明 細 書
酸化物磁性体の製造方法 技術分野
本発明は、 異方性フェライト磁石等の酸化物磁性体の製造方法に関する。 背景技術
現在、 酸化物永久磁石材料として六方晶系の S rフェライトゃ B aフェライト が用いられており、 これらの磁石では、 磁石特性を向上させるために磁場中プレ スによる異方性化が広く行われている。 磁石特性のひとつとして、 残留磁束密度 ( B r ) が挙げられる。 残留磁束密度 B rに大きな影響を与える因子には、 次の 関係がある。 なお、 下記式における単位重量当たりの飽和磁化 (a s ) は、 物質 固有の値である。
式 B r a: (単位重量当たりの飽和磁化) X (密度) X (配向度) したがって、 B rの高い異方性焼結フェライト磁石を製造するためには、 焼結 密度と配向度を高めることが非常に重要である。 高い配向度を得るため、 フェラ イト粒子が水中に分散されたスラリーを成形する、 いわゆる湿式成形が、 従来か ら行われている。 一方、 大きな保磁力を得るためには、 フェライトの粒子サイズ を単磁区臨界径である 1 m以下として単磁区化する必要があるが、 このような 粒子では、 湿式成形法を用いた場合でも一般的に配向度が低下するという問題が ある。 この原因として、 ①粒子の単磁区化による磁気的凝集力の増加、 ②粒子が 磁場方向に向こうとするトルクの減少、 ③粒子の表面積増加による摩擦力の増加、 などが挙げられる。
本発明者らは、 この問題を解決するために、 サブミクロンフェライト粒子に粉 砕歪みを導入して粒子の保磁力を一時的に低減させることにより、 磁気的凝集力
を低減させ得ることを見出した (特開平 6— 5 3 0 6 4号公報) 。
さらに、 水の代わりに例えばトルエンゃキシレンのような有機溶媒を用い、 か つ、 例えばォレイン酸のような界面活性剤を添加することにより、 サブミクロン サイズのフェライト粒子を用いても最高で 9 8 %程度の高い磁気的配向度を得る ことが可能であることを見出した (同じく特開平 6 _ 5 3 0 6 4号公報) 。 しか し、 この方法は有機溶媒を使うため、 人体や環境に対して悪影響があり、 これを 解決するためには回収装置などの大がかりな設備が必要になり、 コストアップに なるという問題がある。
なお、 本明細書において磁気的配向度とは、 飽和磁化 ( I s ) に対する残留磁 化 ( I r ) の比 ( I r Z I s ) である。
—方、 水を用いた湿式磁場成形法における配向度を改善するために、 従来、 例 えばポリカルボン酸 (塩) に代表される高分子の分散剤を添加し、 これを磁性粒 子表面に吸着させて立体障害と電気的な反発作用の効果により粒子を分散し、 配 向度を向上させることが試みられてきた (特開平 6— 1 1 2 0 2 9号公報) 。 し かし、 得られる配向度および残留磁束密度 B rは、 高くない。
なお、 粒子サイズを小さくすると配向性が劣化するという問題は、 フェライト 磁石の製造の場合に限らず、 例えば、 針状の軟磁性フェライト等の他の酸化物磁 性体粒子を磁場配向させる場合においても同様である。 発明の開示
本発明の目的は、 異方性フェライト磁石等の酸化物磁性体の製造工程において、 環境面ゃコス卜面で有利な、 水を使用する湿式成形時の磁場配向性を改善するこ とにより、 高い配向度を有する酸化物磁性体を得ることである。
このような目的は、 下記 (1 ) 〜 (1 2 ) の本発明により達成される。
( 1 ) 酸化物磁性体粒子と水とを含む成形用スラリーを磁場中で湿式成形
して成形体を得る成形工程を有する酸化物磁性体の製造方法において、 水酸基およびカルボキシル基を有する有機化合物またはその中和塩もしくはそ のラクトンであるか、 ヒロドキシメチルカルボ二ル基を有する有機化合物である か、 酸として解離し得るエノール型水酸基を有する有機化合物またはその中和塩 であって、
前記有機化合物が、 炭素数 3〜20であり、 酸素原子と二重結合した炭素原子 以外の炭素原子の 50 %以上に水酸基が結合している分散剤を添加した成形用ス ラリ一を使用する酸化物磁性体の製造方法。
(2) 前記水酸基およびカルボキシル基を有する有機化合物がグルコン酸 である (1) の酸化物磁性体の製造方法。
(3) 前記酸として解離し得るエノ一ル型水酸基を有する有機化合物がァ スコルビン酸である (1) の酸化物磁性体の製造方法。
( 4 ) 酸化物磁性体粒子と水とを含む成形用スラリーを磁場中で湿式成形 して成形体を得る成形工程を有する酸化物磁性体の製造方法において、
クェン酸またはその中和塩を分散剤として添加した成形用スラリーを使用する 酸化物磁性体の製造方法。
(5) 前記成形用スラリー中に塩基性化合物が添加されている ( 1) 〜 (4) のいずれかの酸化物磁性体の製造方法。
(6) 前記分散剤がカルシウム塩である (1) 〜 (4) のいずれかの酸化 物磁性体の製造方法。
(7) 前記成形工程の前に湿式粉砕工程を有する (1) 〜 (6) のいずれ かの酸化物磁性体の製造方法。
( 8 ) 前記分散剤の少なくとも一部が、 前記湿式粉砕工程において添加さ れたものである (7) の酸化物磁性体の製造方法。
(9) 前記湿式粉砕工程の前に乾式粗粉砕工程を有する (7) または
(8) の酸化物磁性体の製造方法。
(10) 前記分散剤の少なくとも一部が、 前記乾式粗粉砕工程において添 加されたものである (9) の酸化物磁性体の製造方法。
(1 1) 前記分散剤の添加量 (分散剤が水溶液中においてイオン化し得る ものであるときは、 イオン換算の添加量) 力 前記酸化物磁性体粒子に対し 0. 05〜3. 0重量%である (1) 〜 (10) のいずれかの酸化物磁性体の製造方 法。
(12) 前記酸化物磁性体粒子の平均粒径が 1 m 以下である (1) 〜 (1 1) のいずれかの酸化物磁性体の製造方法。
本発明者らは、 例えばダルコン酸のような親水性が強い基を有する化合物を酸 化物磁性体粒子表面に吸着させることにより、 酸化物磁性体粒子表面をより親水 的にして水に対する濡れ性を改善し、 それによつて一次粒子の分散を向上させ、 配向度を向上できると考えた。 本発明では、 この考えに基づき、 成形用スラリー 中に上記分散剤を存在させることにより、 有機溶媒を用いた場合に近い高い配向 度を実現した。
従来用いられている高分子分散剤のほとんどは人工的に合成されたもので、 生 物分解されにくく排液処理の問題があるが、 本発明で用いる分散剤の多くは天然 に存在するもので、 人体や環境に対して安全であり、 微生物等により分解できる という利点もある。
本発明で用いる分散剤のうち、 特に配向度向上効果が高いと確認された物質は、 例えばダルコン酸等のヒドロキシカルボン酸、 その中和塩、 そのラクトンなどで あるが、 ヒドロキシカルボン酸であってもグリコ一ル酸 (C=2 ; OH= 1 ; C OOH- 1 ) では効果がなかった。 この他、 ァスコルビン酸 (C=6 ; 〇H = 4) にも上記ヒドロキシカルボン酸と同様な効果が認められた。 具体的には、 分 散媒として水を用いてサブミクロンフェライト粒子を湿式粉砕して成形し、 焼結
したときの磁気的配向度は、 分散剤を添加しない場合には 9 3〜 9 4 %であり、 分散剤として従来用いられているポリカルボン酸型の化合物を用いた場合には 9 4 %程度であるが、 分散剤としてダルコン酸を用いた場合には 9 5〜9 7 %とな る。 分散媒として有機溶媒 (キシレン) を用い、 分散剤としてォレイン酸を用い た場合の磁気的配向度が 9 7〜9 8 %であるから、 本発明では分散媒として水を 用いるにもかかわらず有機溶媒を用いた場合に近い磁気的配向度が得られること がわかる。
本発明において水溶液中で酸としての性質を示す分散剤 (ヒドロキシカルボン 酸など) を用いる場合、 塩基性化合物を添加してスラリー上澄みの p Hを上昇さ せれば、 配向度はより向上する。
フェライ ト磁石の製造工程では副成分として S i〇2 および C a C〇3 が添加 されるが、 分散剤としてヒドロキシカルボン酸やそのラクトンを用いた場合には、 成形用スラリー調製工程および湿式成形工程において S i〇2 および C a C〇3 の一部が流出してしまう。 また、 ヒドロキシカルボン酸やそのラクトンに加え、 p H調整のために上記塩基性化合物を添加した場合には、 流出量がより多くなる。 これに対し分散剤としてヒドロキシカルボン酸のカルシウム塩を用いた場合には、 S i O , および C a C O , の流出が抑えられ、 これによる HcJの低下等の特性劣 化が抑えられる。
なお、 本発明で用いる分散剤のうち、 酒石酸、 1ーァスコルビン酸、 クェン酸 については、 泥漿錡込成形法において成形性向上を目的とした分散剤として公知 である ( 「ファインセラミックスの成形と有機材料」 第 1 8 7〜 1 8 8ページ、 斎藤勝義著、 株式会社シーエムシー発行) 。 しかし、 同書には、 分散剤として 1 2種類の分類が挙げられており、 その中には配向度向上効果の小さいポリカルボ ン酸型ァニオン系界面活性剤などが含まれている。 その分類の一つに有機酸、 ク ェン酸、 酒石酸および 1ーァスコルビン酸が含まれているが、 ここでも有機酸す
ベてが効果があるというものではない。 実際、 酒石酸に比較的近い構造のこはく 酸には配向度向上効果はなく、 本発明の範囲外である。 同書では本発明のように 分子内に水酸基を多く持つ酸が有効であるといった限定的な記述はない。 本発明 は、 泥漿铸込成形法において成形性向上のために使用される公知の分散剤のうち から、 酸化物磁性体の配向度向上に特に効果のある分散剤を選択したことを特徴 とするものである。
また、 本発明で用いる分散剤のうち、 ダルコン酸ナトリウムについては、 コン クリート工業における分散剤として公知である ( 「分散 ·凝集の化学」 第 9 2〜 9 5ページ、 森山登著、 産業図書発行) 。 しかし、 コンクリート工業における分 散剤添加は、 流動性の改善や減水による強度向上が目的であり、 磁性体粒子を回 転させることが必要な酸化物磁性体の磁場中成形およびその際の配向度向上とは 直接関係はない。 実際に市販されている高性能減水剤を酸化物磁性体の製造に適 用しても、 配向度の向上効果を示すものは少なく、 たとえ向上があってもその程 度は大きくない。 図面の簡単な説明
図 1は、 成形体の配向度を調べるための X線回折チヤ一トである。 発明の実施の形態
本発明は、 各種酸化物磁性体の製造に適用可能であるが、 特に顕著な効果が得 られることから、 以下の説明では異方性フェライ卜磁石の製造に適用した場合を 例に挙げる。
本発明が適用される異方性フェライト磁石は、 主にマグネトプランバイト型の M相、 W相等の六方晶系のフェライトである。 このようなフェライ トとしては、 特に、 M O · n F e :: 〇:, (Mは好ましくは S rおよび B aの 1種以上、 n = 4 .
5〜6. 5) であることが好ましい。 このようなフェライトには、 さらに、 希土 類元素、 C a、 P b、 S i、 A l、 Ga、 Sn、 Zn、 I n、 Co、 N i、 T i、 C r、 Mn、 Cu、 Ge、 Nb、 Z r等が含有されていてもよい。
また、 より好ましくは S r、 B a、 C aおよび P bから選択される少なくとも 1種の元素を Aとし、 希土類元素 (Yを含む) および B iから選択される少なく とも 1種の元素を Rとし、 C 0および/または Z nを Lとしたとき、 A, R, F eおよび Lそれぞれの金属元素の総計の構成比率が、 全金属元素量に対し、
A: 1〜 13原子%、
R: 0. 05〜 10原子%、
F e : 80〜95原子%、
L : 0. 1〜5原子%
である六方晶マグネトプランバイト型 (M型) フェライトを主相に有するものが 好ましい。
この場合は、 Rが Aサイトに存在するとし、 Lが F eのサイトに存在するとし て表した
式 I Α,— (F e ,2-yLj ,Ol9
で表される主相を形成することが好ましい。 なお、 x、 y、 zは上記の量から計 算される値である。
さらに、 好ましくは、
A: 3〜 1 1原子%、
R: 0. 2〜6原子%、
F e : 83〜94原子%、
L : 0. 3〜4原子%でぁり、
特に好ましくは、
A: 3〜9原子%、
R: 0 . 5〜4原子%、
F e : 8 6〜 9 3原子%、
L : 0 . 5〜 3原子%である。
上記各構成元素において、 Aは、 S r、 B a、 C aおよび P bから選択される 少なくとも 1種の元素であって、 S rを必ず含むことが好ましい。 Aが小さすぎ ると、 M型フェライトが生成しないか、 ひ— F e
等の非磁性相が多くなつ てくる。 Aが大きすぎると M型フェライトが生成しないか、 S r F e O ,— .、 等の 非磁性相が多くなつてくる。 A中の S rの比率は、 好ましくは 5 1原子%以上、 より好ましくは 7 0原子%以上、 さらに好ましくは 1 0 0原子%である。 A中の S rの比率が低すぎると、 飽和磁化向上と保磁力の著しい向上とを共に得ること ができなくなってくる。
Rは、 希土類元素 (Yを含む) および B iから選択される少なくとも 1種の元 素である。 Rには、 L a , P r , N dを含有することが好ましく、 特に L aが必 ず含まれることが好ましい。 Rが小さすぎると、 Mの固溶量が少なくなり、 効果 が得難くなる。 Rが大きすぎると、 オルソフェライト等の非磁性の異相が多くな つてくる。 R中において L aの占める割合は、 好ましくは 4 0原子%以上、 より 好ましくは 7 0原子%以上であり、 飽和磁化向上のためには Rとして L aだけを 用いることが最も好ましい。 これは、 六方晶 M型フェライトに対する固溶限界量 を比較すると、 L aが最も多いためである。 したがって、 R中の L aの割合が低 すぎると Rの固溶量を多くすることができず、 その結果、 元素 Lの固溶量も多く することができなくなり、 その効果が小さくなつてくる。 また、 B iを併用すれ ば仮焼温度および焼結温度を低くすることができるので、 生産上有利である。 元素 Lは、 C oおよびノまたは Z nであり、 特に C oが必ず含まれることが好 ましい。 L中の C oの比率は、 好ましくは 1 0原子%以上、 より好ましくは 2 0 原子%以上であることが好ましい。 C oの比率が低すぎると、 保磁力向上が不十
る。
このような異方性フェライ卜焼結磁石を製造するには、 フェライト組成物の原 料の酸化物、 または焼成により酸化物となる化合物を仮焼前に混合し、 その後仮 焼を行う。 仮焼は、 大気中で、 例えば 1000〜 1350°Cで 1秒間〜 10時間、 特に M型の S rフェライトの微細仮焼粉を得るときには、 1000〜 1200 °C で、 1秒間〜 3時間程度行えばよい。
このような仮焼粉は、 実質的にマグネトプランバイト型のフェライト構造をも つ顆粒状粒子から構成され、 その一次粒子の平均粒径は 0. 1〜1 ΠΙ 、 特に 0. 1〜0. 5 m であることが好ましい。 平均粒怪は走査型電子顕微鏡 (SEM) により測定すればよく、 その変動係数 CVは 80 %以下、 一般に 10〜70%で あることが好ましい。 また、 飽和磁化 σ sは 65〜8 Oemu/g、 特に M型 S rフ ェライトでは 65〜71. 5 emu/g、 保磁力 He Jは 2000〜80000e、 特に M型 S rフェライトでは 4000〜 8000 Oeであることが好ましい。
本発明では、 酸化物磁性体粒子と、 分散媒としての水と、 分散剤とを含む成形 用スラリーを用いて湿式成形を行うが、 分散剤の効果をより高くするためには、 湿式成形工程の前に湿式粉砕工程を設けることが好ましい。 また、 酸化物磁性体 粒子として仮焼体粒子を用いる場合、 仮焼体粒子は一般に顆粒状であるので、 仮 焼体粒子の粗粉砕ないし解砕のために、 湿式粉砕工程の前に乾式粗粉碎工程を設 けることが好ましい。 なお、 共沈法や水熱合成法などにより酸化物磁性体粒子を 製造した場合には、 通常、 乾式粗粉砕工程は設けず、 湿式粉砕工程も必須ではな いが、 配向度をより高くするためには湿式粉砕工程を設けることが好ましい。 以 下では、 仮焼体粒子を酸化物磁性体粒子として用い、 乾式粗粉砕工程および湿式 粉砕工程を設ける場合について説明する。
乾式粗粉砕工程では、 通常、 BET比表面積が 2〜 10倍程度となるまで粉砕 する。 粉砕後の平均粒径は、 0. l〜 l im 程度、 BET比表面積は 4〜 1 Οιι^
/g程度であることが好ましく、 粒径の C Vは 8 0 %以下、 特に 1 0〜 7 0 %に維 持することが好ましい。 粉砕手段は特に限定されず、 例えば乾式振動ミル、 乾式 アトライター (媒体撹拌型ミル) 、 乾式ボールミル等が使用できるが、 特に乾式 振動ミルを用いることが好ましい。 粉碎時間は、 粉碎手段に応じて適宜決定すれ ばよい。
乾式粗粉砕には、 仮焼体粒子に結晶歪を導入して保磁力 HcBを小さくする効果 もある。 保磁力の低下により粒子の凝集が抑制され、 分散性が向上する。 また、 配向度も向上する。 粒子に導入された結晶歪は、 後の焼結工程において解放され、 これによつて本来の硬磁性に戻って永久磁石となる。
なお、 乾式粗粉碎の際には、 通常、 S i〇2 と、 焼成により C a Oとなる C a C O , とが添加される。 S i〇2 および C a C〇3 は、 一部を仮焼前に添加して もよく、 その場合には特性向上が認められる。
乾式粗粉碎の後、 仮焼体粒子と水とを含む粉砕用スラリーを調製し、 これを用 いて湿式粉砕を行う。 粉砕用スラリー中の仮焼体粒子の含有量は、 1 0〜7 0重 量%程度であることが好ましい。 湿式粉碎に用いる粉砕手段は特に限定されない 力 通常、 ボールミル、 アトライター、 振動ミル等を用いることが好ましい。 粉 砕時間は、 粉砕手段に応じて適宜決定すればよい。
湿式粉砕後、 粉砕用スラリーを濃縮して成形用スラリーを調製する。 濃縮は、 遠心分離などによって行えばよい。 成形用スラリー中の仮焼体粒子の含有量は、 6 0〜9 0重量%程度であることが好ましい。
湿式成形工程では、 成形用スラリーを用いて磁場中成形を行う。 成形圧力は 0 . 1〜0 . 5 ton/cm2 程度、 印加磁場は 5〜 1 5 kOe 程度とすればよい。
本発明では、 分散剤が添加された成形用スラリーを用いる。 本発明で用いる分 散剤は、 水酸基およびカルボキシル基を有する有機化合物であるか、 その中和塩 であるか、 そのラクトンであるか、 ヒロドキシメチルカルボ二ル基を有する有機
化合物であるか、 酸として解離し得るエノール型水酸基を有する有機化合物であ るか、 その中和塩である。
上記各有機化合物は、 炭素数が 3〜20、 好ましくは 4〜 12であり、 かつ、 酸素原子と二重結合した炭素原子以外の炭素原子の 50 %以上に水酸基が結合し ているものである。 炭素数が 2以下であると、 本発明の効果が実現しない。 また、 炭素数が 3以上であつても、 酸素原子と二重結合した炭素原子以外の炭素原子へ の水酸基の結合比率が 50%未満であれば、 やはり本発明の効果は実現しない。 なお、 水酸基の結合比率は、 上記有機化合物について限定されるものであり、 分 散剤そのものについて限定されるものではない。 例えば、 分散剤として、 水酸基 およびカルボキシル基を有する有機化合物 (ヒドロキシカルボン酸) のラクトン を用いるとき、 水酸基の結合比率の限定は、 ラクトンではなくヒドロキシカルボ ン酸自体に適用される。
上記有機化合物の基本骨格は、 鎖式であっても環式であってもよく、 また、 飽 和であっても不飽和結合を含んでいてもよい。
分散剤としては、 具体的にはヒドロキシカルボン酸またはその中和塩もしくは そのラクトンが好ましく、 特に、 ダルコン酸 (C=6 ; 〇H= 5 ; CO〇H = 1) またはその中和塩もしくはそのラクトン、 ラクトビオン酸 (C= 12 ; OH = 8 ; COOH= 1) 、 酒石酸 (C = 4 ; OH= 2 ; COOH= 2) またはこれ らの中和塩、 ダルコヘプトン酸ァ—ラクトン (C=7 ; OH= 5) が好ましい。 そして、 これらのうちでは、 配向度向上効果が高く、 しかも安価であることから、 ダルコン酸またはその中和塩もしくはそのラクトンが好ましい。
ヒドロキシメチルカルボ二ル基を有する有機化合物としては、 ソルボースが好 ましい。
酸として解離し得るエノール型水酸基を有する有機化合物としては、 ァスコル ビン酸が好ましい。
なお、 本発明では、 クェン酸またはその中和塩も分散剤として使用可能である クェン酸は水酸基およびカルボキシル基を有するが、 酸素原子と二重結合した炭 素原子以外の炭素原子の 5 0 %以上に水酸基が結合しているという条件は満足し ない。 しかし、 配向度向上効果は認められる。
上記した好ましい分散剤の一部について、 構造を以下に示す。
D -ダルコン酸 - D -グ'ゾレコへブ卜ン酸
H ァ-ラク 卜ン
o H
cccll
H H .
2 〇
H
ラク 卜ビオン酸
石酸
ァスコルビン酸 L- ( - ) -ソルボース
CH2〇H
〇=C,
C =〇
HO— C
II O HO-C- HO一 H
C
H-C-OH
HO-C-H
CHゥ〇H
本発明で用いる分散剤は粉砕、 スラリー調整などの際に構造が変化する可能性 がある。 例えば遊離のダルコン酸とその 2種類のラクトン (ァ-および <5-) は水 溶液中では単独で存在せず、 互いに他の 2者に変化するため混合状態で存在する。 さらに、 粉碎によるメカノケミカル反応で、 分散剤の構造が変化する可能性もあ る。
さらに例えば加水分解反応などにより、 本発明で用いる分散剤と同一の有機化 合物を生成するような化合物を添加することによつても本発明の目的を達成でき る可能性もある。
磁場配向による配向度は、 スラリーの; Hの影響を受ける。 具体的には、 pH が低すぎると配向度は低下し、 これにより焼結後の残留磁束密度が影響を受ける。 分散剤として水溶液中で酸としての性質を示す化合物、 例えばヒドロキシカルボ ン酸などを用いた場合には、 スラリーの pHが低くなつてしまう。 したがって、 例えば、 分散剤と共に塩基性化合物を添加するなどして、 スラリーの pHを調整 することが好ましい。 上記塩基性化合物としては、 アンモニアや水酸化ナトリウ ムが好ましい。 アンモニアは、 アンモニア水として添加すればよい。 なお、 ヒド ロキシカルボン酸のナトリウム塩を用いることにより、 pH低下を防ぐこともで さる。
フェライト磁石のように副成分として S i O, および C a CO:, を添加する場 合、 分散剤としてヒドロキシカルボン酸やそのラクトンを用いると、 主として成 形用スラリー調製の際にスラリーの上澄みと共に S i O, および CaC〇:, が流 出してしまい、 HcJが低下するなど所望の性能が得られなくなる。 また、 上記塩 基性化合物を添加するなどして PHを高くしたときには、 S i O, および C aC O:, の流出量がより多くなる。 これに対し、 ヒドロキシカルボン酸のカルシウム 塩を分散剤として用いれば、 S i 0:: および C aCO:, の流出が抑えられる。 た だし、 上記塩基性化合物を添加したり、 分散剤としてナトリウム塩を用いたりし
たときに、 S i〇2 および C a C O .., を目標組成に対し過剰に添加すれば、 磁石 中の S i〇2 量および C a〇量の不足を防ぐことができる。 なお、 ァスコルビン 酸を用いた場合には、 S i〇2 および C a C〇3 の流出はほとんど認められない。 上記理由により、 スラリー上澄みの p Hは、 好ましくは 7以上、 より好ましく は 8〜 1 1である。
分散剤として用いる中和塩の種類は特に限定されず、 カルシウム塩ゃナトリゥ ム塩等のいずれであってもよいが、 上記理由から、 好ましくはカルシウム塩を用 いる。
なお、 分散剤は 2種以上を併用してもよい。
分散剤の添加量は、 酸化物磁性体粒子である仮焼体粒子に対し、 好ましくは 0 . 0 5〜3 . 0重量%、 より好ましくは 0 . 1〜2 . 0重量%である。 分散剤が少 なすぎると配向度の向上が不十分となる。 一方、 分散剤が多すぎると、 成形体や 焼結体にクラックが発生しやすくなる。
なお、 分散剤が水溶液中でイオン化し得るもの、 例えば酸や金属塩などである ときには、 分散剤の添加量はイオン換算値とする。 すなわち、 水素イオンや金属 イオンを除く有機成分に換算して添加量を求める。 また、 分散剤が水和物である 場合には、 結晶水を除外して添加量を求める。 例えば、 分散剤がダルコン酸カル シゥム一水和物である場合の添加量は、 ダルコン酸イオンに換算して求める。 また、 分散剤がラクトンからなるとき、 あるいはラクトンを含むときには、 ラ クトンがすべて開環してヒドロキシカルボン酸になるものとして、 ヒドロキシカ ルボン酸イオン換算で添加量を求める。
分散剤の添加時期は特に限定されず、 乾式粗粉砕時に添加してもよく、 湿式粉 砕時の粉碎用スラリー調製の際に添加してもよく、 一部を乾式粗粉碎の際に添加 し、 残部を湿式粉砕の際に添加してもよい。 あるいは、 湿式粉砕後に撹拌などに よって添加してもよい。 いずれの場合でも、 成形用スラリー中に分散剤が存在す
ることになるので、 本発明の効果は実現する。 ただし、 粉碎時に、 特に乾式粗粉 砕時に添加するほうが、 配向度向上効果は高くなる。 乾式粗粉砕に用いる振動ミ ル等では、 湿式粉碎に用いるボールミル等に比べて粒子に大きなエネルギーが与 えられ、 また、 粒子の温度が上昇するため、 化学反応が進行しやすい状態になる と考えられる。 したがって、 乾式粗粉砕時に分散剤を添加すれば、 粒子表面への 分散剤の吸着量がより多くなり、 この結果、 より高い配向度が得られるものと考 えられる。 実際に、 成形用スラリー中における分散剤の残留量 (吸着量にほぼ等 しいと考えられる) を測定すると、 分散剤を乾式粗粉碎時に添加した場合のほう 力 湿式粉砕時に添加した場合よりも添加量に対する残留量の比率が高くなる。 なお、 分散剤を複数回に分けて添加する場合には、 合計添加量が前記した好まし い範囲となるように各回の添加量を設定すればよい。
成形工程後、 成形体を大気中または窒素中において 1 0 0〜5 0 0 °Cの温度で 熱処理して、 添加した分散剤を十分に分解除去する。 次いで焼結工程において、 成形体を例えば大気中で好ましくは 1 1 5 0〜 1 2 5 0 ° (:、 より好ましくは 1 1 6 0〜 1 2 2 0 °Cの温度で 0 . 5〜3時間程度焼結して、 異方性フェライト磁石 を得る。
なお、 本発明による方法で作製した成形体をクラッシャー等を用いて解砕し、 ふるい等により平均粒径が 1 0 0〜 7 0 0 x m程度となるように分級して磁場配 向顆粒を得、 これを乾式磁場成形した後、 焼結することにより焼結磁石を得ても よい。
以上では、 異方性焼結フェライ卜磁石の製造に本発明を適用する場合について 説明したが、 例えば針状フェライト粒子などを用いた軟磁性フェライ卜焼結体等 の他の酸化物磁性体の製造に適用する場合でも、 上記説明に準じて分散剤を添加 することにより、 成形用スラリ一中の酸化物磁性体粒子の分散性が良好となり、 その結果、 高配向度の酸化物磁性体が得られる。
本発明の方法により作成された焼結フェライト磁石を使用することにより、 一 般に次に述べるような効果が得られ、 優れた応用製品を得ることができる。 すな わち、 従来のフェライト製品と同一形状であれば、 磁石から発生する磁束密度を 増やすことができるため、 モータであれば高トルク化等を実現でき、 スピーカー やへッドホーンであれば磁気回路の強化により、 リニアリティーのよい音質が得 られるなど応用製品の高性能化に寄与できる。 また、 従来と同じ機能でよいとす れば、 磁石の大きさ (厚み) を小さく (薄く) でき、 小型軽量化 (薄型化) に寄 与できる。
本発明の方法により作製された焼結フェライト磁石は所定の形状に加工され、 下記に示すような幅広い用途に使用される。
例えば、 フユエールポンプ用、 パヮ一ウィンド用、 ABS用、 ファン用、 ワイ パ用、 パワーステアリング用、 アクティブサスペンション用、 スター夕用、 ドア ロック用、 電動ミラー用等の自動車用モータ; FDDスピンドル用、 VTRキヤ プスタン用、 VTR回転ヘッド用、 VTRリール用、 VTRローデイング用、 V TRカメラキヤプスタン用、 VTRカメラ回転ヘッド用、 VTRカメラズーム用、 VTRカメラフォーカス用、 ラジカセ等キヤプスタン用、 CD, LD, MDスピ ンドル用、 CD, LD, MD口一ディング用、 CD, LD光ピックアップ用等の OA、 AV機器用モー夕 ;エアコンコンプレッサー用、 冷蔵庫コンプレッサー用、 電動工具駆動用、 扇風機用、 電子レンジファン用、 電子レンジプレート回転用、 ミキサ駆動用、 ドライヤーファン用、 シェーバー駆動用、 電動歯ブラシ用等の家 電機器用モー夕 ; ロボッ卜軸、 関節駆動用、 ロボット主駆動用、 工作機器テ一ブ ル駆動用、 工作機器ベルト駆動用等の F A機器用モー夕 ;その他、 オートバイ用 発電器、 スピーカ ·ヘッドホン用マグネット、 マグネトロン管、 MR I用磁場発 生装置、 CD— ROM用クランパ、 ディストリビュー夕用センサ、 ABS用セン サ、 燃料 'オイルレベルセンサ、 マグネットラッチ等に好適に使用される。
実施例
以下、 本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
なお、 本実施例で用いた分散剤のうち、 ダルコン酸は市販の 50 %水溶液を用 い、 また、 その他のものについては市販の試薬をそのまま使用した。
実施例 1
目標組成を
S r 85 L a Z n F e . ,. 85〇l9
とし、 出発原料としては以下のものを用いた。
F e 2 粉末 1 5. 00 kg
(不純物として、 Mn, C r, S i , C 1を含む)
S r C03 粉末 2067. 3 g
(不純物として、 B a, C aを含む)
Ζ ηθ粉末 20 1. 5 g
L a2 O 粉末 399. 6 g
また、 添加物として、
S i O, 34. 5 g、
を用いた。
上記出発原料および添加物を湿式アトライ夕一で粉砕後、 乾燥 ·整粒し、 これ を空気中において 1230°Cで 3時間焼成し、 顆粒状の仮焼体を得た。
得られた仮焼体の磁気特性を試料振動式磁力計 (VSM) で測定した結果、 飽 和磁化 σ sは 72 eniu/g 、 保磁力 HcJは 4. OkOe であった。
この仮焼体に S i〇2 を 0. 4重量%、 C a CO, を 1. 0 5重量%添加した 後、 1 1 0 gZバッチの振動ロッドミルにより 20分間乾式粗粉砕した。 このと きに粉砕による歪みが導入され、 仮焼体粒子の HcJは 1. 7k0e に低下していた。
次いで、 分散媒として水を、 分散剤としてダルコン酸を用い、 これらと上記仮 焼体粒子とを混合して粉碎用スラリーを調製した。 ダルコン酸添加の際には、 グ ルコン酸の中和当量の 5倍に相当するアンモニア水を加えて粉砕時の pHを調整 した。 粉碎用スラリー中の固形分濃度は、 34重量%とした。 仮焼体粒子に対す るダルコン酸の添加量を、 表 1に示す。 なお、 表 1に示すダルコン酸の添加量は、 前述したようにダルコン酸イオン換算値であり、 以下の実施例においてもイオン 化し得る分散剤においては同様である。
この粉砕用スラリーを用いて、 ボールミル中で湿式粉砕を 40時間行った。 湿 式粉砕後の比表面積は、 8. 5mVg (平均粒径 0. 5 m ) であった。 湿式粉砕 後のスラリーの上澄み液の pHを、 表 1に示す。
湿式粉砕後、 粉碎用スラリーを遠心分離して、 スラリー中の仮焼体粒子の濃度 が 78重量%となるように調整し、 成形用スラリーとした。 この成形用スラリー から水を除去しながら圧縮成形を行った。 この成形は、 圧縮方向に約 13k0e の 磁場を印加しながら行った。 得られた成形体は、 直径 30腿、 高さ 18腿の円柱 状であった。
成形体では、 磁気的配向度の値が成形体密度にも影響されるため、 成形体の表 面に対し X線回折による測定を行い、 現れたピークの面指数と強度とから成形体 の結晶学的な配向度 (X線配向度) を求めた。 結果を表 1に示す。 成形体の X線 配向度は、 焼結体の磁気的配向度の値をかなりの程度支配する。 なお、 本明細書 では、 X線配向度として Σ Ι (00 L) /∑ I (h kL) を用いる。 (00L) は、 (004) や (006) 等の c面を総称する表示であり、 ∑ I (00L) は (00 L) 面のすべてのピーク強度の合計である。 また、 (hkL) は、 検出さ れたすべてのピークを表し、 ∑ I (hkL) はそれらの強度の合計である。 した がって Σ Ι (00 L) /∑ I (h kL) は、 c面配向の程度を表す。
次に、 各成形体を空気中で 1200°Cまたは 1220°Cで 1時間焼成した。 な
お、 成形体を焼成する際に、 ダルコン酸を除去するためにあらかじめ空気中にお いて 1 0 0〜 3 6 0 °Cで十分に脱脂した。 得られた焼結体の残留磁束密度 B r、 保磁力 HcJ、 配向度 I r Z l s、 角形比 H k /HcJおよび焼結密度を測定した。 結果を表 2に示す。 なお、 H kは磁気ヒステリシスループの第 2象限において磁 束密度が残留磁束密度の 9 0 %になるときの外部磁界強度である。 H kが低いと 高エネルギー積が得られない。 H k ZHc ま磁石性能の指標となるものであり、 磁気ヒステリシスループの第 2象限における角張りの度合いを表す。
実施例 2
酸の添加時期を乾式粗粉砕時としたほかは実施例 1と同様にして、 成 形体および焼結体を得た。 なお、 アンモニア水の添加時期は、 実施例 1と同様に 湿式粉砕時とした。 この成形体および焼結体について、 実施例 1と同様な測定を 行った。 結果を表 1および表 2に示す。
比較例 1
'酸を添加しなかったほかは実施例 1および実施例 2と同様にして、 成 形体および焼結体を得た。 この成形体および焼結体について、 実施例 1と同様な 測定を行った。 結果を表 1および表 2に示す。
表 1
添加量 スラリー上 成形体の X線配向度 分散剤 添加時期 澄みの pH ∑ I(OOL)/∑ KhkL) 比較例 1 9 0.49 実施例 1 ダルコン酸 1.0 湿式粉砕時 10 0.60 実施例 2 1.0 乾式粗粉砕時 10 0.65
表 1から、 グルコン酸を添加することにより成形体の X線配向度が向上するこ とがわかり、 また、 湿式粉砕時よりも乾式粗粉砕時にグルコン酸を添加した場合
のほうが配向度の向上率が高いことがわかる。 比較例 1および実施例 2の各成形 体の X線回折チャートを、 図 1に示す。
表 2
焼成温度 Br He J I r/I s Hk/HcJ 密度 (°C) (G) (Oe) (¾) (¾) (g/cm3)
1200 4220 3400 92. 7 94. 7 5. 03
比較例 1
1220 4310 3130 93. 7 59. 9 5. 07
1200 4330 3300 96. 2 93. 8 5. 00
実施例 1
1220 4390 3100 96. 6 92. 7 5. 03
1200 4410 3230 96. 8 95. 7 5. 02
実施例 2
1220 4450 3000 97. 1 94. 9 5. 05 表 2から、 ダルコン酸を添加することにより、 特に乾式粗粉砕時に添加するこ とにより、 高い磁気的配向度が得られ、 より高い B rを達成できることがわかる。 なお、 湿式粉砕後、 スラリーの分散媒を除去して乾燥させ、 粉砕物中のダルコ ン酸量を T G— D T Aにより測定したところ、 ダルコン酸を湿式粉砕時に添加し た実施例 1では 0 . 2 8重量%であつたが、 乾式粗粉砕時に添加した実施例 2で は 0 . 4 0重量%でぁり、 乾式粗粉砕時に添加した場合のほうがダルコン酸の吸 着率が高いことがわかった。 実施例 3〜実施例 1 0、 比較例 2〜比較例 3
乾式粗粉砕に 1 2 kgノバツチの振動ボールミルを用いて 5 5分間粉砕し、 かつ、 表 3に示す分散剤を用いたほかは実施例 1と同様にして、 成形体を得た。 ただし、 実施例 5 (ダルコン酸カルシウム一水和物) および実施例 1 0 ( L (—) 一ソル ボース) では、 湿式粉砕時のアンモニア水添加を行わなかった。 これらの成形体 について実施例 1と同様な測定を行った。 結果を表 3に示す。
次に、 これらの成形体を、 実施例 1と同様にして焼成し、 得られた焼結体につ いて実施例 1と同様な測定を行った。 結果を表 4に示す。
表 3
成形体の X線配向度 分散剤 (重量 %) 添加時期 ∑ 1(00し)/∑ I(hkL) 実施例 3 0. 6 湿式粉砕時 0. 58 実施例 4 1. 0 湿式粉砕時 0. 58 実施例 5 0. 6 湿式粉砕時 0. 54
一水 TO物
a -D-グル
実施例 6 0. 5 湿式粉砕時 0. 62
y -ラクトン
実施例 7 ラク卜ビ才ン酸 2. 0 湿式粉砕時 0. 61 実施例 8 L (+) _酒石酸 1. 0 湿式粉砕時 0. 56
1. 0 湿式粉砕時 0. 59 実施例 10 L (- ) -ソルボース 1. 0 湿式粉砕時 0. 53 比較例 2 -- 0. 50 比較例 3 グリコール酸 1. 0 湿式粉砕時 0. 50
表 3から、 これらの分散剤も配向度向上に十分な効果を示すことがわかる <
表 4
焼成温度 Br HcJ [r/Is Hk/HcJ
( C) (G) (〇e) (%) (%) (g/cm:1)
1200 4390 3170 96. 4 93. 7 5. 01 実施例 3 i 1 θ 4450 2950 96. 5 93. 4 5. 05
1200 4390 3170 96. 0 95. 8 5. 01 実施例 4 ο π 4490 2940 96. 8 93. 5 δ. 05
1200 4370 3430 96. 1 93. 8 5. 03 実施例 5
1 ϋ 「
441 U 3140 96. 5 75. 5 5. 05
1200 4400 3250 95. 8 95. 1 5. 03 実施例 6
1 ϋ 44οϋ 96. 6 91. 3 ο. 06
1200 4430 3180 96. 3 95. 3 5. 05 実施例 7
1220 4460 2920 96. 6 89. 8 5. 06
1200 4350 3390 95. 0 95. 1 5. 02 実施例 8 ο ο η
I ZU ο η η r ο η 91. D. Uo
1200 4370 3420 95. 1 95. 1 5. 03 実施例 9
1220 4420 3130 95. 5 77. 9 5. 06
1200 4330 3430 95. 5 93. 8 5. 04 実施例 10
1220 4420 3020 96. 1 50. 8 5. 07
1200 4260 3340 93. 4 96. 3 5. 05 比較例 2
1220 4320 3090 94. 1 69. 7 5. 06
1200 4260 3400 94. 0 94. 6 5. 06 比較例 3
1220 4340 3130 95. 0 63. 9 5. 08 表 4から、 上記分散剤を用いた場合でも、 磁気特性および配向度の良好な焼結 体が得られることがわかる。 また、 実施例 4 (振動ポールミル使用) と前記実施 例 1 (振動ロッドミル使用) との比較から、 乾式粉碎条件の違いによって焼結体 の磁気特性が影響を受けることがわかる。
実施例 5で使用した成形用スラリーを 1 0 0 0 °Cで 1時間熱処理したものにつ いて、 S i O , および C a〇の各含有量を測定した。 また、 比較のために、 分散 剤を添加しなかつた比較例 2で使用した成形用スラリーと、 アンモニア水添加を 行つた実施例 3で使用した成形用スラリーとについても、 同様な測定を行つた。 結果を表 5に示す。 また、 各例における湿式粉砕後のスラリーの上澄みの p Hを
表 5に示す。
表 5
スラリー上 成形用スラリ の
澄みの 含有
分散剤 pH S iO, CaO
比較例 2 なし 9 0. 56 0. 66 実施例 3 10 0. 47 0. 44 実施例 5 9 0. 55 0. 65
一水和物
表 5から、 グルコン酸に加えアンモニア水を添加した実施例 3では、 S i〇2 および C a C 03 が流出しているが、 ダルコン酸のカルシウム塩を用いた実施例 5では、 これらの流出がほぼ完全に抑制されていることがわかる。
実施例 1 1
ダルコン酸カルシウム一水和物の添加量を表 6および表 7に示すものとしたほ かは実施例 2と同様にして、 成形体および焼結体を得た。 ただし、 アンモニア水 添加は行わなかった。 これらについて実施例 1と同様な測定を行った。 結果を表 6および表 7に示す。
表 6
実施例 (分散剤: ダルコン酸カルシウム一水和物)
口量 成 の X線配! ¾
添加時期 ∑ 00L}/∑ I(hkL) 乾式粗粉砕時
乾式粗粉砕時
乾式粗粉砕時
乾式粗粉砕時 乾式粗粉砕時
乾式粗粉砕時
乾式粗粉砕時
乾式粗粉砕時
乾式粗粉砕時 表 7
実施例 (分散剤: ダルコン酸カルシウム一水和物) 添加量 焼成温度 Br HcJ HTTs ~~ HE7HCJ WW ϊ%)_ C ) _ (G) (Oe) (¾) (%) _ (g/cm3) n 1200 4220 3400 92. 94. 5.03 u 1220 —― 4310 3130 — _ 93.7 一— 59.9 —― 5.07_ n 200" 4320 3450 "3T2 "5T9 5~Τ)Ό~ υ· UD 1220—― 4350 _ 3310—― 93.9 5 —― 5.03 n , 1200" 4340 Μ30 9"3Τ 3 9476 5二— 0了一 υ· 1 1220 _ 4390 _ 3250—― 94.3 83.6 5.04 η 9 1 00 一一 360 3410 947 Τ 9473 5~DT~ υ· L ― 1220 —― 4400 —― 3230 一 _ 94.6 —― 90 —5.04 ― "1200" 4400 3"3"10 9"5ΤΤ 9"673 5: 220 —― 4450 —― 3080 —― 95.6 —― 91. —― 5.07 ― ー膽ー 4430 漏 5 9673 f υ· 0 —― 1220 —―
π η 200" 4420 3"3"30 9"5:6 9Ϊ7 5""05~' υ· J — _ 1220 —― 4440 —― 3140 —― 95.7 —― 92.4 —― 5.07 T 1200" 3 00 9"5ΤΤ 9"Γθ 5"~03~ n一 1200" 翻 9473 9"Γ "99~
220 4360 3150 95. 86.2 5.03
表 6および表 7から、 分散剤の添加量を広い範囲で変更した場合でも、 高配向 の成形体が得られ、 その結果として高特性の磁石が得られることがわかる。 なお、 ダルコン酸カルシウム一水和物の添加量を 3 . 5重量%としたところ、 焼結体に クラックが発生した。
実施例 1 2、 実施例 1 3、 比較例 4 ,
表 8に示す分散剤を用い、 湿式粉砕時間を 2 0時間としたほかは実施例 3と同 様にして、 成形体を得た。 これらについて、 実施例 1と同様な測定を行った。 結 果を表 8に示す。
表 8
涵量 成丽の X 度— 分散剤 ί重量%)_ 添加時期 _∑ I( OLV∑ hkL) 比較例 4 0. 45 実施例 12 クェン酸 n Q 湿式粉碎時
一水和物 J 0. 48 実施例 13 [. 0 湿式粉砕時 0. 50
表 8に示されるように、 クェン酸を用いた場合でも配向度向上効果が認められ る。
比較例 5〜比較例 9
前述したコンクリート工業で利用されている市販の分散剤を用レ ^、 上記実施例 3と同様にして成形体を作製し、 X線配向度を調べた。 結果を表 9に示す。
表 9
添加量 成丽の X漏己向 1 分散剤 丄重量%}_ 添加時期 ∑ I(00L)/∑ hkL) 比較例 5 ポリカルボン酸系 [.0 湿式粉砕時 0.53
メナロール
比較例 6 1.0 湿式粉砕時
メラミン縮合物 0.49 リグニンスルホン
比較例 7 酸 [.0 湿式粉砕時 0.48
ナトリウム
トリアジン環系
比較例 8 1.0 湿式粉碎時 0.46
高縮合物
比較例 9 NSF 1.0 湿式粉碎時 0.45
NSF:ナフタリンスルホン酸ナトリゥム塩ホルマリン高縮合物
表 9から、 コンクリート工業において利用されている分散剤は、 磁性体粒子の 配向度向上にはほとんど無効であることがわかる。 ポリカルボン酸系分散剤を使 用したものでは X線配向度がやや向上しているが、 これを含む各成形体を焼成し たところ、 得られた焼結体はすべて密度が 4. 9 g/cm3 以下と低いものであった。 実施例 14
目標組成を
S r 8L ao.2C Oo.2F e ,,.8019
とし、 出発原料としては以下のものを用いた。
F e2 O;, 粉末 1000. 0 g
(不純物として、 Mn, C r , S i, C 1を含む)
S r CO, 粉末 130. 3 g
(不純物として、 B a, Caを含む)
酸化コバルト粉末 17. 56 g
L 〇., 粉末 35. 67 g
また、 添加物として、
S i 02 2. 3 g、
C a CO, 1. 72 g
を用いた。
上記出発原料および添加物を湿式アトライターで粉砕後、 乾燥 ·整粒し、 これ を空気中において 1250°Cで 3時間焼成し、 顆粒状の仮焼体を得た。
得られた仮焼体の磁気特性を試料振動式磁力計 (VSM) で測定した結果、 飽 和磁化 σ sは 68 emu/g 、 保磁力 He Jは 4. 6k0e であった。
この仮焼体に S i 02 を 0. 4重量%、 C aCO, を 1. 25重量%、 さらに 分散剤としてダルコン酸カルシウムを 0. 6重量%添加した後、 1 10 g/バッ チの振動ロッドミルにより 20分間乾式粗粉砕した。 このときに粉砕による歪み が導入され、 仮焼体粒子の HcJは 1. 8k0e に低下していた。
次いで、 分散媒として水を用い、 これらと上記仮焼体粒子とを混合して粉砕用 スラリーを調製した。 粉碎用スラリー中の固形分濃度は、 34重量%とした。 この粉碎用スラリーを用いて、 ボールミル中で湿式粉碎を 40時間行った。 湿 式粉砕後の比表面積は、 8. 5mVg (平均粒径 0. 5 m ) であった。 湿式粉砕 後のスラリーの上澄み液の pHは、 9〜10であった。
湿式粉砕後、 粉碎用スラリーを遠心分離して、 スラリー中の仮焼体粒子の濃度 が 78重量%となるように調整し、 成形用スラリーとした。 この成形用スラリー から水を除去しながら圧縮成形を行った。 この成形は、 圧縮方向に約 13k0e の 磁場を印加しながら行った。 得られた成形体は、 直径 30iMi、 高さ 18腿の円柱 状であった。 このとき、 X線回折による成形体の配向度 〔∑ I (00 L) /∑ I (h kL) 〕 は、 0. 6であった。
次に、 各成形体を空気中で 1 180°Cから 1240°Cで各々 1時間焼成した。 なお、 成形体を焼成する際に、 ダルコン酸を除去するためにあらかじめ空気中に
おいて 100〜360°Cで十分に脱脂した。 得られた焼結体の残留磁束密度 B r 保磁力 Hd、 配向度 I r/I s、 角形比 HkZHdおよび焼結密度を測定した。 結果を表 1 0に示す。 また. , 成分の分析結果を表 1 1に示す。
表 1 0
焼成温度 47U Is Br He J Ir/Is Hk/HcJ (UU) ay f
(。c) (kG) (kG) (kOe) (%) (¾) (MGOe) (g/cm3).
1180 4.48 4.28 4.88 95.6 89.0 4.5 5.01
1200 4.52 4.33 4.61 95.8 89.5 4.6 5.06
1220 4.56 4.39 4.26 96.3 90.9 4.7 5.08
1240 4.57 4.42 3.73 96.6 39.4 3.8 5.08
1
組 成 (原子%)
Fe Sr Ba Ca La Co Mn Si
88.7 6.0 0.1 1.2 1.5 1.5 0.3 0.7 以上の実施例の結果から、 本発明の効果が明らかである。