明 細 書
インフルエンザ菌の検出方法、インフルエンザ菌検出用プライマーセット 及びインフルエンザ菌検出用キット
技術分野
[0001] 本発明はインフルエンザ菌の検出方法に関し、特にインフルエンザ菌の検出方法
、インフルエンザ菌検出用プライマーセット及びインフルエンザ菌検出用キットに関す る。
背景技術
[0002] インフノレエンザ菌 (Haemophilus influenzae,以下「Haemophilus」につ ヽては 「H.」と略記することもある。)は中耳炎、肺炎、髄膜炎、菌血症の原因菌の一つで、 近年様々な耐性菌が出現して問題となっている。
[0003] 従来、インフルエンザ菌を検出するために、培養による選別と生化学的検査が併用 されていたが、培養による選別と生化学的検査の併用した場合には、感染が判明す るまでに 3日以上を要するのにカ卩え、コロニーをその形状や色の相違など力も精確に 選別するためには熟練した技術が必要であり、臨床診断及びその後の処置に支障を きたすおそれがあった。
一方、近年においては、特許文献 1にも示されるように、 PCR (polymerase chain reaction)法を用いた検出方法も採用されて 、る。
[0004] PCR法を用いて検出する場合には、インフルエンザ菌に特徴的な遺伝子を標的と して増幅反応を行うのが一般的であり、このようなインフルエンザ菌に特徴的な遺伝 子として、例えば表層蛋白質である P6蛋白質をコードする P6蛋白遺伝子が知られて いる。し力しながら、 P6蛋白遺伝子を標的とした場合にも、インフルエンザ菌と同一 環境内で共生しかつ遺伝的にも近似したパラインフルエンザ菌(Haemophilus par ainfluenzae,以下「H. parainfluenzaejと略記することもある。)との区別は困難で あった。また、この場合、ハイブリダィゼーシヨン法を併用することにより特異性を高め ることも可能であるが(参照文献 1 :T. Ueyama,他 4名, " High Incidence of H aemophilus influenzae m Nasopharyngeal secretions and Middle Ea
r Effusions as Detected by PCR, Journal of Clinical Microbiology", 1995, July, p. 1835— 1838)、検出するまでに多くの時間や費用を要する。
[0005] また、インフルエンザ菌は、莢膜の相違によって莢膜 a〜f型及び莢膜のな ヽ無莢 膜型が存在し、これらの中でも莢膜 b型インフルエンザ菌(Haemophilus influenz ae Type b、以下、「Hib」と記すこともある。)が、特に小児において髄膜炎、喉頭 蓋炎、菌血症、肺炎等の深刻な病気をもたらす病原の 1つとなっている。このため、 日本以外の先進国を中心に、小児に対して Hibワクチンの接種が行われているもの の、ワクチン接種後に Hib感染症を発症する例が報告されており、感染の早期発見と いう本来の目的に加えて、ワクチン接種後の効果の確認という要請から簡便で感度 に優れた Hib検出方法が求められている。また、 Hibワクチンの接種が行われていな い開発途上国における Hib感染拡大の可能性も報告されており、このような国でも簡 便、迅速に行える Hibの検出方法が求められている。
[0006] しかし、従来から行われて!/、る血清学的型別法は、 Hibによっては特徴的な形質の 発現が抑制されていることがあり、感染を陰性と誤診断したり、非感染を陽性と誤診 断したりしてしまうおそれがあり、あいまいな結果しか提供しな力つた。また、非特許文 献 1に示されるように PCR法に基づき検出する方法もあるが、この方法はコストや手 間、時間を要し、さらにサーマルサイクラ一のような特別な設備が必要なため、設備 の不十分な病院の検査室や、上記のような開発途上国で手軽に実施するがことでき なかった。
[0007] 本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、精確、迅速にインフルエンザ 菌及び莢膜 b型インフルエンザ菌を検出可能なインフルエンザ菌の検出方法、インフ ルェンザ菌検出用プライマーセット及びインフルエンザ菌検出用キットを提供する。 特許文献 1:特開 2000— 342268号公報
非特許文献 l :Falla, T. J. , D. W. Crook, L. N. Brophy, D. Maskell, J. S. K roll, and E. R. Moxon, 1994, PCR for capsular typing of Haemophil us influenzae, J. Clin. Microbiol. , 32 : 2382— 2386
発明の開示
[0008] 上記課題を解決するために、本発明者らは、従来の PCR法による増幅反応よりも
特異'性に優れる LAMP (Loop -mediated isothermal amplification)法に着目 した。これとともに、 LAMP法による核酸増幅に用いる LAMPプライマーの配列に、 インフルエンザ菌に特徴的な P6蛋白遺伝子配列のうち、さらにパラインフルエンザ菌 とも異なる領域を組み込むことで、パラインフルエンザ菌及びその他の菌に対しても 優れた特異性を有するインフルエンザ菌の検出方法を開発することに成功した。
[0009] すなわち、本発明のインフルエンザ菌の検出方法は、 LAMPプライマーセットを用 いた核酸増幅反応による核酸増幅の有無に基づいてインフルエンザ菌を検出する 方法であって、
前記プライマーセットとして、全てのプライマーが、インフルエンザ菌の P6蛋白遺伝 子のうち 90番目より下流塩基領域中の部分塩基配列と同一又は相補的な塩基配列 からなり、かつ、少なくとも 1つのプライマーカ、インフルエンザ菌の P6蛋白遺伝子の うち、 90番目力 183番目、又は、 337番目力 462番目までの非相同領域中の部 分塩基配列と同一又は相補的な塩基配列力もなる LAMPプライマーセットを用いる ことを特徴とする。
[0010] なお、インフルエンザ菌 Rdの P6蛋白遺伝子(GenBankァクセッション番号: NC— 000907)の塩基配列を配列表の配列番号 12に示す。
ここで、プライマーの設定範囲を 90番目より下流塩基領域としたのは、 1〜90番目 の領域は、配列中に、水素結合力の強い GCの含有率が低いため、プライマーの反 応の安定性に劣り、インフルエンザ菌が存在しても検出しない等検出の信頼性に劣 るので、検出に用いるプライマーとして適さない。 90番より下流塩基領域の中でもより 3'末端側の領域が好ましい。
[0011] また、全てのプライマーが、インフルエンザ菌の P6蛋白遺伝子のうち 90番目より下 流塩基領域中の部分塩基配列と同一若しくは実質的に同一な塩基配列、又は、これ らと相補的な塩基配列力もなり、かつ、 90番目から 183番目、又は、 337番目力も 46 2番目までの非相同領域中の部分塩基配列と同一若しくは実質的に同一な塩基配 列、又は、これらと相補的な塩基配列としたのは、この領域力インフルエンザ菌に特 徴的、特にパラインフルエンザと比べてもインフルエンザ菌に特異的な領域であるた めである。なお、これらのうちでも、上記のように 3'末端よりの領域の方が GC含有率
の高 、ことから、 337番目力も 462番目までの非相同領域中の部分塩基配列と同一 又は相補的な塩基配列力もなるプライマーを備えた LAMPプライマーセットを用いる ことが好ましい。
本発明のインフルエンザ菌の検出方法は、前記 LAMPプライマーセットが、以下の (a)〜(r)に示すプライマーを備えた LAMPプライマーセットのいずれかであることを 特徴とする。
(a)配列表の配列番号 1〜4に記載の塩基配列と同一又は実質的に同一な各塩基 配列からなる 4種のプライマー。
(b)上記 (a)に記載の各塩基配列と相補的な各塩基配列力 なる 4種のプライマー。
(c)配列番号 6〜9に記載の塩基配列と同一又は実質的に同一な各塩基配列力 な る 4種のプライマー。
(d)上記 (c)に記載の各塩基配列と相補的な各塩基配列力 なる 4種のプライマー。
(e)配列番号 7〜9及び配列番号 11に記載の塩基配列と同一又は実質的に同一な 各塩基配列からなる 4種のプライマー。
(f)上記 (e)に記載の各塩基配列と相補的な各塩基配列力 なる 4種のプライマー。
(g)配列番号 15〜18に記載の塩基配列と同一又は実質的に同一な各塩基配列か らなる 4種のプライマー。
(h)上記 (g)に記載の各塩基配列と相補的な各塩基配列力 なる 4種のプライマー。
(i)配列番号 20〜23に記載の塩基配列と同一又は実質的に同一な各塩基配列から なる 4種のプライマー。
(j)上記 (i)に記載の各塩基配列と相補的な各塩基配列力 なる 4種のプライマー。 (k)配列番号 24〜27に記載の塩基配列と同一又は実質的に同一な各塩基配列か らなる 4種のプライマー。
(1)上記 (k)に記載の各塩基配列と相補的な各塩基配列力 なる 4種のプライマー。 (m)配列番号 26及び配列番号 28〜30に記載の塩基配列と同一又は実質的に同 一な各塩基配列力 なる 4種のプライマー。
(n)上記 (m)に記載の各塩基配列と相補的な各塩基配列力 なる 4種のプライマー
(o)配列番号 26及び配列番号 30〜32に記載の塩基配列と同一又は実質的に同一 な各塩基配列力 なる 4種のプライマー。
(p)上記 (o)に記載の各塩基配列と相補的な各塩基配列力 なる 4種のプライマー。 (q)配列番号 33〜36に記載の塩基配列と同一又は実質的に同一な各塩基配列か らなる 4種のプライマー。
(r)上記 (q)に記載の各塩基配列と相補的な各塩基配列力 なる 4種のプライマー。
[0013] ここで、実質的に同一な塩基配列力もなるプライマーは、上記所定の配列番号に 記載の塩基配列力 なるプライマーと略同様の反応を行い、略同様の作用効果を発 揮するプライマーであって、例えば、 LAMPプライマーを構成する F3, F2, Fl, B1 c, B2c, B3cなどの各領域 (詳細は後述する。;!の!^蛋白遺伝子における対応位置 力 上記所定の配列番号の塩基配列力 なる LAMPプライマーを構成する各領域と 比べ、次のように変わったものが挙げられる。
1)上記領域の P6蛋白遺伝子における対応位置力 1〜2塩基シフトしたもの(例え ば、 P6蛋白遺伝子の 254番目— 275番目に設定される領域と、 255番目 276番 目に設定される領域の関係)。
2)上記領域の 5'末端及び 3'末端のいずれか一方の P6蛋白遺伝子における対応 位置が、 1〜2塩基伸縮したもの(例えば、 P6蛋白遺伝子における設定位置が 254 番目—275番目に設定される領域と、 255番目—275番目のプライマーに設定され る領域の関係)。
3)上記領域の 5'末端及び 3'末端の双方の P6蛋白遺伝子における対応位置が 1塩 基ずつ異なる方向に向力つて伸びたもの(例えば、 P6蛋白遺伝子における設定位 置が 255番目― 275番目に設定される領域と、 254番目― 276番目に設定される領 域の関係)、又は縮んだもの(例えば、 P6蛋白遺伝子における設定位置が 255番目 275番目に設定される領域と、 256番目 274番目に設定される領域の関係)。
4)上記領域の 1〜2塩基が P6蛋白遺伝子とは異なる塩基に置換され、又は 1〜2塩 基が欠失したものも含まれる。
上述のような LAMPプライマーセットを用いれば、特異性、検出感度に優れる。
[0014] 前記 LAMPプライマーセットは、以下の(s)〜(X)に示すプライマーを備えた L AM
Pプライマーセットのいずれかであることを特徴とする。
(s)請求の範囲第 2項 (a)に記載の 4種のプライマー、及び、配列表の配列番号 5に 記載の塩基配列と同一又は実質的に同一な塩基配列力 なるプライマー。
(t)請求の範囲第 2項 (b)に記載の 4種のプライマー、及び、配列表の配列番号 5に 記載の塩基配列と相補的な塩基配列に同一又は実質的に同一な塩基配列力 なる プライマー。
(u)請求の範囲第 2項 (c)に記載の 4種のプライマー、及び、配列表の配列番号 10 に記載の塩基配列と同一又は実質的に同一な塩基配列力 なるプライマー。
(V)請求の範囲第 2項 (d)に記載の 4種のプライマー、及び、配列表の配列番号 10 に記載の塩基配列と相補的な塩基配列に同一又は実質的に同一な塩基配列力 な るプライマー。
(w)請求の範囲第 2項 (g)に記載の 4種のプライマー、及び、配列表の配列番号 19 に記載の塩基配列と同一又は実質的に同一な塩基配列力 なるプライマー。
(X)請求の範囲第 2項 (h)に記載の 4種のプライマー、及び、配列表の配列番号 19 に記載の塩基配列と相補的な塩基配列に同一又は実質的に同一な塩基配列力 な るプライマー。
[0015] 配列番号 5、 10及び 19に記載の塩基配列と同一又は相補的な塩基配列を有する プライマーはいわゆる Loop primerであり、これを用いることで増幅反応速度がより 迅速になり、迅速にインフルエンザ菌を検出することができる。
本発明のインフルエンザ菌の検出方法は、プライマーセットを用いた核酸増幅反応 による核酸増幅の有無に基づいて莢膜 b型インフルエンザ菌を検出する方法であつ て、前記プライマーセットとして、全てのプライマーが、莢膜 b型インフルエンザ菌の莢 膜遺伝子座第 II領域の 1〜6653番目の領域中の部分塩基配列と同一又は相補的 な塩基配列力もなる LAMPプライマーセットを用いることを特徴とする。
[0016] このように、 Hibに特徴的な莢膜遺伝子座第 II領域を標的とすることで、 Hibを他の 莢膜型及び無莢膜型のインフルエンザ菌と区別して検出することができる。このとき、 6654番目以降の領域を標的とすると、この領域の GC含有率が約 25%と低いため、 Hibに特異的で、安定した反応を行う LAMPプライマーを得ることは困難である。
[0017] 本発明のインフルエンザ菌の検出方法のうち、莢膜 b型インフルエンザ菌を検出す る方法は、前記 LAMPプライマーセットとして、全てのプライマーが、前記莢膜遺伝 子座第 Π領域の 5000番目〜6653番目の領域中の部分塩基配列と同一又は相補 的な塩基配列力もなる LAMPプライマーセットを用いることを特徴とする。
[0018] 本発明のインフルエンザ菌の検出方法のうち、莢膜 b型インフルエンザ菌を検出す る方法は、前記 LAMPプライマーセットが、以下の (A)〜(R)に示すプライマーを備 えた LAMPプライマーセットのいずれかであることを特徴とする。
(A)配列表の配列番号 43〜46に記載の塩基配列と同一又は実質的に同一な各塩 基配列からなる 4種のプライマー。
(B)上記 (A)に記載の各塩基配列と相補的な各塩基配列力 なる 4種のプライマー
(C)配列番号 48〜51に記載の塩基配列と同一又は実質的に同一な各塩基配列か らなる 4種のプライマー。
(D)上記 (C)に記載の各塩基配列と相補的な各塩基配列からなる 4種のプライマー
(E)配列番号 53〜56に記載の塩基配列と同一又は実質的に同一な各塩基配列か らなる 4種のプライマー。
(F)上記 (E)に記載の各塩基配列と相補的な各塩基配列力 なる 4種のプライマー
(G)配列番号 58〜61に記載の塩基配列と同一又は実質的に同一な各塩基配列か らなる 4種のプライマー。
(H)上記 (G)に記載の各塩基配列と相補的な各塩基配列力もなる 4種のプライマー
(I)配列番号 62〜65に記載の塩基配列と同一又は実質的に同一な各塩基配列か らなる 4種のプライマー。
CO上記 (I)に記載の各塩基配列と相補的な各塩基配列力 なる 4種のプライマー。 (Κ)配列番号 67〜70に記載の塩基配列と同一又は実質的に同一な各塩基配列か らなる 4種のプライマー。
(L)上記 (K)に記載の各塩基配列と相補的な各塩基配列力 なる 4種のプライマー
(Μ)配列番号 71〜74に記載の塩基配列と同一又は実質的に同一な各塩基配列か らなる 4種のプライマー。
(Ν)上記 (Μ)に記載の各塩基配列と相補的な各塩基配列からなる 4種のプライマー
(Ο)配列番号 73〜76に記載の塩基配列と同一又は実質的に同一な各塩基配列か らなる 4種のプライマー。
(Ρ)上記 (Ο)に記載の各塩基配列と相補的な各塩基配列力 なる 4種のプライマー
(Q)配列番号 73, 74, 77及び配列番号 78に記載の塩基配列と同一又は実質的に 同一な各塩基配列力 なる 4種のプライマー。
(R)上記 (Q)に記載の各塩基配列と相補的な各塩基配列力もなる 4種のプライマー 本発明のインフルエンザ菌の検出方法のうち、莢膜 b型インフルエンザ菌を検出す る方法は、前記 LAMPプライマーセットが、以下の(S)〜(Z)に示すプライマーを備 えた LAMPプライマーセットのいずれかであることを特徴とする。
(S)請求の範囲第 6項 (A)に記載の 4種のプライマー、及び、配列表の配列番号 47 に記載の塩基配列と同一又は実質的に同一な塩基配列力 なるプライマー。
(T)請求の範囲第 6項 (B)に記載の 4種のプライマー、及び、配列表の配列番号 47 に記載の塩基配列と相補的な塩基配列に同一又は実質的に同一な塩基配列力 な るプライマー。
(U)請求の範囲第 6項 (C)に記載の 4種のプライマー、及び、配列表の配列番号 52 に記載の塩基配列と同一又は実質的に同一な塩基配列力 なるプライマー。
(V)請求の範囲第 6項 (D)に記載の 4種のプライマー、及び、配列表の配列番号 52 に記載の塩基配列と相補的な塩基配列に同一又は実質的に同一な塩基配列力 な るプライマー。
(W)請求の範囲第 6項 (E)に記載の 4種のプライマー、及び、配列表の配列番号 57
に記載の塩基配列と同一又は実質的に同一な塩基配列力 なるプライマー。
(X)請求の範囲第 6項 (F)に記載の 4種のプライマー、及び、配列表の配列番号 57 に記載の塩基配列と相補的な塩基配列に同一又は実質的に同一な塩基配列力 な るプライマー。
(Y)請求の範囲第 6項 (I)に記載の 4種のプライマー、及び、配列表の配列番号 66 に記載の塩基配列と同一又は実質的に同一な塩基配列力 なるプライマー。
(Z)請求の範囲第 6項 (J)に記載の 4種のプライマー、及び、配列表の配列番号 66に 記載の塩基配列と相補的な塩基配列に同一又は実質的に同一な塩基配列力 なる プライマー。
[0020] 本発明のインフルエンザ菌検出用プライマーセットは、請求の範囲第 1項〜第 7項 に記載の LAMPプライマーセットのいずれかであることを特徴とする。
本発明のインフルエンザ菌検出用キットは、請求の範囲第 1項〜第 7項に記載の L AMPプライマーセットを含むことを特徴とする。
図面の簡単な説明
[0021] [図 1]実施例 1の LAMPプライマーセットの P6蛋白遺伝子における対応位置を説明 する図である。
[図 2]実施例 1の LAMPプライマーセットの各プライマーの構成を説明する図である。
[図 3]実施例 2の LAMPプライマーセットの P6蛋白遺伝子における対応位置を説明 する図である。
[図 4]実施例 2の LAMPプライマーセットの各プライマーの構成を説明する図である。
[図 5]LAMP反応後の増幅産物を電気泳動したゲルを撮影した写真である(実施例 D o
[図 6]LAMP反応後の増幅産物を電気泳動したゲルを撮影した写真である(実施例 2)。
[図 7]実施例 1及び実施例 3の LAMP反応の濁度変化を示すグラフである。
[図 8]実施例 1のリアルタイム濁度測定結果を示すグラフである。
[図 9]図 8の濁度と铸型 DNA量の常用対数の関係を示すグラフである。
[図 10]第一実施形態の各実施例のプライマーセットを示す表である。
[図 11]第一実施形態の特異性確認試験の結果を示す表である。
[図 12]第一実施形態の感度確認試験の結果を示す表である。
[図 13]第一実施形態の臨床的検出試験の結果である。
[図 14]実施例 11の LAMPプライマーセットの Hibの莢膜遺伝子座第 II領域における 対応位置を説明する図である。
[図 15]実施例 11の LAMPプライマーセットの各プライマーの構成を説明する図であ る。
[図 16]第二実施形態の各実施例のプライマーセットを示す表である。
[図 17]第二実施形態における各莢膜型及び無莢膜型インフルエンザ菌を用いた特 異性確認試験の結果を示す表である。
[図 18]第二実施形態におけるインフルエンザ菌以外の菌を用いた特異性確認試験 の結果を示す表である。
[図 19]LAMP反応後の増幅産物を電気泳動したゲルを撮影した写真である(実施例 11)。
[図 20]第二実施形態における感度試験の結果を示す表である。
[図 21]実施例 11にお ヽて Loop Primer設定の効果を説明するグラフである。
[図 22]実施例 11につ 、て、莢膜 a〜f型及び無莢膜型の各インフルエンザ菌の DNA を铸型として 120分間の LAMP反応を行った結果を示すグラフである。
[図 23]実施例 11のリアルタイム濁度測定結果を示すグラフである。
[図 24]図 23の濁度と铸型 DNA量の常用対数の関係を示すグラフである。
[図 25] (A)は、実施例 1の LAMPプライマーセットの各プライマーの構成を説明する 図、(B)は実施例 11の LAMPプライマーセットの各プライマーの構成を説明する図 である。
発明を実施するための最良の形態
次に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
[第一実施形態]
本実施形態のインフルエンザ菌の検出方法は、検体中に含まれる核酸を铸型とし て LAMP法による核酸増幅を行い、この増幅産物の有無に基づいて、インフルェン
ザ菌の存在の有無を判別することで、インフルエンザ菌を検出するものである。
[0023] 本実施形態の検出方法に用いる LAMPプライマーセットは、インフルエンザ菌に特 徴的な表層蛋白質である P6蛋白質をコードする P6蛋白遺伝子を標的とし、かつ、前 記プライマーセットとして、全てのプライマーが、インフルエンザ菌の P6蛋白遺伝子 のうち 90番目より下流塩基領域中の部分塩基配列と同一又は相補的な塩基配列か らなり、かつ、少なくとも 1つのプライマーが、インフルエンザ菌の P6蛋白遺伝子のう ち、 90番目力 183番目、又は、 337番目力 462番目までの非相同領域中の部分 塩基配列と同一若しくは実質的に同一な塩基配列、又は、これらと相補的な塩基配 列からなる LAMPプライマーセットである。例えば実施例 1〜9に示すようなものがあ げられる。
[0024] 図 1及び図 2に本実施形態の一例である実施例 1の LAMPプライマーセットの P6 蛋白遺伝子における対応位置及び各プライマーの構成を、図 3及び図 4に、本発明 の他の一例である実施例 2の LAMPプライマーセットの P6蛋白遺伝子における対応 位置及び各プライマーの構成を示す。また、図 10に、各実施例のプライマーと、この 塩基配列を示した配列表の配列番号と、の対応関係を示す。
[0025] 図 1及び図 3は、 3行又は 4行力 なる段が 8段示されており、各段の「番号」と付さ れた行は塩基の位置を、「プライマー」と付された行はプライマーの位置を示す。また 、「 (ィ)」と付された行は配列表の配列番号 12と同様にインフルエンザ菌 Rdの P6蛋 白遺伝子の塩基配列を、「 (パ)」と付された行はパラインフルエンザ菌 Rivers 1922 の P6蛋白遺伝子(GenBankァクセッション番号: D28887)の塩基配列を、左側から 右側に向力つて 5'→3 '方向となるように示す。また、図 1及び図 3の「プライマー」行 中の矢印はプライマーの 5'→3 '方向を示す。従って、左矢印で範囲指定した領域 は、当該領域に相補的な領域がプライマーとされることを示す。
[0026] これらの図に示すように、 P6蛋白遺伝子領域のうちでも、 90番目力ら 183番目、又 は、 337番目力も 462番目までの非相同領域中の部分塩基配列と同一若しくは実質 的に同一な塩基配列、又は、これらと相補的な塩基配列がインフルエンザ菌とパライ ンフルェンザ菌とで異なる塩基が連続する非相同領域となっており、本実施形態で はこの領域の部分塩基配列をより多くプライマーに組み込むことで、プライマーの特
異性を優れたものとして 、る。
[0027] LAMPプライマーセットは、標的遺伝子 (P6蛋白遺伝子)上の異なる 6領域(5 '末 端側から順に F3, F2, Fl, Blc, B2c, B3c)及びこれに相補的な領域(5 '末端側 力ら順に B3, B2, Bl, Flc, F2c, F3c)、さらにこの Flc及び F2cの間の LF領域を 組み合わせて構成される。実施例 1及び実施例 2の LAMPプライマーセットは、 5'末 端側から Flc領域及び F2領域を連結してなる Forward Inner Primer (以下、「FI P」と略すこともある。)と、 5'末端側力も Blc領域及び B2領域を連結してなる Backw ard Inner Primer (以下、「BIP」と略すこともある。)と、 F3領域からなる F3プライ マーと、 B3領域からなる B3プライマーと、 LF領域からなる Loop primer Forward (以下、「LF」と略すこともある。)からなつている。この LFは、反応に必須のプライマ 一ではなく反応の速度を向上させるために任意に設定されるプライマーであり、この LFがな 、プライマーセット (例えば、配列番号 1〜4に記載の塩基配列力 なる 4種 のプライマーのみ)を用いることも可能である。なお、プライマーセットの設定位置によ つては、 LFではなぐ図示しないが、 B2領域と B1領域の間に Loop primer Back ward (以下、「LB」と略すこともある。)が設計されることもある。
[0028] このような LAMPプライマーセットによる増幅のメカニズムは、公知文献 1 (「ヌクレイ ック アシッド リサーチ」、 2000、 Vol. 28, No. 12, e63)及び公知文献 2 (K. Nag mine,他 2名, Accelerated reaction by loop— mediated isotnermal am plification using loop primers , Molecular and Cellular Probes, 2002 , vol. 16, p. 223— 229)に詳糸田に記述される力 4種のプライマーに含まれる 6領 域が設計とおりに働力なければ本発明の合成反応は進行しないので、偶然による非 特異的な相補鎖合成に伴う非特異的な増幅反応が効果的に防止され、増幅反応の 特異性は高い。
[0029] 上述のようなインフルエンザ菌検出用のプライマーは、例えば、 DNA自動合成機 を用いて化学的に合成し、あるいは、天然の核酸を制限酵素などによって切断し他 の切断片と結合する等の改変により、調製することができる。
[0030] なお、本発明にお 、てプライマーは、前述したような所定の塩基配列を有し、他の 塩基と塩基対形成が可能なオリゴヌクレオチドであって、その 3'末端において相補
鎖合成の基点となる- OH基を備えるものを意味する。したがって、この条件を満たす 限り、そのバックボーンは必ずしもホスホジエステル結合によるものに限定されず、例 えば Pでなく Sをバックボーンとしたホスホチォエート体ゃペプチド結合に基づくぺプ チド核酸力もなるものであってもよい。また、公知の標識物質によって標識されたもの であってもよい。標識物質としては、ジゴキシンやピオチンのような結合性リガンド、酵 素、蛍光物質や発光物質、放射性元素などが挙げられる。また、本発明によるプライ マーは、例えば DNAチップのようにそれ自身を固相に結合させておくこともできる。 固相化プライマーを合成開始点とする場合には、核酸の合成反応生成物が固相に 捕捉されることから、分離、検出が容易となる。
[0031] LAMPプライマーセットを調製した後、 LAMPプライマーセットに加え、鎖置換型 の相補鎖合成を行う DNAポリメラーゼ、 DNAポリメラーゼの基質となるヌクレオチド を加えることにより、 LAMP反応を行わせる。
[0032] 本発明で用いることができる DNAポリメラーゼは、鎖置換活性を有するものであれ ば特に限定されない。このような酵素としては、 Bst DNAポリメラーゼ (ラージフラグ メント)、 Bca (exo ) DNAポリメラーゼ、大月昜菌 DNA ポリメラーゼ Iのタレノウフラグ メント、 Vent (Exo— ) DNAポリメラーゼ(Vent DNAポリメラーゼからエタソヌクレア ーゼ活性を除いたもの)、 Deep Vent (Exo— ) DN Aポリメラーゼ(Deep Vent DN Aポリメラーゼカもエタソヌクレアーゼ活性を除 、たもの)および KOD DNAポリメラ ーゼ等が挙げられ、好ましくは Bst DNAポリメラーゼ (ラージフラグメント)が挙げら れる。 Bst DNAポリメラーゼを用いる場合は、その反応至適温度である 60〜65°C 付近で反応を行うのが望ま 、。
[0033] また、増幅産物の検出には公知の技術が適用できる。例えば前述したような標識ォ リゴヌクレオチドを用いることで標識物質を検出したり、あるいは、反応終了後の反応 液をそのままァガロース電気泳動にかけても容易に検出できる。
[0034] さらに、 LAMP法による遺伝子増幅は加速度的かつ効率的に行なわれるので、反 応液中にあら力じめ二本鎖核酸の分子内に特異的に取り込まれるインターカレータ 一であるェチジゥムブロマイドや SYBR (登録商標) Green I等を添加することによ り増幅を確認できる。また、 LAMP法では核酸の合成により基質が大量に消費され、
副産物であるピロリン酸力 共存するマグネシウムと反応してピロリン酸マグネシウムと なり、肉眼でも確認できる程に白濁する。この白濁を反応終了後の観察、もしくは反 応中の濁度の上昇を経時的に光学的に観察できる測定機器、例えば 650nmの吸 光度の変化を通常の分光光度計を用いて増幅の確認が可能である。
[0035] これらの LAMP反応に必要な各種の試薬類は、予めパッケージングしてインフル ェンザ菌検出用キットとして供給することができる。具体的には、前記インフルエンザ 検出用の LAMPプライマーセット、相補鎖合成の基質となる dNTP、鎖置換型の相 補鎖合成を行う DNAポリメラーゼ、酵素反応に好適な条件を与える緩衝液、さらに 必要に応じて合成反応生成物の検出のために必要な試薬類で構成されるキットであ る。
このように、 LAMP法では、酵素活性を維持しうる温度で、等温のままインキュベー トするだけで、増幅反応を進行させることが可能である。このため、 PCR法のような温 度調節のための設備が不要であり低コストかつ簡便に検出を行うことができるとともに 、温度変化に伴う時間ロスもないので迅速に検出が可能である。
[0036] [第一実施形態の実施例]
以下に実施例を挙げて第一実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらの 実施例に限定されるものではな 、。
(特異性確認試験につ!ヽて)
本実施形態に力かるインフルエンザ菌の検出方法を実施し、本実施形態の検出方 法の特異性を確認したので説明する。
(1)染色体 DNAの準備
まず、試験に供する各種の菌から染色体 DNAを精製し、増幅反応の铸型となる D NAを準備した。
[0037] 染色体 DNAは、酵母用の Dr. GenTLE (登録商標、タカラバイオ株式会社製)を 用いて各種の菌体力 抽出し、 QIAamp (登録商標) DNAミニキット (キアゲン社製 )を用いて精製することで得た。抽出及び精製の操作は、添付のマニュアルに従って 行った。
[0038] 本試験では、 9種のインフルエンザ菌及び 19種のインフルエンザ菌以外の菌(1種
のパラインフルエンザ菌を含む)に分類される計 28種の菌株力 染色体 DNAを抽出 して用いた。これら 28種の菌株を図 11に示す。
(2) LAMP反応及び PCR反応につ!ヽて
次に、本実施形態の実施例 1〜9及び比較例 2, 3の LAMPプライマーセット(図 10 参照)を用いて、(1)で調製した各種の菌由来の染色体 DNAを铸型に LAMP反応 を行った。
[0039] LAMP反応液(25 μ 1)は、 FIP及び ΒΙΡ各 40pmol, F3プライマー及び B3プライ マー各 5pmol, LFプライマー lOpmol, 8Uの BstDNAポリメラーゼラージフラグメン ト(New England Biolabs製),デォキシヌクレオシド トリフォスフェート各 1. 4m M,ベタイン 0. 8M, Tris-HCl緩衝液(pH8. 8) 20mM, KCllOmM, (NH ) SO
4 2 4
10mM, MgSO 8mM,ツイーン 20を 0. 1%,及び,上記(1)のようにして生成され
4
た铸型 DNA溶液 2 μ 1を添加して調製した。
[0040] そして、この LAMP反応液を、 63°Cで 60分間インキュベートすることで LAMP反 応を進行させ、最後に 80°Cで 2分間加温することで反応を終了させた。
[0041] また、 LAMP法を用いた検出と比較するために、 PCR反応も行った (比較例 1)。
この際、 PCRプライマーセットは、 P6蛋白質をコードする P6蛋白遺伝子を標的とす る公知のもの(背景技術の項で示した参照文献 1に示される)を用いた。その配列を、 配列番号 13及び 14に示す (比較例 1)。なお、このプライマーセットのターゲット位置
(増幅される領域)は、 122番目〜434番目である。
[0042] PCR反応液(10 μ 1)は、デォキシヌクレオシド トリフォスフェート各 0. 2mM、 Tris
— HC1緩衝液(pH8. 3) 10mM, KC150ml, MgCl 2mM, 1Uの ExTaq DNAポ
2
リメラーゼ (タカラバイオ株式会社製)、フォワードプライマー及びリバースプライマー 各 0. 5 μ Μ及び铸型 DNA溶液 1 μ 1をカ卩えて調製した。
[0043] PCR反応は、サーマルサイクラ一(MJ reserch社製)を用いて 30サイクル行った。
各サイクルでは、 95°C30秒間の変性、 55°C1分間のアニーリング、 72°C2分間の合 成を順に行 、、最後は 72°C2分間の加温を行 、反応を終了させた。
(3)増幅の有無の確認につ!、て
LAMP反応による増幅の有無は、反応チューブを直接目視し、 LAMP反応液の
白濁の有無を観察することで検出した。すなわち、複製配列が存在する場合には反 応の副産物として複製配列の量に比例した量のピロリン酸マグネシウムが産生される ので LAMP反応液が白濁し、一方存在しない場合には LAMP反応液は透明のまま である。
[0044] また、 LAMP反応による増幅の有無は、増幅産物のァガロースゲル電気泳動によ つても確認した。この際、増幅産物そのままのものと、増幅産物を制限酵素 TasI (Fer mentas社製)により消化したものと、をそれぞれ 3%のァガロースゲル中で電気泳動 し、ェチジゥムブロマイドで染色して泳動パターンを確認した。増幅産物をそのまま電 気泳動した場合には、複製配列は LAMP反応に特徴的なラダー状のパターンとして 現われる。また、制限酵素により消化したものを電気泳動した場合には、複製配列は 実施例 1では 90bp及び 125bp、実施例 2では 88bp及び 99bpの断片として現われ る。 らに、 BigDye Terminator V3. 1 cycle sequencing kit (Applied Bio systems社製)を用いてシークェンシング反応を行った後、 ABI PRISM 377 D NA sequencer (Applied Biosystems社製)を用いてシークェンシング解析を行 うことで、標的部分が増幅された力否かを確認した。なお、このシークェンシング反応 では、実施例 1については図 1及び図 2に示す F2及び B2の配列をプライマーとして 用い、実施例 2については図 3及び図 4に示す F2及び B2の配列をプライマーとして 用いた。
[0045] 一方、比較例 1における PCRによる増幅産物の有無も、増幅産物(2 1)を 3%ァガ ロースゲル中に電気泳動することで確認した。
(4)試験結果について
上述の試験結果を図 11に示す。結果は、 60分間のインキュベーションにより目視 によって増幅(白濁)が確認された場合を「や」、 60分間のインキュベーション後目視 によって増幅が確認できな力つた場合を「―」とした。なお、図 11中、上付き aは、菌 の出所が日本大学歯学部細菌学講座であることを示し、上付き bは、菌の出所が岐 阜大学医学部微生物学教室であることを示し、上付き cは、菌の出所が東京大学医 科学研究所であることを示す。
[0046] この結果、図 11にも示すように、実施例 1〜9のいずれの LAMPプライマーセットを
用いても、インフルエンザ菌を铸型とした場合には、 60分間のインキュベーションによ り多量の増幅産物が確認された。対照的に、パラインフルエンザ菌を含めた他の全 ての菌種では 60分間のインキュベーションを行っても増幅産物は確認されなかった 。この結果は、電気泳動の結果とも一致した。図 5及び図 6に、 LAMP反応後の増幅 産物を電気泳動したゲルを撮影した写真を示す。両端のレーン Mは lOObpの間隔を 示すためのマーカーを流したレーンであり、レーン 1はレーン 2の増幅産物を Taslで 処理後に泳動したレーン、レーン 2は铸型 DNA濃度を 106コピーとした場合の増幅 産物を泳動したレーン、レーン 3は铸型 DNA濃度を 0コピーとした場合の増幅産物を 泳動したレーンである。レーン 2では、増幅産物がラダー状の泳動パターンを示して おり、これより増幅産物が反転部分を有し、 LAMP反応に特徴的なステム ループ 構造をとっていることが確認される。また、図 5のレーン 1には実施例 1の 90bp及び 1 25bp (図 6では実施例 2の 88bp及び 99bp)の切断片が現われており、標的となる部 分が増幅されていることが確認された。また、増幅産物のシークェンシング解析も行 つたが、 LAMP反応により増幅された配列は期待した配列と一致した。
[0047] 一方、 PCR法を用いて検出した場合には、インフルエンザ菌が検出されたものの、 ノ インフルエンザ菌も検出され、それらを区別することができな力つた。また、本発 明に力かる範囲外の LAMPプライマーセットである比較例 2では、インフルエンザ菌 及びそれ以外の菌においても検出が確認されな力つた。
[0048] このことから、本発明に係るインフルエンザ菌の検出方法は、特異性に優れ、パライ ンフルェンザ菌も区別可能であることが確認された。
(感度確認試験について)
次に、上記実施例及び比較例 1〜3のプライマーセットを用いた場合の検出感度を 確認したので説明する。
(1)染色体 DNAの調製
本試験では、インフルエンザ菌 IID984から特異性確認試験と同様にして染色体 D NAを精製し、铸型とした。反応液中の铸型 DNAの濃度 (コピー数)は、 Ultrospec 3300 Pro spectrophotometer (Amersham Pharmacia Biotech社:^) 用 い、分子サイズを 1. 9Mbpとして定量した。
[0049] (2) LAMP法及び PCR法について
上記(1)のように予め定量された铸型 DNA溶液を 10倍ずつ希釈して 1〜1, 000, 000倍の溶液を調製し、これを LAMP反応の铸型 DNA溶液として用いることで、検 出限界を確認した。なお、 LAMP反応液は、铸型 DNA溶液の濃度が異なる以外、 铸型 DNA溶液の添加量及びその他の添加物の添加量において前記特異性確認 試験と同様とした。また、 LAMP反応は、 63°Cで 35分間又は 60分間インキュベート することで反応を進行させ、最後に 80°Cで 2分間加温することで反応を終了させた。
[0050] また、本発明の検出方法と比較するために、 PCR法による増幅、検出も行った (比 較例 1)。この際 LAMP反応で用いたものと同じ铸型 DNA溶液を PCR反応の铸型 D NA溶液として用いることで、検出限界を確認した。 PCR反応液は、铸型 DNA溶液 の濃度が異なる以外、铸型 DNA溶液の添加量及びその他の添加物の添加量にお いて前記特異性確認試験と同様であり、 PCR反応の条件も同様とした。
(3)増幅の有無の確認につ!、て
LAMP反応による増幅の有無は、 Loopamp (登録商標)リアルタイム濁度測定装 置 (テラメッタス株式会社製、型番 LA— 200)を用いて濁度を測定し、濁度が 0. 1以 上のときに増幅が生じたと判定した。
また、前記特異性確認試験と同様に、白濁の有無を目視により確認、及び、電気泳 動による確認も行った。
[0051] また、比較例 1における PCRによる増幅産物の有無も、増幅産物(2 1)を 3%ァガ ロースゲル中に電気泳動することで確認した。
(4)試験結果について
試験結果は、上記のように増幅産物が確認された場合には「 +」とし、増幅産物が 確認されなかった場合は「―」とした。試験結果を、図 12に示す。
[0052] 図 12に示すように、実施例 1及び実施例 2の LAMPプライマーを用いた検出方法 では、 LAMP反応を 60分間行うことで、铸型 DNA濃度が 100コピーの場合にも検 出することができ、その他の実施例及び PCRプライマーを用いた比較例 1と比べて 1 0倍と、感度に極めて優れることが確認された。一方、比較例 2及び比較例 3の場合 では 106コピーでもインフルエンザ菌は検出されなかった。また、図 12に示すように、
実施例 1及び実施例 2では、铸型 DNA濃度が 103コピーある場合には、 35分で検出 可能であり、感度及び迅速性に優れることが確認された。
[0053] (臨床的な検出について)
実施例 1及び比較例 1につ 、て、臨床的な検出を行ったので説明する。 まず、口腔試料から 9つの菌を分離した。その後、分離された 9つの菌について、ゥ マ血液培地で培養しその溶血パターンを確認し、 V因子(NAD)及び X因子(へミン) 要求性を確認するとともに、 API 20 NH (bio Merieux社製)を行うことにより、菌 種の同定を行った。この結果、図 13に示すように、 3種のインフルエンザ菌、 4種のパ ラインフルエンザ菌、 2種の H. parahaemolyticusが同定された。また、公知文献 3 の方法により莢膜形成に関連する Bex A蛋白遺伝子を標的とした PCRを行うことで 、 3種のインフルエンザ菌は無夾膜型であることを確認した (公知文献 3 : van Ketel , R. J. , B. de Wever, and L. van Alphen. 1990. Detection of Haemophilus influenzae in cerebrospinal fluids by polymerase c hain reaction DNA amplification. J. Med. Microbiol. 33 : 271— 27 6)。
[0054] そして、上記のように単離、同定された各菌の染色体 DNAを铸型とし、铸型 DNA 濃度 106コピーについて、実施例 1及び比較例 1のプライマーセットを用いて、 LAM P反応及び PCR反応を行った。結果は、 LAMP反応は 60分間行い、白濁を目視に より確認できるものを「 +」、できな力つた場合を「一」とした。また、 PCR反応は、ァガ ロースゲルで電気泳動することにより確認した。
この結果、図 13に示すように、実施例 1では、インフルエンザ菌のみを検出したの に対し、比較例 1では、パラインフルエンザ菌のほ力、 H. parahaemolyticusについ てもポジティブ反応を示した。このことから、実施例 1が、臨床的な検出においても、 特異性に優れ、検出の信頼性に優れることが確認された。
[0055] (リアルタイム濁度測定試験について)
(1)検出の迅速性について
実施例 1〜9及び比較例 2, 3のプライマーセットについて、検出の迅速性を確認す る試験を行った。本試験では、铸型 DNA濃度を 106コピーとし、各プライマーセットを
添加し、 LAMP反応液組成及び LAMP反応条件を前述と同様として LAMP反応を 行った。そして、この反応の間、 Loopamp (登録商標)リアルタイム濁度測定装置 (テ ラメックス株式会社製)を用いて 6秒毎に 650nmの吸光度を読み取り、スレッシュホー ルドタイム (Tt:濁度が 0. 1を超えるまでの時間)を測定した。
[0056] 結果を図 10に示す。図 10に示すように、実施例 1及び実施例 2は、他の実施例と 比べて、スレッシュホールドタイムが格段に短ぐ極めて迅速にインフルエンザ菌を検 出できることが確認された。一方、比較例 2は、前記特異性確認試験においても特異 性を確認することができなかった力 本試験においてもスレッシュホールドタイムが 10 9分と実施例と比べて格段に遅ぐ反応が不安定であることが推定される。ターゲット 位置 (F3プライマー〜 B3プライマーの間の領域)が同じ比較例 3では、各プライマー の設定位置を変えることでスレッシュホールドタイムを若干改善したものの、実施例と は依然差があり、この範囲で安定かつ迅速な反応が可能な LAMPプライマーを得る のは困難であった。
[0057] (2)定量性について
次に、特異性、感度、迅速性に優れた実施例 1について、次のような試験を行った 。まず、反応チューブ 1本当たりの铸型 DNAコピー数を 0〜: L06に調製し、実施例 1 の LAMPプライマーセットをそれぞれ添カ卩した。そして、 LAMP反応液組成及び LA MP反応条件を前述と同様として LAMP反応を行った。この反応の間、上記リアルタ ィム濁度測定装置を用いて 6秒毎に 650nmの吸光度を読み取った。
結果は、図 8に示すように、铸型 DNAのコピー数が 100コピー以上であれば、 60 分以内に濁度が 0. 1以上になることが確認され、この結果は前記感度試験における 目視及び電気泳動による増幅の有無の判別結果と一致した。また、最初に用いた铸 型 DNA量の増加に伴!、、スレッシュホールドタイムが短くなることが確認された。
[0058] 図 9には、実施例 1の場合のスレッシュホールドタイムと当初の铸型 DNA量の常用 対数の関係を示す。これらの間には線形性が認められ、相関係数 r2=0. 978と高い 相関を示した。これは、 2004年森らが示すように、インフルエンザ菌由来の DNAの 初濃度が未知の場合に、その存在の有無のみでなくその濃度を定量可能であること を意味する(Mori, Y. ,他 3名, "Realtime turbidimetry of LAMP reactio
n for quantifying template DNA", J. Biochem. Biophys. Methods, vol . 59, p. 145— 157)。すなわち、例えば、濃度未知のサンプルについても、希釈倍 率の異なる希釈液を調製し、各希釈液を用いて LAMP反応を行った場合のスレツシ ュホールドタイムを測定することで回帰直線を作成すれば、この回帰直線から、未知 の铸型 DNAの初濃度を特定することができる。
[0059] 以上、本実施形態の検出方法によれば、従来の PCR法を用いた場合に区別する ことができな力つたパラインフルエンザ菌とも区別して検出することができ、特異性に 優れることが確認された。特に、従来の PCRプライマーとは異なるより下流域をター ゲットとした LAMPプライマー(例えば、実施例 1及び実施例 2)は、検出感度が高ぐ かつ、迅速な検出が可能であり、またインフルエンザ菌の定量も可能である。また、 L AMP反応は等温条件下でも進行し、また結果を目視により確認することができるた め、設備もシンプルで、病院の検査室等でも簡易、迅速に行うことができる。
[0060] [第二実施形態]
本実施形態の検出方法に用いる LAMPプライマーセットは、莢膜 b型インフルェン ザ菌の莢膜をコードする莢膜遺伝子座第 Π領域を標的とし、かつ、プライマーセットと して、全てのプライマーが、 1〜6653番目の領域中の部分塩基配列と同一若しくは 実質的に同一な塩基配列、又は、これらと相補的な塩基配列からなる LAMPプライ マーセットである。例えば実施例 11〜 19に示すようなものがあげられる。
図 14及び図 15に本実施形態の一例である実施例 11の LAMPプライマーセットの 莢膜遺伝子座における対応位置及び各プライマーの構成を示す。また、図 16に、各 実施例のプライマーと、この塩基配列を示した配列表の配列番号と、の対応関係を 示す。
[0061] 図 14は、 2行又は 3行力 なる段が 7段示されており、各段の「番号」と付された行は 塩基の位置を、「塩基」と付された行は当該位置における Hibの莢膜遺伝子座第 II領 域(GenBankァクセッション番号: X78559)の塩基を、「プライマー」と付された行は プライマーの位置を示す。なお、図 14には、莢膜遺伝子座第 II領域の一部を示し、 莢膜遺伝子座第 II領域の全塩基配列を配列番号 79に示す。また、図 14の「プライマ 一」行中の矢印はプライマーの 5'→3 '方向を示す。従って、左矢印で範囲指定した
領域は、当該領域に相補的な領域がプライマーとされることを示す。
[0062] この他、 LAPMプライマーセットの基本的な構成、作用等は、第一実施形態に示し たので説明を省略する。
[第二実施形態の実施例]
以下に実施例を挙げて第二実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらの 実施例に限定されるものではな 、。
[0063] (特異性確認試験について)
(1)染色体 DNAの準備
まず、試験に供する各種の菌から染色体 DNAを精製し、増幅反応の铸型となる D NAを準備した。
染色体 DNAは、各種の菌体から、 QIAamp (登録商標) DNAミニキット(キアゲン 社製)を用いて抽出、精製することで得た。抽出及び精製の操作は、添付のマ-ユア ノレに従って行った。
[0064] 本試験では、 33種のインフルエンザ菌及び 21種のインフルエンザ菌以外の菌、計 54種の菌株カも染色体 DNAを抽出して用いた。これら 54種の菌株を図 17及び図 1 8に示す。図 17中、株名が CI— 1〜CI— 26のインフルエンザ菌は、鼻咽頭から採取 したサンプルより単離したもので、菌の出所が岐阜大学医学部微生物学教室である ことを示す。
[0065] (2) LAMP反応について
次に、本実施形態の実施例 11〜 19の LAMPプライマーセット(図 16参照)を用い て、(1)で調製した各種の菌由来の染色体 DNAを铸型に LAMP反応を行った。
LAMP反応液(25 μ 1)は、 FIP及び ΒΙΡ各 1. 6 Μ, F3プライマー及び Β3プライ マー各 0. 2 μ Μ, LFO. 4 μ Μ, 8Uの BstDNAポリメラーゼラージフラグメント(New
England Biolabs製),デォキシヌクレオシド トリフォスフェート各 1. 4mM,ベタ イン 0. 8M, Tris- HC1緩衝液(pH8. 8) 20mM, KCUOmM, (NH ) SO lOmM
4 2 4
, MgSO 8mM,ツイーン 20を 0. 1%,及び,上記(1)のようにして生成された铸型
4
DNA溶液 2 μ 1 (铸型 DNA濃度 106コピー)を添加して調製した。
そして、この LAMP反応液を、 63°Cで 60分間インキュベートすることで LAMP反
応を進行させ、最後に 80°Cで 2分間加温することで反応を終了させた。
[0066] (3)増幅の有無の確認について
LAMP反応による増幅の有無は、反応チューブを直接目視し、 LAMP反応液の 白濁の有無を観察することで検出した。
また、 LAMP反応による増幅の有無は、増幅産物のァガロースゲル電気泳動によ つても確認した。この際、増幅産物を制限酵素 Hpyl88I (New England BioLab s社製)により消化し、これをそれぞれ 3%のァガロースゲル中で電気泳動し、ェチジ ゥムブロマイドで染色して泳動パターンを確認した。増幅産物をそのまま電気泳動し た場合には、複製配列は LAMP反応に特徴的なラダー状のパターンとして現われる 。また、制限酵素により消化した産物について予想されるサイズの断片(125bp、 13 5bp)を電気泳動で確認した。さらに、 BigDye Terminator V3. 1 cycle seque ncing kit (Applied Biosystems社製)を用いてシークェンシング反応を行った後 、ABI PRISM 377 DNA sequencer (Applied Biosystems社製)を用いて シークェンシング解析を行うことで、標的部分が増幅された力否かを確認した。なお、 このシークェンシング反応では、図 14及び図 15に示す F2及び B2の配列をプライマ 一として用いた。
[0067] (4)血清による判別について
本実施形態に係る実施例との比較のために、インフルエンザ菌莢膜型別用免疫血 清 (デン力生研株式会社製)を用い、スライド凝集法により、 b型莢膜に対する抗体を 含む血清と b型莢膜との抗原抗体反応により生じる凝集塊の有無を判定し、莢膜 b型 インフノレエンザ菌の検出を行った。
また、非特許文献 1に従って PCR法に基づく莢膜 b型インフルエンザ菌の検出も行 い、これを基準に、上記 LAMPプライマーセットを用いた検出結果と、血清型別によ る検出結果とを評価した。
[0068] (5)試験結果について
上述の試験結果を図 17及び図 18に示す。結果は、 60分間のインキュベーション により目視によって増幅(白濁)が確認された場合を「 +」、 60分間のインキュベーシ ヨン後目視によって増幅が確認できな力つた場合を「一」とした。なお、図 17中、上付
き aは、非特許文献 1の方法による判定結果を示し、上付き bは、スライド凝集法による 試験結果を示し、上付き cは、菌の出所が東京大学医科学研究所であることを示し、 「nt」は、無莢膜型であることを示す。また、図 18中、上付き aは、菌の出所が日本大 学歯学部細菌学講座であることを示し、上付き bは、菌の出所が岐阜大学医学部微 生物学教室であることを示し、上付き cは、菌の出所が東京大学医科学研究所である ことを示す。
[0069] この結果、図 17及び図 18に示すように、実施例 11〜 19のいずれの LAMPプライ マーセットを用いても、臨床的に単離した株も含めた全ての莢膜 b型インフルエンザ 菌を铸型とした場合にっ 、て、 60分間のインキュベーションにより増幅産物が確認さ れた。対照的に、莢膜型の異なるインフルエンザ菌を含めた他の全ての菌種では 60 分間のインキュベーションを行っても増幅産物は確認されなカゝつた。莢膜 b型インフ ルェンザ菌を铸型とした場合の増幅産物を電気泳動した結果を図 19に示す。図 19 の左端のレーン Mは lOObpの間隔を示すためのマーカーを流したレーンであり、レ ーン 1はレーン 2の増幅産物を Hpyl88Iで処理後に泳動したレーン、レーン 2は铸 型 DNA濃度を 106コピーとした場合の増幅産物を泳動したレーン、レーン 3は铸型 D NA濃度を 0コピーとした場合の増幅産物を泳動したレーンである。レーン 2では、増 幅産物がラダー状の泳動パターンを示しており、これより増幅産物が反転部分を有し 、 LAMP反応に特徴的なステム一ループ構造をとつていることが確認される。また、 レーン 1には実施例 11の 125bp及び 135bpの切断片が現われており、標的となる部 分が増幅されていることが確認された。また、増幅産物のシークェンシング解析も行 つたが、 LAMP反応により増幅された配列は期待した配列と一致した。
[0070] 一方、スライド凝集法により検出した場合には、大半の莢膜 b型インフルエンザ菌が 検出されたものの、 1種の莢膜 b型インフルエンザ菌が検出されなカゝつた。 1種の莢膜 b型インフルエンザ菌が検出されな力つたのは莢膜の発現量が少な力つたためと考 えれる力 莢膜 b型インフルエンザ菌の検出において最も大きなリスクは検出し損なう ことであり、表現型により検出する場合にはこのようなリスクを回避できない。
以上の結果から、本実施形態に係る莢膜 b型インフルエンザ菌の検出方法は、特 異性が高ぐ検出の信頼性に優れることが確認された。
[0071] (感度確認試験について)
次に、上記実施例 11及び 14〜19のプライマーセットを用いた場合の検出感度を 確認したので説明する。
(1)染色体 DNAの調製
本試験では、インフルエンザ菌 IID984から特異性確認試験と同様にして染色体 D NAを精製し、铸型とした。反応液中の铸型 DNAの濃度 (コピー数)は、 Ultrospec 3300 Pro spectrophotometerを用い、分子サイズを 1. 9Mbpとして定量した。
(2) LAMP反応について
上記(1)のように予め定量された铸型 DNA溶液を 10倍ずつ希釈して 1〜1, 000, 000倍の溶液を調製し、これを LAMP反応の铸型 DNA溶液として用いることで、検 出限界を確認した。 LAMP反応液は、铸型 DNA溶液の濃度が異なる以外、铸型 D NA溶液の添加量及びその他の添加物の添加量において前記特異性確認試験と同 様とした。また、 LAMP反応は、 63°Cで 35分間又は 60分間インキュベートすること で反応を進行させ、最後に 80°Cで 2分間加温することで反応を終了させた。
[0072] また、本発明の検出方法と比較するために、 PCR法による増幅、検出も行った (比 較例 11)。この際 LAMP反応で用いたものと同じ铸型 DNA溶液を PCR反応の铸型 DNA溶液として用いることで、検出限界を確認した。 PCRプライマーは、上述した非 特許文献 1に示されるプライマーを用いた (配列番号 80〜82)。 PCR反応液(10 1 )は、デォキシヌクレオシド トリフォスフェート各 0. 2mM、 Tris— HC1緩衝液(pH8. 3) 10mM, KC150ml, MgCl 2mM, 1Uの ExTaq DNAポリメラーゼ(タカラバイ
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ォ株式会社製)、プライマー各 0. 5 μ Μ及び铸型 DNA溶液 1 μ 1を加えて調製した。
[0073] PCR反応は、サーマルサイクラ一(MJ reserch社製)を用いて 25サイクル行った。
各サイクルでは、 94°C1分間の変性、 60°C1分間のアニーリング、 72°C1分間の合成 を順に行 、、最後は 72°C 10分間の加温を行 、反応を終了させた。
(3)増幅の有無の確認につ!、て
LAMP反応による増幅の有無は、 Loopamp (登録商標)リアルタイム濁度測定装 置 (テラメッタス株式会社製、型番 LA— 200)を用いて濁度を測定し、濁度が 0. 1以 上のときに増幅が生じたと判定した。
[0074] また、前記特異性確認試験と同様に、白濁の有無を目視により確認、及び、電気泳 動による確認も行った。
また、比較例における PCRによる増幅産物の有無も、増幅産物(2 μ 1)を 3%ァガロ ースゲル中に電気泳動することで確認した。
(4)試験結果について
試験結果は、上記のように増幅産物が確認された場合には「 +」とし、増幅産物が 確認されなかった場合は「一」とした。試験結果を、図 20に示す。
[0075] 図 20に示すように、実施例 11及び 14〜19のプライマーセットのいずれも力 PCR プライマーを用いた場合と同等またはそれ以上の感度を示し、特に実施例 11及び 1 6〜 18の感度が優れ、実施例 11に至っては PCRプライマーを用 、た比較例 11と比 ベて 10, 000倍と、感度に極めて優れることが確認された。実施例 1では、インキュべ ーシヨンが 35分間の場合にも 1コピーの铸型を検出可能であり、感度及び迅速性に 極めて優れることが確認された。
[0076] (リアルタイム濁度測定試験について)
(1)検出の迅速性について
実施例 11〜 19のプライマーセットにっ 、て、検出の迅速性を確認する試験を行つ た。本試験では、铸型 DNA濃度を 106コピーとして各プライマーセットを添加し、 LA MP反応液組成及び LAMP反応条件を前述と同様にして LAMP反応を行った。そ して、この反応の間、前記したリアルタイム濁度測定装置を用いて 6秒毎に 650nmの 吸光度を読み取り、スレッシュホールドタイムを測定した。
結果を図 16に示す。図 16に示すように、どの実施例においても比較的スレッシュホ 一ルドタイムは短力つた力 特に実施例 11が、他の実施例と比べて、スレッシュホー ルタイムが格段に短ぐ極めて迅速に莢膜 b型インフルエンザ菌を検出できることが 確認された。また、実施例 11のプライマーセットについて、 LFを添加した場合及び未 添カ卩の場合それぞれにおける LAMP反応の違!、を確かめるために行った試験の結 果を図 21に示す。図 21に示すように、 LFを添加することで、スレッシュホールドタイ ムが 25分から 16分へ短縮されることが確認された。
[0077] また、図 22に、実施例 11について、インフルエンザ菌の莢膜型 a〜f及び無莢膜型
をそれぞれ铸型として 120分間の LAMP反応を行わせた場合の濁度の変化を示す 。図 22に示すように、 120分間反応させても莢膜 b型インフルエンザ菌を铸型とした 場合以外は、増幅産物が生じなかった。図示しないが同様の傾向が実施例 12及び 13についても確認された。臨床検査では、各プライマーセットのスレッシュホールドタ ィムを経過後、若干の時間をおいて白濁を確認することが想定されるが、実施例 11 〜 13のプライマーセットであれば、スレッシュホールドタイム力も長時間経過してしま つた場合にも信頼性のある結果を得られるため、臨床の場では用い易 、。
(2)定量性について
次に、特異性、感度、迅速性に優れた実施例 11について、次のような試験を行つ た。まず、反応チューブ 1本当たりの铸型 DNAコピー数を 0〜106に調製し、実施例 11の LAMPプライマーセットをそれぞれ添カ卩した。そして、 LAMP反応液糸且成及び LAMP反応条件を前述と同様として LAMP反応を行った。この反応の間、上記リア ルタイム濁度測定装置を用いて 6秒毎に 650nmの吸光度を読み取った。
[0078] 結果は、図 23に示すように、铸型 DNAのコピー数が 1コピー以上であれば、 60分 以内に濁度が 0. 1以上になることが確認され、この結果は前記感度試験における目 視及び電気泳動による増幅の有無の判別結果と一致した。また、最初に用いた铸型
DNA量の増加に伴!、、スレッシュホールドタイムが短くなることが確認された。
図 24には、実施例 11の場合のスレッシュホールドタイムと当初の铸型 DN A量の常 用対数の関係を示す。これらの間には線形性が認められ、相関係数 r2=0. 979と高 い相関を示した。このことから、上述したように、実施例 11が優れた定量性を有するこ とが確認された。
[0079] 以上、本実施形態の検出方法によれば、従来の PCR法を用いた場合と比較して、 LAMP反応は等温条件下でも進行し、また結果を目視により確認することができるた め、簡素な設備の病院等でも簡易、迅速かつ精確に、莢膜 b型インフルエンザ菌を 検出することができる。また、本実施形態の検出方法によれば、極めて感度に優れる ため、感染の早期発見、早期治療を可能にする。また、本実施形態の検出方法によ れば、定量も可能である。
産業上の利用の可能性
[0080] 本発明のインフルエンザ菌の検出方法によれば、精確、特にパラインフルエンザ菌 とも区別してインフルエンザ菌を検出可能である(図 25A)。また、本発明の莢膜 b型 インフルエンザ菌の検出方法によれば、簡易、迅速かつ精確に、他の莢膜型及び無 莢膜型のインフルエンザ菌と区別して、莢膜 b型インフルエンザ菌を検出することが できる(図 25B)。
配列表フリーテキスト
[0081] 配列番号 12 : P6蛋白遺伝子
配列番号 13:合成 DNA (比較例 1)
配列番号 14:合成 DNA (比較例 1)
配列番号 79:莢膜 b型インフルエンザ菌の莢膜遺伝子座第 II領域
配列番号 80:合成 DNA (比較例 11)
配列番号 81:合成 DNA (比較例 11)
配列番号 82:合成 DNA (比較例 11)