JP2008038286A - アクリル系収縮繊維 - Google Patents
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Abstract
【課題】低温で染色可能であり、染色後においても高収縮率、且つ高熱収縮応力を有するアクリル系収縮繊維を提供すること。
【解決手段】アクリロニトリル80〜94質量%、スルホン酸基含有モノマー0〜2質量%およびこれらと共重合可能なモノマー4〜20質量%からなる重合体(A)50〜99質量部、ならびにアクリロニトリル50〜70質量%、スルホン酸基含有モノマー3〜5質量%およびこれらと共重合可能なモノマー25〜47質量%からなる重合体(B)1〜50質量部からなり、該重含体(A)と該重合体(B)の合計量が100重量部である染色可能なアクリル系収縮繊維。
【選択図】なし
【解決手段】アクリロニトリル80〜94質量%、スルホン酸基含有モノマー0〜2質量%およびこれらと共重合可能なモノマー4〜20質量%からなる重合体(A)50〜99質量部、ならびにアクリロニトリル50〜70質量%、スルホン酸基含有モノマー3〜5質量%およびこれらと共重合可能なモノマー25〜47質量%からなる重合体(B)1〜50質量部からなり、該重含体(A)と該重合体(B)の合計量が100重量部である染色可能なアクリル系収縮繊維。
【選択図】なし
Description
本発明は低温で染色可能なアクリル系収縮繊維に関する。
従来、アクリル系繊維は、獣毛様風合いを有し、その特徴から玩具、衣料等のパイル製品に用いられている。なかでも、立毛感、天然調の外観を持たせるために、外観上、産毛成分を収縮繊維、刺毛成分を非収縮繊維で構成する例が多い。パイル製品には、外観特性が要求されるため、収縮繊維にも様々な色相が求められるが、通常、収縮繊維は、原着、工程染色等、繊維製造工程で着色して製造した色相のものしか得られなかった。
これまで、アクリロニトリル80質量%以上とスルホン酸基含有モノマー0.5〜5質量%およびビニル系モノマー5〜15質量%の重合体からなり、湿式紡糸の際、紡糸延伸4〜10倍の後乾燥時に30%以上収縮させ、さらに1.2〜2.0倍乾熱延伸する方法(特許文献1)や、また、アクリロニトリル90〜95質量%、スルホン酸含有ビニルモノマー0〜0.5質量%および他のビニルモノマー10〜4.5質量%の重合体からなり、2〜6倍紡糸延伸し乾燥した後、加圧水蒸気中で30%以上緩和させ、さらに1.6〜2.2倍乾熟延伸する方法(特許文献2)等により高収縮のアクリル系合成繊維が得られることが開示されている。しかしながら、これらの収縮繊維は80℃以上の染色条件では染色時に収縮してしまうため、仕上げ前の加工工程中間品であるパイル中間品を、仕上げ工程のテンターで熱処理を行っても、収縮繊維の収縮は不十分となり、収縮成分と非収縮成分との段差が発現しない。また、80℃未満の染色では充分な染色性が得られず、染色性と染色後の収縮の両方を満足する方法は存在しなかった。
また、繊度が0.01〜0.5dtexの極細アクリル繊維において、p−スチレンスルホン酸(Na)や2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(Na)およびメタリルオキシベンゼンスルホン酸(Na)等のスルホン酸基含有モノマーを0.4〜1.4モル%共重合することにより低温での染色性が改良されることが開示されている(特許文献3)。しかしながら、これらの方法では繊度が太い場合には充分な低温染色性を得るのは困難であった。
この欠点を解消させるのに、2種類のポリマー系からなる低温染色可能な高収縮繊維が開示されている(特許文献4)。しかしながら、一般的に、パイル製品では、数種の原綿を混用し、その中の産毛成分を収縮させる必要があり、収縮繊維に、非収縮繊維との絡み合いや繊維間摩擦等による抵抗力以上の熱収縮応力の発現がないと、パイル中間品を、仕上げ工程のテンターで熱処理しても、収縮が不十分となり、収縮成分と非収縮成分との段差を発現させることができないが、先行文献4で開示された方法では、十分な熱収縮応力の発現ができないため、仕上がったパイル製品の風合いが劣り、高品位のパイル製品を製造する事が難しかった。
特開平4−119114号公報
特開2003−268623号公報
特開平8−325834号公報
WO2005/064051公報
本発明は、上記の従来技術の間題を解消し、低温で染色可能であり、染色後においても高収縮率、且つ高い熱収縮応力を有するアクリル系収縮繊維を提供することにあり、前記課題を解決するために検討した結果、特定のモノマー組成からなる2種のアクリル系重合体を混合してなる原液を紡糸することで低温染色可能、且つ高い染色後収縮率と熱収縮応力を有するアクリル系収縮繊維を見出した。
すなわち、本発明は、アクリロニトリル80〜94質量%、スルホン酸基含有モノマー0〜2質量%およびこれらと共重合可能なモノマー4〜20質量%からなる重合体(A)が50〜99質量部と、アクリロニトリル50〜70質量%、スルホン酸基含有モノマー3〜5質量%およびこれらと共重合可能なモノマー25〜47質量%からなる重合体(B)が1〜50質量部とを含み、該重合体(A)と該重合体(B)の合計量が100質量部よりなるアクリル系繊維であって、80℃未満での染色後、130℃、5分間の乾熱処理による収縮率が20%以上、且つ10℃/分の昇温雰囲気下で測定した熱収縮応力の最大値が90〜130℃の間にあり、熱収縮応力の最大値が90mg/dtex以上である染色可能なアクリル系収縮繊維を提供することにある。
本発明のアクリル系収縮繊緯は、低温で染色可能であり、染色後においても高収縮率及び高収縮力を有する。したがって、衣料、玩具(ぬいぐるみ等)およびインテリア用等の広範囲に色相のバリエーションに富んだ新たな商品企画を可能とする。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用する重合体(A)は、アクリロニトリルの含有量は80〜94質量%である。アクリロニトリルの含有量が80質量%未満では、得られる繊維の耐熱性が低くなり、94質量%を超えると、耐熱性が高くなり過ぎ、充分な染色性、収縮率が得られない。さらに、形態安定性と染色性、収縮率のバランスの点で、85〜90質量%がより好ましい。
本発明で使用する重合体(A)は、アクリロニトリルの含有量は80〜94質量%である。アクリロニトリルの含有量が80質量%未満では、得られる繊維の耐熱性が低くなり、94質量%を超えると、耐熱性が高くなり過ぎ、充分な染色性、収縮率が得られない。さらに、形態安定性と染色性、収縮率のバランスの点で、85〜90質量%がより好ましい。
重合体(A)におけるスルホン酸基含有モノマーとしては、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸またはこれらの金属塩類、およびアミン塩類等が好ましく、単独もしくは2種以上混合して用いることができる。重合体(A)におけるスルホン酸含有モノマーの含有量は、得られた繊維にボイドが生じやすいといった観点より、0〜2質量%が好ましく、0.5〜1.5質量%がより好ましい。
重合体(A)におけるその他共重合可能なモノマーとしては、アクリル酸やメタクリル酸およびそれらの低級アルキルエステル、N−またはN、N−アルキル置換したアミノアルキルエステルやグリシジルエステル、アクリルアミドやメタクリルアミドおよびそれらのN−またはN、N−アルキル置換体、アクリル酸、メタクリル酸やイタコン酸等に代表されるカルボキシル基含有ビニル単量体およびそれらのナトリウム、カリウムまたはアンモニウム塩等のアニオン性ビニル単量体、アクリル酸やメタクリル酸の4級化アミノアルキルエステルをはじめとするカチオン性ビニル単量体、あるいはビニル基含有低級アルキルエーテル、酢酸ビニルに代表されるビニル基含有低級カルボン酸エステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン等に代表されるハロゲン化ビニルおよびハロゲン化ビニリデン類、さらにはスチレン等が好ましく、これらのモノマーを単独もしくは2種以上混合して用いることができる。
重合体(A)におけるその他の共重合可能なモノマーの含有量は4〜20質量%である事が必要である。20質量%を超えると得られる繊維の耐熱性が低くなり、熱によるヘタリを生じるため好ましくなく、4質量%未満では、十分な収緒率を得ることができない。さらに、耐熱性、収縮率のバランスの点で、8〜12質量%である事がより好ましい。
重合体(B)におけるアクリロニトリルの含有量は50〜70質量%であることが必要である。50質量%未満では、フィブリル発生等、得られた繊維の物性が劣り、70質量%を超えると、充分な染色性が得られない。繊維物性と染色性のバランスの点で、55〜60質量%である事がより好ましい。
重合体(B)におけるスルホン酸基含有モノマーとしては、重合体(A)におけるスルホン酸基含有モノマ−として前記した化合物が用いられる。重合体(B)におけるスルホン酸含有モノマ−の含有量は3〜5質量%である事が必要である。5質量%を超えると繊維にボイドや膠着が生じ、強度の低下や染色時に重合体(B)の溶出が発生するため好ましくなく、3質量%未満では、充分な染色性が得られない。さらに紡糸安定性という点において、3〜4質量%であることがより好ましい。
重合体(B)におけるその他共重合可能なモノマーとしては、重合体(A)におけるその他共重合可能なモノマーとして前記した化合物が用いられる。重合体(B)におけるその他の共重合可能なモノマーの含有量は25〜47質量%である事が必要である。25質量%未満では耐熱性が高くなり過ぎ充分な染色性が得られず、47質量%を超えると、得られた繊維の収縮率、収縮応力にバラツキが生じ易いため好ましくない。染色性と収縮性のバランスの点で、35〜45質量%であることがより好ましい。
本発明のアクリル系収縮繊維は、重合体(A)50〜99質量部および重合体(B)1〜50質量部からなる事が必要である。ただし、重合体(A)および重合体(B)は合計100質量部となるように配合する。重合体(B)が1質量部未満では、充分な染色性が得られず、50質量部を超えると、繊緯にボイドや膠着が生じ、強度が低下するので好ましくない。繊維物性の点で、重合体(A)55〜65質量部および重合体(B)35〜45質量部であることがより好ましい。
本発明のアクリル系収縮繊維においては、重合体(A)および重合体(B)におけるスルホン酸基含有モノマーの合計含有量が、重合体(A)および重合体(B)のモノマー合計量の1.5〜5質量%であることが必要である。1.5質量%未満であると、充分な染色性が得られず、5質量%をこえると、繊維にボイドや膠着が生じ、強度が低下するので好ましくない。繊維物性と染色性より、2〜4質量%であることがより好ましい。
本発明における重合体(A)および重合体(B)は、重合開始剤として既知の化合物、例えばパーオキシド系化合物、アゾ系化合物、または各種のレドックス系化合物を用い、乳化重合、懸濁重合、溶液重合等一般的なビニル重合方法により得ることができる。
また、重合体(A)および重合体(B)は、有機溶剤、例えばアセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドあるいは無機溶剤、例えば塩化亜鉛、硝酸、ロダン塩等に溶解させて紡糸原液とすることができる。この紡糸原液に、酸化チタンまたは着色用顔料のような無機および/または有機の顔料、着色紡糸、耐候性等に効果のある安定剤等を紡糸に支障をきたさない限り使用することも可能である。
このようにして得られた本発明のアクリル系収縮繊維は低温で染色可能である。染色温度は50〜90℃であることが必要である。染色温度が50℃未満であると、充分に染色することができず、90℃を超えると、染色時に収縮繊維の収縮が起こり、染色後、仕上げ工程のテンターによる乾熱処理では、充分な収縮率が得られない。さらに、染色性及び染色後の収縮応力発現のバランス点で、染色温度は60〜80℃がより好ましい。
本発明における相対飽和値とは、繊維の染色能力の指標であり、繊維を任意の温度で60分間、任意の過飽和濃度のMalachite Greenを用いて浴比1:200(=繊維重量:染液重量)で染色し、飽和染着量を求め、飽和染着量より相対飽和値が求められる。飽和染着量、相対飽和値は下記の式(1)および(2)より求めた。
(飽和染着量)=((Ao-A)/Ao)×X) (1)
A:染色後の残染浴の吸光度(波長:618nm)
Ao:染色前の染浴の吸光度(波長:618nm)
X:Malachite Greenの過飽和濃度(%owf)
(相対飽和値)=(飽和染着量)×400/463 (2)
本発明のアクリル系収縮繊維は、相対飽和値が0.2以上で淡色の染色が可能となるため、75℃の染色における相対飽和値が0.2以上であることが好ましい。さらには、相対飽和値が0.8以上で淡色から濃色、さらには黒色まで染色可能となるため、相対飽和が0.8以上であることがより好ましい。
カチオン染料としては従来公知のものが使用でき、とくに限定されず、また、カチオン染料の使用量はとくに限定されるものではないが、前記染色温度範囲においては、アクリル系収縮繊維100質量部に対して0.1〜3.0質量部が現実的である。染色促染剤はとくに必要ないが、従来公知の染色促染剤を公知技術例に沿って使用しても良い。染色機についても、従来のものを使用することができる。
(飽和染着量)=((Ao-A)/Ao)×X) (1)
A:染色後の残染浴の吸光度(波長:618nm)
Ao:染色前の染浴の吸光度(波長:618nm)
X:Malachite Greenの過飽和濃度(%owf)
(相対飽和値)=(飽和染着量)×400/463 (2)
本発明のアクリル系収縮繊維は、相対飽和値が0.2以上で淡色の染色が可能となるため、75℃の染色における相対飽和値が0.2以上であることが好ましい。さらには、相対飽和値が0.8以上で淡色から濃色、さらには黒色まで染色可能となるため、相対飽和が0.8以上であることがより好ましい。
カチオン染料としては従来公知のものが使用でき、とくに限定されず、また、カチオン染料の使用量はとくに限定されるものではないが、前記染色温度範囲においては、アクリル系収縮繊維100質量部に対して0.1〜3.0質量部が現実的である。染色促染剤はとくに必要ないが、従来公知の染色促染剤を公知技術例に沿って使用しても良い。染色機についても、従来のものを使用することができる。
本発明のアクリル系収縮繊維は、染色工程を経たのち、非収縮繊維と混紡され、スライバーニット工程、カット工程と捌き・ポリッシャー工程を経てパイル中間品とし、パイル裏面に接着剤が塗布された後、仕上げ工程のテンターにおいて、通常130℃、5分間の乾熱で処理が施され、接着剤の乾燥と収縮差による段差を発現させて、パイル製品が製造される。従って、本発明において、80℃未満で染色された後の繊維の収縮率を、下記式(3)により求めた。
染色後収縮率(%)=((Ldo-Ld)/Ldo)×100 (3)
Ld :乾熱130℃、5分間処理後の繊維の長さ
Ldo:80℃未満の染色処理後(乾熟処理前)の繊維の長さ
本発明のアクリル系収縮繊維の130℃、5分間の乾熱処理による収縮率が、20%以上であることが必要であり、25%以上であることがより好ましい。
収縮率が20%未満になると、パイル中間品を、仕上げ工程のテンターにおいて前述の条件で熱処理した時、非収縮繊維との段差が小さくなるため、段差が強調されず、天然調または、意匠性のある外観特性をもつパイル製品が得られない。
染色後収縮率(%)=((Ldo-Ld)/Ldo)×100 (3)
Ld :乾熱130℃、5分間処理後の繊維の長さ
Ldo:80℃未満の染色処理後(乾熟処理前)の繊維の長さ
本発明のアクリル系収縮繊維の130℃、5分間の乾熱処理による収縮率が、20%以上であることが必要であり、25%以上であることがより好ましい。
収縮率が20%未満になると、パイル中間品を、仕上げ工程のテンターにおいて前述の条件で熱処理した時、非収縮繊維との段差が小さくなるため、段差が強調されず、天然調または、意匠性のある外観特性をもつパイル製品が得られない。
また、本発明のアクリル系収縮繊維は、熱機械分析装置(セイコーインスツルメンツ製 TMA/SS120)を使用し、10℃/分の昇温雰囲気下で測定した熱収縮応力の最大値が90〜130℃の間にあり、かつ、その熱収縮応力の最大値が90mg/dtex以上であることが必要である。パイル中間品は、仕上げ工程のテンターにおいて、通常、乾熱130℃の温度で処理されるが、アクリル系収縮繊維の熱収縮応力の最大値を発現する温度が130℃を越えると、仕上げ工程のテンターでの通常の熱処理温度及び時間条件では、十分な収縮応力が発現できないので、好ましくない。熱収縮応力の最大値を発現する温度が90℃未満であると、80℃未満の染色により、アクリル系収縮繊維が収縮してしまい、テンターでは、収縮できないので好ましくない。また、最大熱収縮応力が、90mg/dtex未満であると、非収縮繊維よりなる刺毛成分とアクリル系収縮繊維よりなる産毛成分との絡み合いや繊維間摩擦抵抗等に打ち勝つだけの収縮応力が得られず、アクリル系収縮繊維の収縮発現が不十分となり、非収縮繊維との段差が小さくなるため好ましくない。
本発明のアクリル系収縮繊維は、常法の湿式紡糸法でノズルより紡出し、延伸、乾燥、熱処理を行い、引き続いて行う最終の延伸工程で収縮性が付与される。繊維を染色後、130℃、5分間の乾熱処理による収縮率が20%以上、10℃/分の昇温雰囲気下で測定した熱収縮応力の最大値が90〜120℃の間にあり、熱収縮応力の最大値が90mg/dtexである繊維を得るためには、紡糸工程での全延伸倍率を2.5〜4.0倍の範囲にすることが必要であり、繊維の乾燥温度は125〜145℃の範囲であることが必要である。全延伸倍率が2.5倍未満では、熱収縮応力の最大値が90mg/dtex未満となり好ましくなく、一方、4.0倍を超えると繊維に収縮性を付与するための最終の延伸工程での延伸性が低下し、結果として十分な収縮率、収縮力を得ることが出来ないため好ましくない。また、乾燥温度が125℃未満であれば、乾燥に時間がかかり生産性の点で好ましくなく、更に乾燥緻密化が不十分でいわゆるボイドの残った状態となり最終延伸工程での延伸性が低下する。また145℃を越えると、繊維に収縮性を付与するための最終の延伸工程での延伸性が低下し、結果として十分な収縮率、収縮力を得ることが出来ないため好ましくない。また、乾燥後の熱処理の条件は、加圧水蒸気等の湿熱雰囲気下、110〜140℃で処理することが必要である。110℃未満の温度では、最終の延伸工程での延伸工程での延伸性が低下し、結果として十分な収縮率、収縮力を得ることが出来ず、一方、140℃を超えると繊維間での融着が起こりやすくなる。最終の延伸工程では、熱処理後の繊維を、乾熱110〜140℃の雰囲気のもと、1.5〜2.5倍の乾熱延伸を行い本発明の収縮繊維を得ることができる。乾熱条件が100℃未満であれば、延伸の安定性が低下し好ましくなく、一方、乾熱条件が140℃を超えると、熱緩和により得られた収縮繊維は、十分な収縮率、収縮力を得ることが出来ず、また熱収縮応力の最大値を示す温度が、130℃を越えるので好ましくない。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は何等これらに限定されるものではない。なお、実施例中の「部」および「%」は特記しない限りそれぞれ質量部および質量%を意味する。
測定条件
*相対飽和値の測定:
2.5%omfのMalachite Green染浴200ccに対して、酢酸と酢酸ナトリウムをそれぞれ0.05g/L、0.02g/Lとなるように加え、pHを3〜4に調整した。実施例、比較例で得られた収縮繊維1gを、この染浴によりそれぞれ75℃の温度で60分間染色し、その時の相対飽和値を測定した。
*収縮率:
試験体の収縮性繊維を、75℃で染色後、130℃の恒温槽中で5分間乾熱処理して、乾熱処理前後の繊維長の測定から収縮率を求めた。
*熱収縮応力:
熱機械分析装置(セイコーインスツルメンツ製 TMA/SS120)を使用し、室温から10℃/分の昇温速度で雰囲気温度を上昇させ、熱収縮応力を連続測定することにより、熱収縮応力の最大値を求めた。
*相対飽和値の測定:
2.5%omfのMalachite Green染浴200ccに対して、酢酸と酢酸ナトリウムをそれぞれ0.05g/L、0.02g/Lとなるように加え、pHを3〜4に調整した。実施例、比較例で得られた収縮繊維1gを、この染浴によりそれぞれ75℃の温度で60分間染色し、その時の相対飽和値を測定した。
*収縮率:
試験体の収縮性繊維を、75℃で染色後、130℃の恒温槽中で5分間乾熱処理して、乾熱処理前後の繊維長の測定から収縮率を求めた。
*熱収縮応力:
熱機械分析装置(セイコーインスツルメンツ製 TMA/SS120)を使用し、室温から10℃/分の昇温速度で雰囲気温度を上昇させ、熱収縮応力を連続測定することにより、熱収縮応力の最大値を求めた。
<実施例1〜4及び比較例1、2>
水系懸濁重合法により、表1に示す組成のアクリロニトリル系重合体(A)と(B)を得た。各ポリマーをジメチルアセトアミドに溶解し、ポリマー濃度23%の重合体溶液を調製し、ポリマー比が表1に示す比率となるように各重合体溶液を混合し、紡糸用原液とした。紡糸原液は孔径60ミクロン、孔数10000のノズルを用いてジメチルアセトアミド40%/水60%、40℃の凝固浴に紡出し、溶剤濃度の順次低下する3段の洗浄延伸浴を通して3倍の紡糸延伸を行い、油剤付与、135℃で乾燥緻密化処理を行った。その後、表1に示す条件にて、加圧水蒸気中での緩和処理及び熱ローラーを用いての乾熱延伸を行った後、機械クリンプを付与し単繊維繊度5.6dtexの繊維を得た。
<比較例3>
内容積15Lの重合反応装置にジメチルホルムアミド(DMF)233部、アクリロニトリル(AN)90部、アクリル酸メチル(MA)9.5部、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム(SAM)0.5部を投入し、窒素置換した。重合反応装置内温度を65℃に調整し、開始剤として2,2−アゾビス(2,4ジメチルバレロニトリル)(AIVN)0.5部を投入し重合を開始した。途中、AIVN1.0部を追加しながら2時間重合し、その後70℃に昇温して10時間重合させ、重合体(A)(AN/MA/SAM=90/9.5/0.5(質量比))の30%溶液を得た。
次に内容積10Lの重合反応装置にDMF233部、AN40部、MA58部、SAM2部を投入し、窒素置換した。重合反応装置内温度を65℃に調整し、開始剤としてAIVN0.5部を投入し重合を開始した。途中、AIVN1.0部を追加しながら2時間重合し、その後70℃に昇温して2時間重合させ、重合体(A)(AN/MA/SAM=40/58/2(質量比))の30%溶液を得た。
重合体の質量比が重合体(A):重合体(B)=70/30の比率になるように混合した溶液を紡糸原液とし、紡糸原液を0.075mmφ、10000ホールの紡糸口金を通して、20℃、50%のDMF水溶液中に吐出し、溶剤濃度の順次低下する3段の洗浄延伸浴を通して2.2倍に延伸した後、70℃で水洗した。得られた繊維に油剤を付与した後、120℃の雰囲気で乾燥させ、熱ローラーを用いて120℃の乾熱雰囲気下で1.8倍の延伸処理を行い、5.6dtexの収縮繊維を得た。
得られた繊維の相対飽和値は1.2で、75℃で染色後の収縮率は20%、熱収縮応力最大値温度は88℃、熱収縮応力最大値は80mg/dtexであった。
<比較例4〜11>
水系懸濁重合法により、実施例1と同様組成のアクリロニトリル系重合体(A)と(B)を得た。各ポリマーをジメチルアセトアミドに溶解し、ポリマー濃度23%の重合体溶液を調製し、ポリマー比が表1に示す比率となるように各重合体溶液を混合し、紡糸用原液とした。紡糸原液は孔径60ミクロン、孔数10000のノズルを用いてジメチルアセトアミド40%/水60%、40℃の凝固浴に紡出し、溶剤濃度の順次低下する3段の洗浄延伸浴を通して表4に示す延伸倍率で紡糸延伸を行い、油剤付与、引き続き、表4に示した温度で乾燥緻密化処理を行った。その後、表4に示す条件にて、加圧水蒸気中での緩和処理及び熱ローラーを用いての乾熱延伸を行った後、機械クリンプを付与し単繊維繊度5.6dtexの繊維を得た。表5に得られた繊維の相対飽和値、染色後収縮率、熱収縮応力最大値温度、熱収縮応力最大値を示した。
水系懸濁重合法により、表1に示す組成のアクリロニトリル系重合体(A)と(B)を得た。各ポリマーをジメチルアセトアミドに溶解し、ポリマー濃度23%の重合体溶液を調製し、ポリマー比が表1に示す比率となるように各重合体溶液を混合し、紡糸用原液とした。紡糸原液は孔径60ミクロン、孔数10000のノズルを用いてジメチルアセトアミド40%/水60%、40℃の凝固浴に紡出し、溶剤濃度の順次低下する3段の洗浄延伸浴を通して3倍の紡糸延伸を行い、油剤付与、135℃で乾燥緻密化処理を行った。その後、表1に示す条件にて、加圧水蒸気中での緩和処理及び熱ローラーを用いての乾熱延伸を行った後、機械クリンプを付与し単繊維繊度5.6dtexの繊維を得た。
<比較例3>
内容積15Lの重合反応装置にジメチルホルムアミド(DMF)233部、アクリロニトリル(AN)90部、アクリル酸メチル(MA)9.5部、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム(SAM)0.5部を投入し、窒素置換した。重合反応装置内温度を65℃に調整し、開始剤として2,2−アゾビス(2,4ジメチルバレロニトリル)(AIVN)0.5部を投入し重合を開始した。途中、AIVN1.0部を追加しながら2時間重合し、その後70℃に昇温して10時間重合させ、重合体(A)(AN/MA/SAM=90/9.5/0.5(質量比))の30%溶液を得た。
次に内容積10Lの重合反応装置にDMF233部、AN40部、MA58部、SAM2部を投入し、窒素置換した。重合反応装置内温度を65℃に調整し、開始剤としてAIVN0.5部を投入し重合を開始した。途中、AIVN1.0部を追加しながら2時間重合し、その後70℃に昇温して2時間重合させ、重合体(A)(AN/MA/SAM=40/58/2(質量比))の30%溶液を得た。
重合体の質量比が重合体(A):重合体(B)=70/30の比率になるように混合した溶液を紡糸原液とし、紡糸原液を0.075mmφ、10000ホールの紡糸口金を通して、20℃、50%のDMF水溶液中に吐出し、溶剤濃度の順次低下する3段の洗浄延伸浴を通して2.2倍に延伸した後、70℃で水洗した。得られた繊維に油剤を付与した後、120℃の雰囲気で乾燥させ、熱ローラーを用いて120℃の乾熱雰囲気下で1.8倍の延伸処理を行い、5.6dtexの収縮繊維を得た。
得られた繊維の相対飽和値は1.2で、75℃で染色後の収縮率は20%、熱収縮応力最大値温度は88℃、熱収縮応力最大値は80mg/dtexであった。
<比較例4〜11>
水系懸濁重合法により、実施例1と同様組成のアクリロニトリル系重合体(A)と(B)を得た。各ポリマーをジメチルアセトアミドに溶解し、ポリマー濃度23%の重合体溶液を調製し、ポリマー比が表1に示す比率となるように各重合体溶液を混合し、紡糸用原液とした。紡糸原液は孔径60ミクロン、孔数10000のノズルを用いてジメチルアセトアミド40%/水60%、40℃の凝固浴に紡出し、溶剤濃度の順次低下する3段の洗浄延伸浴を通して表4に示す延伸倍率で紡糸延伸を行い、油剤付与、引き続き、表4に示した温度で乾燥緻密化処理を行った。その後、表4に示す条件にて、加圧水蒸気中での緩和処理及び熱ローラーを用いての乾熱延伸を行った後、機械クリンプを付与し単繊維繊度5.6dtexの繊維を得た。表5に得られた繊維の相対飽和値、染色後収縮率、熱収縮応力最大値温度、熱収縮応力最大値を示した。
本発明のアクリル系収縮繊維は、低温で染色可能であり、染色後においても高い収縮率と高い収縮応力を持ち、ハイパイルの素材成分として有用なもので、産業上極めて有意義なものである。
Claims (2)
- アクリロニトリル80〜94質量%、スルホン酸基含有モノマー0〜2質量%及びこれらと共重合可能なモノマー4〜20質量%からなる重合体(A)が50〜99質量部と、アクリロニトリル50〜70質量%、スルホン酸基含有モノマー3〜5質量%及びこれらと共重合可能なモノマー25〜47質量%からなる重合体(B)が1〜50質量部とを含み、該重合体(A)と該重合体(B)の合計量が100質量部よりなるアクリル系繊維であって、80℃未満での染色後、130℃、5分間の乾熱処理による収縮率が20%以上、且つ10℃/分の昇温雰囲気下で測定した熱収縮応力の最大値が90〜130℃の間にあり、熱収縮応力の最大値が90mg/dtex以上であることを特徴とするアクリル系収縮繊維。
- 重合体(A)及び重合体(B)におけるスルホン酸基含有モノマーの合計含有量が、重合体(A)及び重合体(B)のモノマー合計量に対して1.5〜3質量%である請求項1に記載のアクリロニトリル系収縮繊維。
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