JPWO2013099924A1 - 核酸導入された細胞の製造方法 - Google Patents

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Abstract

従来技術では核酸導入が困難であった初代細胞や分裂の遅い細胞へ有用であり、細胞傷害性も低い、核酸導入された細胞の製造方法を提供する。2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート及び/又はその誘導体を重合主成分とする温度感応性ポリマー材料に対し、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールを添加してなる温度感応性材料に対し、その曇点よりも低い温度で核酸を混合する工程と、この混合液を培養容器に流塗する工程と、該曇点よりも高い温度で細胞浮遊液を該培養容器に供給し、培養する工程とを有する細胞への核酸導入方法。

Description

本発明は、核酸導入された細胞の製造方法に係り、特に2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート及び/又はその誘導体を重合主成分とする温度感応性ポリマー材料を用いた核酸導入された細胞の製造方法に関する。
曇点より低い温度では親水性であり、曇点より高い温度では疎水性となる温度感応性を示す温度感応性ポリマーとして、N−イソプロピルアクリルアミドのポリマー及び2−(N,N−ジメチルアミノエチル)メタクリレートのポリマーが公知である(特許文献1〜5)。
特許文献1の通り、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)が37℃付近では疎水性であり、25℃付近では親水性である特性を利用して培養皿から培養細胞を剥離することができる。細胞は、疎水性の表面に接着するため、37℃でポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)が疎水性のときには、これが付着した培養皿に細胞が培養される。25℃でポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)が親水性となると、培養細胞は培養皿から剥離する。この現象を利用して培養皿から細胞シートを剥離させて回収することができる。
近年、ヒト疾患の分子遺伝学的要因が明らかになるにつれ、遺伝子治療研究がますます重要視されている。遺伝子治療法は標的とする部位でのDNAの発現を目的としており、いかにDNAを標的部位に到達させるか、いかにDNAを標的部位に効率的に導入し、当該部位で機能的に発現させるかということが重要となる。外来DNAの導入のためのベクターとして、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ付随ウイルス、レンチウイルス、センダイウイルス又はヘルペスウイルスを含む多くのウイルスが、治療用遺伝子を運搬するように改変されて、遺伝子治療のヒトの臨床試験に使用されている。しかし感染及び免疫反応の危険性は依然として残されている。
特許文献3には、ベンゼンなどの芳香環を核として分岐鎖が放射状に伸延する分岐構造のベクターがDNAを高密度で凝縮させて小さな核酸複合体微粒子を形成させ、効率良く細胞へ遺伝子導入できることが記載されている。
特許文献2には、ポリ[2−(N,N−ジメチルアミノエチル)メタクリレート]の温度感応性を利用した、N,N−ジアルキルジチオカルバミルメチル基を同一分子内に3個以上有する化合物をイニファターとし、このイニファターに対して、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート及び/又はその誘導体を光照射リビング重合してなるスター型ポリマーよりなる遺伝子導入剤が記載されている。この遺伝子導入剤は、分岐鎖を構成する2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート及び/又はその誘導体が、僅かながらカチオン性を有する。そのため、このカチオン性の2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート単位は、核酸との結合に寄与し、遺伝子導入剤の核酸担持量が多くなる。また、この遺伝子導入剤は、分岐鎖が感温性を有しており、温度を上昇させることにより、遺伝子導入剤が疎水性に変化する。
より多くの核酸を担持することができる遺伝子導入剤として、N,N−ジアルキルジチオカルバミルメチル基を同一分子内に3個以上有する化合物をイニファターとし、このイニファターに対して、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート及び/又はその誘導体を光照射リビング重合してなる遺伝子導入剤が特許文献5に記載されている。
この特許文献5に記載される遺伝子導入剤は、分岐鎖を構成する2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート及び/又はその誘導体が、僅かながらカチオン性を備えるため、このカチオン性の2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート単位が、核酸との結合に寄与し、核酸担持量を多くすることができる。また、分岐鎖が感温性を有していることから、温度を調整することにより、遺伝子導入剤を疎水性に変化させることができる。
N−イソプロピルアクリルアミドや2−(N,N−ジメチルアミノエチル)メタクリレートのいずれのポリマーも水溶液中で32℃付近にLCST(曇点)があり、哺乳類動物の体温領域で疎水性、室温で親水性を示す感温特性を利用してDDS(ドラッグデリバリーシステム)や細胞培養の分野に利用されている。この感温特性は、ポリマー側鎖の運動エネルギーと側鎖分子団の水分子との親和性の関係で30℃付近でグロビュール構造とコイル構造の転移を起すことで現れるものである。
特許文献3に記載の遺伝子導入剤は、所定温度(T)よりも低い温度では親水性であり、該所定温度(T)よりも高い温度では疎水性であるという性質を有する。この性質を利用し、この遺伝子導入剤を容器の内面に付着させた培養容器が特許文献4に記載されている。この特許文献4では、遺伝子導入剤の疎水性を利用して容器内面に遺伝子導入剤を長期に亘り付着させることが可能である。
リバーストランスフェクションとは接着細胞への遺伝子導入に利用される技術であり、培養皿へ予め核酸複合体などをコーティングしておき、該コーティング層からの核酸の徐放や細胞による取り込みを利用して接着基材側から遺伝子を導入する。培地中へ核酸複合体を分散・溶解させて、培地から細胞内へ取り込ませる通常のトランスフェクションと対をなす技術である。
特許第4475847号公報 特開2010−136631号公報 特開2008−195681号公報 特開2008−194003号公報 特開2011−72257号公報
1) 感温性ポリマーとして知られるN−イソプロピルアクリルアミド及びポリ[2−(N,N−ジメチルアミノエチル)メタクリレート]は、LCSTは32℃程度であり、細胞培養の環境(一般に37℃に温調された培養器内)では疎水性の性質を発現して培養皿の底面へ局在化してコーティング層を形成するが、実際の培養皿へのコーティング操作、細胞の播種などの作業は無菌的に維持されたクリーンベンチ(閉じ込め指数P2以上のバイオハザード実験の際は安全キャビネット)内で行なわれ、これらの操作に熟練した当業者が迅速に行っても培養皿の底面は一時的に室温またはそれに近い温度となっている。特に、24Well以上の多穴培養皿などでは操作時間が長くなり、培養皿が室温付近にまで冷却され易い。
2) 細胞培養器の庫内の温度を37℃に安定して維持させる都合上、実験室の環境温度は、なるべく37℃から差があるように、例えば25℃程度と低く設定されている。この環境温度へ前記コーティング層が曝されることと、疎水化した層がLCSTよりも低温度となり、溶出してしまい、所謂リバーストランスフェクションの状態・条件とならなくなる。
3) 細胞膜表面のレセプターなどが、接着基材面へ配向する現象(所謂、キャッピング現象)が存在するためか、遺伝子導入には通常のトランスフェクションよりもリバーストランスフェクションの方が、使用する核酸量や発現量などの観点から効率が良いという説がある。例えば、ゼラチンゲル材料や分解性樹脂材料などを利用した核酸デリバリー技術は、核酸を包埋混合した材料の分解に伴って徐々に核酸を放出させて接着細胞へ接着面(底面)から核酸を供給する技術で、その有用性を評価してこの技術を専門に研究しているグループが存在する。また、温度感応性ポリマーを利用したリバーストランスフェクションでは、コーティング層が剥がれないように放射線グラフト重合などで培養皿へ温度感応性ポリマーを直接固定するような技術が検討されている。これらの技術では、いずれも事前に煩雑なコーティング作業にて培養皿へ支持層を固定し、これを滅菌する必要があり、研究者がめいめいの培養皿へ目的とする核酸を使用して実験を行うことには踏襲できない。
4) 従来技術では、核酸及びポリマー材料を含む培地中の該ポリマー材料(粒径は約250nm以下)が細胞に取り込まれ、細胞傷害性が認められることがある。
本発明は、従来技術では核酸導入が困難であった初代細胞や分裂の遅い細胞へ有用であり、細胞傷害性も低い、核酸導入された細胞の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の核酸導入された細胞の製造方法は、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート及び/又はその誘導体を重合主成分とする温度感応性ポリマー材料に2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールを添加してなる温度感応性組成物の水溶液に対し、その曇点よりも低い温度で核酸を混合して遺伝子導入組成物を製造する遺伝子導入組成物製造工程と、該遺伝子導入組成物を培養容器に付着させる付着工程と、該曇点よりも高い温度で細胞浮遊液を該培養容器に供給して培養する培養工程とを有する。
前記温度感応性ポリマー材料の水溶液に対し2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールの水溶液を添加して前記温度感応性組成物の水溶液を調製することが好ましい。
また、前記付着工程と培養工程との間に温度感応性組成物を乾燥させる乾燥工程を有することが好ましい。
温度感応性組成物の曇点は10〜25℃であることが好ましい。
本発明でいう温度感応性組成物の『曇点』とは、厳密な意味で『温度感応性材料が、ある一定の温度未満で水に溶解するが、その温度以上では不溶化して疎水凝集するために水溶液懸濁する時の温度』を指すものではない。これは、温度感応性組成物の水溶液を冷却・加温する速度、水溶液を入れる容器のサイズと伝熱効率、温度感応性組成物の濃度などの人為的因子が測定値に影響するために厳密な『曇点』が測定がしにくい事情を考慮してのことであり、従って、本発明では、37℃で不溶化凝集させた温度感応性組成物が所定の温度未満の条件とした際に該温度感応性組成物が再溶解する際の所要時間が数分以上かかる場合にその所定の温度を曇点と呼ぶ場合もある。
前記ポリマー材料の分子量は、5,000〜500,000であることが好ましい。
2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEM)及び/又はその誘導体を重合主成分とする温度感応性ポリマー材料(以下、単に「温度感応性ポリマー材料」と称す場合がある。)に、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールを加えた温度感応性組成物の曇点は、ポリマー材料の曇点よりも低下する。2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールの添加量が多くなるほど温度感応性組成物の曇点の低下量が多くなるので、この添加量を調整することにより、温度感応性組成物の曇点を任意に調整することができる。
この温度感応性組成物と核酸とを混合してなる遺伝子導入組成物を培養容器に流布し、曇点よりも高い温度下におくと、流布液がゲル化してコーティング層が形成される。この培養容器内に細胞浮遊液を曇点よりも高い温度で供給して培養すると、細胞がコーティング層に付着し、コーティング層中の核酸が細胞に取り込まれる。
本発明方法では、クリーンベンチ内の作業で培養容器のコーティング層が室温と平衡となってもコーティング層が剥離や溶出することはなく、厳密に接着細胞へ接着基材側からのみ遺伝子供給を行うことができる。本発明方法によると、キャッピング現象によって接着面側から優先的に物質を取り込んでいる可能性がある初代細胞へ、トランスフェクション(培地側からの核酸複合体の供給)が安定して行われる。
本発明方法では、ポリマー材料が培養容器に固着しており、これにより細胞への取り込みが防止ないし抑制され、細胞傷害性が低下する。
本発明方法では、培地を構成するポリマー材料が培養容器に固着しているので、核酸導入材料の付着性、長期安定性に優れるため、優れた遺伝子導入活性を長期間に亘って持続することができる。
実施例1における遺伝子導入活性を示すグラフである。 実施例2と比較例3におけるGFP蛍光顕微鏡写真である。 実施例における光透過率の経時変化を示すグラフである。 実施例におけるNMR測定で得られた結果を示すグラフである。 実施例におけるDSC測定で得られた結果を示すグラフである。 実施例におけるIR測定で得られた結果を示すチャートである。 実施例4と比較例4におけるGFP蛍光顕微鏡写真である。
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明方法は、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート及び/又はその誘導体を重合主成分とする温度感応性ポリマー材料に2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールを添加してなる温度感応性組成物に対し、その曇点よりも低い温度で核酸を混合して遺伝子導入組成物を製造する遺伝子導入組成物製造工程と、該遺伝子導入組成物を培養容器に付着させる付着工程と、該曇点よりも高い温度で細胞浮遊液を該培養容器に供給して培養する培養工程とを有する。上記付着工程と培養工程との間に遺伝子導入組成物を乾燥させる乾燥工程を行ってもよい。
本発明方法の一態様は、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート及び/又はその誘導体を重合主成分とする温度感応性ポリマー材料の水溶液に2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールを添加してなる温度感応性組成物に対し、その曇点よりも低い温度で核酸を混合して混合液を調製する混合工程と、この混合液を培養容器の内面に付着させてコーティング層を形成する付着工程と、必要に応じてこのコーティング層の乾燥を行った後、該曇点よりも高い温度で細胞浮遊液を該培養容器に供給して細胞を培養する培養工程とを有する。
本発明では、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEM)及び/又はその誘導体を重合主成分とするポリマー材料の水溶液に2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールを添加することにより、クリーンルームの温度よりも低い曇点を有した温度感応性組成物の水溶液を調製する。この温度感応性組成物の水溶液に核酸を混合し、この混合液を培養容器の内面に付着させる。この混合液は、その曇点よりも高い温度でゲル化してコーティング層となる。このコーティング層は、培養環境の温度が温度感応性組成物の曇点以上である限り、培養容器の表面に長期に亘り安定して付着する。また、このコーティング層中の温度感応性ポリマー材料は、カチオン性のDMAEM単位を有しており、十分量の核酸を安定に担持することができる。
本発明では、温度感応性ポリマー材料と核酸とのカチオン/アニオン比(C/A比)は、1/0.7〜1/1.2、特に1/0.8〜1/1.1程度が好ましい。温度感応性ポリマー材料と核酸とのC/A比を上記範囲内とすることにより、DMAEM単位の加水分解を抑制した上で、十分な遺伝子導入活性を得ることが可能である。
なお、本発明において、C/A比とは、温度感応性ポリマー材料のカチオン(DMAME単位)のモル数と、核酸のアニオン(リン酸残基)のモル数との比を意味する。
本発明において、遺伝子導入材料中の温度感応性ポリマー材料の濃度を、0.001〜1.0重量%、特に0.01〜0.1重量%程度とすることにより、培養容器などに対して均一に塗布することができる。
遺伝子導入材料を調製するには、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールを添加して曇点を低下させた温度感応性組成物の水溶液に対し、その曇点以下の温度にて核酸を添加して混合し、温度感応性ポリマー材料に核酸を担持させる。
ここで、遺伝子導入組成物の水溶液の調製に用いる水媒体の種類としては、生理食塩水、水(超純水など)、りん酸緩衝溶液、HEPES緩衝溶液、炭酸緩衝溶液、グッドバッファーなど当業者に周知のものが使用可能である。
温度感応性組成物の水溶液と核酸とを混合してなる遺伝子導入組成物は、温度感応性組成物の曇点よりも低温では親水性となり、該曇点よりも高温では疎水性を示す。
曇点よりも低い温度、例えば10〜25℃程度の遺伝子導入組成物の水溶液を培養容器に流延、塗布などにより付着させ、30℃よりも高い温度(例えば30〜40℃)に昇温させ、必要に応じ乾燥させることにより、水不溶性の、核酸を担持したコーティング層が形成される。
[培養容器]
培養容器としては、シャーレ、フラスコ、培養プレート(マルチウェルプレート)などが例示される。その材質は、合成樹脂、ガラス、金属などのいずれでもよい。遺伝子導入組成物を培養容器の内面に付着させる場合、培養容器の内面に遺伝子導入材料を0.7ng/mm〜70μg/mm程度の密度で付着させるのが好ましい。
培養容器に遺伝子導入組成物を付着させる方法としては、培養容器に遺伝子導入材料をピペッティングした後、培養容器を温和に上下左右に転倒させて容器内面全体に流延させることにより付着させ、次いで30〜40℃で1〜360分程度インキュベートしてコーティング層を形成する方法が好適である。この方法を採用する場合、前述のインキュベートを行った後に無菌雰囲気下で乾燥させても良く、インキュベートを省略して無菌雰囲気下で乾燥させてコーティング層を形成しても良い。
当業者に周知の通り、細胞培養用のインキュベーターは、培養皿中の培地が揮発して濃縮されることを防ぐことや庫内の炭酸ガス濃度を安定化させる目的で加湿されている。上記した培養容器内面へ付着した遺伝子導入材料を乾燥させる際には、インキュベーターの加湿を一時的に停止することですみやかな乾燥が可能であり、たとえ加湿していても遺伝子導入組成物が培地と比較して少ない液量であるため(例えば、24Well培養皿を使用する場合、通常の培地量は1mLであるが、本発明の遺伝子導入組成物としては150μL程度の添加となる)24時間程度で乾燥が可能となる。
この培養容器に哺乳類細胞の浮遊液を注入し、37℃程度の温度で培養し、細胞に核酸を導入する。これにより、コーティング層中の核酸が細胞に取り込まれる。なお、この方法によると、細胞がコーティング層に付着し、この際細胞のレセプターがコーティング層側に集まり、該レセプターを介して核酸が取り込まれると考えられる。
[核酸]
核酸としては、各種siRNA、アンチセンス、デコイや単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(HSV1−TK遺伝子)、p53癌抑制遺伝子及びBRCA1癌抑制遺伝子やサイトカイン遺伝子としてTNF−α遺伝子、IL−2遺伝子、IL−4遺伝子、HLA−B7/IL−2遺伝子、HLA−B7/B2M遺伝子、IL−7遺伝子、GM−CSF遺伝子、IFN−γ遺伝子及びIL−12遺伝子などのサイトカイン遺伝子並びにgp−100、MART−1及びMAGE−1などの癌抗原ペプチド遺伝子が利用できる。また、VEGF遺伝子、HGF遺伝子及びFGF遺伝子などのサイトカイン遺伝子並びにc−mycアンチセンス、c−mybアンチセンス、cdc2キナーゼアンチセンス、PCNAアンチセンス、E2Fデコイやp21(sdi−1)遺伝子が利用できる。また、SOX2,c−Myc,OCT3,OCT4,Klf−4,NanoGなどを用いることもできる。
核酸は、細胞に導入されることによりその細胞内で機能を発現することができるような形態で用いる。例えばDNAの場合、導入された細胞内で当該DNAが転写され、それにコードされるポリペプチドの産生を経て機能発現されるように当該DNAが配置されたプラスミドとして用いる。好ましくは、プロモーター領域、開始コドン、所望の機能を有する蛋白質をコードするDNA、終止コドンおよびターミネーター領域が連続的に配列されている。所望により2種以上の核酸をひとつのプラスミドに含めることも可能である。
[応用例]
培養容器内面に本発明の遺伝子導入組成物のコーティング層を形成し、該コーティング層を乾燥させた後、このコーティング層上に別の核酸複合体の層を積層してもよく、これにより、本発明の用途を拡大させることができる。
また、遺伝子導入組成物のコーティング層の形成に当たり、例えばインクジェットプリンター等を用いて所定の模様に印刷し、その後必要に応じて乾燥するなどしてパターンニングを行うことにより、マイクロアレイ、DNAチップ、異種細胞の集合体の作製等への応用も期待される。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
i)感温性カチオン性ホモポリマーの光重合による合成
2−(N,N−ジメチルアミノエチル)メタクリレート7.0gを50mL容の透明軟質ガラス製のバイアル瓶へ加えてマグネットスタラーで混合し、高純度窒素ガスで10分間パージした後に、丸型ブラック蛍光灯で紫外線を21時間照射した。約5時間で増粘し、15時間で固化した。光照射物をクロロホルムへ溶解して回収し、n−ヘキサンで重合物を再沈殿させ、クロロホルム/n−ヘキサン系で6回再沈殿を繰り返して精製し、n−ヘキサンを蒸散させた後に少量のベンゼンへ溶解し、0.2μmフィルターで濾過してから凍結乾燥させて感温性カチオン性ホモポリマーを得た。
ポリエチレングリコールを標準物質とした数平均分子量は、GPCにより120,000(Mw/Mn=2.4)と測定された。続いて、H−NMR(in CD3OD)の測定結果は、δ0.8−1.2ppm(br,3H,−CH−CH−),δ1.6−2.0ppm(br,2H,−CH−CH−),δ2.2−2.4ppm(br,6H,N−CH),δ2.5−2.7ppm(br,2H,CH−N),δ4.0−4.2ppm(br,2H,O−CH)となった。
ii)曇点の測定
i)で合成した感温性カチオン性ホモポリマー(以下、単に「ポリマー」と称す。)の3重量%(以下、「%」は「重量%」を示す。)水溶液(以下、単に「ポリマー溶液」と称すことがある。)を調製し、660nmでの吸光度の温度依存性を20℃〜40℃の間で測定した。なお、このii)での測定は、40℃で懸濁させたポリマーの水溶液を毎分1℃の速度で20℃まで降温させて行き、溶液が透明となった時の温度を曇点とした。その結果、32℃付近に曇点を有することが分かった。
iii)曇点降下(Tris999添加効果の測定例I)
2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(和光純薬製、Tris999、以下「Tris」と記載する。)の顆粒をii)で調製したポリマー溶液と混合し、水を加えて終濃度を1mM〜1000mMの範囲に調整した。ポリマーの終濃度は0.01%〜2.5%の範囲で調整した。
室温において、Trisの顆粒をポリマー溶液へ混合した瞬間にポリマー溶液は懸濁を開始し、ポリマー濃度0.5%以上では溶液全体がゲル化し、ポリマー濃度0.2%未満では凝集したポリマー塊が水と相分離して沈殿した。Trisの濃度が10mM未満では凝集したポリマー塊が水と相分離して沈殿し、100mM以上では溶液全体がゲル化した。ポリマー側鎖と2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール分子が定量的に架橋性の結合を起すことによりポリマー材料が凝集しやすくなっているものと考えられる。ポリマー塊が凝集相分離した系、ゲル化した系ともに冷蔵庫中へ移すと速やかに溶解して無色透明な水溶液となり、室温へ戻すと応答性良くポリマー塊が凝集相分離した系かゲル化した系へ戻り、繰り返しこの操作を行なっても応答性に変化はなく可逆的に相転移する現象が起こることが確認された。
上記ii)と同様にして曇点を測定した結果を表1に示す。
Figure 2013099924
iv)培養皿へのコーティングと遺伝子導入
ホタルルシフェラーゼをコードするDNA(プロメガ社、pGL3コントロール)20μgを2000μLの生理食塩水へ溶解して4℃で保管した。上記i)で合成したポリマー1580μgを500μLの生理食塩水へ4℃で溶解しA液とした。Tris 1580μgを500μLの生理食塩水へ4℃で溶解しB液とした。A液とB液を300μLずつ分取して混合し、4℃で保管した。
2mLPCRチューブ(DNase、パイロジェンフリー)へこの混合溶液を6、10、14、20、および40μLずつ分取し、生理食塩水を94、90、86、80、60μLずつ加えて混合した。ここへDNA溶液を100μLずつ加えて混合し(これにてC/A比は3、5、7、10および20となる)、さらに生理食塩水100μLずつを加えて混合した。溶液を十分に4℃で冷却し、24Well培養皿へ300μL(全量)を各Wellへ加えて素早く流延させた。この流延操作の際に核酸複合体が疎水化して培養皿の底面へ沈着するのが視認された。さらに37℃の培養器へ3分間入れてインキュベートした後、クリーンベンチ内で15分間放置し、培養皿の各Well内の液体成分を吸引除去した。これは、通常、当業者がクリーンベンチで遺伝子導入の操作をするのに十分な時間を室温下で放置し、LCSTが室温以下の溶解性の成分を吸引除去したことに相当する。
続いてこの培養皿の各Wellに細胞密度5×10個/mLへ調整したCOS−1細胞の完全培地浮遊液(DMEM+10%FCS溶液)を1mLずつ播種し、48時間培養した。培養48時間後に培地を除去し、PBSで2回洗浄後に各Wellに細胞溶解剤200μLを加え、4℃で30分間放置し、超遠心処理で不溶物を沈殿させて上澄を遺伝子導入活性評価用の試料とした。遺伝子導入活性の評価はルシフェラーゼアッセイで行った。ホタルルシフェラーゼ活性はプロメガ社のルシフェラーゼアッセイキットを使用し、規格化はタンパク濃度で行った。タンパク定量はBioRad社のBradford試薬で行った。結果を図1に示す。
図1の通り、室温で操作し、15分間放置して吸引除去操作を行なった培養基材の底面から遺伝子が導入されたことが分かる。この結果より、本実施例で用いたポリマー材料が室温環境でも培養皿へ固着して剥離や溶離していないことが認められた。
<比較例1>
上記i)で合成したポリマーを単独で使用する(Trisを混合しないで等量の生理食塩水を混合した)こと以外はすべて実施例1に準拠して実験を行った。まず、24Well培養皿へポリマー溶液と核酸と生理食塩水の混合溶液を滴下し、流延した後に37℃へ3分間加温し、その後室温へ戻して15分間放置した後に吸引除去を行なった。
乾燥後にWellの底面を観察するとWell外周へ塩様の成分がわずかに確認されたのみで固形分は残っていなかった。
吸引除去後にCOS1細胞を使用して遺伝子導入実験を行ったが、ルシフェラーゼ活性は盲検の値と優位差を認めなかった。
<比較例2>
比較例1において37℃に加温した後に速やかに(温度が下がらないように)、液体を吸引除去することなく細胞浮遊液を加えてただちに37℃へ戻し、遺伝子導入活性を評価した。その結果、核酸複合体はコーティングされなかった。また、細胞浮遊液へ混合して新品の培養皿へ播種した際の導入活性の値とt検定により優位差を認めなかった。いずれの系でも培地溶液中へ分解溶解している核酸複合体が培地側からCOS細胞へ取り込まれた結果であると考えられる。
<実施例2>
実施例1において、Trisをポリマーに対して4重量倍となるようにA液とB液を混合し、細胞溶解剤200μLを添加する代りに、20μLの細胞溶解剤の液滴を培養皿の底面にドット模様で部分的に付着させた以外は、同様にして遺伝子導入を行い、得られた試料の培養皿の底面のGFP蛍光顕微鏡像を図2に示した。
<比較例3>
実施例2において、TrisのB液を混合しなかったこと以外は同様にして遺伝子導入を行い、GFP蛍光顕微鏡像を図2に示した。
図2から明らかなように、実施例2では、ドットの模様の通りにGFP遺伝子が発現されて緑色の蛍光を発することが確認された。この結果から、核酸複合体を付着させた部位以外ではGFP遺伝子は発現されず、パターンニング制御が可能である、即ち、目的部分にだけ目的遺伝子を導入することができる、ことが分かる。この技術は、例えば、インクジェットプリンターなどを利用して複数の核酸複合体溶液を狙い通りに印刷して(加温により局在化させて)、種々の遺伝子を、制御された部分にのみ導入した細胞層を形成させることができることを示すものであると言える。
<実施例3>
実施例1において、Trisをポリマーに対して4重量倍となるようにA液とB液を混合し、37℃でのインキュベートを加湿を行うことなく24時間行って溶液を乾燥させたこと以外は同様にして遺伝子導入を行い、同様に遺伝子導入活性を評価したところ、遺伝子導入活性は、乾燥工程を含まない実施例1の約100倍となった。
特開2006−131591号公報に記載の遺伝子導入実験や、核酸複合体を乾燥させた場合の従来法では、凍結乾燥であっても、いずれも遺伝子導入の発現効果が得られないのに対して、本発明では、乾燥を行うとむしろ遺伝子導入活性を高めることができる。
この効果が得られる理由として、核酸複合体を100nm〜200nmの微粒子として細胞へ取り込ませる従来法では、乾燥工程が入ると遺伝子の分解や微粒子の凝集によるマクロ粒子化(細胞へ取り込まれないサイズまで増大)してしまうのに対して、本発明では、元々固相からの遺伝子導入であり、乾燥させなくともポリマーの凝集層から遺伝子を細胞へ取り込ませているので、乾燥により失活することはないことが挙げられる。また、乾燥を行わない場合に比べて、100倍の活性が得られる理由は定かではないが、遺伝子が凝集層から抜けやすくなっていることが考えられる。
[Tris添加効果の測定例II]
上記実施例1のi)で合成したポリマーとTrisを水に溶解し、終濃度をポリマー0.1%、Trisはポリマーとの重量比で0、0.5、1.0、2.0、4.0又は8.0となるように調整した。なお、0はTrisを添加しなかったものである。
各水溶液2mLを10mm×10mm角石英セル(厚み1mm)へ入れ、37℃の水浴で加温して白濁させた。
25℃の恒温室に設置した吸光度計に各セルをセットし、波長600nmの光透過率の経時変化を測定した。結果を図3に示す。
図3の通り、Trisの添加量が多くなるほど白濁液が透明になるまでの時間が長くなる。これは、Trisの添加量が多くなるほど、ポリマー材料が凝集し易くなるためであると考えられる。上記iii)の実験は、曇点以上の温度環境で凝集させたポリマー溶液が速やかに透明になる時の温度を測定した評価系であり、この<Tris添加効果の測定例II>の実験は、凝集させたポリマーを25℃に維持した際に溶解するまでの時間を測定した評価系であり、いずれの場合も『曇点』と呼んで良いと考えられるが、測定方法によって差異が生じることが分かる。
[Tris添加効果の測定例III]
上記実施例1のi)で合成したポリマーとTrisを水に溶解し、終濃度をポリマー0.1%、Trisはポリマーとの重量比で0、0.5、1.0、2.0、4.0又は8.0となるように調整した。なお、0はTrisを添加しなかったものである。
各水溶液2mLを10mm×10mm角石英セル(厚み1mm)へ入れた。
20℃の恒温室に設置した吸光度計に各セルをセットし、40分経過後、波長600nmの光透過率を測定した。
また、温度を21℃、22℃、・・・又は37℃(1℃刻み)としたこと以外は上記と同じ測定を行った。結果を表2に示す。
なお、上記Tris添加効果の測定例IIの実験の結果から、水溶液の温度を一定に維持した場合、約30〜40分後にポリマーの状態が安定化することが分かっているため、このTris添加効果の測定例IIIの実験での測定値が外的因子の影響を受けにくい『曇点』であると言える。
Figure 2013099924
表2の通り、このポリマーの曇点は32℃であり、Trisを添加することにより曇点が低下すること、Trisの添加量と曇点低下量との間には緩い相関があることが認められた。
[Tris添加効果の測定例IV]
上記実施例1のi)で合成したポリマーとTrisを重水に溶解し、終濃度をポリマー0.1%、Trisはポリマーとの重量比で0.65、1.3、2.6又は5.8となるように調整した。
各Tris/ポリマー溶液について、4℃、25℃又は37℃の各温度でNMRを測定し、ポリマー側鎖の−N(CHH積分値とTris中の−CH−のH積分値との比を算出し、結果を図4に示した。
図4より明らかなように、ポリマー側鎖の−N(CHHの積分値とTris中の−CH−のHの積分値の比は、4℃では配合比通りとなっているが、25℃ではTris添加量が多い領域で理論値からはずれてゆき、37℃ではポリマー側鎖のピークは検出されない。これは、疎水凝集によるミセル形成によって遮蔽された結果であると考えられる。
[Tris添加効果の測定例V]
上記実施例1のi)で合成したポリマーとTrisを水に溶解し、終濃度をポリマー0.1%、Trisはポリマーとの重量比で0、0.5、1.0、2.0、4.0又は8.0となるように調整した。なお、0はTrisを添加しなかったものである。
各Tris/ポリマー溶液について、それぞれ40℃で凝固させたものを瞬時に25℃まで冷却して維持した際の微分DSC曲線を測定し、結果を図5に示した。図5より、Tris配合量の増大に伴い、吸熱が起こる(疎水凝集体が溶解する)までの時間に遅延が生じることが分かる。
[Tris添加効果の測定例VI]
上記実施例1のi)で合成したポリマーとTrisを水に溶解し、終濃度をポリマー30%、Trisはポリマーとの重量比で0、0.5又は2.0となるように調整した。なお、0はTrisを添加しなかったものである。
本測定では、IRの検出感度の関係で遺伝子導入実験の20倍濃度で測定を行った。
細胞培養用ポリスチレンシャーレを20mm×50mmサイズに切り、上記の各Tris/ポリマー溶液を100μLづつ滴下して加湿しながら37℃で6時間インキュベートした。その後、室温下で溶液を吸引除去した後、加湿を止めた37℃のインキュベーター中で24時間乾燥させた。
ATR法により赤外吸収スペクトルを測定し、基材表面に残るポリマーのTris濃度依存性を調べた。
その結果、図6に示す通り、ポリマーのC=Oに由来する1730cm−1の吸収とシャーレのポリスチレンに由来する1601cm−1の吸収の比は、それぞれ、Tris0=0.00、Tris0.5=0.45、Tris2.0=0.62であり、Tris添加により濃度依存的にポリマーがポリスチレン基材表面に残存したことが分かる。
[考察]
以上の原理の異なる4つの測定例、即ち、
測定例II:水中凝集による光透過性(濁り)
測定例IV:水中での疎水凝集による磁場遮蔽
測定例V:再溶解時の熱エネルギー変化
測定例VI:赤外吸収
の結果より、Trisを配合することによって、Tris/ポリマー組成物の熱的応答性が変化することが確認された。
この結果から、本発明によれば、Tris配合によって、25℃での操作中にポリマーのコーティング層が溶出してしまうことを防ぎ、温度感応的に形成された凝集層の目的を十に発揮できるという効果が得られることが分かる。
<実施例4>
GFPをコードする遺伝子(TAKARA Biomedicals社、pQB125)を生理食塩水へ溶解して濃度1μg/30μLとし、4℃で保管した。上記実施例1のi)で合成したポリマーを生理食塩水へ4℃で溶解し濃度4μg/30μLのC液とした。Tris 1580μgを500μLの生理食塩水へ4℃で溶解しD液とした。C液とD液を300μLずつ分取して混合し、4℃で保管した。
2mLPCRチューブ(DNase、パイロジェンフリー)へこの混合溶液を3.8,7.5,15、および30μLずつ分取し、生理食塩水を96.2,92.5,85.70μLずつ加えて混合した。ここへGFP含遺伝子溶液を50μLずつ加えて混合した。これにてC/A比は1,2,4および8となる。溶液を十分に4℃で冷却し、24Well培養皿へ150μLを各Wellへ加えて素早く流延させた。さらに37℃の培養器へ6時間入れてインキュベートした。
続いてこの培養皿の各Wellに細胞密度7×10個/mLへ調整したHela細胞の完全培地浮遊液(DMEM+10%FCS溶液)を1mLずつ播種し、10日間培養した。遺伝子導入活性の評価は蛍光顕微鏡観察で行った。結果を図7に示す。
<比較例4>
実施例4において、C液及びD液の混合溶液の代わりにLipofectamine2000(invitrogen社)を用いたこと以外は同様にして実験を行った。結果を図7に示す。
図7の通り、比較例4では1日目からGFP蛍光の発現が確認され、2日目に発現のピークを迎え、以降、GFP蛍光は急激に減光して7日目にはほとんど発現は確認されなくなった。これは、核酸複合体溶液を添加した際に、これを取り込んだ細胞(一部で分裂細胞へも継承)でのみGFP蛍光が発現し、細胞内のDNA(mRNA)が消費・分解されるとGFP蛍光が発現されなくなったためであると考えられる。これに対し、実施例4では、1日目にはほとんどGFP蛍光の発現は確認されず、GFP蛍光が確認されるまでに1.5日間程度を要した。以降、GFP蛍光の発現率は高くなり、5日目にはピークを迎え、比較例の10倍程度の発現率までに至った。実施例4では、この高発現率がそのまま持続し、7日目(10日目までも)でも減光することがなかった。実施例4では、培養皿底面からDNA又はDNA複合体が徐々に時間をかけて放出されるので、GFP蛍光の発現のピークは約5日目以降であるが、そのまま高発現を維持できる。徐放性の効果で分裂して増えた細胞や、一度DNAを取り込んだ後にこれを消費・分解した細胞にも、DNA複合体を取り込む機会が与えられた結果であると言える。この徐放性により、上記した以外にも次の(i),(ii)の効果が奏される。
(i) 従来法による遺伝子導入が、通常、細胞の分裂期へ核酸を供給するタイミングを合わせる必要がある(タイミングが合った細胞に導入の機会が与えられるとも言える)のに対して、長期に渡って核酸を供給することは、あらゆる細胞周期にある多くの細胞へ均等に導入の機会を与えことができる。
(ii) 増殖速度の小さい細胞への導入にも有利である。
実施例4及び比較例4の遺伝子導入後の細胞に対し、市販の細胞毒性評価キット(Dojindo社、WST−8)を使用して細胞毒性を評価した。その結果、実施例4では100%の生存率、比較例4では80%程度の生存率となった。これにより、一気に多量の細胞の細胞膜を傷害させて核酸を供給する従来法(比較例4)と、少しずつ時間をかけて核酸を供給して行く実施例4とでは、細胞への傷害性に差異があることが認められた。即ち、本発明の遺伝子導入組成物の持つ徐放性の効果は、遺伝子を導入する以外に細胞傷害性に関しても有利であることが分かる。
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更が可能であることは当業者に明らかである。
なお、本出願は、2011年12月28日付で出願された日本特許出願(特願2011−287594)に基づいており、その全体が引用により援用される。

Claims (3)

  1. 2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート及び/又はその誘導体を重合主成分とする温度感応性ポリマー材料に2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールを添加してなる温度感応性組成物の水溶液に対し、その曇点よりも低い温度で核酸を混合して遺伝子導入組成物を製造する遺伝子導入組成物製造工程と、
    該遺伝子導入組成物を培養容器に付着させる付着工程と、
    該曇点よりも高い温度で細胞浮遊液を該遺伝子導入剤に供給して培養する培養工程と
    を有する核酸導入された細胞の製造方法。
  2. 請求項1において、前記付着工程と培養工程との間に、温度感応性組成物を乾燥させる乾燥工程を有することを特徴とする核酸導入された細胞の製造方法。
  3. 請求項1又は2において、前記ポリマー材料の分子量は、5,000〜500,000であることを特徴とする核酸導入された細胞の製造方法。
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