WO2006093292A1 - D-プシコースとd-アロースの複合体結晶性糖質およびその製造方法 - Google Patents
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- L-rhamnose isomerase produced by Pseudomonas stutzerii LL172 also acts on the isomerization between D-allose and D-psicose. It can be an enzyme.
- an enzyme derived from Pseudomonas stutzerii L L172 is required to produce D-allose from D-psicose (Patent Document 1).
- Pseudomonas stutzerii L172 is required to produce D-allose from D-psicose (Patent Document 1).
- the practical use of the rare saccharide production reaction we have aimed for has been further advanced, especially in the mass production of D-allose using D-psicose as a substrate! / There was something remarkable.
- This D-rose has been shown to exhibit various physiological activities, and research is progressing rapidly.
- important effects in the medical field such as cancer cell suppression and anti-acidic action have been clarified (Patent Document 2).
- Non-patent literature 1 Journal of Fermentation and Bioengineenng, 80, pl01,1995
- Non-patent literature 2 Asia Pacific J. Clin. Nutr. 10, 233-237, 2001
- D-Alose can be produced for the first time by isolating D-psicose using L-rhamnose isomerase and separating the D-Alose.
- L-rhamnose isomerase L-rhamnose isomerase
- D-psicose and D-allose can be obtained as mixed crystals without separating them, so that the use as a new material having both physiological activities is opened, and the separation operation step is omitted. Therefore, it will be possible to reduce costs for this purpose.
- L-rhamnose isomerase is allowed to act on D-psicose and isomerized to prepare a mixture of D-psicose and D-allose. it can.
- the complex crystalline sugar containing D-psicose and D-allose of the present invention is expected to be used as a non-caloric sweetener or a physiologically functional food, and cancer cells. Since it is a mixture of D-allose, which has been shown to inhibit growth, its utility value is expected to be very high.
- an aqueous salty manganese solution was added little by little with stirring to a final concentration of lOmM.
- PEG # 6000 was added little by little with stirring to a final concentration of 10% and stirred for 40 minutes. Then, after centrifugation (12,000 rpm, 30 min, 4 ° C), the supernatant was recovered, and PEG # 6000 was further added to this solution to a final concentration of 20%, followed by stirring for 40 minutes. The resulting precipitate was collected by centrifugation (12,000 rpm, 30 min, 4 ° C) and dissolved in 50 mM glycine NaOH buffer (pH 9.0) to obtain a partially purified enzyme solution.
- the produced mixed sugar solution was concentrated to 95% or more with an evaporator, and the syrup was transferred to another container and allowed to stand at 28 ° C for 1 day. Since this is the first attempt to crystallize a mixed sugar of D-psicose and D-allose, there is no seed crystal, so one crystallizes it as it is, and one crystallizes a small amount of D-psicose powder. Abandoned
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Abstract
D-プシコースとD-アロースの結晶性糖質およびその製造方法の提供。
D-プシコースおよびD-アロースの複合体結晶性糖質。複合体結晶性糖質のD-プシコースとD-アロースとの組成比は約1:1乃至1:4である。D-プシコースおよびD-アロースを含有する糖液から、D-プシコースおよびD-アロースを含有する複合体結晶性糖質を生成せしめ、これを採取することを特徴とするD-プシコースとD-アロースの結晶性糖質の製造方法。複合体結晶性糖質を生成させる際の糖液の溶媒は水、または、水とエタノールとの混合液である。D-プシコースおよびD-アロースを含有する糖液は、D-プシコースにL-ラムノースイソメラーゼを作用させD-アロースに変換する工程を含む製造方法で得られた糖液である。L-ラムノースイソメラーゼはPseudomonas stutzerii に属する菌株(IPOD FERM BP-08593)由来のものである。
Description
明 細 書
D-プシコースと D-ァロースの複合体結晶性糖質およびその製造方法 技術分野
[0001] 本発明は、 D-プシコースと D-ァロースの複合体結晶性糖質およびその製造方法に 関する。
背景技術
[0002] 単糖は、炭素鎖が 3以上の炭水化物の総称で、天然界には 40以上の数多くの単 糖類が、代謝産物や生合成産物として遊離体や誘導体、さらに、複合糖質やオリゴ 糖、多糖などさまざまな形態で存在している。単糖類で産業上最も重要なものは D- グルコースで、その製造はアミラーゼなどの酵素で澱粉を加水分解する方法により既 に工業的規模で確立されており、食品、化粧品、医薬品など産業上最も広く大量に 使用されている。さら〖こ、 D-グルコースをイソメラーゼで変換することによって製造さ れている D-フラクトースも産業上重要な糖質である。その他に、酢酸菌によるソルビト ールからの L-ソルボース製造、 13—ガラタトシダーゼによるラタトースカもの D-ガラク トースの製造、酸加水分解によるキシランからの D-キシロースの製造など、幾つかの 単糖の製造は工業的に実施されているが、それ以外の多くの単糖類は、原料や生成 反応、収率など工業的且つ経済的の制約のために工業的大量製造が困難で、産業 上での利用がほとんど行われて ヽな 、。
[0003] 本発明者らは、このような高価で少量しか取り扱えな 、単糖に注目し、それら糖質 を希少糖質と名付け、長年の間、希少糖質の生成反応について鋭意研究を続けて いる。本発明者らは、これまで、 D-プシコースと D-ァロースのどちらとも、単体の希少 糖を対象に開発研究をしてきた。本発明者らは、非特許文献 1に開示したように、既 に工業的に使用されている D-キシロースイソメラーゼと、本発明者らが発見した D-ケ トへキソース · 3—ェピメラーゼとを組み合わせて、 D-グルコースから直接 D-プシコ一 スを製造する方法を開発し、 D-プシコースを連続的に製造する製造方法の道を拓ぃ ている。
[0004] D-プシコースは、一般的には甘蔗廃ミツ中に少量存在することが知られており、 D-
フラ外ースに似た良質の甘味を持っているとともに、難発酵性の糖質で低カロリー性 糖質として最適で、産業上、特に食品産業において期待されている糖質の 1つであ る。すなわち、 D-プシコースは、 D-グルコースや D-フラクトースなどの単糖と比べて 脂肪合成を促進せず、体脂肪、特に腹腔内脂肪を蓄積させない糖として、 D-プシコ 一スが注目されて 、る(非特許文献 2)。また、 D-プシコースの有効エネルギー価は ほぼゼロであることも報告されて 、る(非特許文献 3)。
[0005] このようにして D-プシコースの生産の成功を背景に、この D-プシコースを L-ラムノ ースイソメラーゼを用いて異性ィ匕することによって希少糖 D-ァロースの大量生産を成 功している。本発明者らは、 Pseudomonas stutzeri LL-172株の生産する L-ラムノース イソメラーゼ(「L-RhI」とも云う)を発見し、本酵素が、 L-ラムノース力 L-ラム-ュロー スへの異性ィ匕反応ならびに L-ラム-ュロース力 L-ラムノースへの異性ィ匕を触媒する 酵素であることを明らかにした。 Pseudomonas stutzerii LL172 (IP0D FERM BP-0859 3)の生産する L-ラムノースイソメラーゼは、 D-ァロースと D-プシコースの間の異性化 にも作用するので、 D-プシコース力も D-ァロースを生産することができる酵素である。 ただし、 D-プシコースから D-ァロースを生産するためには、 Pseudomonas stutzerii L L172由来の酵素が必要である(特許文献 1)。本酵素の発見により、本発明者らが目 指している希少糖質の生成反応の実用化はさらに大きく前進し、特に、 D-プシコース を基質に D-ァロースを大量生産することにお!/、ては顕著なものがあった。この D-ァロ ースは各種の生理活性を示すことが明らかになり研究が急速に進展している。現在 までに D-ァロースの性質としてガン細胞抑制や抗酸ィ匕作用など医療分野で重要な 効果が明らかになつている (特許文献 2)。
[0006] しかしながら、この D-ァロースの生産はその製造工程中に D-プシコースと D-アロー スの分離というもっともコストの力かるところが大きなネックとなっている。 D-ァロースを 単体として生産するためには、酵素の性質上、混合糖液の状態になりこれを原料と 生産物に分離する必要がある。 D-ァロースは、 L-ラムノースイソメラーゼの反応によ つて D-プシコースと D-ァロースが 7 : 3の平衡状態に達し、その混合糖液をカラムクロ マトグラフィ一によつて分離している。この分離の操作は当然のことながら、単体の糖 を精製するためには無くてはならない操作であるが、希少糖生産の規模が大きくなる
と時間と手間がかかってしまうのも事実である。
[0007] 一方、現在、実用化されている糖の混合物には、 D-グルコースと D-フルクトースの「 ブドウ糖果糖液糖」がある。ブドウ糖果糖液糖はキシロースイソメラーゼを用いて D-グ ルコースの約半分を D-フルクトースに変換し、砂糖の構成比に近づ 、た代替糖とし て工業的に生産されており、コーヒーや紅茶のガムシロップとして商品化されている。 D-グルコースと D-フルクトースの混合糖液は結晶化が難しぐ結晶としてではなく液 体の状態で利用されている。これは D-フルクトースの水溶性が非常に高いことが原 因であると考えられており、このことから結晶化に時間と手間をかかり、生産コスト面で 不利なため結晶化させずにそのまま利用している。異性ィ匕糖という呼称は普通、 D- グルコースと D-フルクトースの混合糖液のことを指す。これは、現在 D-グルコースを 原料としたキシロースイソメラーゼによる異性ィ匕反応でしか工業的に実用化されてい ないためである。
非特干文献 1: Journal of Fermentation and Bioengineenng, 80, pl01,1995 非特許文献 2 :AsiaPacific J. Clin. Nutr. 10, 233-237, 2001
非特許文献 3 : J. Nutr. Sci. Vitaminol 48, 77-80,2002
特許文献 1:国際公開番号 WO2004/063369 A1)
特許文献 2:国際公開番号 WO03Z097820 A1
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0008] このような背景のもと、もしも、この分離操作なく反応終了液である D-プシコースと D -ァロースの混合液から、両希少糖の混合結晶を得ることができれば、それぞれの生 理活性を生力した新しい希少糖混合結晶が安価に生産できることとなり工業的にも 大きな期待が持たれる。すなわち、 D-ァロース含有糖質の工業的製造において経済 的に有利な方法として、「L-RhIの反応物力も D-ァロースを分離 '精製することなぐ D -プシコースと D-ァロースを含む糖液をそのまま用い、この糖液力も結晶性糖質を高 収率で得ることが強く望まれる。そして、このような背景はあったものの、 L-ラムノース イソメラーゼの反応液から D-ァロースを分離することなく D-プシコースと D-ァロースが 混在する場合は一般に混合結晶が得られることは考えられないという考えが常識で
あつたため、これまで、 D-プシコースと D-ァロースのどちらとも、単体の希少糖を対象 に開発研究が行われてきた。
[0009] 本発明者らは、 L-Rhl反応からの平衡状態の混合糖を新たな一つの試薬として生 産することを試みた。
すなわち、本発明は、 D-プシコースおよび D-ァロースを含有する糖液力も結晶性 糖質を高収率で採取しうる新規な方法を確立し、併せて、その方法で得られる結晶 性糖質の特性を解明するとともに斯カゝる結晶性糖質の製造方法を提供することを課 題とする。
課題を解決するための手段
[0010] L-ラムノースイソメラーゼ (L-Rhl)反応からの D-プシコースと D-ァロースの混合糖液 は異性ィ匕反応による生産物であり、異性ィ匕糖と呼ぶことができる。
本発明者らは、 L-ラムノースイソメラーゼ (L-Rhl)反応によって得られる D-プシコ一 スと D-ァロースとを含む混合物カゝら結晶性糖質を高収率で得ることを目指して鋭意 研究を続けた。
[0011] 一般に糖の混合物は結晶しにくい性質を持つ。例えば異性ィ匕糖として広く甘味料 として用いられている D-グルコースと D-フラクトースの混合液糖が典型的例であり、 混合することで結晶しな 、と 、う性質を用いてシラップ状態の甘味料として用いられ ている。そのような中で、希少糖である D-プシコースおよび D-ァロースの混合物を得 ることは予想できな 、偶然性力 得られるものであり、純粋な D-プシコースと D-ァロ ースが充分量生産可能となって初めて今回成功したものである。
その結果、 D-プシコースと D-ァロースとを含む混合物から、全く新規な複合体結晶 性糖質が生成することを見出し、更に、この結晶性糖質が D-プシコースと D-ァロース との組成比として、 D-プシコースと D-ァロースの比率が約 1: 1から 1 :4の新規複合体 結晶であることを見出し、カロえて、この複合体結晶性糖質の製造方法を確立して本 発明を完成した。
[0012] すなわち、本発明は、上記の課題を、 D-プシコースおよび D-ァロースを含有する複 合体結晶性糖質と、 D-プシコースおよび D-ァロースを含有する糖液から、 D-プシコ ースおよび D-ァロースを含有する複合体結晶性糖質を生成せしめ、これを採取する
ことを特徴とする複合体結晶性糖質の製造方法により解決するものである。
[0013] 本発明は、以下の(1)〜 (2)の複合体結晶性糖質を要旨とする。
(1) D-プシコースおよび D-ァロースのを含有する複合体結晶性糖質。
(2)複合体結晶性糖質の D-プシコースと D-ァロースとの組成比が約 1: 1乃至 1 :4で ある(1)の複合体結晶性糖質。
[0014] また、本発明は、以下の (3)〜 (6)の複合体結晶性糖質の製造方法を要旨とする。
(3) D-プシコースおよび D-ァロースを含有する糖液から、 D-プシコースおよび D-ァ ロースを含有する複合体結晶性糖質を生成せしめ、これを採取することを特徴とする (1)または (2)の複合体結晶性糖質の製造方法。
(4)複合体結晶性糖質を生成させる際の糖液の溶媒が水、または、水とエタノールと の混合液であることを特徴とする (3)の複合体結晶性糖質の製造方法。
(5) D-プシコースおよび D-ァロースを含有する糖液力 D-プシコースに L-ラムノース イソメラーゼを作用させ D-ァロースに変換する工程を含む製造方法で得られた糖液 であることを特徴とする(3)または (4)の複合体結晶性糖質の製造方法。
(6) L-ラムノースイソメラーゼが Pseudomonas stutzeriiに属する菌株(IPOD FERM B P-08593)由来のものである(5)の複合体結晶性糖質の製造方法。
発明の効果
[0015] 希少糖 D-プシコースおよび D-ァロースはそれぞれ特有の生理活性を有しておりそ の用途は大きい期待がある(特許文献 2等)。 D-ァロースの生産は D-プシコースを L- ラムノースイソメラーゼを用いて異性ィ匕し、その混合物力も D-ァロースを分離すること で初めて生産可能である。本発明では D-プシコースと D-ァロースを分離することなく 、混合結晶として得ることが明確になったため、両生理活性を併せ持つ新しい素材と しての用途がひらけ、しかも分離操作の工程が省かれるためのコストダウンをは力るこ とがでさる。
また、結晶化できることで、精製して純粋な糖質を得られる方法としても非常に有効 である。
図面の簡単な説明
[0016] [図 1]固定化 L-ラムノースイソメラーゼを用いた D-プシコースから D-ァロースへの転
換
[図 2]L-ラムノースイソメラーゼ反応による D-プシコースから D-ァロースへの変換の高 速液クロマトグラフによる確認
[図 3]固定ィ匕 L-ラムノースイソメラーゼ反応によって生産した D-プシコースと D-アロー スの混合結晶を撮影した写真
[図 4]D-プシコースと D-ァロースの比が 7: 3から得られた結晶写真
[図 5]各結晶形の比較
[図 6]結晶化における濃度の影響 (28°C、 24時間の場合
[図 7]結晶の高速液体クロマトグラフィーによる分析 (D-プシコース: D-ァロースが 7: 3 の場合
[図 8]結晶の高速液体クロマトグラフィーによる分析 (D-プシコース: D-ァロースが 1: 1 の場合)
[図 9]D-ァロースの溶液中での各種の構造
発明を実施するための最良の形態
[0017] 本発明で 、う D-プシコースおよび D-ァロースを含有する複合体結晶性糖質とは、 粉末 X線回折法で、 D-プシコース結晶および D-ァロース結晶の 、ずれとも異なる結 晶形を示す、 D-プシコースおよび D-ァロースを含有する結晶性糖質を意味する。本 発明に用いる原料の糖質は、 D-プシコースと D-ァロースとを含む混合糖質であって
、斯カる複合体結晶性糖質が製造できるものであればょ 、。
[0018] このような混合糖質を製造するには、 L-ラムノースイソメラーゼを D-プシコースに作 用させ異性化反応して、 D-プシコースおよび D-ァロースの混合物を調製することが 有利に実施できる。
D-プシコースから D-ァロースを生産するためには、 Pseudomonas stutzerii LL172 ( (IPOD FERM BP-08593) )由来の酵素が必要である(特許文献 1)。
上記の L-ラムノースイソメラーゼは、以下の物理ィ匕学的性質を有する酵素である。 (ィ)作用
第 7図,第 8図,第 9図に太い黒線で示される異性化反応を触媒する。
(口)作用 pHおよび至適 pH
作用 pHは 7. 0〜: LO. 0であり、至適 pHは 9. 0である。
(ハ) pH安定性
種々の pHで 4°C、 1時間保持した場合、 pH6. 0-11. 0の範囲で安定である。 (二)作用温度および至適温度
作用温度は 40〜65°Cであり、至適温度は 60°Cである。
(ホ)温度安定性
40°C、 10分では安定しており、 50°C、 10分でも 90%以上残存している。 (へ)キレート剤の影響
キレート剤である EDTA、 EGTAを活性測定時に共存させても、ほとんど活性は阻 害されない。
(ト)金属イオンの影響
ImMのコバルトイオンにより約 30%阻害される。
(チ) SDS— PAGE法による分子量
約 43, 000である。
[0019] 調製される糖質の D-プシコースと D-ァロースとの割合は、通常、固形物当たりそれ ぞれ約 70%と約 30%である。必要ならば、この割合の D-プシコースと D-ァロースと の混合糖質を、 D-プシコースに L-ラムノースイソメラーゼを作用させて製造することも 随意である。また、無機および Zまたは有機触媒を用いて D-プシコースを異性ィ匕し て D-プシコースおよび D-ァロースの混合物を製造することも可能である。その場合、 通常、 D-ァロースの純度が低いため、 D-ァロースを添加したり、溶媒分画、膜分離、 カラム分画、酵素処理などして D-プシコースを除去し D-ァロースの純度を高めたりす ることも可能である。勿論、単純に D-プシコースと D-ァロースとを任意の割合で配合 して、 D-プシコースおよび D-ァロースの混合物を調製してもよ!/、。
[0020] 本発明は、 D-プシコースおよび D-ァロースを含有する糖液から、 D-プシコースおよ び D-ァロースを含有する複合体結晶性糖質を生成せしめ、これを採取して、 D-プシ コースおよび D-ァロースを含有する複合体結晶性糖質を製造できればよい。
D-プシコースと D-ァロースの混合糖は、後述の実施例 1でも述べているが、具体的 な結晶化濃度にぉ ヽては結晶をカ卩えた場合で 85%、加えな力つた場合 90%以上で結
晶する。 D-プシコースと D-ァロースの混合糖は結晶をカ卩えなくても結晶化するほど結 晶化しゃすいという特徴がある。結晶の形は細長い棒状結晶で、 D-プシコースと D- ァロースのどちらの結晶にも類似して 、るとは言 ヽ難 、。単体の D-ァロースは非常に 結晶化しやすい性質を持ち、 60%程度の濃度で放置しておくと結晶化してしまうほど である。 D-プシコースは結晶化しやすいとは言えないが、 D-フルクトースほどではな いため、この混合糖の状態であっても比較的結晶化しやすい要因だと考えられる。ま た、糖濃度が高くなると単結晶が大きく成長することが確認される。
また、結晶の組成を HPLCで確認すると、 D-プシコースと D-ァロースの組成は D-ァ ロースが多く含まれて 、ることがわかる。 D-プシコースと D-フラクトースの混合糖のよ うに結晶化前と同じ比率で結晶化はしない。結晶化前の溶液中の D-ァロースの割合 は D-プシコースよりも 50%以下であるにも関わらず、その結晶では D-ァロースが等量 もしくは D-プシコースよりも割合が多くなる。一方、 D-プシコースと D-ァロースが 1 : 1 で混合した場合の結晶の組成比も D-プシコースと D-ァロースが約 2: 3であり D-ァロ ースが結晶に多く含まれている。つまり、 D-プシコースと D-ァロースの混合糖が結晶 化した場合、 D-プシコースと D-ァロースの比率がおよそ 1: 1から 2 : 3の間で安定した 結晶構造になるのではな 、かと考えられる。
したがって、 D-プシコースおよび D-ァロースを含有する複合体結晶性糖質の製造 方法は、 D-プシコースおよび D-ァロースを含有する糖質、望ましくは、 D-プシコース と D-ァロースとの組成比が約 1 : 1から 2 : 3の高濃度溶液、望ましくは、固形分濃度 70 乃至 95% (wZw) (以下特にことわらない限り、本明細書においては「%(wZw)」を 単に「%」と記す。)の水溶液を、例えば、助晶缶にとり、これに種晶として D-プシコ一 スおよび D-ァロースを含有する複合体結晶性糖質を適量、望ましくは、 0. 01乃至 1 0%程度を含有せしめ、混合、助晶してマスキットとし、これを粉末化して採取すれば よい。この際、 D-プシコースおよび D-ァロースを含有する糖液にエタノールなど親水 性有機溶媒を加え、 D-プシコースおよび D-ァロースを含有する複合体結晶性糖質 の生成を促進させることもできる。
本発明において、マスキットから複合体結晶性糖質の粉末を製造するには、例えば 、噴霧乾燥方法、流動造粒方法、ブロック粉砕方法など適宜用いることができる。噴
霧乾燥方法の場合には、通常、固形分濃度 70ないし 85%、 D-プシコースおよび D- ァロースを含有する複合体結晶性糖質の晶出率 5ないし 50%程度のマスキットを高 圧ポンプでノズルから噴霧し、結晶含有粉末糖質が溶融しない温度、例えば、 40な いし 75°Cの温風で乾燥し、次いで 25ないし 40°Cで約 1ないし 24時間、晶出、熟成 すればよい。また、ブロック粉砕方法は、通常、固形分濃度 85ないし 95%、 D-プシコ ースおよび D-ァロースを含有する複合体結晶性糖質の晶出率 1ないし 30%程度の マスキットを約 1ないし 10日間静置し、全体をブロック状に晶出固化させ、これを粉砕 または切削などの方法によって粉末ィ匕し、乾燥すればょ 、。
[0022] このようにして得られる本発明の複合体結晶性糖質の粉末は、非晶質糖質と比べ、 吸湿性が低ぐ固結せず、流動性良好であるので、取り扱い容易であり、その包装、 輸送、貯蔵など管理に要する物的、人的経費が大幅に削減できる。
[0023] 本発明の D-プシコースおよび D-ァロースのを含有する複合体結晶性糖質は、ノン カロリーの甘味料や生理機能性食品としての利用が期待されている D-プシコースと、 ガン細胞増殖抑制作用が認められている D-ァロースの混合したものであるから、そ の利用価値は非常に高いと期待される。
[0024] 以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何 ら限定されない。
実施例 1
[0025] く L-ラムノースイソメラーゼによる D-プシコースと D-ァロースの混合糖の生産〉
希少糖 D-プシコースの結晶化と大量生産に成功し、新たな試薬として期待される 中、実施例 1では更なる混合希少糖の生産を試みた。本発明者らは L-ラムノースイソ メラーゼ(L- Rhl)を用いて D-プシコースから希少糖 D-ァロースを大量生産して!/、る ( 特開平 2004— 298106号公報等参照)。実施例 1にお!/、ては D-プシコースと D-ァ ロースの混合糖を、単体の D-プシコースや D-ァロースとは別の新たな異性ィ匕糖とし て生産を行った。
[0026] [実験方法]
1)使用試薬
実施例 1の培養と酵素反応の際に用いた試薬及び糖は特に注釈のない限り、希少
糖 D-プシコースの生産と同様、和光純薬工業およびナカライテスタの特級試薬を使 用した。
[0027] 2)使用菌株およびプラスミド
大腸菌は JM109株を用いた。またプラスミドには、当研究室の石村が構築した Pseud omonas. stutzeri LL172株の L- Rhl遺伝子を発現ベクター pQE60に導入したプラスミド 、 pOH)lを用いた。なお、大腸菌 JM109の遺伝子型は表 1に示した。
[0028] [表 1] 大腸菌 JM109の遺伝子型 菌株 記載
Escherichia coU E14-iMc rX- recA\,en dAl ^yrA96,thi-l
JM109 hsdR 17(rk- mk +)^ up E44,/*eZAl ,A(la c-p roAR) ,
[F'i Oflf36^riiAB,& cIqZ^]M15]
[0029] 3)培地組成
大腸菌の培養において、平面培地には LB寒天培地を、液体培地には Super broth培地を用いた。そしてそれぞれの培地に終濃度 100 g/mlとなるようにアンピシ リンを添カ卩した。これらの培地の組成は表 2に示した。
[0030] [表 2]
大腸菌培養のための培地組成 スーパ一培地
Bacto trypton 3.5%
バクトイースト抽出物 2.0%
NaCL 0.5%
LB meamm
LB培地塩基 2.0%
[0031] 4)形質転換
Cohenらの方法(Cohen, S.
N" Chang, A. C. Y. and Hsu,し (1972) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69, 2110)に従 、以下の方法で大腸菌 JM109の形質転換を行った。大腸菌 JM109のコンビタントセ ルにプラスミド pOI-01を 1 μ 1添カ卩して氷中にて 30分静置した後、 42°Cの恒温槽で 90 秒間ヒートショックを与え、氷中で 2分間コールドショックを与えた。 800 1の SOC培地 をカロえて 37°Cで 1時間振とうした後、アンピシリンを含む LB平面培地にコンラージ棒 で 2 μ 1塗布して 28°Cオーバーナイトの条件でインキュベートした。
[0032] 5)組換え大腸菌の培養
組換え大腸菌の前々培養および前培養は以下の培養条件で行った。 前々培養:形質転換した大腸菌 JM109のコロニーを爪楊枝で搔きとり、 100mg/mlのァ ンピシリンを含む Super broth液体培地 3mlに植菌し、 28°Cで 12時間振とう培養した。 前培養:前々培養した培養液全量を、 100mlの同培地に入れて前々培養と同条件 で振とう培養した。
本培養は培地量を 10Lで行い、全容量 20Lのジャーフアーメンターを使用した。前 培養の培養液を全量加えて 30°Cで 12時間振とう培養した。
[0033] 6) IPTGによる酵素の誘導および粗酵素の抽出
本培養終了後、イソプロピルチォガラタトピラノシド (IPTG)を終濃度 ImMとなるよう に加えさらに 30°C、 4時間撹拌し酵素の誘導を行った。誘導終了後、培養液を遠心 分離(9,000rpm、 20min、 4°C)後、集菌して5 OmMグリシン- NaOHバッファー(pH9.0) で洗浄し、菌体を得た。得られた菌体を、アルミナ磨砕法で破砕した。破砕された菌 体を同バッファーで懸濁し、遠心分離(12,000rpm、 4°C、 30min)後、上清を回収し粗 酵素溶液とした。
[0034] 7) L- Rhlの活性測定法
L-Rhlの活性測定には D-アロースを基質として酵素反応を行 、、生じた D-プシコ一 ス量を測定して行った酵素反応は表 3 (L-ラムノースイソメラーゼ活性測定用の反応 溶液組成)に示した組成で 30°C、 10分反応させ、反応停止には 10%トリクロ口酢酸を 5 0 μ 1加えた。糖質 (生産されるケトース)の分析方法にはシスティン力ルバゾール法を 用いた。システィン力ルバゾール法は表 4 (システィン力ルバゾール法による測定の流 れ)に示すように、適宜希釈した試料 0.5mlに 0.5%システィン溶液 0.1ml、 70%硫酸 3 mlを順次カ卩えた後に、撹拌して水中に置き、冷却した。その後、 0.12%力ルバゾール 溶液を 0.1ml加え撹拌して、 35°Cで 20分間反応させた。反応終了後、分光光度計 (JA SCO, Ubest-30 UV/VIS Spectrophtometer)を用いて 540nmの吸光度を測定した。こ の条件で 1分当たりに 1 μ molの D-プシコースを生産する酵素量を 1ユニット (U)と定義 した。
[0035] [表 3]
30度で 10分
[0036] [表 4]
システィン -力ルバゾール法の流れ図
Sample 0.5ml
1.5% Cystein
70% H2S04
0.12% Carbazole
會
熱処理
Absd 0nin
[0037] 8) PEG#6000による L-Rhlの部分精製
粗酵素溶液に塩ィ匕マンガン水溶液を終濃度 lOmMとなるように撹拌しながら少しず つ加えた。これに PEG#6000を終濃度 10%となるように撹拌しながら少しずつ加え 40分 間撹拌した。その後、遠心分離(12,000rpm、 30min、 4°C)後、上清を回収しこの溶液 に終濃度 20%になるようにさらに PEG#6000を加え 40分間撹拌した。生じた沈殿を遠心 分離(12,000rpm、 30min、 4°C)によって回収し、 50mMグリシン NaOHバッファー(pH9. 0)に溶解させ、この溶液を部分精製酵素溶液と得た。
[0038] 9) L-RhIの固定化
固定ィ匕担体には、 D-TEの固定ィ匕と同様に陰イオン交換榭脂キトパール BCW2510 を使用した。キトパール榭脂を 50mMグリシン- NaOHバッファー(pH9.0)で洗浄した後 、同ノッファーに浸して緩やかに撹拌しながらオーバーナイトで平衡ィ匕を行った。そ の後、バッファーを除きキトパール榭脂に部分精製酵素溶液を加えてオーバーナイト で緩やかに撹拌し、固定ィ匕した。
[0039] 10) D-プシコースと D-ァロースの混合糖の生産
本固定ィ匕酵素を用いてバッチ法にて D-プシコースと D-ァロース(7:3)の混合糖の 生産を行った。 500mlの三角フラスコに固定化酵素を入れ、 50%の D-プシコース水溶 液 300mlを加え窒素を充填し 45°Cで緩やかに振とうさせながら酵素反応を行った。 D- プシコースと D-ァロースが 7 : 3となる平衡状態に達した後に反応液を回収し、また新 たな 50%の D-プシコース水溶液をカ卩え、この操作を酵素活性が無くなるまで繰り返し た。
[0040] 11)脱イオン処理
脱イオン処理にはカチオン交換榭脂 (ダイアイオン SK1B)とァ-オン交換榭脂(ァ ンバーライト IRA-411)の榭脂を使用した。両榭脂を等比率で混合したものをカラム に詰め、反応後の溶液を流してイオンの除去を行った。
[0041] 12) D-プシコースと D-ァロースの混合糖の結晶化
生産された混合糖の溶液をエバポレータで 95%以上に濃縮し、シロップを別の容器 に移し 28°Cで 1日放置した。 D-プシコースと D-ァロースの混合糖の結晶化は今回が 初めての試みなので種となる結晶が存在しないため、 1つはそのまま放置して結晶化 させ、一方は D-プシコースの粉末を少量カ卩ぇ放置した
[0042] 13) D-プシコースと D-ァロースの混合糖の粉末化
結晶を乳鉢と乳棒を用いて適当な大きさに砕き、乾燥室で放置した。そして 1日後、 再び結晶を砕!、て乾燥室に入れ、 D-プシコースと D-ァロースの混合糖の結晶が粉 末になるまでこの操作を繰り返した。
[0043] [実験結果]
1)組換え大腸菌の菌大量および L-Rhlの酵素活性
今回、 10Lの培養を行ったところ、約 100gの組換え大腸菌を得た。また粗酵素の L- Rhlの活性は 10Lあたり D-プシコースに対して約 5000Uであり、現在、我々はこの酵素 活性の持つ固定ィ匕酵素で D-ァロースを大量生産しており、同様に D-プシコースと D- ァロースの混合糖も大量生産が可能である。
[0044] 2) D-プシコースから D-プシコースと D-ァロースの混合糖の生産
今回、 50%D-プシコース水溶液を基質にバッチ法にて反応させ、適宜サンプリング
を行った結果、約 14時間で D-プシコースと D-ァロースが 7: 3の平衡状態に達した(図 D oそこで反応液を 1日置きに交換し、 D-プシコースと D-ァロースの混合糖の生産を 行った(図 2)。
[0045] 3) D-プシコースと D-ァロースの混合糖の結晶化および粉末化
結晶化のため、 D-プシコースと D-ァロースの混合糖の溶液をエバポレータ(EYELA
Rotary Vacuum Evaporator N- N series)で糖度 95%以上に濃縮し、得られたシロップ を別の容器に移し結晶の種を入れて、あるいは何も入れずに室温で放置した。この 混合糖の結晶化は今回が初めてであるため、結晶が存在せず種としてその結晶をカロ えることができな 、。そこで単体の D-プシコースの結晶を種として加えたものと何も入 れずに放置したものと 2通りの結晶化を試みた。その結果、両方とも結晶が見られ結 晶化の速度が D-プシコースと D-フラクトースの混合糖よりも速力つた。
また水をあまり取り込まずに結晶化するため、粉末にすることも容易であった。現在 までに約 200gの D-プシコースと D-ァロースの混合糖の粉末結晶を生産することに成 功した(図 3)。
[0046] [要約および考察]
L-Rhl遺伝子を組み込んだ大腸菌 JM109を大量培養し、 L-Rhlを大量に獲得した。 酵素を部分精製し、固定ィ匕榭脂に固定化させ基質に D-プシコースを反応させ D-プ シコースと D-ァロースの混合糖を得た。これをエバポレータで糖 95%まで濃縮し、シャ ーレに移し 28°Cで自然乾燥を行ったところ、 1日後に結晶ができ始め 2日後にはすべ てが結晶化した。また、できた結晶を乳鉢で細力べすりつぶし、粉末にすることにも成 功し、現在までに約 200gの粉末結晶を生産することに成功した。この混合糖の結晶 はあまり水を取り込まずに結晶化するためには粉末ィ匕は容易であった。混合液の糖 の割合は D-プシコースと D-ァロースが 7 : 3であり、結晶化しにくい D-プシコースのほ うが多く含まれているにもかかわらず、これは非常に結晶化しやすい性質の D-アロー スの性質が大きく影響して 、る力、 D-プシコースと D-ァロースの組み合わせによる何 らかの結晶化の相乗効果を持って 、ると思われる。
また、 D-プシコースと D-フラクトースの混合糖との大きな相違点は、 D-プシコースと
D-ァロースの混合糖は結晶を種として加えなくても結晶化する結晶化のしゃすさで ある。このことから液体の状態での利用も可能であり、結晶化して固体で利用する場 合でも効率良く結晶を生産できるものと思われる。
本発明者らは D-ァロースを年間に約 10kgを生産している。このことから、混合糖の 場合は年間に 3倍の約 30kgが生産可能ということに理論上はなる。ノンカロリーの甘 味料や生理機能性食品としての利用が期待されて!ヽる D-プシコースと、ガン細胞増 殖抑制作用が認められている D-ァロースの混合したものであるならば、その利用価 値は非常に高いと思われる。
実施例 2
[0047] D-プシコースと D-ァロースの混合糖の結晶化条件の検討
実施例 2では、 D-プシコースと D-ァロースの混合糖の結晶がどのような組成で結晶 化しているのかを目的とし結晶の構造を解析するため、また効率の良い D-プシコ一 スと D-ァロースの混合糖の生産のため、濃度の影響や結晶構造の違いを調べ、結晶 の組成を HPLCで分析した。
[0048] [実験方法]
1)使用試薬
今回使用した D-プシコースと D-ァロースの混合溶液および結晶は実施例 1で生産 したものを使用した。また単体の D-プシコースおよび D-ァロースについては当研究 室が生産したものを使用した。
[0049] 2) D-プシコースと D-ァロースの混合糖の結晶形の観察
生産された D-プシコースと D-ァロースの混合糖の水溶液をエバポレータによって 9 8%まで濃縮したシロップ約 20mlをシャーレに移した。移したシロップに結晶の粉末を 種として加えず、そのまま 28°Cで放置した。 1日後、結晶化した混合糖の結晶を実体 顕微鏡で観察した。また、この結晶を単体の D-プシコースと D-ァロースの結晶の形と 比較するため、 D-プシコースと D-ァロースの粉末をそれぞれ水に溶解させ、同様の 操作で結晶化を行い顕微鏡でそれぞれの結晶の形を観察した。
[0050] 3)濃度に対する結晶化の影響
混合糖の溶液をエバポレータによって限界まで濃縮し、そのシロップを 5本の 25ml
のコ一-ングチューブに 20ml程度加え、それぞれ濃度が 95%、 90%、 85%、 80% (g/g) となるように水を加え濃度が均一になるようによく攪拌した。その後、一方は結晶の粉 末を種として加えたもの、もう一方は何も加えずに 28°Cで 1日放置し結晶の成長を比 較した。
[0051] 4) HPLCを用いた D-プシコースと D-ァロースの混合糖の結晶の糖組成分析
D-プシコースと D-ァロースの混合糖の糖濃度 90%のシロップをコ一-ングチューブ に入れ、結晶を種として少量加え、撹拌して 28°Cで放置した。すべてのシロップが結 晶化する前に結晶を吸引ろ過によって分離した。そしてシロップと結晶を水で溶かし HPLCに供し、結晶、シロップの組成を比較した。また D-プシコースと D-ァロースの比 率が 1: 1のものも同様の条件で結晶化させ分離し結晶の組成を HPLCによって調べ、 7 : 3のものと比較した。
[0052] [実験結果]
1) D-プシコースと D-ァロースの混合糖の結晶形
D-プシコースと D-ァロースの混合糖の結晶は顕微鏡で観察の結果、図 4のように 棒状の単結晶として確認することができた。また、図 5に示すように、 D-プシコース: D -ァロース = 7 : 3の場合、得られる結晶形は棒状(厚さ10〜30 !^長さ 500〜3000 m)であり、単体の D-プシコース(棒状、厚さ 40〜50 μ m、長さ 250〜300 μ m)と D-ァロ ース(棒状、厚さ 30〜50 μ m、長さ 500〜800 μ m)の結晶とも構造を比較した結果、両 者とも結晶の形は違っており、一種類の糖の結晶ではない可能性がある。 D-プシコ ースと D-ァロースの混合糖の結晶は、時間が経つにつれて肉眼で形が観察できるほ ど結晶が成長する。今後、この結晶についても X線結晶解析も行うため、大きな単結 晶を獲得するための結晶化の検討を行って 、る。
[0053] 2) D-プシコースと D-ァロースの混合糖と D-プシコースと D-ァロースの結晶の比較 それぞれの結晶の顕微鏡写真および実際に測定した結晶の大きさを図 5にまとめ た。 D-プシコースと D-ァロースの混合糖の結晶は前述のとおり、細長い棒状結晶で あり、横幅は 10〜30 mで長さは長いもので 3mmにもなり、 D-プシコースや D-ァロース ほど幅は太くならずまた両者よりも縦に細長くなつた。このため、 D-プシコースと D-ァ ロースの混合糖での結晶は D-プシコースあるいは D-ァロースの単一の結晶ではなく
混合結晶であることが示唆された。
[0054] 3)濃度における結晶化の影響
D-プシコースと D-ァロースの混合糖は結晶を種として加えなくても結晶化するすで に述べたが、具体的な濃度での結晶化の影響を調べた結果、 90%以上で自然に放 置しても結晶化がみられた(図 6の(2) )。また、結晶をカ卩えるとさらに低い濃度の 85% で結晶化した(図 6の(1) )。
[0055] 4) HPLCによる結晶の組成
D-プシコースと D-ァロースの混合糖のシロップを 1日放置した後の結晶が混在した 溶液を吸引ろ過によって結晶部分と溶液とに分離した。この 2つのサンプルと、結晶 化前の溶液を 4%となるように、イオン交換水で希釈し HPLCで分析した。 D-プシコ一 スと D-ァロースの混合糖の結晶の組成は D-プシコースと D-ァロースの比がおよそ 1 : 1から 3: 4の範囲での組成となった(図 7)。溶液中では 7: 3と D-プシコースの割合が多 いにも関わらず、結晶は溶液の組成比よりも D-ァロースのほうが多く含まれていた。 また D-プシコースと D-ァロース力 1: 1の混合糖の結晶を HPLCでの分析の結果、 D- プシコースと D-ァロースの比がおよそ 2: 3であり同様の傾向が見られた(図 8)。
[0056] [要約および考察]
D-プシコースと D-ァロースの混合糖の結晶形は、横幅 10〜30 μ m、長さ 500 μ m〜30 00 /z mの細長い棒状結晶であり、結晶は 1種類の単結晶であることが確認できた。ま た、単体の D-プシコースや D-ァロースとは結晶形が異なっていた。これにより D-プシ コースと D-ァロースの混合糖での結晶は D-プシコースあるいは D-ァロースの単一の 結晶ではなく混合結晶である可能性があると推察される。
D-プシコースと D-ァロースの混合糖は、プシコ希少糖とは対照的に結晶化が速 ヽ ことは実施例 1でも述べたが、具体的な結晶化濃度にお!、ては結晶を加えた場合で 85%、加えな力つた場合 90%以上で結晶した。プシコ希少糖と最も大きな違いは D-プ シコースと D-ァロースの混合糖は結晶を加えなくても結晶化するほど結晶化しやす いということである。結晶の形は細長い棒状結晶で、 D-プシコースと D-ァロースのど ちらの結晶にも類似して 、るとは言 、難 、。単体の D-ァロースは非常に結晶化しや すい性質を持ち、 60%程度の濃度で放置しておくと結晶化してしまうほどである。 D-プ
シコースは結晶化しやすいとは言えないが、 D-フルクトースほどではないため、この 混合糖の状態であっても比較的結晶化しやすい要因だと考えられる。また、糖濃度 が高くなると単結晶が大きく成長することが確認されたので、 X線結晶構造解析のた めの単結晶の分離を試みて 、る。
また、結晶の組成を HPLCで確認したところ、 D-プシコースと D-ァロースの組成は D -ァロースが多く含まれていることがわかった。、 D-プシコースと D-フラクトースの混合 糖のように結晶化前と同じ比率で結晶化はしな力つた。結晶化前の溶液中の D-ァロ ースの割合は D-プシコースよりも 50%以下であるにも関わらず、その結晶では D-ァロ ースが等量もしくは D-プシコースよりも割合が多くなる。一方、 D-プシコースと D-ァロ ースが 1: 1で混合した場合の結晶の糸且成比も D-プシコースと D-ァロースが約 2: 3であ り D-ァロースが結晶に多く含まれていた。つまり、 D-プシコースと D-ァロースの混合 糖が結晶化した場合、 D-プシコースと D-ァロースの比率がおよそ 1: 1から 2 : 3の間で 安定した結晶構造になるのではないかと考えられる。
産業上の利用可能性
このように混合して 、る糖の溶解度などの物性に大きな差が表れると、その結晶の 糖組成の要因は、その物性に大きく左右されるのではないかと考える。さらに濃度や 温度の条件に関する結晶化の速度や水溶液中での糖の構造異性体の平衡状態な どの要因が複雑に絡み合って結晶を形成している。現在、 D-プシコースとともに D-ァ ロースの水溶液中での構造異性体の平衡が明らかにされている(図 9)。混合糖液の 結晶化には未だ解明できない点が多いが、最近になり希少糖の結晶構造の解析や 溶解度などの物理ィ匕学的諸性質の研究が進み、希少糖の様々な物性も明らかにな つてきたため、今後混合糖の結晶につ ヽても研究が進んで 、くであろうことが期待さ れる。
Claims
[1] D-プシコースおよび D-ァロースの複合体結晶性糖質。
[2] 複合体結晶性糖質の D-プシコースと D-ァロースとの組成比が約 1: 1乃至 1 :4であ る請求項 1の複合体結晶性糖質。
[3] D-プシコースおよび D-ァロースを含有する糖液から、 D-プシコースおよび D-ァロ ースを含有する複合体結晶性糖質を生成せしめ、これを採取することを特徴とする請 求項 1または 2の複合体結晶性糖質の製造方法。
[4] 複合体結晶性糖質を生成させる際の糖液の溶媒が水、または、水とエタノールとの 混合液であることを特徴とする請求項 3の複合体結晶性糖質の製造方法。
[5] D-プシコースおよび D-ァロースを含有する糖液力 D-プシコースに L-ラムノースィ ソメラーゼを作用させ D-ァロースに変換する工程を含む製造方法で得られた糖液で あることを特徴とする請求項 3または 4の複合体結晶性糖質の製造方法。
[6] L-ラムノースイソメラーゼが Pseudomonas stutzeriiに属する菌株(IPOD FERM BP-
08593)由来のものである請求項 5の複合体結晶性糖質の製造方法。
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