明 細 書
(メタ)アクリル酸 t一ブチルの合成方法
技術分野
[0001] 本発明は、(メタ)アクリル酸 t—ブチルを合成する方法に関する。
背景技術
[0002] (メタ)アクリル酸 t ブチルは、一般的なエステルの合成法であるカルボン酸とアル コールとの脱水エステル化反応や、 (メタ)アクリル酸エステルと t ブチルアルコール とのエステル交換反応によっては合成しづらいことは良く知られている。これは、脱水 エステル化反応による場合は、一般的な触媒である強酸の存在下、第三級アルコー ルである t—ブチルアルコールが容易に分解してしま 、、生成したイソブチレンが脱 水と同時に反応系から取り除かれてしまってエステルを生成する反応が進行しない ためである。又、エステル交換反応による場合は、塩基性触媒や金属アルコキシド触 媒など力 ¾—プチルアルコールの分解を抑制できる有効な触媒であるが、活性化され た t -ブチルアルコールの t -ブチル基が立体的に水酸基の反応性を阻害して!/、る 理由により、 t ブチルエステルの生成が抑制されるためである。
[0003] そこで、従来、(メタ)アクリル酸 t—ブチルの合成は (メタ)アクリル酸とイソブチレンと の付加反応により行うのが有効であると知られている。しかし、この方法は、イソブチ レンが比較的高価であるため原料コストの点で不利である。副反応を抑制することに より原料費を削減し、経済的に比較的有利な (メタ)アクリル酸 t—ブチルを製造する 方法として、転化率を抑える方法 (特許文献 1)、反応温度を低下させる方法 (特許文 献 2)があるが、高価なイソブチレンを用いることに変わりはなぐまた原料であるイソ ブチレンは高圧ガスの状態で取り扱うことが多いため設備的対応も必要となり、経済 的に不利である。
[0004] 一方、安価な原料である t ブチルアルコールからイソブチレンを製造する方法に つ ヽて ヽくつか知られて ヽる。
[0005] 例えば、液相系で強酸性触媒を用いて加熱することにより容易に脱水分解反応が 起こってイソブチレンを生成することができる(特許文献 3、 4および 5)。
[0006] また、気相系で、ガス状の t ブチルアルコールを、固体リン酸、活性アルミナ、シリ 力 アルミナ等の固体酸触媒と高温で接触させる事により、容易に脱水分解反応が 起こってイソブチレンを生成することも良く知られている(特許文献 6および 7)。
[0007] しかし、 V、ずれの方法にしろ、脱水分解反応を効率よく行う温度にぉ 、ては、生成 する水および副反応主生成物であるイソブチレンダイマー、更には原料 tーブチルァ ルコールの蒸気圧も比較的高 、ため、生成イソブチレンをガスとして脱水反応系外 に取り出す際には目的のイソプチレン中にはこれらが混入してくる。
[0008] そのため、生成イソブチレンガスを (メタ)アクリル酸との付加反応工程に直接導くと 、イソブチレンに含まれる等量以上の水分によって、イソブチレンの再水和が起こり、 t ブチルアルコールに変換されてしまう。この場合、上述したように t ブチルアルコ ールと (メタ)アクリル酸とのエステルイ匕反応は非常に進行しづらいため、(メタ)アタリ ル酸エステルの生産性が低減すると 、うこの系に特有の要改善点があった。
[0009] 一方、イソブチレンを高純度に単離しようとすると、生成する水および未反応の t ブチルアルコールを分離するために高度な蒸留操作を行うか高価な冷凍エネルギー を使って凝縮分離操作を行う必要があり、更にイソブチレンを液ィ匕ガスとして捕集す る目的で、コンプレッサーを用いる力 冷却装置を用いる力して行う為、設備費用お よびエネルギーコストが多大となり経済的に不利となる。
特許文献 1:特開昭 63— 135352号公報
特許文献 2:特開昭 62— 63544号公報
特許文献 3 :米国特許第 4, 012, 456号公報
特許文献 4:特開昭 54— 135710号公報
特許文献 5 :特開昭 54— 138506号公報
特許文献 6 :米国特許第 4, 036, 905号公報
特許文献 7:特開昭 47 - 13250号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0010] 本発明の目的は、安価な t ブチルアルコールから(メタ)アクリル酸 t ブチルを安 価に合成できる方法を提供することである。
課題を解決するための手段
[0011] 本発明者等は、 t—ブチルアルコール力もイソブチレンを製造する脱水分解反応と( メタ)アクリル酸とイソプチレンとの付加反応のそれぞれにつ 、て鋭意検討を行ったと ころ、次の知見を得た。
1.前記脱水分解工程で生成したイソプチレンに含まれる水を除去することにより、そ の後のイソプチレンの (メタ)アクリル酸への付カ卩工程にぉ 、て (メタ)アクリル酸 t—ブ チルを収率良く製造することができること、
2.脱水分解工程を経て得られるイソプチレンに含まれる水は簡易な分離操作 (凝縮 など)を行うことで大部分除去できること、
3.上記 2の分離操作に際して、脱水反応で生じるイソプチレンオリゴマーや未反応 アルコールも大部分同時に除去され、かつ凝縮した成分のうち不要な成分であるイソ ブチレンオリゴマーと、未反応アルコールを含む水分が層分離を起こし、有用な t ブチルアルコールの回収、再利用が容易に行えること、
4.脱水分解反応の生成ガス中の凝縮性成分と付加反応の副反応生成物成分が類 似しているため、上記のような簡易な分離操作を行った後に、原料の (メタ)アクリル 酸を含む液に粗イソブチレンガスを接触溶解させることで、酸性触媒上で良好に付 加反応を行えること。
[0012] また、イソプチレンガスを接触溶解させる工程において、イソプチレン溶解による力 ルボン酸の凝固点降下方法、付加反応生成物の接触溶解工程へのリサイクルによる イソプチレンの溶解度向上方法を見出すことにより粗イソプチレンの吸収効率を飛躍 的に向上させ、付加反応を効率良く実施できる方法を見出した。
[0013] さらに、脱水分解反応における未反応 t ブチルアルコール、付加反応における未 反応ォレフィンを有効利用する方法も見!、だした。
[0014] 本発明はこれらの知見に基づいてなされたものである。すなわち、本発明は、
酸性触媒の存在下にイソブチレンを (メタ)アクリル酸と付加反応せしめる (メタ)ァク リル酸 t ブチルの合成方法において、
A)第一の酸性触媒の存在下に t—ブチルアルコールを脱水分解反応させる工程、
B)工程 Aで得られる生成ガスカゝら少なくとも水を分離して粗イソブチレンガスを得る
工程、
c)該粗イソブチレンガスを (メタ)アクリル酸を含む吸収溶媒に吸収させる工程、およ び
D)粗イソブチレンを吸収した吸収溶媒を第二の酸性触媒に接触させて前記付加反 応を行 、 (メタ)アクリル酸 t ブチルを生成させる工程
を有する (メタ)アクリル酸 t ブチルの合成方法である。なお、本発明において、(メタ )アクリル酸とはアクリル酸およびメタクリル酸の総称である。
[0015] 前記工程 Bにおいて、
b)前記工程 Aで得られる生成ガスを冷却し、該生成ガスに含まれる水、未反応 tーブ チルアルコールおよびイソプチレンオリゴマーを凝縮させて分離する工程を行うこと が好ましい。
[0016] 上記方法が、さらに、
E)前記工程 bにおいて分離した凝縮液を二相分離し、その下層を前記工程 Aの脱 水分解反応に供給する工程
を有することが好ましい。
[0017] 前記工程 Cにおいて、
c)前記工程 Bで得られた粗イソブチレンガスを気液接触装置へ供給し、該気液接触 装置の缶出液に (メタ)アクリル酸をカ卩えて得られる液を冷却し、冷却された液の一部 を該気液接触装置へ供給して前記粗イソプチレンガスと気液接触させ、残部を前記 工程 Dに供給する工程
を行うことが好ましい。
[0018] 上記方法が、さらに、
F)前記工程 Dで得られる (メタ)アクリル酸 t ブチルの一部を前記工程 Cに供給する 工程
を有することが好ましい。
[0019] 上記方法が、さらに、
G)前記工程 Dで得られる生成液力 未反応イソブチレンを回収し、前記工程 Bに供 給する工程
を有することが好ましい。
[0020] 前記工程 Gにお 、て、前記工程 Dで得られる生成液を加熱、減圧および Zまたは 蒸留することにより未反応イソブチレンを回収することができる。
[0021] 前記工程 Aの脱水分解反応、工程 Cの吸収および工程 Dの付加反応を、 OMPa- G以上 IMPa— G未満で行うことが好ましい。
[0022] なお、圧力単位における Gは、ゲージ圧であることを意味する。
発明の効果
[0023] 本発明によれば、高価なイソブチレンを原料とせずに、安価な t ブチルアルコー ルカゝら得られる粗イソブチレンガスを、高度に精製することなぐ付加反応の原料とし て用いるため、原料費が下がり、安価に (メタ)アクリル酸 t—ブチルが合成できる。 図面の簡単な説明
[0024] [図 1]本発明の合成方法を実施可能な装置の一例を示すフロー図である。
[図 2]本発明の合成方法を実施可能な装置の別の例を示すフロー図である。
[図 3]本発明の合成方法を実施可能な装置の別の例を示すフロー図である。
[図 4]本発明の合成方法を実施可能な装置の別の例を示すフロー図である。
[図 5]本発明の合成方法を実施可能な装置の別の例を示すフロー図である。
符号の説明
[0025] 1:反応管 (シリカ アルミナ触媒充填)
2 :コンデンサー
3 :イソブチレン溶解槽
4 :カラム (強酸性イオン交換榭脂充填)
5 :蒸発器
6: t ブチルアルコール水溶液供給ポンプ
7 :メタクリル酸供給ポンプ
8 :凝縮液受槽
9 :吸収塔
10 :循環ポンプ
11 :熱交換器
12 :加熱脱気槽
13 :減圧脱気槽
20 :凝縮器
21 :凝縮器
22 :ブロア
発明を実施するための最良の形態
[0026] 以下、本発明について各工程ごとに詳細に説明する。
[0027] [工程 A:脱水分解工程]
脱水分解反応を行う工程 Aでは、原料の t ブチルアルコールをイソブチレンに転 換してイソブチレンを含む生成ガスを得る。その方法としては、原料の t—ブチルアル コールを、ガス状あるいは液状にて第一の酸性触媒 (脱水分解反応促進用酸性触媒 )を有する反応器に供給し、生成するイソブチレンを反応系外へ取り出すことのできる 方法であれば適宜採用できる。第一の酸性触媒としては、原料の t—ブチルアルコー ルを脱水してイソブチレンに転換できるものであれば用いることが可能である力 強 酸性触媒が好ましぐさらには反応液と触媒を容易に分離できることから固体酸触媒 を用いるのが好ましい。例えば、硫酸等を用いることが可能であり、固体酸触媒として は、固体リン酸、活性アルミナ、シリカ—アルミナ等を用いることが可能である。
[0028] 脱水分解反応は平衡反応であり、生成物であるイソブチレンを反応系外に取り出せ れば反応は連続的に進行する。平衡をイソプチレンの生成側にずらすためには、脱 水分解反応を 100〜450°Cで行うことが好ましい。例えば、第一の酸性触媒を充填し た反応器をもつ外部循環型の反応装置に蒸留設備を付帯し、加熱下、反応器に直 接 t ブチルアルコールを供給しながら生成するイソブチレンを蒸発により系外に取り 出し、反応残液は、蒸留設備に導いて主として t—ブチルアルコールおよびイソプチ レンオリゴマーを蒸発成分として分離して再度反応器に供給して行う方法、ある 、は 、蒸発器に t ブチルアルコールを供給し蒸発させ、ガス状にて固体強酸触媒上で 脱水分解反応する方法などを用いることができる。
[0029] [工程 B:水除去工程]
工程 Bにおいて、脱水分解反応で生成したイソブチレンを含む生成ガスから、イソ
ブチレンを分離して粗イソブチレンガスを得る。その際、イソブチレンを気体として、そ の他の成分を液体として分離するのが好まし 、。得られる粗イソプチレンのイソブチレ ン純度は高 、ほど好ま 、が、付加反応に影響を与えな 、イソブチレンオリゴマーや t—ブチルアルコールは特に高度に除去する必要はない。ここでは、付加反応に影 響を与える水の除去を主目的とし、少なくとも水は除去しておくことが好ましい。粗イソ ブチレンガス中の水含有量は 1質量%程度以下が好ましい。
[0030] この分離のために、工程 Aで得られる生成ガスを冷却し、水を凝縮分離することが できる。凝縮以外にも吸着、吸収、凝固など一般的な水分除去方法を用いてもよい。 好ましくは、脱水分解反応における未反応の t—ブチルアルコールを再利用するため に、脱水分解反応の生成ガスを 0°C以上 80°C以下、凝縮面の水分凝固を回避する ため好ましくは 2°C以上 80°C以下で凝縮させ、反応生成ガスから、水、未反応 tーブ チルアルコール及びイソプチレンオリゴマーを部分的に凝縮させて分離する(工程 b) のが望ましい。
[0031] [工程 E: t ブチルアルコールのリサイクル]
工程 B (もしくは b)で分離された水、 t—ブチルアルコール及びイソブチレンオリゴマ 一を含む液中の t ブチルアルコールを再利用するために、デカンテーシヨンなどの 一般的な二相分離を行い、水相側すなわち下層を、必要に応じて簡易な蒸留操作 により過剰水を除去したうえで、脱水分解反応に供給し、リサイクルすることが好まし い。このときイソプチレンオリゴマーを含有する上層(油相)を廃棄することにより、効 率よく不純物を除去することができる。また、デカンテーシヨン等を用いずにフラッシュ 蒸留や蒸発缶の使用など簡易な蒸留操作により過剰水を除去して該脱水分解反応 に供給してもよい。
[0032] [工程 C :吸収工程]
工程 Cにおいて、付加反応の原料となる (メタ)アクリル酸を含む吸収溶媒に、工程 Bで得られる粗イソブチレンガスを吸収させる。この方法としては、(メタ)アクリル酸に イソブチレンガスを吸収させることのできる方法を適宜採用できる。このとき、例えば、 充填塔、濡壁塔、気泡塔、スプレー塔などの気液積分接触装置ゃトレイ式蒸留塔な どの気液棚段接触装置などの気液接触装置を用いることができる。より効率的に吸
収を行うためには気液積分接触装置を用いるのが好ま ヽ。
[0033] 気液接触装置にお!、ては、イソプチレンガスの溶解効率を上げる観点から、気液接 触装置への供給液または循環液を冷却することが好ましい。特に、(メタ)アクリル酸 の凝固点が高ぐ(メタ)アクリル酸を冷却して供給することが難しいので、(メタ)アタリ ル酸を気液接触装置の缶出液に加え、この液を冷却循環して気液接触装置へ供給 することが好ましい。
[0034] すなわち、前記工程 Bで得られた粗イソブチレンガスを気液接触装置へ供給し、気 液接触装置の缶出液に (メタ)アクリル酸を加えて得られる液を冷却し、冷却された液 の一部を気液接触装置に吸収溶媒として供給し、残部を前記工程 Dに供給するェ 程 cを行うことが好ましい。
[0035] (メタ)アクリル酸と気液接触装置の缶出液とを混合させることにより(メタ)アクリル酸 の凝固点を下降させ、この混合液を冷却して吸収溶媒として用いることにより、(メタ) アクリル酸の凝固を回避しながら気液接触装置内の温度を低下させガス状物の吸収 効率を向上させることができ、例えば吸収塔ベントからの、イソプチレンの損失を低減 するとともに、(メタ)アクリル酸を含む吸収溶媒中のイソブチレン濃度を向上させるこ とができる。そのため付加反応速度を向上させ付加反応生産性を向上させることがで きる。さらに、低圧力条件下でも高い吸収効率を得ることができるため高圧化の必要 が無ぐ高価な圧力容器を用いる必要がなくなる。これらの結果、より安価に (メタ)ァ クリル酸 t—ブチルを合成することができる。
[0036] 前記混合冷却液( (メタ)アクリル酸と気液接触装置の缶出液を混合して冷却した液 )の温度は— 10〜25°Cが好ましい。また、気液接触装置内の (メタ)アクリル酸中のィ ソブチレン溶解率(次の式 1で示される)は 10〜100%が好ましぐ 20〜100%力 り 好ましい。
[0037] [数 1]
(ィソブチレン溶解率) = 1— { (気液接触装置から系外に放出されるィソプチレン量) (吸収塔に供給したイソブチレン量) } …式 1
[0038] 上記混合冷却液を気液接触装置へ供給する量が多いほど、供給液中のイソブチレ ン濃度が高くなるため凝固点が低下し、より気液接触装置内の温度を低下させること
が可能であるが、液負荷が大きくなるために装置サイズの増加を招く。そのため、混 合冷却液の循環比率は、後述する工程 Fによる (メタ)アクリル酸 t ブチルの供給量 と合算して供給 (メタ)アクリル酸に対し、質量比で 0. 01倍以上 100倍以下の範囲と することが好ましい。
[0039] (メタ)アクリル酸を気液接触装置の缶出液に加えるには、(メタ)アクリル酸を直接気 液接触装置の塔底部に供給してもよいし、気液接触装置から缶出液を抜き出したう えで (メタ)アクリル酸をカ卩えてもょ 、。
[0040] また、ガス状物の吸収効率を上げるために、(メタ)アクリル酸に加えて他の吸収溶 媒を用いることもできる。この吸収溶媒としては、 目的とする (メタ)アクリル酸 t—プチ ルを蒸留等して取得する際に製品への混入を回避できる蒸気圧を有し、付加反応に おいて反応性が無い溶媒力も適宜選ぶことができる。例えば、スルホラン、 2—メチル スルホラン、 3—メチルスルホラン、 3—プロピルスルホラン、 3—ブチルスルホラン、ジ メチノレスノレホン、ジェチノレスノレホン、メチノレエチノレスノレホン、ジプロピノレスノレホン、ス ルホナール、トリオナール等のスルホン類溶媒や、 n キサン、ベンゼン、クロロホ ルム、塩化メチレンなどの低沸点溶剤、イソプロピルベンゼン、ジェチルベンゼン、ァ ミルベンゼンなどの高沸点溶剤を用いることができる。
[0041] 吸収の操作圧力は、ガス状イソブチレンを液体に効果的に溶解させるためには加 圧下で行う事がより好ましいが、圧力によっては、高価な装置設計、装置材料が必要 とされ、経済性が低下することもあるため、本発明においては、吸収を略大気圧で行 うことが好ましい。
[0042] [工程 D:付加反応工程]
粗イソブチレンを吸収した吸収溶媒を第二の酸性触媒 (付加反応促進用酸性触媒 )に接触させて前記付加反応を行 、 (メタ)アクリル酸 t—ブチルを生成させる工程 D を行う。例えば、原料 (メタ)アクリル酸を含む吸収溶媒に粗イソブチレンを接触溶解さ せた液を、低温にて第二の酸性触媒を保持した反応器に導き付加反応を行う。反応 温度としては、低温であるほど副反応 (イソブチレン重合反応)が抑制されるが、一方 、反応速度は低下して反応器効率が低下するため、— 20°C以上 20°C以下の範囲が 好ましい。
[0043] 第二の酸性触媒としては、均一触媒でも固体触媒でも構わないが、酸性固体触媒 が好ましぐ強酸性固体触媒がより好ましぐ中でもイオン交換樹脂が特に好ましい。 強酸性イオン交換榭脂としては、高 、活性を有することから架橋型のスルホン酸基含 有イオン交換樹脂が好ましぐ例えば、ロームアンドノヽース社製のアンバーリスト— 15 (商品名)、アンバーライト IR— 200cH (商品名)、バイエル社製のレバチット SPC— 108 (商品名)、同 118 (商品名)、三菱ィ匕学製ダイヤイオン RCP— 150H (商品名) などが好適に使用できる。
[0044] [工程 G :イソブチレン回収工程]
工程 Dで得られる付加反応の生成液から未反応イソブチレンを回収し、再度付カロ 反応の原料として利用することにより、イソブチレン利用率を向上させてもよい。この 回収は、工程 Dで得られる生成液を加熱すること、減圧すること、蒸留すること、もしく はこれらの組み合わせによって行うことができる。回収したイソブチレンは必要に応じ て調圧したのち付加反応に再利用することができる。
[0045] 特に、回収イソブチレンを、工程 Bに供給してリサイクルすることが好ましい。例えば 、脱水分解反応の出口側力 凝縮のための熱交換器等の入り口までの間の箇所に 回収イソブチレンを導くことができる。これにより、回収イソブチレン中に含まれる t ブチルアルコールを工程 B (もしくは b)で分離し、回収イソブチレンを精製することが できる。さらに工程 Bで分離された液に含まれる t -ブチルアルコールを工程 Aに供 給して脱水分解反応にリサイクルすれば (例えば工程 Eを行えば)回収イソプチレン 中に含まれる t ブチルアルコールを工程 Aの脱水分解反応で有効に再利用可能で ある。
[0046] [工程 F: (メタ)アクリル酸 t—ブチル回収工程]
工程 Dで得られる (メタ)アクリル酸 t—ブチルの一部を前記工程 Cに供給して吸収 溶媒としてリサイクルする工程 Fを行ってもょ ヽ。 (メタ)アクリル酸 t—ブチルはイソブ チレンと親和性が高いため、(メタ)アクリル酸中の (メタ)アクリル酸 t ブチルの比率 がが高いほど吸収溶媒へのイソブチレンの溶解度が向上して吸収効率が上がる。こ のため、例えば吸収塔ベントからの、イソブチレンの損失を低減することができる。カロ えて、(メタ)アクリル酸を含む吸収溶媒中のイソプチレン濃度が向上することにより付
加反応速度を向上させ付加反応生産性を向上させることができる。その結果、より安 価に (メタ)アクリル酸 t ブチルを合成できる。工程 Dで得られる生成液から (メタ)ァ クリル酸 t ブチルを分離して工程 Cに供給する必要はなぐ工程 Dで得られる生成 液の一部を工程 Cに吸収溶媒として供給すればょ 、。 (メタ)アクリル酸 t ブチルの 工程 Cへの供給量が多いほど、吸収溶媒へのイソプチレン溶解度が向上する力 ェ 程 Cの液負荷増大に伴う吸収サイズの増加に加えて工程 Dでの反応速度低下を招く 。そのため、工程 Fによる (メタ)アクリル酸 t ブチルの供給量は、前述の工程 Cの気 液接触装置缶出液の供給量と合算して工程 Cへの供給 (メタ)アクリル酸に対し質量 比で 0. 01倍以上 100倍以下の範囲とすることが好ましい。
[0047] なお、本発明によれば、前記工程 Cでのイソブチレン吸収効率が高 、ため、前記ェ 程 Aの脱水分解反応、工程 Cの吸収および工程 Dの付加反応を、略大気圧 (ゲージ 圧で OMPa以上 IMPa未満)で行うことができる。例えば、反応や吸収のために特に 加圧せず、大気圧より、流体の移送のための圧力損失分だけ高い圧力にて反応や 吸収を行うことができる。これにより高圧設備が不要となり、設備コストを抑えることが でき、より安価に (メタ)アクリル酸 t ブチルを合成することが可能となる。
[0048] 付加反応の生成物から、所望により未反応イソブチレンを回収した後に 1基以上の 蒸留装置を用い蒸留する等の精製工程を行うことにより、 目的の (メタ)アクリル酸 t— ブチルを得ることができる。ここで、必要に応じて高沸点残渣を取り除いて未反応 (メ タ)アクリル酸が濃縮された液を付加反応にリサイクル使用しても構わな ヽ。
[0049] また、前記精製工程において重合防止剤を使用してもよい。
[0050] 重合防止剤は、(メタ)アクリル酸および (メタ)アクリル酸 t ブチルの重合を防止可 能な公知の重合防止剤力 適宜選んで用いることができる。重合防止剤としては、例 えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等のキノン化合物、ヒドロキシ N, N,一ジイソプロピルパラフエ-レンジァミン、 N, N,一ジ一 2—ナフチルパラフエ -レンジァミン、 N—フエ-ルー N,一(1, 3 ジメチルブチル)パラフエ-レンジァミン 、フエノチアジン等のアミン系化合物; 4ーヒドロキシ 2, 2, 6, 6—テトラメチルピペリ ジン N—ォキシル、 4 ベンゾィルォキシ 2, 2, 6, 6—テトラメチルピペリジン N ォキシル等の N ォキシル系化合物;あるいは下記の式 ( 1 )で例示される N ォ
キシル系化合物等が挙げられる。
[0051] [化 1]
[0052] (式中、 nは 0〜18の整数である。 R
1および R
2は、両者とも水素原子である力、もしく は、一方が水素原子であり他方カ^チル基である。
R
5および R
6はそれぞれ独 立して直鎖状あるいは分岐状のアルキル基である。 R
7は水素原子又は (メタ)アタリ口 ィル基である。 )
中でも、沸点が高い、 4 ベンゾィルォキシ 2, 2, 6, 6—テトラメチルピペリジン —N—ォキシルゃ前記式(1)において 、 R2、 R7が水素であり、 R3〜R6はメチル基 であり、 nは 1〜12であるものが好ましい。
[0053] 重合防止剤は、 1種を単独で用いても、 2種以上を併用してもよい。
[0054] 重合防止剤は、直接または溶液の状態で精製工程に供給することができる。特に、 蒸留塔内の (メタ)アクリル酸 t—ブチルの重合を防止したい場合には、蒸留系に含ま れる物質にこの重合防止剤を溶解させたものを蒸留塔の塔頂や塔中段から供給する 方法が好ましい。
[0055] また、精製工程においては、重合防止効果を高める目的で必要に応じて分子状酸 素あるいは空気を共存させてもよ!、。これはエアーパブリング法等の方法により容易 に実施することができる。
[0056] 本発明にお 、ては、生産性の観点力も各工程を連続して行うことが好ま 、。
実施例
[0057] 以下、本発明の方法を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例によって 限定されるものではない。
[0058] 〔実施例 1〕
図 1に、本発明を実施しうる装置の一例のフロー図を示す。
[0059] 市販されているシリカ一アルミナ成型触媒 N631HN (商品名。 日揮ィ匕学製。直径 5
[mm] X長さ 5 [mm])を内径 13 [mm]、長さ 115 [mm]のステンレス管に充填し、反 応管 1とした。 t ブチルアルコール水溶液ポンプ 6を用い、質量分率 86. 5%t ブ チルアルコール水溶液を 0. 196 [g/min]で蒸発器 5に供給し、これを全量蒸発さ せて反応管 1を通過させ、 160°Cにて連続的に脱水分解反応を行った。反応が定常 に達したと思われた時点で反応ガスをサンプリングし、ガスクロマトグラフィーで分析し た結果、 t ブチルアルコール基準で転化率 93. 7%、イソブチレン収率 85. 8%で めつに。
[0060] 脱水分解反応の生成ガスはコンデンサー 2にて凝縮液温度を 2°Cとするように冷媒 流量を調節し凝縮成分を分離した。凝縮成分を分離した後の粗イソプチレンガスの 組成を表 1に示す。
[0061] [表 1] 表 1 . 粗イソブチレンガス組成
[0062] コンデンサー 2で凝縮分離された凝縮液は、凝縮液受槽 8に受け、その底部から排 出した。凝縮液の組成は水 87. 3質量0 /0、 t ブチルアルコール 12. 1質量0 /0、イソ ブチレン 0. 6質量0 /。であった。
[0063] 得られた粗イソブチレンガスを大気開放したイソブチレン溶解槽 3へと連続導入した 。イソブチレン溶解槽 3には、メタクリル酸供給ポンプ 7を用い、 0. 17[g/min]で 18 °Cに冷却したメタクリル酸を連続供給した。イソブチレン溶解槽 3でのイソブチレン溶 解率は 15. 51%であった。イソブチレン溶解槽で吸収されな力つたイソブチレンは溶 解槽ベントより損失した。得られた粗イソブチレンガスを溶解させた液を、強酸性ィォ ン交換樹脂であるアンバーライト IR— 200cH (商品名。ロームアンドノヽース社製)を 充填した内径 20 [mm]、長さ 1000 [mm]のジャケット付ガラスカラム 4に通液して付
加反応を実施した。ガラスカラムはジャケットに冷水を通し、内温を 5°Cに維持した。 供給 t ブチルアルコール基準のメタクリル酸 t ブチル収率は 12. 29%であった。
[0064] 〔実施例 2〕
実施例 1で用いたイソブチレン溶解槽の代替として、大気開放した理論段 5段相当 の吸収塔 9を設置した。図 2に実験装置のフロー図を示す。
[0065] 実施例 1と同様に、脱水分解反応および凝縮成分の分離を実施して粗イソブチレ ンを得た。
[0066] 粗イソブチレンガスを吸収塔 9のボトムに供給した。 18°Cのメタクリル酸を 0. 17[g Zmin]で吸収塔ボトムの下流ラインに供給し、ボトム液とメタクリル酸を混合した。こ の混合液はイソプチレンの溶解により、メタクリル酸より凝固点が低下しているため (メ タクリル酸の凝固点は約 15°C)、循環ポンプ 10により熱交^^ 11を通して 4°Cまで冷 却し、熱交換器 11の出口液のうちの 0. 84 [g/min]を吸収塔 9のトップにリサイクル させた。吸収塔 9でのイソブチレン溶解率は 30. 86%であった。吸収塔 9で吸収され な力つたイソブチレンは吸収塔ベントより損失した。
[0067] 熱交翻 11の出口液の残部は、実施例 1と同 I オン交換榭脂を充填したジャケ ット付ガラスカラム 4に通液して 5°Cにて付加反応を行った。なお、図 2にはガラスカラ ム 4から吸収塔 9へのリサイクルラインを示してある力 ここではこのリサイクルは実施 しなかった。
[0068] 供給 t ブチルアルコール基準のメタクリル酸 t ブチル収率は 18. 90%であった
[0069] 〔実施例 3〕
図 2に示す装置を用い、実施例 2の操作に加えて、ジャケット付ガラスカラム 4から吸 収塔 9トップへのリサイクルを実施した。
[0070] 吸収塔 9ボトムから吸収塔 9トップへのガラスカラムを経由しないリサイクルは 1. 60 [ g/min] ,ガラスカラム 4出口から吸収塔 9トップへのリサイクルは 0. 16[g/min]と した。この他の条件は実施例 2と同様とした。
[0071] その結果、吸収塔 9でのイソブチレン溶解率は 56. 34%であり(吸収塔 9で吸収さ れな力つたイソブチレンは吸収塔ベントより損失した。)、供給 t—ブチルアルコール
基準のメタクリル酸 t ブチル収率は 21. 48%であった。
[0072] 〔実施例 4〕
実施例 3の装置に加えて、凝縮液受槽 8に、凝縮した凝縮液をデカンテーシヨンし 下層(水相)側を全量蒸発器 5へ供給するラインを設けて連続運転を行った(図 3)。
[0073] 86. 5質量%t ブチルアルコール水溶液を実施例 3と同様に 0. 196 [gZmin]で 供給し、さらに凝縮液受槽 8の水相を蒸発器 5に供給し、蒸発し予熱したガスを反応 管 1を通過させ、 160°Cで脱水分解反応を行った。蒸発器底部に蓄積する t—プチ ルアルコールを 500質量 ppm程度含有する水は 0. 06〜0. 07[gZmin]で逐次抜 き出しを行った。凝縮液受槽 8上層部 (有機層)はオーバーフローにより廃棄した。そ の結果、供給 t ブチルアルコール基準のイソブチレン収率は 91. 4%となった。
[0074] 得られた粗イソブチレンガスは実施例 3と同様にコンデンサー 2にて 2°Cで凝縮分離 成分を分離した後に吸収塔 9ボトムに供給した。吸収塔ボトム液に 18°Cのメタクリル 酸 0. 17[gZmin]をカ卩ぇ熱交換器 11により 4°Cまで冷却し、熱交換器 11の出口液 の内 1. 60 [gZmin]を吸収塔 9トップにリサイクルさせた。熱交換器 11の出口液の 残部は実施例 3と同じ強酸性イオン交換榭脂を充填したガラスカラム 4に通液し、 5°C で付加反応を行った。ガラスカラム 4の出口液の内 0. 16 [g/min]は吸収塔 9のトツ プにリサイクルさせた。
[0075] その結果、供給 t ブチルアルコール基準のメタクリル酸 t ブチル収率は 21. 56 %であった。
[0076] 〔実施例 5〕
実施例 4に加えて、付加反応における未反応イソブチレンを加熱により回収し、再 度吸収塔へリサイクルする工程を付与した(図 4)。
[0077] 後述するように加熱脱気槽 12で除去したイソブチレンガスを熱交 2に供給した 以外は実施例 4と同様にして粗イソブチレンガスを得て吸収塔 9ボトムに供給した。
[0078] 吸収塔ボトム液に 18°Cのメタクリル酸 0. 34[gZmin]を加え熱交^^ 11により 4°C まで冷却し、熱交^^ 11の出口液の内 13. 40 [gZmin]を吸収塔 9トップにリサイク ルさせた。熱交 11の出口液の残部は実施例 4と同じ強酸性イオン交換榭脂を充 填したガラスカラム 4に通液し、 5°Cで付加反応を行った。ガラスカラム 4の出口液の
内 2. 68 [gZmin]は吸収塔 9のトップにリサイクルさせた。ガラスカラム 4の出口液の 残部については、加熱脱気槽 12にて 70°Cで溶存イソブチレンを除去し、除去したィ ソブチレンガスを熱交^^ (コンデンサー) 2に導 、た。
[0079] その結果、吸収塔でのイソブチレン吸収率は 98. 79%となり、ほぼ全量のイソブチ レンが吸収塔で回収され、供給 t ブチルアルコール基準のメタクリル酸 t ブチル 収率は 35. 87%であった。
[0080] 〔実施例 6〕
図 5に示す実験装置を用 1、た。
[0081] 内径 22. 5mm、長さ 2100mmのステンレス管に前述のシリカ アルミナ成型触媒 N631HNと、不活性な支持体 (直径 5mmのガラス球)を等量 (かさ体積基準)づっ 混合して充填したものを反応管 1とした。
[0082] 86. 5質量0/ ot ブチルアルコール水溶液を 0. 206 [kgZhr]、さらに凝縮液受槽 8の水相を蒸発器 5に供給し、蒸発し予熱したガスを反応管 1を通過させ、 160°Cで 脱水分解反応を行った。蒸発器底部蓄積水は逐次抜き出しを行った。凝縮液受槽 8 上層部(有機層)はオーバーフローにより廃棄した。その結果、供給 t ブチルアルコ ール基準のイソブチレン収率は 97. 8%となった。
[0083] 得られた粗イソブチレンガスはコンデンサー 2にて 2°Cで凝縮分離成分を分離した 後に大気開放した吸収塔 9ボトムに供給した。吸収塔ボトム液に 18°Cのメタクリル酸 0 . 776 [kgZhr]を加え熱交翻 11により 4°Cまで冷却した。熱交翻 11出口液は 強酸性イオン交換榭脂(前述のアンバーライト IR— 200cH)を充填した直径 30mm X 1850mmステンレスカラム 4を通過させて付加反応を行い、ステンレスカラム 4出口 液のうち 17. 32 [kgZhr]を吸収塔 9トップへリサイクルを行った。残りのステンレス力 ラム 4出口液は加熱脱気槽 12に導いた。熱交 l lから吸収塔 9への直接リサイク ルは実施しな力つた。加熱脱気槽 12では内温を 70°Cとするように加熱用蒸気流量を 調整し、冷媒として水道水を用いた付帯する凝縮器 20で還流を行 1ゝ未反応イソプチ レンの一部を脱気回収した。脱気後の付加反応生成液をさらに減圧脱気槽 13に導 き、内温を 70°Cとするように加熱用蒸気流量を調整し、冷媒として水道水を用いた付 帯する凝縮器 21で還流を行 、、さらに内圧を 80mmHg (1 lkPa)とするようにブロア
22のリーク弁を調整して未反応イソプチレンの脱気回収を行った。加熱脱気槽 12及 び減圧脱気槽 13で回収したイソブチレンガスは、コンデンサー 2の入口へとリサイク ルを行った。
[0084] その結果、ほぼ全量のイソブチレンが吸収塔で回収され、供給 t ブチルアルコー ル基準のメタクリル酸 t—ブチル収率は 96. 0%に達した。
産業上の利用可能性
[0085] (メタ)アクリル酸 t—ブチルは、化学品原料など工業的に広く用いられる。