5 002677 明 細 書 紫外線吸収性に優れたプラスチックレンズおよびその製造方法 技術分野
本発明は紫外線吸収性に優れたプラスチック眼鏡レンズ及びその製造方法に関 する。 更に詳細には波長が 4 0 0 nm近辺の長波長紫外線を吸収するにもかかわ らず、 黄色の着色が少ないプラスチック眼鏡レンズ及びその製造方法に関する。 背景技術
紫外線は波長が約 2 0 0〜4 0 0 nmの電磁波であり、 人体に対し種々の悪影 響を与えると言われている。 眼鏡レンズの関係においても、 紫外線からの人眼保 護の観点から紫外線吸収レンズへの要望が高まってきている。 プラスチック眼鏡 レンズに紫外線吸収能を付与する方法としては種々の方法があるが、 第一の方法 は、 特開昭 5 8— 1 2 2 5 0 1号公報に、 2 , 2, ージヒドロキシー 4ーメトキ シベンゾフエノンあるいは 2, 2, ージヒドロキシー 4一 n—ォクトキシベンゾ フエノン等を紫外線吸収剤として用い、 この紫外線吸収剤をプラスチックレンズ モノマーに混合し、 重合したプラスチックレンズが記載されている。 また、 特開 2 0 0 1— 9 1 9 0 6号公報には、 2— ( 2—ヒドロキシー 4ーォクチルォキシ フエニル) ベンゾトリアゾールを紫外線吸収剤として用い、 この紫外線吸収剤を プラスチックレンズモノマーに混合し、 重合したプラスチックレンズが記載され ている。 第二の方法はプラスチックレンズの染色と同じ方法であり、 特開平 1一 2 3 0 0 3号公報に、 8 0〜 1 0 0 °Cに加熱した紫外線吸収剤を分散させた水溶 液にプラスチックレンズを浸漬することにより、 紫外線吸収剤をプラスチックレ ンズに含浸させる方法が開示されている。 さらに、 第三の方法は紫外線吸収及び Z又は散乱する物質をプラスチックレンズ表面に塗布する方法であり、 特開平 9 - 2 6 5 0 5 9号公報に開示されている。 これらの方法のうち、 波長が 4 0 0 n mまでの紫外線を吸収する特性を有する従来の市販のプラスチック眼鏡レンズは、
前記第二の方法により製造されているものが大半であると信じられている。 ジエチレンダリコールビスァリルカーボネートに代表されるァリル系モノマー を重合する際の重合開始剤として、 一般的にジィソプロピルバーオキシジカーボ ネート (以下、 IPPと略す。) の如きパーォキシカーボネート過酸化物が使用され る。 しかし、 前述の第一の方法により、 2 , 2 ' —ジヒドロキシ一 4ーメトキシ ベンゾフエノンあるいは 2, 2 ' ージヒドロキシー 4一 n—ォクトキシベンゾフ ェノンまたは 2— ( 2—ヒドロキシー 4一才クチルォキシフエニル) ベンゾトリ ァゾ一ルを用いて、 波長が 4 0 0 nm近辺までの紫外線を吸収するァリル系モノ マーのレンズを製造すると、 IPP あるいはァリルラジカルによる紫外線吸収剤の 酸化分解が起こり、 その結果レンズが黄変してしまうといった問題を生じる。 ま た、 紫外線吸収剤の使用量が多くなるため重合反応に影響を与え、 得られたブラ スチックレンズの物性が悪くなりやすいという問題がある。 前記第二の方法によ り波長が 4 0 0 nm近辺までの紫外線を吸収するプラスチックレンズを製造する 場合にも、 用いる紫外線吸収剤は高い紫外線吸収能力と適度な水への溶解度が必 要であり、 充分な紫外線吸収能力を付与できないか付与できる場合でも長時間の 浸漬時間が必要となることが多い。 水の代わりに有機溶媒を用いる方法も提案さ れているが、 この方法で製造された波長が 4 0 0 nm近辺までの紫外線を吸収す るプラスチックレンズは、 黄色の着色が大きいという問題がある。 また、 前記第 三の方法も、 波長が 4 0 0 nm近辺までの紫外線を吸収するプラスチックレンズ を得るためには紫外線吸収剤を薄膜中に数%以上の高濃度で存在させる必要があ り、 このような高溶解性の紫外線吸収剤はなく、 実用的な方法とはいえない。 発明の開示
本発明は、 上述した課題を解決し、 波長が 4 0 O nm近辺までの紫外線の吸収 性に優れ、 従来のプラスチック眼鏡レンズと比べて、 黄色の着色が少なく、 且つ 紫外線吸収剤の添加量を少量にすることが可能なプラスチック眼鏡レンズおよび その製造方法を提供することを目的とする。
本発明の上記目的は、 第 1に、
( i) 2, 2'ージヒドロキシ一4, 4, ージメトキシベンゾフエノンおよび 2, 2', 4, 4, ーテトラヒドロキシベンゾフエノンよりなる群から選ばれる少なく とも 1種の化合物及ならびにァリル系モノマーを含む重合性単量体の硬ィ匕体から なり、 (i i)光路長 2. Ommにおける YI値 (黄色度) が 0. 7〜3. 0の範 囲にありそして (i i i) 波長 400 nmの紫外線透過率が 20%以下であるこ とを特徴とするプラスチック眼鏡レンズにより達成される。
また、 本発明の上記目的は、 第 2に、
2, 2, ージヒドロキシー 4, 4, ージメトキシベンゾフエノンおよび 2, 2 ', 4, 4' ーテトラヒドロキシベンゾフエノンよりなる群から選ばれる少なくとも 1種の化合物ならびにァリル系モノマ一を含む重合性単量体をパーォキシエステ ル系重合開始剤の存在下に重合に付すことを特徴とする請求項 1または 2に記載 のプラスチック眼鏡レンズを製造する方法により達成される。
さらに本発明によれば、 本発明の上記目的は、 第三に、
ァリル系モノマーを含み且つ酸価が 0. 2mgKOH/g以下である重合性単 量体に、 2, 2 'ージヒドロキシー 4, 4'ージメトキシベンゾフエノンおよび、 2, 2', 4, 4' —テトラヒドロキシベンゾフエノンよりなる群から選ばれる少 なくとも 1種の化合物を含む重合単量体を、 パーォキシカーポネ一ト系重合開始 剤の存在下に重合に付すことを特徴とする請求項 1に記載のプラスチック眼鏡レ ンズを製造する方法によって達成される。 発明の実施の形態
本発明において用いられるプラスチックレンズモノマーは、 ァリル系モノマー である。 ァリル系モノマーとは、 重合性官能基としてァリル基を有するモノマ一 を意味する。これらァリル系モノマーは、公知のものが何ら制限無く使用できる。 例えばビスァリルカーボネート系モノマー、 ジァリルフタレート系モノマーを挙 げることができる。ビスァリルカーボネート系モノマ一とは、その両分子末端に、 ァリルカーボネート基を有するモノマーであることを意味する。 具体例を挙げる と、 ジエチレンダリコ一ルジァリルカーポネートを挙げることができる。 またジ
ァリルフタレート系モノマーとは、 その両分子末端に、 ァリルフ夕レ一ト基を有 するモノマーであることを意味する。 具体例を挙げると、 ジァリルイソフタレー ト、 ジァリルテレフ夕レート、 下記式
(式中、 Rは水素原子又はメチル基であり、 Xはハロゲン原子であり、 nは 1 2 0の数である。) で表されるァリルエステルオリゴマーを挙げることができる。 前記式中、 nは 1 1 0がさらに好ましい。 これらァリルエステルオリゴマーは 特開平 7— 3 3 8 3 1号公報に記載の方法で製造される。 このとき使用されるェ ステル交換反応酸触媒やモノマーの原料である多価カルボン酸の残存により反応 終了後モノマー中には酸成分が存在する。 一般的には水酸化力リゥムを使用する 滴定により酸価が、 0 . 4 m g K〇H/ g程度の酸成分がモノマー中に確認でき る。
これらのァリル系モノマーは単独あるいは混合して使用することができ、 さらに これらと共重合可能なモノマーと混合して使用してもよい。 その共重合可能なモ ノマーの具体例としては、 スチレン、 α—メチルスチレン、 ビエルトルエン、 ク 口ルスチレン、 クロルメチルスチレン、 ジビニルベンゼンの如き芳香族ビニル化 合物;メチル (メタ) ァクリレー卜、 η—プチル (メタ) ァクリレート、 η—へ キシル (メタ) ァクリレート、 シクロへキシル (メタ) ァクリレー卜、 2—ェチ ルへキシル (メタ) ァクリレート、 メトキシジエチレングリコール (メタ) ァク リレート、 メトキシポリエチレングリコール (メタ) ァクリレート、 3一クロ口
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一 2—ヒドロキシプロピル (メタ) ァクリレート、 ステアリル (メタ) ァクリレ ート、 ラウリル (メタ) ァクリレート、 フエニル (メタ) ァクリレート、 グリシ ジル (メタ) ァクリレート、 ベンジルメタクリレートの如きモノ (メタ) ァクリ レ一ト; 2—ヒドロキシェチル (メタ) ァクリレート、 2—ヒドロキシプロ'ピル (メタ) ァクリレー卜、 3—ヒドロキシプロピル (メタ) ァクリレー卜、 3—フ エノキシ一 2—ヒドロキシプロピル (メタ) ァクリレート、 4—ヒドロキシプチ ル(メタ)ァクリレートの如きヒドロキシ基を有するモノ (メタ)ァクリレート; エチレングリコールジ (メタ) ァクリレート、 ジエチレングリコールジ (メタ) ァクリレート、 トリエチレングリコ一ルジ (メタ) ァクリレート、 ポリエチレン グリコ一ルジ (メタ) ァクリレ一ト、 1 , 3—ブチレングリコ一ルジ (メタ) ァ クリレート、 1, 6—へキサンジオールジ (メタ) ァクリレート、 ネオペンチル ダリコールジ (メタ) ァクリレート、 ポリプロピレングリコールジ (メタ) ァク リレー卜、 2—ヒドロキシー 1, 3—ジ (メタ) ァクリロキシプロパン、 2 , 2 —ビス 〔4一 ( (メタ) ァクリロキシエトキシ) フエニル〕 プロパン、 2 , 2—ピ ス 〔4一 ((メタ) ァクリロキシ ·ジエトキシ) フエニル〕 プロパン、 2, 2—ピ ス〔4一((メタ)ァクリロキシ ·ポリエトキシ)フエニル〕プロパンの如きジ(メ 夕) ァクリレート; トリメチロールプロパントリメタクリレート、 テトラメチロ —ルメタントリメタクリレートの如きトリ (メタ) ァクリレート;テトラメチロ ールメタンテトラ (メタ) ァクリレ一卜の如きテ卜ラ (メタ) ァクリレート (本 明細書中の "(メタ) ァクリレート"は、 メタクリレート又はァクリレートを意味 する) などが挙げられる。 これらのうち、 高屈折率のプラスチック眼鏡レンズを 提供する観点からは、 芳香環を有するモノマ一が好ましい。
本発明において用いられる紫外線吸収剤は、 2 , 2, ージヒドロキシー 4, 4, ージメトキシベンゾフエノンおよび 2 , 2 ' , 4 , 4, ーテトラヒドロキシベンゾ フエノンである。 これらの添加量は、 プラスチックレンズモノマーの種類や所望 の紫外線吸収特性等によつて異なるが、プラスチックレンズモノマーに対して 0 · 0 1〜1重量%の範囲で使用することが望ましく、 特に 0 . 0 3〜0 . 5重量% が好ましい。 0 . 0 1重量%を下回る場合は、 4 0 0 nm付近の紫外線吸収量が
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不十分であり、 1重量%を超える範囲では、 紫外線吸収剤自身が有する可視光領 域の吸収が顕著となり、 その結果レンズが黄色に着色するため好ましくない。 ま た、 これらの紫外線吸収剤は単独あるいは混合して使用しても良い。 さらに、 レ ンズの耐候性を向上させるために、 レンズの着色が許容の範囲内で他の紫外線吸 収剤を併用してもよい。 他の紫外線吸収剤としては、 公知の物質が何ら制限無く 使用でき、 例えばべンゾトリアゾール系、 サリチル酸エステル系、 シァノアクリ レート系、 ヒドロキシベンゾェ一ト系、 ベンゾォキサジノン系おょぴトリアジン 系等を挙げることができる。 具体的に例示すると、 ェチル—2—シァノー 3, 3 ージフエニルァクリレート、 p— t一ブチルフエニルサリシレ一ト、 2 , 4ージ 一 t一ブチルフエニル— 3 ', 5, —ジ一 tーブチルー 4, ーヒドロキシベンゾェ —ト、 2, 2, ージヒドロキシー 4ーメトキシベンゾフエノン、 2—ヒドロキシ —4—メトキシベンゾフエノン、 2—ヒドロキシー 4—ォクトキシベンゾフエノ ン、 2— (2—ヒドロキシ一 5— t—ォクチルフエニル) ベンゾトリアゾ一ル等 を挙げることができる。 また、 他紫外線吸収剤を添加するときは、 単独あるいは 複数を混合して使用してもよい。 しかし、 酸価が 0 . 2 mg K〇HZ gを超える 重合性単量体に、 紫外線吸収剤として 2 , 2, —ジヒドロキシー 4, 4, —ジメ トキシベンゾフエノンまたは 2, 2 ', 4, 4, ーテトラヒドロキシベンゾフエノ ンおよび重合開始剤として I P Pを添加して重合するとレンズは著しく黄変し、 さらにレンズを光劣化させるにつれてその黄変度が増加するようになる。これは、 モノマー中の酸を含む不純物と過酸化物あるいはァリルラジカルとの反応生成物 が紫外線吸収剤と反応して黄変物質が形成するためと考えられる。 酸価を 0 . 2 m g KOHZ g未満にするかあるいは I P Pを反応性の低い他の過酸化物、 例え ばパーォキシエステル系重合開始剤に変更することでこの黄変を防止することが できる。
モノマ一中の酸価を 0 . 2 m g KOH/ g以下にする方法は大別すると、 ァク リルエステルオリゴマーを、 エステル交換反応酸触媒やモノマーの原料である多 価カルボン酸の残存を防ぐために、 反応条件を残存酸の残らない製法に反応条件 を最適化する方法、 高段数の蒸留塔により高還流比で蒸留分離する方法、 アル力
リ金属化合物又はアル力リ土類金属化合物によりアル力リ処理する方法および個 体吸着剤により吸着処理する方法を挙げることができる。 アル力リ処理剤として は、 例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、 酸化物、 炭酸塩等が 挙げられる。 取扱の簡便性、 安全性、 入手の容易さ、 経済性の観点より水酸化ァ ルカリが良好であり、 特に水酸化ナトリウムが最適である。 PJ:着剤としては、 例 えばシリカゲル、珪藻土、活性炭、酸化マグネシウム、活性アルミナ、セライト、 モレキュラーシーブス、 水酸化アルミニウム無機系合成吸着剤及びそれらの変成 体等の従来公知の吸着剤を用いることができる。 処理方法としては、 上記吸着剤 をモノマー中に直接分散させ、 吸着処理終了後に濾過により吸着剤を除去する方 法あるいは上記吸着剤を充填したカラムにモノマーを通過させる方法が望ましい。 比較的粘度の高いモノマーに対してはトルエン等のモノマーと反応しない炭化水 素系溶媒で希釈して処理する方法が好ましい。
モノマー中の酸価が 0 . S mg KOHZ g以下のモノマーを用いた場合は作製 されるレンズが黄色することはなく、 重合に供される重合開始剤は特に制限され ない。 後述するパーォキシ系重合開始剤、 好ましくはアクリル系モノマ一を効率 良く重合する点でパ一ォキシジ力一ポネー卜系重合開始剤が使用される。 該パー ォキシジ力一ポネート系重合開始剤としては前出のジィソプロピルパーォキシジ 力一ポネート (I P P)、 ジー n—プロピルパ一ォキシカーボネート、 ビス (4一 t一プチルシクロへキシル) パ一ォキシジ力一ポネート等が挙げられる。
一方、 モノマ一中の酸価が 0 . 2 m g KOH/ gを越えるモノマーを用いて黄 変防止されたレンズを作製する場合は、 反応性の低いパーエステル系過酸化物を 使用しなければならない。 パーエステル系過酸化物は、 公知のものが何ら制限な く使用できる。 このような開始剤の具体的としては、 クミルパーォキシネオデカ ノエート、 1 , 1 , 3 , 3—テトラメチルブチルバ一ォキシネオデカノエート、 1ーシクロへキシルー 1一メチルェチルパーォキシネオデカノエート、 t一へキ シルパ一ォキシネオデカノエート、 t—ブチルパーォキシネオデカノエート、 t 一へキシルバーォキシピバレート、 tーブチルパ一ォキシピバレート、 1 , 1, 3 , 3—テトラメチルブチルパーォキシ 2—ェチルへキサノエート、 2 , 5—
ジメチル一 2 , 5—ジ (2—ェチルへキサノニルパーォキシ) へキサン、 t一へ キシルバーォキシ 2—ェチルへキサノエート、 t一ブチルパーォキシ 2—ェ チルへキサノエート、 t一ブチルパーォキシイソブチレート、 t一へキシルバー ォキシイソプロピルモノカーボネート、 t _ブチルパーォキシ 3 , 5 , 5—ト リメチルへキサノエート、 t _ブチルパーォキシラウレート、 2 , 5—ジメチル 一 2, 5—ジ (3—メチルベンゾィルパ一ォキシ) へキサン、 t一ブチルバーオ キシイソプロプルモノ力一ポネート、 t—ブチルパーォキシ 2 _ェチルへキシ ルモノ力一ポネート、 t一へキシルパ一ォキシベンゾェ一ト、 2 , 5—ジメチル —2 , 5—ジ (ベンゾィルパーォキシ) へキサン、 t一ブチルパーォキシァセテ ート、 t一ブチルパーォキシベンゾェ一トなどを挙げることができる。中でも 2, 5—ジメチル一 2 , 5—ジ(2—ェチルへキサノ二ルパ一ォキシ)へキサン、 1 , 1, 3, 3—テトラメチルブチルパーォキシ 2—ェチルへキサノエート、 t一 へキシルパーォキシ 2—ェチルへキサノエ一卜、 t一ブチルパーォキシ 2― ェチルへキサノエートが黄変抑制の観点から好ましい。 これらの添加量は、 ァリ ル系モノマーの種類によって異なるが、 ァリル系モノマ一に対して 0 . 0 5〜1 0重量%の範囲で使用することが望ましく、 特に 0 . 1〜5重量%が好ましぃ。 0 . 0 5重量%を下回る場合は、 成形後のレンズの硬度が不十分であり、 1 0重 量%を超える範囲では、 レンズが黄色く着色するため好ましくない。 また、 これ らのパーォキシエステル系重合開始剤は単独あるいは混合して使用してもよい。 さらに、 レンズの成形性あるいは硬度を上げるために、 レンズの着色が許容の範 囲内でその他の重合開始剤を併用してもよい。 その他の重合開始剤としては、 公 知のパーォキシ系重合開始剤が何ら制限無く使用でき、 パーォキシケタール系、 ハイド口パーオキサイド系、 ジアルキルパーオキサイド系、 ジァシルパ一ォキサ イド系、 パーォキシジカーボネート系を使用することができる。 中でも、 パ一ォ キシケタール系、 ジアルキルパ一オキサイド系が好ましい。 具体的としては、 ジ ( 3, 5 , 5—トリメチルへキサノィル) パーオキサイド、 ジラウロイルパ一 オキサイド、 1, 1—ビス (t一へキシルパ一ォキシ) 一 3, 3, 5—トリメ チルシクロへキサン、 1, 1一ビス(t一へキシルパーォキシ)シクロへキサン、
1, 1, 3, 3—テトラメチルブチルパーォキシイソプロピルモノカーボネート、 1, 1一ビス(t—ブチルパーォキシ) 3, 3, 5—トリメチルシクロへキサン、 1, 1—ビス (t—ブチルパ一ォキシ) シクロへキサン、 t一ブチルパーォキシ ィソプロピルモノカーボネートを挙げることができる。 またその他重合開始剤を 添加する際は、 単独あるいは複数を混合して使用してもよい。 本発明のプラスチックレンズは紫外線吸収性に優れ且つ黄色みが少ないことを 特徴としている。 レンズの光路長 2. 0mmにおける 380 nmでの光線透過率 が 30 %以下が好ましい。 また、 さらには 400 nmでの光線透過率が、 20% 以下が好ましい。 一方、 レンズの黄色の度合としては、 レンズの光路長 2. 0m mにおける Y I値 (黄色度) は 0. 7〜3. 0の範囲が、 さらには 0. 7〜2. 5の範囲が、 良好な紫外線吸収性を示し且つ良好な黄色性を示すという観点から 好ましい。 本発明で用いられる特定の紫外線吸収剤を、 本発明の重合条件で製造 したレンズは、 前述の好適な紫外線吸収特性および黄色度を与える。 本発明のレ ンズの形状および厚さは特に限定されず、 その厚さは 2mm以上のものであって もよい。 厚さが 2 mm以上のレンズにおいては光線透過率および I Yの測定が困 難であるが、 この場合には、 レンズを得るのと同じ重合条件で原料の重合性単量 体組成物を重合して厚さが 2 mm以上の板状体からなる試料を作製し、 その光線 透過率および γ Iを測定することによりレンズの 2 mmの光路長における光線透 過率および Y Iを知ることができる。
本発明のプラスチック眼鏡レンズは、 紫外線吸収剤である 2, 2' ージヒドロ キシー 4, 4, 一ジメ卜キシベンゾフエノンまたは 2, 2 ', 4, 4, ーテトラヒ ドロキシベンゾフエノン、 パ一ォキシエステル系重合開始剤を添加混合したブラ スチックレンズモノマ一を重合することにより得られる。 プラスチックレンズモ ノマーの重合方法は、 特に限定されるものではないが、 好ましくは注型重合が採 用される。 すなわち、 2, 2' —ジヒドロキシ一 4, 4' ージメトキシベンゾフ ェノンまたは 2, 2', 4, 4, ーテトラヒドロキシベンゾフエノン、 パーォキシ エステル系重合開始剤と、 上述のァリル系モノマーとを混合した後、 この混合液
をレンズ成型用铸型中に注入し、 3 0 ° (:〜 1 5 0 °Cの間で加熱することによりプ ラスチック眼鏡レンズが得られる。 さらに必要に応じて、 内部離型剤、 紫外線安 定剤、 酸化防止剤、 染料、 顔料等の助剤を添加することができる。 特にレンズの 着色 (黄色化) を助剤で色調補正し、 目視の色調を良くするために、 本発明のレ ンズを製造する際に顔料が好適に用いられる。 好適な顔料としては、 含ィォゥ— ナトリゥムーアルミシリケ一トとしての群青、 フエロシアン化第二鉄を主成分と した紺青、 酸ィヒコバルトとアルミナからなるコバルトブルー、 銅フタロシアニン からなるフタロシアニンブルー等を挙げる事が出来る。 この内群青は、 油系のモ ノマーに対して分散性を向上させるために、 ポリシロキサン、 シリカ等で表面処 理したものを使用できる。 また、 他の添加剤としては、 顔料の凝集や沈降を防止 するため、 非イオン性界面活性剤等も挙げることができる。 該顔料の添加量は、 一般的にはブラスチックレンズモノマーに対して、 5〜2 0 0 p pmが好ましく、 5〜1 5 0 p pmが透過率の極度な低下を防止できるため好適である。 また、 本 発明で得られるプラスチック眼鏡レンズは、 着色剤を用いて染色処理を行うこと ができる。 また、 耐擦傷性向上のため、 例えば有機ケィ素化合物、 酸化スズ、 酸 化ケィ素、 酸化ジルコニウム、 酸化チタンの如き微粒子状無機物等を有するコ一 ティング液を用いて硬ィ匕被膜をプラスチックレンズ上に形成することができる。 また、 耐衝撃性を向上させるために、 例えばポリウレタンを主成分とするプライ マー層を設けることができる。 さらに、 反射防止の性能を付与するために、 例え ば酸化ケィ素、 二酸化チタン、 酸化ジルコニウム、 酸ィ匕タンタル等を用いて反射 防止膜を施すこともできる。 また、 撥水性向上のため、 例えばフッ素原子を有す る有機ケィ素ィヒ合物を用いて撥水膜を反射防止膜上に施すことができる。 実施例
以下、 本発明について実施例を挙げて説明するが、 本発明はこれらの実施例に 限定されるものではない。
実施例 1
ジァリルイソフ夕レートオリゴマー 70重量部 (下記式の混合物、 n = 0が 4 0重量%、 n = 1力 54重量%および n= 2— 7が 60重量%)、ジエチレンダリ コールビスァリルカーボネート 30重量部 (PPG社製:商品名 CR—39) からなるモノマ一を調整した。 このモノマー 100重量部に対し、 紫外線吸収剤 として 2, 2, 一ジヒドロキシ一 4, 4, ージメトキシベンゾフエノン (商品名 シーゾーブ 107 (シプロ化成 (株) 製)) を 0.1重量部、 ェチル—2—シァノ —3, 3—ジフエニルァクリレート (商品名バイオソープ 910 (共同薬品 (株) 製)) 0. 1重量部と、 重合開始剤として 1, 1, 3, 3—テトラメチルブチルバ 一ォキシ 2—ェチルへキサノエ一卜 (商品名パーォク夕 O (日本油脂 (株) 製)) 2. 25重量部、 1, 1一ビス (t—ブチルパーォキシ) 3, 3, 5—トリメチ ルシクロへキサン (商品名パーへキサ 3M (日本油脂 (株) 製)) 0. 2重量部及 び下記顔料溶液 1. 5 gを添加し、 充分に攪拌混合してレンズ用モノマー組成物 を調製した。 ついで、 このレンズ用モノマー組成物を、 予め準備したガラス製モ ールドと樹脂製ガスケットからなるレンズ成型用錶型 (レンズ径 70 mm、 肉厚 2. 0mmに設定) の中に注入し、 電気炉中で 40〜110°Cまで 20時間かけ て徐々に昇温し 110°Cで 2時間保持して重合を行った。 重合終了後、 ガスケッ トとモールドを取り外したのち、 110°Cで 2時間熱処理して厚さ 2 mmのレン ズを得た。得られたレンズの紫外線透過率および黄色度を以下の方法で評価した。
(顔料溶液の調整)
CR-39 (PPG社製) 100 gに、 PB— 80 (顔料、 第一化成工業 (株) 製) 1 g、 ポリオキシエチレンォクチルフエニルエーテル 0· 2 gを加え、 ボー ルミルで 30分間処理して顔料溶液を得た。
(2) 紫外線透過率および黄色度の評価
(i) 紫外線透過率の評価
分光光度計 (U— 3210形 自記分光光度計、 日立製作所 (株) 製) を用い て 400 nmの波長における紫外線透過率を測定した。 その透過率を T 400% とし、 結果を表 2に示した。
(i i) 黄色度 (Y I) 測定:カラ一コンピュータ一 (夕ツチパネル式 SMカラ 一コンピューター SM— T、 スガ試験機 (株)製) を用いて、 J I S K710 3-1977に規定されているプラスチックの黄色度及び黄色度試験方法に準じ て測定した。 その値を YIとし、 結果を表 2に示した。
実施例 2〜4
表 1に示すような、 モノマ一組成、 紫外線吸収剤の添加量および重合開始剤に 変えた以外は実施例 1と同様にしてレンズを得た。 得られたレンズの紫外線透過 率および黄色度の結果を表 2に示した。
比較例 1
実施例 1において紫外線吸収剤として 2— (2—ヒドロキシ _3_ t e r t— ブチル— 5—メチルフエニル) 一 5' —クロ口べンゾトリアゾ一ル (商品名スミ ソ一ブ 300 (住友化学(株) 製)) を 0. 1重量部用いた以外は、 実施例 1と同 様にしてレンズを得た。 得られたレンズの紫外線透過率および黄色度の結果を表 2に示した。
比較例 2〜4
表 1に示すような、 モノマー組成、 紫外線吸収剤の添加量および重合開始剤に 変えた以外は実施例 1と同様にしてレンズを得た。 得られたレンズの紫外線透過 率および黄色度の結果を表 2に示した。
表 1 紫外線吸収剤 重合開始剤
(重量部) (重量部) (重量部) 実施例 1 ジァリルイソフタレートオリゴマー 70 シ一ソープ 107 0.1 パーォクタ 0 2.25 ジエチレングリコールビスァリルカ一ポネート 30 バイオソープ 910 0.1 パーへキサ 3 M 0.2 実施例 2 ジァリルイソフタレートオリゴマー 70 シ一ソ一ブ 106 0.15 パ一ォクタ O 2.
ジェチレングリコールビスァリルカーボネート 30 バイオソープ 910 0.1 パーへキサ 3 M 0.2 実施例 3 ジァリルイソフタレートオリゴマー 70 シーソーブ 107 0.1 パーォクタ 0 2.50 ジエチレングリコールビスァリルカーボネート 30 バイオソープ 910 0.1
実施例 4 ジァリルテレフ夕レートオリゴマー 70 シーソーブ 107 0.1 パーォクタ O 2.25 ジェチレングリコ一ルビスァリルカーボネート 30 バイオソープ 910 0,1 パーへキサ 3 M 0.2 比較例 1 ジァリルイソフタレートオリゴマー 70 スミソ一プ 300 0.1 パーォクタ〇 2.25 ジェチレングリコ一ルビスァリルカ一ポネ一ト 30 バイオソープ 910 0.1 パ一へキサ 3 M 0.2 比較例 2 ジァリルイソフタレートオリゴマー 70 スミソープ 300 0.1 パ一ォクタ 0 2.50 ジエチレングリコールビスァリルカーボネート 30 バイオソ一ブ 910 0.1
比較例 3 ジァリルイソフタレートオリゴマ一 70 シ一ソープ 107 0.1 パーロィル IPP 2.0 ジエチレングリコールビスァリルカ一ポネート 3ひ バイオソープ 910 0.1
比較例 4 ジァリルイソフタレ一卜オリゴマー 70 スミソ一ブ 300 0.1 パ一ロイル IPP 2.0 ジェチレングリコールビスァリルカ一ポネ一ト 30 バイオソ一ブ 910 0.1
表 2
実施例 5
(1) モノマーの精製
下記ァリルエステルオリゴマー 100重量部 (下記式で示される混合物 n=0 が 40重量%、 ] =1が54重量%、 11=2— 5が6重量%、 R=H、 X = B r) に対し、 トルエンを 4容積倍入れ、 酸ィ匕マグネシユウムを 5重量部添加し室温に て 20時間攪拌した。 攪拌終了後、 ヌッチェを用い ADVANTEC社製定量濾 紙 (No. 2) で濾過し、 ついで ADVANTEC社製 PTFE濾紙 (0. 5 m) を用いて濾過を行い、 トルエンを減圧下留去して精製ァリルエステルオリゴ マーを得た。 トルエン残量は 0. 3重量%であった。
( 1 ) にて得た精製ァリルエステルオリゴマー 96重量部およびジベンジルマ レート 4重量部を混合しプラスチックレンズモノマーを調整した。
尚、 吸着剤処理を行う前の未精製ァリルエステルモノマーを用い調整した上記 同一混合比でのプラスチックレンズモノマーの酸価は、 0. 4mgKOH/gで あり、 精製後の精製ァリルエステルモノマーを用い調整したプラスチックレンズ モノマーの酸価は、 0. 08mgK〇H/gであった。酸価の測定は、 下記 (3) の方法にて測定した。
(3) レンズ用モノマーの酸価測定方法
2 mlミクロビューレットに N/10水酸ィ匕カリウムアルコール (エタノール性) 溶液 (以下、滴定液)をセットし、スターラーを準備した。メスシリンダーを用い、 エタノールとトルエンを 50mlずつ精秤し、 200mlビーカーに入れ、 スタ一ラーに て攪拌混合した。 フエノールフタレイン溶液 3滴を加え、 滴定液にて空滴定を行 なった。空滴定後の溶液に試料 20gを入れ、スターラ一にて攪拌混合した。更に、 フエノールフタレイン溶液 3滴を加え、 滴定液にて試料滴定を行って滴定量を得 た。 酸価の計算方法は以下の式に基づいて計算した。
酸価 (mgKOH/g)=滴定量 (ml) X 滴定液 f X 5.6 ÷ 試料量 (g)
( ま、 滴定液のファクタ一を示す。)
(4) プラスチックレンズの作製
(2) にて調整したレンズ用モノマ一 100重量部に対し、 紫外線吸収剤とし て 2, 2 '—ジヒドロキシ _ 4, 4, ージメ卜キシベンゾフエノン (商品名シー ソープ 107 (シプロ化成 (株) 製)) を 0.05重量部、 ェチルー 2—シァノー 3, 3—ジフエニルァクリレート (商品名シーソーブ 501 (シプロ化成 (株) 製)) を 0. 1重量部、 2- (2—ヒドロキシ— 5— t—ォクチルフエ二ル) ベン ゾトリアゾール(商品名シーソーブ 709 (シプロ化成 (株) 製)) を 0. 2重量 部及び下記に示した顔料溶液 1. 5 gと、 重合開始剤としてジィソプロピルパー ォキシカーボネート (商品名パ一ロイル I PP (日本油脂(株) 製)) 2. 2重量 部を添加し、 充分に攪拌混合してレンズ用モノマー組成物を調製した。 ついで、
このレンズ用モノマー組成物を、 予め準備したガラス製モールドと樹脂製ガスケ ットからなるレンズ成型用铸型 (レンズ径 70 mm、 肉厚 2 · 0 mmに設定) の 中に注入し、 電気炉中で 40〜90°Cまで 19時間かけて徐々に昇温し 9 CTCで 2時間保持して重合を行った。 重合終了後、 ガスケットとモールドを取り外した のち、 110°Cで 2時間熱処理してレンズを得た。得られたレンズ(厚さ 2mm) の紫外線透過率測定、 黄色度測定及び下記耐候性試験を実施し、 結果を表 3にま とめた。
(顔料溶液の調整)
CR-39 (PPG社製) 100gに、 PB— 80 (顔料、 第一化成工業 (株) 製) l g、 ポリオキシエチレンォクチルフエ二ルエーテル 0. 2 gを加え、 ポー ルミルで 30分間処理して顔料溶液を得た。
(5) フエ一ドメ一ターによる耐候性試験
光照射によるレンズの黄変度を評価するために次の劣化促進試験を行った。 す なわち、 得られたレンズをスガ試験器 (株) 製キセノンウエザーメーター X 25 により 50及び 100時間促進劣化させた。その後、 実施例 1の ( 2 ) の U i ) で示した方法で、 黄色度測定を行った。
実施例 6
(1) モノマーの精製
実施例 5で用いたァリルエステルオリゴマー 100 gに対し酢酸ェチル 300 m 1を添カ卩し攪拌した。 ついで、 5 %7jc酸化ナトリゥム水溶液 100mlを加え 充分に攪拌し、 酸分を水層に抽出した。 さらに分液後、 蒸留水 100mlで水洗 し中性になるまで繰り返し水洗を行った。 その後酢酸ェチルを減圧除去し、 更に トルエン 100mlを加え減圧除去を行った。 トルエンの残量は、 残渣に対して 0. 3重量%であった。
(2) レンズ用モノマーの調整
( 1)にて精製したァリルエステルオリゴマ一 96重量部およびジベンジルマ レート 4重量部を混合しレンズ用モノマーを調整した。 得られたレンズ用モノマ —の酸価は 0. 18mgKOHZgであった。
上記 (2 ) にて得られた精製ァリルエステルオリゴマーを用いた以外は実施例 5と同様な方法でレンズを作成し、 得られたレンズの紫外線透過率測定、 黄色度 測定及び耐候性試験を実施し、 結果を表 3に示した。
比較例 5
実施例 5において未精製のァリルエステルオリゴマー (酸価 0 . mg KOH Zg) を使用した以外は、 実施例 5と同様にしてレンズを得た。 得られたレンズ の紫外線透過率および黄色度の結果を表 3に示した。 表 3
発明の効果
本発明により、 波長が 4 0 0 nm近辺までの紫外線をほぼ完全に吸収するにも かかわらずレンズの着色が少ないプラスチック眼鏡レンズを得ることができる。