明 細 書 鋼の連続铸造方法 技術分野
本発明は、 表面、 内部品質に優れた鍀片を安定して製造するため の鋼の連続铸造方法に関するものである。 背景技術
浸漬ノズルからの溶鋼の吐出流を安定させて良好な表面、 内部品 質を有する錶片を製造するために、 従来から種々の技術が開発され ている。 特開 2 0 0 2 — 3 0 1 5 4 9号公報には、 铸型内の溶鋼の 片流れ現象を防止するために、 スライディ ングノズルと吐出流のな す水平面内の角度を 8 0〜 9 0 ° とした連続铸造方法が開示されて いる。 特開昭 5 8 — 7 4 2 5 7号公報には、 浸漬ノズルを矩形断面 のものとして、 注入ノズルから铸型への注入流を一様な低速下降流 に保持して铸造する注入方法が開示されている。 特開平 9 一 2 8 5 8 5 2号公報には、 吐出孔をスリ ッ ト状として浸漬ノズルから吐出 する溶鋼流を分散化、 均一化することにより、 表面、 内部欠陥のな い铸片を製造する連続铸造方法が開示されている。
特開 2 0 0 0 — 2 3 7 8 5 2号公報には、 内部にねじりテープ状 の旋回羽根を備えた浸漬ノズルか開示されている。 特開平 9 一 2 2 5 6 0 4号公報には、 浸漬ノズル内に不活性ガスを導入し内部の圧 力を制御することにより吐出孔からの溶鋼流動に偏流が生じること を防止する連続铸造方法が開示されている。 特開平 9 一 1 0 8 7 9 3号公報には、 浸漬ノズルの基端側内径に対して先端部内径が拡大 した浸漬ノズルを用いる連続铸造方法が開示されている。
しかしながら、 これらの方法によっても、 依然として铸型内に吐 出する溶鋼流を安定させることは難しく、 圧延後のコイル表面に発 生するスリバ一と呼ばれる介在物起因の表面欠陥やブローホールと 呼ばれる浸漬ノズル吹込みアルゴン起因の気泡^陥を十分防止する ことはできなかった。 発明の開示
本発明は、 上述の従来の問題点を解決し、 浸漬ノズルからの吐出 流を安定させることによってスリバーの原因となるアルミナなど非 金属介在物やブローホールの原因となるアルゴン気泡の巻き込みを 防止して、 表面、 内部品質に優れた铸片を製造することができる鋼 の連続铸造方法を提供するものである。
本発明者らは、 上記課題を解決するために浸漬ノズル内の流れを 解析した結果、 以下のような知見を得て本発明を完成するに至った 。 即ち、 ノズル内孔の横断面形状が真円である従来型浸漬ノズルの 場合には、 図 4に示すように、 スライディ ングノズル 1 を摺動させ ると、 開口部が一方に偏っているために浸漬ノズル 2内でスライデ イ ングノズル 1の摺動方向に向かう旋回流が発生する。 この旋回流 によって、 浸漬ノズル吐出孔からの溶鋼流速ばらつきが増大し、 最 大吐出流速が増大する。
最大流速の増加によって吐出流の浸透深さが増大するため、 脱酸 生成物であるアルミナ、 連铸パウダー等の介在物ゃ浸漬ノズルから の吹込みアルゴン気泡が、 铸片内奥深くまで侵入し浮上できずに残 留して、 これらが薄板での表面欠陥やプレスや製缶時の割れ等の内 部欠陥につながることが分かった。
本 明者らはこの旋回流を防止するためには、 ノズル内孔横断面 形状を楕円形や長円形などの扁平なものとして、 その長軸の方向を
铸型の長辺方向と実質的に平行としたうえに、 スライディ ングノズ ルの摺動方向を前記長軸と直交する方向として铸造することが有効 であることを見出した。 逆に、 楕円形などの長軸の方向を铸型の長 辺方向と実質的に直交させたうえに、 スライディ ングノズルの摺動 方向を前記長軸と平行な方向とすることは、 上記旋回流を助長して 最大吐出流速が増加し、 結果として有害欠陥発生率が増加すること が分かった。
以上のような知見に基づきなされた本発明の鋼の連続铸造方法は 、 溶鋼をタンディ ッシュの底部に設けたスライディ ングノズルから 浸漬ノズルを介して铸型内に供給する鋼の連続鍀造方法において、 浸漬ノズル内孔の横断面形状を楕円形または長円形として、 その長 軸 D Lと短軸 D Sとの長さ比 D D Sを 1 . 2〜 3 . 8 としたうえに 、 その長軸の方向を铸型の長辺方向と実質的に平行とし、 且つスラ ィディ ングノズルの摺動方向を前記長軸と直交する方向として、 铸 型内に溶鋼を供給することを特徴とするものである。
上記した発明において、 浸漬ノズル内孔の最小断面積部における 断面積 S ,とスライディ ングノズルのノズル孔の断面積 S。との比 S i / S。を、 0 . 5〜 0 . 9 5とするのが望ましく、 また、 浸漬ノズ ルの吐出孔が、 対向する铸型の短辺方向に向けて溶鋼を吐出するよ うに、 二つの吐出孔を浸漬ノズルの長軸方向の両側に設けるのが望 ましく、 また、 浸漬ノズルの短軸側外側面と铸型の長辺側内壁との 距離を、 5 0 m m以上とするのが望ましい。 さらに、 上記した発明 においては、 電磁攪拌装置により铸型内の溶鋼に旋回性を付与しつ つ铸造を行うのが望ましい。 図面の簡単な説明
図 1は、 本発明に係る浸漬ノズルを備えた鍀型の短辺側から見た
断面図である。
図 2は、 本発明に係る浸漬ノズルの横断面図である。
図 3は、 铸型の平面図である。
図 4は、 従来の浸漬ノズルを備えた錡型の短辺側から見た断面図 である。 発明を実施するための最良の形態
以下に本発明の最良の実施形態について説明する。
図 1は、 本発明の連続鍀造方法を実施するための連続铸造設備の 铸片短辺側から見た概略構成を示す図であって、 1は図示していな いタンディ ッシュの底部に設けられたスライディ ングノズル、 2は スライディ ングノズル 1 につながる浸漬ノズル、 3は溶鋼が注入さ れる铸型、 4は铸型内溶鋼を攪拌するための電磁攪拌コィルである 。 スライディ ングノズル 1は断面積が S。であるノズル孔 1 1 を有 し、 上プレート 5 と下プレート 6に挟まれて摺動する。
本発明において、 浸漬ノズル 2の内孔 2 1 は上部では真円形であ るが、 下部では図 2 に示すような楕円形である。 楕円形には長楕円 形を含む。 また、 楕円形に代えて、 矩形の短辺側を円弧で置き換え た平行部を有する長円形とすることができる。 楕円形又は長円形は 、 長軸 D Lとこれに直交する短軸 D Sとを有する。 長軸 D Lは、 図 3 に示すように铸型 3の長辺と平行又は実質的に平行としてある。 し たがって、 短軸 D Sは铸型 3の長辺と直交又は実質的に直交する。 また、 浸漬ノズル 2には二つの吐出孔 2 2が長軸 D L方向の両側に 設けてあるので、 二つの吐出孔 2 2からそれぞれ対向する铸型 3の 短辺方向に向けて溶鋼を吐出することができる。 そして、 スライデ イ ングノズル 1の摺動方向を長軸 D Lと直交する方向としてあるの で、 浸漬ノズル 2内での溶鋼の旋回する方向の幅を押さえて溶鋼を
長軸 DL方向に流動させることができ、 スライディ ングノズル 1 を 摺動させたときに発生する溶鋼の旋回流を小さいものとすることが できる。
上記した形状の内孔 2 1 を有する浸漬ノズル 2において、 長軸 D Lと短軸 Dsとの長さ比 D^/Dsを吐出孔 2 2直上において 1. 2〜 3. 8 とする必要がある。 長さ比! L/DSが 1. 2未満では、 スラ イデイ ングノズル 1摺動方向への旋回流の発生を効果的に防止する ことができないからであり、 3. 8超では浸漬ノズル 2内の铸片幅 方向に溶鋼が均一に充満せず、 吐出孔 2 2からの溶鋼流速が均一に ならないからである。
浸漬ノズル 2は上部から下部にかけて内孔 2 1の断面積が縮小さ れるが、 吐出孔 2 2直上部の断面積 即ち内孔 2 1の最小断面積 部 2 3における断面積 S tと、 スライディ ングノズル 1のノズル孔 1 1の断面積 S。との比 S i/Soを、 0. 5〜 0. 9 5 とするのが望 ましい。 この比 S i/S。が 0. 5未満では、 浸漬ノズル 2内部に溶 鋼が充満しやすくなり浸漬ノズル 2内が負圧となって、 浸漬ノズル 2 と下ノズル 6 との嵌合部からの空気の吸い込みが発生する。 その 結果、 溶鋼中の A 1 と空気が反応し多量のアルミナが生成するため ノズル閉塞が発生しやすくなつて安定した操業ができなくなるから である。 一方、 比 S t/S。が 0. 9 5超では、 内孔 2 1 の扁平度が 小さく浸漬ノズル 2内で発生するスライディ ングノズル 1の摺動方 向への旋回流の発生を効果的に防止することができないからである さらに、 図 3 に示すように、 浸漬ノズル 2の短軸側外側面と、 铸 型 3の長辺側内壁との距離 Sを、 5 O mm以上とするのが望ましい 。 距離 Sが 5 0 mm未満では、 溶鋼を電磁攪拌したような場合に十 分な溶鋼流速が得られないため、 表面疵の原因となる介在物等を捕
捉してしまうからである。
また、 本発明においては、 電磁攪拌コイル 4などの電磁攪拌装置 により铸型 3内の溶鋼に旋回性を付与しつつ铸造を行う ことができ る。 溶鋼を電磁的に攪拌することによって、 介在物などの铸片への 捕捉を防止して表面性状に優れた铸片を製造することができる。 実施例
以下、 本発明を実施例に基づき詳細に説明する。
極低炭素鋼の溶鋼 3 0 0 トンを転炉一 R H工程にて溶製した。 夕 ンディ ッシュ内の溶鋼温度を 1 5 6 0〜 1 5 8 0 °Cとし、 3層式ス ライディ ングノズルと浸漬ノズルとを使用して铸型内に溶鋼を注入 し、 厚さ 2 5 0 mm、 幅 1 2 0 0〜 1 6 0 0 mmの鐯片を铸造速度 1. 6〜 2. 0 mmZminで製造した。 铸造に当っては溶鋼を電磁 攪拌で水平方向に旋回させた。 引き続いて铸片を通常の方法で熱延 、 酸洗、 冷延、 焼鈍して 0. 7〜 1. 2 mmの冷延鋼板とした。 種々の条件で連続铸造を行って試験した結果を表 1 に示す。 表中 A 1〜 A 2 0は本発明の実施例であり、 B 1〜 B 1 3は比較例であ る。 なお、 表中の注 *1〜*8は次のとおりである。
*1 浸漬ノズル内孔部横断面形状で、 最小断面積位置での形状を 表す。
「直交」 は浸漬ノズル楕円断面の長軸方向とスライディ ング ノズル摺動方向が実質的に直交、 「平行」 は浸漬ノズル楕円断面の 長軸方向とスライディ ングノズル摺動方向が実質的に平行を表す。
*3 「平行」 は浸漬ノズル楕円断面の長軸方向が铸型長辺方向と 実質的に平行、 「直交」 は浸漬ノズル楕円断面の長軸方向が铸型長 辺方向と実質的に直交を表す。
*4 S!は浸漬ノズル内孔部の最小横断面積、 SQはスライディ ング
ノズルの横断面積を表す。
*5 2孔ノズルは鐯型短辺方向に、 下向きは 1孔で下方に、 スリ ッ トは浸漬ノズル楕円断面長軸方向と平行になるように、 ノズル下 端を加工し、 下方に向かって溶鋼を供給した。
*6 浸漬ノズル外壁と铸型長辺側内壁との最小距離である。
*7 冷延鋼板における膨れ発生率である。 膨れ発生率 ) =膨れ が発生したコイルの本数/調査したコイルの総数 X 100。
*8 冷延鋼板におけるスリバー発生率である。 スリバー発生率 ) =スリバ一総長(m) /調査したコイルの総長 X 100。
表 1
比較例 B 1、 B 2は従来の真円断面の浸漬ノズルを用いた場合で あるが、 浸漬ノズル内に旋回流が発生したので、 アルミナなどの介 在物やアルゴン気泡が十分浮上できず鋼中に残留してしまった。 こ の結果、 膨れならびに表面疵の発生率の高いものであった。
比較例 B 3は、 ノズル断面の長さ比 DL/DSが 1. 1 と本発明の 下限 1. 2を外れて小さい。 このため、 やはり浸漬ノズル内に旋回 流が発生したので、 膨れならびに表面疵の発生率が高い。 比較例 B 4は、 長さ比 DL/DSが 4. 3 と本発明の上限 3. 8を外れて大き い。 このため、 吐出孔からの溶鋼流速が不均一となって、 膨れなら びに表面疵の発生率が高くなつてしまった。
比較例 B 5、 B 6は、 ノズル断面形状は適正であるが、 スライデ ィ ングノズルの摺動方向を、 浸漬ノズル内孔断面の長軸方向と平行 としたので、 浸漬ノズル内に旋回流が発生してしまったものである 。 比較例 B 7、 B 8は、 浸漬ノズル内孔の長軸を铸型長辺方向と直 交させてしまったので、 吐出流が不安定となって、 介在物、 気泡を 巻き込み、 その結果膨れならびに表面疵の発生率が高くなつてしま つた。
比較例 B 9は、 浸漬ノズル内孔の最小断面積部における断面積 S ,と、 スライディ ングノズルのノズル孔の断面積 S。との比 S 0 が、 本発明の範囲を外れて小さい。 このため、 浸漬ノズルと下ノズ ルとの嵌合部からの空気の吸い込みが発生し、 その結果、 多量のァ ルミナが生成してノズル閉塞が発生してしまった。 比較例 B 1 0は 、 比 S ,/S。が、 本発明の範囲を外れて大きい。 このため、 浸漬ノ ズル内での旋回流の発生を効果的に防止することができず、 膨れお よび表面疵の発生率が高くなってしまった。
比較例 B l 1 は、 浸漬ノズルの短軸側外側面と錡型の長辺側内壁 との距離 Sが、 本発明の範囲である 5 0 mmより短い。 このため、
浸漬ノズル近傍の溶鋼流速が低下して介在物や気泡が铸片に捕捉さ れてしまい、 膨れ、 表面疵の発生が多くなつた。
比較例 B 1 2は、 吐出孔を浸漬ノズル下方に 1孔下向きに設けた ものである。 また、 比較例 B 1 3は、 ノズル下端に下向きとしてス リ ッ トを浸漬ノズル内孔の長軸方向と平行に形成したものである。 何れも吐出流がメニスカスから奥深くまで達して介在物等を十分浮 上分離させることができず、 そのため、 膨れならびに表面疵の発生 率が高くなつてしまった。
以上のような比較例に対し、 A 1〜A 2 0に示す本発明の実施例 は、 ノズル断面の長さ比 D L / D Sが適正であり、 比 S ! / S。も適正な 範囲内にあつたので、 浸漬ノズル内での旋回流の発生を抑止するこ とができた。 また、 スライディ ングノズルの摺動方向および铸型長 辺に対する浸漬ノズル内孔の長軸の方向が適正であり、 浸漬ノズル の吐出孔の向きも適正であり、 且つ、 浸漬ノズルの外側面と铸型の 長辺側内壁との距離 Sも十分大きいものである。 そのため、 吐出流 がメニスカスから奥深く侵入したり、 浸漬ノズル近傍の溶鋼流速が 低下することがないので、 介在物や気泡を十分浮上分離させること ができて、 その結果、 膨れならびに表面疵の発生率を 0または極め て小さいものとすることができた。 産業上の利用可能性
本発明は、 浸漬ノズル内孔の横断面形状を楕円などの扁平なもの としてその長軸を铸型長辺と平行とし、 かつスライディ ングノズル の摺動方向を前記長軸と直交する方向としたので、 浸漬ノズル内で の溶鋼の旋回する方向の幅が押さえられて溶鋼の旋回流を小さいも のとすることができる。 また、 浸漬ノズル内孔の最小部断面積 S , に対するスライディ ングノズル孔部断面積 S„の比 S , / S。を最適化
したので、 浸漬ノズル内への空気の吸い込みに起因するノズル閉塞 を発生させることなく旋回流を防止することができる。 さらに、 二 つの吐出孔を浸漬ノズルの長軸方向の両側に設けたので、 溶鋼吐出 流がメニスカスから奥深く侵入することを防止することができ、 ま た、 浸漬ノズルの短軸側外側面と錶型の長辺側内壁との距離を適正 化したので、 浸漬ノズル近傍の溶鋼流速を十分に確保して溶鋼を铸 造することができ、 さらに、 電磁攪拌により溶鋼を流動させるので 、 非金属介在物などの錡片への捕捉を防止して表面性状に優れた铸 片を製造することができる。