印刷制御装置、印刷装置、印刷制御方法、プログラム及びデータ構造 技術分野
[0001] 本発明は、インク吐出方式の印刷装置を制御する印刷制御装置、印刷制御装置を 搭載する印刷装置、印刷制御機能を提供する印刷制御方法、印刷制御機能を実現 するプログラム、及び、印刷制御機能を実現するデータ構造に関する。
背景技術
[0002] 現在、インクジェット方式の印刷装置には、非常に高い印刷品質が要求されている
。例えば、銀塩写真と同等の印刷品質が要求される。
[0003] これに伴い、 1画素を構成する最小単位としてのドット径は、非常に小さくなつてい る。また、階調表現の向上と粒状感の低減のため、濃度の異なる複数種類のインクが 用いられている。
[0004] 特開 2003— 237111号公報、特開 2002— 171407号公報、特開 2001— 2254
88号公報等に開示されている既存の印刷技術は、画像を非常に高い品質で印刷す るのには十分である。
[0005] しかし、一般に高い印刷品質を実現するには、解像度の高い印刷データと、非常に 長い印刷時間とを必要とする。従って、印刷時間の短縮が要求される場合には、印 刷データの解像度を低下させることが多 、。
[0006] 図 1に、 2種類の解像度に対応する各画素のドット構成例を示す。図 1 (A)は、ノズ ルビッチ力も定まる解像度で印刷した場合の印刷結果に対応する。図 1 (B)は、ノズ ルビッチの 1Z2の解像度で印刷した場合の印刷結果に対応する。
[0007] 図 2に、濃度の異なる 2種類のインクを用いた印刷例を示す。なお、図 2は、ノズル ピッチが 600dpiの印刷ヘッドを用い、 300dpiの解像度を有する印刷データを印刷 した場合の印刷例である。
[0008] 図 2において各画素の階調は、ドット無し、低濃度インクによるドット、高濃度インク によるドットの 3種類で表現されている。尚、図 2は、印刷データに 3値の誤差拡散処 理を適用する場合について表している。また、図 3に、図 2に示す印刷結果の一部領
域を拡大して示す。
[0009] 既存の技術では、印刷データの解像度の違いによらず、最大解像度の印刷データ を処理する場合と同じ信号処理が適用される。すなわち、画素サイズの違いによらず
、 3値の誤差拡散処理の結果が対応付けられる。
[0010] 参考のため、図 4の (A)に、誤差拡散後の量子化値に割り当てるドット割当テープ ル (3階調用)の例を示す。
[0011] 図 4の (A)の場合、出力パターンの上位 4ビット(B7〜B4)が低濃度インクに対応し
、下位 4ビット (B3〜BO)が高濃度インクに対応する。
[0012] 図 4の (A)の表を構成する数値" 0"はドット無しを、数値" 1"はドット有りを意味する
。図 4の(B)に量子化値が" 1"の場合のドットパターンを、図 4の(C)に量子化値が" 2
"の場合のドットパターンを示す。
[0013] ここで、量子化値" 1"は低濃度ドット (4つのドット全てが低濃度のドット)に対応し、 量子化値" 2"は高濃度ドット (4つのドット全てが低濃度のドット)に対応する。
[0014] このように、ノズルピッチが 600dpiの印刷ヘッドを用いて、 300dpiの解像度で印刷 する場合、 4つのドットで形成される 1画素に対して 3値の出力パターンが割り当てら れる。
[0015] すなわち、ドット無し、低濃度ドット、高濃度ドットの 3種類の出カノターンが割り当て られる。
[0016] この場合、 1画素のサイズは高解像度の印刷サイズの 4倍となる。結果として、低解 像度の印刷データを用いた場合、印刷結果に粒状感ゃ疑似輪郭が現れ易くなる。
[0017] このように従来装置の場合には、要求する印刷品質と印刷データの解像度とがー 対一の関係にある。
[0018] 従って、印刷速度を優先して低解像度の印刷データを選択することは、印刷品質 の劣化を許容することと同意であった。
発明の開示
[0019] 本発明者は、以上の事実認識に基づき、以下の技術手法を提案する。
[0020] 発明の一つの形態である印刷制御装置として、(a)ノズルピッチに対して lZn (nは 、 2以上の自然数)の解像度を有する印刷データが与えられたか否カゝ判定する解像
度判定部と、(b)解像度判定部で肯定結果が得られた場合、各画素に対応する量子 化値に、 n行 X n列のドットで構成される出力パターンであって、各ドットに濃度の異 なる k種類のインクの 、ずれか一つ又は不吐出を対応付けた出力パターンを割り当 てる出力パターン割当部とを有するものを提案する。
[0021] ここでの印刷制御装置には、濃度の異なる k種類 (kは、 2以上の自然数)のインクに 対応した k列以上のノズル列を有する印刷ヘッドを制御するものを適用する。
[0022] この印刷制御装置では、ノズルピッチに対して lZnの解像度の印刷データが与え られた場合でも、ノズルピッチと同じ解像度の印刷データが与えられたのと同等の階 調表現を可能とする出力パターンを割り当てる手法を採用する。
[0023] すなわち、 1つの画素に nX n個のドットを対応付け、各ドットを濃度の異なるインク で打ち分けることで、多値多階調を表現する手法を採用する。
[0024] なお、印刷制御装置には、出力パターンの部分データであって k種類のインクに対 応するデータ部分を、それぞれ対応するノズル列に分配する分配部を搭載すること が望ましい。分配部は、出力パターン割当部の中に配置しても良ぐ出力パターン割 当部の後段に配置しても良 、。
[0025] 分配部の搭載により、インクの濃度別に k個の出力パターン割当部を配置せずに済 む。
[0026] すなわち、 k種類のインクに対する回路構成を共通化できる。その分、回路規模を 縮小でき、同時に回路構成の簡略ィ匕を実現できる。
[0027] また、印刷制御装置には、カラー印刷用の各色及び黒色の各信号系について出 力パターン割当部を配置することが望ましい。カラー印刷用の各色とは、一般にシァ ン系、マゼンタ系及びイェロー系の 3色をいう。カラー印刷用の各色についても、前 述した出力パターン割当部濃度を適用することにより、解像度の低い印刷データを 階調表現力の高い形態で印刷することが可能となる。
[0028] また、印刷制御装置には、ノズルピッチに対して lZnの解像度を有する印刷デー タの付属情報に n倍の解像度による印刷が指示されている場合に、出力パターン割 当部による出力パターンの割り当てを選択する付属情報判定部を搭載することが望 ましい。付属情報判定部の採用により、ユーザーによる印刷品質の選択を実現でき
る。
[0029] なお、前述した技術は印刷制御装置に限らず、印刷装置、印刷制御方法、プログ ラム及び出力パターンのデータ構造としても実現できる。
[0030] 本発明を用いれば、印刷ヘッドが再現可能な最大解像度に比して低解像度の印 刷データが外部装置 (情報処理装置)力 与えられた場合でも、階調表現力の高!、 印刷結果を得ることができる。
[0031] また、出力パターンの割当処理までは、低解像度の印刷データを直接処理できる。
このため、通信負荷や信号処理負荷が小さくて済む。結果的に、印刷時間の短縮を 実現できる。
図面の簡単な説明
[0032] [図 1(A)]図 1 (A)は、解像度に応じた画素サイズの関係を示す図である。
[図 1(B)]図 1 (B)は、解像度に応じた画素サイズの関係を示す図である。
[図 2]図 2は、印刷ヘッドの最大解像度に比して半分の解像度の印刷データの印刷 例を示す図である。
[図 3]図 3は、図 2に示す印刷例の一部領域を拡大して示す図である。
[図 4]図 4は、 3値誤差拡散用のドット割当テーブル例を示す図である。
[図 5]図 5は、第 1の実施形態例の印刷ヘッドのノズル面の構成例を示す図である。
[図 6]図 6は、濃淡 2種類のインクを用いた出力パターン例を示す図である。
[図 7]図 7は、実施例で使用する 9種類の出力パターン例を示す図である。
[図 8]図 8は、図 7に示す 9種類の出力パターンにおける濃度再現特性を示す図であ る。
[図 9]図 9は、実施例で使用するガンマ補正曲線例を示す図である。
[図 10]図 10は、第 1の実施形態例における印刷装置(印刷制御装置)の構成例を示 す図である。
[図 11]図 11は、ハーフトーユング部の構成例を示す図である。
[図 12]図 12は、階調変換部と量子化部の処理イメージを示す図である。
[図 13]図 13は、 9値誤差拡散用のドット割当テーブル例を示す図である。
[図 14]図 14は、出力パターン割当部の処理イメージを示す図である。
[図 15]図 15は、印刷ヘッドの最大解像度に比して半分の解像度を有する印刷データ が入力された場合にぉ ヽて、実施例に係る印刷技術を適用した場合の印刷例を示 す図である。
[図 16]図 16は、図 15に示す印刷例の一部領域を拡大して示す図である。
[図 17]図 17は、第 2の実施形態例のラインヘッドのノズル面を示す図である。
[図 18]図 18は、 1つの画素を形成するドットの配列例を示す図である。
[図 19]図 19は、 1つの画素を形成する 4つのドット全てを淡インクで形成する場合を 示す図である。
[図 20]図 20は、 1つの画素を形成する 4つのドットのうち 3つが淡インクで形成され、 1 つが濃インクで形成される場合を示す図である。
[図 21]図 21は、 1つの画素を形成する 4つのドットのうち 2つが淡インクで形成され、 2 つが濃インクで形成される場合を示す図である。
[図 22]図 22は、 1つの画素を形成する 4つのドットのうち 1つが淡インクで形成され、 3 つが濃インクで形成される場合を示す図である。
[図 23]図 23は、 1つの画素を形成する 4つのドット全てが濃インクで形成される場合を 示す図である。
[図 24]図 24は、ドットパターンと表現可能な濃度数との関係を示す図表である。
[図 25]図 25は、ドットパターンの濃度再現特性を示す図である。
[図 26]図 26は、濃度再現特性のガンマ補正曲線を示す図である。
[図 27]図 27は、第 2の実施形態例における印刷装置の実施例を示す図である。
[図 28]図 28は、ドットパターン変換部に格納されたドットとインク滴数との関係を示す 図である。
[図 29]図 29は、ドットパターンと濃度別の出力バッファとの対応関係を示す図である。
[図 30]図 30は、 1つの画素の印刷結果例を示す図である。
[図 31]図 31は、第 2の実施形態例における印刷装置の他の実施例を示す図である。
[図 32]図 32は、第 2の実施形態例における印刷装置の他の実施例を示す図である。 圆 33(A)]図 33 (A)は、階調幅変換部の入出力特性例を示す図である。
[図 33(B)]図 33 (B)は、階調幅変換部の入出力特性例を示す図である。
[図 33(C)]図 33 (C)は、階調幅変換部の入出力特性例を示す図である。
[図 34]図 34は、偏向吐出によるドットの形成例を示す図である。
[図 35]図 35は、ラインヘッドを構成するノズル面の他の実施例を示す図である。
[図 36]図 36は、第 2の実施形態例における印刷装置の他の実施例を示す図である。
[図 37]図 37は、ノズル駆動データの分配例を示す図である。
発明を実施するための最良の形態
[0033] 以下、本発明の第 1の実施形態例を説明する。
[0034] なお、本明細書で特に図示又は記載されない部分には、当該技術分野の周知又 は公知技術を適用する。
[0035] また以下に説明する実施形態は、発明の一つの実施形態であって、これらに限定 されるものではない。
[0036] (1)印刷ヘッドの構成例
まず、印刷ヘッドの構成を簡単に説明する。この実施例では、インクジェット方式の 印刷ヘッドにっ 、て説明する。
[0037] 印刷ヘッドは、印刷装置の本体 (筐体)に対して着脱できるものを使用する。印刷へ ッドには、インクを装填したインクカートリッジを着脱するためのスロットが形成されて いる。各スロットの底部には、インクをノズルに導くための開口が形成されている。開 口は、流路を通じて対応するノズル群と接続されている。従って、インクは、インク力 ートリッジから開口及び流路を通じてノズル群に供給される。
[0038] 図 5の(A)に、この実施例で使用する印刷ヘッドのノズル面 1の一例を示す。図 5の
(A)は、印刷ヘッドがラインヘッド構成の場合である。ノズル面 1には、被記録媒体の 移動方向に 2列のノズル群 Nl、 N2を配置する。各ノズル群には、ノズル 1Aが、規定 のピッチ(この実施例では、 600dpiとする。)で印刷幅と同じ長さに亘つて形成されて いる。
[0039] 実施例の場合、ノズル群 N1から低濃度の黒インクが吐出され、ノズル群 N2から高 濃度の黒インクが吐出される。以下、低濃度の黒インクを淡インク、高濃度の黒インク を濃インクと呼ぶ。
[0040] 図 5の(B)に、画素とノズルとの対応関係の一例を示す。図 5の(B)は、ノズルピッ
チの半分、すなわち 300dpiで画素を形成する場合を表している。破線で囲まれた範 囲が 1画素に対応する。この場合、 1画素は 4つのドットで形成される。 4つのドットは、 ノズル群 N1及び N2の 、ずれか一方又は両方を用いて形成される。
[0041] 勿論、ノズルのピッチと同じ解像度で 1画素を形成する場合には、 1画素は 1つのド ットで形成される。
[0042] (2)出力パターン例
図 6に、本実施例で使用する出力パターン例を示す。図 6は、濃淡 2種類のインクを 吐出可能なラインヘッド(図 5)を用い、ノズルピッチの 1Z2の解像度を有する画像を 被記録媒体上に形成する場合を前提とする。
[0043] この場合、 1画素は、縦横それぞれ 2ドットで表される。すなわち、 1画素は、 4つのド ットのマトリクス配置として形成される。
[0044] 各ドットには、濃淡 2種類のインクのうちいずれか一つ又は不吐出を割り当てる。す なわち、 1つのドットは、濃淡 2種類のインクで同時に形成されることはないものとする
[0045] さらに換言すると、濃淡 2種類のインクは、各ドットを単一のインクで排他的に形成 する。
[0046] このとき、 1画素は、 15階調の出力パターンとして表すことができる。
[0047] レベル 0は、インクの不吐出に対応する。また、レベル 1〜4は、淡インクの 1ドット〜 4ドットに対応する。また、レベル 5〜レベル 8は、濃インクの 1ドットと淡インクの 0ドット 〜3ドットの組み合わせに対応する。また、レベル 9〜レベル 11は、濃インクの 2ドット と淡インクの 0ドット〜 2ドットに対応する。また、レベル 12とレベル 13は、濃インクの 3 ドットと淡インクの 0ドット又は 1ドットに対応する。また、レベル 14は、濃インクの 4ドット に対応する。
[0048] ここで、レベル 0は、最も薄い濃度を表現する画素に用いられる。レベルが上がるほ ど、各画素の濃度は増加し、レベル 14は、最も濃い濃度を表現するのに用いられる 。すなわち、レベル 0が最も明るい画素に対応し、レベル 14が最も暗い画素に対応 する。
[0049] 力かるドット配置とインク濃度の組み合わせにより、以下の効果が期待される。
[0050] まず、レベル 1の画素を構成するドットは、画素に対する面積比が 1Z4となる。この ため、ドットの周囲に 1画素の 3Z4の空間を形成することができる。
[0051] 従って、レベル 1の階調表現においては、いかなる場合にもドットが隣接して繋がる という事態が起こり得ない。すなわち、必ず 3ドット分以上の空間を確保した状態で、 ドットを分散して配置できる。
[0052] 結果的に、画素密度が高くなるほど均一なドット密度を実現できる。逆に言うと、ドッ トの偏在を無くすことができ、粒状間の少ない滑らかなハイライト部の再現が可能にな る。
[0053] ただし、この 15階調をそのまま印刷に使用すると、面積充填率の関係で中濃度域 の再現時に粒状感が現れ易 ヽ。
[0054] そこで、図 7に示す 9種類の出力パターンを選択的に使用する。図 7に示す 9種類 の出力パターンは、高濃度のドットが単独で存在しないように選択したものである。す なわち、可能な限り 4つのドットが、高濃度のドットと低濃度のドットの混合パターンと なるように選択する。
[0055] 具体的には、量子化値の" 0"〜"4"に、図 6のレベル 0〜レベル 4を対応付ける。
[0056] また、量子化値の" 5"に、図 6のレベル 8を対応付ける。同様に、量子化値の" 6"に
、図 6のレベル 11を対応付け、量子化値の" 7"に、図 6のレベル 13を対応付ける。
[0057] そして、量子化値の" 8"に、図 6のレベル 14を対応付ける。
[0058] すなわち、これら 9種類の出力パターンでは、低濃度のドットが徐々に増加して最大 ドット数に達した後、高濃度のドットの増加と共に低濃度のドットが徐々に減少するよ うに混合パターンを選択する。
[0059] ただし、図 7に示す 9種類の出力パターンをそのまま用いて印刷すると、ドットの面 積充填率その他の影響により、その濃度再現特性が図 8に示すような非線形となる。 すなわち、再現される階調に歪みが生じる。
[0060] 従って、図 7に示す 9種類の出力パターンを使用する場合には、この濃度再現特性 を補正する必要がある。
[0061] そこで、図 9に示すガンマ特性を有するガンマ補正部と組み合わせて使用する。す なわち、図 8に示す濃度再現特性の逆特性を有するガンマ補正部を、誤差拡散処理
(ハーフトーニング処理)の前段に配置する。
[0062] 力べして、図 7に示す 9種類の出力パターン (濃淡インクの配分を予め定めた出力パ ターン)の使用が可能となる。
[0063] なお、各画素の階調を濃淡インクの混合パターンで再現することにより、濃度がハイ ライト部力もシャドー部に連続的に変化するグラデーション模様の印刷時にも、濃度 レベルやインク色の微妙な違 、から生じる段差や擬似輪郭が発生し難くなる。すなわ ち、低濃度部力も高濃度部へと濃度を滑らかに再現できる。
[0064] (3)印刷装置の実施例
図 10に、印刷装置 11の回路構成例を示す。
[0065] なお、印刷装置 11には、図 5に示すノズル構成を有する印刷ヘッドが搭載されて ヽ るものとする。すなわち、印刷装置 11には、 600dpiのノズルピッチを有する印刷へッ ドが搭載されているものとする。また、印刷データの解像度は、 300dpiで与えられる ものとする。
[0066] 図 10は、印刷ヘッドの最大解像度に対して半分の解像度の印刷データが入力され た場合に動作する信号処理部の回路構成に対応する。
[0067] 印刷装置 11は、画像入力バッファ 13、輝度 ·濃度変換部 15、ガンマ変換部 17、ハ ーフトー-ング部 19、出力パターン割当部 21、ドット割当テーブル 23、低濃度用バ ッファ 25、高濃度用バッファ 27、ヘッド駆動回路 29で構成される。
[0068] この実施例の場合、印刷制御部としての機能は、少なくとも出力パターン割当部 21 により提供される。
[0069] このうち、画像入力バッファ 13は、文字、画像その他の印刷データを一時的に蓄積 する記憶デバイスである。例えば、半導体メモリやハードディスクが使用される。なお 、モノクロ印刷の場合、印刷データは各画素に対応する輝度データとして与えられる
[0070] 輝度'濃度変換部 15は、輝度値を 256段階の濃度データに変換する処理デバイス である。
[0071] ガンマ変換部 17は、濃度データを図 9に示すガンマ特性に従って補正する処理デ バイスである。この例の場合、中濃度域が強調されるように補正される。
[0072] ハーフトーユング部 19は、ガンマ補正後の濃度データの階調数を低減する処理デ バイスである。この実施例では、 256階調の濃度データを 9階調に低減する。
[0073] 図 11に、ハーフトーユング部 19の回路構成例を示す。ハーフトーユング部 19は、 誤差拡散処理部 19 Aと量子化部 19Bとで構成される。
[0074] ここで、加算器 19A1は、補正値を濃度データに加算する演算器として作用する。
この加算処理が、以前に発生した量子化誤差を周辺画素に拡散する補正処理に対 応する。なお、補正値は、誤差バッファ 19A2から与えられる。
[0075] 量子化誤差が補正された濃度データは、階調変換部 19A3において 9種類の閾値 と比較される。
[0076] 図 12にその概念図を示す。図 12の場合、閾値は、 "0"、 "31"、 "63"、 "95"、 "12
7"、 "159"、 "191"、 "223"、 "255"の 9種類である。
[0077] 階調変換部 19A3は、濃度データを 9種類の閾値のいずれかの値に変換する。す なわち、階調変換部 19A3は、濃度データの細部を階調変換 (Gradation transfer)処 理する。
[0078] 階調変換処理後の濃度データのうち一部は、量子化部 19Bにおいて" 0"〜"8"の 数値に変換される。
[0079] また、階調変換処理後の濃度データのうち一部は、減算器 19A4において階調変 換処理前の値から減算される。この減算処理が、量子化誤差の算出処理に対応する
[0080] 算出された量子化誤差は、乗算器 19A5において誤差拡散係数と乗算され、乗算 結果が補正値として誤差バッファ 19A2に格納される。
[0081] 出力パターン割当部 21は、 "0"〜"8"のドット情報(量子化値)に対応する出力バタ ーンデータを読み出して対応付ける処理デバイスである。すなわち、出力パターン割 当部 21は、ドット割当テーブル 23を参照し、ドット情報(量子化値)を出力パターンデ ータに変換する処理デバイスである。
[0082] 図 13に、ドット割当テーブル 23に格納する出力パターンデータを示す。なお、この 出力パターンデータは、図 7に示す 9種類の出力パターンに対応する。すなわち、図 13の(A)に示す量子化値の" 0"〜"8"は、図 7の量子化値の" 0"〜"8"に対応する。
[0083] 図 13の(A)では、ドットの有無をビット値の" 0"ど T,で表現する。ビット値の" 0"はド ット無しに対応し、ビット値の" 1"はドット有りに対応する。
[0084] なお、図 13の(Β)との対比で分かるように、この例の場合、 8ビットの出力パターン データのうち上位 4ビット(Β7〜Β4)が低濃度ビットに対応し、下位 4ビット(Β3〜ΒΟ) が高濃度ビットに対応する。
[0085] 上位 4ビットと下位 4ビットはいずれも、 1画素に対応する 4つのドットに対応する。
[0086] 前述したように、同じドット位置に対応する上位ビットと下位ビットの値は、同時に" 1
"を持たな 、ように選択されて 、る。
[0087] 例えば、同じドット位置に対応するビット値 Β7とビット値 Β3には、いずれか一方にの みビット値の" 1"が排他的に配置される。勿論、同じドット位置に対応するビット値が 両方共に" 0"になるのは許容される。
[0088] 図 14に、出力パターン割当部 21の処理動作を概念的に示す。図 14に示すように
、出力パターン割当部 21は、各画素に対応する量子化値に基づいて読み出した出 力パターンデータ(図 14の(Β) )のうち、上位 4ビットを低濃度用バッファ 25に与え( 図 14の (Α) )、下位 4ビットを高濃度用バッファ 27に与える(図 14の(C) )。
[0089] 低濃度用バッファ 25と高濃度用バッファ 27は、所定のタイミングでビットデータをへ ッド駆動回路 29に出力するまでの間、一時的にビットデータを保持する記憶デバイス である。
[0090] ヘッド駆動回路 29は、低濃度用のノズル群 N1と高濃度用のノズル群 Ν2に対応す る駆動デバイスであり、ビットデータに応じて対応位置のノズルからインク滴を吐出す る動作を実行する。
[0091] (4)印刷結果
図 15と図 16に、実施例に係る処理方式を適用した印刷例を示す。すなわち、濃度 の異なる 2種類のインクに対応した 2列のノズル群を有する印刷ヘッドを用い、ノズル ピッチに対して半分の解像度を有する印刷データを実施例に係る印刷方式で印刷し た場合の印刷例を示す。
[0092] 図 15の場合、各画素の解像度こそ 300dpiである力 4つのドットを用いた濃淡パタ ーンによって 9段階の階調が表現されて 、る。
[0093] すなわち、印刷データに 9値の誤差拡散処理を適用する場合について表している。 なお、図 16は、図 15に示す印刷結果の一部領域の拡大図である。
[0094] 図 15と図 16は、既存の技術を適用した図 2と図 3にそれぞれ対応する。図 15と図 2 を比較して分力るように、実施例の処理方式の場合には、印刷結果の粒状感が改善 されている。勿論、疑似輪郭についても改善されている。
[0095] この解像表現力の違いは、拡大図である図 16と図 3を比較すれば一目瞭然である
[0096] (5)回路構成上の効果
図 10に示す印刷装置 11の場合には、 1画素を構成する高濃度ビットと低濃度ビット を、各画素に対応する出力パターンデータの分配処理だけで求めることができる。す なわち、各画素に対応する出力パターンデータを求めるまでの画像処理系を高濃度 用と低濃度用とで共通化できる。
[0097] このことは、濃度別に画像処理系を設ける必要がないことを意味する。従って、画像 処理系を単一の濃度を扱う場合と同じ基本的な構成で実現できる。
[0098] このため、回路構成の開発負担が軽減される。また、回路規模が小さく済み、コスト 削減効果も期待できる。
[0099] また、低解像度の印刷データを処理対象とするため、高解像度の印刷データに比 してデータサイズが小さくて済む。これにカ卩え、低解像度の印刷データの信号処理に 必要となる信号処理量は、単一濃度のインクを扱う場合と同じで済むため、処理時間 の短縮効果を期待できる。
[0100] 勿論、前述したように、低解像度の印刷データでも高 、階調表現を実現できる。従 つて実施形態に係る印刷装置を用いれば、印刷時間の短縮を図りながら、同時に粒 状感ゃ疑似輪郭のな ヽ高品質画像を印刷できる。
[0101] (6)他の実施例
(a)前述の実施例では、濃度の異なる黒インクを吐出対象としたが、吐出対象とす るインクは、カラーインク(マゼンタ系のインク、シアン系のインク、イェロー系のインク) でも良い。
[0102] (b)前述の実施例では、濃度の異なる 2種類のインクの場合について説明したが、
濃度の異なる k種類以上 (kは、 3以上の自然数)のインクの場合にも適用できる。
[0103] この場合、印刷ヘッドには、ノズル列を k列以上有するものを配置すれば良い。
[0104] なお、濃度の異なるインクの数を増やすことで、表現可能な階調数を増やすことが でき、より滑らかな階調表現を実現することができる。
[0105] また、濃度の異なる k種類のインク滴で 1画素を構成することにより、濃度の再現特 性を直線に近づけることができる。その再現特性が実用上許容される限り、ガンマ補 正処理を不要にできる。
[0106] (c)前述の実施例では、 1画素を 4つのドット(2ドット X 2ドット)で形成する場合につ いて説明したが、 9つのドット(3ドット X 3ドット)以上、すなわち nの 2乗個のドット(nド ット X nドット)で形成する場合にも適用できる。
[0107] 1画素を構成するドット数が増えることで、表現可能な階調数を増やすことができ、 より滑らかな階調表現を実現することができる。この場合、印刷データのデータサイズ は更に小さく済むため、印刷時間の更なる短縮を実現できる。
[0108] この場合も、濃度の再現特性が実用上許容される限り、ガンマ補正処理を不要に できる。
[0109] (d)前述の実施例では、 1つのドットを 1発のインク滴で形成する場合について説明 したが、 1つのドットを複数発のインク滴で形成しても良 、。
[0110] 1つのドットを複数発のドットで構成することで、ドット径の可変や濃度の可変による 階調表現能力を一段と高めることができる。
[0111] (e)前述の実施例では、ドット径はいずれも同じものとして説明した力 インク滴量の 調整によりドット径を可変しても良い。
[0112] また、インク濃度に応じてドット径を可変しても良い。ドット径の可変により、階調表 現能力を一段と高めることができる。
[0113] (f)前述の実施例では、印刷ヘッドの解像度に対して半分の解像度を有する印刷 データを処理する信号処理部の構成を説明したが、印刷データの解像度を判定する ための信号処理部 (解像度判定部)の搭載が望ま 、。
[0114] すなわち、印刷データに付属する解像度情報に基づいて印刷データの解像度を 判定し、適用する信号処理の切替を指示する解像度判定部を搭載するのが望ま Uヽ
[0115] なお、印刷ヘッドの最大解像度と同じ 600dpiの印刷データが入力される場合には 、その信号処理として既存の処理技術を適用すれば良い。例えば、各ドットを 3階調 で表現すれば良い。
[0116] 勿論、高解像度の印刷データの場合には、画素サイズが最小化されるため、印刷 品質の高 、印刷結果を得ることができる。
[0117] その一方で、高解像度の印刷データはデータサイズが大きいため、通信時間ゃ処 理時間は長くなる。
[0118] (g)前述の実施例では、印刷ヘッドの最大解像度に対して半分の解像度を有する 印刷データが入力された場合には、階調表現を高める信号処理を適用するものとし て説明したが、印刷データの付属情報に基づ!、て適用する信号処理の種類を選択 できるようにしても良い。
[0119] 例えば、ユーザーがドラフト印刷を望む場合には、印刷データの付属情報に既存 の印刷技術の適用を指示できるようにしても良い。この場合、力かる付属情報の内容 を解釈するための付属情報判定部を印刷装置に搭載する。
[0120] 付属情報判定部が既存の印刷技術の適用を判定した場合、 300dpiの解像度を有 する印刷データには 3値の誤差拡散処理が適用される。
[0121] 次に、発明に係る技術手法を採用する印刷方式の第 2の実施形態例を説明する。
[0122] なお、第 2の実施形態例でも特に図示又は記載されない部分には、当該技術分野 の周知又は公知技術を適用する。
[0123] また以下に説明する実施形態は、発明の一つの実施形態であって、これらに限定 されるものではない。
[0124] 第 1の実施形態例は、 1つのドットを 1発のインク滴で形成する場合について説明し たが、第 2の実施形態例は、 1つのドットを複数発のインク滴で形成するものである。
[0125] (A)印刷ヘッドの構成例
第 2の実施形態例で用いる印刷ヘッドは、第 1の実施形態例で用いた印刷ヘッドと 同じ構成であるが、 1つのドットを複数発のインク滴で形成する点で異なる。
[0126] 図 17の(A)に、ノズル面 31の一例を示す。図 17の(A)は、印刷ヘッドがラインへッ
ド構成の場合である。第 2の実施形態例の印刷ヘッドも、第 1の実施形態例と同様の 構成である。即ち、ノズル面 31には、被記録媒体の移動方向に 2列のノズル群 Nl、
N2が配置されている。各ノズル群には、ノズル 31A力 規定のピッチ(例えば、 600d piとする。)で印刷幅と同じ長さに亘つて形成されている。
[0127] 第 2の実施形態例の場合も、第 1の実施形態例と同様に、ノズル群 N1から淡インク が吐出され、ノズル群 N2から濃インクが吐出される。
図 17の(B)に、画素とノズルとの対応関係の一例を示す。図 17の(B)は、ノズルピ ツチの半分、すなわち 300dpiで画素を形成する場合を表して 、る。
[0128] 破線で囲まれた範囲が 1つの画素に対応する。この場合、 1つの画素は 4つのドット
(2行 X 2列のドット群)で形成される。 4つのドットは、ノズル群 N1及び N2のいずれか 一方又は両方を用いて形成される。
[0129] 勿論、ノズルのピッチと同じ解像度で 1画素を形成する場合には、 1画素は 1つのド ットで形成される。
[0130] 尚、第 2の実施形態例では、各ドットは、最大 6発のインク滴で形成される。インク滴 数に比例して濃いドットを形成できる。この実施例では、個々のドットについて、不吐 出を含めて 7階調の濃度表現が可能である。
[0131] (B)ドットパターン例
ここでは、前述した印刷条件を用いて表現可能なドットパターン例を示す。
[0132] 図 18に、各画素を形成するドットの配列例を示す。ここでは、各ドットを以下のように 呼ぶ。すなわち、左上隅に位置するドットを"ドット A"と呼ぶ。右上隅に位置するドット を"ドット B"と呼ぶ。左下隅に位置するドットを"ドット C"と呼ぶ。右下隅に位置するドッ トを"ドット D"と呼ぶ。
[0133] 各ドットには、前述したように、濃インク又は淡インクを 0〜6発重ね打ちできる。この ため、 1つの画素は、 0 (ゼロ)力も最大 24発のインク滴の集合として形成可能である
[0134] 以下、典型的なドットパターン例を示す。
[0135] (a) TYPE 1
図 19は、 4つのドット全てを淡インクで形成する場合のドットパターン例である。
[0136] この場合、淡インクの液滴数を 0〜24滴の範囲で選択できる。従って、画素全体で は、 25通りの濃度表現が可能となる。
[0137] (b)TYPE2
図 20は、 3つのドットを淡インクで形成し、 1つのドットを濃インクで形成する場合の ドットパターン例である。
[0138] この場合、淡インクの液滴数を 0〜 18滴の範囲で選択できる。また、濃インクの液滴 数を 0〜6滴の範囲で選択できる。従って、画素全体では、 36通りの濃度表現が可能 となる。
[0139] なお、濃インクで形成するドットの位置は、ドット A、 B、 C、 Dのうち 、ずれでも良 、。
すなわち、図 20の他に 3通りの配置例が考えられる。もっとも、濃インクで形成するド ットの位置を変更しても、画素全体として再現される濃度は同じである。
[0140] (c)TYPE3
図 21は、 2つのドットを淡インクで形成し、残る 2つのドットを濃インクで形成する場 合のドットパターン例である。
[0141] この場合、淡インクの液滴数を 0〜 12滴の範囲で選択できる。また、濃インクの液滴 数を 0〜 12滴の範囲で選択できる。従って、画素全体では、 72通りの濃度表現が可 能となる。
[0142] この場合も、淡インクで形成する 2つのドットの位置は、ドット A、 B、 C、 Dのうち任意 の 2つで良い。すなわち、図 21の他に 5通りの配置例が考えられる。ドットの配置位置 が濃度表現に影響しないことは前述と同じである。
[0143] (d)TYPE4
図 22は、 1つのドットを淡インクで形成し、残る 3つのドットを濃インクで形成する場 合のドットパターン例である。
[0144] この場合、淡インクの液滴数を 0〜6滴の範囲で選択できる。また、濃インクの液滴 数を 0〜18滴の範囲で選択できる。従って、画素全体では、 36通りの濃度表現が可 能となる。
[0145] この場合も、淡インクで形成する 1つのドットの位置は、ドット A、 B、 C、 Dのうち任意 の 1つで良い。すなわち、図 22の他に 3通りの配置例が考えられる。ドットの配置位置
が濃度表現に影響しないことは前述と同じである。
[0146] (e)TYPE5
図 23は、 4つのドット全てを濃インクで形成する場合のドットパターン例である。
[0147] この場合、濃インクの液滴数を 0〜24滴の範囲で選択できる。従って、画素全体で は、 25通りの濃度表現が可能となる。もっとも、液滴数が 0 (ゼロ)の場合は、 TYPE1 に含まれている。結局この場合は、 24通りの濃度表現が可能である。
[0148] (f)まとめ
図 24に、以上説明した TYPE 1〜 5で表現し得る濃度表現の数を図表で示す。
[0149] 図 24に示すように、これら 5種類のドットパターンの採用により、 1つの画素を 265階 調の濃度で表現することができる。
[0150] これはコンピュータで取り扱う一般的なモノクロ画像の階調である 256階調を超えて いる。
[0151] 従って、これらのドットパターンを、濃度データの 256階調に一対一で対応づけれ ば、ディザ処理ゃノ、ーフトーユング処理を無くすことができる。
[0152] なお、ドットパターンを 256階調に対応づけるには、各ドットパターンに固有の濃度 を測定する必要がある。
[0153] このため、ある一定範囲を各ドットパターンで印刷し、各ドットパターンに固有の濃 度を測定する。
[0154] この測定結果を、濃度データの低いものから順番に高い方に並べプロットすると、 おおよそ図 25に示すような曲線が得られる。
[0155] なお、図 25では、曲線の変化ができるだけ滑らかになるように 265階調から 9階調 を取り去り、残った 256階調に対して 0から 255までの番号を割り振つている。横軸が
、ドットパターンに昇順に付した通し番号に対応する。縦軸は、測定された濃度であ る。
[0156] このドットパターンの並び替えの結果、画像情報である濃度データとドットパターン 番号との一対一の対応を実現できる。
[0157] しかし、 256階調による濃度再現特性は、およそ従前の濃度再現特性と同じ曲線 状の特性を有する。
[0158] 従って、濃度データに対応するドットパターンを直接対応づけたのでは、再現され た濃度の階調に歪みが発生する。
[0159] そこで、濃度データにドットパターンを対応づける前に、ドットパターンが有する濃度 再現特性を打ち消す逆特性曲線で濃度データを変換する手法を採用する。
[0160] この手法をガンマ補正と呼ぶ。図 26に、ガンマ補正曲線の一例を示す。このガンマ 補正曲線で補正した濃度データにドットパターン番号を対応づけることにより、印刷 結果として再現された階調の歪みをキャンセルできる。
[0161] なお、画素を形成するドットの数が多いほど、また、インクの種類が多いほど、間引 き可能な画素が増えるため、濃度再現曲線を直線に近づけることができる。
[0162] (C)印刷装置 (印刷制御装置)の構成例
図 27に、印刷装置 32の回路構成例を示す。なお、印刷装置 32には、図 17に示す ノズル構成を有する印刷ヘッドが搭載されているものとする。すなわち、印刷装置 32 には、 600dpiのノズルピッチを有するラインヘッドが装着されて!、るものとする。
[0163] また、印刷装置 32には、カラー印刷用の信号処理系も搭載されている。ただし、図
27には、モノクロ印刷用の信号処理系のみを示す。
[0164] 印刷装置 32は、入力バッファ 33、輝度 Z濃度変換部 34、ガンマ変換部 35、ドット パターン変換部 36、低濃度用バッファ 37A、高濃度用バッファ 37B、ヘッド駆動回路
38を主要な構成要素とする。
[0165] このうち、入力バッファ 33は、文字、画像その他の印刷データを一時的に保存する 記憶デバイスである。例えば、半導体メモリゃノヽードディスク装置が使用される。なお
、図 27はモノクロ印刷の場合であるので、印刷データは輝度データとして与えられる
[0166] 輝度 Z濃度変換部 34は、輝度データを 0〜255の濃度データに変換する処理デ バイスである。
[0167] ガンマ変換部 35は、ドットパターンが有する濃度再現特性(図 25)による歪をキャン セルするため、で入力された濃度データをガンマ補正する処理デバイスである。補正 には、図 26に示す入出力特性を使用する。なお、ガンマ補正後の濃度データは、そ のままドットパターン変換部 36に出力される。
[0168] ドットパターン変換部 36は、濃度データとドットパターンとを一対一に対応づけて格 納したルックアップテーブルである。この実施例の場合、記憶容量は、図 28の(A)に 示すように、 256階調 X 4 X 8ビット(1Kバイト)で与えられる。
[0169] ここで、前式中の" 4"は、 4つのドット A〜Dに対応する。また、前式中の" 8"は、ドッ ト A〜Dに対応する濃淡インクのインク滴数に対応する。
[0170] 図 28の(B)に示すように、 8ビットのうち 4ビットは淡インク用であり、残る 4ビットは濃 インク用である。
[0171] ドットパターン変換部 36は、入力された濃度データを読み出しアドレスとし、読み出 しアドレスに対応するドットパターンを出力する。
[0172] ドットパターンは、各ドット位置についてそれぞれ何滴の淡インクと濃インクを出力す るかを表す一組のノズル駆動データで構成される。
[0173] なお、淡インクと濃インクを同一ドットに吐出することは禁止されている。
[0174] 従って、淡インクが出力されるドット位置に対応する濃インクのインク滴数は 0 (ゼロ) に設定される。例えば、図 28の(B)の場合、ドット Bの淡インク用のノズル駆動データ は 3であり、濃インク用のノズル駆動データは 0 (ゼロ)である。
[0175] 勿論、濃インクが出力されるドット位置に対応する淡インクのインク滴数は (ゼロ)に 設置される。例えば、図 28の(B)の場合、ドット Dの淡インク用のノズル駆動データは
0 (ゼロ)であり、濃インク用のノズル駆動データは 4である。
[0176] ここで、各インク用のノズル駆動データは、対応する出力バッファへ出力される。こ の実施例の場合、低濃度用バッファ 37Aと高濃度用バッファ 37Bに出力される。
[0177] この際、低濃度用バッファ 37Aと高濃度用バッファ 37Bは、各画素に対応する 4つ(
2行 X 2列)のアドレスにノズル駆動データを格納し、印刷タイミングまで保持する。
[0178] 図 29に、ノズル駆動データの分配的な読み出し方法を概念的に示す。
[0179] ここでは、図 29の(B) 1S ある画素の濃度データに対応するドットパターンを与える ノズル駆動データである。前述の通り 4バイトで構成される。各バイトの上位 4ビットが 淡インク用であり、下位 4ビットが濃インク用である。
[0180] ドットパターンの各バイトは、図中右側からドット A、ドット B、ドット C、ドット Dに対応 する。図 29の(A)は低濃度用バッファバッファ 37Aへのノズル駆動データの書き込
みを表し、図 29の(C)は高濃度用バッファ 37Bへのノズル駆動データの書き込みを 表している。
[0181] ヘッド駆動回路 38は、淡インク用のノズル群 N1と濃インク用のノズル群 N2によるィ ンク滴の吐出動作を制御する駆動デバイスであり、ノズル駆動データで指示されたィ ンク滴数でインク滴を吐出する。
[0182] 図 30に、ある画素の印刷結果を示す。この印刷結果は、図 28の(B)に示すドットパ ターンに対応する。
[0183] 図 30に示すように、ドット Aは 5滴の濃インクで形成され、ドット Bは 3滴の淡インクで 形成され、ドット Cは 2滴の淡インクで形成され、ドット Dは 4滴の濃インクで形成される
[0184] この印刷動作が画像を構成する全ての画素について実行される。
[0185] (D)実施例の効果
以上説明したように、 1つの画素を複数のドットで形成し、かつ、各ドットを複数種類 のインクのいずれかによるインク滴の重ね打ちで形成することにより、インク滴だけで
1つの画素の濃度を 256階調で再現することができる。
[0186] 結果的にディザ処理ゃノ、ーフトーン処理を無くすことができ、信号処理の負担を大 幅に削減できる。
[0187] また、印刷画像が有する階調情報を忠実に再現することが可能となる。すなわち、 一段と印刷品質を高めることができる。
[0188] (E)他の実施形態
(a)前述の実施例の場合、輝度データが有する階調情報が 256階調の濃度データと 一致する場合について説明した。しかし、輝度データが有する階調情報は 256階調 以上でも良い。この場合、輝度 Z濃度変換部 34において、 256階調に情報量を削 減すれば良い。
[0189] (b)前述の実施例の場合、ドットパターン変換部 36に 256階調のドットパターンを格 納する場合について説明した。しかし、用意するドットパターンはそれより少なくても 良い。例えばドットパターンは、 230階調分でも良い。
[0190] この場合、ドットパターン変換部 36よりも前段位置に、濃度データを 230階調に低
減する信号処理デバイスを配置すれば良い。例えば、ガンマ変換部や輝度 Z濃度 変換部の前段に配置すれば良い。
[0191] 図 31に、ガンマ変換部 35とドットパターン変換部 36の間に階調幅制限部 43を配 置する印刷装置 41の回路構成例を示す。なお、図 31は、図 27との対応部分に同一 符号を付して示す。
[0192] 階調幅制限部 43は、 256階調に対応する濃度データ力も 230階調の濃度データ を生成する処理デバイスである。なお、階調数は、画像データに付属する階調デー タとして与えられる。
[0193] この場合、階調幅制限部 43は、例えば上位 26階調分の濃度データを廃棄する。こ の結果、ドットパターン変換部 36に対する入力階調幅と格納されているドットパター ンの階調幅とを一致させることができる。
[0194] なお、階調幅の不足分を 256階調に分散し、欠落した階調に対応する濃度データ は、上下いずれかに隣接する他の階調値に対応づける手法を採用しても良い。
[0195] また例えば、上位と下位の濃度データを削除する手法や下位 26階調分の濃度デ 一タを削除する手法を採用しても良 、。
[0196] これらの手法は、削除するデータ量や画像の種類に応じて選択すれば良い。
[0197] なお、濃度データの階調の低減は、次の手法によっても行うことができる。図 32に、 ガンマ変換部 35とドットパターン変換部 36の間に階調幅変換部 47を配置する印刷 装置 45の回路構成例を示す。なお、図 32は、図 27との対応部分に同一符号を付し て示す。
[0198] 階調幅変換部 47は、 256階調に対応する濃度データ力も 230階調の濃度データ を生成する処理デバイスである。なお、階調数は、画像データに付属する階調デー タとして与えられる。
[0199] この場合、階調幅変換部 47には、図 33 (A)乃至図 33 (C)に示すような入出力特 性を持たせる。
[0200] 図 33 (A)は、最高階調値を圧縮するように変換する例である。図 33 (B)は、最低 階調値を切り上げるように圧縮する例である。図 33 (C)は、最高階調値と最低階調 値を中央よりに圧縮する例である。
[0201] これらの手法は、削除するデータ量や画像の種類に応じて選択すれば良い。
[0202] (c)前述の実施例では、 1つのドットは、インク滴の吐出が割り当てられた 1つのノズル が形成する場合について説明した。しかし、図 34に示すように、同じノズル群の隣接 する複数のノズル力 偏向吐出されたインク滴の重ね打ちで 1つのドットを形成しても 良い。
[0203] なお、インク滴の偏向方向は、ノズル室の底部に形成された左右一対のヒーターの 発熱量やタイミングの制御によって調整することができる。ここで、一対のヒーターは、 ノズルの並び方向に配置される。
[0204] (d)前述の実施例では、濃淡各 1列のノズル群 Nl、 N2を設ける場合について説明 した。しかし、図 35に示すように、濃淡各 2列のノズル群 N1〜N4を設ける場合にも 適用し得る。図 35において、ノズル群 Nl、 N2は淡インク用、ノズル群 N3、 N4は濃 インク用である。図 36にも、図 27との対応部分に同一符号を付して示す。
[0205] この場合、図 36に示すように、濃淡各インクにおけるノズル駆動データが対応する 2列のノズル群に均等に分配する仕組みを印刷装置 49に搭載することが望ましい。
[0206] 図中、データ分配部 51は、淡インク用のノズル駆動データを均等に分配する処理 デバイスである。すなわち、ノズル駆動データは、ノズル群 N1に対応する低濃度用 ノ ッファ 37A1とノズル群 N2に対応する低濃度用バッファ 37A2に均等に分配される
[0207] また、データ分配部 53は、濃インク用のノズル駆動データを均等に分配する処理 デバイスである。すなわち、ノズル駆動データは、ノズル群 N3に対応する高濃度用 ノ ッファ 37B1とノズル群 N4に対応する高濃度用バッファ 37B2に均等に分配される
[0208] この場合、各データ分配部 51、 53は、予め定めた分配規則に基づいてインク滴数 を均等に分配する。
[0209] 例えば、ノズル駆動データで与えられるインク滴数が偶数である場合、インク滴数の 2分の 1に当たる値を、対応する 2つのノズル群にそれぞれ分配する。
[0210] また例えば、ノズル駆動データで与えられるインク滴数が奇数である場合、インク滴 数を 2分の 1した商に当たる値を一方のノズル群に分配し、商に 1をカ卩えた値を他方
のノズル群に分配する。
[0211] 図 37は、図 28の(B)に対応する出力例である。力かる分配方式を採用すれば、ノ ズル群のいずれかのノズルに吐出不良が発生しても、 1つのドットが 2つのノズル群に よって均等に形成されるため、その影響を最小化できる。
[0212] 結果的に階調表現の再現特性の劣化を最小化できる。
[0213] なお、図 36では、ドットパターン変換部 36の濃淡インクに対するノズル駆動データ を分配する場合について説明したが、ドットパターン変換部 36に格納する段階で複 数のノズル群を考慮してインク滴数を格納しておけば、データ分配部を不要とできる
[0214] (e)前述の実施例では、モノクロ印刷モードの場合について説明した。しかし、カラー 印刷モードにも適用することができる。この場合、輝度 Z濃度変換部に代えてカラー 変換部を配置すれば良い。
[0215] カラー変換部は、 R、 G、 Bとして与えられる画像データを、印刷に適したイェロー系 、シアン系、マゼンタ系の 3色に変換するのに用いられる。
[0216] (f)前述の実施例の場合、ラインヘッドは、ノズルが最高解像度と同じ密度で印刷幅 と同じ長さに亘つて配置されて 、る場合にっ 、て説明した。
[0217] しかし、ラインヘッドは、記録媒体に対してシリアル駆動されるヘッドに搭載されて ヽ る場合にも適用できる。なお、この種のラインヘッドは、マルチヘッドとも呼ばれる。こ の場合、実施例の説明で使用したノズルの並び方向は主走査方向と、記録媒体の 移動方向は副走査方向と読み替えれば良い。
[0218] 以上説明した実施形態例における印刷装置は、印刷専用機でも良いし、他の機能 も搭載する複合機でも良い。また、印刷装置の用途は、オフィスや家庭内での使用を 前提としたものに限らず、医療用途を含むものとする。例えば、患部の外観画像、 X 線画像、エコー画像その他の医療画像の印刷用途にも適用できる。
[0219] 前述の実施形態例では、印刷装置内の信号処理をノヽードウ ア的に説明したが、 印刷装置の信号処理がファームゥヱァや実行プログラムによって規定される場合に は、各信号処理をソフトウエア的に実現しても良い。
[0220] なお、実行プログラムは、半導体メモリ、ハードディスク、光学式記憶媒体その他の
記憶媒体に格納されることが望ま 、。
無論、前述の実施形態例には、発明の趣旨の範囲内で様々な変形例が考えられ る。また、本明細書の記載に基づいて創作される各種の変形例及び応用例も考えら れる。