JP6032483B2 - 温度感応性材料及び止血剤 - Google Patents

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Description

本発明は、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート及び/又はその誘導体を重合主成分とする温度感応性ポリマー材料の曇点(LCST(Lower Critical Solution Temperature)を低下させた温度感応性材料に関する。また、本発明は、この温度感応性材料よりなる止血剤に関する。
曇点より低い温度では親水性であり、曇点より高い温度では疎水性となる温度感応性を示す温度感応性ポリマーとして、N−イソプロピルアクリルアミドのポリマー及び2−(N,N−ジメチルアミノエチル)メタクリレートのポリマーが公知である(特許文献1,2)。
特許文献1の通り、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)が37℃付近では疎水性であり、25℃付近では親水性である特性を利用して培養皿から培養細胞を剥離することができる。細胞は、疎水性の表面に接着するため、37℃でポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)が疎水性のときには、これが付着した培養皿に細胞が培養される。25℃でポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)が親水性となると、培養細胞は培養皿から剥離する。この現象を利用して培養皿から細胞シートを剥離させて回収することができる。
特許文献2には、ポリ[2−(N,N−ジメチルアミノエチル)メタクリレート]の温度感応性を利用した、N,N−ジアルキルジチオカルバミルメチル基を同一分子内に3個以上有する化合物をイニファターとし、このイニファターに対して、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート及び/又はその誘導体を光照射リビング重合してなるスター型ポリマーよりなる遺伝子導入剤が記載されている。この遺伝子導入剤は、分岐鎖を構成する2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート及び/又はその誘導体が、僅かながらカチオン性を有する。そのため、このカチオン性の2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート単位は、核酸との結合に寄与し、遺伝子導入剤の核酸担持量が多くなる。また、この遺伝子導入剤は、分岐鎖が感温性を有しており、温度を上昇させることにより、遺伝子導入剤が疎水性に変化する。
N−イソプロピルアクリルアミドや2−(N,N−ジメチルアミノエチル)メタクリレートのいずれのポリマーも水溶液中で32℃付近にLCSTがあり、哺乳類動物の体温領域で疎水性、室温で親水性を示す特徴を利用してDDS(ドラッグデリバリーシステム)や細胞培養の分野が利用されている。この現象はポリマー側鎖の運動エネルギーと側鎖分子団の水分子との親和性の関係で30℃付近でグロビュール構造とコイル構造の転移を起すことで現れるものである。
ポリ[2−(N,N−ジメチルアミノエチル)メタクリレート]は親水性⇔疎水性と同時にカチオン性⇔無電荷の性質の変化も起しているため、種々の用途(例えば止血材)に踏襲できることが期待される。
止血材としては、臨床の現場では外科的処置の際に血管破裂や誤切断などにより出血した際に、2液反応性のポリウレタン樹脂や瞬間接着剤で緊急の止血を検討することがある。他に医薬品としてヘビ毒などから抽出分離した天然組成物なども公知である。
特許第4475847号公報 特開2010−136631号公報
感温性ポリマーとして知られるN−イソプロピルアクリルアミドもポリ[2−(N,N−ジメチルアミノエチル)メタクリレート]は、曇点が32℃程度であり、生体内へ埋入して体温と平衡となるまで静置すれば疎水性の性質を発現する。しかしながら、この感温性ポリマーを体表面(切開した場合も含む)へ滴下した場合は、体表面温度は室温に近い32℃程度であり、この感温性ポリマーは親水性のままであることが多い。従って、この感温性ポリマーを体表面へ滴下した場合は、ゲル化せずに流出してしまうなどの問題がある。感温性ポリマーの曇点が25℃以下、特に20℃以下であれば、体表面へ滴下した場合に速やかにゲル化し、体表面に固着すると考えられる。
本発明は、温度感応性ポリマーとして2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート及び/又はその誘導体を重合主成分とするポリマー材料に曇点降下剤を添加してその曇点を低下させた温度感応性材料と、この温度感応性材料よりなる止血剤を提供することを目的とする。
本発明(請求項1)の温度感応性材料は、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレーを重合主成分とする温度感応性ポリマー材料、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールとを含み、前記温度感応性ポリマー材料は、分岐鎖を複数本有する分岐型重合体でもよく、線形ポリマーでもよく、分岐型重合体の場合には、前記分岐鎖1本当りの2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートの分子量が前記分岐鎖1本当りの分子量の90%以上であり、線形ポリマーの場合には、前記線形ポリマーの分子量の90%以上が2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート単位よりなるものである。
請求項2の温度感応性材料は、請求項1において、前記ポリマー材料は、前記分岐鎖を複数本有する分岐型重合体であり、前記分岐鎖1本当りの2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートの分子量が前記分岐鎖1本当りの分子量の90%以上であることを特徴とするものである。
請求項3の温度感応性材料は、請求項1において、前記ポリマー材料は、線形ポリマーであり、前記線形ポリマーの分子量の90%以上が2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート単位よりなることを特徴とするものである。
請求項4の温度感応性材料は、請求項2又は3において、前記分岐型重合体の前記分岐鎖又は前記線形ポリマーは、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレー単位のみからなることを特徴とするものである。
本発明(請求項5)の止血剤は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の温度感応性材料よりなるものである。
温度感応性ポリマーである、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート及び/又はその誘導体を重合主成分とするポリマー材料に、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールを加えることにより、この温度感応性ポリマーの曇点が若干ではあるが低下する。2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールの添加量が多くなるほど曇点以上の温度で凝集したポリマー材料が曇点以下の温度で溶解するまでの時間を遅延させる効果があるので、この添加量を調整することにより、曇点以下でポリマー材料が再溶解するまでの時間を任意に調整することができる。
また、この温度感応性材料よりなる止血剤は、見かけ上の曇点が低いので、わずかな温度低下で流出してしまうことがなく、安定して生体面(切開面を含む。)に固着させることができる。
実施例における光透過率の経時変化を示すグラフである。 実施例におけるNMR測定で得られた結果を示すグラフである。 実施例におけるDSC測定で得られた結果を示すグラフである。
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明では、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート及び/又はその誘導体を重合主成分とするポリマー材料に対し、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールを添加して該ポリマー材料の曇点を低下させる。
ただし、本発明でいうポリマー材料の『曇点』とは、厳密な意味で『ポリマー材料が、ある一定の温度未満で水に溶解するが、その温度以上では不溶化して疎水凝集するために水溶液懸濁する時の温度』を指すものではない。これは、ポリマー材料の水溶液を冷却・加温する速度、水溶液を入れる容器のサイズと伝熱効率、ポリマー材料の濃度などの人為的因子が測定値に影響するするために厳密な『曇点』が測定がしにくい事情を考慮してのことであり、従って、本発明では、37℃で不溶化凝集させたポリマー材料が所定の温度未満の条件とした際に該ポリマー材料が再溶解する際の所要時間が数分以上かかる場合にその所定の温度を曇点と呼ぶも場合もある。
2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート及び/又はその誘導体を重合主成分とする温度感応性ポリマー材料は、線形ポリマーであってもよく、前述のスター型ポリマーのような非線形ポリマーであってもよく、これらの混合物であってもよい。スター型ポリマーとしては、N,N−ジ置換ジチオカルバミルメチル基を同一分子内に3個以上有する化合物をイニファターとし、このイニファターに少なくとも2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート及び/又はその誘導体(以下、これらを「DMAEM」と称す場合がある。)を光照射リビング重合させたものが好ましい。
このイニファターとは、光照射によりラジカルを発生させる重合開始剤、連鎖移動剤としての機能と共に、成長末端と結合して成長を停止する機能、さらに光照射が停止すると重合を停止させる重合開始・重合停止剤として機能する分子である。
イニファターとなるN,N−ジ置換ジチオカルバミルメチル基を同一分子内に3個以上有する芳香族化合物としては、ベンゼン環に該N,N−ジ置換ジチオカルバミルメチル基、好ましくはN,N−ジアルキルジチオカルバミルメチル基が3個以上分岐鎖として結合しているものが好適であり、具体的には次が例示される。即ち、3分岐鎖化合物としては、1,3,5−トリ(ブロモメチル)ベンゼンとN,N−ジアルキルジチオカルバミン酸ナトリウム(ナトリウムN,N−ジアルキルジチオカルバメート)とをエタノール中で付加反応させて得られる1,3,5−トリ(N,N−ジアルキルジチオカルバミルメチル)ベンゼンであり、4分岐鎖化合物としては、1,2,4,5−テトラキス(ブロモメチル)ベンゼンとN,N−ジアルキルジチオカルバミン酸ナトリウム(ナトリウムN,N−ジアルキルジチオカルバメート)とをエタノール中で付加反応させて得られる1,2,4,5−テトラキス(N,N−ジアルキルジチオカルバミルメチル)ベンゼンであり、6分岐鎖化合物としては、ヘキサキス(ブロモメチル)ベンゼンとN,N−ジアルキルジチオカルバミン酸ナトリウム(ナトリウムN,N−ジアルキルジチオカルバメート)とをエタノール中で付加反応させて得られるヘキサキス(N,N−ジアルキルジチオカルバミルメチル)ベンゼンが挙げられる。なお、ここで、N,N−ジアルキルジチオカルバミルメチル基に含まれるジアルキル部分のアルキル基としては、エチル基等の炭素数2〜18個のアルキル基が好ましいが、アルキル基に限らず、フェニル基など芳香族系の炭化水素基であっても構わない。即ち、N,N−ジアルキルジチオカルバミルメチル基に限らず、N,N−ジアリールジチオカルバミルメチル基等を含む、脂肪族炭化水素基及び/又は芳香族炭化水素基で置換されたN,N−ジ置換ジチオカルバミルメチル基であれば目的を達成することができる。
上記のイニファターは、アルコール等の極性溶媒に対しては殆ど不溶であるが、非極性溶媒には易溶である。この非極性溶媒としては炭化水素、ハロゲン化アルキル又はハロゲン化アルキレンが好適であり、特に、ベンゼン、トルエン、クロロホルム又は塩化メチレン特にトルエンが好適である。
イニファターと上記DMAEMとを反応させるには、イニファター、及びDMAEMを含んでなる原料溶液を調製し、これに光照射することによって、イニファターに対し、DMAEMが結合した反応生成物を生成させる。
該原料溶液中のDMAEMの濃度は0.5M以上、例えば0.5M〜2.5Mが好適であり、イニファターの濃度は1〜20mM程度が好適である。
照射する光の波長は250〜400nmが好適であり、例えば蛍光灯、ショートアークキセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯などを用いることができる。光の照射時間は照射強度にも依存するが、1〜90分程度が好適であり、1μW/cm〜10mW/cm程度の低い照射強度で1〜60分程度が特に好適である。市販の蛍光灯を用いて光照射を行う場合には、1〜100時間程度光照射を行うことが好ましい。
この光照射により、反応液中に目的とする分岐型重合体が生成するので、必要に応じ精製することにより、分岐鎖部分にDMAEM単位よりなるポリマー鎖が導入され、分岐鎖の末端がN,N−ジ置換ジチオカルバミルメチル基であるホモポリマーを得る。
このスター型ポリマーの分岐鎖の1本当たりの分子量としては、100〜60,000程度、特に200〜30,000程度が好ましい。この分子量は、光照射の時間を制御することにより調整することができる。即ち、反応時間を長くすることにより、重合反応を進行させて分子量の大きい分岐型重合体を得ることができる。
なお、本明細書において、分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリエチレングリコール換算の数平均分子量をさす。
ポリマー材料の分岐鎖は、前述のDMAEMをモノマーとする1種のモノマーのみからなるホモポリマーであることが好ましいが、DMAEMとDMAEMとは異なる1種以上のモノマーを導入したブロックコポリマー又はランダムコポリマーであってもよい。
この場合の他のモノマーとしては、アクリル酸誘導体、スチレン誘導体等のビニル系モノマーが好適であり、具体的には、N,N−ジメチルアクリルアミド、メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドCH=CHCONHCN(CH、4−N,N-ジメチルアミノスチレン、及び4−アミノスチレンの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種のビニル系モノマーが挙げられ、特に、3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドCH=CHCONHCN(CH等のカチオン性ビニル系モノマーが好ましい。これらのビニル系モノマーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
イニファターとDMAMEとDMAEMとは異なるモノマーとを反応させるには、前述のイニファターとDMAEMとを反応させる場合と同様に、イニファター、DMAEM、及びDMAEM以外のモノマーを含んでなる原料溶液を調製し、これに光照射することによって、イニファターに対し、DMAEM及びDMAEM以外のモノマーが結合したランダムコポリマーを得る。
また、上記イニファターに対し、まず、DMAEMをブロック重合させて、ホモポリマーを形成し、その後、このホモポリマーに3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドをブロック重合させ、分岐鎖の基端側をDMAEMのブロックポリマー、分岐鎖の先端側を3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドブロックポリマーで構成した分岐鎖としてもよい。このように、分岐鎖を2種類以上のモノマーのブロックコポリマーとする場合、イニファターに対する重合の順序は任意である。
いずれの場合も分岐鎖の末端は、N,N−ジ置換ジチオカルバミルメチル基となる。
また、ポリマー材料の分子量としては、5,000〜500,000程度、特に25,000〜150,000程度が好ましい。
線形ポリマーよりなる温度感応性ポリマー材料は、モノマーとして少なくともDMAEMを用い、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)等の重合開始剤の存在下に常法に従って重合を行うことにより製造することができる。また、上記のスター型ポリマーの製造において、イニファターを用いないこと以外は同様にして光照射を行って製造することもできる。この線形ポリマーについても、上述のスター型ポリマーを製造する際に用いられると同様の他のモノマーを用いてもよいが、DMAEMによる温度感応性を十分に得るために、線形ポリマーの分子量の90%以上、特に95以上とりわけ100%がDMAEM単位よりなることが好ましい。
また、この線形ポリマーの分子量についても、5,000〜500,000程度、特に25,000〜150,000程度が好ましい。
本発明では、上記の温度感応性ポリマー材料の水溶液に2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールを添加することにより、温度感応性ポリマー材料の曇点を低下させる。この2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールの添加量が少ない程、温度感応性材料ポリマーの曇点低下量が少なく、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールの添加量が多くなるほど温度感応性ポリマー材料の曇点は低いものとなる。従って、この2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールの添加量は、温度感応性材料の曇点が目標とする曇点を有するように決定する。
本発明では、温度感応性ポリマー材料の水溶液へ2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールを加えることでポリマーの曇点を室温以下へ降下させることができる。そのため、このように曇点を室温以下、例えば10〜25℃、特に10〜20℃に低下させた温度感応性ポリマー材料よりなる温度感応性材料は、止血剤として好適である。この止血剤は、32℃程度の体表面(切開面を含む)などに滴下された場合でも、速やかにゲル化し、安定して固着する。
本発明の温度感応性材料は、感温性粘着剤としても利用することができる。曇点以下の温度に保持したこの感温性粘着剤を生体と被着物との一方又は双方に塗布して両者を当接させ、感温性粘着剤の曇点以上の温度に昇温させると、両者が感温性粘着剤によって付着する。その後、冷水などの冷媒体を用いて付着部位を冷却して感温性粘着剤を曇点よりも低温にすると、この付着が解除される。
また、本発明の温度感応性材料と顔料とを混合して身体装飾用ペイント(塗料)としてもよい。このペイントは、温度感応性材料の曇点以下の温度で身体に塗布される。このペイントを塗布した身体表面を冷水で洗うことによりペイントを洗い流すことができる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
i)感温性カチオン性ホモポリマーの光重合による合成
2−(N,N−ジメチルアミノエチル)メタクリレート7.0gを50mL容の透明軟質ガラス製のバイアル瓶へ加えてマグネットスタラーで混合し、高純度窒素ガスで10分間パージした後に、丸型ブラック蛍光灯で紫外線を21時間照射した。約5時間で増粘し、15時間で固化した。光照射物をクロロホルムへ溶解して回収し、n−ヘキサンで重合物を再沈殿させ、クロロホルム/n−ヘキサン系で6回再沈殿を繰り返して精製し、n−ヘキサンを蒸散させた後に少量のベンゼンへ溶解し、0.2μmフィルターで濾過してから凍結乾燥させて感温性カチオン性ホモポリマーを得た。
ポリエチレングリコールを標準物質とした数平均分子量は、GPCにより120,000(Mw/Mn=2.4)と測定された。続いて、H−NMR(in CD3OD)の測定結果は、δ0.8−1.2ppm(br,3H,−CH−CH−),δ1.6−2.0ppm(br,2H,−CH−CH−),δ2.2−2.4ppm(br,6H,N−CH),δ2.5−2.7ppm(br,2H,CH−N),δ4.0−4.2ppm(br,2H,O−CH)となった。
ii)曇点の測定
i)で合成した感温性カチオン性ホモポリマー(以下、単に「ポリマー」と称す。)の3重量%(以下、「%」は「重量%」を示す。)水溶液(以下、単に「ポリマー溶液」と称す。)を調製し、660nmでの吸光度の温度依存性を20℃〜40℃の間で測定した。なお、このii)での測定は、40℃で懸濁させたポリマーの水溶液を毎分1℃の速度で20℃まで降温させて行き、溶液が透明となった時の温度を曇点とした。その結果、32℃付近に曇点を有することが分かった。
iii)Tris999添加効果の測定例I
2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(和光純薬製、Tris999、以下「Tris」と記載する。)の顆粒をii)で調製したポリマー溶液と混合し、水を加えて終濃度を1mM〜1000mMの範囲に調整した。ポリマーの終濃度は0.01%〜2.5%の範囲で調整した。
室温において、Trisの顆粒をポリマー溶液へ混合した瞬間にポリマー溶液は懸濁を開始し、ポリマー濃度0.5%以上では溶液全体がゲル化し、ポリマー濃度0.2%未満では凝集したポリマー塊が水と相分離して沈殿した。Tris顆粒の濃度としては10mM未満では凝集したポリマー塊が水と相分離して沈殿し、100mM以上では溶液全体がゲル化した。ポリマー側鎖と2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール分子が定量的に架橋性の結合を起すことによりポリマー材料が凝集しやすくなっているものと考えられる。ポリマー塊が凝集相分離した系、ゲル化した系ともに冷蔵庫中へ移すと速やかに溶解して無色透明な水溶液となり、室温へ戻すと応答性良くポリマー塊が凝集相分離した系かゲル化した系へ戻り、繰り返しこの操作を行なっても応答性に変化はなく可逆的に相転移する現象が起こることが確認された。
上記ii)と同様にして曇点を測定した結果を表1に示す。
Figure 0006032483
iv)Tris添加効果の測定例II
上記i)で合成したポリマーとTrisを水に溶解し、終濃度をポリマー0.1%、Trisはポリマーとの重量比で0、0.5、1.0、2.0、4.0又は8.0となるように調整した。なお、0はTrisを添加しなかったものである。
各水溶液2mLを10mm×10mm角石英セル(厚み1mm)へ入れ、37℃の水浴で加温して白濁させた。
25℃の恒温室に設置した吸光度計に各セルをセットし、波長600nmの光透過率の経時変化を測定した。結果を図1に示す。
図1の通り、Trisの添加量が多くなるほど白濁液が透明になるまでの時間が長くなる。これは、Trisの添加量が多くなるほど、ポリマー材料が凝集し易くなるためであると考えられる。
上記iii)の実験は、曇点以上の温度環境で凝集させたポリマー溶液が速やかに透明になる時の温度を測定した評価系であり、このiv)の実験は、凝集させたポリマーを25℃に維持した際に溶解するまでの時間を測定した評価系であり、いずれの場合も『曇点』と呼んで良いと考えられるが、測定方法によって差異が生じることが分かる。
v)Tris添加効果の測定例III
上記i)で合成したポリマーとTrisを水に溶解し、終濃度をポリマー0.1%、Trisはポリマーとの重量比で0、0.5、1.0、2.0、4.0又は8.0となるように調整した。なお、0はTrisを添加しなかったものである。
各水溶液2mLを10mm×10mm角石英セル(厚み1mm)へ入れた。
20℃の恒温室に設置した吸光度計に各セルをセットし、40分経過後、波長600nmの光透過率を測定した。
また、温度を21℃、22℃、・・・又は37℃(1℃刻み)としたこと以外は上記と同じ測定を行った。結果を表2に示す。
なお、上記iv)の実験の結果から、水溶液の温度を一定に維持した場合、約30〜40分後にポリマーの状態が安定化することが分かっているため、このv)の実験での測定値が外的因子の影響を受けにくい『曇点』であると言える。
Figure 0006032483
表2の通り、このポリマーの曇点は32℃であり、Trisを添加することにより曇点が低下すること、Trisの添加量と曇点低下量との間には緩い相関があることが認められた。
vi)Tris添加効果の測定例IV
上記i)で合成したポリマーとTrisを重水に溶解し、終濃度をポリマー0.1%、Trisはポリマーとの重量比で0.65、1.3、2.6又は5.8となるように調整した。
各Tris/ポリマー溶液について、4℃、25℃又は37℃の各温度でNMRを測定し、ポリマー側鎖の−N(CHH積分値とTris中の−CH−のH積分値との比を算出し、結果を図2に示した。
図2より明らかなように、ポリマー側鎖の−N(CHHの積分値とTris中の−CH−のHの積分値の比は、4℃では配合比通りとなっているが、25℃ではTris添加量が多い領域で理論値からはずれてゆき、37℃ではポリマー側鎖のピークは検出されない。これは、疎水凝集によるミセル形成によって遮蔽された結果であると考えられる。
vii)Tris添加効果の測定例V
上記i)で合成したポリマーとTrisを水に溶解し、終濃度をポリマー0.1%、Trisはポリマーとの重量比で0、0.5、1.0、2.0、4.0又は8.0となるように調整した。なお、0はTrisを添加しなかったものである。
各Tris/ポリマー溶液について、それぞれ40℃で凝固させたものを瞬時に25℃まで冷却して維持した際の微分DSC曲線を測定し、結果を図3に示した。図3より、Tris配合量の増大に伴い、吸熱が起こる(疎水凝集体が溶解する)までの時間に遅延が生じることが分かる。
以上の実験の通り、3つの原理の異なる測定、即ち、
測定例II:水中凝集による光透過性(濁り)
測定例IV:水中での疎水凝集による磁場遮蔽
測定例V:再溶解時の熱エネルギー変化
の測定結果から、Trisを配合することによって、Tris/ポリマー組成物の熱的応答性が変化することが確認された。
この結果から、本発明によれば、Tris配合によって、25℃での操作中にポリマーのコーティング層が溶出してしまうことを防ぎ、温度感応的に形成された凝集層の目的を十分に発揮できるという効果が得られることが分かる。
viii)体表面(室温)へ滴下したポリマー
ラット背部皮膚の一部を切開して表皮を切除して露出させた。
2.5%ポリマー溶液(100mM Trisと、視認しやすくする目的で少量転換したエオシン色素を含む)を冷蔵庫から出して速やかに露出部位へ滴下した。体表面温度はほとんど室温であったが、液垂れすることなく、滴下部位で硬化した。さらに室温で保管した生理食塩水で洗浄したが、硬化したポリマーは流出することなく滴下部位へ留まった。室温でも水溶液とならずにゲル化状態を維持することが確認された。
ix)止血剤としての使用
ウサギ腹部動脈を露出させ、枝血管を切除して出血させた。上記iv)で調製したポリマーを出血部位へ滴下すると、ポリマーは出血部位でゲル化して固着した。さらにポリマーが僅かに帯電している陽電荷の効果で血液の凝集が起こり出血を止めることができた。
<比較例1>
上記i)で合成したポリマーの2.5%水溶液へ、(A)何も加えないか、(B)100mMTris緩衝溶液(等モル塩酸塩)を加えること以外は上記viii)と同様の実験を行うと、A,Bいずれの材料も体表面へ固着することなく液垂れして流出し、生理食塩水の洗浄で、完全に除去された。曇点が体表面の温度(室温に近い)以上であり、疎水性の凝集(ゲル化)が起こらないためである。

Claims (5)

  1. 2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレーを重合主成分とする温度感応性ポリマー材料、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールとを含み、
    前記温度感応性ポリマー材料は、分岐鎖を複数本有する分岐型重合体でもよく、線形ポリマーでもよく、分岐型重合体の場合には、前記分岐鎖1本当りの2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートの分子量が前記分岐鎖1本当りの分子量の90%以上であり、線形ポリマーの場合には、前記線形ポリマーの分子量の90%以上が2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート単位よりなる、
    温度感応性材料。
  2. 請求項1において、前記ポリマー材料は、前記分岐鎖を複数本有する分岐型重合体であり、前記分岐鎖1本当りの2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートの分子量が前記分岐鎖1本当りの分子量の90%以上であることを特徴とする温度感応性材料。
  3. 請求項1において、前記ポリマー材料は、線形ポリマーであり、前記線形ポリマーの分子量の90%以上が2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート単位よりなることを特徴とする温度感応性材料。
  4. 請求項2又は3において、前記分岐型重合体の前記分岐鎖又は前記線形ポリマーは、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレー単位のみからなることを特徴とする温度感応性材料。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の温度感応性材料よりなる止血剤。
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