キトサン複合体
技術分野
[0001] 本発明は、シアル酸、又はシアル酸を含む糖鎖(以下、これらをまとめてシアル酸 等という。)とキトサンとが直接共有結合した複合体、その製造方法、及び当該複合 体を含有してなるウィルス捕捉剤に関する。また、本発明は本発明のウィルス捕捉剤 を含有してなる繊維製品に関する。さら〖こ、本発明は、本発明のキトサン複合体を含 有してなる医薬組成物、食品組成物、及び飼料組成物に関する。
背景技術
[0002] シアル酸は、狭義には N—ァセチルノイラミン酸 (Neu5Ac)、 N—グリコリルノィラミ ン酸 (Neu5Gc)などノィラミン酸のァシル誘導体の酸性糖の総称である。さらに、シ アル酸のデァミノ化物、ァセチル化物、硫酸化物、メチル化物、ラクチルイ匕物あるい はラタトン形成体などのシアル酸の誘導体も自然界に多種存在しており、また人工的 にも多くのシアル酸誘導体が合成されており、広義にはこれらのシアル酸の誘導体も シアル酸に含まれる。したがって、本明細書に於いては、シアル酸とは狭義のシアル 酸だけでなくこれらのシアル酸の誘導体も含むものと解される。
[0003] これらのシアル酸は、糖蛋白、ダルコサミノダリカン、糖脂質の糖鎖非還元末端に結 合し、陰性荷電の発現に寄与するとともに、生体の細胞表面に分布し、糖タンパク、 糖脂質の糖鎖を構成する糖として重要な生物学的機能を担っている。例えば、癌細 胞の転移、炎症作用、神経細胞の進展などに関与する糖鎖の先端には、多くの場合 シアル酸が存在して 、ることが報告されて 、る。
[0004] また、インフルエンザウイルスを代表とする幾つかのウィルスの感染は、先端にシァ ル酸が存在する標的細胞表面の複合糖質糖鎖 (レセプター)をウィルス側の特定分 子 (リガンド)が認識して、特異的な吸着を起こすことにより進行する。例えば、ある種 のインフルエンザウイルスは、その外膜にシァリダーゼと赤血球凝集素を有しており、 3,シァリルラタトサミン(N -ァセチルノイラミン酸 α 2→3— D—ガラクトース β 1→4 -Ν-ァセチル -D-ダルコサミン)で表される 3糖構造を認識し、感染する。
[0005] このウィルスによるシアル酸を含んだ複合糖鎖の認識能を利用して、シアル酸を適 当な高分子に固定した構造力もなる、ウィルス除去フィルターの開発が進められてい る。例えば、シアル酸とスチレンあるいはアクリルアミドとを結合させたウィルス捕捉体 (特許文献 1)、またリンカ一分子を介してシアル酸をキトサンに結合させた複合体 (特 許文献 2、非特許文献 1、非特許文献 2)などが報告されている。例えば、ホルミル基 を有するァグリコン部分を含有するァスパラギン結合型糖蛋白質糖鎖をキトサンのァ ミノ基に結合させたァスパラギン結合型糖蛋白質糖鎖含有キトサンが報告されている (特許文献 2参照)。これらのキトサン誘導体においては、キトサン自体が抗菌性物質 であることに加え、複合体を構成する成分が何れも天然素材であることから、環境汚 染のおそれがな 、と 、う利点も有して 、る。
[0006] しかし、これらは 、ずれも、実質上精製されたシアル酸等を用いて調製されるため に製造コスト的に不利である他、捕捉可能なウィルスの範囲が狭ぐ特定のウィルスし か効率的に捕捉する事ができないのが現状である。また、リンカ一分子を介したシァ ル酸とキトサンとの複合体は、リンカ一を介して両成分を結合させる操作それ自体が 煩雑であり、操作性ならびに製造コストの面で不利である。
[0007] 特許文献 1 :特開平 9 234317号公報
特許文献 2:特開 2003 - 301002号公報
非特許文献 1 :フルィケら、ジャーナル'ォブ'ケミカル'ソサイエティ、 2000年、第 1卷 、第 3000 第 3005頁
非特許文献 2 :ォータら、 Angew. Chem. Int. , 2003年、第 42卷、第 5186 第 5 189頁
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0008] 本発明は上記した従来の問題点を解決して、より多種類のウィルスを捕捉すること のできる、より簡便に調製可能なウィルス捕捉体を提供するものである。
課題を解決するための手段
[0009] 本発明は、シアル酸等、特に天然素材である乳、特にゥシの乳、より好ましくはゥシ の初乳由来の、シァリルラタトースを含む種々の構造を有するシアル酸等とキトサンと
をリンカ一を介さずに直接結合させることで、上記の課題を解決するものである。
[0010] すなわち本発明は、シアル酸、又はシアル酸を含む糖鎖(以下、シアル酸等という。
)の還元末端 (還元性の末端)がキトサンのァミノ基に還元縮合してなるキトサン複合 体に関する。特に、シアル酸等がシァリルオリゴ糖、好ましくはシァリルラタトース、より 具体的には乳もしくはその加工物由来のシアル酸等、特にゥシの乳に由来するシァ ル酸等とキトサンとの複合体に関する。また、本発明は、前記キトサン複合体を原料と するフィルター、マスクなどのウィルス捕捉体として有用なウィルス捕捉剤を提供する 。本発明は、前記した本発明のキトサン複合体、及びウィルス捕捉用担体を含有して なるウィルス捕捉用組成物に関する。
また本発明は、シアル酸、又はシアル酸を含む糖鎖と、キトサンとを還元条件下で 反応さることからなるシアル酸、又はシアル酸を含む糖鎖とキトサンが直接結合したキ トサン複合体を製造する方法に関する。
さらに本発明は、前記した本発明のキトサン複合体を含有してなるウィルス捕捉剤 を含有してなる繊維製品に関する。
また、本発明は、本発明のキトサン複合体を含有してなる抗ウィルス剤又はウィルス 捕捉剤として有用な医薬組成物、食品組成物、及び飼料組成物に関する。より詳細 には、本発明は、本発明のキトサン複合体を含有してなる医療用の抗ウィルス剤又は ウィルス捕捉剤、食品添加剤、及び飼料添加剤に関する。
さらに、本発明は、前記してきた本発明のキトサン複合体を用いたウィルスの不活 方法又はウィルスの捕捉方法に関する。また本発明は、ウィルスの不活ィ匕又はウィル スを捕捉するための、前記してきた本発明のキトサン複合体の使用に関する。
さらに、本発明は、抗ウィルス剤又はウィルス捕捉剤としての医薬製剤の製造のた めの本発明のキトサン複合体の使用に関する。
[0011] より詳細には、本発明は、次の(1)〜(16)のとおりである。
(1)シアル酸、又はシアル酸を含む糖鎖の還元末端が、キトサンのァミノ基に還元縮 合してなるキトサン複合体。
(2)シアル酸、又はシアル酸を含む糖鎖力 シァリルオリゴ糖である前記(1)に記載 のキトサン複合体。
(3)シアル酸、又はシアル酸を含む糖鎖力 シァリルラタトースである前記(1)に記載 のキトサン複合体。
(4)シアル酸、又はシアル酸を含む糖鎖力 乳又はその加工物に由来するものであ る前記(1)〜 (4)の 、ずれかに記載のキトサン複合体。
(5)乳が、ゥシの乳である前記 (4)に記載のキトサン複合体。
(6)ゥシの乳が、初乳である前記(5)に記載のキトサン複合体。
(7)シアル酸、又はシアル酸を含む糖鎖と、キトサンとを還元条件下で反応さることか らなるシアル酸、又はシアル酸を含む糖鎖とキトサンが直接結合したキトサン複合体 を製造する方法。
(8)シアル酸、又はシアル酸を含む糖鎖力 これらの混合物である前記(7)に記載の 方法。
(9)シァリルオリゴ糖又はその混合物力 乳由来のものである前記(8)に記載の方法
(10)乳力 ゥシの乳又はその加工品である前記(9)に記載の方法。
(11)還元条件下の反応が、金属水素化物の存在下の反応である前記(7)〜(10) のいずれかに記載の方法。
(12)前記(1)〜(6)のいずれかに記載のキトサン複合体を含有してなるウィルス捕 捉剤。
(13)キトサン複合体が、シアル酸、又はシアル酸を含む糖鎖の混合物を含有するも のである前記(12)に記載のウィルス捕捉剤。
(14)前記(12)又は(13)に記載のウィルス捕捉剤を含有してなる繊維製品。
(15)繊維製品が、フィルター若しくはマスク、又はそれらの加工原料である前記(14 )に記載の繊維製品。
(16)前記(1)〜(6)のいずれかに記載のキトサン複合体、及びウィルス捕捉用担体 を含有してなるウィルス捕捉用組成物。
(17)前記(1)〜 (6)の ヽずれかに記載のキトサン複合体、及び製薬上許容される担 体を含有してなる医薬組成物。
(18)医薬組成物が、抗ウィルス剤又はウィルス捕捉剤である前記(17)に記載の医
薬組成物。
(19)前記(1)〜 (6)の ヽずれかに記載のキトサン複合体、及び食品製造上許容され る担体を含有してなる食品組成物。
(20)食品組成物が、抗ウィルス作用又はウィルス捕捉作用を有するものである前記( 19)に記載の食品組成物。
(21)食品組成物が、サプリメントである前記(19)又は(20)に記載の食品組成物。
(22)前記(1)〜(6)の ヽずれかに記載のキトサン複合体を含有してなる食品添加剤
(23)食品添加剤が、抗ウィルス剤又はウィルス捕捉剤としての作用を有するものであ る前記(22)に記載の食品添加剤。
(24)前記(1)〜(6)の 、ずれかに記載のキトサン複合体、及び飼料用担体を含有し てなる飼料組成物。
(25)飼料組成物が、抗ウィルス剤又はウィルス捕捉剤である前記(24)に記載の飼 料組成物。
(26)前記(1)〜(6)の 、ずれかに記載のキトサン複合体を含有してなる飼料添加剤
(27)飼料添加剤が、抗ウィルス剤又はウィルス捕捉剤としての作用を有するものであ る前記(26)に記載の飼料添加剤。
本発明は、シアル酸を含有し、かつケト基、アルデヒド基、それらのケタール、ァセタ ール、へミケタール、へミアセタールなどのカルボ-ル基又はその誘導体基を含有し てなる糖、糖類、又はそれらのオリゴマー類を用いて、これらのカルボニル基又はそ の誘導体基をキトサンのァミノ基と還元的に反応させて両者が直接結合した複合体 を形成させることを特徴とするものである。
本発明における「シアル酸」としては、ノィラミン酸のァシル誘導体としてのシアル酸 だけでなぐそれらの各種の誘導体を包含するものであり、例えば、デァミノ化物、ァ セチル化物、硫酸化物、メチル化物、ラクチル化物、これらのラタトン形成体などのノ イラミン酸の誘導体が包含される。また、本発明のシアル酸等としては、前記したシァ ル酸の 1種又は 2種以上を含有する糖類であって、前記したカルボ-ル基又はその
誘導体基を含有する単糖類、二糖類、若しくはオリゴ糖類、又はこれらの糖誘導体な どが挙げられる。好ましいシアル酸等としては、還元性末端を有する糖類、例えばシ ァリルオリゴ糖が挙げられる。シァリルオリゴ糖のなかでも、天然界に多量に分布して いるシァリルラタトースカ ウィルスの捕捉性や反応性だけでなぐ入手のしゃすさか らも特に好ましいが、これらに限定されるものではない。本発明のシアル酸等は、化 学的に純粋な単一物質として使用してもよいが、入手の容易性や価格の点から、天 然から分離された濃縮物としての混合物を使用することもできる。このようなシアル酸 等の混合物を使用することにより、多種類のウィルスを同時に捕捉することが可能とな ることから、本発明のウィルス捕捉体として有用なウィルス捕捉剤が、特定のウィルス を標的としない場合には、天然界特に、乳、より好ましくはゥシの乳力 得られるシァ リルラタトースに代表されるシアル酸等の混合物を、本発明のシアル酸等として使用 することが好ましい。
[0014] 本発明のキトサン複合体は、シアル酸等の還元性官能基、好ましくは還元性末端と キトサン中のアミノ基とを直接反応させて生成させるものである。具体的には、ャルパ - (Yalpani)らの方法(M. Yalpaniと Laurance D. Hall, Macromolecules, 第 17卷、 2 72— 281頁、 1984年)に準じて、酢酸 Zメタノールなどのキトサンを溶解することの できる適当な溶媒にキトサンを溶解し、 NaCNBHなどの還元剤の存在下で、シアル
3
酸等を加え、キトサンのァミノ基と糖鎖中のカルボ-ル基と反応させ、還元的アルキ ル化を行うことで、所望のキトサン複合体を得る。
[0015] ここで、キトサンとシアル酸等との複合体は、キトサンとシアル酸、ある 、はキトサンと シアル酸を含む糖鎖とから、それぞれ調製することもできるが、シアル酸等を含む混 合物とキトサンを反応させて調製することが望ましい。力かる混合物としては、乳、又 は動物、例えばゥシの乳、特にゥシの初乳由来のシァリルラタトースを代表とするシァ ル酸等を使用することが望まし 、。
[0016] 乳にはラタトースなど中性糖鎖の他、遊離シアル酸ゃシアル酸が結合したシァリル ラタトースなどシアル酸を含む糖鎖、特にゥシの初乳には糖含有量の 5〜10%に相 当する量のシアル酸等が含まれており、かつそれらは多種多様な構造を有している( Robert G. Jensenと Marvin P. Thompson編、 Handoook of Milk Composition^ 1995
年、 Academic Press刊、 ISBN:0123844304。浦島 匡、乳業技術、 53卷 56— 68項、 2 00 d年。 Paul MacJ arrowと Janneke van Amelsfort- ¾choonbeek、 International Dairy J ournal, 14卷 571— 579項、 2004年)。
一般に、ウィルスは、その種類によって認識し結合するシアル酸を含む糖鎖構造を 異にすることが知られていることから、多種多様な構造を有する乳、好ましくはゥシの 乳由来のシアル酸等を使用してウィルスの捕捉体を調製することによって、より多くの 種類のウィルスを捕捉することが可能となる。ゥシの乳由来のシアル酸等以外にも、ヒ トの初乳を含む種々の起源カゝら精製したそれぞれ異なる構造を有する複数種のシァ ル酸等を用いても、本発明のキトサン複合体を調製することができるが、入手の容易 さあるいは精製操作等を考慮すれば、ゥシの乳、好ましくはゥシの初乳中のシアル酸 等の利用が好適である。ゥシ常乳 (牛乳)中にもゥシの初乳に比べて含有量は少ない もののシアル酸等は含まれ、ゥシ初乳より入手が容易であることから牛乳中のシアル 酸等の利用も好適である。ゥシ初乳及び牛乳は生乳としての他、バター、チーズ、調 整乳、加工乳、粉乳、脱脂粉乳、ゥシ初乳タンパク質等加工して食品、健康食品、動 物医薬品等として利用される。これら既存商品の加工製造工程において生じる、商 品の他チーズホエーなど副産物も含めた加工物にはシアル酸等が精製若しくは濃 縮された状態となる物があり、これらも本発明のシアル酸等の原料として好適である。 この様にして調製された本発明のキトサン複合体は、後述する実施例 5及び 6の試 験例からも明らかなように、シアル酸等が単独で存在する場合に比べて、本発明の 方法に従ってキトサンとの複合体とすることにより極めて強力なウィルス抑制作用を発 揮する。特に近年話題となっているトリインフルエンザウイルス H5N1をはじめヒトイン フルェンザウィルスなどに対する抗ウィルス作用は、キトサン複合体とすることにより、 シアル酸等が単独での場合に比べて極めて強力となっている。この理由は現在のと ころ必ずしも明確ではないが、シアル酸等とキトサンが直接ィ匕学結合することにより、 ウィルスを捕捉し、これを不活化するために極めて有利な 3次元構造が形成されて ヽ るためと考えられる。
このように、本発明のキトサン複合体は、これを単独でウィルスを捕捉するためのゥ ィルス捕捉体として有用なウィルス捕捉剤とすることもできるが、各種の担体と混合し
てウィルス捕捉体として有用なウィルス捕捉用組成物とすることもできる。本発明のゥ ィルス捕捉剤は、本発明のキトサン複合体単独力もなるもの、及び前記したように水 などの溶剤のような担体と混合又は溶解させてなるウィルス捕捉用組成物を包含する ものである。本発明のウィルス捕捉用担体としては、ウィルスの不活ィ匕又はウィルスの 捕捉において障害とならないものであれば特に制限はなぐ例えば水などの溶媒、繊 維材料、セルロースなどの製剤材料などが挙げられる。
また、本発明は本発明のウィルス捕捉剤を含有してなる繊維製品を提供するもので ある。本発明の繊維製品は、本発明のウィルス捕捉剤を物理的又は化学的な方法に より繊維材料に含有させたものであればよぐ例えば、本発明のキトサン複合体を不 織布などに噴霧や含浸させる、繊維に練り込むなどの方法により製造することができ る。本発明の繊維製品としては、例えば、フィルター、マスク、タオル、ハンカチ、又は これらの加工原料としての繊維製品などが挙げられる。本発明のウィルス捕捉剤は、 繊維材料などの各種の材料に含有させることにより、各種の製品のウィルス捕捉体と して使用することができる。
さらに、本発明のキトサン複合体は、水又は適当な溶媒と混合又は溶解して、本発 明のウィルス捕捉剤としてのウィルス捕捉用組成物の形態で、空気清浄用フィルター 、マスクなどの各種の繊維製品だけでなぐ医療施設、医療設備、備品、用具、用品 などや、ウィルスの汚染に晒される家畜類、その畜舎などに塗付、噴霧あるいは混入 等することによって、これらを介したウィルスの感染を予防材料として使用することも可 能である。
[0018] さらには、本発明のキトサン複合体は、これを構成する成分が何れも天然物由来で あり、かつヒトゃ家畜等に対して非毒性であることから、本発明のウィルス捕捉剤は環 境にもやさしぐ家庭用あるいは家畜舎、特に養鶏場用の洗浄剤、あるいはウィルス 防除剤として利用することもできる。また、植物病原性ウィルスの防除を目的とした農 薬に利用することも可能である。
[0019] 本発明のキトサン複合体は抗ウィルス活性又はウィルス捕捉活性を有することから、 当該複合体を有効成分として、製薬上許容される担体を含有する医薬組成物、特に 抗ウィルス剤又はウィルス捕捉剤として利用することができる。特に、ヒト、トリなどの動
物における抗インフルエンザウイルス剤として利用することができる。本発明の医薬組 成物、特に抗ウィルス剤としての医薬組成物は、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、 丸剤、液剤等として経口的に、または注射剤、坐剤、経皮吸収剤、吸入剤、鼻スプレ 一、洗眼剤、粘膜及び表皮の消毒剤及び洗浄剤等として非経口的に投与することが できる。また、本発明の医薬組成物は、賦形剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、滑沢剤等 の医薬用添加剤を必要に応じて混合し、医薬製剤とすることができる。注射剤の場合 には、適当な担体と共に滅菌処理を行って製剤とする。投与量は疾患の状態、投与 ルート、患者の年齢、又は体重によっても異なるが、成人に経口で投与する場合、通 常 lmgZkgZ日〜10gZkgZ日、好ましくは lOmgZkgZ日〜lgZkgZ日である 。また、うがい薬およびうがい薬、鼻スプレー、洗眼剤、表皮消毒剤等への添加剤とし て、ウィルス、特にインフルエンザウイルスに対する予防や治療のために利用すること ちでさる。
本発明のキトサン複合体は、抗ウィルス活性又はウィルス捕捉活性を有し、これを構 成する成分が何れも天然物由来であり、かつヒトゃ家畜等に対して非毒性であること から、ヒト用、ペット用、家畜用、魚類用、または猛禽類用の食品組成物、食品添加剤 、及び飼料組成物とすることができる。
本発明の食品組成物は、本発明のキトサン複合体、及び食品用の担体、又は食品 製造上許容される担体を含有してなるものである。本発明の食品用担体、又は食品 製造上許容される担体としては、食品用として使用されてきている天然又は非天然の 食品用の各種の材料又は素材などが挙げられる。本発明の食品組成物は、前記し てきた本発明のキトサン複合体を単独で使用することもできる。また、本発明のキトサ ン複合体は、これを単独又は適当な食品用担体と共に食品添加剤として使用するこ とちでさる。
さらに、本発明の食品組成物は、適当な剤型に製剤化してサプリメントとして利用す ることができる。好ましくは、ヒト、ブタ、トリ(特に-ヮトリ)、観賞魚へ利用することがで きる。サプリメント(食物サプリメント)は、ゲル、カプセル、タブレット、シロップ、飲料又 は粉末に処方することができる。そのような製剤の製造方法は、当業者に周知である 。他の態様においては、サプリメントは、更に、ビタミン、ミネラル、補酵素、繊維又は
その組合わせ力もなる群より選ばれた追加の添加剤を含むことができる。ビタミンは、 ビタミン A、ビタミン D、ビタミン E、ビタミン B12、リボフラビン、ナイァシン、パントテン 酸、チアミン、コリン、葉酸、ピオチン、ビタミン K、ビタミン C、又は CoQIOからなる群 より選ぶことができる。ミネラルは、コバルト、銅、鉄、マンガン、亜鉛、セレン、ドロマイ ト、カルシウム、ミネラル酵母、海藻粉末、モリブデン、マグネシウム、カリウム、クロム、 カルシウムおよびリンより選ぶことができる。サプリメント中の各ビタミンおよび各ミネラ ルの量は、当業者によって適切に設定され得る。本発明のサプリメントは、任意の剤 形であり得る。本発明のサプリメントが採り得る剤形の例としては、錠剤、顆粒剤、液 剤、カプセル剤、散剤、乳剤および懸濁剤が挙げられる。本発明のサプリメントは好 ましくは錠剤またはカプセル剤であり、より好ましくはカプセル剤である。本発明のサ プリメントは、その剤形に応じて、当該分野で周知の方法に従って製造され得る。例 えば、本発明のサプリメントがカプセル剤である場合、成分を液状、懸濁状、のり状、 粉末状または顆粒状などの形でカプセルに充填する力またはカプセル基材で被包 成型することによって製造され得る。カプセル剤は、硬カプセル剤であっても軟カプ セル剤であってもよい。本発明のサプリメントが錠剤である場合、従来の錠剤製造に 用いられている手法および設備をそのまま利用して製造することができる。例えば、 主成分と添加剤などとを混合して直接打錠する方法、成分を湿式または乾式で顆粒 化した後に打錠する方法などが採用できる。本発明のサプリメントが液剤である場合 、従来の液剤製造に用いられている手法および設備をそのまま利用して製造するこ とができる。例えば、液体状の成分をそのまま用いる力 または成分を溶剤に溶解す ることによって製造し得る。本発明のサプリメントが散剤である場合、成分をそのまま、 または成分に賦形剤、結合剤、崩壊剤または他の適切な添加剤を加え、適切な方法 で粉末または微粒状とすることによって製造され得る。本発明のサプリメントが乳剤で ある場合、固形の成分に懸濁化剤または他の適切な添加剤と精製水または油を加え 、適切な方法で懸濁して全質を均等にすることによって製造され得る。本発明のサブ リメントが懸濁剤である場合、液状の成分に乳化剤と精製水を加え、適切な方法で乳 化し、全質を均等にすることによって製造され得る。本発明のサプリメントがこれら以 外の形態であっても、当業者は、当該分野で公知の方法に従って適切な形態のサブ
リメントを製造し得る。サプリメントの摂取量は、摂取ルート、患者の年齢、または体重 によっても異なる力 成人に経口で投与する場合、通常 lmgZkgZ日〜 lOgZkg /日、好ましくは lOmgZkgZ日〜lgZkgZ日である。
[0021] 本発明のキトサン複合体は、抗ウィルス活性又はウィルス捕捉活性を有し、これを構 成する成分が何れも天然物由来であり、かつヒトゃ家畜等の動物に対して非毒性で あることから、ペットまたは家畜用の飼料に配合することができる(前記サプリメントを 飼料に配合してもよい)。したがって、本発明は、本発明のキトサン複合体、及び飼料 用担体又は飼料製造上許容される担体を含有してなる飼料組成物を提供するもの である。また、本発明の飼料組成物は、本発明のキトサン複合体を単独又は前記し た飼料用の担体と共に飼料添加剤として使用することもできる。本発明の飼料組成 物や飼料添加剤は、前記してきた食品のサプリメントなどと同様な方法で製造し、使 用することができる。本発明の飼料組成物は、通常用いられているペットまたは家畜 用飼料を用いることがでる。これら飼料組成物は、トウモロコシ、コムギ、ォォムギ、ダ ィズなどの穀物、コーンサイレージ、グラスサイレージ、アルフアルファサイレージ、乾 草サイレージ等を含んでいてもよい。本発明の飼料は、当該分野で周知の方法に従 つて製造され得る。
発明の効果
[0022] 本発明のキトサン複合体は、簡便かつ安価に製造することができるとともに、多種類 のウィルスを効率よく捕捉することができる。また、天然物由来の原料からなる本発明 のキトサン複合体は、環境ならびに人体等に対して安全であり、幅広い適用範囲を 有する。
発明を実施するための最良の形態
[0023] 本発明で使用可能なキトサンとしては、食品素材や試薬などとして販売されている キトサン、あるいは従来公知の種々の方法によって天然資源力 調製されるキトサン などを含め、広く一般に入手可能であるものをそのまま使用することができ、その由 来等に格別の制限はない。
[0024] 本発明で使用可能なシアル酸等としては、シァリルラタトース、シァリルラタトサミン、 N—ァセチルノイラミン酸、 N—グリコリルノィラミン酸、デァミノノィラミン酸、それらの
ァセチル化物、硫酸化物、メチル化物、デォキシ体、デヒドロ体、ラクチルイ匕物あるい はラタトン体など、シアル酸を含み、その還元末端などにカルボ二ル基を含む糖ィ匕合 物を挙げることができる。これらは単独でも使用できる力 2以上のシアル酸等の混合 物の使用が好ましぐ乳、例えばゥシの乳、特にゥシの初乳又は牛乳由来のシアル 酸等の使用が好ましい。
[0025] キトサンとシアル酸等との反応は、ャルバ- (Yalpani)らの方法(M. Yalpaniと Laura nce D. Hall, Macromolecules, 第 17卷、 272— 281頁、 1984年)に準じて行うこと ができる。ここで、キトサンを溶解する溶媒としては、酢酸などの酸性溶媒またはそれ らと有機溶媒との混合液などが使用される。また、還元剤としては、シァノトリヒドロホウ 酸ナトリウム(NaCNBH )、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH )、水素化ホウ素リチウム
3 4
(LiBH )、水素化ホウ素カリウム(KBH )、ボランジメチルアミン錯体(DMAB、 (CH
4 4
) NH - BH )、ボラントリメチルアミン錯体 (TMAB、 (CH ) Ν · ΒΗ )、 Β—イソピノ
3 2 3 3 3 3
カンフエ-ノレ一 9—ボロビシクロ [3, 3, 1]ノナン (B- isopinocampheny卜 9- borabicyclo [3.3.1] nonane) (Aldrich社、商標名 Alpine-Borane)、又は、 B—クロロジイソピノカン フエニノレホブン (B-chlorodiisopinocamphenylborane) (Aldrich社、商標名 DIP— chlorid e)などを、いずれも利用することができる。
[0026] 以下、実施例を示して、本発明をさらに説明する。
実施例 1
[0027] キトサン (PSH— 80、焼津水産化学工業株式会社) 5. 6mgを、 0. 7mlの 1%酢酸 Zメタノール(1: 1)に溶解した。これに、シァリルラタトース(Sigma社) 25mg、及び Na CNBH 12. 4mgを予め溶解した水溶液 0. 5mlをカ卩え、 25°Cで、 48時間反応させ
3
た。反応液を透析チューブ (透過分子量約 14, 000)に移し、蒸留水に対して透析( 2回交換 Z日)を 5日間行い、最終液を凍結乾燥して、シァリルラタトース 'キトサン複 合体 15. 7mgを得た。構造は、 — NMR (D 0、 Bruker社、 500MHz)により確認
2
を行った。
'H - NMR CD 0、 500MHZ) δ
2 :
4.556(1Η, d, J=7.8Hz, H— 1 of Gal in SiaLac),
4.01—3.47 (27.6H, H— 3, 4, 5, 6 of biaLac side chain and chitosan main
chain, H- 2 of chitosan main chain GlcNAc and SiaLac side chain), 2.85 (1.36H, br, H— 2 of chitosan main chain GlcN and substituted GlcN), 2.63 (1H, dd, H— 3eq of Sia), 1.94 (3.69H, m, COCH ),
3
1.66 (1H, t, H— 3ax of Sia)。
[0028] この1 H—NMR ^ベクトルの 1. 66付近のシアル酸 3位由来のピークと 2. 85付近の キトサンダルコサミン由来のピークの積分値から、キトサンのダルコサミン残基に対し て、シァリルラタトースが 73. 5%の割合でキトサン主鎖に導入されたことが判明され た (ダルコサミン残基に対する置換度 (DS) = 73. 5%)。
実施例 2
[0029] 北海道上川郡清水町の牧場より回収したゥシの初乳 800mlに、 800mlのクロロホ ルムを加えて攪拌して脱脂した。これを 2回繰り返して水相画分を回収後、エタノー ルを加えて 80%エタノール溶液とし、沈殿する蛋白質を遠心分離で除去して上清を 回収し、さらにこれを凍結乾燥して初乳の糖鎖画分 16. 4gを得た。得られた初乳の 糖鎖画分を質量分析器(MALDI— TOF MS, UltraFLEX, Bruker Daltonics社) により解析したところ、ラタトース(Lac, Gal β l→4Glc)、 6, SLN (Sia a 2→6Gal β l→4GlcNac)、 6, SL (Sia a 2→6Gal β l→4Glc)又は 3, SL (Sia a 2→3Gal β l→4Glc)、及び DSL (Sia a 2→8Sia a 2→3Gal β l→4Glc)に相当する質量ス ベクトルが確認された。
MALDI -TOF MS [M + Na] + :
Lac (C H O )として、 計算値: 365. 1、
12 22 11
実測値: 364. 8 ;
6 ' SLX«3 ' SL (C H NO )として、 計算値: 656. 2、
23 39 19
実測値: 656. 0 ;
6 ' SLN (C H N O )として、 計算値: 697. 2、
25 42 2 19
実測値: 698. 0 :
DSL (C H N O )として、 計算値: 963. 8、
34 56 2 28
実測値: 963. 1。
[0030] 続いて、キトサン(PSH— 80、焼津水産化学工業株式会社) 319mgを 30mlの 1 %
酢酸 Zメタノール(1: 1)に溶解し、これに、前記で得られた 770mgの初乳の糖鎖画 分を加え、この混合物に 706mgの NaCNBHを予め溶解した水溶液 10mlを加え、
3
25°Cで、 48時間反応させた。反応液を透析チューブ (透過分子量約 14, 000)に移 し、蒸留水に対して透析 (2回交換 Z日)を 5日間行い、最終液を凍結乾燥して、初 乳の糖鎖—キトサン複合体 47 lmgを得た。構造は、 — NMR (D 0、 Bruker社、 5
2
00MHz)により確認を行った。
— NMR (D 0、 Bruker社、 500MHz) δ:
2
4.45(1Η, d, J=7.2Hz, H— 1 of Gal in Lac),
4.07-3.48 (7.49H, H- 3, 4, 5, 6 of Lac side chain and chitosan main chain, H- 2 of chitosan main chain GlcNAc and Lac side chain),
2.72 (0.71H, br, H— 2 of chitosan main chain ulcN and substituted GlcN), 1.95 (0.61H, s, COCH )0
3
[0031] この初乳の糖鎖—キトサン複合体の1 H— NMR ^ベクトルから、キトサンのダルコサ ミン残基に対する糖類の置換度 (DS)は約 100%と算定され、ラタトース構造は確認 されたがシアル酸及びシアル酸を含む糖鎖の明確なピークは NMRでは確認するこ とができな力つた。そこで、酵素法で初乳糖鎖'キトサン複合体中のシアル酸の定量 を行った。シァリダーゼ (Sigma社)でシアル酸をキトサン複合体力も切り出し、さらにァ ルドラーゼ(Sigma社)で処理して生成させたピルビン酸を、 NADHを用いたラタトー スデヒドロゲナーゼ反応系を用い、 340nmの吸光度変化として定量した。
[0032] その結果、複合体中に、キトサンのダルコサミン残基 60個に対して約 1個のシアル 酸又はシアル酸を含む糖鎖が結合して ヽることが確認された (ダルコサミン残基に対 するシアル酸及びシアル酸を含む糖鎖の置換度 (DS) =約 1. 6%)。確認された置 換度は 1. 6%であるが、これは酵素によりシアル酸を遊離させているため、実際には この数倍のシアル酸及びシアル酸を含む糖鎖が結合していると考えられる。
実施例 3
[0033] 実施例 2で調製した初乳力ゝらの糖鎖画分 20mgを、水を溶媒としてゲル濾過(BioGe 1 P-4、 Biorad社)を行い、シアル酸及びシアル酸を含む酸性糖鎖よりなる画分 1 (3. 6mg)とラタトースを主成分とする中性糖鎖画分 2 (16. 4mg)を得た。画分 1中には、
6,SLN、 6' SI^U¾3' SL、及び DSLに相当する質量ピーク力 それぞれ質量分析 (MALDI-TOF MS, UltraFLEX, Bruker Daltonics社)にて確認された。
MALDI-TOF MS [M + Na] + :
画分 1 : 6' SL又は 3' SL
(C H NO )として、計算値: 656. 2、
23 39 19
実測値: 656. 5 ;
6' SLN
(C H N O )として、計算値: 697. 2、
25 42 2 19
実測値: 697. 8 :
DSL
(C H N O )として、計算値: 963. 8,
34 56 2 28
実測値: 963. 8。
画分 2 : Lac
(C H O )として、計算値: 365. 1,
12 22 11
実測値: 365. 1。
続いて、キトサン (PSH— 80、焼津水産化学工業株式会社) 5. 6mgを 0. 7mlの 1 %酢酸 Zメタノール(1: 1)に溶解した。これに、 25mgの画分 1、及び 12. 4mgの Na CNBHを予め溶解した水溶液 10mlをカ卩え、 25°Cで、 24時間反応させた。反応液
3
を透析チューブ (透過分子量約 14, 000)に移し、蒸留水に対して透析 (2回交換 Z 日)を 5日間行い、最終液を凍結乾燥して、シアル酸等 キトサン複合体 19. 3mgを 得た。構造は、 'H-NMR CD 0、 Bruker社、 500MHz)により確認を行った。
2
'H -NMR CD 0、 500MHZ) δ:
2
4.56, 4.44, 4.50 (H-l of Gal residue in Sialooligosaccharide),
4.00-3.49 (25.5H, H- 3, 4, 5, 6 of MaLac side chain and chitosan main chain, H— 2 of chitosan main chain GlcNAc and SiaLac side chain;,
2.85 (1.61H, br, H— 2 of chitosan main chain ulcN and substituted GlcN), 2.65 (1H, dd, H— 3eq of Sia), 1.95 (4.21H, m, COCH ),
3
1.70 (1H, t, H-3ax of Sia)。
[0035] この1 H—NMR ^ベクトルの 1. 70付近のシアル酸の 3位由来のピークと 2. 85付近 のキトサンダルコサミン由来のピークの積分値から、キトサンのダルコサミン残基に対 してシアル酸及びシアル酸を含む糖鎖 (シアル酸等)力 61. 8%の割合でキトサン主 鎖に導入されたことが判明した (ダルコサミン残基に対する置換度 (DS) = 61. 8%) 実施例 4
[0036] 北海道上川郡清水町の牧場より回収した牛乳 200mlに、 200mlのクロ口ホルムを 加えて攪拌して脱脂した。これを 2回繰り返して水相画分を回収後、エタノールをカロ えて 80%エタノール溶液とし、沈殿する蛋白質を遠心分離で除去して上清を回収し 、さらにこれを凍結乾燥して牛乳糖鎖画分 3. 9gを得た。牛乳糖鎖は 95%以上がラ クトース (Lac, Gal β l→4Glc)であるが多様な中性糖鎖ゃシァリル糖鎖を含むこと が知られている(浦島 匡、乳業技術、 53卷 56— 68項、 2003年。 Paul Macjarrowと Janneke van Amelsfort- Schoonbeek、 International Dairy JournaU 14^571— 579 項、 2004年)。今回精製したものが糖鎖類であることは、質量分析 (MALDI— TOF
MS, UltraFLEX, Bruker Daltonics社)及び 1H— NMR解析(Bruker社、 500M Hz)により主成分のラタトースを分析することで確認した。
MALDI-TOF MASS (m/s); [M+Na] + :
Lac (C H O )として、計算値: 365. 1、
12 22 11
実測値: 365. 1。
'H-NMR CD O): δ
2
5.13 (0.4Η, d, J=3.6Hz, α Η— 1 of Glc in Lac),
4.58 (0.6H, d, J=7.9Hz, β H— 1 of Glc in Lac),
4.36 (1H, d, J=8.1Hz, H— 1 of Gal in Lac),
3.86-3.46 (丄丄 .4H, m, Protons of sugar ring),
3.19 (0.6H, t, J=8.2Hz, β H— 2 of Glc in Lac).
[0037] 続いて、キトサン(PSH— 80、焼津水産化学工業株式会社) 407mgを 30mlの 1 % 酢酸 Zメタノール(1: 1)に溶解した。これに lgの牛乳糖鎖画分、及び 994mgの Na CNBHを予め溶解した水溶液 15mlをカ卩え、 25°Cで、 48時間反応させた。反応液
を透析チューブ (透過分子量約 14, 000)に移し、蒸留水に対して透析 (2回交換 Z 日)を 5日間行い、最終液を凍結乾燥して、牛乳糖鎖 キトサン複合体 985mgを得 た。構造は、丄!!— NMR (Bruker社、 500MHz)により確認を行い、ラタトースなど糖 鎖 'キトサン複合体が形成して 、ることを確認した。
'H-NMRCD 0): δ
2
4.45(1H, d, J=7.2Hz, H— 1 of Gal),
4.07-3.48 (7.50H, Protons of sugar ring), 2.98 (0.71H, br, H— 2 of GlcN), 2.77 (2H, br, NCH ), 1.99 (0.65H, s, COCH )。
2 3
[0038] 本複合体中におけるラタトースなど糖鎖残基のダルコサミン残基に対する置換度( DS)は、 H— NMRの測定結果によると 100%である。
実施例 5
[0039] 実施例 3で製造したゥシ初乳からのシアル酸等 キトサン複合体の抗ウィルス活性 を MTT法(Tim Mosmann、 J. Immunol. Methodsゝ 65卷 55— 63項、 1983年)を用い て測定した。実施例 3で製造したゥシ初乳由来シアル酸等 キトサン複合体、及びそ の対照化合物 (化学反応処理をして 、な 、キトサンとゥシ初乳シアル酸等の混合物) を、それぞれエタノールで懸濁後、培地にて 40倍希釈した物について 5倍段階希釈 系列を作製し、試験区として使用した。同時に培地に 2〜5TCID50の WSN (H1N1 )ウィルスと MDBK細胞 20000細胞 Zゥエル播種することにより抗ウィルス活性を測 定した。 37°C、 5%CO環境下にて 72時間インキュベート後、 MTT溶液(5mgZml
2
の 3— (4, 5 ジメチルー 2 チアゾリル)— 2, 5 ジフエ-ルー 2H—テトラゾリゥム ブロマイド(3— (4,5— Dimethy卜 2— thiazolyl)— 2,5— dipheny卜 2H— tetrazolium bromide) (M TT)—PBS溶液) 20 μ 1をカ卩ぇ 2時間インキュベートした。培地を除去後、 ΜΤΤ溶解 液 (イソプロピルアルコールに 100分の 1容量の 40mM 塩酸水溶液、 10分の 1量の トリトン X— 100 (Triton X- 100)を加えたもの)を 200 μ 1添カ卩した。マイクロプレートミ キサ一にて細胞溶解後、マイクロプレートリーダーで 560nmの吸収を測定した。 その結果、ゥシ初乳シアル酸等—キトサン複合体の EC は、 39 μ gZmlであり、対
50
照化合物は 1000 gZml以上と測定され、本発明の複合体による抗ウィルス活性を 確認することができた。
実施例 6
[0040] 実施例 2及び 4で製造したゥシ初乳糖鎖 キトサン複合体及び牛乳糖鎖 キトサン 複合体の抗ウィルス活性をそれぞれ測定した。 MDCK細胞を前培養後、培養液に 溶力した各試料 (糖鎖—キトサン複合体及びその化学合成反応を行っていないもの) とウィルス(ヒト由来 A型インフルエンザウイルス A/Aichi/2/68 (H3N2)又は、高病 原性鳥インフルエンザウイルス A/Chiken/Yamaguchi/7/04 (H5N1) )をカ卩え、 35 °Cにて 48時間培養後、細胞を顕微鏡下で細胞変性効果を観察した。
その結果、 5mg/mlの濃度でゥシ初乳糖鎖 キトサン複合体及び牛乳糖鎖 キト サン複合体はそれぞれ細胞変性抑制効果が認められたが、対照化合物では認めら れなかった。
実施例 7
[0041] 本発明の医薬組成物、サプリメントなどの食品組成物、又は飼料組成物における製 剤化の例を以下に示す。
[0042] 製剤例 1
以下の成分を含有する顆粒剤を製造する。
キトサン複合体 10 mg
乳糖 700 mg
コーンスターチ 274 mg
HPC-L 16 mg
合計 1000 mg
キトサン複合体と乳糖を 60メッシュのふるいに通す。コーンスターチを 120メッシュ のふるいに通す。これらを V型混合機にて混合する。混合末に HPC— L (低粘度ヒド ロキシプロピルセルロース)水溶液を添加し、練合、造粒 (押し出し造粒 孔径 0. 5〜 lmm)したのち、乾燥する。得られた乾燥顆粒を振動ふるい(12Z60メッシュ)で櫛 過し顆粒剤を得る。
[0043] 製剤例 2
以下の成分を含有するカプセル充填用散剤を製造する。
成分 キトサン複合体 10 mg
乳糖 79 mg
コーンスターチ 10 mg
ステアリン酸マグネシウム 1 mg
A斗 100 mg
キトサン複合体、乳糖を 60メッシュのふるいに通す。コーンスターチは 120メッシュ のふるいに通す。これらとステアリン酸マグネシウムを V型混合機にて混合する。 10 倍散 lOOmgを 5号硬ゼラチンカプセルに充填する。
[0044] 製剤例 3
以下の成分を含有するカプセル充填用顆粒剤を製造する。
成分 キトサン複合体 15 mg
乳糖 90 mg
コーンスターチ 42 mg
HPC-L 3 mg
合計 150 mg
キトサン複合体、乳糖を 60メッシュのふるいに通す。コーンスターチを 120メッシュ のふるいに通す。これらを混合し、混合末に HPC— L溶液を添加して練合、造粒、乾 燥する。得られた乾燥顆粒を整粒後、その 150mgを 4号硬ゼラチンカプセルに充填 する。
[0045] 製剤例 4
硬質ゼラチンカプセルは次の成分を用いて製造する:
用量
成分 (mgZカプセル)
キトサン複合体 250
デンプン(乾燥) 200
ステアリン酸マグネシウム 10
合計 460
[0046] 製剤例 5
活性成分 80mgを含むカプセル剤は次のように製造する。
キトサン複合体 80mg
59mg
微結晶性セルロース 59mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
A
O斗 B I 200mg
キトサン複合体、デンプン、セルロース、およびステアリン酸マグネシウムを混合し、 No. 45メッシュ U. S.のふるいに通して硬質ゼラチンカプセルに 200mgずつ充填 する。
製剤例 6
以下の成分を含有する錠剤を製造する。
成分 キトサン複合体 10 mg
乳糖 90 mg
微結晶セルロース 30 mg
CMC-Na 15 mg
ステアリン酸マグネシウム 5 mg
A
O斗 B I 150 mg
キトサン複合体、乳糖、微結晶セルロース、 CMC— Na (カルボキシメチルセルロー ス ナトリウム塩)を 60メッシュのふるいに通し、混合する。混合末にステアリン酸マグ ネシゥム混合し、製錠用混合末を得る。本混合末を直打し、 150mgの錠剤を得る。 製剤例 7
錠剤は下記の成分を用いて製造する:
成分 用量
(mgZ錠剤)
キトサン複合体 250
セルロース (微結晶) 400
二酸ィヒケィ素(ヒューム) 10
ステアリン酸 5
合計 665
成分を混合し、圧縮して各重量 665mgの錠剤にする。
[0049] 製剤例 8
活性成分 60mgを含む錠剤は次のように製造する:
キトサン複合体 60 mg
デンプン 45 mg
微結晶性セルロース 35 mg
ポリビュルピロリドン(水中 10%溶液) 4 mg
ナトリウムカルボキシメチルデンプン 4. 5mg
ステアリン酸マグネシウム 0. 5mg
滑石 1 mg
合計 150 mg
キトサン複合体、デンプン、およびセルロースは No. 45メッシュ U. S.のふるいに かけて、十分に混合する。ポリビュルピロリドンを含む水溶液を得られた粉末と混合し 、ついで混合物を No. 14メッシュ U. S.ふるいに通す。このようにして得た顆粒を 50 °Cで乾燥して No. 18メッシュ U. S.ふるいに通す。あらかじめ No. 60メッシュ U. S. ふるいに通したナトリウムカルボキシメチルデンプン、ステアリン酸マグネシウム、およ び滑石をこの顆粒に加え、混合した後、打錠機で圧縮して各重量 150mgの錠剤を 得る。
産業上の利用可能性
[0050] 本発明は、簡便な方法で天然物由来の原料のみを使用したキトサン複合体を提供 するものであり、本発明のキトサン複合体は、各種のウィルスに対する抗ウィルス活性 、ウィルス捕捉活性を有し、ウィルスの不活化や捕捉するための材料として有用であ る。
本発明のキトサン複合体は、ヒトゃ動物に対して安全であり、環境にもやさしぐしか も低コストであり、ウィルスに対する強い活性を有することから、各種のウィルスに起因 する汚染や疾患の防御や予防のための新規な材料として産業上の利用可能性を有 している。