明細書 ポリイミドフィルム積層体 技術分野
本発明は、 フレキシブル印刷回路基板 (FPC) 、 テープォ一トメ一ティ ッド (TAB) 方式に用いられる TAB用テープ、 あるいは、 チップオンフ イルム (COF) 方式に用いられる、 ポリイミドフィルムを基材とした金属 積層体に関するものである。 背景技術
ポリイミドフィルムはその優れた絶縁性と耐熱性から銅箔などの金属箔と 積層して、 この金属箔を所定のパターンにエッチングすることにより金属配 線板 (フレキシブル回路基板、 TABフィルム、 CO Fフィルム等) として 利用されている。 当然ながら、 当該ポリイミドフィルムと金属箔は十分な強 度で接着していることが必要である。
ポリイミドと金属箔の積層方法としては、 (1) ポリイミドフィルムの表 面に、 エポキシ系樹脂接着剤を塗布するか接着剤を含んでなるフィルムを設 置して張り合わせる方法、 (2) ポリイミドフィルム上に金属を蒸着ゃメッ キにより金属箔を形成する方法、 あるいは (3) 金属箔上にポリイミドの前 駆体であるポリアミック酸あるいはポリイミドを溶剤に溶かしたワニス状態 で塗布し溶媒を除去する方法 (ポリアミック酸を塗布した場合は、 脱水イミ ド閉環反応を行う) 等が公知である。
しかしながら、 当該分野で使用されてきたポリイミドフィルムは、 化学的 安定性に富んだ芳香族系化合物からなるポリイミドからなるため、 接着層や 金属箔に対する親和性が小さく、 いずれの方法においても十分な接着強度が 得られないことが問題となっていた (例えば、 非特許文献 1を参照) 。
この課題を解決するため、 特定のラミネーシヨン方法 (例えば、 特許文献
1参照。 ) が提案されているが接着剤とポリイミドフィルムとの親和性に対 する問題に新たな提案はなされていない。 一方、 特定のポリイミド樹脂組成 物からなるポリイミドフィルムの使用 (例えば、 特許文献 2参照) はその製 造方法が煩雑であり、 特殊なジアミンモノマーを使用したポリイミド系樹脂 を含む接着層の使用 (例えば、 特許文献 3参照) 、 多数の化合物から構成さ れる接着層の使用 (例えば、 特許文献 4参照) 、 シロキサンポリイミド樹脂 を含む接着層の使用 (例えば、 特許文献 5参照) 特定のポリイミドフィルム の使用 (例えば、 特許文献 6参照) は関連する化合物が極めて特殊であり、 その製造および入手が容易でない。
非特許文献 1 :新しいポリイミドの開発と高機能付与技術 (P 1 1— 26,技術情報協会発行、 2003年 10月 30日発行)
特許文献 1 :特開 2003— 300250号公報
特許文献 2 :特開 2002— 155140号公報
特許文献 3 :特開平 5— 331445号公報
特許文献 4 :特開平 7— 224259号公報
特許文献 5 :特開 2001— 212904号公報
特許文献 6 :特開 2004— 83875号公報 発明の開示
本発明は、 従来のポリイミドフィルムが有する絶縁性と耐熱性を損なうこ となく、 接着層や金属箔との接着性に富むポリイミドフィルムを基材とした 金属配線板を提供することを目的とする。 この問題を解決するためには、 芳 香族系テトラカルボン酸二無水物に代えて、 高融点でかつ接着層等との親和 性の高い脂環式テトラカルボン酸二無水物をポリイミドのモノマーとして使 用することが必要である。
すなわち、 本発明の第 1は、 ポリイミドフィルムと金属箔層とを含むポリ イミドフィルム積層体において、 ポリイミドフィルムが下記一般式 (1) 、 (2) 、 (3) で表されるテトラカルボン酸二無水物の少なくとも一つと下
記一般式 (4 ) で表されるジァミンとを反応させて得られるポリアミック酸 を脱水閉環して得られるポリイミドからなること、 を特徴とするポリイミド フイルム積層体に関するものである。
—般式 (2)
一般式 (1) 、 (2) 、 (3) において、 は水素原子、 または炭素数 1〜10のアルキル基、 R2は炭素数 1〜 10のアルキル基を表す。 m、 n は互いに独立の 0〜 5までの任意の整数であり、 m+nが複数の場合、 複数 の R 2は互いに同じでも、 または、 異なっても良い。
匪一 E3—函
—般式 (4)
一般式 (4) において、 R3は 2価の有機基を表す。
本発明の第 2は、 本発明の第 1において、 ポリイミドフィルムと金属層が 接着剤を介して接着されていることを特徴とするポリイミドフィルム積層体 に関するものである。
本発明の第 3は、 本発明の第 1において、 ポリイミドフィルム上に金属層 が直接形成されていることを特徴とするポリイミドフィルム積層体に関する ものである。
5 図面の簡単な説明
図 1はテトラカルボン酸二無水物を生成する反応経路図である。
図 2は実施例に係るテトラ力ルポン酸ニ無水物を生成する反応経路図 である。 発明を実施するための最良の开さ態
以下、 本発明について詳細に説明する。
本発明のポリアミック酸およびポリイミドは、 一般式 (1) 、 (2) 、 (3) で表されるテトラカルボン酸二無水物の少なくとも一つと一般式 (4) で表されるジァミンから得られる。 一般式 (1) 、 (2) 、 (3) で 表されるテトラカルボン酸二無水物は、 下記一般式 (5) で表される化合物 1モルと下記一般式 (6) で表される化合物 2モルとを反応させて得られる 一般式 (1) で表されるテトラカルボン酸二無水物 (W.N.Emraerling et al 、 European Polymer Journal, Vol.13, pl79を参照) を水素添加することによ つて得られる。 一般式 (5)
一般式 (6)
一般式 (5) 、 (6) において、 は水素原子または炭素数 1〜10の アルキル基、 R
2は炭素数 1〜10のアルキル基を表す。 m、 nは互いに独 立の 0〜 5までの任意の整数であり、 m+nが複数の場合、 複数の R
2は互 いに同じでも、 または、 異なっても良い。
一般式 (5) で表される化合物の具体例としては、 1, 1ージフエニルェ チレン、 1, 1ージ (メチルフエニル) エチレン、 1—フエ二ルー 1—メチ ルフエニルエチレン、 1, 1—ジフエニルプロペン、 1, 1ージ (メチルフ ェニル) プロペン、 1一フエニル— 1一メチルフエニルプロペン等が挙げら れる。
一般式 (6) で示される化合物の具体例としては、 無水マレイン酸、 無水 シトラコン酸 (3—メチル無水マレイン酸) 、 3—ェチル無水マレイン酸、 3, 4ージメチル無水マレイン酸、 3—クロル無水マレイン酸、 3, 4ージ メチル無水マレイン酸等が挙げられる。
一般式 (5) の化合物 1モルと、 一般式 (6) の化合物 2モルとは、 図 1 に示す経路で反応して、 一般式 (1) のテトラカルボン酸二無水物を生成す るものと考えられる。 反応の進行には、 特に触媒を必要とせず、 適宜、 溶剤 を使用して、 両者を混合して加熱攪拌して得ることができる。 反応温度は、 溶媒を使用した場合は当該溶媒の沸点付近で行うのが一般的であるが、 50 〜200°C間で行うことができる。 より好ましくは、 60~150°Cである。 反応時間は反応温度との関係から定まるが、 通常 0. 1〜20時間の範囲が 好ましい。
以下、 反応経路を図 1にしたがって説明する。
一般式 (5) と一般式 (6) の化合物とは、 炭素 ·炭素二重結合の電子密 度差を誘因として電荷移動錯体を形成する。
したがって、 一般式 (5) および一般式 (6) それぞれの化合物に存在す る置換基が、 両者の炭素 ·炭素二重結合の電子密度差を減少させないように することが好ましい。 すなわち、 一般式 (5) の化合物の芳香族環以外の炭 素に電子吸引性の強い置換基を存在させすることは好ましくなく、 一般式
( 6 ) の化合物の炭素に電子供与性の強い置換基を存在させることは好まし くない。 さらに、 立体障害効果を有する置換基の存在も好ましくない。
したがって、 一般式 (5) 中の R1および一般式 (6) 中の 1^の少なく とも 1つが水素原子であることが好ましい。 また、 および R2は、 それぞ れがアルキル基である場合、 炭素数 10以下であることが好ましく、 炭素数 5以下がさらに好ましく、 特にメチル基、 プロピル基が好ましい。
また、 一般式 (5) の化合物については、 m+n≤4とすることが好まし く、 特に、 m+n≤2が好ましい。
したがって、 最も好ましい一般式 (5) で表される化合物は 1, 1ージフ ェニルエチレンであり、 最も好ましい一般式 (6) で表される化合物は無水 マレイン酸である。
—般式 (5〉 と一般式 (6) とから形成される電荷移動錯体は、 分子内環 化反応により六員環 (シクロへキサジェン環) となり、 当該六員環化合物内 のシクロへキサジェン部と原料化合物一般式 (6) の炭素 ·炭素二重結合部 とが、 ディールス ·アルダー反応を経由して一般式 (1) の化合物を生成す るものと考えられる。 当該ディ一ルス ·アルダー反応によって生成する炭 素 ·炭素二重結合部は高温環境下において逆ディールス ·アルダー反応によ り分解することがあるので、 更なる耐熱性を付与したい場合は、 公知の還元 法等を用いて常法により水素添加して当該部分を飽和結合として一般式 (2) で表されるテトラカルボン酸二無水物、 更なる接着剤、 有機溶剤への 溶解性を付与したい場合は、 側鎖の芳香族環を核水添して一般式 (3) で表 されるテトラカルボン酸二無水物とする。
接触還元方法は、 金属触媒として、 パラジウム、 ルテニウム、 ロジウム、 白金、 ニッケル、 コバルト等を使用して、 溶媒中で、 水素圧を常圧から 10 MP aの範囲、 温度を 0〜 150°Cの範囲で行うことができる。
さらに詳しく述べれば、 一般式 (2) で表されるテトラカルボン酸二無水 物を高い収率で得る場合は、 パラジウム系触媒存在下で水素圧を IMP a〜 5 MP aの範囲とし、 温度を室温〜 50。< の範囲で5〜20時間接触還元を
行うとよく、 一般式 (3) で表されるテトラカルボン酸二無水物を高い収率 で得る場合は、 パラジウム系触媒存在下で水素圧を 5MP a〜8MP aの範 囲とし、 温度を 50〜1 00°Cの範囲で 5〜20時間接触還元を行うとよい。 一般式 (1) 、 (2) 、 (3) で表されるテトラカルボン酸二無水物は、 従前の脂環式ポリイミドに使用されているテトラカルボン酸二無水物に比べ て、 特段の反応条件変更を要さずに実質的にひとつの反応操作で、 ェン反応 等と比較して温和な条件下による反応で、 副生成物を生じることなく得られ、 特に高い純度が要求される電気電子分野で使用されるポリイミドを製造する モノマーとして極めて優れた特性を発揮する。 これらの中でも、 一般式 (2) 、 (3) で表されるテトラカルボン酸二無水物は、 高温環境下でも逆 ディールス ·アルダー反応がないので、 高い耐熱性、 あるいは、 長期の安定 性が要求されるポリイミドの構成モノマーとして優れている。
本発明に係る一般式 (1) 、 (2) 、 (3) で表されるテトラカルボン酸 二無水物は、 2つのカルボン酸二無水物基がトリシクロ環構造中に非対称に 配置されていること、 および、 側鎖 (例えば、 n= 0であればベンゼン 環。 ) を有していることを特徴とする。 本発明者らは、 当該基本構造が本発 明に係るポリイミドフィルムに耐熱性を維持したままでの靭性の付与、 接着 剤や有機溶剤への溶解性の付与に寄与して、 その結果として、 本発明に係る ポリイミドフィルムと金属層、 接着剤との接着性の向上に大きく関与してい るものと考えている。 これらは,単独で使用しても、 併用しても良い。
また、 本発明に係るポリアミック酸およびポリイミドを得るためには、 一 般式 (1) 、 (2) 、 (3) で表されるテトラカルボン酸二無水物中に開環 重付加反応ゃ閉環反応の進行に関して立体障害となる置換基を含まないこと が好ましく、 一般式 (1) 、 (2) 、 (3) の中でも、 1, 1ージフエニル ェチレンと無水マレイン酸から合成されるテトラカルボン酸ニ無水物が好ま しい。 なお、 本発明の効果を損なわない範囲で、 ポリイミドの構成成分とし て使用される公知の他のテトラカルボン酸無水物を併用することができるこ とはもちろんである。
一般式 (4) で表されるジァミン化合物としては、 特に制限は無く、 ポリ イミド構成モノマーとして知られているジァミン化合物であればよい。 R3 の好ましい炭素数は 6〜18であり、 芳香族環を有するものがさらに好まし い。
好ましい例を挙げれば、 p—フエ二レンジァミン、 4, 4 ' ージアミノジ フエニルメタン、 1, 5—ジァミノナフタレン、 2, 7—ジァミノフルォレ ン、 4, 4 ' ージアミノジフエ二ルェ一テル、 4, 4, - (p—フエ二レン イソプロピリデン) ビスァニリン、 2, 2—ビス [4 - (4一アミノフエノ キシ) フエニル] へキサフルォロプロパン、 2, 2—ビス (4—ァミノフエ ニル) へキサフルォロプロパン、 2, 2 ' 一ビス [4— (4ーァミノ— 2— トリフルォロメチルフエノキシ) フエニル] へキサフルォロプロパン、 4, 4, —ジァミノ一 2, 2, —ビス (トリフルォロメチル) ビフエニル、 4, 4, —ビス [ (4—アミノー 2—トリフルォロメチル) フエノキシ] —ォク 夕フルォロビフエニルなどがあり、 特に好ましくは、 p—フエ二レンジアミ ン、 4, 4' ージアミノジフエニルメタンおよび 4, 4 ' ージアミノジフエ ニルエーテルが挙げられる。
本発明のポリアミック酸は、 一般式 (1) 、 (2) 、 (3) で表されるテ トラカルボン酸二無水物と一般式 (4) で表されるジァミン化合物とを、 例 えば、 開環重付加反応させることにより合成することが出来る。
一般式 (1) 、 (2) 、 (3) で表されるテトラカルボン酸二無水物と一 般式 (4) で表されるジァミン化合物とでポリアミック酸を合成するときの 好ましい使用割合は、 上記ジァミン化合物に含まれるアミノ基 1当量に対す る上記テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が 0. 2〜 4当量となる範囲 である。 重合度の高いポリアミック酸を得たいときは、 0. 8〜1. 2当量 の範囲とする。
上記手法により、 対数粘度が 0. 05~10の範囲にあるポリアミック酸 を得ることができる。 なお、 対数粘度の値は、 N—メチルー 2—ピロリドン を溶媒として用い、 濃度が 0. 5 g/100ミリリットルである溶液につい
て 3 0 °Cで、 対数粘度 = [ l n (溶液粘度/溶媒粘度) ] [溶液濃度]によつ て求める。
ポリアミック酸の合成反応は、 有機溶媒中において、 通常 0〜1 5 0 ° (:、 好ましくは 0〜1 0 0 °Cの温度条件下で行われる。 ここで、 有機溶媒として は、 合成されるポリアミック酸を溶解できるものであれば特に制限はない。 なお、 溶媒を例示すれば、 N—メチルー 2—ピロリドン、 N, N—ジメチル ァセトアミド、 N, N—ジメチルホルムアミド、 ジメチルスルホキシド、 r 一プチロラクトン、 テトラメチル尿素、 へキサメチルホスホルトリアミドな どの非プロトン系極性溶媒、 m—クレゾール、 フエノール、 ハロゲン化フエ ノールなどのフエノール系溶媒が挙げられる。
つづいて、 この反応溶液とポリアミック酸の貧溶媒を混合して析出物を得、 この析出物を減圧下乾燥することによりポリアミック酸を得ることができる。 また、 このポリアミック酸を再び有機溶媒に溶解させ、 貧溶媒で析出させる 工程を 1回または数回行うことにより、 ポリアミック酸を精製することがで きる。
なお、 貧溶媒を例示すれば、 水、 メチルアルコール、 エチルアルコール、 イソプロピルアルコール、 シクロへキサノール等のアルコール類、 アセトン、 メチルェチルケトン、 メチルイソプチルケトン等のケトン類、 酢酸メチル、 酢酸ェチル等のエステル類、 ジェチルエーテル、 エチレングリコールメチル エーテル等のエーテル類が挙げられる。
本発明に係るポリイミドは、 公知の方法に従って、 上記ポリアミック酸を そのまま、 あるいは、 有機溶媒中で、 イミド化反応時に生成する低分子化合 物を系外に除去しながら、 加熱して、 脱水閉環 (イミド化反応) して合成す る。 加熱における反応温度は 5 0 ~ 3 0 0 °C、 好ましくは、 1 0 0〜2 0 0 °Cである。 反応温度が 5 0 °C未満ではイミド化反応が十分に進行せず、 反 応温度が 3 0 0 °Cを超えると得られるポリイミドの分子量が低下することが ある。
また、 上記ポリアミック酸の溶液中に脱水剤およびイミド化触媒を添加し
ても、 本発明に係るポリイミドを合成することができる。 脱水剤を例示すれ ば、 無水酢酸、 無水プロピオン酸等の酸無水物が挙げられる。 イミド化触媒 を例示すれば、 トリェチルァミン、 ピリジン、 コリジン等の第 3級ァミンが 挙げられる。 また、 このようにして得られる反応溶液に対し、 ポリアミック 酸の精製方法と同様の操作を行うことにより、 本発明のポリイミドを精製す ることができる。
本発明に係るポリイミドは、 その構成材料として含有される一般式 (1 ) 、 ( 2 ) 、 ( 3 ) で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物の構造に由来し て、 従来の脂環式テトラカルボン酸二無水物を含有するポリイミドと比較し て、 以下の優れた特性を併せ持つていることが特長であり、 極めてバランス のとれたポリイミドである。
従来の脂環式テトラ力ルポン酸ニ無水物から得られたポリイミドの主鎖に は、 テトラカルボン酸二無水物中の自由回転可能な炭素 ·炭素結合が導入さ れるものがあり、 そのために良好な耐熱性が得られなかつたが、 本発明に係 るポリイミド中では、 テトラカルボン酸二無水物が構成する主鎖部分はトリ シクロ環構造であり、 さらに、 逆ディ一ルス ·アルダー反応が水素添加で抑 制された場合は、 特に、 耐熱性が良好である (後述の T G A分析を参照) 。 本発明に係るポリイミドフィルムの製膜方法には特に制限はなく、 例えば、 その前駆体であるポリアミック酸 (あるいは、 ポリアミック酸を含むポリィ ミド) を含む溶液を、 濾過 ·脱泡処理後、 T一ダイから押出され、 ドラムま たはベルトの上に流延し、 加熱 ·溶媒除去され自己支持性のあるポリアミッ ク酸フィルムとした後、 熱イミド法、 または、 化学イミド法で製造される。 なお、 他の製造方法に関しては上記非特許文献 1の 3— 1 0頁等の記載が参 照できる。
本発明において、 ポリイミドフィルムと積層される金属層を構成する金属 の種類にも特に制約はなく、 例えば、 アルミニウム、 金、 銀、 銅、 ニッケル、 クロム、 マグネシウム、 亜鉛等或いはこれら金属の 2種以上からなる合金等 を例示することができるが、 銅が電気特性の面から好ましい。 金属箔であれ
ば、 たとえば銅箔、 アルミニウム箔、 ニッケル箔等があげられるが、 厚さ 3 〜7 0 mの銅箔が好ましく使用される。 さらに電気伝導率、 最近のフアイ ンピッチ化の進行から、 厚さ 3〜 3 5 mの電解銅箔、 あるいは圧延銅箔が 好ましく使用される。
本発明に係るポリイミドフィルムと上記金属の金属箔とを積層するには、 ポリイミドフィルムの表面に、 公知の接着剤を塗布するか接着剤を含んでな るフィルムを設置して張り合わせる公知の方法を用いる。 例えば、 加温 '加 圧下でラミネートを行う。 接着剤は、 例えば、 エポキシ化合物、 ポリイミド シロキサン、 ェポキシ硬化剤を含む熱硬化性樹脂組成物等である。
また、 本発明に係るポリイミドフィルム上に金属層を直接積層形成する場 合は、 ポリイミドフィルム上に金属を蒸着ゃメツキにより金属箔を形成する 方法、 例えば、 真空蒸着法、 スパッタリング法、 電子ビーム法およびイオン プレーティング法等の公知の方法をによって 0 . 1〜 1 mの範囲の金属層 を形成することができる。 あるいは、 金属箔上にポリイミドの前駆体である ポリアミック酸あるいはポリイミドを溶剤に溶かしたワニス状態で塗布し溶 媒を除去する方法 (ポリアミック酸を塗布した場合は、 脱水イミド閉環反応 を行う) を用いる。 実施例
以下、 実施例を挙げ本発明の内容を具体的に説明するが、 本発明はこれら に限定されるものではない。
'くテ卜ラカルボン酸二無水物の合成例 >
容量 2 O m 1のナス型フラスコに 1, 1—ジフエニルエチレン 5 . 1 0 gと無水マレイン酸 2 . 7 8 g (モル比 1 : 1 ) を入れ、 1 0分間溶存酸 素を脱気した後、 油浴を 1 4 0でに保ち 5時間加熱攪拌した。 反応系の温度 は 1 0 6 °Cであった。 反応終了後、 トルエンをフラスコに加えて析出する沈 殿物を濾過して集めた。 濾過物の重量は 3 . 6 5 gであった。
本合成例おいては、 1, 1ージフエニルエチレンは反応原料として仕込ま
れたと同時に、 過剰分は溶剤として機能している。 本合成例の収率は、 1, 1ージフエニルエチレン 2. 55 gと無水マレイン酸 2. 78 g (モル 比 1 : 2) を基準として、 68%である。
(DSC分析による融点測定)
酢酸ェチルから再結晶した当該化合物は、 2 (TCZminでの昇温条件で 2 90°Cに明確な吸熱ピークを示した。
くテトラカルボン酸二無水物の構造決定 >
(マススぺクトル)
マススぺクトルの結果、 生成物の分子量は 376であった。
( I Rスぺク卜ル測定)
700 cm— 1 740 cm— 1 1置換芳香族帰属ピーク
760 cm— 1 860 cm— 1 炭素 ·炭素二重結合帰属ピーク
1780 cm— 〜 1880 cm. 1 カルボン酸無水物帰属ピーク (1HNMRスぺクトル測定)
1 H NMRスペクトル (DMSO— d 6)
2. 55 (m、 2H) 、 2. 75 (m、 2 H) :カルポニル基隣接炭素上 の水素
3. 50〜3 60 (m、 2H)
3. 70 ( t :シクロへキセン環とシクロへキサジェン環結合部 炭素上の水素
3. 80 (m、 2 H) シクロへキセン中のメチン水素
6. 00 ( t、 1 H) 6. 25 (t、 1H) :炭素 ·炭素二重結合部の 水素
7. 20 (d、 2H) 、 7. 35 (t、 1H) 、 7. 45 (t、 2 H) : 一置換ベンゼン部の水素
以上の分析結果から、 生成物の化学構造は一般式 (1) の構造を満足する テトラカルボン酸二無水物のうち、 下記の化学式 (1) (3—フエニルトリ
シクロ [6, 2, 2, 02' 7]ドデ力一 2, 1 1—ェン一 5, 6, 9, 1 0— テトラカルボン酸二無水物) で表されるテトラカルボン酸二無水物であるこ とを確認した。 なお、 当該化合物の構造に関しては、 先の W.N.Emmerling et al 、 European Polymer Journal, Vol.13, pl79の記載も参照した。
化学式 (1) で表される上記テトラカルボン酸二無水物を 1 gを 10m 1 の THFに溶解し、 10 %パラジウム Z力一ボン触媒 (小島薬品製) 100 mgを加えて、 50°C、 5〜4. 50MP a (水素圧) で水素化還元を 1 6 時間行った。 触媒を除去後、 THFを減圧蒸留して白色の結晶を 95%の収 率で回収した。 当該結晶の
1 HNMRスぺクトル測定を上記と同様に行ったところ、 <5 = 6. 00〜6. 25の領域に現れる炭素 ·炭素二重結合部分の 2個の水素原 子に帰属されるピーク面積が消滅し、 1 1位の二重結合が水素化還元された ことを示した。 一方、 (5= 1. 00〜2. 00にはシクロアルカン系メチン 水素は新たに出現せず芳香族環の核水添が生じていないことを示した。 なお、 これ以外に大きな変化は見られなかった。 また、 I Rスペクトル解析から無 水力ルポニル基が残存していることを確認し、 また、 マススペクトルの結果 から分子量が化学式 (1) の化合物より 2多い 378になっていることを確
認した。
この結果から、 当該水素化生成物が、 一般式 (2) の構造を満足する下記 化学式 (2) で表されるテトラカルボン酸二無水物であることが確認された。
化学式 (2)
化学式 (1) で表されるテトラカルボン酸二無水物 1 gを 1 0m 1の TH Fに溶解し、 10%パラジウム/力一ボン触媒 (小島薬品製) 50mgを加 えて、 1 00°C、 1〜0. 95 MP a (水素圧) で水素化還元を 6時間行つ た。 触媒を除去後、 THFを減圧蒸留して白色の結晶を 9 5%の収率で回収 した。
当該結晶の1 HNMRスぺクトル測定を上記と同様に行ったところ、 δ = 6. 00〜 6. 25の領域に現れる炭素 ·炭素二重結合部分の 2個の水素原 子に帰属されるピーク面積と δ = 7. 20〜7. 45の領域に現れる一置換 ベンゼン環部分の 5個の水素原子に帰属されるピーク面積との比が、 還元処 理前の 2 : 5から、 1. 2 : 5に変ィ匕し、 δ = 6. 00近傍にメチン系水素 のピークが新たに出現し、 化学式 (1) 中の 1 1位の炭素 ·炭素二重結合 (2置換ォレフィン) 一部が水素化還元されたことを示した。
一方、 δ = 00〜2. 00にはシクロアルカン系メチン水素は新たに
出現せず芳香族環族の核水添が生じていないことを示した。 なお、 これ以外 に大きな変化は見られなかった。 また、 I Rスペクトル解析から無水力ルポ ニル基が残存していることを確認した。
この結果から、 当該還元処理化合物が、 一般式 (1) の構造を満足する化 学式 (1) で表されるテトラカルボン酸二無水物約 6 0モル%と一般式 (2) の構造を満足する化学式 (2) で表されるテトラカルボン酸二無水物 約 40モル%とから構成されることが確認された。
以下、 当該方法で得られた混合物を 「水添テトラカルボン酸二無水物混合 物 A」 という。
化学式 (1) で表される上記テトラカルボン酸二無水物 1 gを 10m lの THFに溶解し、 10 %パラジウム Z力一ボン触媒 (小島薬品製) 100m gを加えて、 120 °C、 9. 00〜 8. 5 OMP a (水素圧) で水素化還元 を 1 6時間行った。 触媒を除去後、 THFを減圧蒸留して白色の結晶を 9 5 %の収率で回収した。 当該結晶の iHNMRスペクトル測定を上記と同様に行ったところ、 (5 = 6. 00〜6. 25の領域に現れる炭素 ·炭素二重結合部分の 2個の水素原 子に帰属されるピーク、 および、 δ = Ί . 20〜7. 00の領域に現れる芳 香族環の水素原子に帰属されるピークが消滅し、 化学式 (1)· 中の 1 1位の 炭素 ·炭素二重結合 (2置換ォレフィン) が水素化還元されたことを示した。 また芳香族環が水素化還元 (核水添) されたことを示した。 一方、 = 1. 00〜2. 00にはシクロアルカン系メチン水素が出現した。 また、 I Rス ベクトル解析から無水カルボニル基が残存していることを確認し、 また、 マ ススペクトルの結果から分子量が化学式 (1) の化合物より 8多い 386に なっていることを確認した。
この結果から、 当該還元処理化合物が、 一般式 (3) の構造を満足する下 記化学式 (3) で表されるテトラカルボン酸二無水物であることが確認され た。
これらの脂環式テトラカルボン酸ニ無水物系化合物の合成経路を図 2に示 した。 '
化学式 (1) で表されるテトラカルボン酸二無水物 1 gを 10mlの TH Fに溶解し、 10%パラジウムノカ ^ボン触媒 (小島薬品製) 50mgを加 えて、 100 、 1-0. 95MP a (水素圧) で水素化還元を 6時間行つ た。 触媒を除去後、 THFを減圧蒸留して白色の結晶を 95%の収率で回収 した。
当該結晶の1 HNMRスぺクトル測定を上記と同様に行ったところ、 δ = 6. 00〜6. 25の領域に現れる炭素 ·炭素二重結合の 2個の水素原子に 帰属するピークが消滅し、 化学式 (1) 中の 1 1位の炭素,炭素二重結合 (2置換ォレフィン) が水素化還元されたことを示した。 δ = 7. 20〜7· 45の領域に現れる一置換ベンゼン環部分の 5個の水素原子に帰属されるピ ーク面積と δ== 1. 00〜2. 00にはシクロアルカン系メチン水素は新た に出現した。 なお、 これ以外に大きな変化は見られなかった。 また、 I Rス ぺクトル解析から無水力ルポニル基が残存していることを確認した。
それぞれのピーク面積の比から、 当該還元処理化合物が、 一般式 (2) の
構造を満足する化学式 (8) で表されるテトラカルボン酸二無水物約 50モ ル%と一般式 (2) の構造を満足する化学式 (3) で表されるテトラ力ルポ ン酸ニ無水物約 50モル%とから構成されることが確認された。
以下、 当該方法で得られた混合物を 「水添テトラカルボン酸二無水物混合 物 B」 という。
<ポリイミドフィルムの製造例 >
(製造例 1 )
24時間、 50°Cで真空乾燥処理した化学式 (1) で表されるテトラカル ボン酸二無水物 752mg ( 2 mm o 1 ) 、 4, 4 '-ジアミノジフエ二ルェ 一テル 400mg (2mmo 1 ) 、 溶媒としての N, N—ジメチルァセトァ ミド 1. 5m lを 30mlのナスフラスコに入れ室温で 1昼夜攪拌反応させ た。 反応溶液は粘稠となった。 得られたポリアミック酸の対数粘度は 2. 9 であった。
つづいて、 上記反応溶液を減圧下、 脱泡を行った後、 その一部をポリエス テルフィルム上にあけて、 スピンコ一夕一を用いて均一な膜として、 1 0 0 で 30分加熱して自己保持性のフィルム (ポリアミック酸フィルム) と した後、 さらに、 200°Cで 2時間加熱して厚さ約 50 mのフィルム (ポ リイミドフィルム) を得た。
<ポリアミック酸の構造決定; 100 30分間加熱後のフィルム >
(I Rスぺクトル測定)
1540 cm— 1、 1680 cm- 1 アミド結合帰属ピーク
1 780 cm— 1、 1860 cm— 1 カルボン酸無水物帰属ピークの消 失
以上の分析結果から、 製造例 1によるポリアミック酸フィルムは下記化学 式 (4) の繰り返し単位構造を有するものであることが確認された。 (以下、 「ポリアミック酸フィルム 1J という。 )
化学式 (4)
くポリイミドの構造決定; 200°C2時間加熱後のフィルム〉
(I Rスぺク卜ル測定)
1540 cm— 1、 1680 cm— 1 アミド結合帰属ピークの消失 1710 cm— 1、 1780 cm— 1 イミド結合帰属ピーク
1780 cm— 1、 1860 cm- 1 カルポン酸無水物帰属ピークの消 失
以上の分析結果から、 製造例 1によるポリイミドフィルムは下記化学式
(5) の繰り返し単位構造を有するものであることが確認された。 以下、 「ポリイミドフィルム 1」 という。
化学式 (5)
(製造例 2〜5)
製造例 1における化学式 (1) で表されるテトラカルボン酸二無水物 2m mo 1に代えて、 24時間、 5 (TCで真空乾燥処理した化学式 (2) で表さ れるテトラカルボン酸二無水物 (以下、 「製造例 2」 という。 ) 、 24時間、 50°Cで真空乾燥処理した化学式 (3) で表されるテトラカルボン酸二無水 物 (以下、 「製造例 3」 という。 ) 、 24時間、 50°Cで真空乾燥処理した 水添テトラカルボン酸二無水物混合物 A (以下、 「製造例 4」 という。 ) 、 24時間、 50°Cで真空乾燥処理した水添テトラカルボン酸二無水物混合物 B (以下、 「製造例 5」 という。 ) をそれぞれ約 2 mmo 1とした他は、 製 造例 1に示した手法と同様にして、 約 50 厚みのポリアミック酸フィル ム、 および、 ポリイミドフィルムを製造し、 I Rスペクトルで構造決定を行 つた。 各合成反応における収率はほぼ同一であり、 I Rスペクトルの帰属も ほぼ同一であった。
製造例 2 (得られたポリアミック酸の対数粘度は 2. 7であった。 ) によ るポリアミック酸フィルムは下記化学式 (6) (以下、 「ポリアミック酸フ イルム 2」 という。 ) 、 ポリイミドフィルムは下記化学式 (7) の繰り返し 単位構造を有するもの (以下、 「ポリイミドフィルム 2」 という。 ) である ことが確認された。 化学式 (6)
製造例 3 (得られたポリアミック酸の対数粘度は 2. 5であった。 ) によ るポリアミック酸フィルムは下記化学式 (8) (以下、 「ポリアミック酸フ イルム 3J という。 ) 、 ポリイミドフィルムは下記化学式 (9) (以下、 「ポリイミドフィルム.3」 という。 ) の繰り返し単位構造を有するものであ ることが確認された。
化学式 (8)
22
化学式 (9)
製造例 4 (得られたポリアミック酸の対数粘度は 2. 4であった。 ) によ るポリアミック酸フィルムは化学式 (4) と化学式 (6) の繰り返し単位構 造を有するもの (以下、 「ポリアミック酸フィルム 4j という。 ) 、 ポリイ ミドフィルムは化学式 (5) と化学式 (7) の繰り返し単位構造を有するも の (以下、 「ポリイミドフィルム 4J という。 ) であることが確認された。 製造例 5 (得'られたポリアミック酸の対数粘度は 2. 5であった。 ) によ るポリアミック酸フィルムは化学式 (6) と化学式 (8) の繰り返し単位構 造を有するもの (以下、 「ポリアミック酸フィルム 5」 という。 ) 、 ポリイ ミドフィルムは化学式 (7) と化学式 (9) の繰り返し単位構造を有するも の (以下、 「ポリイミドフィルム 5」 という。 ) であることが確認された。 (ポリイミドフィルム Z接着層/金属箔における接着性評価)
接着層の作成:
下記組成物を 20質量%含むモノクロルベンゼンノベンジルアルコールノ イソプロピルアルコール混合溶液を、 PETフィルム (保護フィルム 1) 上 に乾燥膜厚が 1 2 mとなるように塗布し、 エア一オーブンを使用し 1 2 0°Cで 1分、 170°Cで 2分乾燥した後、 ポリプロピレンフィルム (保護フ イルム 2) を張り合わせ、 接着剤フィルムを作成した。
ポリアミド榭脂 (ュニケマ社製、 「PR I AD I T 2053」 ) 50重 量部、
エポキシ樹脂 (油化シェルエポキシ (株) 製、 「ェピコート 828」 ) 30重量部、
フエノール樹脂 (群栄化学 (株) 製、 「PS 2780」 ) 20重量部。
[実施例 1 ]
ポリイミドフィルム 1から切り出した厚さ 50 mX幅 70mmのポリイ ミドフィルムに、 上記接着剤フィルムから保護フィルム 2を剥離し剥き出し になった接着剤面上に張り合わせた。 その後、 保護フィルム 1を剥離し接着 剤面上に電解銅箔 (三井金属鉱業 (株) 製 「; FQ— VLP箔」 (厚さ 18 // m) ) をロールラミネ一夕により 140°Cで加熱圧着して張り合わせた。 さ らには得られた積層体を 150°Cオーブン中で 15分間加熱処理を行い、 フ イルム積層体を作成した。
[実施例 2〜5、 比較例 1]
実施例 1のポリイミドフィルム 1をポリイミドフィルム 2 (実施例 2) 、 ポリイミドフィルム 3 (実施例 3) 、 ポリイミドフィルム 4 (実施例 4) 、 ポリイミドフィルム 5 (実施例 5) に代えて、 同様にして、 フィルム積層体 を製造した。 また、 実施例 1のポリイミドフィルムを、 全芳香族系ポリイミ ドフィルム (比較例 1) :宇部興産 (株) 製 「ユーピレックス S」 (厚さ 5 0 ί τ ) に代えて、 同様にして、 フィルム積層体を製造した。
上記各積層体のポリイミドフィルムの端部を掴み剥離試験を行い剥離面の 観察を目.視および走査型電子顕微鏡 (S EM) で行った。 実施例 1〜5のポ リイミドフィルムの剥離面には多くの接着層が付着し、 接着層が内部で凝集 破壊を生じたことを示した。 比較例 1のポリイミドフィルムの剥離面には、 接着層の付着が少なく、 接着層がポリイミドフィルムとの界面剥離を生じた ことを示した。 この結果から、 本発明に係るポリイミドフィルムが、 金属箔 に対する接着剤に対して優れた接着性を有していることがわかる。
[実施例 6 ]
(ポリイミドフィルム Z金属箔における接着性評価)
.ポリアミック酸フィルム 1から切り出した厚さ 60 imX幅 7 Ommのポ リアミック酸フィルムに、 上記接着剤フィルムから保護フィルム 2を剥離し 剥き出しになった接着剤面上に張り合わせた。 その後、 保護フィルム 1を剥 離し接着剤面上に電解銅箔 (三井金属鉱業 (株) 製 「FQ— VLP箔」 (厚 さ 18 m) ) をロールラミネ一夕により 140°Cで加熱圧着して張り合わ せた。 さらには得られた積層体をオーブン中で 1 50°CX 5分間、 1 50 X 5分間、 200 °C X 5分間、 250 °C X 5分間加熱ィミド化処理を行い、 ポリイミドフィルム積層体を作成した。
[実施例 7〜: I 0、 比較例 2 ]
実施例 6のポリアミック酸フィルム 1をポリアミック酸フィルム 2 (実施 例 7) 、 ポリアミック酸フィルム 3 (実施例 8) 、 ポリアミック酸フィルム 4 (実施例 9) 、 ポリアミック酸フィルム 5 (実施例 10) に代えて、 同様 にして、 ポリイミドフィルム積層体を製造した。 また、 ポリアミック酸フィ ルム 1の製造において、 化学式 (7) に代えてピロメリット酸二無水物を使 用して製造したポリアミック酸無水物を使用して製造したポリアミック酸フ イルム (比較例 2) を得て、 同様にして、 ポリイミドフィルム積層体を製造 した。
上記各積層体のポリイミドフィルムの端部を掴み剥離試験を行い剥離面の 観察を目視および走査型電子顕微鏡 (SEM) で行った。 実施例 6〜10の 銅箔の剥離面には多くのポリイミドが付着し、 ポリイミド層が内部で凝集破 壊を生じたことを示した。 比較例 2のポリイミドフィルムの剥離面には、 接 着層の付着が少なく、 接着層がポリイミドフィルムとの界面剥離を生じたこ とを示した。 この結果から、 本発明に係るポリイミドフィルムが、 金属箔に 対する優れた接着性を有していることがわかる。
[実施例 1 1 ]
ポリイミドフィルム 1の一面上に酸素のグロ一放電を施した後、 チタンを ターゲットとしてアルゴンガスによる DCマグネトロンスパッタリング法に
より厚さ 15 nmのチタン薄膜層を形成させた。 その後、 直ちに銅を夕ーゲ ットとして、 アルゴンガスによる D Cマグネトロンスパッタリング法により 厚さ 25 Onmの銅薄膜層を形成させ、 ポリイミドフィルム積層体を製造し た。 次に、 当該銅薄膜の上に銅の電解メツキを施すことにより回路用の銅膜 の厚みを 20 mとした。 当該ポリイミドフィルム積層体を 150°Cのォー ブンで 10日間保持した後、 直径 1 Ommのステンレス製の丸棒に裏表 5回 ずつ計 10回巻き付け、 目視および光学顕微鏡による観察を行ったが、 膨れ、 剥離等の異状は観察されなかった。
[実施例 12 ~ 15 ]
ポリイミドフィルム 1をポリイミドフィルム 2 (実施例 12) 、 ポリイミ ドフィルム 3 (実施例 13) 、 ポリイミドフィルム 4 (実施例 14) 、 ポリ イミドフィルム 5 (実施例 15) に代えて、 同様にして、 ポリイミドフィル ム積層体を製造した。 これら積層体においても、 150 Cのオーブンで 10 日間保持した後、 直径 1 Ommのステンレス製の丸棒に裏表 5回ずつ計 10 回巻き付け、 目視および光学顕微鏡による観察を行ったが、 膨れ、 剥離等の 異状は観察されなかった。 産業上の利用可能性
本 明により、 高純度で得られる特定の構造を有する新規な耐熱性と有機 溶剤への溶解性に優れる脂環式テトラカルボン酸二無水物をモノマーとして 用いて、 エポキシ樹脂等の接着剤や金属やとの接着性に優れ、 各種フレキシ ブル回路基板 (TAB、 COF等。 ) に使用できるポリイミドを得ることができる。 一般式 (1) (2) 、 (3) の少なくとも一つと一般式 (4) で表され るジァミンを反応させて得られるポリアミック酸を脱水閉環して得られるポ リイミドは、 その構成材料として含有される一般式 (1) 、 (2) 、 (3) で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物の構造に由来して、 以下の優れ た特性を有する。
( 1 ) トリシク口環構造を有するために脂環式テトラカルボン酸二無水物中
の融点が従来の脂環式テトラカルボン酸二無水物系化合物より高く、 ポリイ ミドの耐熱性を大きく低下させることがない。 また、 ディールス 'アルダー 反応で生成した炭素 ·炭素不飽和結合を水素化還元反応すれば高温環境下で の逆ディールス ·アルダー反応による分解が抑制され、 さらに耐熱性が向上 する。
(2) 脂環式テトラカルボン酸二無水物の構造が非対称であり、 さらに、 芳 香族環またはシクロへキサン環を側鎖として含むため、 ポリイミド分子に柔 軟性が生じているため金属箔との接着性に優れる。
(3) 脂環式テトラカルボン酸二無水物が非対称構造であり、 さらに、 芳香 族環またはシクロへキサン環を側鎖として含むため、 有機溶剤、 接着剤に対 する溶解性に優れるため、 接着層との接着性に優れる。
(5) 脂環式テトラカルボン酸二無水物系化合物のトリシクロ環構造部 (ナ フテン構造) がコロナ放電処理、 プラズマ処理、 紫外線照射処理等による物 理的、 化学的処理を受けやすく処理後の金属箔との接着性に優れる。
(6) 脂環式テトラカルボン酸二無水物の構造が非対称であり、 メツキ処理 前のアルカリ処理効果を受けやすく処理後の金属箔との接着性に優れる。
(7) 脂環式テトラカルボン酸二無水物が温和で副反応の無い経路で生成さ れるためポリイミド分子の不純物濃度が低い。
以上のように、 本発明によればポリイミド基板と金属箔との接着性に優れ た積層体を提供でき、 本発明のフィルム積層体は、 TAB用テープ、 フレキ シブル回路基板、 TAB用テープ、 COF用テープ、 に使用できるものであ る。