明 細 書
遊星歯車装置
技術分野
[0001] 本発明は遊星歯車装置に関し、詳しくは、遊星歯車機構の 3つの基本軸 (駆動軸、 入力軸、固定軸)の全てが、装置の中心軸と同じ回転軸心を持つ K要素である、 3K 型遊星歯車機構を備える遊星歯車装置に関する。
背景技術
[0002] 機械要素は、言うまでもなく文明を支え、産業の根幹を成し、その一つである歯車 機構の根本的な動作原理は、ギリシャ、ローマ時代にほぼ、その発明を終え、現在に 至っていると言っても過言ではない。したがって、ここ 100年に於いて、特筆すべき発 明はハーモニックギア、と不思議遊星歯車程度である。また、長い歴史を持つ歯車機 構において、高効率、高減速比は、永遠の夢といって過言ではない。簡素な構造で 、高減速比を有し、且つ、大きなトルク伝達が可能で、高効率の歯車機構は長年追 求され、その実現に多くの研究者が従事してきた。
[0003] 近年、ハーモニックギアの発明によって、ある程度の高減速比、高効率の機構が実 現できるようになり、現在では多くの機械分野で独占的な地位を固めている。しかしな がら、ハーモニックギアは、歯の嚙み合いが少なぐ大きなトルク伝達には不向きであ る。よって、歯の嚙み合いが多ぐ特殊な歯車が不要で、小型化が容易な従来型の 遊星歯車機構である不思議遊星歯車に期待するところが大きい。
[0004] 不思議歯車機構 (Furgason Mechanical Paradox機構)とは、一つの軸に取り付けら れた互いに歯数の異なる 2個の歯車が他の共通な歯車に嚙合う機構であって、古く から、ラジオの可変コンデンサ用ダイヤル機構やプロペラ可変ピッチ機構などに使用 されてきた。そして、遊星歯車に、不思議歯車機構を用いたものが、不思議遊星歯車 装置であって、両角宗治氏によって研究された。不思議遊星歯車は、簡易な構造で 極めて大きな減速比を実現でき、歯車の嚙合いが多く大きなトルクを伝達できるという 点で、ハーモニックギアより優位性がある。
[0005] そして、最近では、プリンタ等で使用される極めて小型の歯車として不思議遊星歯
車を実用化した例があり、ますます注目の集まるところであるが、基本的に一つの歯 車で嚙合う機構であるので、歯の強度が弱く伝達可能なトルクが小さぐ未だ効率の 悪さが指摘され、また、ロック状態が発生するなど、歯車機構としての完成度は低いと 言わざるを得ない。
特許文献 1:特開 2000— 274495号公報
特許文献 2:特開 2004 - 19900号公報
特許文献 3 :特開 2003— 194158号公報
特許文献 4:特開 2001— 317598号公報
非特許文献 1 :両角宗晴、「遊星歯車と差動歯車の設計計算法」、日刊工業新聞社、 1989年 5月
非特許文献 2 :中田孝、「転位歯車」、日本機械学会、 1996年 6月
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0006] 従来技術の大減速が可能な機構は、たとえば、ハーモニックギア、不思議遊星歯 車にしても、機構としては不完全であり、大きな減速比で、効率よく高トルク伝達を行 うには、有利な機構であるといえない。したがって、その問題点を解決するためには、 歯形や歯数などの仕様の変更では、問題点を根源的に解決することができない。
[0007] (3K型の従来技術)
遊星歯車装置の種類は非常に多いが、最近はクドリャフツェフ氏の分類法が一般に 受け入れられている。遊星歯車機構は、駆動軸 (入力軸)、従動軸(出力軸)、固定軸 (拘束軸)の 3本の基本軸力 なり、これら基本軸は同軸上に配置される。今、基本軸 となる太陽歯車 (太陽外歯車、太陽内歯車を含む)の軸を K、キャリア軸を Η、遊星歯 車軸を Vで表わすと、遊星歯車機構は、 2Κ— Η型、 3Κ型、 K— H—V型および 2個 以上の 2Κ— Η型の連結による複合遊星歯車機構に分類される。不思議遊星歯車と しては、 3Κ型と 2Κ—Η型が知られているが、特許文献 1〜4は、いずれの 3Κ型の不 思議遊星歯車に関するものである。
[0008] また、不思議遊星歯車を含む遊星歯車機構につ!、て、例えば非特許文献 1には、 速比、効率、軸トルクが、網羅的に解析されている。したがって、従来技術は、 3Κ型
不思議遊星歯車とそれに類似する通常の 3K型遊星歯車とは、理論的にも広く知ら れている技術であり、その技術は確立されている。
[0009] 本件は、 3Κ型遊星歯車遊星歯車機構に於いて、従来技術とは異なる歯車機構で ある。よって、従来技術との違いを明確にし、本件の技術的優位性を説明にするため するため、従来型の歯車機構につき詳述する。
[0010] (3Κ型遊星歯車機構の分類)
3Κ型には、二つの機構がある。固定軸、従動軸、駆動軸の 3つの軸に対し、二つの 太陽内歯車 (ring gear)と一つの太陽外歯車 (sun gear)を割り当てた機構 (I型と称す る)と、二つの太陽外歯車と一つの太陽内歯車をもつ機構 (II型と称する)である。一 般的には、 I型では、太陽内歯車の内、一つを固定軸、もう一つを従動軸とし、太陽 外歯車を駆動軸とする。 II型では、太陽外歯車の内、一つを固定軸、もう一つを従動 軸とし、太陽内歯車を駆動軸とする。いずれも大減速を得ようとする機構である。
[0011] また遊星歯車機構では当然であるが、固定軸が固定 (拘束)されず、駆動軸が固定 軸に対し、反力を得ることができない場合は、固定軸と従動軸は相対的な回転変位 を行うことができず、剛体となる。言い換えると、駆動軸の固定軸からの反力によって 従動軸を駆動し、従動軸に固定軸に対して減速された相対回転を出力させる。
[0012] 本発明は、 I、 II型の両方に関するものであり、 I型の従来技術と II型の従来技術を示 し、本発明の新しい機構に付き、従来技術と比較しその優位性を詳述する。
[0013] (3K型遊星歯車機構の詳細分類の定義)
次に、 3K型遊星歯車に於いて、代表的な従来技術である不思議遊星歯車と不思議 遊星歯車でな!ヽ従来型の遊星歯車と本件で示す新 ヽ遊星歯車機構につ!ヽて述べ る。したがって、それら 3つの機構につき、前記 I、 II型に付き、便宜上、 I型に付いては 、「3K— I型不思議遊星歯車」、「3Κ-Ι型普通遊星歯車機構」、「本件新型 3Κ-Ι型 遊星歯車機構」と称する。また、 II型に付いては、「3Κ— II型不思議遊星歯車」、 Γ3Κ II型普通遊星歯車機構」、「本件新型 3Κ— II型遊星歯車機構」と称する。
[0014] < 3Κ型 I型不思議遊星歯車機構 >
図 1に従来技術である 3Κ— I型に属する 3Κ不思議遊星歯車のスケルトン図を示す。 符号 Αは太陽外歯車、符号 Bは遊星歯車、符号 C、 Dは太陽内歯車をそれぞれ示す
[0015] 不思議歯車機構とは、一つの軸に取り付けられた互いに歯数の異なる 2個の歯車 が他の共通な歯車に嚙合う機構である。したがって、不思議遊星歯車機構は、一つ の歯車である遊星歯車 (planet gear)に嚙合う互いに歯数の異なる 2個の歯車を太陽 外歯車 (sun gear)、もしくは、太陽内歯車 (ring gear)に設ける機構である。
[0016] したがって、太陽外歯車、もしくは、太陽内歯車には、互いに歯数が異なりながら、 他軸の同一の歯車に嚙合う為には、必ず極端な転位が施されなければ、成立しない
[0017] すなわち、同一軸間距離で一つの軸の歯車の歯数を固定し、他軸に歯数が異なる 嚙合わせは、通常使用する範囲で歯車を成立させるには、歯車としての正常な姿か ら逸脱せざるを得ない。軸間距離が決まり、一方の歯数とモジュールが決まれば、他 方はモジュールが等しぐ他方の歯数比は、軸間距離を内分する歯数で決定される 。したがって、他方が二つの異なる歯数を持っためには、転位を行い嚙合いピッチ円 を変更せざるを得ない。したがって、過度の転位によって、滑り率が大きく効率が悪く 、最悪の場合、回転伝達が正常に行われないロック状態になるという欠点がある。
[0018] 3K型 I型の場合、二つの太陽内歯車 C, Dと一つの太陽外歯車 Aに、駆動軸、 従動軸、固定軸の 3本の基本軸を割り当てる。以下では、最も一般的である場合、す なわち、太陽外歯車 Aを駆動軸にとり、太陽内歯車 Cを従動軸、太陽内歯車 Dを固 定軸に設定する場合について、非特許文献 l (p. 124〜p. 128)を例にとり、説明す る。
[0019] 本例は、歯車 A、 B、 C、 Dの歯数をそれぞれ、 Za= 24、 Zb = 25、 Zc = 72、 Zd= 7 5ととり、太陽外歯車 Aを駆動軸とし、太陽内歯車 Dを固定軸、太陽内歯車 Cを従動 軸とした例である。そして、遊星歯車の配置個数 (以下、「遊星配置個数」ともいう。 ) は 3であり、非特許文献 1中にあるように、速比 u= lZlOOであり、減速比は 100とな り、極めて大減速比である。
[0020] 各遊星歯車が同じ位相で、太陽外歯車、太陽内歯車に嚙合う条件は、遊星歯車の 配置個数 (本例では 3)が、太陽外歯車の歯数と太陽内歯車の歯数の公約数となるこ とである。よって、本例では、太陽外歯車 Aと二つの太陽内歯車 C, Dの歯数、 Za、 Z
c、 Zdは、 3を約数として持ち、各遊星歯車 Bは全く同じ位相関係で太陽外歯車 A、 太陽内歯車 C, Dと嚙合あう。
[0021] 非特許文献 1中に「不思議遊星歯車を用いた 3K型遊星歯車装置を設計するため には各歯車のかみあ 、中心距離が等しくなるように転位歯車理論を用いて計算しな ければならず、しかも全負荷を数個の遊星歯車に等しく配分するために、それら組み 立て条件を満足しなければならない」とあるように、不思議遊星歯車は、同一遊星歯 車に、異なる歯数を持つ二つの太陽内歯車を嚙合わせる。したがって、二つの太陽 内歯車の歯数差が大きくなるほど、同一嚙合い中心距離で嚙合わせる歯車の転位 係数差は大きくなり、且つ、二つの太陽内歯車の歯数差が大きくなるほど、出力され る減速比は、 100より小さい値になっていき、不思議遊星歯車の優位性を失っていく
[0022] 同一遊星歯車に異なる歯数を持つ太陽内歯車をかみ合わせる遊星歯車機構であ る制約により、二つの太陽内歯車の歯数差と遊星歯車の配置個数とは等しぐ且つ、 同一遊星歯車に異なる歯数で嚙合う二つの太陽内歯車の転位係数差は、遊星歯車 の配置個数、即ち二つの太陽内歯車の歯数差に対応して増加していく。よって、遊 星歯車の配置個数は少なくなければ、転位係数によって、歯車が成り立たない。
[0023] 歯車 A、 B、 C、 Dの転位係数を、それぞれ、 Xa、 Xb、 Xc、 Xdとすると、本例では Xa
=0. 0191、 Xb = 0. 1671、 Xc = 0、 Xd= l. 705である。即ち、内歯歯車 Cは、歯 車として成立できる限界近くの転位係数を有して 、る。
[0024] 3K型 I型不思議遊星歯車問題点は、次の通りである。
(1)遊星配置個数と従動軸、固定軸となる歯車の歯数差とが等 、と 、う制約があり 、結果的に遊星配置個数が少ない。したがって、伝達トルクは小さい。
(2)歯数差と遊星配置個数が同じに於!、ては、各遊星歯車は全く同 Cf立相関係で太 陽外歯車、太陽内歯車と嚙合あう。したがって、各遊星の位相の重なり合いがなぐ その為、スムーズな回転伝達ができない。
(3)遊星配置個数と従動軸、固定軸となる歯車の歯数差とが等 、と 、う制約がある 以上、必然的に大きな転位係数が必要となり、その為、滑り係数が多ぐ効率の良い 歯車機構を実現できない。特に、トルクの小さい領域では、損失が占める割合が大き
く効率が低下する。
(4)二つの太陽内歯車は、遊星配置個数に等しい歯数差であり、その歯数差に対応 した二つの太陽内歯車の速比の差が生じる。したがって、不思議遊星は、速比の差 を小さくして、減速比を大きくするには限度がある。
(5)速比差が大きいと、遊星歯車は嚙合い位置の離れた部位で、異なる力を太陽内 歯車から受けることになり、速比差に比例した太陽外歯車の周方向に倒れようとする 力が発生し、遊星歯車と太陽内歯車の両端部に偏った応力が発生し、端部に偏磨 耗が生じる。したがって、耐久性の悪い歯車機構である。言い換えれば、速比差が小 さく減速比が大きい歯車は、耐久性が良いが、遊星配置個数と従動軸、固定軸とな る歯車の歯数差とが等し 、と 、う制約があり、その制約の範囲内しか実現できな 、。
[0025] < 3K型 I型普通遊星歯車機構 >
図 2に、従来技術である 3K— I型普通遊星歯車機構のスケルトン図を示す。
[0026] 3K-I型普通遊星歯車機構は、一組の太陽外歯車 A、遊星歯車 B、太陽内歯車 C による通常の遊星歯車機構に加え、遊星歯車 Bと軸を共有するもう一つの遊星歯車 Dと、この遊星歯車 Dに嚙み合う太陽内歯車 Eとを備える。最も一般的であるのは、太 陽外歯車 Aを駆動軸にとり、太陽内歯車 Eを従動軸、太陽内歯車 Cを固定軸に設定 する場合であり、以下、この場合について説明する。
[0027] 歯車 A, B, C, D, Eの歯数を、それぞれ、 Za, Zb, Zc, Zd, Zeとすると、速比 uは、 [数 1]
Za- (Zb-Ze-ZcZd)
u=
Zb-Ze- (Za+Zc) となる。
[0028] f列えば、、 Za= 24、 Zb = 12、 Zc=48、 Zd= l l、 Ze=47とすると、速 itu= l/47 、減速比はその逆数の 47となる。この場合の遊星配置個数は、 3である。
[0029] すなわち、遊星可能配置個数は、太陽外歯車 (歯車 A)の歯数 (24)と太陽内歯車 ( 歯車 C)の歯数 (48)との和(72)の約数であり、遊星配置個数は 3を選択した。遊星 歯車 Bと軸を共有してもう一つの遊星歯車 Dの歯数 (Zd)を 11とすると、遊星歯車 D に嚙合う太陽内歯車 Eの歯数 (Ze)は、 "Zd'ZcZZb士遊星配置個数"となるので、〃
Zd'ZcZZb +遊星配置個数〃の 51を選択した。即ち、歯数 (Ze)は、遊星歯車の歯 数力 bから Zdに変化したときに対応する太陽内歯車の歯数 (Zd · Zc/Zb)に対して 、遊星配置個数分異なる歯数を有する。即ち、広義の意味で遊星配置個数が歯数 の差となっている。言い換えれば、不思議遊星歯車は、 Zd = Zbの時の解である。
[0030] 3K-I型普通遊星歯車機構は、 3K-I型不思議遊星歯車と同様に大きな減速比 を得ることのできる機構であり、同様の働きをする。し力しながら、太陽内歯車の歯数 は遊星配置個数の差の影響を受け、その為、太陽内歯車は、 3K— I型不思議遊星 歯車と同様に、太陽内歯車は大きな転位を持たざるを得ない。
[0031] 3K— I型普通遊星歯車機構の問題点を列挙すると、以下のようになる。
(1)歯数差と遊星配置個数との関係より、結果的に遊星配置個数が少なぐ不思議 遊星歯車と同様に、伝達可能なトルクは小さい。
(2)不思議遊星歯車と同様に必然的に大きな転位係数が必要となり、その為、滑り係 数が多ぐ効率の良い歯車機構を実現できない。
(3)遊星配置個数の制約によって、減速比を大きくするには限度がある。
(4)太陽外歯車の周方向に遊星歯車は倒れようとする力が発生し、遊星歯車と太陽 内歯車の両端部に偏った応力が発生し、端部に偏磨耗が生じる。
(5)そもそも、遊星歯車 (歯車 D)に嚙合う、太陽外歯車がない。したがって、太陽内 歯車 (歯車 E)の回転の反力は、軸断面の異なる太陽外歯車 (歯車 A)、遊星歯車 (歯 車 B)、太陽内歯車 (歯車 C)の嚙合いから得ることとなる。したがって、太陽外歯車の 周方向に倒れようとする力が機構学的に生じてしまう。よって、 3K— I型不思議遊星 歯車以上に、機構学的に歯車端部に磨耗が生じる機構である。言い換えれば、 3K -I型不思議遊星歯車はその機構学的な問題点を改善した機構といえる。
[0032] (3K— II型の従来技術)
次に、前記した 3K— II型について、その従来技術に付き詳述する。
[0033] II型とは、太陽外歯車 (sun gear)の内、一つを固定軸、もう一つを従動軸とし、太陽 内歯車 (ring gear)を駆動軸とし、いずれも大減速を得ようとする機構である。即ち、太 陽内歯車を回転入力(駆動軸)として、二つの太陽外歯車間に相対的な回転を発生 させる機構である。
[0034] 図 3に 3K— II型不思議遊星歯車機構のスケルトン図を示し、図 4に 3Κ型—II型普 通遊星歯車機構のスケルトン図を示す。図から分かるように、従来技術でも 3Κ— II型 遊星歯車機構は実現できる。しかしながら、 3Κ-Π型遊星歯車機構は、多くは用いら れない。その理由は、太陽外歯車の歯数が太陽車内歯車に比して少ないため、歯数 比の異なる歯車機構である 3Κ— II型遊星歯車機構では、 3Κ— I型に比して転位が 大きくなるなど従来技術の問題点が如実に現れる傾向があり、 3Κ— I型に比して不 利であるからである。
[0035] < 3Κ型 II型不思議遊星歯車機構 >
図 3に示したように、 3Κ型 II型不思議遊星歯車機構は、相対回転自在な二組の太 陽外歯車 A, D、遊星歯車 B、太陽内歯車 Cを備える。駆動軸、従動軸、固定軸の 3 本の基本軸のうち、駆動軸は太陽内歯車 Cに、従動軸と固定軸は太陽外歯車 A, D に割り当てられている。また、遊星歯車 Bは、互いに歯数の異なる二つの太陽外歯車 A, Dと嚙合い、又、太陽内歯車 Cと嚙合っている。したがって、太陽内歯車 Cに入力 された回転は、歯車 A、又は、歯車 Dのいずれか一方が太陽内歯車 Cの回転に対し 固定されること〖こよって、歯車 Aと歯車 D間に減速された相対回転が生じる。
[0036] 3K型 II型不思議遊星歯車機構は、遊星配置個数が少なく伝達トルクは小さい、 歯数差と遊星配置個数が同じで、各遊星歯車は全く同じ位相関係で太陽外歯車、 太陽内歯車と嚙合あいスムーズな回転伝達ができない等、 3K型 I型不思議遊星 歯車機構と全く同様の問題点がある。
[0037] < 3K型 II型普通遊星歯車機構 >
図 4に示したように、 3K— II型普通遊星歯車機構は、一組の太陽外歯車 A、遊星歯 車 B、太陽内歯車 Cによる通常の遊星歯車機構に加え、遊星歯車 Bと軸を共有しても う一つの遊星歯車 Eと、この遊星歯車 Eに嚙合う太陽外歯車 Eとを備える。
[0038] したがって、太陽内歯車 Cに入力された回転は、歯車 A、又は、歯車 Dのいずれか 一方が太陽内歯車 Cの回転に対し固定されることによって、歯車 Aと歯車 D間に減速 された相対回転が生じる機構であり、動作は 3K型 II型不思議遊星歯車機構と全く 同じである。
[0039] 3K型 II型普通遊星歯車機構は、 3K型 II型不思議遊星歯車機構や 3K型 I
型普通遊星歯車機構と共通した問題点があると考えられる。たとえば、不思議遊星 歯車と同様に、遊星配置個数が少なぐ伝達可能なトルクは小さい、また、効率の良 い歯車機構を実現できない。
[0040] また、一方の遊星歯車 Eに嚙合う太陽内歯車がないので、 3K型 I型普通遊星歯 車機構と同様に、遊星歯車 Eが倒れようとする力が機構学的に生じてしまい、不思議 遊星歯車以上に、歯車端部に偏磨耗が生じやすい。
[0041] 上述した従来の 3K型遊星歯車機構の問題点は、遊星歯車の機構学的な原因に 起因し、したがって、その問題点を解決するには、歯形や歯数などの仕様の変更で は、到底問題点を根源的に解決することができない。よって、前記問題点を解決する ためには、減速機構の根源である歯車の減速理論にさかのぼり、機構学的に従来技 術とは異なる新し 、歯車機構によって、問題点を解決するしかな 、。
[0042] 本発明は、力かる実情に鑑み、従来装置の問題点を解決することができる、新規な 遊星歯車機構を備えた遊星歯車装置を提供しょうとするものである。
課題を解決するための手段
[0043] 本発明は、不思議歯車機構ではなぐ不思議歯車機構の理論に立ち返り新たな遊 星歯車機構を提案する。不思議遊星歯車では、一つの軸に取り付けられた互いに歯 数の異なる 2個の歯車が他の共通な歯車に嚙合う機構であつたが、本発明では、遊 星歯車軸に一つの歯車ではなぐ一体に構成された互いに歯数の異なる歯車を設け 、その遊星の二つの歯車に対し、互いに歯数比の異なる複数の歯車を太陽外歯車、 もしくは、太陽内歯車に設ける。
[0044] 本発明の遊星歯車装置は、不思議遊星歯車機構と同様な働きをするが、不思議遊 星歯車に対し、減速比に設計上の自由度が増し、その結果、遊星の配置個数を多く でき、高トルク伝達が可能であり、且つ、より大きな減速比を実現でき、高効率である
[0045] 本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した遊星歯車装置を提 供する。
[0046] 遊星歯車装置は、太陽外歯車と太陽内歯車と遊星歯車とを有し、前記太陽外歯車 又は前記太陽内歯車のいずれか一方に三つの基本軸である駆動軸、従動軸、固定
軸の内の二つが与えられ、前記太陽外歯車又は前記太陽内歯車の他方に他の一 つの前記基本軸が与えられ、回転伝達によって増減速を行う 3K型遊星歯車機構を 備える。前記遊星歯車は歯数の異なる少なくとも 2つの第 1及び第 2の歯車を同軸か つ一体に有する。二つの前記基本軸が与えられた前記一方の前記太陽外歯車又は 前記太陽内歯車は、前記遊星歯車の前記第 1及び第 2の歯車にそれぞれ嚙み合い かつ相対回転可能な少なくとも 2つの第 3及び第 4の歯車を有する。前記第 1の歯車 と前記第 3の歯車との歯数比が前記第 2の歯車と前記第 4の歯車との歯数比と異なる 。一つの前記基本軸を与えられた前記他方の前記太陽外歯車又は前記太陽内歯車 は、前記遊星歯車の前記第 1及び第 2の歯車にそれぞれ嚙み合う少なくとも 2つの第 5及び第 6の歯車を同軸かつ一体に有する。前記第 1の歯車と前記第 5の歯車との歯 数比が前記第 2の歯車と前記第 6の歯車との歯数比と等しい。
[0047] 上記構成において、第 1及び第 2の歯車を同軸かつ一体に有する遊星歯車と、第 5 及び第 6の歯車を同軸かつ一体に有する他方の太陽外歯車または太陽内歯車とは 、互いに嚙み合う第 1の歯車と第 5の歯車との歯数比が第 2の歯車と第 6の歯車との 歯数比と等しいので、相対回転可能である。
[0048] 上記構成において、一方の太陽外歯車又は太陽内歯車が有する相対回転可能な 第 3及び第 4の歯車は、遊星歯車が同軸かつ一体に有する第 1及び第 2の歯車に嚙 み合う。互いに嚙み合う第 1の歯車と第 3の歯車との歯数比が第 2の歯車と前記第 4 の歯車との歯数比と異なるので、遊星歯車の第 1及び第 2の歯車の回転に対して、第 3の歯車の回転量と第 4の歯車の回転量とは異なる。
[0049] 例えば、第 5及び第 6の歯車を同軸かつ一体に有する他方の太陽外歯車または太 陽内歯車を固定した場合、第 1の歯数と第 2の歯車の歯数とが異なるので、第 1の歯 車と第 3の歯車との歯数比が第 2の歯車と前記第 4の歯車との歯数比との差を小さく して、第 3の歯車と第 4の歯車との間で、大きな減速比を得ることができる。
[0050] 好ましい一態様としては、前記太陽外歯車に三つの前記基本軸である前記駆動軸 、前記従動軸、前記固定軸の内の二つが与えられ、前記太陽内歯車に他の一つの 前記基本軸が与えられる。
[0051] 好ましい他の態様としては、前記太陽内歯車に三つの前記基本軸である前記駆動
軸、前記従動軸、前記固定軸の内の二つが与えられ、前記太陽外歯車に他の一つ の前記基本軸が与えられる。
[0052] 好ましくは、前記遊星歯車は、前記太陽外歯車及び前記太陽内歯車との嚙み合い の位相が異なる複数組を備え、等角度間隔で配置されたことを特徴とする、請求項 1 記載の遊星歯車装置。
[0053] 上記構成によれば、高トルクの伝達が可能となる。
[0054] 好ましくは、前記遊星歯車の前記第 1及び第 2の歯車は、中心距離が等しく前記太 陽外歯車及び前記太陽内歯車に嚙み合う。
[0055] 上記構成によれば、遊星歯車を太陽外歯車や太陽内歯車の軸に対して平行に配 置し、回転伝達を可能とすることができる。
[0056] 好ましくは、歯数比が等しい前記第 1の歯車と前記第 5の歯車との嚙み合いピッチ 円と、前記第 2の歯車と前記第 6の歯車との嚙み合いピッチ円とが、等しい。歯数比 が異なる前記第 1の歯車と前記第 3の歯車とのピッチ円と、前記第 2の歯車と前記第 4 の歯車とのピッチ円とが異なる。
[0057] 従来装置では、歯数比が異なる場合に嚙み合いピッチ円を等しくするために転位 を与えているが、それでは無理が生じる。上記構成によれば、歯数比が異なる場合 に無理な転位を与えなくてもよ ヽ。
[0058] 好ましくは、前記太陽内歯車の歯数が、前記遊星歯車の歯数の 2倍と前記太陽外 歯車の歯数の和と異なるとき、前記太陽内歯車、前記遊星歯車又は前記太陽外歯 車の少なくとも一つに対し転位を施す。
[0059] 上記構成により、遊星歯車装置の回転伝達が可能となる。
[0060] 好ましくは、前記遊星歯車が太陽歯車の周りに等角度間隔で配置され、前記遊星 歯車の個数と前記遊星歯車の歯数とが互いに素である(すなわち、 1以外の公約数 を持たない)。
[0061] 上記構成により、遊星歯車の嚙み合いの位相が全て異なるようにすることができる。
[0062] 好ましくは、前記太陽外歯車と前記太陽内歯車との間に回転軸受け機構を備える
[0063] 上記構成によれば、遊星歯車機構を小型化することができる。
[0064] 好ましくは、前記遊星歯車は、前記第 1及び第 2の歯車と異なる少なくとも 1つの第 7 の歯車を同軸かつ一体に有する。前記太陽外歯車又は前記太陽内歯車の少なくと も一方に、該第 7の歯車に嚙み合う第 8の歯車が形成される。
[0065] 上記構成によれば、歯車の嚙み合いが重なり合い、よりスムーズな回転伝達が可能 となる。
[0066] 好ましくは、前記遊星歯車は、前記第 1及び第 2の歯車と異なる少なくとも 1つの歯 車を同軸かつ一体に有する。前記遊星歯車が同軸かつ一体に有する三つ以上の前 記歯車の内一つ以上の前記歯車がねじ状であり、当該ねじ状の前記歯車は、前記 太陽外歯車又は前記太陽内歯車の少なくとも一方もしくは両方に嚙み合う。
[0067] 上記構成によれば、軸方向に螺旋状に延在し、複数個所で嚙み合うねじ状の歯車 は、軸方向に作用する力を相殺する。そのため、軸方向の力を受ける軸受けが不要 となるので、コンパクトな装置を設計することが可能である。
[0068] 好ましくは、前記第 1〜第 4の歯車の歯数を Z1〜Z4とし、前記第 3及び第 4の歯車 の歯数 Z3, Z4をともに増加又は減少した仮想歯数を Z3'、 Z4'としたとき、
(a) Zl :Z3' = Z2 :Z4'、かつ
(b) I Z3-Z3' I = 1又は 2、かつ
(b) I Z4-Z4' I = 1又は 2
である。
[0069] 上記構成によれば、第 3及び第 4の歯車の歯数 Z3, Z4の両方を、第 1及び第 2の 歯車との歯数比が等しくなる歯数 Ζ3', Z4'よりも、ともに増加又は減少させる。このよ うに第 3及び第 4の歯車の歯数 Ζ3, Ζ4の両方を同一方向に増減することによって、 第 3及び第 4の歯車の歯数 Ζ3, Ζ4の一方のみを第 1又は第 2の歯車との歯数比が等 しくなる歯数 Ζ3', Z4'より増減する場合よりも、大きな減速比を得ることができる。
[0070] また、増減する歯数 I Z3-Z3' I , I Z4-Z4' |を 1又は 2とすることによって、歯 車の転位量を小さくすることができる。
[0071] したがって、転位をできるだけ小さくしつつ、減速比を大きくすることができる。
[0072] 前記第 1の歯車と前記第 2の歯車、前記第 3の歯車と前記第 4の歯車、前記第 5の 歯車と前記第 6の歯車は、それぞれ逆方向にねじれたはすば歯車である。
[0073] 上記構成によれば、遊星歯車の軸方向位置を一定に保つことが容易である。また、 スラスト軸受けを無くしたり、小さくしたりすることにより、構成を簡単にすることができる 発明の効果
[0074] 本発明の遊星歯車装置は、新規な遊星歯車機構を備え、従来装置の問題点を解 決することができる。すなわち、減速比に設計上の自由度が増し、その結果、遊星の 配置個数を多くでき、高トルク伝達が可能であり、且つ、より大きな減速比を実現でき 、高効率である。
図面の簡単な説明
[0075] [図 1]3K— I型不思議遊星歯車機構のスケルトン図である。(従来例)
[図 2]3Κ— I型普通遊星歯車機構のスケルトン図である。(従来例)
[図 3]3Κ— II型不思議遊星歯車機構のスケルトン図である。(従来例)
[図 4]3Κ— II型普通遊星歯車機構のスケルトン図である。(従来例)
[図 5]3Κ— I型遊星歯車機構のスケルトン図である。(実施例 1)
[図 6a]3K-I型遊星歯車機構の断面図である。(実施例 1)
[図 6b]3K-I型遊星歯車機構の断面図である。(実施例 1)
[図 7]3K— I型遊星歯車機構のスケルトン図である。(変形例 1)
[図 8]3Κ— I型遊星歯車機構の断面図である。(変形例 1)
[図 9]3Κ— I型遊星歯車機構のスケルトン図である。(変形例 2)
[図 10]3Κ-Ι型遊星歯車機構の断面図である。(変形例 2)
[図 11]3Κ— II型遊星歯車機構のスケルトン図である。(実施例 2)
[図 12]3Κ— II型遊星歯車機構の断面図である。(実施例 2)
[図 13]3Κ— II型遊星歯車機構のスケルトン図である。(変形例 3)
[図 14a]3K— I型遊星歯車機構の断面図である。(実施例 3)
[図 14b]3K-I型遊星歯車機構の断面図である。(実施例 3)
符号の説明
[0076] 30, 30a, 30b, 30x 遊星歯車装置
32, 32x 太陽外歯車
34, 34x 遊星歯車
36, 36x 太陽内歯車
38, 38x 太陽内歯車
70 遊星歯車装置
72、 73 太陽外歯車
74 遊星歯車
76 太陽内歯車
発明を実施するための最良の形態
[0077] 以下、本発明の実施の形態について、図 5〜図 13を参照しながら説明する。
[0078] <本件新型 3K— I型遊星歯車機構 >
まず、本発明の第 1の実施の形態として本件新型 3K - 1型遊星歯車機構につ!ヽて、 図 5〜図 10を参照しながら説明する。
[0079] そもそも、 3K— I型遊星歯車機構は、従来技術のように、歯数差によって発生する と考えるのではなぐ根源的には遊星軸 Vを共通とした二組の太陽外歯車、遊星歯 車、太陽内歯車を有する遊星歯車機構と考えられ、その遊星に対する歯数比差によ つて、その回転減速比の差が発生すると解することができる。
[0080] 本件新型 3K— I型遊星歯車機構は、軸方向位置の異なる二組の遊星歯車機構が 結合したものと考えると、動作が分かり易い。
[0081] 図 5に本件新型 3K— I型遊星歯車機構のスケルトン図を示す。一組目の遊星歯車 機構は、太陽外歯車 A、遊星歯車 B、太陽内歯車 Cを備える。もう一組の遊星歯車機 構は、太陽外歯車 D、遊星歯車 E、太陽内歯車 Fを備える。例えば、特許請求の範囲 に記載された「第 1及び第 2の歯車」には歯車 B, Eが対応し、「第 3及び第 4の歯車」 には歯車 C, Fが対応し、「第 5及び第 6の歯車」には歯車 A, Dが対応する。歯車 A, B, C, D, E, Fの歯数を、それぞれ、 Za, Zb, Zc, Zd, Ze, Zfとする。
[0082] 歯車 Aと歯車 Dとは軸を共有し、歯車 Bと歯車 Eとは軸を共有する。歯車 Aと歯車 B とが嚙み合い、歯車 Dと歯車 Eとが嚙み合う。歯車 Aと歯車 Bとの間、及び歯車 Dと歯 車 Eとの間で、同一回転を伝達するためには、互いに嚙み合う二組の歯車 A, B;D, Eの歯数比が等しくなければ成り立たないので、
Za/Zb = Zd/Ze
である。
[0083] また、歯車 Cと歯車 Fとが相対的に回転し、遊星歯車 B, Eに対して異なる回転を有 するためには、
Zc/Zb≠Zf/Ze
でなければならない。
[0084] したがって、図 5を一つの遊星歯車機構と見た場合には、太陽外歯車と遊星歯車と は、歯数比が等しい二組の歯車 (A, D ;B, E)をそれぞれ有し、一方、遊星歯車と太 陽内歯車とは、歯数比の異なる二組の歯車 (B, E ;C, F)をそれぞれ有する。
[0085] 本機構は、その構造上、機構学的な制約が発生し、よって次のことが!/、える。
(1)全ての中心距離が等しい歯車機構であり、嚙み合いピッチ円は、歯数比が等し い二組の太陽外歯車、遊星歯車で等しぐ歯数比が等しくない二組の遊星歯車と太 陽内歯車では等しくない。また、歯数比が異なる太陽内歯車は基準ピッチ円が異な らざるを得ない。
(2) 3K-I型遊星歯車機構は、二組の歯数比は、太陽外歯車と遊星歯車が等しぐ 太陽内歯車と遊星歯車が異なる。(太陽外歯車の歯数 Ζ遊星歯車の歯数が等しぐ 太陽内歯車の歯数 Ζ遊星歯車の歯数が異なる。 )
(3)遊星歯車の配置個数は、太陽外歯車と太陽内歯車の和の約数であり、二組の遊 星歯車機構の嚙合わせは、二組の遊星歯車の軸が共通することから、二組の太陽外 歯車と太陽内歯車の和の約数の公約数となり、遊星の配置個数が多いほど、小型で 高トルクの伝達が可能な機構となる。
(4)二組の太陽内歯車の遊星歯車に対する速比の差力 、さくなるほど、減速比が大 きくなり、且つ、歯車の磨耗が少なぐ耐久性の良い歯車機構となる。
(5)転位係数の少ない歯車機構はすべり率が小さく効率が良い。
[0086] よって、上記 1〜4を考慮し、減速比が大きぐ耐久性、耐荷重性の良い歯車機構を 成立させる為には、二組の歯車機構の嚙み合わせの歯数比差を小さくすることで、 太陽外歯車の周りの倒れ力を小さくし、且つ、転位係数が小さい歯車の組み合わせ を実現し、且つ、遊星配置個数を多くする遊星歯車配置方法、および、歯数設定方
法を示せばよい。
[0087] 以下では、遊星配置方法を主に、本件新型 3K— I型遊星歯車機構を述べる。
[0088] (本件新型 3K— I型遊星歯車機構の減速比)
まず、歯車 A、 B、 Cによる遊星歯車機構を遊星歯車機構 1、もう一組の、歯車 D、 E、 Fによる遊星歯車機構を遊星歯車機構 2とし、それぞれに、太陽外歯車と太陽車内 歯車間に 1回転の相対回転を与える時、遊星歯車 B, Eの軸に対して、太陽外歯車 A , D、太陽内歯車 C, Fの回転位置関係は、次の表 1のようになる。
[表 1]
[0089] 遊星歯車機構 1の内歯車を固定軸としているので、回転は遊星歯車機構 1の太陽 外歯車と遊星歯車機構 2の太陽内歯車間に与えられる。また、二組の太陽外歯車と 遊星車は、歯数比が等しぐ太陽歯車 A, Dに対して、遊星 B, Eは一つの回転位置 しか持ち得ない。即ち、遊星歯車機構 2の太陽外歯車の位置 Hs2が、遊星歯車機構 1の公転位置に固定される。よって、遊星歯車機構 1の太陽外歯車と太陽車内歯車 間に与えられる 1回転の相対回転は、遊星歯車機構 2には、 HslZHs2の回転に相 当し、よって、遊星歯車機構 2の太陽内歯車の位置は、 Hr2'HslZHs2となる。
[0090] したがって、遊星歯車機構 1と遊星歯車機構 2の太陽内歯車の相対回転 (速比 u) は、
u=Hrl -Hr2-Hsl/Hs2
となり、その逆数が減速比 Kとなり、
K= l/ (Hrl -Hr2-Hsl/Hs2)
= (Za + Zc) -Zf/ (Za-Zf-Zd-Zc) …(1)
[0091] この式を用いて逆に、一般的に不思議遊星歯車の計算式を導き出し、この式が根 源的な真理であることを、次に証明する。
[0092] 図 1に示した従来技術である 3K不思議遊星歯車の減速比 K'は、図 1における歯車
A〜Dの歯数を Za'〜Zd'とし、歯車 Aを駆動軸(入力)、歯車 Cを従動軸(出力)、歯 車 Dを固定軸とすると、
K' = (l +Zd'/Za') / (l -Zd'/Zc') · · · (1) '
である。
[0093] 図 5についての式(1)を、次のように変形する。即ち、図 5の歯車 A〜Fを、図 1の歯 車 A〜Dに対応させるため、式(1)の各歯車を、図 1の各歯車に対応させる。
従動軸は、式(1)では、歯車 Fであるが、式(1) 'では歯車 Cであり、固定軸は、式(1) では、歯車 Cである力 式(1) 'では歯車 Dであるので、式(1)の Zaを Za'、 Zcを Zd'、 Zdを Za,、 Zfを Zc,に書き換えると、
K= (Za + Zc) - Zf/ (Za-Zf-Zd-Zc) · · · (1)
= (Za' +Zd' ) -Zc' / (Za' -Zc' -Za' -Zd' )
= (l +Zd' /Za' ) / (l -ZdVZc' )
となり、式(1) 'が導き出される。つまり、式(1) 'は、式(1)において、遊星歯車機構 1 、遊星歯車機構 2の太陽外歯車と遊星歯車の歯数を等しくした時の特殊解であること がわカゝる。
[0094] (本件新型 3K— I型遊星歯車機構の遊星歯車の配置方法の原則)
次に、遊星歯車の配置とその配置個数について説明する。遊星歯車の配置個数の 原則は、次の通りである。
(1)遊星配置個数 (N)は、太陽外歯車と太陽車内歯車の歯数の和の約数である。遊 星歯車機構 1と遊星歯車機構 2が、遊星歯車の軸を共有する本件新型 3K— I型遊星 歯車機構に於 、ては、二つの太陽外歯車と太陽車内歯車の歯数の和の公約数とな る。即ち、(2&+2。)と(2(1+2;0の公約数となる。
(2)遊星配置個数 (N)と、太陽外歯車、太陽車内歯車との公約数を qとするすると N Zqの組の同一位相関係で太陽外歯車と太陽車内歯車に嚙合う歯車を有し、同一 位相を持つ歯車は、個数は qである。
[0095] この原則に基づき、具体的に歯数を示しながら本件の遊星歯車機構の遊星配置方 法につき詳述する。
[0096] (遊星歯車機構の歯車設定方法 1)
次の歯数、遊星配置個数の設定方法について、説明する。
遊星歯車機構1 ^ = 27、 Zb = 9、 Zc=45
遊星歯車機構 2: Zd= 30、 Ze= 10、 Zf=51
遊星配置個数: 9個
[0097] (遊星歯車機構 1について)
(1)太陽車内歯車の歯数力 太陽外歯車の歯数と遊星歯車の歯数の 2倍の和となる とき、太陽車内歯車は、転位を施さずに各歯車を嚙み合わせることができる。即ち、 嚙合いピッチ円と基準ピッチ円を等しくすることができる。遊星歯車機構 1は、 Zc=Z a + 2 · Zbが成り立ち、嚙合 ヽピッチ円と基準ピッチ円を等しくすることができる。
(2)遊星歯車の歯数と遊星歯車の配置個数とが等しいと、必然的に、太陽外歯車、 太陽車内歯車の歯数は、遊星歯車の配置個数を約数に持つ、したがって、全ての遊 星歯車は、同一位相で、太陽外歯車と太陽車内歯車とに嚙合うこととなる。遊星の歯 数が多ぐ即ち、嚙合いピッチ円と基準ピッチ円が等しい場合も、同様に同一位相で 嚼合うこととなる。
(3)また、 ZaZZb = 3、 ZcZZb = 5であるので、遊星歯車の歯数は、太陽外歯車の 歯数、太陽車内歯車の歯数の約数となり、遊星歯車は配置個数全てにおいて同じ位 相を持つ、歯車の嚙み合わせとなる。
(4)太陽車内歯車の歯数と太陽外歯車の歯数の和 (Za + Zc)は、 8'Zbとなる。即ち 、遊星配置個数は、 Zc = Za + 2'Zb力成り立つとき、太陽車内歯車の歯数と太陽外 歯車の歯数の遊星歯車の歯数に対する比の和(ZaZZb + ZcZZb)と遊星の歯数 のかけた値(8· Zb)の約数となる。 (Za/Zb + Zc/Zb) 'Zbの約数である。
[0098] したがって、遊星配置個数は 8、即ち(ZaZZb + ZcZZb)を遊星配置個数にする ことができ、この場合は、必然的に、もう一組の遊星歯車機構 2の太陽内歯車の嚙み 合わせの転位係数が大きくなつてしまい現実的に歯車を構成できない。また、二組の 遊星歯車機構の歯数比の差 (太陽車内歯車の歯数 Z遊星歯車の歯数)が大きくなつ てしまい、減速比が小さくなり、本件新型 3K— I型遊星歯車機構の長所が生かせな い。
[0099] 即ち、嚙合いピッチ円と基準ピッチ円を等しくできる歯数の組み合わせであり、遊星
の配置個数を遊星の歯数と等しく設定し、且つ、その配置個数は、 ZaZZb + ZcZZ bと等しくならない本例のような配置方法を遊星配置ならびに歯数設定方法を配置方 法 Iとする。
Zc = Za + 2-Zb
N≠Za/Zb + Zc/Zb
N=Zb
(遊星歯車機構 2について)
(1)太陽外歯車の遊星に対する歯数の比 (太陽外歯車の歯数 Z遊星歯車の歯数) 力 遊星歯車機構 1と等しぐ太陽内歯車の遊星に対する歯数の比 (太陽外歯車の 歯数 Z遊星歯車の歯数)が、遊星歯車機構 1と異なる。
Zf≠Ze -Zd/Zb
よって、遊星歯車機構 2は、
Zd≠Ze + 2-Zf
Zd = Ze-Za/Zb
Zf≠Ze -Zd/Zb
(2)遊星の歯数は、不思議遊星歯車ではないので、遊星歯車機構 1とは異なるので Zd≠Zb
(3)太陽外歯車の歯数と太陽車内歯車の和は、遊星歯車機構 1と共通であるので、 遊星配置個数を 1以外の約数として持つ。すなわち、
(Zd+Zf) ZN=整数
また、減速比を大きくするためには、
Zf≠Ze -Zd/Zb
(4)しかし、本件新型 3K— I型遊星歯車機構の特徴である減速比を大きくし、耐久性 がある機構にするためには、太陽内歯車の遊星に対する歯数の比 (太陽外歯車の歯 数 Z遊星歯車の歯数)は、できるだけ、遊星歯車機構 1の太陽内歯車の遊星に対す る歯数の比に近いことが求められる。すなわち、
Zf/Zb=Zd/Zb
太陽内歯車の遊星に対する歯数の比(太陽内歯車の歯数 z遊星歯車の歯数)を遊 星歯車機構 1のそれに近くするためには、本例では次の手法をとつた。
遊星歯車機構 1の遊星歯車の歯数 (Zb = 9)に対して、遊星歯車機構 2の遊星歯車 の歯数を僅か〖こ大きくした。 (Zd= 10)
そのとき、太陽内歯車の遊星に対する歯数の比 (太陽内歯車の歯数 Z遊星歯車の 歯数は、遊星歯車機構 1のそれに対して僅かに大きな値になり成立する。
即ち、遊星の配置個数の条件を満足する歯数であって、
僅かに、 Zd>Zbのとき、僅かに Zf/Zb>Zd/Zbとなる Zfを選択することにより、大 きな減速比が得られる。
また、僅かに、 Zdく Zbのとき、僅か〖こ ZfZZbく Zd/Zbとなる Zfを選択することによ り、大きな減速比が得られる。
(5)遊星歯車の歯数は、太陽外歯車の歯数(30)の約数ではある力 遊星歯車の配 置個数(9)と歯数太陽外歯車の歯数 (30)と太陽車内歯車の歯数 (51)の 3つの歯数 は公約数 3を持ち、したがって、 3組の位相を持つ歯車の嚙み合わせとなる。
[0101] 遊星歯数設定方法は、太陽内歯歯車の嚙合いピッチ円が基準ピッチ円と異なり、 転位を施した歯数の組み合わせであり、異なる位相を持つ歯車の嚙み合わせを有す るまた、もう一つの歯車機構と共通の遊星配置個数となる。本例のような配置方法を 遊星配置ならびに歯数設定方法を配置方法 IIとする。
[0102] 即ち、配置方法 Iと配置方法 IIの組み合わせによって成り立ち、遊星配置個数が 9 個と多ぐまた、その減速比は、 136と極めて大きい。
[0103] 歯車要目の一例を、次の表 2に示す。
[表 2]
¾星機構 1 遊星機構 2 歯軍タイブ 太陽外歯車 太陽外歯車 太陽内歯車 太陽外歯車 太陽外歯車 太陽内歯車 歯数 27 9 45 30 10 51 遊星個数 9 9
モジュール 0.556 0.4878
圧力角 30度 25度
ねじれ角 0度 0度
ピッチ円径 15 5 25 14.6341 4.878 24.878 歯先円直径 15.5 5.8 24 15.5 6 24.46 歯底円直径 13.8 3.9 26 13.8 4.3 26.4 基礎円直径 12.9904 4.3301 21.6506 13.263 4.421 22.5472 転位係数 0 0 0 0.1318 0.3953 0.3953 転位量 0 0 0 0.0643 0.1928 0.1928 中心距離 10 10
正面嚙合い圧力角 30 30 27° 50' 47" 25° 嚙合いピッチ円 15 1 5 5 I 25 15 I 5 4.878 I 24.878
[0104] 表 2は、中心距離を 10mmとしたときの歯車仕様である。歯数は決定されているの で、中心距離が決まると、モジュールが決定される。また、基礎円も圧力角を決めると 算出される。したがって、嚙合いピッチ円も、モジュールと歯数等が決まれば、算出さ れる。
[0105] また、歯数比が等しい二組の太陽外歯車と遊星歯車は、嚙合いピッチ円が等しぐ 歯数比が等しくな 、二組の太陽内歯車と遊星歯車は、嚙合 、ピッチ円が等しくな 、。
[0106] また、遊星歯車は、嚙合いピッチ円が等しくない歯車の嚙合いでは、太陽外歯車と 太陽内歯車に対し、異なる歯丈の位置で嚙合うこととなる。
[0107] 転位量は、歯車の嚙合いが正常に行われる常識的な範囲で、太陽外歯車、遊星 歯車、太陽内歯車に分割できる。本例で分かるように、 3K型 I型不思議遊星歯車 機構で例示した歯車よりはるかに小さ 、転位係数で歯車の嚙合わせが実現できて ヽ る。これは、 3K型 I型不思議遊星歯車機構では、二つ太陽内歯車が遊星に対し等 しい嚙合いピッチ円で嚙合うため、大きな転位係数が必要であった力 本件では太 陽外歯車、遊星歯車、太陽内歯車に分割で転位を配分できるので、小さい転位量で 実現できる。
[0108] (遊星歯車機構の歯車設定方法 2)
別の例として、次の歯数、遊星配置個数の設定方法について、説明する。
遊星歯車機構 l :Za=42、 Zb = 21、 Zc = 86
遊星歯車機構 2 : Zd= 50、 Ze = 25、 Zf= 102
遊星配置個数: 8個または 4個 (歯丈が小さければ 8個が可能)
[0109] 本例は、遊星配置方法 IIを遊星歯車機構 1、及び遊星歯車機構 2に適応した例で ある。遊星歯車は、二組の異なる位相関係を持って、太陽内歯車、太陽外歯車と嚙 合う。また、太陽内歯歯車の嚙合いピッチ円が基準ピッチ円と異なり、転位を施した 歯数の組み合わせである。
[0110] 減速比は、 816と極めて大きく、これほど大きな、減速比を得ることは、不思議遊星 歯車では実現できない。
[0111] 歯数の関係を示す。
Za + 2-Zb<Zc
Zd + 2-Ze<Zf
[0112] 本例の特徴は、二つの太陽内歯車 C, Fの歯数 Zc, Zfが、いずれも、嚙合いピッチ 円と基準ピッチ円を等しくできる歯数 (Za + 2'Zb = Zc、 Zd + 2'Ze = Zf)より、同一 方向に、歯数を増減していることである。このことによって、より大きな、減速比を得る ことができる。
[0113] また、当然ではあるが、太陽内歯車 C, Fの歯数 Zc、 Zfを嚙合いピッチ円と基準ピッ チ円を等しくできる歯数に対して少なくした場合、すなわち、
Za + 2-Zb>Zc
Zd + 2-Ze>Zf
でも、同様に大きな減速比を得ることができる。
[0114] 本例も、歯車設定方法 1と同様の構成とすることができる。ただし、歯車 A, B,じに おける嚙み合いと、歯車 D, E, Fにおける嚙み合いとの位相関係はすべて異なるよう に配置でき、嚙み合いが重なることによって、より、遊星歯車の回転伝達が間断なく 行われ、スムーズな回転伝達を可能にする。
[0115] (本件新型 3K— I型遊星歯車機構の、従来技術との違いと本質的優位性)
本件新型 3K— I型遊星歯車機構は、二組の太陽外歯車、遊星歯車、太陽内歯車を 有する歯車機構であり、二組の太陽外歯車と遊星歯車の関係は、歯数比が同一で 歯数が異なり、二組の太陽内歯車と遊星歯車の関係は、歯数比が異なる関係を有し ている。したがって、 3K—I型不思議遊星歯車と異なる。
[0116] また、遊星配置個数は、二組の太陽外歯車と太陽内歯車の和の 1以外の公約数と
なる。遊星配置個数が、歯数差に寄らず設定でき、遊星配置個数が多ぐ大きなトル ク伝達を小型で実現できる。また、共通する遊星配置個数を有するという制約の中で 、二組の太陽内歯車と遊星歯車の関係は、歯数比差が小さく設定すれば、高減速比 が実現でき、且つ、耐久性が良い。
[0117] 遊星歯車は、少なくとも二組の内、一組は太陽外歯車、および、太陽内歯車に対し て、異なる位相で嚙み合わせることができる。したがって、間断なく回転伝達が行わ れ、不思議遊星歯車の問題点であるロック状態を引き起こすことを回避できる。
[0118] (歯数の選択)
歯数の選択方法について、次の表 3を参照しながら、さらに説明する。
[表 3]
No. Zs Zp Zs+2Zp 2(Zs+Zp) 2(Zs+Zp)+1 2(Zs+Zp)-1
1 20 10 40 60 61 59
2 22 11 44 66 67 65
3 24 12 48 72 73 71
4 26 13 52 78 79 77
5 28 14 56 84 85 83
6 30 15 60 90 91 89
7 32 16 64 96 97 95
8 34 17 68 102 103 101
9 36 18 72 108 109 107
10 38 19 76 114 115 113
11 40 20 80 120 121 119
12 42 21 84 126 127 125
13 44 22 88 132 133 131
14 46 23 92 138 139 137
15 48 24 96 144 145 143
16 50 25 100 150 151 149
17 52 26 104 156 157 155
18 54 27 108 162 163 161
19 56 28 112 168 169 167
20 58 29 116 174 175 173
[0119] 表 3は、太陽外歯車、遊星歯車、太陽内歯車の歯数比が 2 :1:4の場合を示してい る。太陽外歯車の歯数を Zs、遊星歯車の歯数を Zpとすると、各歯車を同軸上に配置 するためには、太陽内歯車の歯数は Zs + 2Zpとなる。遊星歯車の配置個数は、一般 には、太陽外歯車の歯数と太陽内歯車の歯数との和 2 (Zs+Zp)の約数となる。
[0120] 例えば、遊星歯車の配置個数を 5、歯数を 1だけ減らす場合には、 2 (Zs+Zp)—1 力 で割り切れるもの、例えば、 No.2及び No.7を選択する。そして、太陽内歯車又
は太陽外歯車の歯数を、 No. 2及び No. 7の値から 1減らす。
[0121] 具体的には、 3K-I型遊星歯車機構の場合には、太陽内歯車の歯数を減らし、 N o. 2に対応する一方の組の太陽外歯車、遊星歯車、太陽内歯車の歯数は、 22、 11 、 43とし、 No. 7に対応する他方の組の太陽外歯車、遊星歯車、太陽内歯車の歯数 は、 32、 16、 63とする。 3K— II型遊星歯車機構の場合には、太陽外歯車の歯数を 減らし、 No. 2に対応する一方の組の太陽外歯車、遊星歯車、太陽内歯車の歯数は 、 21、 11、 44とし、 No. 7に対応する他方の組の太陽外歯車、遊星歯車、太陽内歯 車の歯数は、 31、 16、 64とする。
[0122] 例えば、 No. 2及び No. 17を選択する場合には、太陽内歯車又は太陽外歯車の 歯数を、 No. 2の値から 2減らし、 No. 17の値から 1減らしてもよい。 2組の歯数に 2 倍程度の差があるときには、一方を 2減らし、他方を 1減らす場合の方が、両方を 1ず つ減らす場合よりも減速比を大きくすることができることがある。
[0123] 別の例として、遊星歯車の配置個数を 7、歯数を 1だけ増やす場合には、 2 (Zs+Z p) + 1が 7で割り切れるもの、例えば、 No. 6及び No. 13を選択する。そして、太陽 内歯車又は太陽外歯車の歯数を、それぞれ、 No. 6及び No. 13の値から 1増やす。
[0124] 具体的には、 3K-I型遊星歯車機構の場合には、太陽内歯車の歯数を増やし、 N o. 6に対応する一方の組の太陽外歯車、遊星歯車、太陽内歯車の歯数は、 30、 15 、 61とし、 No. 13に対応する他方の組の太陽外歯車、遊星歯車、太陽内歯車の歯 数は、 44、 22、 89とする。 3K— II型遊星歯車機構の場合には、太陽外歯車の歯数 を増やし、 No. 6に対応する一方の組の太陽外歯車、遊星歯車、太陽内歯車の歯数 は、 31、 15、 60とし、 No. 13に対応する他方の組の太陽外歯車、遊星歯車、太陽 内歯車の歯数は、 45、 22、 88とする。
[0125] No. 6及び No. 20を選択する場合には、太陽内歯車又は太陽外歯車の歯数を、 No. 6の値から 2増やし、 No. 20の値から 1増やしてもよい。 2組の歯数に 2倍程度の 差があるときには、一方を 2増やし、他方を 1増やす場合の方が、両方を 1ずつ増や す場合よりも減速比を大きくすることができることがある。
[0126] (実施例 1)
次に、本件新型 3K—I型遊星歯車機構の具体的な構成について、図 6a及び図 6bを
参照しながら説明する。図 6aは、遊星歯車装置 30の構成を示す断面図である。図 6 bは図 6aの線 B— Bに沿って切断した断面図である。
[0127] 遊星歯車装置 30は、太陽外歯車 32と、複数個の遊星歯車 34と、 2つの太陽内歯 車 36, 38とを備え、遊星歯車 34は、太陽外歯車 32と太陽内歯車 36, 38との間のリ ング状の空間に配置される。
[0128] 太陽外歯車 32と遊星歯車 34には、それぞれ、互いに嚙み合う 2組の歯車 12, 22 ;
14, 24が形成されている。一方の太陽内歯車 36には、遊星歯車 34の一方の歯車 1 4に嚙み合う歯車 16が形成されている。他方の太陽内歯車 38には、遊星歯車 34の 他方の歯車 24に嚙み合う歯車 26が形成されている。図 6の歯車 12, 14, 16, 22, 2 4, 26は、それぞれ、図 5の歯車 A, B. C, D, E, F, Gに対応する。
[0129] 太陽外歯車 32の歯車 12と、遊星歯車 34の歯車 14と、太陽内歯車 36の歯車 16と による 1組の遊星歯車機構 10が構成され、太陽外歯車 32の歯車 22と、遊星歯車 34 の歯車 24と、太陽内歯車 36の歯車 26とにより、もう 1組の遊星歯車機構 20が構成さ れる。 2組の遊星歯車機構 10, 20において、太陽外歯車 32の歯車 12, 22と遊星歯 車 34の歯車 14, 24とは歯数比が等しく歯数が異なる。また、太陽内歯車 36, 38の 歯車 16, 26と遊星歯車 34の歯車 14, 24とは歯数比が異なる。
[0130] 太陽外歯車 32、遊星歯車 34、太陽内歯車 36, 38は、一体的に加工したり、複数 部材を組み合わせたりすることによって、作製することができる。例えば、太陽外歯車 32は、一方の歯車 22が形成された軸本体 33に、他方の歯車 12が形成された部材 3 3sを圧入することにより作製する。
[0131] 太陽外歯車 32と 2つの太陽内歯車 36, 38との間に、軸受け 40, 42が配置されて いる。軸受け 40, 42は、遊星歯車 34の両側に配置されている。遊星歯車 34にはキ ャリアは必須ではな 、が、キャリアを設けて遊星歯車 34を回転自在に支持するように してちよい。
[0132] 遊星歯車装置 30は、太陽外歯車 32と 2つの太陽内歯車 36, 38との内、一つを固 定 (拘束)した状態で、他の 2つの間で回転を伝達することができる。例えば、太陽外 歯車 32を駆動し、 2つの太陽内歯車 36, 38のいずれか一方を固定し、他方の回転 を取り出す。このとき、太陽外歯車 32の一方の歯車 12側力も駆動する場合には、ね
じり応力の発生を抑制するため、駆動側の太陽内歯車 36を固定し、他方の太陽内 歯車 38が回転するようにすることが好ま 、。
[0133] 次に、遊星歯車装置 30の動作について説明する。
[0134] 太陽外歯車 32の歯車 12と、遊星歯車 34の歯車 14と、太陽内歯車 36の歯車 16と による 1組の遊星機構 10において、太陽外歯車 32が回転すると、太陽外歯車 32の 歯車 12が回転する。太陽内歯車 36が固定されている場合、太陽内歯車 36の歯車 1 6が固定されているので、遊星歯車 34の歯車 14は、太陽内歯車 36の歯車 16の周り を自転しながら公転する。太陽外歯車 32の歯車 12, 22と遊星歯車 34の歯車 14, 2 4との歯数比が等しいため、太陽外歯車 32の歯車 12, 22と、遊星歯車 34の歯車 14 , 24とが一体となって回転し、遊星歯車 34の歯車 24は太陽外歯車 32の歯車 12の 周りを自転しながら公転する。
[0135] 一方、太陽内歯車 36, 38の歯車 16, 26と遊星歯車 34の歯車 14, 24との歯数比 が異なるので、遊星歯車 34の歯車 24が太陽外歯車 32の歯車 22の周りを自転しな がら公転すると、遊星歯車 34の歯車 24に嚙み合う太陽内歯車 38の歯車 26が回転 する。つまり、太陽内歯車 38が回転する。
[0136] すなわち、太陽内歯車 36が固定されている場合、太陽外歯車 32と太陽内歯車 38 との間で回転を伝達することができる。遊星歯車 34の歯車 14, 24の歯数が異なるの で、大きな減速比を得ることが可能である。
[0137] 次に、本件新型 3K— I型遊星歯車機構の変形例 1, 2について、図 7〜図 10を参 照しながら説明する。以下では、実施例 1との相違点を中心に説明し、実施例 1と同 様の構成部分には同じ符号を用いる。
[0138] (変形例 1)
変形例 1について、図 7及び図 8を参照しながら説明する。
[0139] 変形例 1では、本件新型 3K— I型遊星歯車機構に、各歯車と軸を共通し、歯数比 が等しく歯数の異なる別の歯車の組を並列に追加している。
[0140] 図 7のスケルトン図に示すように、ねじ状の歯車 G, H, Iをそれぞれ、歯数比の一致 する歯車 A, B, Cに並列に配置する。ねじ状歯車 G, H, Iを用いることにより、各遊 星歯車が軸方向の位置を固定された状態で回転伝達を行うようにすることができる。
[0141] 異なる歯数の歯車の組を追加した効果は、次のように要約できる。
(1)歯数の異なる歯の嚙合いを追加することにより、歯車は嚙合いが重なりあい、より スムーズな回転伝達を可能にする。
(2)また、並列に歯車を追加する歯車をねじ状歯車にすることによって、通常の回転 伝達機構では受けることのできないアキシャル方向の荷重を受けることができる。
(3)遊星歯車では、ベアリング等の軸受けが多数必要である力 ねじ状歯車を追カロ することにより、軸受け機構が不要となりコンパクトな設計が可能である。
[0142] 同一の歯数比のねじ状の歯車を施せば、同一の速比で、太陽外歯車、遊星歯車、 太陽内歯車は回転可能である。例えば、遊星歯車機構 1の太陽外歯車 A、遊星歯車
B、太陽内歯車 Cの歯数力 それぞれ、 Za = 27、 Zb = 9、 Zc=45であり、その比が 3 : 1 : 5である場合、太陽外歯車、遊星歯車、太陽内歯車のねじ状歯車 H, I, Jを、 3条 、 1条、 5条の歯車、即ち、 3歯、 1歯、 5歯のリード角の小さなはすば歯車とし、太陽外 歯車 A、遊星歯車 B、太陽内歯車 Cと一体をなし回転するように構成する。すると、速 度比が同一であるので、嚙合いを補いながら、回転伝達が行われ、アキシャル方向 には移動しない。言い換えれば、アキシャル方向に移動すると、嚙合いの位相が成 立しないのでアキシャル方向の移動は禁止される。したがって、アキシャル方向に荷 重が印加されても、直交する回転方向には、回転伝達されず、ねじ状歯車の歯面で 荷重を受け持つことになる。
[0143] よって、太陽外歯車 A、遊星歯車 B、太陽内歯車 Cは、ラジアル方向には回転可能 でアキシャル方向に変位固定される。また、太陽外歯車 Aと太陽外歯車 D、遊星歯車 Bと遊星歯車 Eは、一体をなしている。したがって、太陽内歯車 Fのみが、歯車 A、 B、
C、 D、 Eに対して、アキシャル方向に対して固定されていない。したがって、唯一アキ シャル方向の変位が自由である太陽内歯車 Fと太陽外歯車 A, Dとをベアリングによ つて、回転自由で且つ、アキシャル方向の変位を規制するように固定すれば、本機 構は、すべての歯車が回転可能でアキシャル方向の荷重に対して変位規制し、耐カ が高い機構を構成できる。
[0144] 当然ではあるが、ねじ状の歯車は、遊星歯車と太陽外歯車は逆方向のねじれ角を 有し、且つ、太陽内歯車は、遊星歯車と同一方向のねじれ角を有し、雄ねじ雌ねじの
関係にある。
[0145] 各歯車は、歯数比が等しいので、一般的に太陽外歯車 A、遊星歯車 B、太陽内歯 車 Cの基準ピッチ円、嚙合いピッチ円が等しい。また、ねじ状の歯車は、一般的なィ ンボリュート歯車では歯直角法線ピッチが等しいが、ねじれ角は等しくなくても成立す る。
[0146] 変形例 1の遊星歯車装置 30aの具体的な構成例を、図 8の断面図に示す。
[0147] 遊星歯車装置 30aは、実施例 1と略同様に、太陽外歯車 32s、複数の遊星歯車 34 a、太陽内歯車 36, 38aを備え、遊星歯車 34aは、太陽外歯車 32aと太陽内歯車 36 , 38aとの間のリング状の空間に配置される。太陽外歯車 32aと遊星歯車 34aには、 それぞれ、互いに嚙み合う 2組の歯車 12, 22 ; 14, 24が形成されている。太陽内歯 車 36, 38aに ίま、それぞれ、歯車 16, 26力 ^形成されて!ヽる
[0148] 実施例 1とは異なり、太陽外歯車 32aには、歯車 12, 22の間にねじ状の歯車 22a が形成されている。遊星歯車 34aには、歯車 14, 24の間に、太陽外歯車 32aのねじ 状の歯車 22aに嚙み合うねじ状の歯車 24aが形成されている。太陽内歯車 38aには 、歯車 26に隣接して、遊星歯車 34aのねじ状の歯車 24aに嚙み合うねじ状の歯車 26 aが形成されている。
[0149] 図 8の歯車 12, 14, 16, 22, 24, 26, 22a, 24a, 26aは、それぞれ、図 7の歯車 A
, B, C, D, E, F, G, H, Iに対応する。
[0150] 太陽外歯車 32aと一方の太陽内歯車 36との間には、実施例 1と同様に、軸受け 40 が配置されている。太陽外歯車 32aと他方の太陽内歯車 38aとの間には、実施例 1と 異なり、軸受けは配置されていない。
[0151] (変形例 2)
変形例 2について、図 9及び図 10を参照しながら説明する。
[0152] 変形例 2では、本件新型 3K— I型遊星歯車機構に、太陽外歯車及び遊星歯車と軸 を共通し、歯数比が等しく歯数の異なる別の歯車の組を並列に追加している。
[0153] 図 9のスケルトン図に示すように、ねじ状の歯車 G, Hをそれぞれ、歯数比の一致す る歯車 A, Bに並列に配置する。ねじ状歯車 G, Hを用いることにより、太陽外歯車と 遊星歯車とは軸方向の相対位置が固定された状態で、相対回転する。
[0154] 図 10の断面図に示すように、変形例 2の遊星歯車装置 30bは、変形例 1と略同様 に構成される。ただし、変形例 1と異なり、太陽内歯車 38bにはねじ状の歯車が形成 されていない。また、太陽外歯車 32bと太陽内歯車 38bとの間に軸受け 42が配置さ れている。
[0155] 例えば、図 9に示した遊星歯車機構において、歯車 A〜Fの歯数 Za〜Zfが次の場 合について説明する。
遊星歯車機構 l :Za=42、 Zb = 21、 Zc = 86
遊星歯車機構 2 : Zd= 50、 Ze = 25、 Zf= 102
[0156] 遊星歯車機構 1の太陽外歯車 Aと遊星歯車 Bとの歯数比と、遊星歯車機構 2の太 陽外歯車 Dと遊星歯車 Eの歯数比は、ともに 2 : 1の整数比となっている。しかし、太陽 外歯車と遊星歯車と太陽内歯車の歯数比の比は、遊星歯車機構 1では、 42 : 21 : 86 となり、少ない数の整数比とはならず、実現可能なねじ状歯車を施すことはできない。 また、同様に遊星歯車機構 1も同様である。
[0157] したがって、ねじ状歯車を、遊星歯車機構 1と 2の太陽外歯車と遊星歯車間に、歯 数 (条数)比が 2 : 1となる並列に施すことができる。図で分かるように、追加したねじ状 歯車の遊星歯車 Gを 1歯、又、太陽外歯車 Hを 2歯とし、歯数比が他の遊星歯車と太 陽外歯車と同一の 2 : 1とし、歯数比が同じなので、他の歯車の嚙合いを補助し、スム ーズな回転を促す。また、ねじ状歯車によって、遊星歯車と太陽外歯車は、スラスト 方向(アキシャル方向)に変位が拘束されるので、二つの太陽外歯車と遊星歯車とは 、軸方向に互いに拘束しあう。よって、太陽外歯車 Aと遊星歯車 Bと太陽外歯車 Dと 遊星歯車 E、と太陽外歯車 H、遊星歯車 Iは、軸方向に一体となり固定されるが、その 一体となったもの対し、太陽内歯車 Cと太陽内歯車 Fは、軸方向(アキシャル方向)に 固定されない。よって、図 10でわ力るように、ベアリングによって二つの太陽内歯車と 太陽外歯車間を回転自由で、アキシャル方向を固定する。したがて、図 10に示す本 歯車機構は、アキシャル方向の荷重に対し耐カを有し、且つ、回転伝達を行う機構と なる。
[0158] <本件新型 3K— II型遊星歯車機構 >
次に、第 2の実施の形態として本件新型 3K— II型遊星歯車機構について、図 11〜
図 13を参照しながら説明する。
[0159] 3K— II型遊星歯車機構は、二つの太陽外歯車の内、一つを固定軸、もう一つを従 動軸とし、太陽内歯車を駆動軸とし、いずれも大減速を得ようとする機構である。即ち 、太陽内歯車を回転入力(駆動軸)として、二つの太陽外歯車間に相対的な回転を 発生させる機構である。
[0160] 図 11に本件新型 3K— II型遊星歯車機構のスケルトン図を示す。例えば、特許請 求の範囲に記載された「第 1及び第 2の歯車」には歯車 B, Eが対応し、「第 3及び第 4 の歯車」には歯車 A, Dが対応し、「第 5及び第 6の歯車」には歯車 C, Fが対応する。
[0161] 本件新型 3K— II型遊星歯車機構は、歯数比の選定の自由度が大きい。したがって 、従来の 3K— II型遊星歯車機構の問題点を抑制でき、本件新型 3K— II型遊星歯車 機構の利用の拡大が見込まれる。
[0162] (本件新型 3K— II型遊星歯車機構の減速比)
図 11に於いて、まず、歯車 A、 B、 Cでなす遊星歯車機構を遊星歯車機構 1、もう一 組の、歯車 D、 E、 Fでなす遊星歯車機構を遊星歯車機構 2とし、それぞれに、太陽 外歯車 A, Dと太陽車内歯車 C, Fとの間に 1回転の相対回転を与える時、遊星歯車 B, Eの軸に対して、太陽外歯車 A, D、太陽内歯車 C, Fの回転位置関係は、次の表 4のようになる。
[表 4]
[0163] 遊星歯車機構 1の太陽外歯車を固定とすると、回転は遊星歯車機構 1の太陽外歯 車と遊星歯車機構 2の太陽内歯車間に与えられる。
[0164] また、二組の太陽内歯車と遊星車は、歯数比が等しぐ太陽内歯軸 C, Fは、遊星 歯車 B, Eに対し、一つの回転位置し力持ち得ない。即ち、遊星歯車機構 2の太陽内 歯車 Fの位置 Hr2が、遊星歯車機構 1の公転位置に固定される。
[0165] よって、遊星歯車機構 1の太陽外歯車 Aと太陽車内歯車 Cとの間に与えられる 1回
転の相対回転は、遊星歯車機構 2には、 HrlZHr2の回転に相当し、よって、遊星 歯車機構 2の太陽外歯車 Dの位置は、 Hs2'HrlZHr2となる。
[0166] したがって、遊星歯車機構 1と遊星歯車機構 2の太陽外歯車 A, D間の相対回転( 速比 u)は、
u=Hsl -Hs2-Hrl/Hr2
となり、その逆数が減速比 (K)となり、
K= 1/ (Hsl -Hs2-Hrl/Hr2)
= (Za + Zc) -Zd/ (Zc-Zd-Za-Zf) …(2)
となる。
[0167] (3K型 II型普通遊星歯車機構と本件新型 3K— II型遊星歯車機構の減速比の比 較)
図 4の 3Κ型 II型普通遊星歯車機構の減速比 (Κ')は、
K' = (Za + Zc) - Zb - Zd/ (Zb · Zc · Zd - Za · Zc · Ze) · · · (2) '
である。
[0168] この式は、本件新型 3K— II型遊星歯車機構の減速比より複雑であるが、 3Κ型 II 型普通遊星歯車機構には、歯車 F (歯数 Zf)が存在しない。 3K型 II型普通遊星歯 車機構では、遊星歯車は、歯車 A, B, Cの嚙み合いによって位置が決まる。本件新 型 3K— II型遊星歯車機構を 3K型 II型普通遊星歯車機構に対応させるため、歯車 Fと歯車 Eとの嚙み合!、が歯車 Cと歯車 Bとの嚙み合!、を阻害しな!、ように、 Zf=Zc · ZeZZbと仮想して、式 (2)を変形すると
K= (Za + Zc) - Zd/ (Zc-Zd-Za-Zf) …(2)
= (Za + Zc) - Zd/ (Zc · Zd - Za · Zc · Ze/Zb)
= (Za + Zc) - Zb - Zd/ (Zb · Zc · Zd - Za · Zc · Ze)
となり、 K型 II型普通遊星歯車機構の減速比を示す式 (2) 'が導き出せる。
[0169] 従来の K型 II型普通遊星歯車機構では、不思議遊星歯車も歯数という概念によ つて、遊星の配置個数が制約され、太陽内歯車 F (歯数 Zf)を嚙み合わせ存在させる ことができなカゝつた。本件新型 3K— II型遊星歯車機構は、本来の真理である歯数比 により減速比が決まる概念により、遊星歯車機構を考え、且つ、遊星の配置方法をェ
夫することによって、太陽外歯車、遊星歯車、太陽内歯車の歯をそれぞれ複数個配 置できる機構が存在し得ることを示した。
[0170] (本件新型 3K— II型遊星歯車機構の歯数の例)
遊星歯車機構の歯車の歯数と減速比の一例を、次の表 5に示す。
[表 5]
[0171] この例は、本件新型 3K— I型遊星歯車機構の歯数の例として示した表 2の仕様に 近いものであり、
遊星歯車機構1 ^ = 27、 Zb = 9、 Zc=45
遊星歯車機構 2 : Zd= 31、 Ze= 10、 Zf= 50
遊星配置個数: 9個
Zb :Zc = Ze :Zi
Za :Zb≠Zd:Ze
である。
[0172] 表 2では遊星歯車機構 2の歯数力 太陽内歯車が 51であったが、本例では、それ を 50にし、太陽外歯車が 30であった力 それを 31にした。したがって、遊星の配置 個数も 9と同じで、極めて、類似している。
[0173] し力しながら、式(2)で計算される減速比は 49. 6と本件新型 3K—I型遊星歯車機 構の例として示した減速比 136に比して小さくなる。即ち、本件新型 3K— II型遊星歯 車機構は、本件新型 3K— I型遊星歯車機構に対し相対的に減速比が小さくなる傾 I口」にある。
[0174] 表 5で分かるように、すべての歯車は同一中心距離である力 嚙合いピッチ円は太 陽外歯歯車と遊星歯車間で、遊星歯車機構 1と遊星歯車機構 2で異なる。
[0175] 転位は、本件新型 3K— I型遊星歯車機構と同様に、太陽外歯歯車と遊星歯車、太 陽内歯車に分散して与えられ、その転位係数は歯車として効率よ 、範囲である。
[0176] 歯車の歯数には、ある程度自由度があるので、次の仕様のように、減速比を 162と ある程度大さくすることちでさる。
遊星歯車機構1 ^ = 35、 Zb = l l、 Zc = 55
遊星歯車機構 2 :Zd=45、 Ze= 14、 Zf= 70
遊星配置個数: 5個
[0177] この場合、
Zb :Zc = Ze :Zi
Za :Zb≠Zd:Ze
の関係にあるから、二つの太陽外歯車の遊星歯車に対する歯数比が異なる。
[0178] よって、二つの太陽外歯車の内、いずれか一方を固定軸、もう一方を従動軸にとり 、太陽内歯車を駆動軸にすれば、太陽内歯車の回転入力に対して、本例の場合は、 式(2)に従い 1Z162に減速され、駆動軸に出力される。また、遊星歯車の配置個数 は、二つの遊星歯車機構の太陽外歯車と太陽内歯車の歯数の和の公約数であり、 Z aと Zcの和が 90であり、 Zdと Zfの和が 115であることから、 5個とした。
[0179] 二つの太陽外歯車と太陽内歯車の歯数の和は、この 5以外に、 II以外の公約数を 持たない。よって、 5個すベての遊星歯車に於いて、遊星歯車の太陽外歯車、太陽 内歯車に対する嚙合いの位相関係力 すべて異なる。したがって、遊星歯車の配置 方法も本件新型 3K-I型遊星歯車機構と同様であるといえる。
[0180] (実施例 2)
次に、本件新型 3K— II型遊星歯車機構の具体的な構成について、図 12を参照しな がら説明する。
[0181] 図 12の断面図に示すように、遊星歯車装置 70は、 2つの太陽外歯車 72, 73と、複 数の遊星歯車 74と、太陽内歯車 76とを備え、遊星歯車 74は、太陽外歯車 72, 73と 太陽内歯車 76との間のリング状の空間に配置される。
[0182] 遊星歯車 74と太陽内歯車 76とには、それぞれ、互いに嚙み合う 2組の歯車 54, 64 ; 56, 66が形成されている。一方の太陽外歯車 72には、遊星歯車 74の一方の歯車 54に嚙み合う歯車 52が形成されている。他方の太陽内歯車 73には、遊星歯車 74 の他方の歯車 64に嚙み合う歯車 62が形成されて!ヽる。太陽外歯車 72の歯車 52と、 遊星歯車 74の歯車 54と、太陽内歯車 76の歯車 56とによる 1組の遊星歯車機構 50 が構成され、太陽外歯車 73の歯車 62と、遊星歯車 74の歯車 64と、太陽内歯車 76 の歯車 66とによる、もう 1組の遊星歯車機構 60が構成される。 2組の遊星歯車機構 5 0, 60にお!/ヽて、太陽内歯車 76の歯車 56, 66と遊星歯車 74の歯車 54, 64とは歯 数比が等しく歯数が異なる。また、太陽外歯車 72, 73の歯車 52, 62と遊星歯車 74 の歯車 54, 64とは歯数比が異なる。
[0183] 2つの太陽外歯車 72, 73は、同心かつ相対回転自在同心に配置されている。すな わち、太陽外歯車 72, 73は、互いに対向する端面に、それぞれ、凸部と凹部が形成 され、凹部と凸部の間に配置された軸受け 80を介して回転自在に結合されている。
[0184] 2つの太陽外歯車 72, 73と太陽内歯車 76との間〖こは軸受け 82, 84が配置されて いる。軸受け 82, 84は、遊星歯車 74の両側に配置されている。遊星歯車 74にはキ ャリアは必須ではな 、が、キャリアを設けて遊星歯車 74を回転自在に支持するように してちよい。
[0185] 遊星歯車装置 70は、 2つの太陽外歯車 72, 73と太陽内歯車 76のうち、一つを固 定 (拘束)した状態で、他の 2つの間で回転を伝達することができる。
[0186] 例えば、太陽内歯車 76を固定する場合、一方の太陽外歯車 72が回転すると、一 方の遊星歯車機構 50において、遊星歯車 74の歯車 54が、太陽内歯車 76の歯車 5 6の周りを自転しながら公転する。太陽内歯車 76の歯車 56, 66と遊星歯車 74の歯 車 54, 64との歯数比が等しいので、太陽内歯車 76の歯車 56, 66に対して、遊星歯 車 74の歯車 54, 64は、一体となって回転し、遊星歯車 74の歯車 64は太陽内歯車 7 6の歯車 66の周りを自転しながら公転する。
[0187] 遊星歯車 74の歯車 64が太陽内歯車 76の歯車 66の周りを自転しながら公転すると 、遊星歯車 74の歯車 64と嚙み合う太陽外歯車 73の歯車 62が回転する。このとき、 太陽外歯車 72, 73の歯車 52, 62と遊星歯車 74の歯車 54, 64との歯数比が異なる
ので、太陽外歯車 73は、太陽外歯車 72とは異なる速度で回転する。
[0188] (変形例 3)
次に、ねじ状の歯車を並列に追加した変形例 3について、図 13を参照しながら説明 する。
[0189] 図 13のスケルトン図に示すように、本件新型 3K— II型遊星歯車機構の歯数の例と して示した図 11の構成、すなわち、歯車 A, B, Cによる遊星歯車機構 1と、歯車 D, E , Fによる遊星歯車機構 2とを備えた構成に、ねじ状の歯車 G, H, Jによる遊星歯車 機構 3を遊星歯車機構 1と並列に設ける。遊星歯車機構 3は、遊星歯車機構 1と歯数 比が全く等しい。即ち、遊星歯車機構 1の太陽外歯車、遊星歯車、太陽内歯車と、遊 星歯車機構 3の太陽外歯車、遊星歯車、太陽内歯車とは、それぞれ、互いに固定さ れている。
[0190] 例えば、歯車 A〜J (Iなし)の歯数 Za〜Zj (Ziなし)及び遊星配置個数は、次のよう にする。
遊星歯車機構1 ^ = 27、 Zb = 9、 Zc=45
遊星歯車機構 3 :Zg = 3、 Zh= l、 Zj = 5
遊星歯車機構 2 : Zd= 31、 Ze= 10、 Zf= 50
遊星配置個数: 9個
[0191] <はすば歯車を用いた遊星歯車機構 >
本件新型 3K— I型遊星歯車機構や、本件新型 3K— II型遊星歯車機構において、は すば歯車を用いてもよい。以下、具体的な構成について説明する。
[0192] (実施例 3)
実施例 3の遊星歯車装置 30xについて、図 14a及び図 14bを参照しながら説明する 。図 14aは、遊星歯車装置 30xの構成を示す断面図である。図 14bは、図 14aの線 B Bに沿って切断した断面図である。
[0193] 遊星歯車装置 30xは、本件新型 3K—I型遊星歯車機構である。図 14aに示したよ うに、太陽外歯車 32x、遊星歯車 34x、太陽内歯車 36x、 38xには、それぞれ、ねじ れが逆方向の 2つのはすば歯車 12x, 22x; 14x, 24x; 16x, 26xが形成されている 。太陽外歯車 32bと太陽内歯車 36x, 38bとの間には、軸受け 40x, 42xが配置され
ている。例えば、一方の太陽内歯車 36xが固定され、回転せず、軸方向に移動しな いようになっている。他方の太陽内歯車 38xは回転自在である。太陽内歯車 36x, 3 8xのはすば歯車 16x, 26xが遊星歯車 34xのはすば歯車 14x, 24xと嚙み合うので 、太陽内歯車 36x, 38xの軸方向の位置は一定に保たれる。太陽内歯車 36x, 38x の間には、オイルシール 37xが配置され、遊星歯車装置 30xの内部のオイルが漏れ 出さないようになっている。
[0194] 例えば、 1組の遊星歯車機構 10xの各歯車 12x, 14x, 16xの歯数は、それぞれ、 22、 11、 43である。もう 1組の遊星歯車機構 20xの各歯車 22x, 24x, 26xの歯数は 、それぞれ、 32、 16、 63である。遊星歯車 34xの配置個数は 5である。この場合の減 速比は 409. 5であり、極めて大きい。
[0195] 遊星歯車装置 30xは、ねじれが逆方向のはすば歯車の嚙み合いによって、軸方向 荷重を受けることができ、抜け止めやキャリアを設けなくても遊星歯車 34を安定して 保持することができ、円滑に駆動することができる。また、軸方向に同時にかみ合う歯 数が増えるので、音が静かであり、耐荷重性が向上する。遊星歯車 34xにはすば歯 車 14x, 24を設けているので、平歯車の場合に i:匕べ、太陽歯車 32x, 36x, 38xの 中心軸周りの傾きや偏磨耗を軽減できる。
[0196] 太陽外歯車 32xも遊星歯車 34xも、それぞれ、二つの異なる歯車 12x, 22x; 14x, 24xを有し一体として形成されている。したがって、遊星歯車 34xと太陽外歯車 32x の位相関係力 互いに嚙合う様に固定され、遊星歯車 34xは、同一形状のものが複 数個配置されるようにすることができる。遊星歯車装置 30xは、例えば、一方の遊星 歯車機構 20x側を組み立て、所定位置に露出して ヽる遊星歯車 34xのはすば歯車 14xに、他方の遊星歯車機構 ΙΟχの太陽内歯車 36xをねじりながら嚙み合わせるこ とにより、組み立てることができる。
[0197] (まとめ)
以上に説明したように、本件新型 3K— I型遊星歯車機構及び本件新型 3K— II型遊 星歯車機構は、機構学的に従来技術とは異なる新規な遊星歯車機構を備えたること によって、従来装置の問題点を解決することができる。すなわち、機構の根源である 歯車の減速理論にさかのぼり、不思議歯車機構の理論に立ち返り、新たに提案され
た遊星歯車機構を備える。不思議遊星歯車では、一つの軸に取り付けられた互いに 歯数の異なる 2個の歯車が他の共通な歯車に嚙合う機構であった力 本件新型 3K I型遊星歯車機構及び本件新型 3K— II型遊星歯車機構は、では、遊星歯車軸に 一つの歯車ではなぐ一体に構成された互いに歯数の異なる歯車を設け、その遊星 の二つの歯車に対し、互いに歯数比の異なる複数の歯車を太陽外歯車、もしくは、 太陽内歯車に設けられて 、る。
[0198] 本件新型 3K— I型遊星歯車機構及び本件新型 3K— II型遊星歯車機構は、従来 装置の問題点を解決することができる。すなわち、減速比に設計上の自由度が増し、 その結果、遊星の配置個数を多くでき、高トルク伝達が可能であり、且つ、より大きな 減速比を実現でき、高効率である。
[0199] すなわち、遊星機構は、遊星の配置個数 1個ではないので嚙合いが多ぐ大きなト ルクを伝達可能である。また、歯数比の理論なので、高減速比を、歯の強度を落とさ す実現できる。遊星に対する歯数比が違う原理で動くから、歯数比が近くなればなる ほど、原理上、減速比は大きくなる。一般的に、大きな減速比を得る歯車は、歯車の 基準ピッチは、大と小の関係、即ち、歯数比が大きいほど、減速比は大きいという関 係にある。ところが、本発明は、歯数比の差が小さいほど、大きいな減速比を得る。歯 数比の差で動くから、歯数の比ではなぐあくまで、歯数比の差であり、歯車の大小の 比に関係がない。
[0200] また、従来装置で大減速とすると、歯数比が大きくなるから、歯車に負担がかかる。
大減速のものはモジュール力 、さくなり、強度が弱くなるが、本発明ではそれが防ぐ ことができる。
[0201] また、高減速になればなるほど、伝達トルクが大きい。歯数比が異なると、どうしても 、遊星に回転速度比の違いにより、ねじりトルクが発生し、歯の破損を招く。本発明で は、減速比が大きいほど、遊星歯車の回転速度比は小さい。したがって、減速比の 大きいものほど耐久性が良い。一般的には、減速比が大きいほど、耐久性が悪いの で、全く逆になる。
[0202] 遊星配置個数が、従来技術より多ぐ異位相配置ができ、耐久性に不可欠な、歯面 のみの嚙み合いを実現できる。従来技術では、遊星の配置可能個数は、遊星に嚙
合う歯車の、歯数差によって制限されていた。しかし、本発明では歯数比の理論であ り、遊星配置可能個数が、従来技術に比して、大きな自由度をもって設定できるので 、配置個数を多くできる。また、互いに異なる位相でかみ合わせることもできる。
[0203] 遊星配置個数は、高トルク伝達に向く。異なる位相でかみ合わせることによって、歯 車として、歯面でのトルク伝達が可能で、たとえば、歯底と歯先の衝突などを防ぐこと ができる。即ち、太陽と内歯の嚙合いが中心間距離を保つように常に働き、遊星の公 転軌道の振れが生じにくい。そのため、遊星歯車のキャリアを省くことも可能である。
[0204] なお、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなぐ種々変更を加え て実施することが可能である。
[0205] 例えば、歯車は、一般的なインボリユート歯形に限らず、サイクロイド歯形や円弧歯 形などでもよい。また、平歯車に限らず、はすば歯車、力さ歯車などであってもよい。