明細書
スルホン酸官能基含有フッ素化単量体、 それを含有する含フッ素共重合体、 およびイオン交換膜 技術分野
本発明は、 新規なスルホン酸官能基含有フッ素化単量体に関するものであり、 さらにそれらを用いた含フッ素共重合体およびイオン交換膜に関するものである。 背景技術
ナフイオン (デュポン社の商標) 、 フレミオン (旭硝子 (株) の商標) などに 代表されるパーフルォロポリマー鎖にスルホン酸基を結合した共重合体は、 食塩 電解に利用されるイオン交換膜としての開発が進み、 化学センサー、 分離膜、 高 分子超強酸触媒をはじめ、 燃料電池のプロトン輸送高分子電解質などへの利用が 検討されている。 これらの電解質膜は、 一般的にスルホン酸基を含有する単量体 とテトラフルォロエチレンに代表されるエチレン性不飽和単量体の共重合体を膜 状に加工して用いられている。 電解質膜に要求される物性は、 ①イオン交換容量 が大きいこと、 ②膜の機械的強度が大きいことが主なものである。
しかしながら、 イオン交換容量を大きくするためには、 スルホン酸基を含有す る単量体成分の共重合体中での組成を大きくする必要があり、 必然的に機械強度 が低下するものであった。
この問題を改善するため、 成膜後に共重合体を架橋する方法、 多孔質ポリマー 基体にアイオノマーを含浸する方法などが多数提案されている。 しかしながら、 これらの方法では、 本来の目的であるイオン交換能に悪影響を及ぼす、 または製 造工程が複雑になるという問題があった。
さらにイオン交換膜としての要求物性を満足させる手段として、 単量体 1分子 中に複数のプロトン解離性基をもたせる方法が考えられる。 たとえば、 α, α , —トリフルォロスチレンにホスホン酸を導入する方法により、 単量体 1分子当 たり 2個のプロトンを供与することが可能になり、 3ミリ当量 . g ' 1 以上の非 常に大きなイオン交換容量が得られている。 し力 しながら、 この方法では、 ホス
ホン酸の 2段目のプロトン解離性が非常に小さいため、 イオン交換膜としての能 力 ίま不十分でめつ 7こ (Journal of New Materials for Electrochemical Systems, 3, 43-50) 。 発明の要約
本発明は、 前記課題を解決するものであり、 単量体 1分子当たり複数のプロト ン解離性基を有する構造をもつ新規な単量体を提供する。 同時にこれらの単量体 とエチレン性不飽和基を含有する単量体とを、 必要であればラジカル発生剤の共 存下、 共重合して得られる共重合体、 およびこれらの共重合体をシート状に加工 し、 必要な処理を施して得られるイオン交換膜を提供する。
単量体 1分子当たり複数のプロトン解離性基を有する構造について鋭意探索し た結果、 (XS02) kCY! (CF2) mO (CFZCF20) „CF = CF2で表わ される新規化合物を得るに至った。
すなわち本発明は、 一般式:
(XS02) kC Yf (CF2) mO (C F Z CF20) nCF = CF2 (1)
(ここで、 k = 2または 3、 k+ l =3、 ra=0〜5、 n = 0~5、
X = F、 C l、 OH、 O (M) 1/L (Mは 1〜3価金属、 Lは該金属の価数) ヽ OR (Rは、 炭素数 1〜 5のアルキル基であり、 前記アルキル基は、 炭素でなく 水素でもない元素を含むものであってもよい) 、 または、 A— (S02R f) aB (Aはチッ素または炭素であり、 aは、 Aがチッ素のとき a =1、 Aが炭素のと き a = 2であり、 Bは水素または一価の金属であり、 R f は過フッ化アルキル基 である。 ) 、
Y = F、 C 1または C F3、
Z = F、 C l、 CF3、 B rまたは Iである)
で表わされるスルホン酸官能基含有フッ素化単量体に関する。
前記 Xは、 Fまたは OM1 (M' = L i , Naまたは Κ) であることが好まし い。
前記 kは、 2であることが好ましい。
本発明は、 また、 前記スルホン酸官能基含有フッ素化単量体からなる含フッ素
重合体に関する。
本発明は、 さらに、 前記スルホン酸官能基含有フッ素化単量体 0. 1〜50モ ル%、 および、 それと共重合可能なエチレン性不飽和結合を有する単量体 50〜 99. 9モル%からなる含フッ素共重合体に関する。
前記エチレン性不飽和結合を有する単量体は、 テトラフルォロエチレンを含む ことが好ましい。
前記含フッ素共重合体は、 前記スルホン酸官能基含有フッ素化単量体 3〜40 モル0 /0、 および、 テトラフルォロエチレンを含むエチレン性不飽和結合を有する 単量体 60〜 97モル%からなることがさらに好ましい。
本発明は、 また、 前記含フッ素共重合体からなる厚さ 5〜500 /imのイオン 交換膜に関する。
本発明は、 さらに、 前記イオン交換膜からなる燃料電池の電解質膜に関する。 発明の詳細な開示
本発明のスルホン酸官能基含有フッ素化単量体は、 (XS02) kCYj (CF2 ) mO (CFZCF20) nCF = CF2 で表わされる、 新規なスルホン酸官能基 含有フッ素化単量体 (以下、 スルホン酸塩含有フッ素化単量体ということがある。 ここで、 k = 2または 3、 k+ l = 3、 m=0〜5、 n = 0〜5、 X=F、 C l、 OH、 O (M) 1/L (Mは 1〜3価金属、 Lは該金属の価数) 、 OR (Rは、 炭 素数 1〜5のアルキル基であり、 前記アルキル基は、 炭素でなく水素でもない元 素を含むものであってもよい) 、 または、 A— (S02R f ) aB (Aはチッ素ま たは炭素であり、 aは、 Aがチッ素のとき a =1、 Aが炭素のとき a = 2であり、 Bは水素または一価の金属であり、 R f は過フッ化アルキル基である) 、 Y = F、 C 1または CF3、 Z = F、 C l、 CF3、 B rまたは Iである) である。
この化合物は、 たとえば以下のようなプロセスで合成することが可能である。
k = 2のプロセスシート k= 2の化合物のプロセス
工程 1 CF2=CFS02F ( I )の合成
Cl2 NaF
—— BrCF
2-CF
2S0
2Cl > BrCF
2-CF
2S0
2F
CF2— CF—S02F
工程 2 I 2/ (II)の合成
o— so2
CF2— CF— S02F , 、
3) (I) +SO, I V 2 (ID
o-so,
工程 3 ビニノレエーテルの合成
A: k=2、 1 =1、 m=l、 ti=0、 X=ONa、 Y=Fの化合物の合成
KF
(II) + CF3-CF-CF2 —— CF3CF(COF) -0-CF2CF(S02F)2 ヽ O,
NiOH
^ CF3CF(COONa) -0-CF2CF(S03Na)2
→ CF„=CF-0-CF?CF (SOaNa)2
B: k=2、 1 = 1、 m=l、 n=0、 X=F、 Y=Fの化合物の合成
(II) + CC1F2 - CF— CF2 ~ CC1F2CF (COF)-0-CF2CF (S02F)2
Na2C03、厶 t 、
~~ - ~~ CF2=CF-0-CF2CF(S02F)2
C: k=2、 1 =1、 m=l、 n=l、 X=F、 Y=F、 Z=CF3の化合物の合成
(II) + 2CF3-CF-CF2
ヽ O,
CsF
CF3CF (COF)-0-CF2CF (CF3)-0— CF2CF (S(¾F)2
Na。CO 、 Δ
CF2=CF— O— CF2CF(CF3) - O— CF2CF(S02F)2
工程 2の Πの環状サルトンは、 D. D. DesMarteau氏ら (Journal of Fluorine Ch emistry, 66(1994) 101-104)によって報告されており、 公知である。
3のプロセスシート k= 3の化合物のプロセス
工程 1 CF^CCCF^SO^F (III) の合成
4)
I I r
32 -→ COF- C (CF
3)
22SOu,F o-soつ, 2
Na,C03, Δ
~~ - ~ -—— CF2=C(CF3)S02F (III)
5) CCIF2-CC1I-CF, + Na2S2Os ~ > CClFn-CCl(CF3) -SO„Na
Cl2 NaF
~ CC1F2~CC1(CF3) -S02C1 > CC1F2— CC1(CF3)— S〇2F
Zn
~ CF2=C(CF3)S02F (III)
工程 2 (IV) の合成
CF3
, , I KF
6) (III)+ S03 -→ CF2-C-S02F —— COF-C(CF3) (S02F)2
O— so2
S02F
Ν ∞3 A > CF2=C(S02F)2 CFz-C-S02F (IV) o— so2
工程 3 ビニルエーテルの合成
D: k=3、 1=0、 m=l、 ii-0、 X=ONaの化合物の合成
KF
(IV) + CF
3-CF-CF
2 —— ^ CF
3CF(COF) -0-CF
2C(S0
2F)
3 > CFoCF (COONa)— O— CF
2C (SO
aNa)
3
E : k=3、 1 =0、 m=l、 n=0、 X=Fの化合物の合成
KF
(IV) + CC1F2-CF-CF2 ~ > CC1F2CF (COF) -0-CF2C (S02F) 3
Na2C03、 Δ , 、
CF = CF- O - CF2 C (S02F) 3
F : k=3、 1 =0、 m=l、 n=l、 X=F、 Z=CF3の化合物の合成
(IV) + 2CF3-CF-CF2
\ /
O
CsF
CF3CF (COF)-O- CF2CF(CF3) -O— CF2C(S02F)3
Na2C03、 Δ f 、
~~ - CF2=CF-0-CF2CF(CF3)-0- CF2C (S02F):
1 ) 、 2.) 、 4 ) 、 5 ) で使用される出発物質については、 フッ素の一部を他 のハロゲンで置き換えても目的物質を合成することは可能である。
前記 A〜Fの工程を応用して、 m、 n、 X、 Y、 Ζを任意に変えたスルホン酸 官能基含有フッ素化単量体を得ることが可能である。
前記スルホン酸官能基含有フッ素化単量体の (X S 02) k基における kは 2
または 3であり、 このうち k = 2のものは、 工業的に比較的容易に製造できるた め、 好適に用いられる。
前記スルホン酸官能基含有フッ素化単量体における kと 1は、 k + 1 = 3の関 係にあり、 k = 2のとき 1 = 1、 k = 3のとき 1 =0となる。
前記スルホン酸官能基含有フッ素化単量体の (XS02) k 基における Xとし ては、 F、 C l、 OH、 O (M) 1/L、 OR、 または、 A— (S OzR f ) aBが 用いられる。
前記 O (M) 1/L 基の Mは、 1〜 3価の金属であり、 アルカリ金属 (Na、 L i、 K:、 C sなど) などの 1価金属、 アルカリ土類金属 (Mg、 Caなど) など の 2価金属または A 1などの 3価金属があげられる。 なかでも、 工業的に取り扱 いやすいという点で、 N aまたは Kが好ましく用いられる。
前記 OR基における Rは、 炭素数 1〜 5のアルキル基であり、 前記アルキル基 は、 炭素でなく水素でもない元素を含むものであってもよい。 前記 Rとしては、 例えば、 一 CH3、 一 C2H5、 一 CH2CF3 などが挙げられる。 なかでも、 工業 的に取り扱いやすいという点で、 一 CH3 が好ましく用いられる。 本明細書にお いて、 前記 「炭素でなく水素でもない元素」 は、 ハロゲン、 酸素、 チッ素などの ヘテロ原子である。
前記 A— (SOzR f ) aB基における Aは、 チッ素または炭素であり、 aは、 Aがチッ素のとき a = 1であり、 Aが炭素のとき a = 2である。
また、 前記 A— (S02R f ) aB基における Bは、 水素または一価の金属であ り、 H、 L i、 Naなどが挙げられる。 なかでも、 電解質膜として使用する場合 は、 Hが好ましく用いられる。
また、 前記 A— (S02R f ) aB基における R iは、 過フッ化アルキル基を示 し、 一 CF3、 一 C2F5などが挙げられる。
特に前記スルホン酸官能基含有フッ素化単量体の (XSO2) k基における X として、 後述するエチレン性不飽和結合を有する単量体との共重合体を製造しや すいという点で、 F、 OL i、 ONaおよび OKが好ましく、 Fおよび ONaカ より好ましく用いられる。
前記スルホン酸官能基含有フッ素化単量体の CYi 基における Yとしては、 F、
C】または CF3が用いられる。
前記スルホン酸官能基含有フッ素化単量体の (CFZCF20) n基における Zとしては、 F、 C l、 B r、 Iまたは CF3 が用いられる。 なかでも、 容易に 製造できるという点で、 CF3が好ましく用いられる。
前記スルホン酸官能基含有フッ素化単量体の (CF2) m 基における raとして は、 0〜5であり、 好ましくは 1〜3、 より好ましくは 1である。 mが 5をこえ ると当量重量 (EW) が大きくなるため、 電解質膜としての性能を充分に発揮で きない。
前記スルホン酸官能基含有フッ素化単量体の (CFZCF20) n基における nとしては、 0~5であり、 好ましくは 0〜3、 より好ましくは 0または 1であ る。 nが 5をこえると、 当量重量 (EW) が大きくなるため、 電解質膜としての 性能を充分に発揮できない。
本発明のスルホン酸官能基含有フッ素化単量体からなる含フッ素重合体も、 ま た、 本発明の ^でぁる。
本発明のスルホン酸官能基含有フッ素化単量体は、 通常、 共重合可能なェチレ ン性不飽和結合を有する単量体との共重合体として使用することができる。 前記共重合可能なエチレン性不飽和結合を有する単量体としては、 エチレン、 プロピレンなどの炭化水素系ォレフイン類、 フッ化ビュル、 フッ化ビニリデン、 トリフゾレオ口エチレン、 クロロトリフノレオ口エチレン、 テトラフノレォロエチレン、 へキサフルォロプロペン、 パーフルオロー 1—プテンなどのフルォロォレフイン 類をあげることができ、 それぞれ単独で用いてもよいし、 2種類以上を組み合わ せて用いてもよい。
前記スルホン酸官能基含有フッ素化単量体及び前記共重合可能なエチレン性不 飽和結合を有する単量体に加えて、 得られる含フッ素共重合体に種々の機能を付 加するために、 以下のような単量体の中から、 選択して用いてもよい。
たとえば、 CF2=CF I、 CF2 = CF2 I N CF2 = CF— O— (CFCF3 CF2) „CF2CF2 Iなどのヨウ素含有モノマーや、 ジビュルベンゼンなど不飽 和結合を 2つ以上有するモノマー、 シァノ基を含有するモノマー、 (フッ素化) ビニルエーテル類、 (フッ素化) ビュルエステル類、 (フッ素化) アクリル酸ェ
ステル類、 (フッ素化) メタアクリル酸エステル類などを用いることが可能であ る。
含フッ素共重合体の組成は、 本発明のスルホン酸官能基含有フッ素化単量体に 基づく重合単位が、 0 . 1〜5 0モル0 /0であることが好ましく、 より好ましくは 下限が 3モル%、 上限が 4 0モル%である。 また前記エチレン性不飽和結合を有 する単量体に基づく重合単位が、 5 0〜9 9 . 9モル%であることが好ましく、 より好ましくは下限が 6 0モル%、 上限が 9 7モル%である。 含フッ素共重合体 の組成は、 通常、 重合時のスルホン酸官能基含有フッ素化単量体の濃度、 または 重合圧力、 重合温度の選択など公知の方法により制御される。 本発明のスルホン 酸官能基含有フッ素化単量体に基づく重合単位が 0 . 1モル%より少ないと、 本 発明のスルホン酸官能基含有フッ素化単量体を含む効果が得られない傾向があり、
5 0モル%をこえると、 高分子量のポリマーが得られにくい傾向がある。
また、 イオン交換膜としたときのイオン交換能力を考慮すると、 含フッ素共重 合体の組成は、 本発明のスルホン酸官能基含有フッ素化単量体に基づく重合単位 力 S 1〜 5 0モル%であることが好ましく、 より好ましくは下限が 3モル%、 上限 が 4 0モル%である。 ま.た、 前記エチレン性不飽和結合を有する単量体に基づく 重合単位が 5 0〜 9 9モル%であることが好ましく、 より好ましくは下限が 6 0 モノレ0 /0、 上限が 9 7モル%である。 本発明のスルホン酸官能基含有フッ素化単量 体に基づく重合単位が 1モル%より少ないと、 充分なイオン交換能力が得られに くい傾向があり、 5 0モル%をこえると、 充分な強度の膜が得られにくい傾向が ある。
さらに、 化学的な耐久性を考慮した場合、 前記エチレン性不飽和結合を有する 単量体はテトラフルォロエチレンを含むことが好ましい。 この場合、 得られる含 フッ素共重合体の組成は、 本発明のスルホン酸官能基含有フッ素化単量体に基づ く重合単位が 3〜 4 0モル%であることが好ましく、 より好ましくは下限が 5モ ル%、 上限が 3 0モル%である。 また前記テトラフルォロエチレンを含むェチレ ン性不飽和結合を有する単量体に基づく重合単位が 6 0〜 9 7モル%であること が好ましく、 より好ましくは下限が 7 0モル%、 上限が 9 5モル0 /0である。 前記 テトラフルォロエチレンを含むェチレン性不飽和結合を有する単量体に基づく重
合単位が 6 0モル%より少ないと、 形成した電解質膜の強度が不充分となる傾向 にあり、 9 7モル%をこえると、 イオン交換能力が不充分となる傾向にある。 ま た、 前記テトラフルォロエチレンを含むエチレン性不飽和結合を有する単量体が テトラフルォロエチレンのみからなっていると、 化学的、 電気化学的な安定性に 優れる点でさらに好ましい。
本発明で得られる含フッ素共重合体はイオン交換膜として利用され、 その用途 としては、 化学センサー、 分離膜、 高分子超強酸触媒をはじめ、 燃料電池のプロ トン輸送高分子電解質などがあげられる。
本発明のイオン交換膜を燃料電池のプロトン輸送高分子電解質膜として使用す る場合、 当量重量 (EW) は6 0 0〜2 0 0 0、 好ましくは 6 0 0以下のものが 用いられる。 EWが 6 0 0より小さいと、 水に著しく膨潤したり、 充分な膜強度 が得られない傾向にあり、 2 0 0 0をこえると充分なイオン交換能力が得られな い傾向にある。
含フッ素共重合体の分子量は特に限定する必要はないが、 膜状で使用される場 合においては、 適当な分子量を有することが有利であり、 数平均分子量 5 0 0 0 〜3 0 0万のものが好適である。 前記分子量を制御する方法としては、 重合開始 剤の濃度、 重合温度、 重合圧力、 連鎖移動剤の添加などによって制御されうる。 重合方法も特に限定されないが、 公知の乳化重合、 溶液重合、 懸濁重合などが 可能である。
ここで乳化重合とは、 本質的に水を媒体として、 本発明のスルホン酸官能基含 有フッ素化単量体、 およびそれと共重合可能なエチレン性不飽和結合を有する単 量体を共存させ、 必要に応じて選択した乳化剤を添加して構成した共重合系にお いて、 必要ならばラジカル発生剤の共存下、 共重合して目的の共重合体を得る方 法を示す。 乳化剤は特に限定されるものではないが、 過フッ化アルキ /レ基末端に カルボキシル基などの解離性極性基を有する構造のものが好ましく用いられ、 単 量体全質量に対して、 0 . 0 1〜3 0質量%の範囲が好ましく使用される。 また、 溶液重合とは、 本発明のスルホン酸官能基含有フッ素化単量体を溶解し うる溶媒中において、 ラジカル発生剤の共存下、 上記スルホン酸官能基含有フッ 素化単量体と共重合可能なエチレン性不飽和結合を有する単量体とを共重合せし
めることで共重合体を得る方法を示す。
さらに、 懸濁重合とは、 本発明のスルホン酸官能基含有フッ素化単量体をほと んど溶解しない溶媒中において、 この単量体の液滴またはその溶液を懸濁せしめ た状態で、 必要ならばラジカル発生剤の共存下、 この単量体と共重合可能なェチ レン性不飽和結合を有する単量体とを共重合せしめることで共重合体を得る方法 を示す。
前記各重合方法において、 ラジカル発生剤は特に限定されるものではないが、 過酸化物系ラジカル発生剤、 レドックス系ラジカル発生剤、 ヨウ素化合物、 ァゾ 化合物、 紫外線およびイオン化放射線などが使用できる。 またはこれらの組み合 わせであってもよい。
前記各重合方法において、 重合圧力は特に限定されるものではないが、 ポリマ 一の分子量を制御する目的や、 重合速度を制御する目的に応じて 0 . 0 1〜 2 0 M P aの範囲が好ましく使用される。 また重合温度も特に限定されるものではな いが、 使用されるラジカル発生剤の分解温度や用いられる溶媒の融点などに応じ て、 一 2 0 〜 2 0 0 °Cの範囲が好ましく使用される。
前記各重合方法において、 溶媒の選択に関しては、 非テロゲン性の溶媒を用い る方が高分子量の含フッ素共重合体が得られやすいため、 ハイドロクロ口フルォ 口カーボン、 ハイド口フルォロカーボン、 フルォロカーボンなどのハロゲン置換 炭化水素系溶媒や、 酢酸、 トリフルォロ酢酸などの酸、 およびそのハロゲン置換 物、 およびそのエステル化物、 ケトン類、 3級アルコールなどが好ましく使用さ れる。
また、 前記各重合方法において、 必要に応じ、 界面活性剤ゃ受酸剤などを添加 することもできる。
本発明の含フッ素共重合体からなるイオン交換膜は、 膜厚が 5〜5 0 O z mで あるものが好ましい。 本発明の含フッ素共重合体からなるイオン交換膜を、 燃料 電池のプロトン輸送高分子電解質膜などの用途で使用する場合、 膜厚は 5〜5 0 Ο μ ιηが好ましく、 より好ましくは下限 1 0 /z m、 上限 1 0 O /z mである。 膜厚 が 5 ju mより小さいと、 機械的強度が小さくなり、 取り扱 、性に劣ったり、 ガス 透過性が著しく悪化する傾向にあり、 5 0 をこえると、 膜抵抗が大きくな
り、 十分に性能を発揮することができなくなる傾向にある。
このようなイオン交換膜を得る方法については、 公知の技術が利用できる。 たとえば、 本発明の含フッ素共重合体が、 スルホン酸官能基としてフルォロス ルホニル基を含む場合、 通常の溶融押し出し成形が可能であり、 前記含フッ素共 重合体の融点以上の温度で、 T一ダイなどから押し出した溶融状態の前記含フッ 素共重合体を薄膜状に加工し、 冷却して膜状物が得られる。 この膜状物を必要に 応じて、 強アルカリ性溶液などで処理してフルォロスルホニル基を加水分解して、 スルホン酸官能基を有するプロトン伝導性高分子電解質膜を得ることができる。 —方、 本発明の含フッ素共重合体が、 スルホン酸官能基としてスルホン酸、 ま たはその塩型の官能基を有する場合、 特公平 1一 5 3 6 9 5号公報に示される方 法を用いて、 溶融、 加圧成形してプロ トン伝導性高分子電解質膜を得ることがで さる。
また、 特開平 1—2 1 7 0 4 2号公報に示される方法を用いて、 スルホン酸官 能基としてスルホン酸またはその塩型の官能基を含有する本発明の含フッ素共重 合体を極性溶媒に加圧、 加熱溶解して溶解させ、 その溶液を基体上にキャストし、 乾燥してプロトン伝導性高分子電解質膜を得ることができる。 発明を実施するための最良の形態
本発明の説明のため、 以下に具体的な実施例をあげるが、 本発明はこれらに限 定されるものではない。 評価法
(イオン交換能)
イオン交換膜を、 加水分解または酸に浸漬するなどの前処理を施して、 一 s o3 H型に変換する。 この膜を 2 5でにて純水中で交流四端子測定を行い、 イオン伝 導度を測定した。 このイオン伝導度が大きいほどイオン交換能力に優れた電解質 膜である。
(機械的強度)
イオン交換膜をオートグラフを用いて引張試験を行った。 その s t r e s s— s
t r a i nカーブの傾きから 25ででの弾性率を求めた。 この弾性率が大きいほ ど機械的強度に優れた膜である。 実施例 1
CF2 = CF-0-CF2CF (S03N a) 2 (k = 2、 1 =1、 X = ONa、 Y=F、 m= l、 n = 0) の合成
前記 k = 2のプロセスの、 工程 1— 1) に従って、 (I) の化合物を得た。 さ らに、 k = 2のプロセスの、 工程 2に従って、 (Π) の環状サルトンを得た。 ( この方法は、 D. D. DesMarteau氏ら(Journal of Fluorine Chemistry, 66(1994) 10 1-104) によって報告されており、 公知である。 ) つぎに、 氷水で冷却した、 容 量 1リットルの 3つ口フラスコに 300°Cで乾燥した KF 2. 9 g (0. 05モ ル) とジグライム 200 gを仕込み、 攪拌下、 乾燥チッ素を流通しながら 244 g ( 1モ Λ^) の環状サルトン (Π) を徐々に滴下した。 さらに 170 g (1. 0 2モル) のへキサフルォロプロピレンォキシド (HFPO) を滴下して反応させ た。 この溶液を分液し、 下層の反応物を精留して下記の化合物を 340 g得た。
CF3CF (CO F) -O-C F2C F (S 02F) 2
205 g (0. 5モル) の前記化合物を 0. 5 Lの 3つ口フラスコに仕込み、 攪拌しながら、 10質量%の水酸化ナトリゥム水溶液 600 gを徐々に滴下して 反応させた。 前記反応液を乾燥させて、 235 gの下記の化合物を得た。
C F3C F (COON a ) — 0— CF2CF (S 03N a ) 2
還流管を備えた容量 1 Lの 3つ口フラスコに前記化合物 235 gと C aH2 で 乾燥したジグライム 200 gを仕込み、 乾燥チッ素を流通しながら 150°Cまで 昇温し、 30分間反応させた。 反応物を遠心分離した上澄みを濃縮 '再結晶して、 目的の化合物である、 CF2 = CF— 0— CF2CF (S02N a) 2 を 136 g 得た。 実施例 2
CF2 = CF-0-CF2CF (S02F) 2 (k = 2、 1 = 1、 X = F、 Y=F、 m= 1、 n = 0) の合成
実施例 1の工程において用いた HF POの代わりに、 3 _クロ口ペンタフルォ 口プロピレンォキシドを用いて、 以下の化合物を得た。
C F2C 1 C F (COF) -O-C F2C F (S O2F) 2
つぎに、 還流管を備えた容量 0. 5 Lの 3つ口フラスコに 300でで乾燥した 炭酸ナトリウム 53 gと乾燥したジグライム 100 gを仕込み、 乾燥チッ素流通 下、 氷冷して攪拌しながら、 前記化合物 200 gを滴下した。 その後、 乾燥チッ 素を流通しながら 150°Cまで昇温し、 30分間反応させた後、 精留して目的の 化合物である、 CF2=CF— 0— CF2CF (S02F) 2を 92 g得た。 実施例 3
CF2=CF—〇一 CF2CF (CF3) —O— CF2CF (S02F) 2 (k = 2、 1 = 1、 X = F、 Y = F、 Z = CF3、 m= l、 n = 1 ) の合成
氷水で冷却した、 容量 1リットルの 3つ口フラスコに 300でで乾燥した C s F 7. 6 g (0. 05モル) とジグライム 200 gを仕込み、 攪拌下、 乾燥チ ッ素を流通しながら 263 g (1モル) の環状サルトン (Π) を徐々に滴下した。 さらに 340 g (2. 05モル) の HF POを滴下して反応させた。 反応溶液を 減圧下で精留して、 CF3CF (COF) -0-CF2CF (CF3) 一 O— CF2 CF (S〇2F) 2 を 144 g得た。 つぎに、 還流管を備えた容量 0. 3 Lの 3 つ口フラスコに 300°Cで乾燥した炭酸ナトリウム 18 gと乾燥したジグライム 50 gを仕込み、 乾燥チッ素流通下、 氷冷して攪拌しながら、 前記化合物 100 gを滴下した。 その後、 乾燥チッ素を流通しながら 150°Cまで昇温し、 30分 間反応させた後、 精留して目的の化合物である、 CF2 = CF— 0— CF2CF ( CF3) -0-CF2CF (S02F) 2を 71 g得た。 実施例 4
CF2 = CF-0-CF2C (S03N a) 3 (k = 3、 X = ONa、 m= 1、 n =0) の合成
前述した、 k = 3のプロセスの、 工程 1一 4) に従って、 (III) の化合物を 得た。 すなわち、 DMF/水の混合溶媒中、 60°(で じ 1 F2CC 1 I C F3
と N a2S205を反応させ、 CC 1 F2CC 1 (CF3) S02Naを得た。 溶媒を 水に変更し、 室温で塩素ガスを吹き込んで反応させ、 油層を抽出して CC 1 F2 CC 1 (CF3) S 02C 1を得た。 つぎに DMS Oを溶媒として、 CC 1 F2C C I (CF3) S02C 1 と N a Fを反応させ、 CC 1 F2CC 1 (CF3) S02 Fを得た。 つぎに DMF溶媒中で金属亜鉛末と反応させて CF2 = C (CF3) S 02Fを得た。 さらに、 k = 3のプロセスの、 工程 2に従って、 (IV) の環状サ ルトンを得た。 つぎに、 氷水で冷却した、 容量 1リットルの 3つ口フラスコに 3 00でで乾燥した KF 2. 9 g (0. 05モル) とジグライム 200 gを仕込み、 攪拌下、 乾燥チッ素を流通しながら 308 g (1モル) の環状サルトン (IV) を徐々に滴下した。 さらに 170 g (1. 02モノレ) のへキサフノレオ口プロピレ ンォキシド (HFPO) を滴下して反応させた。 この溶液を分液し、 下層の反応 物を精留して下記の化合物を 420 g得た。
C F3C F (COF) -O-C F2C (S02F) 3
237 g (0. 5モル) の前記化合物を 0. 5 Lの 3つ口フラスコに仕込み、 攪拌しながら、 10質量%の水酸化ナトリウム水溶液 800 gを徐々に滴下して 反応させた。 前記反応液を乾燥させて、 260 gの下記の化合物を得た。
CF3CF (COON a ) 一 O— CF2CF (S 03N a) 3
還流管を備えた容量 1 Lの 3つ口フラスコに前記ィ匕合物 210 gと C aH2 で 乾燥したジグライム 200 gを仕込み、 乾燥チッ素を流通しながら 150°Cまで 昇温し、 30分間反応させた。 反応物を遠心分離した上澄みを濃縮 '再結晶して、 目的の化合物である、 C F2=C F— O— CF2C (S03N a) 3 を 95 g得た。 実施例 5
CF2=CF-0-CF2CF (S03N a) 2 (k = 2、 1 = 1、 X = ON a s Y=F、 m= l、 n = 0) とテトラフルォロエチレン (TFE) の共重合 攪拌機構を備えた容量 100 c cのガラス製オートクレープに、 トリフルォロ 酢酸 50m 1に CF2 = CF—〇一 CF2CF (S03Na) 2 9. 5 gを溶解し た溶液を仕込み、 パーロィル NPP (曰本油脂 (株) 製) を 0. 015 g添加し た。 つぎに、 室温にて真空、 チッ素置換を 3回繰り返した後、 へキサフルォロプ
口ペンを 5 g導入し、 60°Cまで昇温した。 その後、 テトラフルォロエチレンを ゲージ圧力で 0. 5MP aまで導入して重合を開始させた。 圧力を一定に保つよ うにテトラフルォロエチレンを導入し、 導入量が 5 gになった時点で重合を停止 した。 その後、 攪拌を停止し、 系の圧力を開放した。 引き続き減圧下でトリフル ォロ酢酸を揮発させて回収し、 未反応モノマーと共重合体の混合物を得た。 この 混合物を水に投入し、 不溶物を濾別、 洗浄して乾燥し、 6. 2 gの共重合体を得 た。 得られた共重合体を、 密閉容器中 250°Cで水 Zエタノール混合溶液に溶解 し、 GPC分析を行ったところ、 数平均分子量が 1 2万であった。 実施例 6
共重合体の溶解、 および製膜
実施例 5で得られた共重合体 1 gと、 水 Zエタノールの混合溶液 19 gを、 容 量 5 Om 1のステンレス製圧力容器に仕込み、 密封状態で 250°Cまで昇温し、 3時間保持した。 室温まで冷却した後、 溶液をメンプランフィルタ一で濾過し、 共重合体が溶解した溶液を得た。 この溶液を NMR測定した結果、 共重合体の組 成は、 CF2 = CF— O— CF2CF (S 03N a) 2 を 8モル0 /o、 テトラフノレオ 口エチレンを 92モル%含むものであった。 得られた溶液のうち 1 O gを容量 5 0 m 1のナス型フラスコにとり、 DM SO 1 gを追加して、 真空下 80 °Cで加熱 して低沸点成分を除去し、 やや黄色に着色した粘稠な溶液を得た。 この溶液を、 ガラス板上に 50 O/xmのギャップを有するアプリケータを用いて塗布し、 25 o°cで乾燥した。 その後、 水に浸潰して剥離し、 均質で強度のある膜を得た。 こ の膜を乾燥した後、 厚みを測定すると、 5 Ι μπιであった。 つぎにこの膜を、 希 塩酸に浸潰して水洗し、 真空乾燥した。 この膜を通常の方法で EW測定したとこ ろ、 8 10であった。
得られた膜を、 前記評価法にしたがって評価した。 結果を表 1に示す。 比較例 1
1分子当たりスルホン酸基を 1つだけもつナフイオン 117 (デュポン社製) を、 NaOHで中和して Na塩型とし、 実施例 6と同様にして製膜した。 膜厚は
5 0 つであった。 得られた膜を、 前記評価法にしたがって評価した。 結果を表 1に示す。
表 1
本発明のスルホン酸官能基含有フッ素化単量体は、 1分子当たり複数のスルホ ン酸官能基を有するため、 含フッ素共重合体として用いる場合、 従来のスルホン 酸官能基を含有する単量体よりも少量の重合比率で高いイオン伝導度や機械的強 度を付与する効果が得られる。
差替え用紙(規則 2$)