明 細 書
アクリル系収縮性繊維
技術分野
[0001] 本発明は、アクリル系収縮性繊維およびそれを用いたパイル布帛製品に関する。
背景技術
[0002] 従来、アクリル系繊維は、獣毛様風合レ、を有し、その特徴から玩具、衣料等の立毛 商口「口
に用いられている。前記立毛商品のなかでも、パイル布帛製品の分野では、天然調 の外観や優れた立毛感を付与するために、天然毛皮のダウンヘアー部に相当する 部分を収縮性繊維で、ガードヘアー部に相当する部分を非収縮性繊維で構成する 例が多い。
[0003] 従来の収縮性繊維は、染色すると染色時の熱で収縮するため、染色後にはそれ以 上収縮できないものとなる。従って、従来の収縮性繊維を染色した後に、パイル布帛 の短パイル部を構成する繊維として用いた場合には、該繊維が本来収縮性能を発現 すべきパイル布帛製造のテンター工程において、もはや収縮しないため、ガードヘア 一部とダウンヘアー部の段差を生じさせることができなくなる問題があった。一方、テ ンター工程で収縮性を発現させるために、染色時に収縮しない程度の温度で処理し た場合には、染料が吸尽せず、十分な発色が得られない問題があった。
[0004] 上記の理由により、従来の収縮性繊維は、紡糸工程で予め着色することによる、限 られた色相のものしか市場に提供することができなかった。このことは、意匠性が重視 されるパイル布帛の分野では、致命的な欠点であった。
[0005] これまでに、アクリル系収縮性繊維を得るための方法として、アクリロニトリル 80重量 %以上とスルホン酸基含有モノマー 0. 5〜5重量0 /0およびビエル系モノマー 5〜15 重量%の重合体を原料とし、湿式紡糸の際、 4〜: 10倍に紡糸延伸した後、乾燥時に 30%以上収縮させ、さらに 1. 2〜2. 0倍の延伸比で乾熱延伸する方法が提案され ている(例えば、特許文献 1参照。)。また、アクリロニトリル 90〜95重量0 /0、スルホン 酸基含有ビニルモノマー 0〜0. 5重量0 /0および他のビュルモノマー 10〜4. 5重量
%の重合体を原料とし、 2〜6倍に紡糸延伸し乾燥した後、加圧水蒸気中で 30%以 上緩和させ、更に 1. 6〜2. 2倍乾熱延伸する方法が提案されている(例えば、特許 文献 2参照。)。
[0006] しかし、これら先行文献に記載の方法においては、アクリル系収縮性繊維を染色す ることに関してまでは、記載されていない。そして、本発明者らの知見では、これら先 行文献に記載の収縮性繊維は、 80°C以上において染色すると染色時に収縮してし まレ、、ガードヘアー部とダウンヘアー部とからなるパイル布帛を作成するために、本 来、収縮機能を発現すべきテンター工程において、もはや十分に収縮しないものとな つてしまう。よって、これら先行文献に記載の方法では、ガードヘアー部とダウンヘア 一部の段差が発現しないため、外観に優れたパイル布帛製品が得られないことが確 認されている。また、特許文献 1および特許文献 2に記載のアクリル系収縮性繊維に おいては、 80°C未満の染色では充分な染色性が得られず、したがって、染色性と染 色後の収縮機能とを両立できる加工条件が存在しないという問題を有するものであつ た。
[0007] さらに、繊度が 0. 01〜0. 5dtexの極細アクリル繊維において、 p—スチレンスルホ ン酸ナトリウムや 2—アクリルアミドー 2—メチルプロパンスルホン酸ナトリウムおよびメ タリルォキシベンゼンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基含有モノマーを 0. 4〜1 . 4モル%共重合することにより、低温での染色性が改良されることについても開示さ れている(特許文献 3、特許文献 4および特許文献 5参照)。し力 ながら、この方法 では、極細繊度のアクリル系合成繊維の染色が可能とはなるものの、繊度が ldtexを 超えるような場合には、充分な低温染色性と染色後の収縮機能とを両立するのは困 難であった。
特許文献 1:特開平 4 _ 119114号公報
特許文献 2 :特開 2003— 268623号公報
特許文献 3 :特開平 8— 325833号公報
特許文献 4 :特開平 8— 325834号公報
特許文献 5 :特開平 8— 325835号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0008] 本発明は、上記の従来技術の問題を解消し、繊度が ldtex以上の繊維であっても 、染色可能であり、かつ染色後においても高い収縮機能を有するアクリル系収縮性 繊維およびそれを用いたパイル布帛製品を得ることにある。
課題を解決するための手段
[0009] 前記課題を解決するために検討した結果、スルホン酸基含有モノマーを、従来とは 異なる特定の範囲で含有する共重体よりなる原料を用いて紡糸し、かつ特定の条件 で染色することで、繊度が ldtex以上の繊維であっても、低温で染色ができ、しかも 染色後においても高い収縮機能を有するアクリル系収縮性繊維が得られることを見 出した。
[0010] すなわち、本発明は、アクリロニトリル 40〜93重量0 /0、スルホン酸基含有モノマー 2 〜10重量%およびこれらと共重合可能なモノマー 5〜58重量%を含む共重合体か らなり、平均繊度が ldtex以上であることを特徴とするアクリル系収縮性繊維に関す る。
[0011] ここで、前記平均繊度が 1〜: 15dtexであることが好ましい。
[0012] また、前記共重合体が、前記スルホン酸基含有モノマーを 5重量%を超えて 10重 量%以下含んでなることが好ましレ、。
[0013] さらに、前記スルホン酸基含有モノマー力 S、ァリルスルホン酸、ァリルスルホン酸の 金属塩類若しくはァミン塩類、メタリルスルホン酸、メタリルスルホン酸の金属塩類若 しくはァミン塩類、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸の金属塩類若しくはァミン 塩類、イソプレンスルホン酸、イソプレンスルホン酸の金属塩類若しくはァミン塩類、 2 アクリルアミド 2—メチルプロパンスルホン酸、および 2—アクリルアミド 2—メチ ルプロパンスルホン酸の金属塩類若しくはァミン塩類からなる群から選ばれる少なくと も 1つであることが好ましい。
[0014] また、 80°C未満の温浴においてカチオン染料で染色したときの相対飽和値力 0.
2以上であることが好ましい。
[0015] さらに、 80°C未満の温浴においてカチオン染料で染色したときの相対飽和値力 0 . 4以上であることが好ましい。
[0016] また、 80°C未満の温浴においてカチオン染料で染色処理した後に、 130°Cで 5分 間乾熱処理したときの収縮率が 20%以上であることが好ましい。
[0017] また、本発明は、前記アクリル系収縮性繊維を、 50°C以上 80°C未満の温浴におい てカチオン染料で染色してなる染色されたアクリル系収縮性繊維に関する。
[0018] さらに、本発明は、ガードヘアー部とダウンヘアー部とからなり、前記ダウンヘアー 部に前記染色されたアクリル系収縮性繊維を用いたことを特徴とするパイル布帛製 品に関する。
発明の効果
[0019] 以上にしてなる本発明のアクリル系収縮性繊維は、低温で染色可能であり、かつ染 色後においても高い収縮機能を有する。したがって、衣料、ぬいぐるみ等の玩具、お よびインテリア用品等の広範囲にわたって、これまでにない新たな商品企画を可能と するものである。
発明を実施するための最良の形態
[0020] 本発明のアクリル系収縮性繊維は、前述のとおり、アクリロニトリル 40〜93重量%、 スルホン酸基含有モノマー 2〜: 10重量0 /0およびこれらと共重合可能なモノマー 5〜5 8重量%を含む共重合体からなり、平均繊度が ldtex以上であることを特徴とする。
[0021] 本発明のアクリル系収縮性繊維を構成する共重合体における前記アクリロニトリル の含有量は、 40〜93重量0 /0であり、 50〜90重量0 /0であること力 Sより好ましく、 60〜9 0重量%であることがさらに好ましい。前記アクリロニトリルの含有量力 ¾0重量%未満 では、得られる繊維の耐熱性が低くなる。一方で、前記アクリロニトリルの含有量が 93 重量%を超えると、耐熱性が高くなり過ぎ充分な収縮率が得られない。
[0022] 本発明のアクリル系収縮性繊維を構成する共重合体における前記スルホン酸基含 有モノマーとしては、ァリルスルホン酸、ァリルスルホン酸の金属塩類若しくはァミン 塩類、メタリルスルホン酸、メタリルスルホン酸の金属塩類若しくはァミン塩類、スチレ ンスルホン酸、スチレンスルホン酸の金属塩類若しくはァミン塩類、イソプレンスルホ ン酸、イソプレンスルホン酸の金属塩類若しくはァミン塩類、 2 _アクリルアミド _ 2—メ チルプロパンスルホン酸、および 2 -アタリノレアミド一 2 _メチルプロパンスルホン酸の 金属塩類若しくはァミン塩類等が好ましぐこれらを単独もしくは 2種以上混合して用
レ、ることができる。本発明のアクリル系収縮性繊維を構成する共重合体におけるスル ホン酸基含有モノマーの含有量は 2〜: 10重量%であり、 5重量%を超えて 10重量% 以下とすることがより好まし 6〜8重量%であることがさらに好ましい。前記スルホン 酸基含有モノマーの含有量が 2重量%未満では、充分な低温染色性が得られなレ、。 一方、前記スルホン酸基含有モノマーの含有量が 10重量%を超えると、重合体の親 水性が強くなり過ぎ、糸条を形成する凝固過程において繊維にボイドゃ膠着が生じ、 強度が低下する他、工程での糸切れが多くなり、操業性も悪化する。
[0023] 前記共重合体において、その他共重合可能なモノマーとは、アクリル酸ゃメタクリル 酸およびィタコン酸等に代表されるカルボキシル基含有ビュルモノマー、前記カルボ キシル基含有ビュルモノマーの金属塩類若しくはァミン塩類、前記カルボキシル基 含有ビニルモノマーの低級アルキルエステル、前記カルボキシル基含有ビュルモノ マーのグリシジルエステル、前記カルボキシル基含有ビエルモノマーの Nまたは N, N—アルキル置換したアミノアルキルエステル、および前記カルボキシル基含有ビニ ルモノマーの 4級化ァミノアルキルエステル、並びに、アクリルアミドゃメタクリルアミド 、および前記アクリルアミドゃメタクリルアミドの Nまたは N, N—アルキル置換したアミ ノアルキルエステル、或いは、ビュル基含有低級アルキルエーテル、酢酸ビュルに 代表されるビュル基含有低級カルボン酸エステル、塩ィ匕ビニルゃ塩ィ匕ビニリデン、臭 化ビュルや臭化ビニリデン等に代表されるハロゲン化ビュルまたはハロゲンィ匕ビユリ デン類、さらにはスチレンなどが好ましぐこれらのモノマーを単独もしくは 2種以上混 合して用いることができる。その他の共重合可能なモノマーは共重合体において充 分な収縮率を得るために 5重量%以上が好ましぐ繊維の耐熱性を維持する観点か ら 58重量%以下が好ましぐ 7〜42重量%がより好ましい。
[0024] 前記共重合体は、重合開始剤として既知の化合物、例えばバーオキシド系化合物 、ァゾ系化合物、または各種のレドックス系化合物を用レ、、乳化重合、懸濁重合、溶 液重合等のビニル重合方法により得ることができるが、例えば前記共重合体における スルホン酸基含有モノマーの含有量が 5重量%を超えて 10重量%以下と高い範囲 においては、懸濁重合では得られる共重合体粒子が細力べなり過ぎ回収が困難とな る傾向がある為、工業的には乳化重合ゃ或レヽは水との混合溶媒を使用した溶液重
合で得ることが好ましい。
[0025] 前記共重合体は、有機溶剤、例えばァセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチノレ ァセトアミド、ジメチルスルホキシドあるいは無機溶剤、例えば塩化亜鉛、硝酸、ロダ ン塩等に溶解させて紡糸原液とすることができる。この紡糸原液に、酸化チタンまた は着色用顔料のような無機または有機の顔料、防鎮、着色防止、耐候性等に効果の ある安定剤等を、紡糸に支障をきたさない範囲で添加することも可能である。
[0026] 本発明のアクリル系収縮性繊維は、前記のような紡糸原液をノズルより紡出し、糸 条を形成し得る常法の湿式あるいは乾式の紡糸法で製造することができ、例えば前 記共重合体におけるスルホン酸基含有モノマーの含有量が 5重量%を超えて 10重 量%以下と高い範囲の湿式紡糸においては、凝固浴で糸条を形成する際に、前記 重合体の親水性が高いために水が重合体粒子を取り囲む速度が速くなり過ぎ糸条 を形成するのが困難になるが、あらかじめ、凝固浴組成にアセトンゃメチルェチルケ トンに代表されるケトン類、メタノールやエタノールに代表されるアルコール類などの 前記共重合体に対する貧溶媒を適量加えたり、或いは凝固浴に塩化ナトリウム、硫 酸ナトリウム、塩化マグネシウム、塩ィ匕カルシウムなどの無機塩類を適量加えるなどし て凝固速度を調整する工夫を施すことで、良好な糸条を形成させることが可能となる 。凝固浴で糸条を形成させ、洗浄延伸浴を通した後、乾燥を行う。また必要に応じて 、更に延伸、熱処理を行ってもよレ、。さらに、得られた繊維を 70〜: 140°Cで 1. 3〜4. 0倍に延伸して収縮性繊維を得ることができる。
[0027] このようにして得られた本発明のアクリル系収縮性繊維は、低温で染色可能である 。充分に染色するためには、染色温度が 50°C以上であることが好ましぐかつ、染色 時の繊維の収縮に起因する染色後の乾熱処理による繊維の収縮率不足を起こさな いために、染色温度が 80°C未満であることが好ましい。さらに、上記染色温度の範囲 において、 60〜75°Cであることがより好ましい。
[0028] 本発明でいう相対飽和値とは、繊維の染色能力の指標であり、繊維を任意の温度 で 60分間、任意の過飽和な量の Malachite Greenを用いて、浴比 1: 200 (=繊維 重量:染液重量)で染色し、飽和染着量を求め、該飽和染着量より求められる。前記 飽和染着量および前記相対飽和値は下記の式(1)および(2)より求められる。
[0029] (飽和染着量) = ( (Ao -A) /Ao) X X) (1)
A :染色後の残染浴の吸光度(618nm)
Ao:染色前の染浴の吸光度(618nm)
X : Malachite Greenの過飽和濃度(%omf)
(相対飽和値) = (飽和染着量) X 400/463 (2)
[0030] 上記吸光度の測定は、紫外可視分光光度計 (株式会社、島津製作所製、 UV- 25 50)を用いて行った。
[0031] 本発明のアクリル系収縮性繊維は、相対飽和値が 0. 2以上で淡色の染色が可能と なる為、 80°C未満の染色における相対飽和値が 0. 2以上であることが好ましい。さら には、相対飽和値が 0. 4以上で淡色から中色、 0. 8以上で淡色から濃色まで染色 による色揃えが可能となるため、相対飽和値は 0. 4以上がより好ましぐ 0. 8以上が さらに好ましレ、。
[0032] なお、染色堅牢性、発色性および経済性の点からカチオン染料を用いて染色を行 うことが好ましい。カチオン染料としては従来公知のものが使用でき、とくに限定され るものではない。たとえば、チノく'スペシャルティ'ケミカルズ (株)製の Maxilonシリー ズゃ保土ケ (株)製の Cathilonシリーズ等があげられる。また、カチオン染料の使用 量はとくに限定されるものではなレ、が、 50°C以上 80°C未満の染色温度範囲におい ては、アクリル系収縮性繊維 100重量部に対して 0.:!〜 3. 0重量部が色揃え、経済 性の観点から好ましい。染色促染剤はとくに必要ないが、従来公知の染色促染剤を 公知技術例に沿って使用しても良レ、。染色機についても、従来のものを使用すること が出来る。
[0033] 本発明でいう収縮率とは、染色処理を施した後の収縮性繊維が、パイル布帛の加 ェ工程におけるテンター工程でどれだけ収縮するかという指標であり、下記式(3)に より求められる。ここでいうテンター工程とは、パイルの毛抜けを防止するため、パイ ルの裏面に接着剤を付着させ、その付着剤を所定の温度で乾燥させる工程である。
[0034] 収縮率(%) = (
100 (3)
[0035] Ldo :染色後(乾熱処理前)の繊維の長さ
Ld :乾熱 130°Cで 5分間処理後の繊維の長さ
[0036] 本発明のアクリル系収縮性繊維を、パイル布帛の短パイル部を構成する繊維として 用いる場合には、後に詳述するように、パイル布帛の加工工程におけるテンターェ 程で収縮させる。テンター工程は、通常、乾熱 130°C前後で行われるため、前記収 縮率は乾熱 130°Cで測定するものとする。また、乾熱処理前後のおのおの繊維の長 さは 1 Omg/dtexの荷重下で測定した。
[0037] 本発明のアクリル系収縮性繊維を染色した後に、 130°C、 5分間の乾熱処理を行つ たときの収縮率は 20%以上であることが好ましぐ 25%以上であることがより好ましい 。前記収縮率が 20%未満になると、ノ ィル布帛にカ卩ェした時、非収縮性繊維との段 差が小さくなるため、段差が強調されず、天然調または、意匠性のある外観特性をも つパイル布帛が得られない。
[0038] 本発明のアクリル系収縮性繊維は、低温で染色可能であり、かつ染色後において も高い収縮機能を有する。したがって、本発明のアクリル系収縮性繊維をダウンヘア 一部に用いることにより、色相のバリエーションに富み、しかもガードヘアー部とダウン ヘアー部の段差を生じさせたパイル布帛を提供することが可能となり、このようなパイ ル布帛が求められる衣料、ぬいぐるみ等の玩具、およびインテリア用品等の広範囲 にわたつて、新たな商品企画を可能とするものである。
実施例
[0039] 以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は何らこれらに限定 されるものではなレ、。なお、実施例中の「部」および「%」は特記しない限り重量部お よび重量%を意味する。
[0040] (製造例 1)
内容積 5Lの耐圧重合反応装置に、 日産化学社製ジメチルホルムアミド(DMF) 29 20g、旭化成工業社製アクリロニトリル (AN) 800g、東亜合成社製アクリル酸メチル( MA) 120g、東亜合成社製 2—アクリルアミド— 2—メチルプロパンスルホン酸ナトリウ ム(SAM)の 50%水溶液 160gを投入し、窒素置換した。重合機内温度を 55°Cに調 整し、開始剤として 2, 2—ァゾビス(2, 4—ジメチルバレロニトリル)(AIVN) 5gを投 入し重合を開始した。途中、 AIVNlOgを追加しながら 2時間重合し、その後 70°Cに 昇温して 10時間重合させ、共重合体 (AN/MA/SAM = 80/12/8 (重量比))
の 25%溶液(DMF/水混合溶媒)を得た。
[0041] 共重合体濃度 25%の前記溶液を紡糸原液とし、紡糸原液を 0. 08mm φ、 2000 孔の口金を通して 20°C、 50%DMF/30%アセトンの混合溶媒系水溶液中に吐出 し、溶剤濃度の順次低下する 5つの洗浄延伸浴を通して 2. 1倍に延伸した後、さらに 60°Cで水洗した。その後、得られた繊維に油剤を付与した後 130°Cの雰囲気下で乾 燥させ、熱ローラーを用いて 1 15°Cの乾熱雰囲気下で 1. 7倍の延伸処理を行い、 4 . 4dtexの延伸糸(収縮性繊維)を作成した。
[0042] (製造例 2〜: 10)
共重合体組成を表 1に示す割合とした以外は、製造例 1と同様の方法で、表 1に示 す繊度のアクリル系収縮性繊維 (製造例 2〜9)を作成した。また、共重合体組成を表 1に示す割合とした以外は製造例 1と同様の重合方法により重合し、 0. 12mm φ、 8 00孔の口金を通した以外は製造例 1と同様の方法により紡糸して、以下製造例 1と 同様の方法で製造例 10のアクリル系収縮性を作成した。
[0043] [表 1] 表 1
(実施例:!〜 11および比較例 1〜4)
2. 5%omfの Malachite Green染浴 200ccに対して、酢酸と酢酸ナトリウムをそれ ぞれ 0. 05g/L、 0. 02g/Lとなるように加え、 pHを 3〜4に調整した。製造例:!〜 1 0で得られたいずれかの収縮性繊維 lgを、この染浴によりそれぞれ表 2に記載の条
件において、 60分間染色した。そのときの操業性、相対飽和値、染色後の 130°C5 分の乾熱処理における収縮率を測定した結果を表 2に示した。
[表 2] 表 2
実施例:!〜 11ではレ、ずれの繊維も充分な染色性能と染色後の収縮率を示した。一 方、比較例 1〜4では染色性、染色後残留収縮率および操業性の全てを満足するこ とはできなかった。
また、製造例 1で得た繊維を 32mmにカットし、繊維詰め密度 0. 30gZcm3でォー バーマイヤー染色機に詰め染色処理を行なった。この時の染色処方は、 Maxilon Yellow 2RL 200% 0. 68%omf、 Maxilon Red GRL 200% 0. 15%om f、 Maxilon Blue GRL 300% 0. 14%omf (以上、チバ 'スペシャルティ'ケミカ ルズ社製)目標色はライトブラウンであった。また、この時の昇温速度は室温から 3°C /分とし、 50°Cに到達した時点で染料を加え、引続き昇温した後 70°Cに達したとこ ろで 60分間保温を行なった。さらに、染色完了後、染色液を冷却して染色綿を取出 し遠心脱水を行なった後、乾燥機中 60°Cの温度で乾燥させた。このようにして得られ た染色後のアクリル系収縮性繊維 700gと市販のアクリル系繊維「カネカロン (登録商
標)」 RFM (BR803) 22dtex、 51mm (鐘淵化学工業株式会社製) 300gとを混綿、 縫製、プレボリシング、プレシャーリングの後、予備仕上げでのピンテンター乾燥機の 温度を 130°Cで、最終目付けが 720g/m2で平均パイル長が 22mmのミンク調段差 パイル布帛を作成した。これによるダウンヘアー部の収縮率は 22%で、このようにし て作成されたミンク調のパイル布帛は、ダウンヘアーは目標色相(ライトブラウン)を充 分達成し、且つ、明確な段差を有するものであった。このときの各評価方法は、以下 のとおりである。
[0047] (A)染色達成度官能評価
それぞれの濃度における染着、発色性評価を視覚的及び感覚的な観点から実施 した。
(B)ピンテンターによる乾熱処理前後のダウンヘアー部分 (成分)の収縮率の測定 段差パイル布帛におレ、てダウンヘアー部を構成するアクリル系収縮性繊維の収縮 率は、ピンテンターによる乾熱処理前後のパイル布帛中のパイル部を構成している 繊維を毛並みが揃うように垂直に立たせ、ノギスを用いることで測定した。つまり、パイ ル部のダウンヘアー部(成分)を構成してレ、る繊維の根元からダウンヘアーの先端ま での長さ(パイル布帛裏面からの長さではなレ、)の測定を 10ケ所にっレ、て行なレ、、そ の平均値を求め、次式より算出されるものである。
[0048] 収縮率(%) = 100 X (1 - Sa/Sb)
[式中、 Sbはピンテンターによる乾熱処理前のダウンヘアー成分のパイル長(mm)、 Saはピンテンターによる乾熱処理後のダウンヘアー部分 (成分)のパイル長(mm) ] なお、本発明でいうパイル部とは、パイル布帛(立毛布帛)の基布(地糸の部分)の部 分を除く立毛部分を指すものである。
[0049] (C)段差外観官能評価
前記のようにして作成されたパイル布帛に対し、段差パイル布帛としての段差の程 度を視覚的及び感覚的な観点から官能評価を実施した。
産業上の利用可能性
[0050] 本発明のアクリル系収縮性繊維は、アクリロニトリル 40〜93重量0 /0、スルホン酸基 含有モノマー 2〜: 10重量%およびこれらと共重合可能なモノマー 5〜58重量%を含
む共重合体からなり、平均繊度が ldtex以上であることを特徴とすることにより、低温 で染色可能であり、かつ染色後においても高い収縮機能を有するものとなる。したが つて、衣料、ぬいぐるみ等の玩具、およびインテリア用品等の広範囲にわたって、こ れまでにない新たな商品企画を可能とするものである。