ口モメチルベンゼンの如く活性メチレン型 ハロゲンメチルアレン類ィ匕合物などがあげられる。
[0044] また、上記活性ハロゲンィ匕合物残基をポリマーの末端または側鎖に有するポリマー を重合開始剤として用いることもできる。例えば、ポリメタアタリレート類、ポリアクリレー ト類、ポリアクリルアミド類、ポリスチレン類、ポリビニルピリジン類、ポリエチレングリコ ール類、ポリエーテル類ポリマーの片末端または両末端に上記活性ハロゲンィ匕合物 残基、例えば、 a ロゲノカルボ-ル、 a ロゲノカルボン酸エステル残基が結 合したポリマーを好適に用いることができる。また、例えば、エポキシ榭脂類、ポリビ- ルアルコール類、多糖類などポリマーの如く側鎖に水酸基を持ち、その水酸基に活 性ハロゲンィ匕合物残基、例えば α ロゲノカルボン酸残基が結合したポリマーを 取り上げることもできる。このようなポリマーを重合開始剤として用いた場合、ブロック ポリマーまたは櫛型ポリマーを容易に得ることができる。
[0045] 上記一般式(1)〜(5)で示される鉄錯体と、活性ハロゲンィ匕合物とを組み合わせて 使用する場合には、錯体 Ζ活性ハロゲンィ匕合物で表されるモル比カ^〜 0. 5範囲で の割合で使用することができるが、鉄触媒活性の高さから考えた場合、活性ハロゲン 化合物が錯体より過剰であることが好ま U、。
[0046] 本発明の鉄錯体 (Υ)による ATRP重合系は、ラジカル重合性モノマー全般に適応
できる。重合性モノマーの例としては、(メタ)アタリレート類、(メタ)アクリルアミド類、ス チレン類、ビュルピリジン類などを取りあげることができる。より詳しくは、メチルメタタリ レート、ェチルメタタリレート、ブチルメタタリレート、 t ブチルメタタリレート、へキシノレ メタタリレート、シクロへキシノレメタタリレート、ベンジノレメタタリレート、 2—ヒドロキシェ チルメタタリレート、 2—ジメチルアミノエチルメタタリレートなどのメタタリレート類モノマ 一、または、メチルアタリレート、ェチルアタリレート、ブチルアタリレート、 tーブチルァ タリレート、へキシルアタリレート、シクロへキシルアタリレート、ベンジルアタリレート、 2 ーヒドロキシェチルアタリレート、 2—ジメチルアミノエチルアタリレートなどのアタリレー ト類モノマー、または、 N, N ジメチルアクリルアミド、 N, N ジェチルアクリルアミド 、 N—イソプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド類モノマー、または、スチレン、 2 —クロロメチノレスチレン、 3—クロロメチノレスチレン、 4—クロロメチノレスチレン、 p—メト キシスチレン、 p ビュル安息香酸、 p ビュルフエ-ルスルホン酸などのスチレン類 モノマー、または p—ビュルピリジン、 o ビュルピリジンなどのビュルピリジン類モノマ 一を用いることができる。
[0047] これらのモノマーは単独または二種類以上のモノマーを同時に用いることもできる。
また、二種類以上のモノマーを重合反応の一定時間毎に加えて使用することもでき る。第一モノマーが消費されて力も次のモノマーをカ卩えることで、得られるポリマーを ジブロック、またはトリブロック、あるいはそれ以上のブロック共重合体の構造とするこ とがでさる。
[0048] ブロック共重合体での合成において、重合性モノマーをスチレン系と (メタ)アタリレ ート系から選定することで、その二つのポリマー骨格からなるブロック共重合体を得る ことができる。また、親水性モノマーと疎水性モノマーを用いることで、親水性ポリマー 骨格と疎水性ポリマー骨格力もなる両親媒性ブロック共重合体を得ることができる。
[0049] また、ブロック共重合体を得る方法として、末端に活性ハロゲン残基を有するポリマ 一を開始剤として用いることで、重合性モノマーを重合させることもできる。
[0050] ブロック共重合体を得る際に、重合性モノマーとして塩基性モノマーを用いた場合 、塩基性ポリマー骨格と他のポリマー骨格力 構成されるブロック共重合体を得ること ができる。
[0051] 重合性モノマーと重合開始剤 (Z)を混合し、重合を行う際、重合性モノマー Z活性ハ ロゲン化合物で表されるモル比は 10〜: LOOOOであればよぐ重合度をよりよく制御す るためには、そのモル比は 50〜1000であれば更に好ましい。
[0052] 本発明での重合開始剤系を用いて重合反応を行う際、反応温度を室温以上に設 定できるが、 30〜120°Cの温度範囲で反応を行うことが好ましい。
[0053] 反応時間は、 1〜48時間の範囲で十分である力 開始剤の種類、ォレフィンモノマ 一の種類及び反応温度によりその反応時間を短くまたは長く設定することができる。 更に、反応時間の設定は、得られる共重合体の分子量制御に合わせて、設定するこ とが望ましい。
[0054] 本発明における共重合反応にお 、ては、溶媒なしでのバルタ重合、又は溶媒存在 下での溶液重合、又はアルコール類溶剤、水性媒体中の重合などの異なる重合方 法が適用できる。
[0055] 本発明の重合反応に用いることができる溶剤としては、ジクロロメタン、 1, 2—ジクロ 口エタン、テトラヒドロフラン、ァセトニトリル、ベンゼン、トルエン、クロ口ベンゼン、ジク ロロベンゼン、ァ-ソール、シァノベンゼン、ジメチルホルムアミド、 N, N—ジメチルァ セトアミド、メチルェチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ぺ ンタノール、へキサノール等が挙げられる。
また、水性媒体中での重合では、水と任意の割合で混合できる有機溶剤類である ことが好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、アセトン、ァセトニトリル、ジメチ ルァセトアミド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランなどを取り上げることができる。 さらに、完全水中にて、水溶性モノマーの重合を行うこともできる。また、水中にて疎 水性モノマーを分散して重合を行うこともできる。
[0056] 本発明での上記一般式(1)〜(5)で示された 2価鉄錯体中、特にイオン性鉄錯体 は、疎水性ポリマーを溶解させない溶剤類、例えば、メタノール、水中に可溶である。 このことから、 2核鉄錯体を用いた重合系では、その重合が終了後、得られた混合物 をメタノール、アルコール、水などの媒体にて沈殿させることで、混合物中の鉄錯体 はこれらの極性溶剤中に溶解し、その一方、ポリマーは沈殿する。このような単純な 方法により、 2核鉄錯体を回収、そして濃縮し、再び重合触媒として用いることができ
る。
この回収において、他の錯化剤の使用は一切なしに、ポリマーにとっては貧溶剤と なる溶剤類、例えば、メタノール、エタノール、水などを用いることで好適に回収でき る。
回収した混合物を濃縮し、それをメタノール、エタノールまたは水などの溶剤で洗浄 し、可溶性錯体だけを回収、純化することができる。
[0057] また、本発明においては、下記一般式 (6)又は(7)で表される構造のものを鉄錯体
(Y)として使用することで、ラジカル重合性モノマーを定量的に重合させて R—ATR
P型重合体を製造することができる。
[0058] [化 13]
[0059] (式(6)中、 Feは 3価の陽イオンであり、 Xは CI 、 Br 又は I を表し、 Rはメチル基又 はェチル基を表す。 )
[0060] [化 14]
[0061] (式(7)中、 Feは 3価の陽イオンであり、 Xは Cl_、 Br—又は厂を表し、 Rはメチル基又
8
はェチル基を表す。 )
[0062] 上記一般式 (6)又は(7)で表されるような、 3価の鉄イオンに環状のアミン系キレー ト配位子が配位し、かつ鉄周辺にハロゲン基を有する鉄錯体 (Y)と、重合開始剤 (Z) としてラジカル発生剤を使用することにより、 R—ATRP法によってラジカル重合性モ ノマーの重合を定量的に進行させることができる。この重合により末端に化学変換が 可能なポリマー、およびこのポリマーを単離後マクロイニシエータ一として用いること
によるポリマー、段階的にモノマーを添カ卩して力 なるポリマー、ブロックコポリマーな どの構造が制御されたポリマーを得ることができる。
[0063] 特に、この錯体を用いる際の大きな特徴として、鉄錯体 (Y)とラジカル発生剤にシ ァノ基を持つ有機化合物を組み合わせることで、ラジカル重合性モノマー力 の重合 体の MwZMn (Mn:重量平均分子量、 Mw:数平均分子量)で表される分子量分布 が 1. 1〜1. 4となり、数平均分子量が 1万〜 20万のポリマーを簡単に得ることができ る。この方法で得られたポリマー末端にはハロゲン原子が結合しているので、これら のポリマーを ATRP重合のマクロイニシエータ一として用いることもできるし、その末 端を他の化合物残基に変えることもできる。
[0064] また、一般式 (6)と(7)で示された鉄錯体を用い、それを重合後単離精製回収によ り、重合触媒として再利用することができる。
[0065] 本発明での一般式 (6)と(7)で示される鉄錯体は、(メタ)アタリレート類、スチレン類 、アクリルアミド類、ピリジン類などいずれのラジカル重合性単量体の重合に有効に 用いることができる。また、上記鉄錯体を用いた R— ATRP重合法では、高分子量の 重合体、高分子量のブロック共重合体を容易に与えることができる。
[0066] 上記式 (6)中、ァミン類の環状配位子以外に、 Xとして、 3つともハロゲンイオンとし て、 Cl_、 Br—又は I—であればよぐ触媒活性の長期安定ィ匕のためには、それが塩素 イオン、臭素イオンであることが好ましい。上記式(7)中、 Xはすべてハロゲンイオン
8
であり、 Rはメチルまたはェチルである鉄錯体を重合触媒として用いることができる。
[0067] 本発明での上記一般式 (6)〜(7)で示された鉄錯体を用いる重合反応では、ラジ カル発生剤としては、通常、ビニル系単量体類のラジカル重合に際して用いられてい るようなものであれば、いずれをも使用し得ることは勿論ではある力 それらのうちでも 特に代表的なものを例示すれば、 t ブチルパーォキシ(2—ェチルへキサノエート) 、 t ブチルパーォキシベンゾエートなどのパーォキシエステル、ジー t ブチルパー オキサイド、ジクミルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド、 1, 1 ビス(t ブチルパーォキシ) 3, 3, 5—トリメチルシクロへキサンなどのパーォキシケター ル等の有機過酸化物;ァゾビスイソブチ口-トリル、ァゾビスシクロへキサンカルボ-ト リル、 2, 2'—ァゾビス(2, 4 ジメチルバレ口-トリル)等のァゾ系化合物等があげら
れる。
[0068] また、ラジカル発生剤として、水溶性過酸化物、水溶性ァゾィ匕合物を用いることもで きる。例えば、ヒドロキシ— t—ブチルパーオキサイド、過酸ィ匕硫酸アンモ-ゥム、過酸 化硫酸カリウム、過酸化水素の如く過酸化物、また例えば、ァゾ系重合開始剤である VA-046B, VA-057, VA— 060, VA-067, VA— 086, VA— 044, V— 50 , VA-061, VA— 080などを挙げることができる。特にァゾ系水溶性開始剤を用い ることで、ポリマーの片末端に、開始剤残基由来の有用な官能基を導入することがで きる。
[0069] 本発明での鉄触媒とラジカル発生剤の組み合わせは、ラジカル重合性単量体全般 に適応できる。力かる重合性単量体としては、(メタ)アタリレート類、(メタ)アタリアミド 類、スチレン類、ビュルピリジン類などを取りあげることができる。より詳しくは、メチル メタタリレート、ェチノレメタタリレート、ブチノレメタタリレート、 tーブチノレメタタリレート、へ キシルメタタリレート、シクロへキシルメタタリレート、ベンジルメタタリレート、 2—ヒドロ キシェチルメタタリレート、 2—ジメチルアミノエチルメタタリレートなどのメタタリレート 類モノマー、または、メチルアタリレート、ェチルアタリレート、ブチルアタリレート、 t ブチルアタリレート、へキシルアタリレート、シクロへキシルアタリレート、ベンジルアタリ レート、 2—ヒドロキシェチルアタリレート、 2—ジメチルアミノエチルアタリレートなどの アタリレート類モノマー、または、 N, N ジメチルアクリルアミド、 N, N—ジェチルァ クリルアミド、 N—イソプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド類モノマー、または、 スチレン、 2 クロロメチノレスチレン、 3 クロロメチノレスチレン、 4 クロロメチノレスチレ ン、 ρ—メトキシスチレン、 ρ ビュル安息香酸、 ρ ビュルフエ-ルスルホン酸などの スチレン類モノマー、または p ビニルピリジン、 o ビニルピリジンなどのビニルピリジ ン類モノマーを用いることができる。
[0070] 本発明の上記一般式 (6)〜(7)による重合では、これらの重合性単量体の単独ま たは二種類以上を同時に反応に用いることもできる。また、二種類以上のラジカル重 合性単量体を重合反応の一定時間毎に加えて使用することもできる。第一のラジカ ル重合性単量体が消費されて力 次のラジカル重合性単量体をカ卩えることで、得ら れるポリマーがジブロック、またはトリブロックまたはそれ以上のブロック共重合体の構
造を取ることができる。
[0071] ブロック共重合体での合成において、重合性モノマーをスチレン系と (メタ)アタリレ ート系に力 選定することで、その二つのポリマー骨格からなるブロック共重合体を得 ることができる。同様に、スチレン系とビュルピリジン系とのブロック共重合体、スチレ ン系とアクリルアミド系とのブロック共重合体、(メタ)アタリレート系とアクリルアミド系か らのブロック共重合体を得ることができる。また、親水性モノマーと疎水性モノマーを 用いることで、親水性ポリマー骨格と疎水性ポリマー骨格力もなる両親媒性ブロック 共重合体を得ることができる。または、二種類の親水性モノマー力もの重合により、二 重親水性ブロック共重合体を得ることもできる。
[0072] 本発明でのラジカル発生剤と上記一般式 (6)〜(7)の鉄錯体を混合し、上記重合 性単量体の重合を行う際、前記鉄錯体をラジカル発生剤 1モルに対して 1〜6モル、 好ましくは 1. 5〜3モル使用することが好ましい。
また、上記ラジカル発生剤と鉄錯体の好ましいモル比を前提に、本発明でのラジカ ル重合性単量体とラジカル発生剤とのモル比は 50〜8000であれば、好適に重合を 行うことができる。ラジカル発生剤とラジカル重合性単量体とのモル比を変えることに より、数平均分子量を向上させたり、または低下させたりすることができる。特に、数平 均分子量が大き 、重合体又はブロック共重合体を得るためには、ラジカル重合性単 量体のモル数を高く設定することが望ましい。本発明では、数平均分子量が 20万以 上の重合体又はブロック共重合体を簡便に合成することができる。
[0073] 本発明での一般式 (6)〜(7)で示された上記鉄錯体を用いて重合反応を行う際、 反応温度を室温以上で、好ましくは、 30〜120°Cで反応を行うことができる。
[0074] 反応時間は、 1〜48時間の範囲で十分であるが、触媒系の種類、ラジカル重合性 単量体の種類及び反応温度によりその反応時間を設定することが望ましい。更に、 反応時間の設定は、得られる重合体の分子量制御に合わせて、設定することが望ま しい。
[0075] 本発明での一般式 (6)〜(7)で示された上記鉄錯体を用いて重合反応を行う際、 重合反応系にシァノ基を有する有機化合物を加えることにより、触媒効果を格段に向 上させ、分子量分布が狭い重合体を効率的に得ることができる。シァノ基を有する化
合物として、シァノアルカン、シァノアレン系を用いることができる。例えば、ァセトニト リル、シァノプロパン、シァノシクロへキサン、シァノシァノメチルベンゼン、シァノベン ゼンの如く慣用なシァノィ匕合物は勿論であり、その他、多官能基のシァノ化合物も好 適に用いることができる。
上記シァノ化合物を用いる場合、それは反応溶剤として用いてもよい。シァノ化合 物を使用する場合の使用量は、錯体に対し、 5倍モル以上の量にすることが好ましい
[0076] 本発明の重合反応においては、溶媒なしでのバルタ重合、又は溶媒存在下での溶 液重合、又はアルコール類、水性媒体の存在下での重合などの異なる重合方法が 適用できる。
得られる重合体の分子量分布を狭くすることを優先する場合、溶液重合が好まし 、 。本発明の上記一般式 (6)〜(7)の鉄錯体による重合反応に用いることができる溶剤 としては、ジクロロメタン、 1, 2—ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、ァセトニトリル、ベ ンゼン、トルエン、クロ口ベンゼン、ジクロロベンゼン、ァ-ソール、シァノベンゼン、ジ メチルフオルムアミド、 N, N—ジメチルァセトアミド、メチルェチルケトン、アセトン、メ タノ一ノレ、エタノーノレ、プロパノーノレ、ブタノーノレ、ペンタノ一ノレ、へキサノーノレ等が挙 げられる。また、水および水と溶解し合う有機溶剤を混合して得る水性媒体中、重合 反応も行うこともできる。溶液重合の際、シァノ化合物を添加することで、ポリマー分 子量分布がさらに制御できる。
[0077] 本発明での一般式 (6)〜(7)で示された上記鉄錯体を用いた重合では、その重合 反応終了後、反応液をアルコール類、アセトン、エーテル類、水などの媒体中で沈殿 させる作業により、重合体だけを沈殿させ、錯体をそれらの媒体に溶解させることが できる。従って、得られた重合体からは鉄錯体が除去され、媒体中の鉄錯体は濃縮 することで回収される。これにより回収された鉄錯体は再び重合用触媒として用いる ことができる。
[0078] 上記触媒回収用媒体は有機溶剤単独、または有機溶剤と水との混合溶媒を好適 に用いることができる。
[0079] 本発明の製造方法においては、一般式(1)〜(7)で表される鉄錯体を用いることに
より、銅錯体など有毒な金属イオン系と比較し、環境汚染を抑制することもでき、また
、得られたポリマーの後処理過程も単純ィ匕することができる。また、一般式(1)〜(7) で表される鉄錯体は重合反応終了後、ポリマーを再沈殿させる単純な作業過程で、 錯体を効率的に溶剤相へ溶かすことにより容易に回収され、これを触媒として再使用 することができる。
[0080] また本発明の製造方法においては、上記鉄錯体とラジカル発生剤を用いることで、 他の配位子など要らず、重合反応系が極めて単純化となり、かつその鉄錯体の優れ た触媒活性により、そのラジカル重合反応が定量的に進行する。また、得られた重合 体は通常のラジカル重合では得られな ヽ活性末端を形成して ヽるので、定量重合後 、他のラジカル重合性単量体を加えることで、ブロック共重合体を簡便に製造するこ とがでさる。
[0081] このような本発明の製造方法により得られた重合体及びブロック共重合体は、種々 の用途、例えばインキ、顔料分散、カラーフィルター、フィルム、塗料、成形材料、接 着剤、電気'電子品部材、医療用部材など広範に使用することができる。
実施例
[0082] 以下に実施例および比較例を持って本発明をより詳しく説明する。
[0083] 実施例中における測定は、以下の方法により行った。
(GPC測定法)
高速液体クロマトグラフィー (東ソ一株式会社製 HLC— 8020)、 UV及び RI検出器 、 TSKgel 2000x1+ 3000Hxl+ 5000Hxl+guardcolumnHxl—H、溶媒:テ卜ラ ヒドロフラン(以下、 THFと略す)、流速: 1. OmL/min,温調: 40°Cにて測定した。
[0084] (NMR測定)
13C— NMRの測定は、日本電子(株)製の Lambda600にて行った。
(ICP測定法)
マイクロウエーブ試料前処理装置(Mileston General製 MLS- 1200MEGA)にて、重 合反応後沈殿で得られたポリマー粉末を処理し、その液を ICP分析装置 (Perkin Elm er製 Optima 3300DV)にて、鉄残留量を測定した。
[0085] (N, N, N—トリメチルシクロアザノナン (TACN)の合成例)
2L3口フラスコに 24. 3gの無水 K COと 600mLの蒸留水を入れ、強く攪拌しなが
2 3
ら 5. 5gのジエチレントリァミンと 3 lgの p—トルエンスルホニルクロライドを加えた。 90 °Cの油浴で 1時間撹拌した後、 240mLのキシレン、 19. 15gの水酸化ナトリウム、 5. 35mLの IMBu N+OH—水溶液、 8mLの 1, 2—ジブロモェタンをカ卩えて 90°Cで 4
4
時間撹拌した。その後 8mLの 1, 2—ジブロモェタンをカ卩えて 90°Cで 8時間撹拌し、 さらに 8mLの 1, 2—ジブロモェタンをカ卩えて 90°Cで 18時間撹拌した。室温に戻して 、濾過を行い、得られた固体を水で洗浄して Ts TACN (Ts :トシル基) 25gを得た。
3
[0086] 30mLナスフラスコに 10. 37gの Ts TACNを入れ、濃硫酸 10mLと蒸留水 2mLの
3
混合物を加え、容器を油浴で 140°Cに昇温し、攪拌して固体を溶解させると、黒色の 溶液が得られた。これをさらに 140°Cで 6時間撹拌した。得られた溶液を、 50% (w/ w)水酸化ナトリウム水溶液 32gと蒸留水 13gを加えた 500mLの 2口フラスコに、氷冷 しながらゆっくりと加えた。これに 37%ホルムアルデヒド水溶液 23mLと 88%ギ酸 23 mLをカ卩え、 90°Cに昇温すると気体 (CO )が発生した。気体の発生が収まってから、
2
反応容器を 0°Cに冷やし、 50% (wZw)水酸ィ匕ナトリウム水溶液 50gをカ卩えた。これ に 200mLのへキサンを加えて 2分間攪拌し、分液漏斗で有機相を分離した。さらに 水相からへキサン抽出を行い、へキサン部分を合わせて硫酸ナトリウムで乾燥させた 後、減圧下で濃縮を行 、、 目的の Me TACN (Me:メチル基)を得た (収率 25%)。
3
[0087] [化 15]
[合成例 1]
<鉄錯体 1の合成 >
lOOmLシュレンク管に、 FeCl 0. 317g (2. 50mmol)とァセトニトリノレ 20mLをカロ
2
えて懸濁させた反応溶液に Me TACNO. 50mL (2. 58mmol)をカ卩え、 2時間撹拌
した後、濾過で不溶物を除去した。減圧下で反応溶液の体積が 5mL程度になるまで 濃縮した後、 50mLのエーテルを乗せると、白色の固体が沈殿した。この固体をァセ トニトリル Zエーテル力も再結晶して、 664mgの鉄錯体 1を得た (収率 89%)。
[0090] [合成例 2]
<鉄錯体 2の合成 >
20mLシュレンク管に、 FeBr20. 108g (0. 5mmol)とァセトニトリル 4mLをカロえて 懸濁させた反応溶液に Me TACNO. 10mL (0. 51mmol)のァセトニトリル(2mL)
3
溶液を加え、 1時間撹拌した後、濾過で不溶物を除去した。 10mLのエーテルを乗せ ると、白色の固体が沈殿した。この固体をァセトニトリル Zエーテル力も再結晶して、 2 OOmgの鉄錯体 2を得た (収率 75%)。
[0092] [合成例 3]
<鉄錯体 3の合成 >
20mLシュレンク管中の鉄錯体 l (45mg, 0. 05mmol) ZMeCN (2mL)溶液に、 AgBF (16mg, 0. 063mmol) ZMeCN (lmL)溶液を加えて、 1時間撹拌した。溶
4
液の色は淡黄色で終始変化が無力つた。溶液をセライト濾過してジェチルエーテル を乗せてデカンテーシヨンを行うと、白色の固体が沈殿した。これをエーテルで洗浄 して鉄錯体 3を得た (収率 73%)。
ESI-MSESI+ :m/z = 559. 1, 262. 1, ESI- :m/z = 87. 0 (BF ")
4
[0094] [合成例 4]
<鉄錯体 4の合成 >
lOOmLシュレンク管に Me TACN4gとエタノール 16mLをカ卩え、 FeCl · 6Η 07.
3 3 2
66gのエタノール溶液 50mLをゆっくりと加えると、黄色の微結晶が析出した。 1時間 ほどそのまま撹拌した後、濾過を行い、固体を回収した。これをエーテルで洗浄して 、芥子色の鉄錯体 4 (収率 83%)を得た。
[実施例 1]
[0096] <ポリメチルメタタリレート(PMMA)の合成 >
窒素雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子、鉄錯体 2 (l lmg, 0. Olmmol)、トリク ロロ酢酸メチル(0. 0. O05mmol)を入れ、メチルメタタリレート(以下、 MMA と略す)(0. 2g, 2mmol)、THF0. ImLをカ卩えた。容器を密閉して 80°Cの油浴で 1 0時間攪拌した。転化率 > 95%であり、生成した PMMAは Mn=43000、 Mw/M n= l. 5であった。
[実施例 2]
[0097] <ポリジメチルアミノエチルメタタリレート(PDAEMA)の合成 >
アルゴン雰囲気下で、シュレンク管に攪拌子、鉄錯体 2 (9mg, 0. Olmmol)、トリク ロロ酢酸メチル(2. 0. 02mmol)を入れ、 N, N—ジメチルアミノエチルメタタリ レート(0. 31g, 2mmol)をカ卩えた。容器を密閉して 80°Cの油浴で 3時間攪拌した。 転化率 > 95%であり、生成した PDAEMAは Mn= 13000、 Mw/Mn= l . 4であ
[実施例 3]
[0098] <ポリスチレン(PSt)の重合 >
窒素雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子、鉄錯体 l (9mg, 0. Olmmol)、トリク ロロ酢酸メチル(2. 0. 02mmol)を入れ、スチレン(0. 2g, 2mmol)をカ卩えた
。容器を密閉して 100°Cの油浴で 40時間攪拌した。転ィ匕率 > 95%であり、生成した PStは Mn= 9000、 Mw/Mn= l. 4であった。
[実施例 4]
[0099] くメチルメタタリレートと t—ブチルメタタリレートのブロック共重合体合成 >
窒素雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子、鉄錯体 1 (9mg, 0. Olmmol)、 2—プロ モイソブタン酸ェチノレ(2. 0. 02mmol)を入れ、 tert—ブチルメタタリレートを 加えた。容器を密閉して 100°Cの油浴で 10時間攪拌した。転ィ匕率〉 95%であり、生 成したポリ(tert—ブチルメタタリレート) (PtBMA)は Mn= 54000、 Mw/Mn= l. 6であった。これに、窒素雰囲気下で、 THFlmLを加えて溶解させた後、 MMA(2. Og, 2mmol)を加えて、さらに 80°Cで 30時間反応させた。このとき、モノマーの転ィ匕 率は > 95%であり、生成したポリマー(PtBMA— b— PMMA)の Mn= 330000、 Mw/Mn= l. 7であった。
[0100] 図 1はブロック共重合前後のポリマーの GPCチャートである。図 1において、 bはブ ロック共重合前(PtBMA)、 aはブロック共重合後(PtBMA— b— PMMA)の GPC チャートを示す。ブロック共重合進行の結果、ポリマーは高分子量側へ大きくシフトし た。このように本発明の製造方法によれば、ブロック共重合体を容易に重合すること が可能であった。
[実施例 5]
[0101] <触媒回収、再利用実験 >
〔重合 1回目〕
窒素雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子、鉄錯体 l (9mg, 0. Olmmol)、トリク ロロ酢酸メチル(2. 0. 02mmol)を入れ、 MMA(1. Og, lOmmol)を加えた
。容器を密閉して 80°Cの油浴で 10時間攪拌した。転ィ匕率〉 95%であり、生成した P MMAは Mn= 72000、 Mw/Mn= l. 5であった。
[0102] 〔ポリマーと触媒の分離及び回収〕
上記重合 1回目で合成したポリマーを、 5mLの THFに溶解させて、 20mLのメタノ ールに滴下して再沈殿精製を行った。沈殿したポリマーと、触媒を含む溶液部分を それぞれ減圧下で乾燥させると、ほぼ無色の精製ポリマーが 950mg得られ、鉄錯体 を含む溶液部分からは黄色の 35mgの固体が回収された。
[0103] 〔重合 2回目〕
上記回収された鉄錯体を含む黄色の固体 35mgを用いた以外は、重合 1回目と同 様の条件で重合反応を行った。重合は速やかに進行し、生成した PMMAは、転ィ匕 率は 95%、 Mn= 39000、 Mw/Mn= l. 7であった。
[0104] 図 2に、重合一回目(上)と重合 2回目(下)の GPCチャートを示す。このように、本 発明の製造方法によれば、回収した鉄錯体を再度重合に使用でき、再利用したもの であっても好適に重合が可能であった。
[実施例 6]
[0105] <ポリマーの再沈殿精製による鉄の除去 >
窒素雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子、鉄錯体 l (9mg, 0. Olmmol)、トリク ロロ酢酸メチル(2. 0. 02mmol)を入れ、 MMA(1. Og, lOmmol)を加えた
。容器を密閉して 80°Cの油浴で 10時間攪拌した。転ィ匕率は 95%であり、生成した P
MMAは Mn= 72000、 Mw/Mn= l. 5であった。
[0106] 300mgの未精製ポリマーを lmLの THFに溶解させて 30mLのメタノールに滴下し て再沈殿精製を行 、、沈殿したポリマーを乾燥させて再び lmLの THFZ30mLのメ タノールで再沈殿精製した。精製ポリマーの収量は 260mg (87%)であった。
[0107] 図 3に、未精製ポリマー lOmgを 3mLのジクロロメタンに溶解させたものの UV— Vi sの吸収スペクトル (A)、精製されたポリマー lOmgをジクロロメタン 3mLに溶解させ た時の UV— Visの吸収スペクトル(B)を示す。
[0108] 以上のように、再沈殿精製によってポリマーの着色部分を溶媒中に取り除くことが 可能であり、無色透明のポリマーを容易に得られることが示された。 ICP— MS測定 の結果、ポリマー中鉄残量は 0. 004%であった。
[実施例 7]
[0109] <水性媒体中でのポリ(ジメチルアミノエチルメタタリレート)の合成 >
20mLシュレンク管に攪拌子、鉄錯体 l (3mg, 0. 0033mmol)を入れ、アルゴン 気流下で脱気した蒸留水 0. 25mLとメタノール 0. 25mLを加え錯体を溶解させた後 、トリクロ口酢酸メチル(0. 8 /z L, 0. 0067mmol)とジメチルアミノエチルメタクリレー HDMAEMA) (0. 56mL, 3. 3mmol)の混合物を加えて、 2回凍結脱気を行い、 アルゴンで常圧に戻した。容器を密閉して 80°Cの油浴に浸け 3時間攪拌した。転ィ匕 率は 86%、 Mn= 23000、 Mw/Mn= l. 6であった。反応溶液をそのまま減圧乾 燥して、 389mgのポリマー(収率 83%)を得た。
[実施例 8]
[0110] <錯体 3を用いたポリメチルメタタリレートの合成 >
窒素雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子、鉄錯体 3 (7mg, 0. 01mmol)、 2—プロ モイソブタン酸ェチル(2. 0. 02mmol)を入れ、 MMA(1. Og, lOmmol)を 加えた。容器を密閉して 80°Cの油浴で 10時間攪拌した。転ィ匕率〉 95%であり、生 成した PMMAは Mn= 129000、 Mw/Mn= l. 8であった。
[実施例 9]
[0111] くポリメタタリレートの重合〉
スリ付き試験管に攪拌子、鉄錯体 4 (8mg, 0. 025mmol)、ァゾビスイソプチ口-ト リル(以下、 AIBNと略す)(4mg, 0. 025mmol)を入れ、系内をアルゴン置換した後 、アルゴン気流下で MMA(0. 5mL, 4. 8mmol)とァセトニトリル 0. 5mLの混合物 を加えた。容器を密閉して 60°Cの油浴で 10時間攪拌した。このとき、転化率〉 95% 、 Mn= 27000、 Mw/Mn= l. 4であった。
[実施例 10]
[0112] くポリスチレン(Pst)の重合 >
スリ付き試験管に攪拌子、鉄錯体 4 (8mg, 0. 025mmol)、 AIBN (2mg, 0. 012 mmol)を入れ、系内をアルゴン置換した後、アルゴン気流下でスチレン(550 L, 5 mmol)を加えた。容器を密閉して 100°Cの油浴で 20時間攪拌した。その後容器を 開けてポリマーをトルエンに溶かした(転化率 > 95%, Mn= 25000, Mw/Mn= l . 5)。反応溶液を 30mLのメタノール中に入れて再沈殿精製を行った。沈殿したポリ マーを集めて減圧乾燥した。 Pstの収率は 90%であった。
[実施例 11]
[0113] くポリメチルメタタリレートの合成 >
20mLシュレンク管に攪拌子、鉄錯体 4 (8mg, 0. O25mmol)、 AIBN (lmg, 0. 0 06mmol)を入れ、系内をアルゴン置換した後、アルゴン気流下で MMA(265 L, 2. 5mmol)とァセトニトリル 0. 5mLの混合物をカ卩えた。容器を密閉して 60°Cの油浴 で 9時間攪拌した。その後容器を開けて反応溶液を 20mLのメタノール中に入れて 反応を停止した。沈殿したポリマーを集めて減圧乾燥した (転ィ匕率 50%, Mn= 150 00, Mw/Mn= l . 5)。
[0114] [比較例 1]
鉄錯体 4を添加しな 、以外は、上記実施例 11と同様の条件で重合をおこなった。 結果として 246mgのポリマーを得た(転化率 > 95%, Mn= 55000, Mw/Mn= l . 9)。
[0115] 比較例 1においては、重合反応がコントロールされていないため、反応時間が 9時 間の時点でほとんどのモノマーが反応してしまい得られるポリマーの分子量分布が広 いものであった。これに対し、鉄錯体 4を使用した実施例 11においては、重合反応が コントロールされており、反応時間が 9時間の時点でも重合反応が終了しておらず得 られるポリマーの分子量分布を狭いものとすることができることが示された。
[実施例 12]
[0116] <モノマー段階的添カ卩による重合によるポリマー分子量制御 >
20mLシュレンク管に攪拌子、鉄錯体 4 (8mg, 0. 025mmol)、 AIBN (lmg, 0. 0 06mmol)を入れ、系内をアルゴン置換した後、アルゴン気流下で MMA(0. 48g, 4 . 8mmol)とァセトニトリル 0. 5mLの混合物をカ卩えた。容器を密閉して 60°Cの油浴 で 10時間攪拌した後、 80°Cの湯浴で 10時間反応させた。このときのモノマー転ィ匕率 は 95%以上であり、得られたポリマー(PMMA1)は、 Mn= 34000, Mw/Mn= l . 2であった。この容器に、 MMA(1. Og, lOmmol)とァセトニトリル lmLをカ卩えて、 8 0°Cで 50時間反応させた。反応後の溶液を分析すると、モノマーの転化率 95%以上 であり、得られたポリマー(PMMA2)は、 Mn= 76000, Mw/Mn= l. 3であった。 図 4に、 MMAを段階的に添カ卩した GPCチャートを示す。図 4において、 dは MMAを
1回目に添カ卩した後(PMMA1)、 cは MMAを 2回目に添カ卩した後(PMMA2)の G PCチャートを示す。
[実施例 13]
[0117] くポリメチルメタタリレートとポリブチルメタタリレートからなるブロック共重合体の合成
>
3方コックを装着したスリ付き試験管に攪拌子、鉄錯体 3 (8mg, 0. 024mmol)、 AI BN dmg, 0. 006mmol)を入れ、系内をアルゴン置換した後、アルゴン気流下で n ブチルアタリレート(720 L, 5mmol)とアセトン 0. 5mLの混合物を加えた。容器 を密閉して 100°Cの油浴で 10時間攪拌した。ここでブチルアタリレートモノマーの転 ィ匕率は〉 95%で Mn= 53000, Mw/Mn= l. 6のポリマー(PBA)を得た。この反 応混合物にさらに MMA (530 L, 5mmol)を添カ卩して 100°Cの油浴で 15時間攪 拌した。ここで MMAの転化率は > 95%であり、得られたブロック共重合体(PBA— b— PMMA)は Mn=89000, Mw/Mn= l. 8であった。
ブロック共重合前後の GPCチャートを図 5に示す。 fはブロック共重合前(PBA)、 e はブロック共重合後(PBA— b— PMMA)の GPCチャートである。このように本発明 の製造方法によれば、ブロック共重合体を容易に重合することができた。
[実施例 14]
[0118] <鉄錯体 4の回収再利用重合 >
〔重合 1回目〕
20mLシュレンク管に攪拌子、鉄錯体 4 (8mg, 0. O25mmol)、 AIBN (lmg, 0. 0 06mmol)を入れ、系内をアルゴン置換した後、アルゴン気流下で MMA(500mg, 0. 5mmol)とァセトニトリル 0. 5mLの混合物をカ卩えた。容器を密閉して 60°Cの油浴 で 20時間攪拌した。転化率 > 95%であり、生成した PMMAは Mn= 70000、 Mw /Mn= l. 4であった。
[0119] 〔ポリマーと錯体の分離及び回収〕
上記重合 1回目で合成したポリマーを、 2mLの THFに溶解させて、 20mLのメタノ ールに滴下して再沈殿精製を行った。沈殿したポリマーと、触媒を含む溶液部分を それぞれ減圧下で乾燥させ、ほぼ無色の精製ポリマー 465mg、鉄錯体を含有する
黄色の固体 27mgを回収した。
[0120] 〔回収した鉄錯体 4を用いた重合:重合 2回目〕
1回目の重合において回収された鉄錯体を含有する黄色の固体 27mgを用いた以 外は、重合 1回目と同様にして重合反応を行った。重合は速やかに進行し、生成した
PMMAは、転ィ匕率 > 95%、 Mn= 55000、 Mw/Mn= l . 8であった。
[0121] 図 6に、重合 1回目(上)と重合 2回目(下)の GPCチャートを示す。このように、本発 明の製造方法によれば、回収した鉄錯体を再度重合に使用でき、再利用したもので あっても好適に重合が可能であった。
[実施例 15]
[0122] <R-ATRP (マクロイニシエータ一の合成)と ATRPの交互によるブロック共重合体 合成〉
〔鉄錯体 4を用いた R— ATRPによるマクロイニシエータ一の合成〕
スリ付き試験管に攪拌子、鉄錯体 4 (8mg, 0. 025mmol)、 AIBN (2mg, 0. 012 mmol)を入れ、系内をアルゴン置換した後、アルゴン気流下で MMA (0. 5mL, 4. 8mmol)とァセトニトリル 0. 5mLの混合物をカ卩えた。容器を密閉して 80°Cの油浴で 2 0時間攪拌した。このとき、転化率〉 95%、 Mn= 35000, Mw/Mn= l. 3であつ た。 THF (2mL) ZMeOH (30mL)で 1回再沈殿精製、乾燥を行いポリマーを単離 した。
[0123] 〔得られたポリマーをマクロイニシエータ一として、鉄錯体 1を用いた ATRPによるブロ ック共重合体の合成〕
窒素雰囲気下、 20mLシュレンク管に鉄錯体 l (9mg, 0. Olmmol)と、鉄錯体 4に より合成したマクロイニシエータ一(PMMA—C1, Mn= 35000, Mw/Mn= l. 3) (350mg, 0. Olmmol)の THF (lmL)溶液、 tert—ブチルメタタリレート(0. 64g, 5 mmol)を加えた。容器を密閉して 100°Cの油浴で 30時間攪拌した。このときモノマ 一の転化率は 89%であり、生成した PMMA— b— PtBMAは Mn=84000、 Mw/ Mn= l. 4であった。
[0124] ブロック共重合前後の GPCチャートを図 7に示す。 hはブロック共重合前(PMMA) 、 gはブロック共重合後(PMMA— b— PtBMA)の GPCチャートである。このように本
発明の製造方法によれば、ブロック共重合体を容易に重合することが可能であった。
[実施例 16]
<鉄錯体 4によるスチレン重合後のポリマーからの鉄触媒分離 >
スリ付試験管(15mL)にスターラーチップと鉄錯体 4 (16mg、 0. 048mmol)、 AIB N (3. 9mg、 0. 024mmol)を入れた。反応容器内部を窒素置換した後、窒素気流 下でスチレンモノマー(1. Og、 9. 6mmol)をシリンジでカ卩えた。混合液を 100°C油浴 にて加熱し、攪拌しながら 30時間反応させた (転ィ匕率 98%, Mn23, 000, Mw/M n= l. 3)。重合後の液に、 4mLの THFをカ卩え、その溶液を 30mLのメタノール中滴 下し、ポリマーを沈殿させた。ろ過により固形分の Pstを回収し、 60°Cで減圧乾燥し、 無着色の白い粉末を得た。この粉末ポリスチレン中の鉄残量を ICP— MSによって測 定したところ、仕込み量の鉄 2. 6xl03ppm (計算値)にたいして 9ppmであった。一 回の沈殿作業で、鉄錯体をポリマー力もほぼ完全に除去でき、無着色のポリマーを 簡単に得ることが示唆された。比較に、まったく同様な実験を鉄錯体 4の代わりに、既 知の鉄系(非特許文献 8)触媒で行ったが、無着色ポリマーを得ることはできな力つた
産業上の利用可能性
上記の通り、本発明の重合体の製造方法によれば、上記鉄錯体とラジカル発生剤 を用いることによって、他の配位子を必要とせず、重合反応を極めて単純化でき、か つその鉄錯体の優れた触媒活性により、そのラジカル重合反応を定量的に進行させ ることができる。また、得られた重合体は通常のラジカル重合では得られない活性末 端を形成しているので、定量重合後、他のラジカル重合性単量体を加えることで、ブ ロック共重合体を簡便に製造することができる。さらに、これらの鉄錯体は重合反応 終了後、ポリマーを再沈殿させる単純な作業過程で、錯体を効率的に溶剤相へ溶か すことにより容易に回収され、これを触媒として再利用することができる。なお、銅錯 体など有毒な金属イオン系と比較し、環境汚染を抑制することもでき、また、得られた ポリマーの後処理過程も単純ィ匕することも可能である。
即ち、本発明は、上記の鉄錯体を従来のラジカル重合系に用いることによって、ェ 業プロセスでの重合反応の制御に多くのメリットをもたらすだけでなぐ工業プロセス
の高効率化、及び省資源化を実現することが可能であって、かつ、環境汚染の観点 からも極めて有効である。
したがって、本発明は様々な工業プロセスに有効であり、その産業上の利用価値は 極めて高い。