WO2004078961A1 - 浮遊担体および浮遊・回収方法 - Google Patents

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Abstract

ハイドロゲル形成性の高分子を少なくとも含むゲル形成性の浮遊担体。該浮遊担体は低温でゾル状態、高温でゲル状態となる熱可逆的なゾル−ゲル転移を示し、且つ、高温のゲル状態で実質的に水不溶性を示す。該浮遊担体中における鉄球(直径4mm)の沈降速度は、前記ゾル−ゲル転移温度より16℃高い温度において1mm/分以下であり、且つゾル−ゲル転移温度より6℃低い温度において5mm/分以上である。被浮遊物に対する外力の印加が制限された状態で(例えば、浮遊担体を収容すべき容器壁に、被浮遊物を実質的に接触させずに)、被浮遊物を浮遊させることが可能な浮遊担体および該担体を利用した浮遊・回収方法が提供される。

Description

明 細 書 浮遊担体および浮遊 · 回収方法 技術分野
本発明は、 好適な浮遊状態 (すなわち、 被浮遊物に対す'る外力の 印加が制限された状態) において、 被浮遊物を浮遊させることが可 能な浮遊担体に関する。
本発明の浮遊担体の用途は、 例えば、 動植物細胞および/又は組 織の培養 (例えば、 未分化な細胞の三次元培養あるいは浮遊培養) のための担体と して特に好適に使用可能である。 背景技術
本発明の浮遊担体の使用法ないし用途は特に制限されないが、 説 明の便宜上、 最近のト ピックスである未分化な動植物細胞および Z 又は組織の培養に関連する先行技術について述べる。
近年、 未分化な動植物の培養方法と して、 未分化状態を維持し易 い点から、 液体培養ないしは浮遊培養が広く行われている。 植物細 胞の培養の場合は、 植物体からプロ トプラス トを単離し、 該プロ ト プラス トを培養しカルスあるいは毛状根を再生し育成する技術が開 発され、 特にプロ トプラス トの段階で遺伝子導入して目的にあった 植物体を育種することが行われている。 このプロ トプラス トの培養 は主に液体培養で行われているが、 液体培養では攪拌を必要とする ためプロ トプラス トに衝突などの物理的傷害を与える可能性がある 動物細胞の培養の場合は、 個体の全ての細胞に分化する能力を有 する胚性幹細胞 (Embryoni c St em Ce l l s , E S細胞) 力 S、 最近特に 注目されている。 例えば、 マウス E S細胞は、 インターロイキン 6 (interleukin-6, I L - 6 ) ファミ リーに属する白血病抑制因子 (Leukemia inhibitory factor, L I F ) の共存下では、 未分ィ匕状 態を維持したまま増殖できることが知られている。 マウス E S細胞 は胚盤胞に注入すると胎盤以外の全ての組織に分化することができ る。
このよ う なイ ンビポ (in vivo) と同じ条件をイ ンビ ト ロ (in vi tro) で作り出すために、 胚様体 (Embryoid body, E B) を形成さ せることが広く行われている。 E Bからは内胚葉、 中胚葉、 外胚葉 への分化が認められ、 内皮系細胞、 血液細胞、 筋細胞、 神経細胞、 脂肪細胞が得られることが報告されている (倭 英司ら、 細胞工学 、 V o l . 2 0, N o . 7 , 9 8 9 — 9 9 3 ( 2 0 0 1 ) ; 非特許 文献 1 ) 。
上記した E Bは、 L I Fを除いた状態で E S細胞を球状に保ち浮 遊培養することで得ることができるが、 E S細胞が容器壁に付着し ない状態で培養することが事実上は必須である。 これは、 E S細胞 が容器壁に付着した場合には、 繊維芽細胞様の接着性細胞に分化し てしまう という理由による。 .
このように E S細胞が容器壁に付着しない状態で培養することを 可能とする E Bの作成方法と しては、 E S細胞を含む培養液をシャ ーレの天井などにつるし三次元的に培養するハンギング · カルチヤ 一 (hanging culture) 法や、 メチルセルロースを含有する高粘度 液体培地中で E S細胞を三次元的に培養するメチルセル口ース法が 知られている (これらのハンギング · カルチャー法およびメチルセ ルロース法の詳細に関しては、 例えば、 文献 Desbaillets I,etal:E xp Physiol. , 8 5 , 6 4 5 - 6 5 1 ( 2 0 0 0 ) (非特許文献 2 ) を参照することができる) 。 上記ハンギング · カルチャー法では吊された細胞は重力によ り培 養液の滴の下部に集まり、 しだいに球形を呈するようになるが、 こ の方法では 1滴のカルチャーで 1個の E B しか作ることができず、 大量の E Bを作成することは困難である。 また、 このハンギング ' カルチャー法では、 通常は別個の細胞が凝集して E Bを作るため、 単一の E S細胞が増殖して E Bを形成したという保証はなく、 他の 細胞のコンクミネーショ ンが問題となる。
他方、 上記メチルセルロース法では、 E S細胞あるいは E S細胞 が増殖した細胞塊が徐々に沈降して容器底に付着し、 繊維芽細胞等 の付着性細胞が発生するという問題がある。 更に、 メチルセルロー ス含有培地が高粘度のため、 E S細胞の播種、 混和、 更に E Bの回 収操作が困難であるという問題もある。
加えて、 上記したハンギング · カルチャー法およびメチルセル口 ース法のいずれにおいても、 これらの方法による培養の途中で培地 交換が困難であるため、 養分の補給や老廃物の除去が出来ず、 E B の成長速度が遅いという問題があった。
(非特許文献 1 ) 倭 英司ら、 細胞工学、 V o l . 2 0, N o . 7, 9 8 9 - 9 9 3 ( 2 0 0 1 )
(非特許文献 2 ) Desbaillets I,etal:Exp Physiol. , 8 5 , 6 4 5 - 6 5 1 ( 2 0 0 0 ) 発明の開示
本発明の目的は、 上記した従来技術の欠点を解消した浮遊担体、 および該担体を利用した浮遊 · 回収方法を提供することにある。 本発明の他の目的は、 被浮遊物に対する外力の印加が制限された 状態で (例えば、 浮遊担体を収容すべき容器壁に、 被浮遊物を実質 的に接触させずに) 、 被浮遊物を浮遊させることが可能な浮遊担体 および該担体を利用した浮遊 · 回収方法を提供することにある。 本発明者は鋭意研究の結果、 よ り低温でゾル化し、 より高温でゲ ル化するゾルーゲル転移温度を有し、 且つ該ゾルーゲル転移が熱可 逆的なハイ ドロゲル形成性の高分子を少なく とも含む組成物であつ て、 しかも特定の鉄球沈降速度を与えるゲル形成性組成物を浮遊担 体として利用することが、 上記目的の達成のために極めて効果的な ことを見出した。
本発明の浮遊担体は上記知見に基づく ものであり、 よ り詳しく は 、 ハイ ド口ゲル形成性の高分子を少なく とも含むゲル形成性の浮遊 担体であって ; 該浮遊担体が低温でゾル状態、 高温でゲル状態とな る熱可逆的なゾルーゲル転移を示し、 且つ、 高温のゲル状態で実質 的に水不溶性を示し、
該浮遊担体中における鉄球 (直径 4 mm) の沈降速度が、 前記ゾ ルーゲル転移温度よ り 1 6 °C高い温度において I mmZ分以下であ り、 且つゾル—ゲル転移温度より 6 °C低い温度において 5 mm/分 以上であることを特徴とするものである。
本発明によれば、 更に、 ハイ ドロゲル形成性の高分子を少なく と も含むゲル形成性の浮遊担体であって ; 該浮遊担体が低温でゾル状 態、 高温でゲル状態となる熱可逆的なゾル—ゲル転移を示し、 且つ 、 高温のゲル状態で実質的に水不溶性を示し、
該浮遊担体中における鉄球 (直径 4 mm) の沈降速度が、 3 7 °C において l mmZ分以下であり、 且つ 1 0 °Cにおいて 5 mm/分以 上であることを特徴とする浮遊担体が提供される。
本発明によれば、 更に、 水と、 ハイ ド口ゲル形成性の高分子とを 少なく とも含むゲル形成性の浮遊担体であって ; 該浮遊担体が低温 でゾル状態、 高温でゲル状態となる熱可逆的なゾルーゲル転移を示 し、 且つ高温のゲル状態で実質的に水不溶性を示し ; 該浮遊担体中 における鉄球 (直径 4 m m ) の沈降速度が、 前記ゾル—ゲル転移温 度よ り 1 6 °C高い温度において l m m Z分以下であり、 且つゾル— ゲル転移温度よ り 6 °C低い温度において 5 m m /分以上である浮遊 担体を用い ;
該浮遊担体を該ゾルーゲル転移温度よ り低温のゾル状態と して、 該浮遊担体に被浮遊物を添加し、
該ゾルーゲル転移温度よ り高温のゲル状態で被浮遊物を保持し、 その後、
再度該ゾルーゲル転移温度より低温のゾル状態として保持後の被 浮遊物を回収することを特徴とする浮遊 · 回収方法が提供される。 本発明によれば、 更にハイ ドロゲル形成性の高分子を少なく とも 含むゲル形成性の浮遊担体であって ; 該浮遊担体が低温でゾル状態 、 高温でゲル状態となる熱可逆的なゾルーゲル転移を示し、 且つ、 高温のゲル状態で実質的に水不溶性を示し、 該浮遊担体中における 鉄球 (直径 4 m m ) の沈降速度が、 3 7 °Cにおいて 1 m m 分以下 であり、 且つ 1 0 °Cにおいて 5 m m Z分以上である浮遊担体を用い 該浮遊担体を該ゾルーゲル転移温度よ り低温のゾル状態と して、 該浮遊担体に被浮遊物を添加し、
該ゾルーゲル転移温度よ り高温のゲル状態で被浮遊物を保持し、 その後、
再度該ゾルーゲル転移温度よ り低温のゾル状態と して保持後の被 浮遊物を回収することを特徴とする浮遊 · 回収方法。
本発明者は上記知見に基づいて更に研究を進めた結果、 上記の浮 遊担体を用いた場合には、 生体由来の物質 (例えば、 細胞ないし組 織) の培養および回収が極めて容易となることをも見出した。 例え ば、 本発明の遊担体を用いた場合には、 E S細胞等の未分化な細胞 を、 その未分化な状態を維持したままで増殖させ得ることを見出し た。
例えば、 上記構成を有する本発明の浮遊担体を水を含むゲル形成 性組成物と した場合は、 低温 (ゾルーゲル転移温度よ り低い温度) で流動性のあるゾル状態にあるため、 未分化な細胞を容易に播種、 混和することができる。 このゲル形成性組成物は、 高温 (ゾルーゲ ル転移温度よ り高い温度 ; 例えば室温あるいは 3 7 °Cの培養温度) でそのままでゲル化することができるため、 本発明の浮遊担体中で 幹細胞や前駆細胞を、 生体内と同様の環境下で 3次元的に培養する ことが可能となる。
更に、 本発明の浮遊担体は高温のゲル状態で適度な比重と粘度を 有するため、 細胞や細胞集合体が該浮遊担体中で実質的に沈降せず 、 培養容器の底面に付着することを回避できる。 更に驚くべきこと に、 本発明の浮遊担体中では、 E S細胞などの未分化な細胞が未分 化な状態を維持したまま増殖することができる。
本発明の浮遊担体では、 ハイ ドロゲル形成性のゲル形成性組成物 が高温 (培養温度) のゲル状態で実質的に水不溶性を示すため、 本 発明の浮遊担体の上に液体培地を重層したり (図 1 ) 、 液体培地中 に本発明の浮遊担体を浮遊させて細胞を培養したり (図 2 ) するこ とが容易である。 未分化な細胞が増殖する際には大量の養分を必要 とするが、 本発明の浮遊担体を用いる培養方法では外部の液体培地 からその必要な養分を補給することができる。 また、 細胞が生成す る老廃物などの細胞増殖を阻害する物質を外部の液体培地中へ排出 することができる。 その結果、 本発明の浮遊担体を用いる培養方法 では従来の細胞培養方法に比べて細胞の増殖を促進することができ 未分化な細胞を目的の細胞に分化誘導するには、 幹細胞や前駆細' 胞のよ うな細胞のみでなく、 その分化や増殖を促す細胞成長因子の ような種々の化学仲介物質 (chemical mediator) が通常は必要で ある。 本発明の浮遊担体は培養温度でゲル化してハイ ド口ゲル形成 性高分子が 3次元的な網目構造を形成しているため、 これらの化学 仲介物質を浮遊担体中に長期間にわたって保持しておく ことができ る。 この結果、 未分化細胞から目的とする細胞への良好な分化誘導 が達成される。
本発明の浮遊担体中で、 例えば細胞や器官等を培養した後、 再び 冷却すれば低温で流動性のあるゾル状態に戻るため、 培養された細 胞ゃ器官等を容易に且つ傷害を与えることなく回収することができ る。 また、 本発明の浮遊担体はそのゾルーゲル転移温度より低温の ゾル状態では、 水により容易に希釈できるため、 更に流動性を高く でき、 更に培養された細胞や器官等の回収を容易にすることができ る。
上記した本発明の浮遊担体および浮遊 · 回収方法は、 例えば、 以 下のような態様を含む。
[ 1 ] ハイ ド口ゲル形成性の高分子を少なく とも含むゲル形成 性の浮遊担体であって ; 該浮遊担体が低温でゾル状態、 高温でゲル 状態となる熱可逆的なゾルーゲル転移を示し、 且つ、 高温のゲル状 態で実質的に水不溶性を示し、
該浮遊担体中における鉄球 (直径 4 mm) の沈降速度が、 前記ゾ ルーゲル転移温度より 1 6 °C高い温度において 1 mmZ分以下であ り、 且つゾルーゲル転移温度よ り 6 °C低い温度において 5 mm/分 以上であることを特徴とする浮遊担体。
[ 2 ] 前記ゾル—ゲル転移温度よ り 1 6 °C高い温度における沈 降速度 ( a ) と、 ゾルーゲル転移温度よ り 6 °C低い温度における沈 降速度 ( b ) との比 ( b / a ) が 5以上である [ 1 ] に記載の浮遊 担体。
[ 3 ] ハイ ドロゲル形成性の高分子を少なく とも含むゲル形成 性の浮遊担体であって ; 該浮遊担体が低温でゾル状態、 高温でゲル 状態となる熱可逆的なゾル—ゲル転移を示し、 且つ、 高温のゲル状 態で実質的に水不溶性を示し、
該浮遊担体中における鉄球 (直径 4 mm) の沈降速度が、 3 7 °C において l mm /分以下であり、 且つ 1 0 °Cにおいて 5 mm /分以 上であることを特徴とする浮遊担体。
[ 4 ] 3 7 °Cにおける沈降速度 ( c ) と、 1 0 °Cにおける沈降 速度 ( d ) との比 ( c / d ) が 5以上である [ 3 ] に記載の浮遊担 体。
[ 5 ] 前記浮遊担体中で実質的に繊維芽細胞が増殖しない [ 1 :! 〜 [ 4 ] のいずれかに記載の浮遊担体。
[ 6 ] 前記ハイ ド口ゲル形成性の高分子が、 曇点を有する複数 のプロ ック と親水性のブロックとが結合した高分子である [ 1 ] 〜 [ 5 ] のいずれかに記載の浮遊担体。
[ 7 ] 前記ゾルーゲル転移温度が 0 °〇ょ り高く 4 5 °〇以下でぁ る [ 1 ] 〜 [ 6 ] のいずれかに記載の浮遊担体。
[ 8 ] 更に水を含む [ 1 ] 〜 [ 7 ] のいずれかに記載の浮遊担 体。
[ 9 ] 更に化学仲介物質を含有する [ 1 ] 〜 [ 8 ] のいずれか に記載の浮遊担体。
[ 1 0 ] 水と、 ハイ ド口ゲル形成性の高分子とを少なく とも含 むゲル形成性の浮遊担体であつて ; 該浮遊担体が低温でゾル状態、 高温でゲル状態となる熱可逆的なゾルーゲル転移を示し、 且つ高温 のゲル状態で実質的に水不溶性を示し ; 該浮遊担体中における鉄球 (直径 4 mm) の沈降速度が、 前記ゾルーゲル転移温度より 1 6 °C 高い温度において 1 mm/分以下であり、 且つゾルーゲル転移温度 より 6 °C低い温度において 5 mm/分以上である浮遊担体を用い ; 該浮遊担体を該ゾルーゲル転移温度よ り低温のゾル状態として、 該浮遊担体に被浮遊物を添加し、
該ゾル—ゲル転移温度より高温のゲル状態で被浮遊物を保持し、 その後、 '
再度該ゾルーゲル転移温度よ り低温のゾル状態と して保持後の被 浮遊物を回収することを特徴とする浮遊 · 回収方法。
[ 1 1 ] ハイ ド口ゲル形成性の高分子を少なく とも含むゲル形 成性の浮遊担体であって ; 該浮遊担体が低温でゾル状態、 高温でゲ ル状態となる熱可逆的なゾルーゲル転移を示し、 且つ、 高温のゲル 状態で実質的に水不溶性を示し、 該浮遊担体中における鉄球 (直径
4 mm) の沈降速度が、 3 7 °Cにおいて 1 mm/分以下であり、 且 つ 1 0 °Cにおいて 5 mmZ分以上である浮遊担体を用い ;
該浮遊担体を該ゾルーゲル転移温度より低温のゾル状態と して、 該浮遊担体に被浮遊物を添加し、
該ゾルーゲル転移温度より高温のゲル状態で被浮遊物を保持し、 その後、
再度該ゾル—ゲル転移温度より低温のゾル状態と して保持後の被 浮遊物を回収することを特徴とする浮遊 · 回収方法。
[ 1 2 ] 前記被浮遊物が、 生体由来の細胞および/又は組織で あり、 且つ浮遊担体中で生体由来の細胞およびノ又は組織の培養を 行う [ 1 0 ] または [ 1 1 ] に記載の浮遊 · 回収方法。
[ 1 3 ] 前記被浮遊物が E S細胞である [ 1 2 ] に記載の浮遊 • 回収方法。
[ 1 4 ] 前記 [ 1 2 ] に記载の方法で培養、 回収されたことを 特徴とする E S細胞。 [ 1 5 ] 前記 [ 1 2 ] に記載の方法で培養、 回収されたことを 特徴とする胚様体 (Embryo i d body、 E B ) 。 図面の簡単な説明
図 1 は、 本発明の浮遊担体中で細胞を培養する方法の 1態様 (実 施例 2に相当) を示す模式断面図である。
図 2は、 本発明の浮遊担体中で細胞を培養する方法の他の 1態様 を示す模式断面図である。
図 3は、 本発明の浮遊担体中でマウス E S細胞を 6 日間培養した (実施例 1 ) 後の顕微鏡写真 (倍率 1 0 0倍) である。
図 4は、 本発明の浮遊担体中でマウス E S細胞を 6 日間培養した (実施例 2 ) 後の顕微鏡写真 (倍率 1 0 0倍) であり、 3 日 目に重 層培地の交換を行ったものである。
図 5は、 市販のメチルセルロース培地中でマウス E S細胞を 6 日 間培養した (比較例) 後の顕微鏡写真 (倍率 4 0倍) である。
図 6は、 本発明の浮遊担体 ( L I Fあり) 中で培養されたマウス E S細胞のアルカリ性フォスファターゼ染色像 (位相差顕微鏡観察 倍率 1 0 0倍) である。
図 7 本発明の浮遊担体 (L I Fなし) 中で培養されたマウス E S細胞のアル力 リ性フォスファターゼ染色像 (位相差顕微鏡観察倍 率 1 0 0倍)
図 8 fe eder細胞上 (L I Fあり) で培養されたマウス E S細胞 のアル力リ性フォスファターゼ染色像 (位相差顕微鏡観察倍率 1 0 0倍)
図 9 本発明の浮遊担体 ( L I Fなし) 中で培養された力二クイ ザル E S細胞のアルカリ性フォスファターゼ染色像(位相差顕微鏡 観察倍率 4 0 0倍) 図 1 0 feeder細胞上( L I Fなし) で培養された力二クイザル E S細胞のアル力 リ性フォスファターゼ染色像 (位相差顕微鏡観察 倍率 4 0 0倍) 発明を実施するための最良の形態
以下、 必要に応じて図面を参照しつつ本発明を更に具体的に説明 する。 以下の記载において量比を表す 「部」 および 「%」 は、 特に 断らない限り質量基準とする。
(浮遊担体)
本発明の浮遊担体は、 その水溶液がゾルーゲル転移温度を有する ハイ ドロゲル形成性の高分子を少なく とも含むゲル形成性の浮遊担 体である。 このゲル形成性浮遊担体は、 低温でゾル状態、 高温でゲ ル状態となる熱可逆的なゾルーゲル転移を示し、 且つ、 該ゲル形成 性浮遊担体が高温のゲル状態で実質的に水不溶性を示す。
更に、 本発明の浮遊担体は、 担体中における鉄球 (直径 4 mm) の沈降速度が、 前記ゾルーゲル転移温度よ り 1 6 °C高い温度におい て 1 πιπιΖ分以下であり、 且つゾル—ゲル転移温度より 6 °C低い温 度において 5 mmZ分以上である。
本発明において、 「浮遊」 とは、 被浮遊物質が本発明の担体 (媒 体) 中で、 該担体を保持ないし収容すべき固体材料 (例えば、 本発 明の担体を収容すべき容器の内壁) に実質的に接触することなく、 本発明の担体によつて実質的に保持されていることを言う。
(ゾルーゲル転移温度)
本発明において 「ゾル状態」 、 「ゲル状態」 および 「ゾルーゲル 転移温度の定義および測定は、 文献 (H. Yoshioka ら、 Journal of Macromolecular Science, A 1 1 ) , 1 1 3 ( 1 9 9 4 ) ) に記載された定義および方法に基づく。 即ち、 観測周波数 1 H z における試料の動的弾性率を低温側から高温側へ徐々に温度を変化
( 1 °C/ 1分) させて測定し、 該試料の貯蔵弾性率 (G ,、 弾性項 ) が損失弾性率 (G" 、 粘性項) を上回る点の温度をゾルーゲル転 移温度とする。 一般に、 G" > G , の状態がゾルであり、 G" く G 'の状態がゲルであると定義される。 このゾルーゲル転移温度の測 定に際しては、 下記の測定条件が好適に使用可能である。 '
<動的弾性率の測定条件 >
測定機器 (商品名) : ス ト レス制御式レオメーター AR 5 0 0 ( T Aィンスツルメ ンッ社製)
試料溶液 (ないし分散液) の濃度 (ただし 「ゾルーゲル転移温度 を有する高分子化合物」 の濃度として) : 1 0 (重量) %
試料溶液の量 : 約 0. 8 g
測定用セルの形状 · 寸法 : アタ リル製平行円盤 (直径 4. 0 c m ) 、
ギャップ 6 0 0 m
測定周波数 : 1 H z
適用ス ト レス : 線形領域内。
好適なゾルーゲル転移温度を有するハイ ドロゲルは、 後述するよ うな具体的な化合物の中から、 上記したスク リーニング方法 (ゾル 一ゲル転移温度測定法) に従って容易に選択することができる。 本 発明の浮遊担体を用いて被浮遊物を処理および回収する一連の操作 においては、 上記したゾルーゲル転移温度 ( e °C) を、 被浮遊物の 処理温度 ( f °C) と、 被浮遊物を分散、 混和あるいは回収するため の冷却時の温度 ( g °C) との間に設定することが好ましい。 すなわ ち、 上記した 3種の温度 e :、 f °C、 および g °Cの間には、 f > e > gの関係があることが好ましい。 よ り具体的には、 ( f - e ) は 1 ~ 9 0 °C、 更には 2〜 5 0 °Cであることが好ましく、 また ( e — g ) は:!〜 5 0 °C、 更には 2〜 4 0 °Cであることが好ましい。
(細胞や生体組織の培養に用いる態様)
本発明の浮遊担体を細胞や生体組織の培養に用いる態様において は、 細胞や生体組織の熱的損傷を防ぐ点からは、 上記ゾルーゲル転 移温度は 0 °Cよ り高く、 4 5 °C以下であることが好ましく、 更には 、 0 °Cよ り高く 4 2 °C以下 (特に 4 °C以上 4 0 °C以下) であること が好まし ヽ。
このよ うな好適なゾル—ゲル転移温度を有するハイ ド口ゲルは、 後述するような具体的な化合物の中から、 上記したスク リーニング 方法 (ゾルーゲル転移温度測定法) に従って容易に選択することが できる。 本発明の浮遊担体を用いて細胞を培養する一連の操作にお いては、 上記したゾル—ゲル転移温度 ( e °C ) を細胞の培養温度 ( f °C ) と、 細胞を播種、 混和あるいは回収するための冷却時の温度
( g °C ) との間に設定することが好ましい。 すなわち、 上記した 3 種の温度 e °C、 f °C、 および g °Cの間には、 f > e > gの関係があ ることが好ましい。 よ り具体的には、 ( f — e ) は 1〜 4 0 °C、 更 には 2〜 3 0 °Cであることが好ましく、 また ( e — g ) は 1〜 4 0 °C、 更には 2〜 3 0 °Cであることが好ましい。
(鉄球の沈降速度)
本発明の浮遊担体は、 被浮遊物 (細胞等) の沈降を回避するため に、 適度な比重と粘度を有する。 本発明の浮遊担体が、 このような 好適な比重と粘度を有することは、 例えば、 以下の方法で本発明の 浮遊担体中における鉄球の沈降速度を測定することによって判別で さる。
く鉄球の沈降速度の測定〉
鉄球 (ボールベアリ ング用ステンレス鋼球) : 直径 4 m m、 質量 : 0 . 2 6 g 試料の量 : 5 m L
測定器具 : 透明ガラス製 5 m Lメスシリ ンダー ( l m Lの目盛り 間隔が約 1 4 mm)
透明ガラス製 5 m Lメスシリ ンダ一に測定対象試料 (浮遊担体) 約 5 mLを入れ、 恒温器内で所定温度になるまで静置 (約 2時間) する。 所定温度で鉄球 (直径 4 mm、 質量 : 0. 2 6 g ) を前記メ スシリ ンダ一中の試科上に静かに置く。 恒温器内で所定温度に保ち ながら、 鉄球の沈降速度を測定する。
より具体的には例えば、 鉄球の上端がメスシリ ンダ一の 4 m Lの 目盛りを通過した時点から鉄球の上端が 3 m Lの目盛りを通過する までの時間を測定 ( T分間) し、 4 m Lの目盛り と 3 m Lの目盛り の間隔 (Dmm) を除して鉄球の沈降速度 (VmmZ分) を求める
V = D/T
本発明の浮遊担体は、 ゾル—ゲル転移温度よ り 1 6 °C高い温度に おける上記鉄球の沈降速度 V+ 1 6 が 1 inmZ分以下である。 この 沈降速度 V+ 1 6 は、 好ましく は 0. I mmZ分以下、 よ り好まし く は 0. O l mmZ分以下、 更に好ましく は 0. O O l mmZ分以 下である。 ゾルーゲル転移温度よ り 1 6 °C高い温度における浮遊担 体中の上記鉄球の沈降速度 V+ 1 6 がこの範囲を超えると、 高温ゲ ル状態で細胞培養中に浮遊担体中で被浮遊物が沈降レ易くなり、 該 被浮遊物が容器底面に付着し易くなる傾向が生ずる。
また、 本発明の浮遊担体は、 ゾルーゲル転移温度よ り 6 °C低い温 度における上記鉄球の沈降速度 V_ 6 が 5 mm/分以上である。 こ の沈降速度は、 好ましく は 1 0 mm/分以上、 よ り好ましく は 5 0 m m /分以上、 更に好ましく は 5 0 O mm/分以上である。 ゾル一 ゲル転移温度よ り 6 °C低い温度における浮遊担体中の上記鉄球の沈 降速度 V_ 6 がこの範囲を下回ると、 低温ゾル状態での被浮遊物の 分散、 混和あるいは回収操作が困難となる傾向が生ずる。
また、 本発明の浮遊担体では、 V_ 6 ZV+ ! 6 が 5以上、 更に は 5 0以上、 特に好ましく は 5 0 0以上 (更には 5 0 0 0以上) で あることが好ましい。
(生体由来材料に用いる態様)
生体由来材料に用いる態様においては、 本発明の浮遊担体は、 3 7 °Cにおける上記鉄球の沈降速度 V3 7 が 1 mm/分以下であるこ とが好ましい。 この沈降速度 V3 7 は、 より好ましくは 0. 1 mm /分以下、 更に好ましく は 0. 0 1 mm /分以下、 特に好ましくは 0. 0 0 1 mm/分以下である。 3 7 °Cにおける浮遊担体中上記鉄 球の沈降速度 V3 7 がこの範囲を超えると、 高温ゲル状態で細胞培 養中に浮遊担体中で細胞が沈降し易く、 培養容器底面に付着し易く なるので好ましくない。 '
生体由来材料に用いる態様においては、 本発明の浮遊担体は、 1 0 °Cにおける上記鉄球の沈降速度 V i 。 が 5 mm/分以上であるこ とが好ましく、 よ り好ましく は 1 0 mmZ分以上、 更に好ましくは 5 O mmZ分以上、 特に好ましくは 5 0 O mm /分以上である。 1 0 °Cにおける浮遊担体中上記鉄球の沈降速度 V 。 がこの範囲を下 回ると、 低温ゾル状態での細胞の播種、 混和あるいは回収操作が困 難となるので好ましくない。
また、 本発明の浮遊担体では、 。 ZV3 7 が 5以上、 更には 5 0以上、 特に好ましく は 5 0 0以上、 更には 5 0 0 0以上である ことが好ましい。
(沈降速度の調整)
本発明の浮遊担体中における浮遊物 (固体又は液体の場合 ; 鉄球 を含む) の沈降速度を低下させるには、 1 ) 浮遊担体の比重を上げ る、 2 ) ハイ ド口ゲル形成性高分子の濃度を増大させる、 3 ) ハイ ドロゲル形成性高分子の分子量を増大させる、 4 ) ゾルーゲル転移 温度を低くする、 5 ) ハイ ドロゲルの架橋点を増加させるなどの手 段を用いることができる。
一方、 本発明の浮遊担体中における浮遊物 (固体又は液体の場合
; 鉄球を含む) の沈降速度を増大させるには、 1 ) 浮遊担体の比重 を下げる、 2 ) ハイ ド口ゲル形成性高分子の濃度を減少させる、 3 ) ハイ ド口ゲル形成性高分子の分子量を低下させる、 4 ) ゾルーゲ ル転移温度を高くする、 5 ) ハイ ド口ゲルの架橋点を減少させるな どの手段を用いることができる。
(浮遊担体の動作に対する追従性)
本発明の浮遊担体に基づくハイ ド口ゲルは、 その細胞増殖に伴う 細胞集塊の形態変化への追従性のパランスの点から、 よ り高い周波 数に対しては固体的な挙動を示し、 他方、 よ り低い周波数に対して は液体的な挙動を示すことが好ましい。 よ り具体的には、 該ハイ ド 口ゲルの動作に対する追従性は以下の方法で好適に測定することが 可能である。
(動作に対する追従性の測定方法)
ノ、ィ ドロゲル形成性の高分子を含む本発明の浮遊担体 (ハイ ドロ ゲルとして l m L) をゾル状態 (ゾルーゲル転移温度よ り低い温度 ) で内径 1 c mの試験管に入れ、 該浮遊担体のゾルーゲル転移温度 よ り も充分高い温度 (たとえば該ゾルーゲル転移温度より も約 1 0 °C高い温度) と した水浴中で上記試験管を 1 2時間保持し、 該ハイ ドロゲルをゲル化させる。
次いで、 該試験管の上下を逆にした場合に溶液/空気の界面 (メ ニスカス) が溶液の自重で変形するまでの時間 (Tm) を測定する 。 ここで 1 /Tm ( s e c — 1 ) よ り低い周波数の動作に対しては 該ハイ ド口ゲルは液体として振舞い、 1 /Tm ( s e c— 1 ) より 高い周波数の動作に対しては該ハイ ドロゲルは固体と して振舞う こ とになる。 本発明のハイ ドロゲルの場合には T mは 1分〜 2 4時間
、 好ましく は 5分〜 1 0時間である。
(定常流動粘度)
本発明の浮遊担体に基づくハイ ドロゲルのゲル的性質は、 定常流 動粘度の測定によっても好適に測定可能である。 定常流動粘度 ( ィ一タ) は、 例えばク リープ実験によって測定することができる。
ク リーブ実験では一定のずり応力を試料に与え、 ずり歪の時間変 化を観測する。 一般に粘弾性体のク リープ挙動では、 初期にずり速 度が時間と ともに変化するが、 その後ずり速度が一定となる。 この 時のずり応力とずり速度の比を定常流動粘度 η と定義する。 この定 常流動粘度は、 ニュー トン粘度と呼ばれることもある。 ただし、 こ こで定常流動粘度は、 ずり応力にほとんど依存しない線形領域内で 決定されなければならない。
具体的な測定方法は、 測定装置と してス トレス制御式粘弾性測定 装置 C S L型レオメーター (C S L 5 0 0、 米国キャ リーメ ド社製 ) を、 測定デパイスにアタ リル製円盤 (直径 4 c m) を使用し、 試 料厚み 6 0 0 μ mと して少なく とも 5分間以上の測定時間ク リーブ 挙動 (遅延曲線) を観測する。 サンプリ ング時間は、 最初の 1 0 0 秒間は 1秒に 1回、 その後は 1 0秒に 1回とする。
適用するずり応力 (ス ト レス) の決定にあたっては、 1 0秒間ず り応力を負荷して偏移角度が 2 X 1 0 - 3 r a d以上検出される最 低値に設定する。 解析には 5分以降の少なく とも 2 0以上の測定値 を採用する。 本発明の浮遊担体に基づくハイ ドロゲルは、 そのゾル 一ゲル転移温度よ り約 1 0 °C高い温度において、 が 5 X 1 03 〜 5 X 1 06 P a · s e cであることが好ましく、 更には 8 X 1 0 3 〜2 X 1 0 6 P a · s e c、 特に 1 X 1 0 4 P a · s e c以上、 1 X 1 0 6 P a · s e c以下であることが好ましい。
上記 が 5 x l 0 3 P a * s e c未満では短時間の観測でも流動 性が比較的高くなり、 ゲルによる細胞や組織の 3次元的な保持が不 十分となり、 浮遊担体と して機能し難くなる。 他方、 77が 5 X 1 0 6 P a * s e cを超えると、 長時間の観測でもゲルが流動性をほと んど示さなくなる傾向が強ま り、 生物体組織の再生に伴う動きに追 従することの困難性が増大する。 また、 が 5 X 1 06 を超えると ゲルが脆さを呈する可能性が強まり、 わずかの純弾性変形の後、 一 挙にもろく破壤する脆性破壊が生起しゃすい傾向が強まる。
(動的弾性率)
本発明の浮遊担体に基づくハイ ドロゲルのゲル的性質は、 動的弾 性率によっても好適に測定可能である。 該ゲルに振幅 γ。 、 振動数 を ) Ζ 2 π とする歪み γ ( t ) = τ/。 c o s co t ( t は時間) を与 えた際に、 一定応力を び 。 、 位相差を δ とする σ ( t ) = σ。 c o s ( w t + δ ) が得られたとする。 | G | = CT。 Z T 。 とすると、 動的弾性率 G, ( ω ) = I G I c o s δ と、 損失弾性率 G " ( ω ) = I G I s i η δ との比 (G " /G ' ) が、 ゲル的性質を表す指標 となる。
本発明の浮遊担体に基づくハイ ド口ゲルは、 ω Ζ Ζ π - Ι Η ζの 歪み (速い動作に対応する) に対しては固体と して挙動し、 且つ、 ω / 2 π = 1 0— 4 H zの歪み (遅い動作に対応する) に対しては 固体と して挙動する。 よ り具体的には、 本発明の浮遊担体に基づく ハイ ド口ゲルは、 以下の性質を示すことが好ましい (このような弾 性率測定の詳細については、 例えば、 文献 : 小田良平ら編集、 近代 工業化学 1 9、 第 3 5 9頁、 朝倉書店、 1 9 8 5を参照することが できる) 。 ω X 2 π = 1 H z (ゲルが固体と して挙動する振動数) の際に、 (G,, /G, ) s = ( t a n δ ) s が 1未満であることが好まし い (よ り好ましくは 0. 8以下、 特に好ましく は 0. 5以下) 。
ω / 2 π = 1 0 " 4 Η ζ (ゲルが液体と して挙動する振動数) の 際に、 ( G,ソ G ' ) L = ( t a n δ ) L 力 § 1以上であることが 好ましい (よ り好ましく は 1. 5以上、 特に好ましくは 2以上) 。 上記 ( t a n S ) s と、 ( t a n S ) L との比 { ( t a n δ ) s / ( t a n δ ) L } が 1未満であることが好ましレ、 (よ り 好ましく は 0. 8以下、 特に好ましく は 0. 5以下) 。
<測定条件 >
ハイ ド口ゲル形成性高分子の濃度 : 約 8質量% 温度 : 浮遊担体 のゾル—ゲル転移温度よ り約 1 0 °C高い温度 測定機器: ス ト レス 制御式レオメータ (機種名 : C S L 5 0 0、 米国キャリーメ ド社 製)
(ハイ ドロゲル形成性の高分子)
上述したような熱可逆的なゾルーゲル転移を示す (すなわち、 ゾ ルーゲル転移温度を有する) 限り、 本発明の浮遊担体に使用可能な ハイ ドロゲル形成性の高分子は特に制限されない。 生体由来材料に 用いる態様、 すなわち本発明の担体が生理的温度 ( 0〜4 2 °C程度 ) において好適なゾル一ゲル変化を示すことが容易な点からは、 例 えば、 該ハイ ドロゲル形成性の高分子中の曇点を有する複数のプロ ック と親水性のブロ ックの曇点、 両ブロックの組成および両ブ口 ッ クの'疎水性度、 親水性度、 および z又は分子量等をそれぞれ調整す ることによつて達成することが好ましい。
その水溶液がゾルーゲル転移温度を有し、 該転移温度よ り低い温 度で可逆的にゾル状態を示す高分子の具体例と しては、 例えば、 ポ リ プロ ピレンォキサイ ドとポリエチレンォキサイ ドとのブロ ック共 重合体等に代表されるポリアルキレンォキサイ ドプロ ック共重合体 ; メチノレセノレロース、 ヒ ドロキシプロ ピノレセノレロース等のエーテノレ ィ匕セノレ ロ ース ; キトサン誘導体 ( K . R . Holme, et al. Macromole cules, 2 4, 3 8 2 8 ( 1 9 9 1 ) ) 等が知られている。
ポリアルキレンォキサイ ドブロック共重合体と して、 ポリ プロ ピ レンォキサイ ドの両端にポリエチレンォキサイ ドが結合したプル口 ニック (P l u r o n i c ) F - 1 2 7 (商品名、 B A S F Wyand otte Chemicals Co. 製) ゲルが開発されている。 このプルロニッ ク F _ 1 2 7の高濃度水溶液は、 約 2 0 °C以上でハイ ド口ゲルとな り、 これよ り低い温度で水溶液となることが知られている。 しかし ながら、 この材料の場合は約 2 0質量%以上の高濃度でしかゲル状 態にはならず、 また約 2 0質量%以上の高濃度でゲル化温度よ り高 い温度に保持しても、 更に水を加えるとゲルが溶解してしまう。 ま た、 プル口ニック F— 1 2 7は分子量が比較的小さく、 約 2 0質量 %以上の高濃度のゲル状態で非常に高い浸透圧を示すのみならず細 胞膜を容易に透過するため、 細胞 ·組織に悪影響を及ぼす可能性が める。
一方、 メチルセルロース、 ヒ ドロキシプロ ピルセルロース等に代 表されるエーテル化セルロースの場合は、 通常は、 ゾル—ゲル転移 温度が高く約 4 5 °C以上である (N. Sarkar, J. Appl. Polym. Sc ience, 2 4, 1 0 7 3 , 1 9 7 9 ) 。 これに対して、 生体の体温 は通常 3 7 °C近辺の温度であるため、 上記エーテル化セルロースは ゾル状態であり、 該エーテル化セルロースを本発明の浮遊担体と し て用いることは事実上は困難である。
上記したように、 その水溶液がゾルーゲル転移点を有し、 且つ該 転移温度よ り低い温度で可逆的にゾル状態を示す従来の高分子の問 題点は、 1 ) ゾル—ゲル転移温度よ り高い温度で一旦ゲル化しても 、 更に水を添加するとゲルが溶解してしまう こと、 2 ) ゾル—ゲル 転移温度が生体の体温 ( 3 7 °C近辺) よ り も高く、 体温ではゾル状 態であること、 3 ) ゲル化させるためには、 水溶液の高分子濃度を 非常に高くする必要があること、 等である。
これに対して、 本発明者らの検討によれば、 好ましくは 0 °Cよ り 高 < 4 2 °C以下であるゾルーゲル転移温度を有するハイ ドロゲル形 成性の高分子 (例えば、 曇点を有する複数のブロックと親水性のブ ロ ックが結合してなり、 その水溶液がゾルーゲル転移温度を有し、 且つ、 ゾルーゲル転移温度よ り低い温度で可逆的にゾル状態を示す 高分子) を用いて本発明の浮遊担体を構成した場合に、 上記問題は 解決されることが判明している。
(好適なハイ ドロゲル形成性の高分子)
本発明の浮遊担体として好適に使用可能な疎水結合を利用したハ イ ド口ゲル形成性の高分子は、 曇点を有する複数のプロック と親水 性のブロ ックが結合してなることが好ましい。 該親水性のブロック は、 ゾル—ゲル転移温度よ り低い温度で該ハイ ドロゲルが水溶性に なるために存在することが好ましく、 また曇点を有する複数のプロ ックは、 ハイ ドロゲルがゾルーゲル転移温度よ り高い温度でゲル状 態に変化するために存在することが好ましい。 換言すれば、 曇点を 有するプロ ックは該曇点よ り低い温度では水に溶解し、 該曇点よ り 高い温度では水に不溶性に変化するために、 曇点より高い温度で、 該ブロ ックはゲルを形成するための疎水結合からなる架橋点として の役割を果たす。 すなわち、 疎水性結合に由来する曇点が、 上記ハ ィ ド口ゲルのゾルーゲル転移温度に対応する。
ただし、 該曇点とゾルーゲル転移温度とは必ずしも一致しなくて もよい。 これは、 上記した 「曇点を有するブロ ック」 の S点は、 一 般に、 該プロ ック と親水性プロ ック との結合によって影響を受ける ためである。
本発明に用いるハイ ドロゲルは、 疎水性結合が温度の上昇と共に 強く なるのみならず、 その変化が温度に対して可逆的であるという 性質を利用したものである。 1分子内に複数個の架橋点が形成され
、 安定性に優れたゲルが形成される点からは、 ハイ ドロゲル形成性 の高分子が 「曇点を有するブロ ック」 を複数個有することが好まし い o
一方、 上記ハィ ドロゲル形成性の高分子中の親水性プロ ックは、 前述したように、 該ハイ ド口ゲル形成性の高分子がゾルーゲル転移 温度より も低い温度で水溶性に変化させる機能を有し、 上記転移温 度よ り高い温度で疎水性結合力が増大しすぎて上記ハイ ドロゲルが 凝集沈澱してしまう ことを防止しつつ、 含水ゲルの状態を形成させ る機能を有する。
(曇点を有する複数のブロ ック)
曇点を有するブロ ックと しては、 水に対する溶解度一温度係数が 負を示す高分子のプロックであることが好ましく、 よ り具体的には 、 ポリ プロ ピレンォキサイ ド、 プロ ピレンォキサイ ドと他のアルキ レンオキサイ ドとの共重合体、 ポリ N—置換アク リルアミ ド誘導体 、 ポリ N—置換メ タアク リルアミ ド誘導体、 N—置換ァク リルアミ ド誘導体と N—置換メタァク リルアミ ド誘導体との共重合体、 ポリ ビニルメチルエーテル、 ポリ ビュルアルコール部分酢化物からなる 群よ り選ばれる高分子が好ましく使用可能である。 上記の高分子 ( 曇点を有するプロ ック) の曇点が 4 °Cより高く 4 0 °C以下であるこ とが、 本発明に用いる高分子 ( δ点を有する複数のブロ ック と親水 性のプロ ックが結合した化合物) のゾルーゲル転移温度を 4 °Cよ り 高く 4 0 °C以下とする点から好ましい。
ここで曇点の測定は、 例えば、 上記の高分子 (曇点を有するプロ ック) の約 1質量%の水溶液を冷却して透明な均一溶液とした後、 除々に昇温 (昇温速度約 1 °C / m i n ) して、 該溶液がはじめて白 濁する点を曇点とすることによって行う ことが可能である。
本発明に使用可能なポリ N—置換ァク リルァミ ド誘導体、 ポリ N 一置換メタアタ リルァミ ド誘導体の具体的な例を以下に列挙する。 ポリ 一 N—アタ リ ロイルピぺリ ジン ; ポリ 一 N— n —プロ ピルメ タアク リルアミ ド ; ポリ 一 N—イ ソプロ ピルァク リルアミ ド ; ポリ ― N , N—ジェチルァク リルアミ ド ; ポリ 一 N—ィ ソプロ ピルメタ ァク リルアミ ド ; ポリ 一 N—シク ロプロ ピルアク リルアミ ド ; ポリ — N—ァク リ ロイルピロ リ ジン ; ポリ ― N, N—ェチルメチルァク リルアミ ド ; ポリ 一 N—シク ロプロ ピルメ タアク リルアミ ド ; ポリ — N—ェチルアク リルアミ ド。
上記の高分子は単独重合体 (ホモポリマー) であっても、 上記重 合体を構成する単量体と他の単量体との共重合体であってもよい。 このよ うな共重合体を構成する他の単量体と しては、 親水性単量体 、 疎水性単量体のいずれも用いることができる。 一般的には、 親水 性単量体と共重合すると生成物の曇点は上昇し、 疎水性単量体と共 重合すると生成物の曇点は下降する。 従って、 これらの共重合すベ き単量体を選択することによつても、 所望の曇点 (例えば 4 °Cよ り 高く 4 0 °C以下の曇点) を有する高分子を得ることができる。
(親水性単量体)
上記親水性単量体としては、 N—ビュルピロ リ ドン、 ビュルピリ ジン、 ァク リルアミ ド、 メ タアク リルアミ ド、 N—メチルアク リル アミ ド、 ヒ ドロキシェチルメ タァク リ レー ト、 ヒ ドロキシェチルァ タ リ レー ト 、 ヒ ドロキシメチノレメ タアタ リ レー ト 、 ヒ ドロキシメチ ルアタ リ レー ト、 酸性基を有するアタ リル酸、 メ タアタ リル酸およ びそれらの塩、 ビニルスルホン酸、 スチレンスルホン酸等、 並びに 塩基性基を有する N, N —ジメチルァミ ノェチルメタク リ レート、 N , N —ジェチルアミ ノエチルメタク リート、 N, N —ジメチルァ ミノプロ ピルアク リルアミ ドおよびそれらの塩等が挙げられるが、 これらに限定されるものではない。
(疎水性単量体)
一方、 上記疎水性単量体と しては、 ェチルァク リ レー ト、 メチル メタク リ レート、 グリ シジルメタク リ レー ト等のァク リ レー ト誘導 体およびメタク リ レート誘導体、 N— n —ブチルメタァク リルアミ ド等の N —置換アルキルメタアタ リルァミ ド誘導体、 塩化ビュル、 アク リ ロニ ト リル、 スチレン、 酢酸ビュル等が挙げられるが、 これ らに限定されるものではない。
(親水性のブロ ック)
一方、 上記した曇点を有するブロ ック と結合すべき親水性のプロ ック と しては、 具体的には、 メ チルセルロース、 デキス ト ラ ン、 ポ リ エチレンオキサイ ド、 ポリ ビエルアルコール、 ポリ N—ビニルビ 口 リ ドン、 ポリ ビエルピリ ジン、 ポリ アク リ ルア ミ ド、 ポリ メ タァ ク リルアミ ド、 ポリ N —メチルアク リルアミ ド、 ポリ ヒ ドロキシメ チルアタ リ レー ト、 ポリアク リル酸、 ポリ メタク リル酸、 ポリ ビニ ルスルホン酸、 ポリ スチレンスルホン酸およびそれらの塩 ; ポリ N , N —ジメチルアミ ノエチルメタタ リ レー ト、 ポリ N, N—ジェチ ルァミノェチルメタク リ レー ト、 ポリ N, N —ジメチルァミ ノプロ ピルァク リルアミ ドおよびそれらの塩等が挙げられる。
曇点を有するプロック と上記の親水性のプロ ック とを結合する方 法は特に制限されないが、 例えば、 上記いずれかのブロック中に重 合性官能基 (例えばァク.リ ロイル基) を導入し、 他方のブロ ックを 与える単量体を共重合させることによって行う ことができる。 また 、 曇点を有するプロ ックと上記の親水性のプロ ックとの結合物は、. 曇点を有するプロ ックを与える単量体と、 親水性のプロックを与え る単量体とのブロ ック共重合によって得ることも可能である。 また
、 曇点を有するブロ ック と親水性のブロ ック との結合は、 予め両者 に反応活性な官能基 (例えば水酸基、 アミノ基、 カルボキシル基、
4 ソシァネ一ト基等) を導入し、 両者を化学反応によ り結合させる ことによって行う こともできる。 この際、 親水性のブロ ック中には 通常、 反応活性な官能基を複数導入する。 また、 曇点を有するポリ プロ ピレンォキサイ ドと親水性のブロ ック との結合は、 例えば、 ァ 二オン重合または力チオン重合で、 プロ ピレンォキサイ ドと 「他の 親水性ブロ ック」 を構成するモノマー (例えばエチレンオキサイ ド ) とを繰り返し逐次重合させることで、 ポリ プロ ピレンオキサイ ド と 「親水性ブロ ック」 (例えばポ リ エチレンォキサイ ド) が結合し たプロ ック共重合体を得ることができる。 このよ うなブロック共重 合体は、 ポ リ プロ ピレンオキサイ ドの末端に重合性基 (例えばァク リ ロイル基) を導入後、 親水性のブロ ックを構成するモノマーを共 重合させることによつても得ることができる。 更には、 親水性のブ ロ ック中に、 ポリ プロピレンオキサイ ド末端の官能基 (例えば水酸 基) と結合反応し得る官能基を導入し、 両者を反応させることによ つても、 本発明に用いる高分子を得ることができる。 また、 ポリプ ロピレングリ コールの両端にポリエチレングリ コールが結合した、 プル口ニック F— 1 2 7 (商品名、 旭電化工業 (株) 製) 等の材 料を連結させることによつても、 本発明に用いるハイ ドロゲル形成 性の高分子を得ることができる。
この曇点を有するプロ ックを含む態様における本発明の高分子は 、 曇点よ り低い温度においては、 分子内に存在する上記 「曇点を有 するブロ ック」 が親水性のブロックと ともに水溶性であるため、 完 全に水に溶解し、 ゾル状態を示す。 しかし、 この高分子の水溶液の 温度を上記曇点より高い温度に加温すると、 分子内に存在する 「曇 点を有するブロ ック」 が疎水性となり、 疎水的相互作用によって、 別個の分子間で会合する。
—方、 親水性のブロ ックは、 この時 (S点よ り高い温度に加温さ れた際) でも水溶性であるため、 本発明の高分子は水中において、 曇点を有するプロック間の疎水性会合部を架橋点とした三次元網目 構造を有するハイ ド口ゲルを生成する。 このハイ ド口ゲルの温度を 再び、 分子内に存在する 「曇点を有するブロ ック」 の曇点より低い 温度に冷却すると、 該曇点を有するプロ ックが水溶性となり、' 疎水 性会合による架橋点が解放され、 ハイ ドロゲル構造が消失して、 本 発明の高分子は、 再び完全な水溶液となる。 このよ うに、 好適な態 様における本発明の高分子のゾルーゲル転移は、 分子内に存在する 曇点を有するブロ ックの該曇点における可逆的な親水性、 疎水性の 変化に基づく ものであるため、 温度変化に対応して、 完全な可逆性 を有する。
(ゲルの溶解性)
上述したように水溶液中でゾル—ゲル転移温度を有する高分子を 少なく とも含む本発明のハイ ド口ゲル形成性の高分子は、 該ゾルー ゲル転移温度よ り高い温度 ( h°C) で実質的に水不溶性を示し、 ゾ ルーゲル転移温度よ り低い温度 ( i °C) で可逆的に水可溶性を示す 上記した高い温度 (h°C) は、 ゾルーゲル転移温度よ り 1 °C以上 高い温度であることが好ましく、 2 °C以上 (特に 5 °C以上) 高い温 度であることが更に好ましい。 また、 上記 「実質的に水不溶性」 と は、 上記温度 ( h°C) において、 水 1 0 0 m Lに溶解する上記高分 子の量が、 5. O g以下 (更には 0. 5 g以下、 特に 0. l g以下 ) であることが好ましい。 一方、 上記した低い温度 ( i °C) は、 ゾル—ゲル転移温度よ り ( 絶対値で) 1 °C以上低い温度であることが好ましく、 2 °C以上 (特 に 5 °C以上) 低い温度であることが更に好ましい。 また、 上記 「水 可溶性」 とは、 上記温度 ( i °C) において、 水 1 O O mLに溶解す る上記高分子の量が、 0. 5 g以上 (更には 1 . 0 g以上) である ことが好ましい。 更に 「可逆的に水可溶性を示す」 とは、 上記ハイ ド口ゲル形成性の高分子の水溶液が、 ー且 (ゾル—ゲル転移温度よ り高い温度において) ゲル化された後においても、 ゾルーゲル転移 温度よ り低い温度においては、 上記した水可溶性を示すことをいう 上記高分子は、 その 1 0 %水溶液が 5 °Cで、 1 0〜 3 , 0 0 0セ ンチボイズ (更には 5 0〜 1, 0 0 0センチボイズ) の粘度を示 すことが好ましい。 このよ うな粘度は、 例えば以下のような測定条 件下で測定することが好ましい。
粘度計 : ス ト レス制御式レオメータ (機種名 : C S L 5 0 0 、 米国 キャリーメ ド社製)
口一ター直径 : 6 0 mm
ローター形状 : 平行平板
測定周波数 : 1 H z (ヘルツ)
本発明のハイ ドロゲル形成性の高分子の水溶液は、 上記ゾルーゲ ル転移温度よ り高い温度でゲル化させた後、 多量の水中に浸漬して も、 該ゲルは実質的に溶解しない。 上記浮遊担体の上記特性は、 例 えば、 以下のようにして確認することが可能である。
すなわち、 本発明のハイ ド口ゲル形成性の高分子 0 · 1 5 gを、 上記ゾルーゲル転移温度よ り低い温度 (例えば水冷下) で、 蒸留水 1 . 3 5 gに溶解して 1 0 W%の水溶液を作製し、 該水溶液を径が 3 5 mmのプラスチックシャーレ中に注入し、 3 7 °Cに加温するこ とによって、 厚さ約 1 . 5 m mのゲルを該シャーレ中に形成させた 後、 該ゲルを含むシャーレ全体の重量 ( j グラム) を測定する。 次 いで、 該ゲルを含むシャーレ全体を 2 5 O m L中の水中に 3 7でで 1 0時間静置した後、 該ゲルを含むシャーレ全体の重量 ( kグラム ) を測定して、 ゲル表面からの該ゲルの溶解の有無を評価する。 こ の際、 本発明のハイ ド口ゲル形成性の高分子においては、 上記ゲル の重量減少率、 すなわち ( j — k ) j が、 5 . 0 %以下であるこ とが好ましく、 更には 1 . 0 %以下 (特に 0 . 1 %以下) であるこ とが好ましい。
本発明のハイ ドロゲル形成性の高分子の水溶液は、 上記ゾルーゲ ル転移温度より高い温度でゲル化させた後、 多量 (体積比で、 ゲル の 0 . 1〜 1 0 0倍程度) の水中に浸漬しても、 長期間に亘つて該 ゲルは溶解することがない。 このような本発明に用いる高分子の性 質は、 例えば、 該高分子内に曇点を有するブロ ックが 2個以上 (複 数個) 存在することによって達成される。
これに対して、 ポリプロ ピレンォキサイ ドの両端にポリエチレン ォキサイ ドが結合してなる前述のプル口ニック F— 1 2 7を用いて 同様のゲルを作成した場合には、 数時間の静置で該ゲルは完全に水 に溶解することを、 本発明者らは見出している。
非ゲル化時の細胞毒性をできる限り低いレベルに抑える点からは 、 水に対する濃度、 すなわち { (高分子) / (高分子 +水) } X I 0 0 ( % ) で、 2 0 %以下 (更には 1 5 %以下、 特に 1 0 %以下) の濃度でゲル化が可能なハイ ド口ゲル形成性の高分子を用いること が好ましい。
(液体成分)
上記したハイ ドロゲル形成性の高分子と ともに、 本発明の担体 ( ゲル形成性の組成物) を構成する際に使用可能な液体成分 (ないし 分散媒) は、 上記したように、 ゲル形成性を有する浮遊担体が低温 でゾル状態、 高温でゲル状態となる熱可逆的なゾルーゲル転移を示 し、 該ゲル形成性浮遊担体が高温のゲル状態で実質的に水不溶性を 示す限り、 特に制限されない。 この液体成分は 本発明の担体をゾ ル状態で使用すべき温度において、 実質的に液体状態を示すもので あ 。
このよ うな液体成分としては、 種々の無機液体、 有機液体、 およ びこれらの 2種以上の組合せないし混合物を使用するこ とができる 。 本発明の担体を生体由来の成分に使用すべき態様においては、 こ の液体成分は、 親水性ないし水溶性の液体であることが好ましく、 更には、 含水液体 (特に、 水を 8 0質量%以上含有する液体) であ ることが好ましい。
(他の成分)
本発明の浮遊担体は、 上記したゾルーゲル転移温度を有する高分 子を少なく とも含むものであるが、 必要に応じて他の成分を含んで いてもよい。 このような態様における 「他の成分」 と しては、 例え ば、 抗生剤、 抗癌剤、 コラーゲン等の E C M、 後述の局所性化学仲 介物質、 イ ンスリ ン、 細胞成長因子等のホルモン類、 外来遺伝子等 が挙げられる。
(被浮遊物質)
本発明において、 上記した浮遊担体により浮遊させるべき被浮遊 物質は、 特に制限されない。 すなわち、 該被浮遊物質は、 生体由来 であっても、 生体由来でなくてもよい。 この被浮遊物質の好ましい 態様は、 以下の通りである。
比重 : ゾル状態の本発明の担体中で、 遠心分離 (例えば、 5 0 0 〜 1 0, 0 0 0 r p m、 1 0 0〜 1 0, 0 0 0 G、 5〜 3 0分間程 度の条件) で、 該担体から実質的に分離可能な程度の比重を有する こと。
上記被浮遊物質と しては、 例えば、 以下のものが挙げられる。 細胞、 コロイ ド粒子 (親水性および 又は疎水性) 、 液体、 気体
(繊維芽細胞の増殖性)
未分化細胞を未分化状態のまま増殖させることを目的として本発 明の担体を生体由来の成分に使用すべき態様においては、 該担体を 構成するハイ ド口ゲル形成性高分子が形成するハイ ドロゲルにおい ては、 該ゲル内で実質的に繊維芽細胞が増殖しないことが好ましい 。 繊維芽細胞は通常、 細胞培養ディ ッシュ (プレー ト) 上の単層培 養ゃコラーゲンゲル内での培養において、 繊維芽細胞に特徴的な樹 枝状の形態変化を伴った著しい増殖が認められる。 一方、 本発明の ハイ ドロゲル内では繊維芽細胞は単細胞の形態を保ったままで実質 的に増殖を示さない。
繊維芽細胞の増殖性は、 例えば以下の方法により評価できる (吉 川剛司、 月川賢、 聖マリアンナ医科大学雑誌、 2 8卷、 第 4号、 1 6 1 — 1 7 0 ( 2 0 0 0 ) 参照) 。 本発明の浮遊担体を構成するハ ィ ドロゲル形成性高分子を培養液、 例えば R PM I 1 6 4 0 (Life
Technologies, N. Y. , U S A) に低温 (例えば 4 °C) 下で攪 拌溶解し、 正常ヒ ト肺繊維芽細胞 (Normal Human Lung Fibroblast s, NH L F、 宝酒造 (株) 社製) ) を 6 X 1 04 個 Zm Lの細胞 密度になるよ うに分散させる。 この NH L F分散液 0. 2 m Lを 2 4ーゥエルプレー ト (材料 : プラスチック製、 ゥエル 1個の大きさ は縦 1 5 m m、 横 1 5 m m、 深さ 2 0 m m程度 ; 市販品では、 例え iiBecton—Dickinson社製の商口口口名 : Multiwell) の各ウエノレ中 fこ注 入し、 3 7 °Cでゲル化させた後、 培養液 0. 4 m Lを添加して 3 7 °C、 5 % C O 2 大気圧下で培養する。 繊維芽細胞の増殖の様子は経 日的に (例えば、 0、 1、 3、 7 日) 位相差顕微鏡による観察で確 認する。
(繊維芽細胞の増殖率)
更に以下の酵素活性を利用する方法によ り培養期間中の繊維芽細 胞の増殖率を測定可能である。 本発明の浮遊担体中で繊維芽細胞を 所定期間培養後、 該浮遊担体をそのゾルーゲル転移温度より低い温 度 (例えば、 ゾルーゲル転移温度より 1 0 °C低い温度) に下げるこ とによつて該浮遊担体を溶解した後、 各ゥ ル中にコハク酸脱水素 酵素活性測定用試薬たる W S T— 8試薬 (同仁化学 (株) 製) 5 0 Lを添加する。 この 2 4 —ゥェルプレー トを、 3 7 °Cで 1 0時間 反応させた後、 約 4 °Cに 1時間保存し完全に均一な水溶液の状態に する。 該水溶液を 9 6—ゥエルプレー 卜に 2 0 0 μ Lづっ分注し、 マイクロプレー ト用比色計を用いて 4 5 0 n m (参照波長 6 2 0 η m) で吸光度 (O D ( 4 5 0 ) ) を測定する。 この O D ( 4 5 0 ) . と、 生細胞数とは比例関係にあることが確かめられている (例えば 、 文献 Furukawa, 1 . et a丄, High in vitro- in vitro correlat ion of drug response using spongegel- supported three- dimensi onal histoculture and MTT end point" , Int. J. Cancer 5 1
: 4 8 9、 1 9 9 2を参照) 。 すなわち、 繊維芽細胞の増殖率は培 養開始時の吸光度 (O D ( 4 5 0 ) ) と培養後の吸光度 (O D ( 4 5 0 ) ) の比によ り求められる。
本発明において、 3 日間 3 7 °Cで培養した後の繊維芽細胞の増殖 率は 7 0 %から 2 0 0 %、 更には 8 0 %から 1 5 0 %の範囲、 よ り 好ましく は 9 0 %から 1 2 0 %の範囲であることが望ましい。
(化学仲介物質)
未分化細胞の増殖や分化には、 前駆細胞のよ うな細胞のみでなく 、 その分化や増殖を促す細胞成長因子のよ うな種々の化学仲介物質 (chemical mediator) が通常は必要である。 これらの化学仲介物 質は通常細胞自身から分泌されるが、 再生を効率良く進めるために 本発明の浮遊担体に予めこれらの化学仲介物質を含有させて外部か ら補給することが効果的である。
この化学仲介物質と しては、 1 ) 細胞のごく近傍でしか作用しな い局所性化学仲介物質 (local chemical mediator) 、 2 )·神経細 胞から分泌され有効作用距離がごく短い神経伝達物質 (neurotrans mitter) 、 3 ) 内分泌細胞から分泌され血流等を通じて全身の標的 細胞に作用するホルモン (hormone) 等が挙げられる。
この 1 ) の局所性化学仲介物質としては、 神経細胞成長因子等の タンパク、 走化性因子等のペプチド、 ヒスタ ミ ン等のアミノ酸誘導 体、 プロスタグラ ンジン等の脂肪酸誘導体等が挙げられる。
上記 2 ) の神経伝達物質としては、 グリ シン等のアミノ酸、 ノル ァ ドレナリ ン、 アセチルコリ ン、 エンケフア リ ン等の低分子べプチ ド等の低分子量物質が挙げられる。
上記 3 ) のホルモンとしては、 線維芽細胞成長因子 (fibroblast growth factor, F G F) 、 上皮細胞成長因子 (epithelial growt h factor, E G F ) 、 血管内皮細胞成長因子 (vascular endotheli al rowth factor, V E G F ) 、 月干細胞増殖因子 (hepatocyte gro wth factor、 H G F) 等の細胞成長因子、 イ ンスリ ン、 ソマ ト ト ロ ピン、 ソマ トメジン、 副腎皮質刺激ホルモン (A C T H) 、 副甲状 腺ホルモン (P TH) 、 甲状腺刺激ホルモン (T S H) 等のタ ンパ ク、 または糖タ ンパク、 T S H放出因子、 パソプレシン、 ソマ トス タチン等のアミ ノ酸誘導体、 コルチゾ一ル、 エス トラジオール、 テ ス トステロ ン等のステ口ィ ド等が挙げられる。
(浮遊, 回収方法)
本発明においては、 上記した本発明の浮遊担体を該ゾルーゲル転 移温度よ り低温のゾル状態として、 該浮遊担体に被浮遊物を添加し 、 該ゾルーゲル転移温度よ り高温のゲル状態で被浮遊物を保持し、 その後、 再度該ゾルーゲル転移温度よ り低温のゾル状態として保持 後の被浮遊物を回収することができる。 この回収の際には、 必要に 応じて、 公知の分離手段 (例えば、 遠心分離) を使用することがで さる。
上記以外の条件は、 後述する生体由来成分の浮遊 · 回収方法を参 照しつつ、 被浮遊物の性質 ·性状等に応じて、 適宜修正することが できる。
(生体由来成分の浮遊 · 回収方法)
本発明の浮遊担体中に幹細胞や前駆細胞あるいはそれらを含有す る組織等を播種、 混和するには、 本発明の浮遊担体を構成するハイ ドロゲル形成性高分子を培養液、 例えば R P M I 1 6 4 0 (Life T echno logies , N . Y . , U S A ) に低温 (例えば 4 °C ) 下で攪拌 溶解し、 本発明の浮遊担体をそのゾルーゲル転移温度以下の水溶液 (ゾル) の状態と して該細胞や組織を添加、 懸濁させれば良い。 こ こで用いる培養液には特に制限はなく、 目的の幹細胞や前駆細胞が 増殖 · 分化し易いものを適宜選択して用いれば良い。 またこの培養 液に目的の幹細胞や前駆細胞の増殖 · 分化を促進する前述の化学仲 介物質を含有させることは効果的である。
本発明の浮遊担体中で細胞を培養するには、 上記懸濁液を本発明 の浮遊担体のゾル—ゲル転移温度以上の温度 (室温あるいは 3 7 °C ) に昇温してゲル化させた後、 該温度 (室温あるいは 3 7 °C ) で幹 細胞や前駆細胞あるいはそれらを含有する組織等を培養する。
本発明の浮遊担体では、 ハイ ドロゲル形成性のゲル形成性組成物 が高温のゲル状態 (培養温度) で実質的に水不溶性を示すため、 本 発明の浮遊担体の上に液体培地を重層したり、 液体培地中に本発明 の浮遊担体を浮遊させて細胞を培養したりするこ とができる。 未分 化な細胞が増殖する際には大量の養分を必要とするが、 本発明の浮 遊担体では外部の液体培地からその必要な養分を補給することがで きる。 また、 細胞が生成する老廃物などの細胞増殖を阻害する物質 を外部の液体培地中へ排出することができる。 その結果、 本発明の 浮遊担体では従来の細胞培養方法に比べて細胞の増殖を促進するこ とができる。
本発明の浮遊担体中で目的の組織 · 器官が誘導され、 これらを本 発明の浮遊担体から回収するには、 目的の組織 · 器官を含む本発明 の浮遊担体を該ゾルーゲル転移温度以下の温度 (例えば 4 °C ) に冷 却して本発明の浮遊担体をゾル状態に戻し、 遠心分離等の方法で目 的の組織 · 器官と本発明の浮遊担体を分離すれば良い。 また、 本発 明の浮遊担体はそのゾルーゲル転移温度よ り低温のゾル状態では、 水によ り容易に希釈できるので更に流動性を高くでき、 更に培養さ れた細胞や器官等の回収を容易にすることができる。
本発明の浮遊担体は繊維芽細胞の増殖を抑え、 幹細胞や前駆細胞 の増殖や分化を促す特徴を有するので本発明の浮遊担体中で目的と する組織 · 器官を効率よく形成させることができる。
(回収された E S細胞および Z又は胚様体)
上記した本発明の浮遊担体 (生体由来物質に適用する態様) を用 いることによ り、 容器壁に付着させずに浮遊状態で培養させる必要 がある動植物細胞 (例えばプロ トプラス ト、 E S細胞や E Bなど) を容易に播種、 混和することができるのみならず、 好適に回収する ことができる。 これは、 本発明によれば、 培養中は該動植物細胞を 容器壁に付着させずに浮遊状態で培養可能であり、 且つ、 培養途中 での培地交換が可能で、 培養終了後は増殖あるいは分化した細胞な いし細胞塊を容易に回収できるからである。 したがって、 本発明の浮遊担体を用いることによ り、 例えば、 E S細胞および Z又は胚様体を好適に培養および回収することができ る。
E S細胞の臨床応用に際しては、 未分化性を維持したまま大量に 培養することが使用の前提条件になる。 マウス E S細胞に関しては L I F (leukemia inhibitory f actor )の使用により未分化性の維持 が可能であるこ とが明らかとなったが、 ヒ トを含めた霊長類 E S細 胞では未分化性維持機構は解明されていない (実験医学、 2 1卷、 第 8号 (増刊) 、 「幹細胞研究の最先端」 、 編集 : 岡野栄之、 中辻 憲夫、 2003年、 羊土社発行、 参照)。
現在マウス線維芽細胞を feederとして用いることによ り、 経験的 に霊長類 E S細胞の未分化性維持が可能であるとの報告 (Nakatsuj i N, ^uemor i h 、 Embryonic stem cell lines of nonhuman prima tes、 Scientific World Journal Jun 2 6 ; 2 ( 6 ) : 1 7 6 2
( 2 0 0 2 ) ) がある。 この報告によれば、 力二クイザル E S細 胞は L I Fを含まない液体培地を用い、 マウス線維芽細胞を feeder と して用いた平面培養によ り、 一層の島状のコロニーを作って未分 化性を維持したまま増殖するとされている。 しかしながら、 このよ うな他種動物細胞 (繊維芽細胞) との共培養はヒ トへの臨床応用に 際して重大な問題となる。
一方、 本発明の浮遊担体を用いることによ り、 L I Fおよび feed er細胞を用いずに、 マウス E S細胞や力二クイザル、 ヒ トなどの霊 長類 E S細胞を未分化状態を維持して培養することができる。 この ように他種動物の細胞との共培養を必要と しないことは E S細胞の 臨床応用において極めて有利である。 また、 本発明の浮遊担体中で は繊維芽細胞が増殖しないという特徴もあるので、 もし、 他の動物 の繊維芽細胞が混入していたとしても、 E S細胞のみを選択的に増 殖させることが可能となる。
このよ うに本発明の浮遊担体を用いて培養および回収された E S 細胞ないしは胚様体は、 以下のような好適な特性を有する。
く回収された E S細胞の特性 >
通常、 E S細胞は L I F存在下では未分化状態を維持しながら増 殖するが、 L I F非存在下では神経や血球、 筋肉などの成熟細胞に 分化してしまう。 しかし、 本発明の浮遊担体を用いて培養おょぴ回 収された E S細胞は、 L I F非存在下の培養でも未分化な状態を維 持することができるという特性を有する。
未分化な状態を維持していることは、 遺伝子発現状態を D N Aチ ップ (マイクロアレイ) によって解析することによって確認できる 。 培養前の E S細胞の遺伝子発現と比較して、 培養後の細胞の遺伝 子発現が変わらない、 あるいは変化が小さければ未分化状態を維持 していると判断される。 また、 培養後の E S細胞集合体の遺伝子発 現が培養前の E S細胞の遺伝子発現と比較して変わらない、 あるい は変化が小さければ、 他の細胞へ分化した細胞のコンタミネ.ーショ ンも-無いか、 あるいは少ないと判断される。
また未分化な状態を維持していることは、 回収した E S細胞をフ ィーダ一細胞上で培養した時、 ァーモンド形のコロニーを形成する ことからも確認できる。 また未分化な状態を維持していることは、 ノ ックアウ トマウス (キメ ラマウス) の作成によっても確認できる また、 E S細胞が未分化な状態を維持してレ、ることはアル力 リ性 フォスファターゼの活性を観測することによつても確認できる。 ァ ルカ リ性フォスファターゼ活性が高ければ、 細胞を Vec t or Red Alk al ine Pho sphat as e Subs t rat e Ki t I ( VEし] ·'0Ρ—^ jを用いて染色した 際に赤く染まる。 上記した特性確認方法については文献 「再生医学—ティ ッシユエ ンジニァリ ングの基礎から最先端技術まで一」 監訳代表 : 大野典也 、 相澤益男、 発行者 : 吉田 隆、 発行所 : 株式会社ェヌ ' ティ一 ' エス、 2 0 0 2年、 (東京) を参照するこ とができる。
本発明において回収された E S細胞が未分化な状態を維持してい るので、 さ らに E S細胞 (万能細胞) と して利用できる。 '回収され た E S細胞が未分化な状態を維持しているので、 種々の化学仲介物 質などを用いて目的の細胞や器官に分化誘導することができる。 本 発明の浮遊担体はこのよ うな化学仲介物質などを用いた E Bの分 'ί匕 誘導工程に利用することもできる。
<回収された胚様体 (Ε Β ) の特性 >
本発明の浮遊担体を用いて培養および回収された Ε Βは、 未分化 な状態を維持することができるという特性を有する。 Ε Βが未分化 な状態を維持していることは、 上記の E S細胞の場合と同様の方法 で確認できる。 また Ε Βが未分化な状態を維持していることの確認 方法は、 文献 「再生医学一ティ ッシュエンジニアリ ングの基礎から 最先端技術まで一」 監訳代表 : 大野典也、 相澤益男、 発行者 : 吉田 隆、 発行所 : 株式会社ェヌ · ティー · エス、 2 0 0 2年、 (東京 ) を参照することもできる。
本発明において回収された Ε Βが未分化な状態を維持しているの で、 種々の化学仲介物質などを用いて目的の細胞や器官に分化誘導 することができる。 本発明の浮遊担体はこのよ うな Ε Βの分化誘導 工程に利用することもできる。
Ε Βの作成に前述したハンギングカルチャー法を採用する場合は 、 別個の E S細胞が液滴の下部で集合して Ε Βが形成されるので、 単一の E Sから Ε Βが形成されているとは限らない。 一方、 本発明 の浮遊担体を用いて培養および回収された Ε Βは、 単一の ( 1個の ) 細胞が増殖して E Bを形成することができるので、 純粋な E Bを 形成することができる。 このよ うに E Bが純粋であることは上記と 同様に遺伝子発現の解析によって確認できる。
以下、 実施例によ り本発明を更に具体的に説明するが、 本発明の 範囲は特許請求の範囲によ り限定されるものであり、 以下の実施例 によって限定されるものではない。
実施例
製造例 1
ポリ プロ ピレンォキサイ ドーポリ エチレンォキサイ ド共重合体 ( プロ ピレンォキサイ ド /エチレンォキサイ ド平均重合度約 6 0 Z 1 8 0、 旭電化工業 (株) 製 : プル口ニック F— 1 2 7 ) 1 0 gを乾 燥クロ口ホルム 3 0 m Lに溶解し、 五酸化リ ン共存下、 へキサメチ レンジイ ソシァネート 0. 1 3 gを加え、 沸点還流下に 6時間反応 させた。 溶媒を減圧留去後、 残さを蒸留水に溶解し、 分画分子量 3 万の限外濾過膜 (アミ コン PM— 3 0 ) を用いて限外濾過を行い、 高分子量重合体と低分子量重合体を分画した。 得られた水溶液を凍 結して、 F— 1 2 7高重合体および F— 1 2 7低重合体を得た。
上記により得た F— 1 2 7高重合体 (本発明のハイ ドロゲル形成 性高分子、 T G P— 1 ) を、 氷冷下、 8質量%の濃度で蒸留水に溶 解した。 この水溶液をゆるやかに加温していく と、 2 1 °Cから徐々 に粘度が上昇し、 約 2 7 °Cで固化して、 ハイ ド口ゲルとなった。 こ のハイ ドロゲルを冷却すると、 2 1 °Cで水溶液に戻った。 この変化 は、 可逆的に繰り返し観測された。 一方、 上記 F— 1 2 7低重合体 を、 氷点下 8質量%の濃度で蒸留水に溶解したものは、 6 0 °C以上 に加熱しても全くゲル化しなかった。
製造例 2
ト リ メチロールプロパン 1モルに対し、 エチレンォキサイ ド 1 6 0モルをカチオン重合により付加して、 平均分子量約 7 0 0 0のポ リ エチレンォキサイ ド ト リオールを得た。
上記により得たポ リ エチレンォキサイ ドト リオール 1 0 0 gを蒸 留水 1 0 0 0 m Lに溶解した後、 室温で過マンガン酸カリ ウム 1 2 gを徐々に加えて、 そのまま約 1時間、 酸化反応させた。 固形物を 濾過により除いた後、 生成物をクロ 口ホルムで抽出し、 溶媒 (クロ 口ホルム) を減圧留去してポリ エチレンォキサイ ドト リカルボキシ ル体 9 0 gを得た。
上記によ り得たポリエチレンォキサイ ドト リカルボキシル体 1 0 g と、 ポリ プロピレンオキサイ ドジァミノ体 (プロピレンォキサイ ド平均重合度約 6 5、 米国ジェフ ァーソ ンケミカル社製、 商品名 : ジェフ ァーミ ン D— 4 0 0 0、 曇点 : 約 9 °C ) 1 0 g とを四塩化炭 素 1 0 0 0 m Lに溶解し、 ジシクロへキシルカルポジイ ミ ド 1 . 2 gを加えた後、 沸点還流下に 6時間反応させた。 反応液を冷却し、 固形物を濾過により除いた後、 溶媒 (四塩化炭素) を減圧留去し、 残さを真空乾燥して、 複数のポリ プロ ピレンォキサイ ドとポリェチ レンォキサイ ドとが結合した本発明のハイ ドロゲル形成性高分子 ( T G P— 2 ) を得た。 これを氷冷下、 1 0質量%の濃度で蒸留水に 溶解し、 そのゾル一ゲル転移温度を測定したところ、 約 1 6 °Cであ つた。
製造例 3
N—イソプロピルアク リルアミ ド (イース トマンコダック社製) 9 6 g、 N—ァク リ ロ キシス ク シンィ ミ ド (国産化学 (株) 製) 1 7 g、 および n —プチルメタタ リ レー ト (関東化学 (株) 製) 7 g をク ロ 口ホルム 4 0 0 0 m Lに溶解し、 窒素置換後、 N, N ' ーァ ゾビスイソプチロニ ト リル 1 . 5 gを加え、 6 0 °Cで 6時間重合さ せた。 反応液を濃縮した後、 ジェチルエーテルに再沈 (再沈殿) し た。 濾過によ り 固形物を回収した後、 真空乾燥して、 7 8 gのポリ ( N—ィ ソプロ ピルァク リルアミ ド一 コ 一 N—ァク リ 口'キシスクシ ンイ ミ ドーコ ー n —プチルメ タク リ レー ト) を得た。
上記によ り得たポリ ( N—イ ソプロ ピルアク リルアミ ドーコー N —アタ リ ロキシスクシンイ ミ ドーコ ー n —ブチノレメ タク リ レー ト) に、 過剰のイ ソプロ ピルアミ ンを加えてポリ (N—イ ソプロ ピノレア ク リルアミ ドーコ一 n _ブチルメ タク リ レー ト) を得た。 このポリ ( N—ィ ソプロ ピルァク リルアミ ド一コ一 n—ブチルメ タク リ レー ト) の水溶液の曇点は 1 9 °Cであった。
前記のポリ (N—イ ソプロ ピルアク リルアミ ドーコ ー N—アタ リ ロキシスクシンイ ミ ドーコ 一 n —プチノレメ タク リ レー ト) 1 0 g、 および两末端ァミ ノ化ポリエチレンォキサイ ド (分子量 6 , 0 0 0 、 川研フ ァイ ンケミ カル (株) 製) 5 g をク ロ 口ホルム 1 0 0 0 m Lに溶解し、 5 0 °Cで 3時間反応させた。 室温まで冷却した後、 ィ ソプロ ピルアミ ン l gを加え、 1時間放置した後、 反応液を濃縮し 、 残渣をジェチルエーテル中に沈澱させた。 濾過によ り 固形物を回 収した後、 真空乾燥して、 複数のポリ (N—イ ソプロ ピルアク リル アミ ド―コ— n _プチルメタタ リ レー ト) とポリエチレンォキサイ ドとが結合した本発明のハイ ド口ゲル形成性高分子 (T G P _ 3 ) を得た。
このよ う にして得た T G P— 3 を氷冷下、 1 0質量%の濃度で蒸 留水に溶解し、 そのゾルーゲル転移温度を測定したところ、 約 2 1 °Cであった。
製造例 4
(滅菌方法)
上記した本発明のハイ ド口ゲル形成性高分子 (T G P — 3 ) の 2 . 0 g を、 E O G (エチレンオキサイ ドガス) 滅菌バッグ (ホギメ ディカル社製、 商品名 : ハイブリ ッ ド滅菌バッグ) に入れ、 E O G 滅菌装置 (イージーパック、 井内盛栄堂製) で E O Gをバッグに充 填し、 室温にて一昼夜放置した。 更に 4 0 °Cで半日放置した後、 E
O Gをバッグから抜き、 エアレーショ ンを行った。 パッグを真空乾 燥器 ( 4 0 °C) に入れ、 時々エアレーシヨ ンしながら半日放置する ことによ り滅菌した。
この滅菌操作によ り高分子のゾルーゲル転移温度が変化しないこ とを、 別途確認した。
製造例 5
N—イ ソプロ ピルアク リルアミ ド 3 7 g と、 n—ブチルメ タク リ レー ト 3 g と、 ポリ エチレンオキサイ ドモノアク リ レー ト (分子量 4 , 0 0 0、 日本油脂 (株) 製 : PME— 4 0 0 0 ) 2 8 g とを、 ベンゼン 3 4 0 m Lに溶解した後、 2, 2 一一ァゾビスイ ソブチロ 二ト リル 0. 8 gを加え、 6 0 °Cで 6時間反応させた。 得られた反 応生成物にクロロホルム 6 0 0 m Lを加えて溶解し、 該溶液をエー テル 2 0 L (リ ッ トノレ) に滴下して沈澱させた。 得られた沈殿を濾 過により回収し、 該沈澱を約 4 0 °Cで 2 4時間真空乾燥した後、 蒸 留水 6 Lに再び溶解し、 分画分子量 1 0万のホローフアイパー型限 外濾過膜 (アミ コン社製 H 1 P 1 0 0 - 4 3 ) を用いて 1 0 °Cで 2 1 まで濃縮した。 該濃縮液に蒸留水 4 1 を加えて希釈し、 上記希釈 操作を再度行った。 上記の希釈、 限外濾過濃縮操作を更に 5回繰り 返し、 分子量 1 0万以下のものを除去した。 この限外濾過によ り濾 過されなかったもの (限外濾過膜内に残留したもの) を回収して凍 結乾燥し、 分子量 1 0万以上の本発明のハイ ドロゲル形成性高分子 ( T G P - 4 ) 6 0 gを得た。
上記によ り得た本発明のハイ ド口ゲル形成性高分子 (T G P - 4 ) l gを、 9 gの蒸留水に氷冷下で溶解した。 この水溶液のゾルー ゲル転移温度を測定したところ、 該ゾルーゲル転移温度は 2 5でで めつ 7こ。
製造例 6
製造例 3の本発明のハイ ド口ゲル形成性高分子 (T G P— 3 ) を 1 0質量%の濃度で蒸留水に溶解し、 3 7 °Cにおける η を測定した ところ、 5. 8 X 1 05 P a · s e cであった。 —方、 寒天を 2 質量%の濃度で蒸留水に 9 0 °Cで溶解して、 1 0 °Cで 1時間ゲル化 させた後、 3 7 °Cにおける 7?を測定したところ、 その 77は機器の測 定限界 ( 1 X 1 0 7 P a · s e c ) を越えていた。
製造例 7
(繊維芽細胞の増殖性評価)
製造例 3で作製した本発明のハイ ドロゲル形成性高分子 (T G P 一 3 ) を製造例 4の方法によって滅菌した後、 該ポリマーの最終濃 度が約 8 %になるように 2 0 %の胎児牛血清 (F C S ; Dainippon Pharmaceutical社製、 商品名 : Fetal Calf Serum) および抗生剤 ( Life Technologies社製、 商品名 : penicillin; 最終濃度 1 0, 0 0 0 U/m L ) を含有する R P M I — 1 6 4 0 (Life Technologie s社製) 中に、 4でで 2 4時間、 撹拌下に溶解した。 この操作は無 菌的に実施した。
上記の本発明の浮遊担体 (T G P— 3ノ R PM I ) に正常ヒ ト肺 繊維芽細胞 (Normal Human Lung Fibroblasts, N H L F , 宝酒造 (株) 社製) ) を 6 X 1 04 個/ m Lの細胞密度になるように分散 させた。 この NH L F分散液を 2 4 w e 1 1 プレー ト [flat botto m multiwel丄 tissue culture plate F A L C ON, Bee ton Dicki nson & Company) ] の各 w e 1 1 に 0. 2 m Lずつ分注し、 3 7 °Cでゲル化させた後、 培養液 0. 4 m Lを添加して 3 7 °C、 5 % C O 2 大気圧下で培養した。 2 4 w e 1 1 プレー トは顕微鏡観察用と 繊維芽細胞増殖率測定用の各 2枚を 0, 1, 3, 7 日 目用分合計 8 枚用意した。 これとは別に比較用と して T G P— 3を用いないで上 記の培養液に 6 X 1 04 個/ mLの細胞密度になるように分散させ た NH L F分散液を調製し、 同様にして 2 4 w e 1 1 プレー ト 8枚 を用意して同様の培養試験を行った。
位相差顕微鏡によ り経日的 ( 0, 1, 3, 7 日) に観察した結果 、 比較例の培養では 1 日後から繊維芽細胞に特徴的な樹枝状の増殖 が見られ、 7 日後にはコンフルェン トの状態となったのに対し、 本 発明の浮遊担体中では 7 日後まで繊維芽細胞が単細胞の形態を保つ たままで増殖の様子は認められなかった。
所定培養日数の経過後、 2 4 w e 1 1 プレートを 4 °Cに下げるこ とによつて該浮遊担体を溶解した後、 各ゥエル中にコハク酸脱水素 酵素活性測定用試薬たる WS T— 8試薬 (同仁化学 (株) 製) 5 0 Lを添加した。 この 2 4 w e l 1 プレー トを 3 7 °Cで 1 0時間反 応させた後 4 °Cに冷却して完全に均一な水溶液の状態にした。 該水 溶液を 9 6—ゥエルプレートに 2 0 0 1 づつ分注し、 マイクロプ レート用比色計を用いて 4 5 0 n m (参照波長 6 2 0 n m) で吸光 度 (O D ( 4 5 0 ) ) を測定した。 繊維芽細胞の増殖率は培養開始 時 ( 0 日) の吸光度 (OD ( 4 5 0 ) ) と培養後 ( 1、 3、 7 日後 ) の吸光度 (O D ( 4 5 0 ) ) の比によ り求めた。 本発明の浮遊担 体中では 1、 3、 7 日後の繊維芽細胞の増殖率がそれぞれ 1 0 5 % 、 1 2 0 %、 1 2 5 %であったのに対し、 比較例では 1、 3、 7 日 後の繊維芽細胞の増殖率がそれぞれ 1 7 0 %、 3 7 0 %、 4 2 0 % であった。
実施例 1
製造例 3で作製した本発明のハイ ド口ゲル形成性高分子 (T G P 一 3 ) を製造例 4の方法によって滅菌した後、 該ポリマーの最終濃 度が 9. 1 %になるよ うに 1 5 %仔牛胎児血清、 4 5 0 mMモノチ ォグリセローノレ、 1 0 m g /L イ ンス リ ンを添カ卩した Iscove,s M odified Dulbecco's Medium ( I MDM, G I B C O社製) 培地に 溶解した。
この水溶液 (本発明の浮遊担体) のゾルーゲル転移温度は 2 0 °C であった。 また 3 7 °Cにおけるこの水溶液中の鉄球 (直径 4 mm) 沈降速度 V 3 7 は 0. O O l mmZ分以下、 1 0 °Cにおけるこの水 溶液中の鉄球 (直径 4 mm) 沈降速度 。 は 5 0 0 mm/分以上 であった。
上記本発明の浮遊担体にマウス E S細胞 ( 1 2 9 S V、 大日本製 薬 (株) 製) を 5 X 1 03 細胞 /"m Lの濃度で播種し、 あらかじめ 3 7 °Cに温めておいたパクテリ ァ用培養皿 (直径 1 0 0 mm) へ 2 m L滴下して島状になるようにした。 5 % C 02 、 3 7 °Cの培養 条件下に 3 0分間静置することでゲル化した。 蓋をかぶせてそのま ま 5 % C 02 、 3 7 °Cの培養条件下で 6 日間培養し E Bを調製し た (図 3 ) 。 本発明の浮遊担体では、 細胞は播種時の位置関係が保 存され、 単細胞である E S細胞からの E B誘導が観察できた。
培養後、 2 0〜3 O m Lの P B Sを加え氷上に 3〜 5分間静置し た後、 手で軽く ゆするとゲルが容易に希釈できた。 この希釈液を遠 心分離することで E Bを回収することができた。
実施例 2
製造例 3で作製した本発明のハイ ドロゲル形成性高分子 (T G P 一 3 ) を製造例 4の方法によって滅菌した後、 該ポリマーの最終濃 度が 9. 1 %になるよ うに、 1 5 %仔牛胎児血淸、 4 5 0 m Mモノ チォグリセロール、 1 0 m g /L イ ンスリ ンを添加した Iscove's Modified Dulbecco's Medium ( I MDM, G I B C O社製) 培地 に溶解した。 上記本発明の浮遊担体にマウス E S細胞 ( 1 2 9 S V、 大日本製 薬 (株) 製) を 5 X 1 03 細胞 ZmLの濃度で播種し、 あらかじめ 3 7 °Cに温めておいたパクテリ ア用培養皿 (直径 1 0 0 mm) へ 2 m L滴下して島状になるようにした。 5 % C O 2 、 3 7 °Cの培養 条件下に 3 0分間静置することでゲル化した。 そのゲルの上にその ゲルを覆う よ うに 3 7 °Cに温めた 2 0 m Lの 1 5 %仔牛胎児血清含 有 I MDM培地を重層した。 蓋をかぶせてそのまま 5 % C O 2 、 3 7 °Cの培養条件下で 3 日間培養した後、 重層した I MDM培地を 3 7 °Cに雰囲気を保ったまま吸引除去し、 3 7 °Cに温めた 2 0 m L の 1 5 %仔牛胎児血清含有 I M DM培地をあらためて重層し、 新鮮 な培地に交換した。 蓋をかぶせてそのまま 5 % C O 2 、 3 7での 培養条件下で更に 3 日間培養した (図 4 ) 。 重層培地および培地交 換の効果によ り、 実施例 1 よ り も E Bの成長速度が速かった。
重層した I MDM培地を 3 7 °Cに雰囲気を保ったまま吸引除去し 、 2 0〜 3 0 m Lの P B Sを加え氷上に 3〜 5分間静置した後、 手 で軽く ゆするとゲルが容易に希釈できた。 この希釈液を遠心分離す ることで E Bを回収することができた。
比較例 1
市販のメチルセルロース含有 I MDM培地 (E S— C u 1 t (商 標) 、 M 3 1 2 0, StemCell Technologies社製、 メチルセルロー ス濃度 2. 5 %) を 1 5 %仔牛胎児血清、 4 5 0 mMモノチォグリ セローノレ、 1 0 m g /L イ ンス リ ンを添力!]した Iscove's Modi fie d Dulbecco's Medium ( I MDM, G I B C O社製) 培地で希釈し 、 メチルセルロース濃度が 1 %となるよ うに調製した。 この浮遊担 体は 0 °C〜 4 5 °Cの範囲にゾル一ゲル転移温度を有していなかった 。 また 3 7 °Cにおけるこの浮遊担体中の鉄球 (直径 4 mm) 沈降速 度 V 3 7 は 5 0 O mmZ分以上 (沈降が速すぎて、 測定困難) であ り、 1 0 °Cにおけるこの水溶液中の鉄球 (直径 4 mm) 沈降速度 V ! 0 も 5 0 0 mm/分以上であった。
この浮遊担体 (メチルセルロース培養担体) にマウス E S細胞 ( 1 2 9 S V、 大日本製薬 (株) 製) を 5 X 1 0 3 細胞, Zm Lの濃度 で播種し、 あらかじめ 3 7 °Cに温めておいたパクテリア用培養皿 ( 直径 1 0 0 mm) へ 2 m L滴下して、 5 % C O 2 、 3 7 °Cの培養 条件下で 6 日間培養し E Bを調製した (図 3 ) 。 メチルセルロース 培養担体は、 高粘度の液体であるため次第に成長していく E Bは早 い段階で沈降し、 培養皿底面に接着し、 E S細胞由来繊維芽細胞様 の接着性細胞の発生が認められた。
培養後、 2 0〜 3 O m Lの P B Sを加え氷上に 3〜 5分間静置し た後、 手で軽く ゆすったが、 メチルセルロース培養担体は容易に希 釈できなかった。 更にピペッ トを使って、 吸引と排出を繰り返した が、 液体培地を重層していないために、 メチルセルロース培地の乾 燥が進み、 希釈は容易ではなかった。 また回収された E Bには E S 細胞由来繊維芽細胞様の接着性細胞のコンタミネーショ ンが避けら れなかった。
実施例 3
あらかじめマウス E S細胞用培地と して、 L I Fあり培地と L I Fなし培地それぞれを用意した。 L I Fあり培地と しては、 E S細 胞用調製済培地 (大日本製薬製) を使用した。 L I Fなし培地と し ては、 E S細胞用 D— MEM液 (大日本製薬製) に E S細胞用血清 1 5 %、 E S細胞用ヌク レオシド液 ( 1 0 0 X) 、 E S細胞用非必 須ァミ ノ酸液 ( 1 0 0 X ) 、 1 0 0 X Penicillin - Streptomycin - G1 utamine, 1 iquid ( G I B C O製) を各 1 %、 ]3 M E (sigma製) 1 1 0 μ Mを添加したものを使用した。
製造例 3で作成した本発明のハイ ドロゲル形成性高分子 (T G P — 3 ) を製造例 4の方法によって滅菌した後、 該ポリマーの最終濃 度が 9. 1 %になるように、 L I Fあり培地と L I Fなし培地それ ぞれに 4°Cで溶解し、 本発明の浮遊担体 (L I Fあり) と本発明の 浮遊担体 ( L I Fなし) を調製した。
マウス E S細胞 ( 1 2 9 S V、 大日本製薬製) を 8 X 1 03 個/ m 1 になるように本発明の浮遊担体 (L I Fあり) と本発明の浮遊 担体 (L I Fなし) それぞれに 4°Cで分散させた。 該分散液それぞ れを 4 °Cのまま 6 ゥエルプレー トの各ゥエルに 5 0 0 μ Lずつ分注 し、 3 7 °Cインキュベータ一中に 1 5分間静置して本発明の浮遊担 体をゲル化させた。 各 E S細胞分散ゲル ( L I Fありおよび L I F なし) に、 3 7 °Cに加温した各 E S細胞用培地 (L I Fありおよび L I Fなし) をそれぞれ 4 m 1ずつ重層し、 3 7 °Cインキュベータ 一中培地交換なしで 5 日間培養した。
重層培地を除去し、 リ ン酸緩衝液 (P B S、 p H 7. 4) を 4 m 1加え、 氷中で冷やしながら 1 5分程度振と う しゲルを溶解した。 完全にゲルが溶解した後、 ゥエル中の細胞塊 (スフエロイ ド) を沈 降させて集め、 集めた細胞塊を含む約 8 0 / Lを別に用意した 6 w e 1 1 プレー ト中の 4 %パラホルムアルデヒ ドー リ ン酸緩衝液 ( P F A, WAKO製) 4 m 1 に加えて 1 0分間室温で固定した。 ゥェ ル中の細胞塊 (スフェロイ ド) を集め、 集めた細胞塊を含む約 8 0 ix Lを別に用意した 6 w e 1 1 プレー ト中の P B S 4 m l に加えて 洗浄した。
ゥェル中のスフヱロイ ドを集め (約 4 0 μ ί) 、 1 . 5 m Lの遠 心チューブに入れたアルカリ性フォスファタ一ゼ染色液 ( 4 0 0 μ L) に移し 3 5分間室温暗所に静置して染色した。 アルカ リ性フォ スファターゼ染色液の調製は、 Vector Red Alkaline Phosphatase Substrate Kit I (VECTOR製) を使用し、 l O O mMト リスー塩酸 緩衝液 (T r i s — H C 1 、 p H 8. 2 ) 5 m l に Reagent 1 を 2 滴加えて良く撹拌した後、 Reagent 2液を 2滴加えて撹拌、 さらに R eagent 3液を 2滴加えて良く撹拌した。 染色後、 8 0 0 0 X g、 3 分間遠心分離を行い、 沈殿しているスフヱロイ ド (約 1 2 0 L ) を P B S ( 4 m l ) に再分散させ位相差顕微鏡 (倍率 1 0 0倍) に て観察した。
L I Fあり培地で培養したマウス E S細胞 (図 6 ) も、 L I Fな し培地で培養したマウス E S細胞 (図 7 ) もアルカ リ性フォスファ ターゼ染色により赤色に染色され、 本発明の浮遊担体を用いて培養 された E S細胞はアル力リ性フォスファターゼ活性が高いこと、 す なわち、 未分化性を維持していることが示された。 特に図 7に示す L I Fなし培地で培養したマウス E S細胞の方が強く赤色に染ま り 、 より未分化性の高いことが示唆された。
比較例 2
培養フラスコ (F A L C ON、 培養面積 2 5 c m2 ) の底面を E S細胞用 0 . 1 %ゼラチン液 (大日本製薬) 2 m l でなじませ室温 4時間静置後、 P B S 2 m 1 で 2回洗浄し風乾した。 初代マウス胚 繊維芽細胞 (ハイグロマイシン耐性、 マイ トマイシン C処理済) ( 大日本製薬) を 1 フラスコあたり 1 . 2 X 1 0 6 個を播種し、 培地 と して 1 0 % F B S (G I B C O) 含有 DMEM (G I B C O) に 1 0 0 X Penicillin-5treptomyc in-Glut amine, liquid 、G I B C O) を 1 %添加したものを加え、 1 日間培養して、 これを feeder細 胞と した。 feeder細胞の培地を除去し、 E S細胞用調製済培地 (大 日本製薬) に置き換え、 マウス E S細胞 (大日本製薬) ( 1 2 9 S V : 継代数 1 5〜 3 0 ) を 1 フラスコあたり 1 X 1 0 6 個播種した 。 毎日培地を交換し 3 日間培養した後、 培地を除去し、 P B S 5 m 1 で 2回洗浄した。 4 %パラホルムアルデヒ ド—リ ン酸緩衝液 (P F A, WAKO製) 2 m 1 を加えて 1 0分間室温で固定した。 P B S 2 m 1 で 2回洗浄した後、 実施例 3 と同じアルカリ性フォスファ ターゼ染色液 2 m 1 を加えて 3 5分間室温暗所に静置して染色した
。 P B S 2 m 1 で 2回洗浄した後、 位相差顕微鏡 (倍率 1 0 0倍) にて観察した。 feeder細胞上 L I F共存下で培養したマウス E S細 胞をアル力リ性フォスファターゼ染色した結果、 図 8に示すように 薄く赤色に染色された。 これは feeder細胞上で培養したにもかかわ らず、 E S細胞の未分化性は実施例 3の本発明の浮遊担体中 (L I Fなし) より も低いことを示している。
実施例 4
製造例 3で作成した本発明のハイ ドロゲル形成性高分子 (T G P — 3 ) を製造例 4の方法によって滅菌した後、 該ポリマーの最終濃 度が 9. 1 %になるように、 力二クイザル E S用培地 ( E S細胞用 培地添加物 (E SM S— 2 0 1、 旭テクノグラス製) を添加した力 二クイザル E S用基本培地 (E S BM— 1 0 1、 旭テクノグラス製 ) ) に溶解した。 この本発明の浮遊担体 0. 5 m l に力二クイザル E S細胞 (CME S - 0 0 1、 旭テクノグラス製) l x l O 5 個を 分散させ、 6 w e 1 1 プレー ト中心に該細胞を含む浮遊担体 0. 5 m 1 を ドロップ状に配した後、 3 0分間培養器内で 3 7 °Cに保ち、 浮遊担体がゲル化した後に上記力二クイザル E S用培地 1 0 m 1 を 重層し 3次元培養を行った。 重層培地は隔日で交換し、 1週間の培 養によ り、 力二クイザル E S細胞は平面培養と全く異なるマウス E S細胞における E B様の球体状の細胞塊を形成した。
さ らにこの球状細胞塊を実施例 3 と同様に回収し、 未分化性の確 認の為アルカリ フォスファターゼ染色を行い、 位相差顕微鏡 (倍率 4 0 0倍) にて観察した。 その結果、 回収された力二クイザル E S 細胞塊は図 9に示すよ うに強く赤色に染色され、 本発明の浮遊担体 を用いて培養された力二クイザル E S細胞はアルカリ性フォスファ ターゼ活性が高いこと、 すなわち、 未分化性を維持していることが 示された。 本発明浮遊担体を用いることによ り、 霊長類 E S細胞に おいても他種動物繊維芽細胞 (feeder細胞) を用いずに未分化性を 維持した培養が可能であった。
比較例 3
マウス胎児繊維芽細胞 (旭テクノグラス製) をフィーダ一培地 ( フィーダー細胞用培地添加物 (旭テクノグラス) を添加したフィー ダー細胞用基本培地 (D M E M、 旭テタノグラス) ) に 1 X 1 0 5 個 / m l になるように分散させ、 E S細胞用ゼラチンコート D I S H (直径 6 0 m m、 旭テクノグラス) 1ディ ッシュあたり 5 m lず つ播種した。 1 日間培養して、 これを feeder細胞と した。 feeder細 胞の培地を除去し、 力二クイザル E S用培地に分散させた力二クイ ザル E S細胞 ( C M E S - 0 0 1、 旭テクノグラス製) を播種した 。 培地交換なしで 5 日間培養した後、 比較例 2 と同様にしてアル力 リ フォスファターゼ染色を行い、 位相差顕微鏡 (倍率 4 0 0倍) に て観察した。 その結果、 図 1 0に示すように薄く赤色に染色された 。 これは feeder細胞上で培養したにもかかわらず、 力二クイザル E S細胞の未分化性は実施例 4よ り も低いことを示している。 産業上の利用可能性
上述したように、 本発明の浮遊担体は低温でゾル状態、 体温でゲ ル化するハイ ドロゲル形成性の高分子から構成されるため、 低温の ゾル状態で本発明の浮遊担体中に被浮遊物 (例えば、 未分化幹細胞 や前駆細胞あるいはそれらを含有する組織等) を播種ないしは分散 、 混和することができ、 そのまま適当な処理 (例えば培養) 温度で 本発明の浮遊担体をゲル化させることによって、 該浮遊担体をゲル 状態と して、 被浮遊物 (例えば未分化幹細胞) を、 浮遊担体を収容 する容器壁に接触させずに処理 (例えば培養) できる。 '
本発明の浮遊担体では、 ハイ ドロゲル形成性のゲル形成性組成物 が高温のゲル状態 (処理温度) で実質的に水不溶性を示すため、 本 発明の浮遊担体の上に液体成分 (例えば液体培地) を重層したり、 液体成分中に本発明の浮遊担体を浮遊させて処理 (例えば、 細胞培 養) したりすることができる。
生体由来成分に本発明の担体を使用する態様において、 未分化な 細胞が増殖する際には大量の養分を必要とするが、 本発明の浮遊担 体では外部の液体培地からその必要な養分を補給することができる 。 また、 細胞が生成する老廃物などの細胞増殖を阻害する物質を外 部の液体培地中へ排出することができる。 その結果、 本発明の浮遊 担体では従来の細胞培養方法に比べて細胞の増殖を促進することが できる。
本発明の浮遊担体中で目的の処理 (例えば、 組織 , 器官の誘導) を行った後、 これらを本発明の浮遊担体から回収するには、 目的の 被浮遊物を含む本発明の浮遊担体を該ゾルーゲル転移温度以下の温 度 (例えば 4 °C ) に冷却して、 本発明の浮遊担体をゾル状態に戻し 、 遠心分離等の方法で目的の被浮遊物と本発明の浮遊担体を分離す れば良い。 また、 本発明の浮遊担体はそのゾルーゲル転移温度よ り 低温のゾル状態では、 水により容易に希釈できるため、 更に流動性 を高くでき、 被浮遊物の回収を更に容易にすることができる。
生体由来成分に本発明の担体を使用する態様において、 本発明の 浮遊担体は繊維芽細胞の増殖を抑え、 幹細胞や前駆細胞の増殖や分 化を促す特性を有することができるため、 本発明の浮遊担体中で目 的とする組織 · 器官を効率よく形成させることができる。

Claims

請 求 の 範 囲
1 · ノ、ィ ド口ゲル形成性の高分子を少なく とも含むゲル形成性の 浮遊担体であって ; 該浮遊担体が低温でゾル状態、 高温でゲル状態 となる熱可逆的なゾル—ゲル転移を示し、 且つ、 高温のゲル状態で 実質的に水不溶性を示し、
該浮遊担体中における鉄球 (直径 4 mm) の沈降速度が、 前記ゾ ルーゲル転移温度よ り 1 6 °C高い温度において 1 m m /分以下であ り、 且つゾルーゲル転移温度よ り 6 °C低い温度において 5 mmZ分 以上であることを特徴とする浮遊担体。
2. 前記ゾルーゲル転移温度より 1 6 °C高い温度における沈降速 度 ( a ) と、 ゾルーゲル転移温度より 6 °C低い温度における沈降速 度 ( b ) との比 ( b / a ) が 5以上である請求項 1 に記載の浮遊担 体。
3. ハイ ド口ゲル形成性の高分子を少なく とも含むゲル形成性の 浮遊担体であって ; 該浮遊担体が低温でゾル状態、 高温でゲル状態 となる熱可逆的なゾル—ゲル転移を示し、 且つ、 高温のゲル状態で 実質的に水不溶性を示し、
該浮遊担体中における鉄球 (直径 4 mm) の沈降速度が、 3 7 °C において 1 mmZ分以下であり、 且つ 1 0 °Cにおいて 5 mm 分以 上であることを特徴とする浮遊担体。
4. 3 7 °Cにおける沈降速度 ( c ) と、 1 0 °Cにおける沈降速度 ( d ) との比 ( c / d ) が 5以上である請求項 3に記載の浮遊担体
5. 前記浮遊担体中で実質的に繊維芽細胞が増殖しない請求項 1 〜 4のいずれかに記载の浮遊担体。
6. 前記ハイ ドロゲル形成性の高分子が、 曇点を有する複数のブ ロ ック と親水性のブロックとが結合した高分子である請求項 1〜 5 のいずれかに記載の浮遊担体。
7 . 前記ゾルーゲル転移温度が 0 °Cよ り高く 4 5 °C以下である請 求項 1 〜 6のいずれかに記载の浮遊担体。
8 . 更に水を含む請求項 1〜 7のいずれかにに記載の浮遊担体。
9 . 更に化学仲介物質を含有する請求項 1 〜 8のいずれかに記載 の浮遊担体。
1 0 . 水と、 ハイ ド口ゲル形成性の高分子とを少なく とも含むゲ ル形成性の浮遊担体であって ; 該浮遊担体が低温でゾル状態、 高温 でゲル状態となる熱可逆的なゾルーゲル転移を示し、 且つ高温のゲ ル状態で実質的に水不溶性を示し ; 該浮遊担体中における鉄球 (直 径 4 m m ) の沈降速度が、 前記ゾルーゲル転移温度よ り 1 6 °C高い 温度において l m m /分以下であり、 且つゾルーゲル転移温度よ り 6 °C低い温度において 5 m m //分以上である浮遊担体を用い ; 該浮遊担体を該ゾル—ゲル転移温度よ り低温のゾル状態と して、 該浮遊担体に被浮遊物を添加し、
該ゾルーゲル転移温度よ り高温のゲル状態で被浮遊物を保持し、 その後、
再度該ゾルーゲル転移温度より低温のゾル状態として保持後の被 浮遊物を回収することを特徴とする浮遊 · 回収方法。
1 1 . ハイ ド口ゲル形成性の高分子を少なく とも含むゲル形成性 の浮遊担体であって ; 該浮遊担体が低温でゾル状態、 高温でゲル状 態となる熱可逆的なゾルーゲル転移を示し、 且つ、 高温のゲル状態 で実質的に水不溶性を示し、 該浮遊担体中における鉄球 (直径 4 m m ) の沈降速度が、 3 7 °Cにおいて 1 m m /分以下であり、 且つ 1 0 °Cにおいて 5 m m 分以上である浮遊担体を用い ;
該浮遊担体を該ゾルーゲル転移温度よ り低温のゾル状態と して、 該浮遊担体に被浮遊物を添加し、
該ゾルーゲル転移温度よ り高温のゲル状態で被浮遊物を保持し、 その後、
再度該ゾルーゲル転移温度よ り低温のゾル状態と して保持後の被 浮遊物を回収することを特徴とする浮遊 , 回収方法。
1 2 . 前記被浮遊物が、 生体由来の細胞および/又は組織であり 、 且つ浮遊担体中で生体由来の細胞および/"又は組織の培養を行う 請求項 1 0または 1 1に記載の浮遊 · 回収方法。
1 3 . 前記被浮遊物が E S細胞である請求項 1 2に記載の浮遊 · 回収方法。
1 4 . 請求項 1 2に記載の方法で培養、 回収されたことを特徴と する E S細胞。
1 5 . 請求項 1 2に記載の方法で培養、 回収されたことを特徴と する胚様体 (Embryo id body, E B ) 。
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