JP2005179175A - 酸化物焼結体の製造方法、組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】 カーボン添加による効果を享受しつつ、焼結密度を向上させるための技術を提供する。
【解決手段】 原料粉末とカーボン粉末と一般式Cx(OH)yHz(一般式において、4≦x≦100、2≦y≦x、4≦z≦2x)で表される多価アルコールとを含む混合物を成形する成形工程と、得られた成形体を焼結して焼結体を得る焼結工程とを備えるようにした。本発明で用いる多価アルコールがカーボン粉末の偏析を抑制するため、焼結時にカーボン粉末が消失しても、ピンホールの増加及びそれに起因する焼結密度の低下を抑制できる。本発明によれば、カーボン粉末の偏析を抑制することができ、カーボン添加による効果を享受しつつ高密度の酸化物焼結体を得ることができる。本発明をW型フェライト磁石に適用することで、残留磁束密度(Br)の高いW型フェライト磁石を得ることができる。
【選択図】図11
【解決手段】 原料粉末とカーボン粉末と一般式Cx(OH)yHz(一般式において、4≦x≦100、2≦y≦x、4≦z≦2x)で表される多価アルコールとを含む混合物を成形する成形工程と、得られた成形体を焼結して焼結体を得る焼結工程とを備えるようにした。本発明で用いる多価アルコールがカーボン粉末の偏析を抑制するため、焼結時にカーボン粉末が消失しても、ピンホールの増加及びそれに起因する焼結密度の低下を抑制できる。本発明によれば、カーボン粉末の偏析を抑制することができ、カーボン添加による効果を享受しつつ高密度の酸化物焼結体を得ることができる。本発明をW型フェライト磁石に適用することで、残留磁束密度(Br)の高いW型フェライト磁石を得ることができる。
【選択図】図11
Description
本発明は酸化物焼結体の製造方法に関し、特にフェライト磁石等の酸化物焼結体に関するものである。
M型フェライト磁石を凌駕する磁気特性を示す可能性をもつフェライト磁石として、W型のフェライト磁石が知られている。酸化物焼結体からなるW型フェライト磁石は、M型フェライト磁石と同程度の異方性磁界を有しつつ飽和磁化が高い。例えば、特許文献1ではSrO・2(FeO)・n(Fe2O3)であり、nが7.2〜7.7を満足する組成からなるW型フェライト磁石が開示されている。特許文献1では組成を上述した範囲のものとするとともに、仮焼前の原料粉末にカーボンを添加し、仮焼後にさらにCaO、SiO2、カーボンをそれぞれ添加することでW型フェライト磁石の磁気特性の向上を図っている。特許文献1では(1)仮焼前の原料粉末にカーボンを添加することにより、広範囲の温度域でW型フェライトを生成することが可能となること、(2)カーボンは仮焼時における原料粉末の酸化を防止するために還元剤としての役割を有すること、(3)仮焼後かつ微粉砕前にカーボンを添加することにより、乾燥温度の最適範囲が高温側に広がり、優れた最大エネルギ積((BH)max)を安定して得ることができること、がカーボンの添加理由として挙げられている。
上述したように、W型フェライト磁石等の酸化物焼結体を製造する際に、カーボンを添加することで還元作用や磁気特性の向上という効果が期待できる。特に、Fe2W型フェライト磁石では、二価鉄の量を所望の値に制御することが困難であるが、特許文献1にて提案されているように仮焼後にカーボンを添加することで二価鉄の量の制御が容易となる。
しかしながら、微細な粉末として添加されるカーボンは凝集しやすく、そのために偏析する。焼結に供される前の成形体に偏析した状態のカーボン粉末が存在すると、焼結後に得られる酸化物焼結体は焼結密度が低いものとなってしまう。偏析したカーボン粉末が焼結時に消失することで焼結体中にピンホールが増加し焼結密度が低下してしまうからである。
そこで、本発明はカーボン添加による効果を享受しつつ、焼結密度を向上させるための技術を提供することを課題とする。
しかしながら、微細な粉末として添加されるカーボンは凝集しやすく、そのために偏析する。焼結に供される前の成形体に偏析した状態のカーボン粉末が存在すると、焼結後に得られる酸化物焼結体は焼結密度が低いものとなってしまう。偏析したカーボン粉末が焼結時に消失することで焼結体中にピンホールが増加し焼結密度が低下してしまうからである。
そこで、本発明はカーボン添加による効果を享受しつつ、焼結密度を向上させるための技術を提供することを課題とする。
本発明者はカーボン粉末の偏析を抑制するために、様々な検討を行った。その結果、一般式Cx(OH)yHz(一般式において、4≦x≦100、2≦y≦x、4≦z≦2x)で表される多価アルコールを添加することでカーボン粉末の偏析を抑制することができ、カーボン粉末の分散性が向上することを知見した。すなわち、本発明は、原料粉末とカーボン粉末と一般式Cx(OH)yHz(一般式において、4≦x≦100、2≦y≦x、4≦z≦2x)で表される多価アルコールとを含む混合物を成形する成形工程と、得られた成形体を焼結して焼結体を得る焼結工程とを備えたことを特徴とする酸化物焼結体の製造方法を提供する。多価アルコールは原料粉末を構成する粒子の分散性を低下させることなく、カーボン粉末の偏析を抑制する。このため、焼結時にカーボン粉末が消失しても、ピンホールの増加及びそれに起因する焼結密度の低下を抑制することができる。ここで、酸化物焼結体としては上述したFe2W型フェライトが含まれることはもちろん、他のW型フェライト、さらには他の系のフェライト(例えばM型等の他の六方晶系フェライト、Mn系やNi系等の立方晶系フェライト)も含まれる。そして、フェライト以外の酸化物焼結体、例えば誘電特性を有する焼結体等も本発明の酸化物焼結体に包含される。
本発明において、原料粉末とカーボン粉末と一般式Cx(OH)yHz(一般式において、4≦x≦100、2≦y≦x、4≦z≦2x)で表される多価アルコールとを含む混合物は、撹拌されて得られる。つまり、原料粉末に対してカーボン粉末と多価アルコールを添加するタイミングは同時でもよいし異なっていてもよいが、撹拌されたものを本発明における成形工程で用いるのが望ましい。カーボン粉末の分散性を向上させるためである。
なお、多価アルコールを添加するタイミングによっては独立した撹拌工程は必須ではない。例えば粉砕工程で多価アルコールを添加する場合には、粉砕とともに撹拌という処理が進行するため、独立した撹拌工程は要しない。
なお、多価アルコールを添加するタイミングによっては独立した撹拌工程は必須ではない。例えば粉砕工程で多価アルコールを添加する場合には、粉砕とともに撹拌という処理が進行するため、独立した撹拌工程は要しない。
上述した原料粉末として磁性フェライト相を発現しうるものを選択することで、本発明における酸化物焼結体を磁性フェライト相を有するものとすることができる。磁性フェライト相を有する酸化物焼結体は、着磁を行うことでフェライト磁石として使用可能である。ここで、磁石特性の1つとして、残留磁束密度(Br)が挙げられる。Br=σs×密度×磁気的配向度(なお、σsは単位重量当たりの飽和磁化)という式から明らかであるように、残留磁束密度(Br)に大きな影響を与える因子として密度がある。したがって、残留磁束密度(Br)の高いW型フェライト磁石を製造するためには、密度を向上させることが1つの鍵となる。上述したように、本発明における酸化物焼結体の製造方法によれば、焼結密度を向上させることができるため、最終的に残留磁束密度(Br)が高いフェライト磁石を得ることができる。
また、本発明における酸化物焼結体としては六方晶W型フェライト、特に組成式:AFe2+ aFe3+ bO27(組成式において、AはSr、Ba及びPbから選択される少なくとも1種の元素、1.1≦a≦2.4、12.3≦b≦16.1である)で表される組成を有するFe2W型フェライトが望ましい。Fe2W型フェライトはハードフェライトとして知られており、上記組成を有するFe2W型フェライトに対して着磁を行うことで、M型フェライトを凌駕する優れた磁気特性、特に残留磁束密度(Br)が高いフェライト磁石を得ることができる。
上述したFe2W型フェライトを得たい場合には、二価鉄の量を制御するために非酸化性雰囲気、例えば窒素雰囲気で成形体を焼結する。この場合に、カーボン粉末は還元剤として有効に寄与する。
本発明によれば、W相を主相とするFe2W型フェライト磁石を得ることができる。ここで、本発明では、W相のモル比が50%以上のときに、W相が主相であると称する。磁気特性の観点から、W相のモル比は70%以上がよく、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。本願におけるモル比は、W型フェライト、M型フェライト、ヘマタイト、スピネルそれぞれの粉末試料を所定比率で混合し、それらのX線回折強度から比較算定することにより算出するものとする(後述する実施例でも同様)。
本発明で使用する多価アルコールとしてはソルビトールやアセチレングリコールが望ましい。
上述したFe2W型フェライトを得たい場合には、二価鉄の量を制御するために非酸化性雰囲気、例えば窒素雰囲気で成形体を焼結する。この場合に、カーボン粉末は還元剤として有効に寄与する。
本発明によれば、W相を主相とするFe2W型フェライト磁石を得ることができる。ここで、本発明では、W相のモル比が50%以上のときに、W相が主相であると称する。磁気特性の観点から、W相のモル比は70%以上がよく、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。本願におけるモル比は、W型フェライト、M型フェライト、ヘマタイト、スピネルそれぞれの粉末試料を所定比率で混合し、それらのX線回折強度から比較算定することにより算出するものとする(後述する実施例でも同様)。
本発明で使用する多価アルコールとしてはソルビトールやアセチレングリコールが望ましい。
以上、酸化物焼結体について詳述したが、一般式Cx(OH)yHz(一般式において、4≦x≦100、2≦y≦x、4≦z≦2x)で表される多価アルコールがカーボン粉末の偏析を抑制する上で有効であるという本発明の知見は、以下の組成物として捉えることもできる。すなわち、本発明は、焼結に供される組成物であって、組成物中に一般式Cx(OH)yHz(一般式において、4≦x≦100、2≦y≦x、4≦z≦2x)で表される多価アルコールが含有されるとともに、カーボン粉末が分散していることを特徴とする組成物を提供する。
上述した一般式において、4≦x≦30である多価アルコールが望ましい。4≦x≦30である多価アルコールとしては、例えばソルビトール,マンニトール,アセチレングリコールが挙げられる。
また上述した一般式において、x=yである多価アルコールが望ましい。x=yである多価アルコールとしては、例えばソルビトールやマンニトールが挙げられる。
上述した一般式において、4≦x≦30である多価アルコールが望ましい。4≦x≦30である多価アルコールとしては、例えばソルビトール,マンニトール,アセチレングリコールが挙げられる。
また上述した一般式において、x=yである多価アルコールが望ましい。x=yである多価アルコールとしては、例えばソルビトールやマンニトールが挙げられる。
この組成物の第1の形態として成形用スラリが挙げられる。湿式磁場成形を採用することで磁気的配向度の高い焼結磁石を得ることができることはすでに知られている。湿式磁場成形には原料粉末等を含むスラリが用いられるが、このスラリとしてカーボン粉末が分散された本発明の成形用スラリを用いることで、最終的に焼結密度及び残留磁束密度が高い焼結磁石を得ることができる。
成形用スラリは液状の組成物であるが、本発明の組成物は固体状の成形体としても捉えることができる。
この成形体は200μm×200μmの視野におけるカーボン粉末のCV値(CV:Coefficient of Variation)が0.5以下と小さく、分散性に優れる。このため、この成形体を焼結に供することで、高い焼結密度を有する酸化物焼結体を得ることができる。よって、酸化物焼結体が磁性を有するものであれば、最終的に残留磁束密度が高い焼結磁石を得ることができる。なお、CV値が小さいほど、カーボン粉末の分散度合いが高いことを示す。また、よく知られているようにCV値は標準偏差を算術平均値で割った値(百分率)である。本発明におけるCV値は後述する実施例の測定条件により求められる値とする。
成形用スラリは液状の組成物であるが、本発明の組成物は固体状の成形体としても捉えることができる。
この成形体は200μm×200μmの視野におけるカーボン粉末のCV値(CV:Coefficient of Variation)が0.5以下と小さく、分散性に優れる。このため、この成形体を焼結に供することで、高い焼結密度を有する酸化物焼結体を得ることができる。よって、酸化物焼結体が磁性を有するものであれば、最終的に残留磁束密度が高い焼結磁石を得ることができる。なお、CV値が小さいほど、カーボン粉末の分散度合いが高いことを示す。また、よく知られているようにCV値は標準偏差を算術平均値で割った値(百分率)である。本発明におけるCV値は後述する実施例の測定条件により求められる値とする。
本発明によれば、カーボン粉末の偏析を抑制することができ、カーボン添加による効果を享受しつつ高密度の酸化物焼結体を得ることができる。本発明をW型フェライト磁石に適用することで、残留磁束密度(Br)の高いW型フェライト磁石を得ることができる。
以下、最良の形態を含め本発明の具体的な実施の形態を説明する。
本発明の酸化物焼結体の製造方法は、製造工程においてカーボン粉末を添加する場合に一般式Cx(OH)yHz(一般式において、4≦x≦100、2≦y≦x、4≦z≦2x)で表される多価アルコールを使用することでカーボン粉末の偏析を抑制し、酸化物焼結体の焼結密度を向上させることを特徴とする。本発明は、各種酸化物焼結体の製造に適用可能であるが、特に顕著な効果が得られることから、以下の説明ではFe2W型フェライト磁石の製造に適用した場合を例にして説明を行う。
本発明の酸化物焼結体の製造方法は、製造工程においてカーボン粉末を添加する場合に一般式Cx(OH)yHz(一般式において、4≦x≦100、2≦y≦x、4≦z≦2x)で表される多価アルコールを使用することでカーボン粉末の偏析を抑制し、酸化物焼結体の焼結密度を向上させることを特徴とする。本発明は、各種酸化物焼結体の製造に適用可能であるが、特に顕著な効果が得られることから、以下の説明ではFe2W型フェライト磁石の製造に適用した場合を例にして説明を行う。
<組成>
本発明をW型フェライト磁石に適用する場合には、以下の組成式からなる主組成とすることが望ましい。
AFe2+ aFe3+ bO27・・・式(1)
式(1)中、
1.1≦a≦2.4、
12.3≦b≦16.1である。また、Aは、Sr、BaおよびPbから選択される少なくとも1種の元素である。
本発明をW型フェライト磁石に適用する場合には、以下の組成式からなる主組成とすることが望ましい。
AFe2+ aFe3+ bO27・・・式(1)
式(1)中、
1.1≦a≦2.4、
12.3≦b≦16.1である。また、Aは、Sr、BaおよびPbから選択される少なくとも1種の元素である。
Aとしては、SrおよびBaの少なくとも1種が好ましい。なお、上記式(1)においてa及びbはそれぞれモル比を表す。
次に、上記組成式におけるaおよびbの限定理由を説明する。
上記式(1)において、Fe2+の割合を示すaは、1.1≦a≦2.4とする。aが1.1未満になると、W相よりも飽和磁化(4πIs)が低いM相、Fe2O3(ヘマタイト)相が生成して、飽和磁化(4πIs)が低下してしまう。一方、aが2.4を超えると、スピネル相が生成して、保磁力(HcJ)が低下してしまう。よって、aを1.1≦a≦2.4の範囲とする。aの好ましい範囲は1.5≦a≦2.4、より好ましい範囲は1.6≦a≦2.1、より一層好ましい範囲は1.6≦a≦2.0である。
また、Fe2+およびFe3+の割合を示すbは、12.3≦b≦16.1の範囲とする。1.1≦a≦2.4の範囲のとき、bが12.3未満になると、スピネル相が生成して保磁力(HcJ)が低下する。一方、bが16.1を超えると、M相、Fe2O3(ヘマタイト)相が生成して、飽和磁化(4πIs)が低下してしまう。よって、bを12.3≦b≦16.1の範囲とする。bの好ましい範囲は13.0≦b≦15.8、より好ましい範囲は14.4≦b≦15.0である。
上記式(1)において、Fe2+の割合を示すaは、1.1≦a≦2.4とする。aが1.1未満になると、W相よりも飽和磁化(4πIs)が低いM相、Fe2O3(ヘマタイト)相が生成して、飽和磁化(4πIs)が低下してしまう。一方、aが2.4を超えると、スピネル相が生成して、保磁力(HcJ)が低下してしまう。よって、aを1.1≦a≦2.4の範囲とする。aの好ましい範囲は1.5≦a≦2.4、より好ましい範囲は1.6≦a≦2.1、より一層好ましい範囲は1.6≦a≦2.0である。
また、Fe2+およびFe3+の割合を示すbは、12.3≦b≦16.1の範囲とする。1.1≦a≦2.4の範囲のとき、bが12.3未満になると、スピネル相が生成して保磁力(HcJ)が低下する。一方、bが16.1を超えると、M相、Fe2O3(ヘマタイト)相が生成して、飽和磁化(4πIs)が低下してしまう。よって、bを12.3≦b≦16.1の範囲とする。bの好ましい範囲は13.0≦b≦15.8、より好ましい範囲は14.4≦b≦15.0である。
W型フェライト磁石の組成は、蛍光X線定量分析などにより測定することができる。また、本発明は、A元素(Sr,BaおよびPbから選択される少なくとも1種の元素)、Fe以外の元素の含有を排除するものではない。例えば、Fe2W型フェライトにおいてFe2+サイト又はFe3+サイトの一部を他の元素で置換することもできる。またA元素、Fe以外の元素の他、例えばCaCO3、SiO2に起因するCa成分および/又はSi成分を含有してもよい。これら成分を含むことにより、保磁力(HcJ)、結晶粒径の調整等を行うことができ、高いレベルで保磁力(HcJ)及び残留磁束密度(Br)を兼備するフェライト焼結磁石を得ることができる。
W型フェライト磁石においてCa成分、Si成分をCaCO3、SiO2換算で、CaCO3:0〜3.0wt%、SiO2:0.2〜1.4wt%の範囲で含むことが望ましい。
SiO2が0.2wt%未満では、SiO2の添加効果が不十分である。また、CaCO3が3.0wt%を超えると磁気特性低下の要因となるCaフェライトを生成するおそれがある。さらに、SiO2が1.4wt%を超えると、残留磁束密度(Br)が低下する傾向にある。以上より、本発明におけるCa成分、Si成分の量はCaCO3、SiO2換算で、CaCO3:0〜3.0wt%、SiO2:0.2〜1.4wt%とする。CaCO3及びSiO2は、各々、CaCO3:0.2〜1.5wt%、SiO2:0.2〜1.0wt%の範囲で含むことが望ましく、さらにはCaCO3:0.3〜1.2wt%、SiO2:0.3〜0.8wt%の範囲で含むことが望ましい。
SiO2が0.2wt%未満では、SiO2の添加効果が不十分である。また、CaCO3が3.0wt%を超えると磁気特性低下の要因となるCaフェライトを生成するおそれがある。さらに、SiO2が1.4wt%を超えると、残留磁束密度(Br)が低下する傾向にある。以上より、本発明におけるCa成分、Si成分の量はCaCO3、SiO2換算で、CaCO3:0〜3.0wt%、SiO2:0.2〜1.4wt%とする。CaCO3及びSiO2は、各々、CaCO3:0.2〜1.5wt%、SiO2:0.2〜1.0wt%の範囲で含むことが望ましく、さらにはCaCO3:0.3〜1.2wt%、SiO2:0.3〜0.8wt%の範囲で含むことが望ましい。
本発明による酸化物焼結体としてのW型フェライト磁石は所定の形状に加工され、以下に示すような幅広い用途に使用される。例えば、フュエールポンプ用、パワーウインド用、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)用、ファン用、ワイパ用、パワーステアリング用、アクティブサスペンション用、スタータ用、ドアロック用、電動ミラー用等の自動車用モータとして用いることができる。また、FDDスピンドル用、VTRキャプスタン用、VTR回転ヘッド用、VTRリール用、VTRローディング用、VTRカメラキャプスタン用、VTRカメラ回転ヘッド用、VTRカメラズーム用、VTRカメラフォーカス用、ラジカセ等キャプスタン用、CD,LD,MDスピンドル用、CD,LD,MDローディング用、CD,LD光ピックアップ用等のOA、AV機器用モータとして用いることができる。また、エアコンコンプレッサー用、冷蔵庫コンプレッサー用、電動工具駆動用、扇風機用、電子レンジファン用、電子レンジプレート回転用、ミキサ駆動用、ドライヤーファン用、シェーバー駆動用、電動歯ブラシ用等の家電機器用モータとしても用いることができる。さらにまた、ロボット軸、関節駆動用、ロボット主駆動用、工作機器テーブル駆動用、工作機器ベルト駆動用等のFA機器用モータとして用いることも可能である。その他の用途としては、オートバイ用発電器、スピーカ・ヘッドホン用マグネット、マグネトロン管、MRI用磁場発生装置、CD−ROM用クランパ、ディストリビュータ用センサ、ABS用センサ、燃料・オイルレベルセンサ、マグネットラッチ、アイソレータ等に好適に使用される。
図1は酸化物焼結体としてFe2W型フェライト磁石を得る場合の製造工程を示すフローチャートである。
本発明のFe2W型フェライト磁石の製造方法は、図1に示すように配合工程(ステップS100)、仮焼工程(ステップS110)、粗粉砕工程(ステップS120)、微粉砕工程(ステップS130)、磁場成形工程(ステップS140)、成形体熱処理工程(ステップS150)、焼成工程(ステップS160)を含む。Fe2+は大気中ではFe3+になりやすいため、本発明のFe2W型フェライト磁石の製造方法では、還元剤として働くカーボン粉末を少なくとも磁場成形工程(ステップS140)の前に添加するとともに、カーボン粉末の偏析を抑制するのに有効な一般式Cx(OH)yHz(一般式において、4≦x≦100、2≦y≦x、4≦z≦2x)で表される多価アルコールを少なくとも磁場成形工程(ステップS140)前に添加する。また、Fe2+を安定制御するために熱処理温度、焼成雰囲気等を制御しており、焼成工程(ステップS160)は非酸化性雰囲気で行われるとともに、この工程においてカーボン粉末は還元剤として働く。
以下、各工程について説明する。
本発明のFe2W型フェライト磁石の製造方法は、図1に示すように配合工程(ステップS100)、仮焼工程(ステップS110)、粗粉砕工程(ステップS120)、微粉砕工程(ステップS130)、磁場成形工程(ステップS140)、成形体熱処理工程(ステップS150)、焼成工程(ステップS160)を含む。Fe2+は大気中ではFe3+になりやすいため、本発明のFe2W型フェライト磁石の製造方法では、還元剤として働くカーボン粉末を少なくとも磁場成形工程(ステップS140)の前に添加するとともに、カーボン粉末の偏析を抑制するのに有効な一般式Cx(OH)yHz(一般式において、4≦x≦100、2≦y≦x、4≦z≦2x)で表される多価アルコールを少なくとも磁場成形工程(ステップS140)前に添加する。また、Fe2+を安定制御するために熱処理温度、焼成雰囲気等を制御しており、焼成工程(ステップS160)は非酸化性雰囲気で行われるとともに、この工程においてカーボン粉末は還元剤として働く。
以下、各工程について説明する。
<配合工程(ステップS100)>
各原料を秤量後、湿式アトライタ等で1〜3時間程度混合、粉砕処理する。原料粉末としては酸化物、または焼結により酸化物となる化合物を用いることができる。なお、ここではSrCO3粉末及びFe2O3粉末を用いる例を説明するが、A元素は炭酸塩として添加する形態のほかに酸化物として添加することもできる。Feについても同様でFe2O3(ヘマタイト)以外の化合物として添加することもできる。さらに、A元素とFeを含む化合物を用いることも可能である。
各原料を秤量後、湿式アトライタ等で1〜3時間程度混合、粉砕処理する。原料粉末としては酸化物、または焼結により酸化物となる化合物を用いることができる。なお、ここではSrCO3粉末及びFe2O3粉末を用いる例を説明するが、A元素は炭酸塩として添加する形態のほかに酸化物として添加することもできる。Feについても同様でFe2O3(ヘマタイト)以外の化合物として添加することもできる。さらに、A元素とFeを含む化合物を用いることも可能である。
<仮焼工程(ステップS110)>
配合工程(ステップS100)で得られた混合粉末材料を1100〜1350℃で仮焼する。この仮焼を窒素ガスやアルゴンガスなどの非酸化性雰囲気中で行うことにより、Fe2O3(ヘマタイト)粉末中のFe3+が還元されてW型フェライトを構成するFe2+が発生し、W型フェライトが構成される。但し、この段階でFe2+の量を十分に確保できなければ、W相の他にM相またはヘマタイト相が存在することになる。なお、W主相またはW単相のフェライトを得るためには、酸素分圧を調整することが有効である。酸素分圧を下げると、Fe3+が還元されてFe2+が生成するためである。
配合工程(ステップS100)で得られた混合粉末材料を1100〜1350℃で仮焼する。この仮焼を窒素ガスやアルゴンガスなどの非酸化性雰囲気中で行うことにより、Fe2O3(ヘマタイト)粉末中のFe3+が還元されてW型フェライトを構成するFe2+が発生し、W型フェライトが構成される。但し、この段階でFe2+の量を十分に確保できなければ、W相の他にM相またはヘマタイト相が存在することになる。なお、W主相またはW単相のフェライトを得るためには、酸素分圧を調整することが有効である。酸素分圧を下げると、Fe3+が還元されてFe2+が生成するためである。
<粗粉砕工程(ステップS120)>
仮焼体は一般に顆粒状なので、これを解砕するために粗粉砕することが好ましい。粗粉砕工程(ステップS120)では、振動ミル等を用い、平均粒径が0.5〜10μmになるまで粉砕する。
仮焼体は一般に顆粒状なので、これを解砕するために粗粉砕することが好ましい。粗粉砕工程(ステップS120)では、振動ミル等を用い、平均粒径が0.5〜10μmになるまで粉砕する。
<微粉砕工程(ステップS130)>
続く、微粉砕工程(ステップS130)では、粗粉砕粉末をアトライタやボールミル、或いはジェットミルなどによって、湿式或いは乾式粉砕して1μm以下、好ましくは0.1〜0.8μmに粉砕する。粉砕方法にもよるが、粗粉砕粉末をボールミルで湿式粉砕する場合には、粗粉砕粉末200gに対して30〜50時間粉砕すればよい。なお、保磁力の向上や結晶粒径の調整のために、微粉砕に先立ってCaCO3とSiO2、或いはさらにAl2O3やCr2O3等の粉末を添加してもよい。
続く、微粉砕工程(ステップS130)では、粗粉砕粉末をアトライタやボールミル、或いはジェットミルなどによって、湿式或いは乾式粉砕して1μm以下、好ましくは0.1〜0.8μmに粉砕する。粉砕方法にもよるが、粗粉砕粉末をボールミルで湿式粉砕する場合には、粗粉砕粉末200gに対して30〜50時間粉砕すればよい。なお、保磁力の向上や結晶粒径の調整のために、微粉砕に先立ってCaCO3とSiO2、或いはさらにAl2O3やCr2O3等の粉末を添加してもよい。
還元効果のあるカーボン粉末は、この微粉砕工程(ステップS130)で添加することができる。
カーボン粉末の添加は、W型フェライトを主相または単相とする上で有効である。カーボン粉末を添加した後には攪拌が必要であるが、攪拌方法は湿式または乾式のいずれでもよい。この攪拌はカーボンを添加した直後に行う必要はないが、遅くとも磁場成形工程(ステップ140)前に行えばよい。
ここで、カーボン粉末の添加量(以下、「カーボン量」という)は原料粉末に対して0.15〜0.45wt%とする。カーボン量をこの範囲とすることで、後述する焼成工程(ステップS160)におけるカーボン粉末の還元剤としての効果を十分に期待することができるとともに、カーボン粉末添加なしの場合よりも高い飽和磁化(σs)を得ることができる。本発明をFe2W型フェライト磁石に適用する場合のさらに望ましいカーボン量は0.2〜0.45wt%、より望ましいカーボン量は0.3〜0.4wt%である。なお、本発明を磁石以外の酸化物焼結体に適用する場合には、飽和磁化(σs)を考慮する必要がないため、カーボン量は0.05〜1.0wt%程度とすればよい。
添加するカーボン粉末のサイズは0.01〜1.0μm程度とすればよい。
カーボン粉末の添加は、W型フェライトを主相または単相とする上で有効である。カーボン粉末を添加した後には攪拌が必要であるが、攪拌方法は湿式または乾式のいずれでもよい。この攪拌はカーボンを添加した直後に行う必要はないが、遅くとも磁場成形工程(ステップ140)前に行えばよい。
ここで、カーボン粉末の添加量(以下、「カーボン量」という)は原料粉末に対して0.15〜0.45wt%とする。カーボン量をこの範囲とすることで、後述する焼成工程(ステップS160)におけるカーボン粉末の還元剤としての効果を十分に期待することができるとともに、カーボン粉末添加なしの場合よりも高い飽和磁化(σs)を得ることができる。本発明をFe2W型フェライト磁石に適用する場合のさらに望ましいカーボン量は0.2〜0.45wt%、より望ましいカーボン量は0.3〜0.4wt%である。なお、本発明を磁石以外の酸化物焼結体に適用する場合には、飽和磁化(σs)を考慮する必要がないため、カーボン量は0.05〜1.0wt%程度とすればよい。
添加するカーボン粉末のサイズは0.01〜1.0μm程度とすればよい。
本発明では、カーボン粉末の偏析を抑制するために、一般式Cx(OH)yHz(一般式において、4≦x≦100、2≦y≦x、4≦z≦2x)で表される多価アルコールを添加することを特徴とする。
上記一般式において、炭素数xは4以上とする。炭素数xが3以下または100を超えると、カーボン粉末の偏析抑制効果が不十分となる。よって、炭素数xは4〜100とする。炭素数xの望ましい値は4〜30、より望ましくは4〜20、より一層望ましくは4〜12である。上記一般式において炭素数xが4〜30である多価アルコールとしては、ソルビトール,マンニトール,キシリトール,1,6−ヘキサンジオール,1,2-ヘキサンジオール,アセチレングリコールなどが挙げられる。
上記一般式において、炭素数xは4以上とする。炭素数xが3以下または100を超えると、カーボン粉末の偏析抑制効果が不十分となる。よって、炭素数xは4〜100とする。炭素数xの望ましい値は4〜30、より望ましくは4〜20、より一層望ましくは4〜12である。上記一般式において炭素数xが4〜30である多価アルコールとしては、ソルビトール,マンニトール,キシリトール,1,6−ヘキサンジオール,1,2-ヘキサンジオール,アセチレングリコールなどが挙げられる。
本発明で用いるアルコールは「多価」アルコールであることから、水酸基数yは2以上である。水酸基数yは多い方が好ましく、水酸基数yと炭素数xとが一致することが最も好ましい。
なお、多価アルコールは2種以上を併用してもよい。また、本発明で用いる多価アルコールに加えて、他の公知の分散剤をさらに使用してもよい。
また、上記一般式において、飽和結合に限らず不飽和結合を含んでいてもよい。また基本骨格は鎖式であっても環式であってもよいが、鎖式であることが好ましい。水素数zは多価アルコールの水酸基数yとその構造によって決定されるが、多価アルコールの構造が不飽和結合または環状を含まない場合に2x+2=y+zが成立する。さらに上記一般式において水酸基数yが2以上であるため、水素数zはy=2のとき最大値2xとなる。水素数zの最小値は4である。z=4の化合物としては、例えば図3中、R1=R2=R3=R4=Hの場合の化合物が挙げられる。なお、R1,R2,R3,R4はそれぞれHまたは炭化水素基である。
また、上記一般式において、飽和結合に限らず不飽和結合を含んでいてもよい。また基本骨格は鎖式であっても環式であってもよいが、鎖式であることが好ましい。水素数zは多価アルコールの水酸基数yとその構造によって決定されるが、多価アルコールの構造が不飽和結合または環状を含まない場合に2x+2=y+zが成立する。さらに上記一般式において水酸基数yが2以上であるため、水素数zはy=2のとき最大値2xとなる。水素数zの最小値は4である。z=4の化合物としては、例えば図3中、R1=R2=R3=R4=Hの場合の化合物が挙げられる。なお、R1,R2,R3,R4はそれぞれHまたは炭化水素基である。
本発明で用いる多価アルコールとしては、炭素数x=6であるソルビトール、マンニトールが特に好ましい。ここで、後述する実施例で用いたソルビトールの構造を図2に示しておく。
また、アセチレングリコールを本発明における多価アルコールとして用いることにより、密度向上に加え、配向度向上という効果も得ることができる。
ここでアセチレングリコールは、炭素−炭素間の三重結合を持つ有機物の中で、三重結合をはさんで両側に水酸基を1つずつ持つ物質を指す。この構造を図3に示しておく。
ここでアセチレングリコールは、炭素−炭素間の三重結合を持つ有機物の中で、三重結合をはさんで両側に水酸基を1つずつ持つ物質を指す。この構造を図3に示しておく。
なお、本発明で用いる多価アルコールは、粉砕によるメカノケミカル反応でその構造が変化する可能性がある。さらに例えば加水分解反応などにより、本発明で用いる多価アルコールと同一の有機化合物を生成するような化合物、例えばエステルなどを添加することによっても本発明の目的を達成できる可能性もある。
多価アルコールの添加量は、原料粉末に対して0.05〜5.0wt%とする。多価アルコールの添加量が0.05wt%未満ではカーボン粉末の偏析抑制効果が不十分となる。また本発明で使用する多価アルコールは、原料粉末を構成する粒子の配向度を向上させるという機能も有するが、その添加量が0.05wt%未満では原料粉末を構成する粒子の配向度の向上も不十分となる。
一方、多価アルコールの添加量が5.0wt%を超えると、成形体や焼結体にクラックが発生しやすくなる。よって、多価アルコールの添加量は、原料粉末に対して0.05〜5.0wt%とする。望ましい多価アルコールの添加量は0.1〜3.0wt%、より望ましくは0.3〜2.0wt%、より一層望ましくは0.5〜1.5wt%である。
ここで、本発明が推奨する多価アルコールを原料粉末に対して0.05〜5.0wt%の範囲で添加することにより、焼結後に得られる酸化物焼結体の密度が向上する。酸化物焼結体の密度向上の理由としては以下のことが挙げられる。すなわち、還元剤として添加したカーボンはピンホール発生の原因となり、焼結体密度を低下させるが、本発明では多価アルコールを添加してカーボンの分散性を高めることでカーボンによる還元効果を享受しながら、焼結体中のピンホール発生を抑制し、高密度の酸化物焼結体を得ることができる。
より詳細には、酸化物焼結体(W型フェライト等)の製造工程でカーボンを使用する場合に、カーボンが焼結体密度を低下させる原因となる。成形体中のカーボンは焼成工程で酸化され、固体のカーボンは気体の二酸化炭素となって消失する。カーボンの消失により焼成前においてカーボンの占有した空間が空き、この「空き空間」が焼成後に残る場合(ピンホール)に焼結体密度に影響を及ぼすこととなる。「空き空間」が占める体積はカーボンの添加量に依存するものの、カーボンが凝集していると発生する「空き空間」は大きく、カーボンが分散している場合には発生する「空き空間」が小さくなる。空き空間が十分小さいと、焼成時の収縮により焼成途中で空き空間が無くなるため、焼結体にはピンホールが残存しない。つまり、カーボンが凝集してあるサイズに達すると、焼成時の収縮によっても空き空間は無くならず焼結体にピンホールが残存するのに対して、本発明が推奨する多価アルコールを添加することによりピンホールが残存しうるサイズまではカーボンが凝集しないため、本発明によれば焼結後に得られる酸化物焼結体の密度が向上する。
一方、多価アルコールの添加量が5.0wt%を超えると、成形体や焼結体にクラックが発生しやすくなる。よって、多価アルコールの添加量は、原料粉末に対して0.05〜5.0wt%とする。望ましい多価アルコールの添加量は0.1〜3.0wt%、より望ましくは0.3〜2.0wt%、より一層望ましくは0.5〜1.5wt%である。
ここで、本発明が推奨する多価アルコールを原料粉末に対して0.05〜5.0wt%の範囲で添加することにより、焼結後に得られる酸化物焼結体の密度が向上する。酸化物焼結体の密度向上の理由としては以下のことが挙げられる。すなわち、還元剤として添加したカーボンはピンホール発生の原因となり、焼結体密度を低下させるが、本発明では多価アルコールを添加してカーボンの分散性を高めることでカーボンによる還元効果を享受しながら、焼結体中のピンホール発生を抑制し、高密度の酸化物焼結体を得ることができる。
より詳細には、酸化物焼結体(W型フェライト等)の製造工程でカーボンを使用する場合に、カーボンが焼結体密度を低下させる原因となる。成形体中のカーボンは焼成工程で酸化され、固体のカーボンは気体の二酸化炭素となって消失する。カーボンの消失により焼成前においてカーボンの占有した空間が空き、この「空き空間」が焼成後に残る場合(ピンホール)に焼結体密度に影響を及ぼすこととなる。「空き空間」が占める体積はカーボンの添加量に依存するものの、カーボンが凝集していると発生する「空き空間」は大きく、カーボンが分散している場合には発生する「空き空間」が小さくなる。空き空間が十分小さいと、焼成時の収縮により焼成途中で空き空間が無くなるため、焼結体にはピンホールが残存しない。つまり、カーボンが凝集してあるサイズに達すると、焼成時の収縮によっても空き空間は無くならず焼結体にピンホールが残存するのに対して、本発明が推奨する多価アルコールを添加することによりピンホールが残存しうるサイズまではカーボンが凝集しないため、本発明によれば焼結後に得られる酸化物焼結体の密度が向上する。
多価アルコールとしてソルビトールを選択し、その添加量を原料粉末に対して0.05〜5.0wt%とすることで、4500G以上の残留磁束密度(Br)及び94%以上の磁気的配向度を示す焼結磁石を得ることも可能となる。望ましいソルビトールの添加量は0.1〜3.0wt%、より望ましくは0.3〜2.0wt%、より一層望ましくは0.5〜1.8wt%である。ソルビトールの添加量を0.1〜3.0wt%とすることで、4500G以上の残留磁束密度(Br)、94%以上の磁気的配向度、及び3000Oe以上の保磁力(HcJ)及び94%以上の磁気的配向度を示す焼結磁石を得ることができる。
なお、上記したソルビトールは常温で固体として存在するため、粉末として添加することができる。
なお、上記したソルビトールは常温で固体として存在するため、粉末として添加することができる。
また多価アルコールとしてアセチレングリコールを選択することも、高磁気特性の焼結磁石を得る上で有効である。アセチレングリコールを主体とするアセチレングリコール系分散剤の添加量は、原料粉末に対して0.1〜2.0wt%とすることが望ましい。さらに望ましい添加量は0.3〜1.0wt%である。アセチレングリコール系分散剤の添加量を原料粉末に対して0.3〜1.0wt%とすることで、4500G以上の残留磁束密度(Br)及び3300Oe以上の保磁力(HcJ)を示す焼結磁石を得ることも可能となる。しかも、後述する実施例で示すように、アセチレングリコール系分散剤の添加は、磁気的配向度を向上させる上でも有効である。
後述する磁場成形工程(ステップS140)前であれば、多価アルコールを添加するタイミングは特に限定されるものではなく、例えば、以下のタイミングで添加することができる。
(1)仮焼工程(ステップS110)後かつ粗粉砕工程(ステップS120)前
(2)粗粉砕工程(ステップS120)時
(3)粗粉砕工程(ステップS120)後かつ微粉砕工程(ステップS130)前
(4)微粉砕工程(ステップS130)時
(5)微粉砕工程(ステップS130)後かつ磁場成形工程(ステップS140)前
(2)粗粉砕工程(ステップS120)時
(3)粗粉砕工程(ステップS120)後かつ微粉砕工程(ステップS130)前
(4)微粉砕工程(ステップS130)時
(5)微粉砕工程(ステップS130)後かつ磁場成形工程(ステップS140)前
いずれの場合であっても、磁場成形工程(ステップS140)で用いられる成形用スラリ中に多価アルコールが存在することになるが、カーボン粉末の偏析抑制という効果を存分に発揮させるために、多価アルコールを添加した後には撹拌を行う。この撹拌は、必ずしも多価アルコールを添加した直後に行う必要はなく、遅くとも磁場成形工程(ステップS140)前に行えばよい。
また複数回に分けて多価アルコールを添加してもよい。例えば、一部は上記(4)のタイミングで添加するとともに、残部を上記(5)のタイミングで添加してもよい。多価アルコールを複数回に分けて添加する場合には、合計添加量が上述した望ましい範囲、つまり原料粉末に対して0.05〜5.0wt%となるように各回の添加量を設定すればよい。
また複数回に分けて多価アルコールを添加してもよい。例えば、一部は上記(4)のタイミングで添加するとともに、残部を上記(5)のタイミングで添加してもよい。多価アルコールを複数回に分けて添加する場合には、合計添加量が上述した望ましい範囲、つまり原料粉末に対して0.05〜5.0wt%となるように各回の添加量を設定すればよい。
添加した多価アルコールのほとんどは磁場成形工程(ステップS140)後に行われる成形体熱処理工程(ステップS150)で分解除去される。成形体熱処理工程(ステップS150)において分解除去されずに残存した多価アルコールについても、続く焼成工程(ステップS160)で分解除去される。
なお、微粉砕工程(ステップS130)時にカーボン粉末を添加する場合について上述したが、カーボン粉末についても多価アルコールと同様に上記(1)〜(5)のいずれかの段階で添加すればよい。また、複数回に分けてカーボン粉末を添加してもよい。
なお、微粉砕工程(ステップS130)時にカーボン粉末を添加する場合について上述したが、カーボン粉末についても多価アルコールと同様に上記(1)〜(5)のいずれかの段階で添加すればよい。また、複数回に分けてカーボン粉末を添加してもよい。
本発明は後述する磁場成形工程(ステップS140)を乾式で行うことを排除するものではないが、磁気的配向度を高くするためには、湿式成形を行うことが好ましい。よって、以下では湿式成形用スラリの調製について説明した上で、続く磁場成形工程(ステップS140)の説明を行う。
<成形用スラリの調製>
続く磁場成形工程(ステップS140)に先立ち、成形用スラリを調製する。湿式粉砕後のスラリを遠心分離やフィルタープレス等によって濃縮することで成形用スラリ(組成物)を得ることができる。上記の工程で多価アルコールが添加されていない場合には、濃縮前又は濃縮後に成形用スラリに多価アルコールを添加し、撹拌することで成形用スラリを得てもよい。濃縮後の成形用スラリ中の30〜80wt%をフェライト磁石粉末が占めることが望ましい。
なお、濃縮前の成形用スラリ及び濃縮後の成形用スラリのいずれもであっても、本発明における組成物(成形用スラリ)に含まれる。また、分散媒として水を用いることができるが、トルエンやキシレン等の非水系の分散媒を用いてもよい。
続く磁場成形工程(ステップS140)に先立ち、成形用スラリを調製する。湿式粉砕後のスラリを遠心分離やフィルタープレス等によって濃縮することで成形用スラリ(組成物)を得ることができる。上記の工程で多価アルコールが添加されていない場合には、濃縮前又は濃縮後に成形用スラリに多価アルコールを添加し、撹拌することで成形用スラリを得てもよい。濃縮後の成形用スラリ中の30〜80wt%をフェライト磁石粉末が占めることが望ましい。
なお、濃縮前の成形用スラリ及び濃縮後の成形用スラリのいずれもであっても、本発明における組成物(成形用スラリ)に含まれる。また、分散媒として水を用いることができるが、トルエンやキシレン等の非水系の分散媒を用いてもよい。
<磁場成形工程(ステップS140)>
次いで、成形用スラリを用いて磁場成形を行う。成形圧力は0.1〜0.5ton/cm2 程度、印加磁場は5〜15kOe程度とすればよい。
次いで、成形用スラリを用いて磁場成形を行う。成形圧力は0.1〜0.5ton/cm2 程度、印加磁場は5〜15kOe程度とすればよい。
<成形体熱処理工程(ステップS150)>
本工程では、成形体を100〜450℃、より好ましくは200〜350℃の低温で、1〜4時間保持する熱処理を行う。この熱処理を大気中で行うことにより、Fe2+の一部が酸化されてFe3+になる。つまり、本工程では、Fe2+からFe3+への反応をある程度進行させることにより、Fe2+量を所定量に制御するのである。また、本工程において分散媒が除去されるとともに、多価アルコールのほとんどが分解除去される。
本工程では、成形体を100〜450℃、より好ましくは200〜350℃の低温で、1〜4時間保持する熱処理を行う。この熱処理を大気中で行うことにより、Fe2+の一部が酸化されてFe3+になる。つまり、本工程では、Fe2+からFe3+への反応をある程度進行させることにより、Fe2+量を所定量に制御するのである。また、本工程において分散媒が除去されるとともに、多価アルコールのほとんどが分解除去される。
<焼成工程(ステップS160)>
続く焼成工程(ステップS160)では、成形体を1100〜1270℃、より好ましくは1160〜1240℃の温度で0.5〜3時間、焼成する。焼成雰囲気は、仮焼工程(ステップS110)と同様の理由により、非酸化性雰囲気中とする。また、本工程において、カーボン粉末が消失する。
続く焼成工程(ステップS160)では、成形体を1100〜1270℃、より好ましくは1160〜1240℃の温度で0.5〜3時間、焼成する。焼成雰囲気は、仮焼工程(ステップS110)と同様の理由により、非酸化性雰囲気中とする。また、本工程において、カーボン粉末が消失する。
以上の工程を経ることにより、本発明の酸化物焼結体としてのFe2W型フェライト磁石を得ることができる。本発明では、一般式Cx(OH)yHz(一般式において、4≦x≦100、2≦y≦x、4≦z≦2x)で表される多価アルコールを添加してカーボン粉末の偏析を抑制するようにした。このため、焼成工程後に得られる本発明の酸化物焼結体は5.05g/cm3以上という高い焼結密度を有する。しかも、本発明の酸化物焼結体としてのFe2W型フェライト磁石によれば、92%以上の磁気的配向度、4500G以上の残留磁束密度(Br)を得ることができる。また、上述した組成及び工程を経ることで、W相を主相とする焼結磁石、さらにはW相を単相とするFe2W型フェライト磁石を得ることができる。また本発明の焼結磁石によれば、W相を主相としつつ3200Oe以以上の保磁力(HcJ)を得ることができる。それに加え、72emu/g以上、さらには74emu/g以上、望ましくは75emu/g以上の飽和磁化(σs)を得ることができる。
図4は、本発明の酸化物焼結体としてのFe2W型フェライト磁石の他の製造工程を示すフローチャートである。図4に示した配合工程(ステップS100)、仮焼工程(ステップS110)、粗粉砕工程(ステップS120)、磁場成形工程(ステップS140)、成形体熱処理工程(ステップS150)、焼成工程(ステップS160)は上述した手順で行えばよい。よって、以下では図4に示したフローチャートにおいて特徴的な部分である第1の微粉砕工程(ステップS200)、粉末熱処理工程(ステップS210)、第2の微粉砕工程(ステップS220)について説明する。
<第1の微粉砕工程(ステップS200)>
第1の微粉砕工程(ステップS200)では粗粉砕粉末をアトライタやボールミル、或いはジェットミルなどによって、湿式或いは乾式粉砕して0.8μm以下、好ましくは0.1〜0.4μm、より好ましくは0.1〜0.2μmに粉砕する。この第1の微粉砕は、粗粉をなくすことを目的として行うものである。
粉砕方法にもよるが、粗粉砕粉末をボールミルで湿式粉砕する場合には、粗粉砕粉末200gあたり60〜100時間処理すればよい。
なお、保磁力の向上や結晶粒径の調整のために、第1の微粉砕工程(ステップS200)に先立ってCaCO3とSiO2、或いはさらにSrCO3、BaCO3、Al2O3、Cr2O3等の粉末を添加してもよい。
第1の微粉砕工程(ステップS200)では粗粉砕粉末をアトライタやボールミル、或いはジェットミルなどによって、湿式或いは乾式粉砕して0.8μm以下、好ましくは0.1〜0.4μm、より好ましくは0.1〜0.2μmに粉砕する。この第1の微粉砕は、粗粉をなくすことを目的として行うものである。
粉砕方法にもよるが、粗粉砕粉末をボールミルで湿式粉砕する場合には、粗粉砕粉末200gあたり60〜100時間処理すればよい。
なお、保磁力の向上や結晶粒径の調整のために、第1の微粉砕工程(ステップS200)に先立ってCaCO3とSiO2、或いはさらにSrCO3、BaCO3、Al2O3、Cr2O3等の粉末を添加してもよい。
<粉末熱処理工程(ステップS210)>
粉末熱処理工程(ステップS210)では、微粉砕粉末を600〜1200℃、より好ましくは700〜1000℃で、1秒〜10時間保持する熱処理を行う。
第1の微粉砕工程により0.1μm未満の超微粉が多く生じるが、超微粉が存在すると後続の成形工程で不具合が生じることがある。例えば、湿式成形時に超微粉が多いと水抜けが悪く成形できない等の不具合が生じる。そこで、本実施の形態では成形工程に先立ち熱処理を行う。つまり、この熱処理は、第1の微粉砕工程で生じた0.1μm未満の超微粉を微粉(0.1〜0.2μm)と反応させて減少させることを目的として行うものである。この熱処理により超微粉が減少し、成形性を向上させることができる。
なお、熱処理雰囲気は、仮焼工程(ステップS110)と同様の理由により、非酸化性雰囲気中とする。
粉末熱処理工程(ステップS210)では、微粉砕粉末を600〜1200℃、より好ましくは700〜1000℃で、1秒〜10時間保持する熱処理を行う。
第1の微粉砕工程により0.1μm未満の超微粉が多く生じるが、超微粉が存在すると後続の成形工程で不具合が生じることがある。例えば、湿式成形時に超微粉が多いと水抜けが悪く成形できない等の不具合が生じる。そこで、本実施の形態では成形工程に先立ち熱処理を行う。つまり、この熱処理は、第1の微粉砕工程で生じた0.1μm未満の超微粉を微粉(0.1〜0.2μm)と反応させて減少させることを目的として行うものである。この熱処理により超微粉が減少し、成形性を向上させることができる。
なお、熱処理雰囲気は、仮焼工程(ステップS110)と同様の理由により、非酸化性雰囲気中とする。
<第2の微粉砕工程(ステップS220)>
続く第2の微粉砕工程(ステップS220)では熱処理された微粉砕粉末をアトライタやボールミル、或いはジェットミルなどによって、湿式或いは乾式粉砕して0.8μm以下、好ましくは0.1〜0.4μm、より好ましくは0.1〜0.2μmに粉砕する。この第2の微粉砕は、粒度調整やネッキングの除去、添加物の分散性向上を目的として行うものである。
粉砕方法にもよるが、ボールミルで湿式粉砕する場合には、微粉砕粉末200gあたり10〜40時間処理すればよい。
続く第2の微粉砕工程(ステップS220)では熱処理された微粉砕粉末をアトライタやボールミル、或いはジェットミルなどによって、湿式或いは乾式粉砕して0.8μm以下、好ましくは0.1〜0.4μm、より好ましくは0.1〜0.2μmに粉砕する。この第2の微粉砕は、粒度調整やネッキングの除去、添加物の分散性向上を目的として行うものである。
粉砕方法にもよるが、ボールミルで湿式粉砕する場合には、微粉砕粉末200gあたり10〜40時間処理すればよい。
第2の微粉砕工程(ステップS220)を行った後、上述した手順で磁場成形工程(ステップS140)、成形体熱処理工程(ステップS150)及び焼成工程(ステップS160)を行うことで、本発明の酸化物焼結体としてのFe2W型フェライト磁石を得ることができる。図4に示したフローチャートに基づき、微粉砕を第1の微粉砕工程(ステップS200)と第2の微粉砕工程(ステップS220)に分けて行うとともに、第1の微粉砕工程(ステップS200)と第2の微粉砕工程(ステップS220)とのに間に粉末熱処理工程(ステップS210)を実施することで、図1に示した製造工程を経た場合よりも高い磁気特性を示すFe2W型フェライト磁石を得ることができる。具体的には、5.05g/cm3以上という高い焼結密度を有するとともに、96%以上の磁気的配向度、4600G以上、さらには4700G以上の残留磁束密度(Br)を得ることができる。また、上述した組成及び図4に示した工程を経ることで、W相を主相とする焼結磁石、さらにはW相を単相とするFe2W型フェライト磁石を得ることができる。
本発明の焼結磁石によれば、W相を主相としつつ95%以上、さらには96%以上の磁気的配向度、4500G以上、さらには4600G以上の残留磁束密度(Br)を得ることができる。また、上述した組成及び図4に示した工程を経ることで、W相を主相とする焼結磁石、さらにはW相を単相とするFe2W型フェライト磁石を得ることができる。
本発明の焼結磁石によれば、W相を主相としつつ3200Oe以上の保磁力(HcJ)を得ることができる。それに加え、70emu/g以上、さらには75emu/g以上の飽和磁化(σs)を得ることができる。
本発明の焼結磁石によれば、W相を主相としつつ95%以上、さらには96%以上の磁気的配向度、4500G以上、さらには4600G以上の残留磁束密度(Br)を得ることができる。また、上述した組成及び図4に示した工程を経ることで、W相を主相とする焼結磁石、さらにはW相を単相とするFe2W型フェライト磁石を得ることができる。
本発明の焼結磁石によれば、W相を主相としつつ3200Oe以上の保磁力(HcJ)を得ることができる。それに加え、70emu/g以上、さらには75emu/g以上の飽和磁化(σs)を得ることができる。
以下、本発明を具体的実施例に基づいて説明する。
実施例1では図1に示したフローチャートに基づき、多価アルコールとしてソルビトールを選択してFe2W型フェライト磁石を作製した。
まず、原料粉末として、Fe2O3粉末(1次粒子径:0.3μm)、SrCO3粉末(1次粒子径:2μm)を準備した。この原料粉末を秤量した後、湿式アトライタで2時間混合、粉砕した。
実施例1では図1に示したフローチャートに基づき、多価アルコールとしてソルビトールを選択してFe2W型フェライト磁石を作製した。
まず、原料粉末として、Fe2O3粉末(1次粒子径:0.3μm)、SrCO3粉末(1次粒子径:2μm)を準備した。この原料粉末を秤量した後、湿式アトライタで2時間混合、粉砕した。
次いで、仮焼を行った。仮焼は管状炉を用い、N2ガス雰囲気中で1時間保持する条件で行った。なお、加熱保持温度は、1300℃とし、加熱保持温度までの昇温及び加熱保持温度からの降温の速度は5℃/分とした。粉砕は、振動ミルにより粗粉砕及びボールミルによる微粉砕の2段階で行った。振動ミルにより粗粉砕は、仮焼体220gについて10分間処理し、ボールミルによる微粉砕は粗粉砕粉末210gに対して水400mlを添加して40時間処理するというものである。
(試料No.1〜5)
この微粉砕の段階で、粗粉砕粉末に対してSiO2粉末(1次粒子径:0.01μm)を0.3wt%、CaCO3粉末(1次粒子径:1μm)を0.7wt%それぞれ添加するとともに、多価アルコールとしてソルビトール(1次粒子径:10μm)を0.9wt%添加した。また、カーボン粉末(1次粒子径:0.05μm)の添加量は0.1wt%(試料No.1)、0.2wt%(試料No.2)、0.3wt%(試料No.3)、0.4wt%(試料No.4)、0.5wt%(試料No.5)の5種類とした。
ボールミルを用いて40時間湿式粉砕して湿式成形用スラリを得た。次に、この湿式成形用スラリを遠心分離器で濃縮し、濃縮された湿式成形用スラリを用いて磁場中成形を行った。なお、印加した磁界(縦磁場)は12kOe(1000kA/m)であり、成形体は直径30mm、高さ15mmの円柱状である。この成形体を300℃で3時間大気中で熱処理した後、窒素中で昇温速度5℃/分、最高温度1190℃で1時間焼成し、5種類の焼結体を得た。
得られた焼結体の組成は、上記組成式においてa=2.0及びb=16.0であった。なお、組成分析は理学電機(株)の蛍光X線定量分析装置SIMULTIX3550を用いて行った(後述の実施例2〜4も同様)。
(試料No.1〜5)
この微粉砕の段階で、粗粉砕粉末に対してSiO2粉末(1次粒子径:0.01μm)を0.3wt%、CaCO3粉末(1次粒子径:1μm)を0.7wt%それぞれ添加するとともに、多価アルコールとしてソルビトール(1次粒子径:10μm)を0.9wt%添加した。また、カーボン粉末(1次粒子径:0.05μm)の添加量は0.1wt%(試料No.1)、0.2wt%(試料No.2)、0.3wt%(試料No.3)、0.4wt%(試料No.4)、0.5wt%(試料No.5)の5種類とした。
ボールミルを用いて40時間湿式粉砕して湿式成形用スラリを得た。次に、この湿式成形用スラリを遠心分離器で濃縮し、濃縮された湿式成形用スラリを用いて磁場中成形を行った。なお、印加した磁界(縦磁場)は12kOe(1000kA/m)であり、成形体は直径30mm、高さ15mmの円柱状である。この成形体を300℃で3時間大気中で熱処理した後、窒素中で昇温速度5℃/分、最高温度1190℃で1時間焼成し、5種類の焼結体を得た。
得られた焼結体の組成は、上記組成式においてa=2.0及びb=16.0であった。なお、組成分析は理学電機(株)の蛍光X線定量分析装置SIMULTIX3550を用いて行った(後述の実施例2〜4も同様)。
(試料No.6)
カーボン粉末を添加しなかった以外は、上記の試料No.1〜5と同様の条件で焼結体を作製した。
(試料No.7)
カーボン粉末及びソルビトールのいずれも添加しなかった以外は、上記の試料No.1〜5と同様の条件で焼結体を作製した。
(試料No.8〜12)
ソルビトールを添加しなかった以外は、上記の試料No.1〜5と同様の条件で焼結体を作製した。試料No.8〜12におけるカーボン粉末の添加量は、それぞれ試料No.1〜5におけるカーボン粉末の添加量と対応している。
(試料No.13)
ソルビトールを添加せず、かつカーボン粉末の添加量を0.7wt%とした以外は、上記の試料No.1〜5と同様の条件で焼結体を作製した。
カーボン粉末を添加しなかった以外は、上記の試料No.1〜5と同様の条件で焼結体を作製した。
(試料No.7)
カーボン粉末及びソルビトールのいずれも添加しなかった以外は、上記の試料No.1〜5と同様の条件で焼結体を作製した。
(試料No.8〜12)
ソルビトールを添加しなかった以外は、上記の試料No.1〜5と同様の条件で焼結体を作製した。試料No.8〜12におけるカーボン粉末の添加量は、それぞれ試料No.1〜5におけるカーボン粉末の添加量と対応している。
(試料No.13)
ソルビトールを添加せず、かつカーボン粉末の添加量を0.7wt%とした以外は、上記の試料No.1〜5と同様の条件で焼結体を作製した。
試料No.1〜13の焼結体についてそれぞれ焼結密度を測定した。その結果を表1及び図5に示す。なお、図5は試料No.13を除く試料No.1〜12の焼結密度をプロットしたものである。
図5に示すように、ソルビトール無添加の場合は、カーボン量の増加に伴い焼結密度が低下し、カーボン量が0.4wt%になると焼結密度が5.0g/cm3を下回る。ところが、ソルビトール添加の場合には、カーボン量が増加しても5.05g/cm3以上の焼結密度を示す。
以上の結果から、ソルビトールを添加することで、カーボン添加に伴う焼結密度の低下を抑制できることがわかった。
以上の結果から、ソルビトールを添加することで、カーボン添加に伴う焼結密度の低下を抑制できることがわかった。
続いて、上記した試料No.2、4、6、7、9、11、13の焼結体を光学顕微鏡で観察した。ソルビトール無添加の試料No.7、9、11、13の顕微鏡写真を図6(a)〜(d)に、ソルビトールを添加した試料No.6、2、4の顕微鏡写真を図7(a)〜(c)にそれぞれ示す。
図6(a)〜(d)に示すように、ソルビトール無添加の場合にはカーボン量が増加するに伴い、顕微鏡写真中の黒点が増加する。この黒点は焼結時にカーボン粉末が消失した後にできたピンホールである。カーボン粉末が偏析したまま消失するとピンホールができ、顕微鏡写真において黒点が顕著に観察されることとなるが、図6(c)、(d)に示すように試料No.11(カーボン量:0.4wt%)、試料No.13(カーボン量:0.7wt%)では大小の黒点が多数観察された。
一方、図7(a)〜(c)に示すように、ソルビトールを添加した場合にはカーボン量が増加してもほとんど黒点が増えていない。ソルビトールを添加した場合にはカーボン粉末の偏析が抑制されているためにカーボン粉末が消失する際にもピンホールができにくく、そのためにカーボン量が増加してもほとんど黒点が増えていないものと考えられる。
以上の顕微鏡写真の観察結果は、先に示した図5の結果と対応している。
図6(a)〜(d)に示すように、ソルビトール無添加の場合にはカーボン量が増加するに伴い、顕微鏡写真中の黒点が増加する。この黒点は焼結時にカーボン粉末が消失した後にできたピンホールである。カーボン粉末が偏析したまま消失するとピンホールができ、顕微鏡写真において黒点が顕著に観察されることとなるが、図6(c)、(d)に示すように試料No.11(カーボン量:0.4wt%)、試料No.13(カーボン量:0.7wt%)では大小の黒点が多数観察された。
一方、図7(a)〜(c)に示すように、ソルビトールを添加した場合にはカーボン量が増加してもほとんど黒点が増えていない。ソルビトールを添加した場合にはカーボン粉末の偏析が抑制されているためにカーボン粉末が消失する際にもピンホールができにくく、そのためにカーボン量が増加してもほとんど黒点が増えていないものと考えられる。
以上の顕微鏡写真の観察結果は、先に示した図5の結果と対応している。
次に、ソルビトールの添加の有無を除けば同一条件で作製された2種類の成形体について、EPMAによる元素マッピングの結果から、解析画面におけるカーボン粉末の分散性をCV値(変動係数)にて評価した。この2種類の成形体は、カーボン添加量がともに0.4wt%である試料No.4、11(焼結に供される前の成形体)である。なお、CV値は、全分析点の標準偏差を全分析点の平均値で割った値(百分率)であり、この値が小さいほど分散性が優れていることを示す。また、EPMAは(株)島津製作所製EPMA−1600を用い、測定条件を以下の通りとした。各成形体の解析画面及びCV値を図8、9に示す。なお、図8、9はそれぞれ200μm×200μmの視野、500μm×500μmの視野における解析画面をそれぞれ示している。
図8におけるCV値の測定条件
加速電圧:15kV
ビームサイズ:1μm
照射電流:0.13μA
照射時間:40msec/点
測定点:X→200ポイント(1.000μmステップ)
Y→200ポイント(1.000μmステップ)
範囲:200μm×200μm
加速電圧:15kV
ビームサイズ:1μm
照射電流:0.13μA
照射時間:40msec/点
測定点:X→200ポイント(1.000μmステップ)
Y→200ポイント(1.000μmステップ)
範囲:200μm×200μm
図9におけるCV値の測定条件
加速電圧:15kV
ビームサイズ:1μm
照射電流:0.13μA
照射時間:40msec/点
測定点:X→250ポイント(2.000μmステップ)
Y→250ポイント(2.000μmステップ)
範囲:500μm×500μm
加速電圧:15kV
ビームサイズ:1μm
照射電流:0.13μA
照射時間:40msec/点
測定点:X→250ポイント(2.000μmステップ)
Y→250ポイント(2.000μmステップ)
範囲:500μm×500μm
図8に示すように、200μm×200μmの視野においてソルビトール無添加の場合にはCV値が0.606であるのに対し、ソルビトールを添加した場合にはCV値がわずか0.136である。また、図9に示すように、500μm×500μmの視野においてソルビトール無添加の場合にはCV値が0.206であるのに対し、ソルビトールを添加した場合にはCV値が0.169である。つまり、図8、9から、ソルビトールを添加した場合には、ソルビトール無添加の場合に比べてカーボン粉末の分散性が向上することがわかる。このように、ソルビトールを添加することによる良好な分散性が、焼結時のピンホール及びそれに起因する焼結密度の低下を抑制する原因とみられる。
以上の結果から、ソルビトールを添加した場合には焼結前の段階でカーボン粉末が分散されていることが確認できた。そして、ソルビトールを添加することで、200μm×200μmの視野におけるカーボン粉末のCV値を0.5以下、さらには0.3以下、望ましくは0.2以下とすることができることがわかった。
以上の結果から、ソルビトールを添加した場合には焼結前の段階でカーボン粉末が分散されていることが確認できた。そして、ソルビトールを添加することで、200μm×200μmの視野におけるカーボン粉末のCV値を0.5以下、さらには0.3以下、望ましくは0.2以下とすることができることがわかった。
続いて、上記した試料No.1〜13の焼結体についてそれぞれ飽和磁化(σs)を測定した。その結果を表1及び図10に示す。飽和磁化(σs)の測定は、VSM(振動式磁力計)を用いて最大印加磁界20kOeで測定した磁化容易軸方向の磁化曲線及び磁化困難軸方向の磁化曲線に基づいて求めている。なお、図10は試料No.13を除く試料No.1〜12の飽和磁化(σs)をプロットしたものである。
図10から、ソルビトールの添加の有無を問わず、カーボン量が0.3〜0.4wt%のときに飽和磁化(σs)が最大となることがわかった。ここで、図5に示したように、ソルビトールを添加した場合にはカーボン量を増加しても焼結密度が低下するという不具合を招かない。よって、カーボン量を0.15〜0.45wt%、望ましくは0.2〜0.45wt%とすることで、高い飽和磁化(σs)及び高密度という特性を兼備することができる。
次いで、上記した試料No.1〜12の焼結体について磁気的配向度を測定した。また試料No.1〜5の焼結体については保磁力(HcJ)、残留磁束密度(Br)及び角型比(Hk/HcJ)も測定した。その結果を表1に示す。なお、保磁力(HcJ)及び残留磁束密度(Br)は、得られた焼結体の上下面を加工した後、最大印加磁場25kOeのBHトレーサを用いて評価した。また、Hkは、磁気ヒステリシスループの第2象限において磁束密度が残留磁束密度(Br)の90%になるときの外部磁界強度である。Hkが低いと、高い最大エネルギ積が得られない。Hk/HcJは、磁石性能の指標となるものであり、磁気ヒステリシスループの第2象限における角張りの度合い表す。
磁気的配向度はBHトレーサにより測定した。
磁気的配向度はBHトレーサにより測定した。
表1から、本発明による試料No.1〜5は焼結密度が高いのみならず、各磁気特性についても良好な値を得ていることがわかる。
続いて、試料No.1〜5について、X線回折装置を用いて相状態を同定した。X線回折の結果、いずれもW相のモル比が70%以上であることが確認された。なお、X線回折の条件は以下の通りである。また本実施の形態におけるモル比は、W型フェライト、M型フェライト、ヘマタイト、スピネルそれぞれの粉末試料を所定比率で混合し、それらのX線回折強度から比較算定することにより算出した。
X線発生装置:3kW、管電圧:45kV、管電流:40mA
サンプリング幅:0.02deg、走査速度:4.00deg/min
発散スリット:1.00deg、散乱スリット:1.00deg
受光スリット:0.30mm
サンプリング幅:0.02deg、走査速度:4.00deg/min
発散スリット:1.00deg、散乱スリット:1.00deg
受光スリット:0.30mm
実施例2では図4に示したフローチャートに基づき、多価アルコールとしてソルビトールを選択してFe2W型フェライト磁石を作製した。
まず、原料粉末として、Fe2O3粉末(1次粒子径:0.3μm)、SrCO3粉末(1次粒子径:2μm)を準備した。この原料粉末を秤量した後、湿式アトライタで2時間混合、粉砕した。
まず、原料粉末として、Fe2O3粉末(1次粒子径:0.3μm)、SrCO3粉末(1次粒子径:2μm)を準備した。この原料粉末を秤量した後、湿式アトライタで2時間混合、粉砕した。
次いで、実施例1と同一の条件で仮焼及び振動ミルによる粗粉砕を行った。微粉砕はボールミルにより2段階で行った。第1の微粉砕は粗粉砕粉末210gに対して水400mlを添加して88時間処理するというものである。第1の微粉砕後に、微粉砕粉末をN2ガス雰囲気中、800℃で1時間保持する条件で熱処理を行った。なお、加熱保持温度までの昇温及び加熱保持温度からの降温の速度は5℃/分とした。続いて、ボールミルを用いて25時間湿式粉砕するという第2の微粉砕を行い、湿式成形用スラリを得た。なお、第2の微粉砕時に、第1の微粉砕が行なわれた微粉砕粉末に対しSiO2粉末(1次粒子径:0.01μm)を0.6wt%、CaCO3粉末(1次粒子径:1μm)を0.7wt%、SrCO3粉末(1次粒子径:2μm)を0.7wt%、カーボン粉末(1次粒子径:0.05μm)を0.4wt%それぞれ添加するとともに、多価アルコールとしてソルビトール(1次粒子径:10μm)を0.9wt%添加した。次に、この湿式成形用スラリを実施例1と同様に濃縮し、濃縮された湿式成形用スラリを用い、実施例1と同様の条件で磁場中成形、成形体熱処理及び焼成し、1種類の焼結体(試料No.14)を得た。得られた焼結体の組成は、上記組成式においてa=2.0及びb=14.8であった。
(試料No.15)
ソルビトールを添加しなかった以外は、上記の試料No.14と同様の条件で焼結体を作製した。
ソルビトールを添加しなかった以外は、上記の試料No.14と同様の条件で焼結体を作製した。
得られた試料No.14、15について実施例1と同様の条件で焼結密度、飽和磁化(σs)、保磁力(HcJ)、残留磁束密度(Br)、角型比(Hk/HcJ)、磁気的配向度を測定した。その結果を表1に示す。
表1の試料No.4と14との比較から、図4に示した第1の微粉砕(ステップS200)、粉末熱処理(ステップS210)、第2の微粉砕(ステップS220)の各工程を経ることで、図1に示したフローチャートに基づき焼結磁石を得た場合よりも高い特性の焼結磁石を得ることができることがわかる。
次に、試料No.14と試料No.15の各特性を比較すると、ソルビトールを添加した試料No.14の方がソルビトール無添加の試料No.15よりも高い焼結密度、飽和磁化(σs)、残留磁束密度(Br)及び磁気的配向度を得ていることがわかる。本発明による試料No.14によれば、5.06g/cm3以上という高い焼結密度を有するとともに、3000Oe以上の保磁力(HcJ)、75emu/g以上の飽和磁化(σs)、4700G以上の残留磁束密度(Br)、80%以上の角型比(Hk/HcJ)、96%以上の磁気的配向度という磁気特性を兼備することができる。
次に、試料No.14と試料No.15の各特性を比較すると、ソルビトールを添加した試料No.14の方がソルビトール無添加の試料No.15よりも高い焼結密度、飽和磁化(σs)、残留磁束密度(Br)及び磁気的配向度を得ていることがわかる。本発明による試料No.14によれば、5.06g/cm3以上という高い焼結密度を有するとともに、3000Oe以上の保磁力(HcJ)、75emu/g以上の飽和磁化(σs)、4700G以上の残留磁束密度(Br)、80%以上の角型比(Hk/HcJ)、96%以上の磁気的配向度という磁気特性を兼備することができる。
また試料No.14について、X線回折装置を用いて実施例1と同様の条件で相状態を同定した。X線回折の結果、W相のモル比が70%以上であることが確認された。
ソルビトールの添加量に伴う磁気特性等の変動を確認するために行った実験を実施例3として示す。実施例3では図4に示したフローチャートに基づき、Fe2W型フェライト磁石を作製した。また、実施例3ではA元素としてSr及びBaを選択した。
第2の微粉砕時に、第1の微粉砕が行なわれた微粉砕粉末に対しSiO2粉末(1次粒子径:0.01μm)を0.6wt%、CaCO3粉末(1次粒子径:1μm)を0.7wt%、BaCO3粉末(1次粒子径:2μm)を1.75wt%、カーボン粉末(1次粒子径:0.05μm)を0.4wt%それぞれ添加するとともに、多価アルコールとしてソルビトール(1次粒子径:10μm)を0.6wt%、0.9wt%、1.2wt%、1.5wt%添加した点を除き、実施例2と同様の手順で湿式成形用スラリを得た。この湿式成形用スラリを用い、実施例1と同様の条件で磁場中成形、成形体熱処理及び焼成し、4種類の焼結体(試料No.16:ソルビトール0.6wt%添加、試料No.17:ソルビトール0.9wt%添加、試料No.18:ソルビトール1.2wt%添加、試料No.19:ソルビトール1.5wt%添加)を得た。
得られた焼結体の組成は、上記組成式においてa=2.0及びb=13.7であった。なお、SrとBaとの比はSr:Ba=0.88:0.12であった。
得られた焼結体の組成は、上記組成式においてa=2.0及びb=13.7であった。なお、SrとBaとの比はSr:Ba=0.88:0.12であった。
(試料No.20)
ソルビトールを添加しなかった以外は、上記の試料No.16〜19と同様の条件で焼結体を作製した。
ソルビトールを添加しなかった以外は、上記の試料No.16〜19と同様の条件で焼結体を作製した。
得られた試料No.16〜20について実施例1と同様の条件で焼結密度、保磁力(HcJ)、残留磁束密度(Br)、角型比(Hk/HcJ)、磁気的配向度を測定した。その結果を図11〜15にそれぞれ示す。
また、試料No.16〜20については実施例1と同様の条件で飽和磁化(σs)も測定した。その結果を表1に示す。
また、試料No.16〜20については実施例1と同様の条件で飽和磁化(σs)も測定した。その結果を表1に示す。
図11から、ソルビトールの添加量が増えるにつれて焼結密度も向上することがわかる。
また図12〜15から、ソルビトールを添加することで、保磁力(HcJ)、残留磁束密度(Br)、角型比(Hk/HcJ)及び磁気的配向度が向上することが確認できた。
また図12〜15から、ソルビトールを添加することで、保磁力(HcJ)、残留磁束密度(Br)、角型比(Hk/HcJ)及び磁気的配向度が向上することが確認できた。
さらに、表1に示すように、本発明による試料No.16〜19によれば、5.05g/cm3以上という高い焼結密度を有するとともに、3300Oe以上の保磁力(HcJ)、74.5emu/g以上の飽和磁化(σs)、4500G以上の残留磁束密度(Br)、70%以上の角型比(Hk/HcJ)、95%以上の磁気的配向度という磁気特性を兼備することができる。特に、本発明による試料No.17〜19によれば、3400Oe以上の保磁力(HcJ)、74.5emu/g以上の飽和磁化(σs)、4600G以上の残留磁束密度(Br)、80%以上の角型比(Hk/HcJ)、96%以上の磁気的配向度という磁気特性を兼備することができる。
ここで、表1の試料No.14と17との比較から、A元素としてSr及びBaを選択することで、A元素としてSrのみを選択した場合よりも高い特性の焼結磁石を得ることができることがわかる。
ここで、表1の試料No.14と17との比較から、A元素としてSr及びBaを選択することで、A元素としてSrのみを選択した場合よりも高い特性の焼結磁石を得ることができることがわかる。
また試料No.16〜19について、X線回折装置を用いて実施例1と同様の条件で相状態を同定した。X線回折の結果、W相のモル比が70%以上であることが確認された。
実施例4では図4に示したフローチャートに基づき、多価アルコールとしてアセチレングリコールを選択してFe2W型フェライト磁石を作製した。
微粉砕の段階で、粗粉砕粉末に対してSiO2粉末(1次粒子径:0.01μm)を0.6wt%、CaCO3粉末(1次粒子径:1μm)を0.7wt%、カーボン粉末(1次粒子径:0.05μm)を0.4wt%、SrCO3を0.35wt%、BaCO3を1.4wt%それぞれ添加するとともに、アセチレングリコール系分散剤であるPD−202(日信化学工業(株)製)を添加した。この点を除き、実施例2と同様の条件で磁場中成形、成形体熱処理及び焼成し、4種類の焼結体(試料No.21:アセチレングリコール系分散剤0.3wt%添加、試料No.22:アセチレングリコール系分散剤0.6wt%添加、試料No.23:アセチレングリコール系分散剤1.2wt%添加、試料No.24:アセチレングリコール系分散剤1.8wt%添加)を得た。なお、表2中、分散剤添加量とはPD−202の量ではなく、PD−202中に含まれるアセチレングリコール系分散剤の量である。
微粉砕の段階で、粗粉砕粉末に対してSiO2粉末(1次粒子径:0.01μm)を0.6wt%、CaCO3粉末(1次粒子径:1μm)を0.7wt%、カーボン粉末(1次粒子径:0.05μm)を0.4wt%、SrCO3を0.35wt%、BaCO3を1.4wt%それぞれ添加するとともに、アセチレングリコール系分散剤であるPD−202(日信化学工業(株)製)を添加した。この点を除き、実施例2と同様の条件で磁場中成形、成形体熱処理及び焼成し、4種類の焼結体(試料No.21:アセチレングリコール系分散剤0.3wt%添加、試料No.22:アセチレングリコール系分散剤0.6wt%添加、試料No.23:アセチレングリコール系分散剤1.2wt%添加、試料No.24:アセチレングリコール系分散剤1.8wt%添加)を得た。なお、表2中、分散剤添加量とはPD−202の量ではなく、PD−202中に含まれるアセチレングリコール系分散剤の量である。
(試料No.25)
アセチレングリコール系分散剤を添加しなかった以外は、上記の試料No.21〜24と同様の条件で焼結体を作製した。
(試料No.26)
カーボン粉末及びアセチレングリコール系分散剤のいずれも添加しなかった以外は、上記の試料No.21〜24と同様の条件で焼結体を作製した。
アセチレングリコール系分散剤を添加しなかった以外は、上記の試料No.21〜24と同様の条件で焼結体を作製した。
(試料No.26)
カーボン粉末及びアセチレングリコール系分散剤のいずれも添加しなかった以外は、上記の試料No.21〜24と同様の条件で焼結体を作製した。
得られた焼結体(試料No.21〜26)の組成は、上記組成式においてa=2.0及びb=13.9であった。
また試料No.21〜26の焼結体についてそれぞれ焼結密度を測定した。その結果を表2に示す。またアセチレングリコール系分散剤添加量と焼結密度との関係を図16に示す。
また試料No.21〜26の焼結体についてそれぞれ焼結密度を測定した。その結果を表2に示す。またアセチレングリコール系分散剤添加量と焼結密度との関係を図16に示す。
試料No.25とカーボン粉末の添加量が等しい試料No.21〜24の焼結密度に着目すると、図16に示すようにアセチレングリコール系分散剤を添加した試料No.21〜24は分散剤添加なしの試料No.25よりも高い焼結密度を示す。特に、分散剤の添加量が0.3〜1.2wt%である試料No.21〜23については、5.08g/cm3以上、さらには5.09g/cm3以上と、カーボン粉末を添加しない場合(試料No.26)と同等以上の値を得ている。
以上の結果から、多価アルコールとしてアセチレングリコールを含むアセチレングリコール系分散剤は、カーボン粉末を添加した場合の焼結密度の低下を抑制する上で有効な分散剤であることが確認できた。
以上の結果から、多価アルコールとしてアセチレングリコールを含むアセチレングリコール系分散剤は、カーボン粉末を添加した場合の焼結密度の低下を抑制する上で有効な分散剤であることが確認できた。
続いて、試料No.21〜26の焼結体について保磁力(HcJ)、残留磁束密度(Br)、角型比(Hk/HcJ)及び磁気的配向度を測定した。その結果を表2に示す。また分散剤添加量と磁気的配向度との関係を図17に、分散剤添加量と残留磁束密度(Br)との関係を図18にそれぞれ示す。なお、保磁力(HcJ)、残留磁束密度(Br)、角型比(Hk/HcJ)及び磁気的配向度の測定条件は実施例1と同様である。
図17に示すように、アセチレングリコール系分散剤を添加することにより、アセチレングリコール系分散剤無添加の場合よりも磁気的配向度が向上し、分散剤の添加量が0.4wt%以上になると95%以上、分散剤の添加量が0.5〜1.6wt%の範囲では95.5%以上という高い磁気的配向度を示す。
次に図18を見ると、アセチレングリコール系分散剤を添加することにより、アセチレングリコール系分散剤無添加の場合よりも残留磁束密度(Br)が向上している。これは、図16及び図17に示したように、アセチレングリコール系分散剤を添加することにより焼結密度及び磁気的配向度が向上したためであると考えられる。特に、分散剤の添加量が0.3〜1.2wt%の場合には4490G以上の残留磁束密度(Br)と3300Oe以上の保磁力(HcJ)を兼備していることが注目される。
また表2に示すように、アセチレングリコール系分散剤を添加した場合には、保磁力(HcJ)及び角型比(Hk/HcJ)についても、アセチレングリコール系分散剤無添加の場合よりも高い値を示した。
以上の結果から、多価アルコールであるアセチレングリコールは各磁気特性を劣化させることなく、カーボン添加に起因する焼結密度の低下を抑制することができる有効な添加物であることが確認できた。
次に図18を見ると、アセチレングリコール系分散剤を添加することにより、アセチレングリコール系分散剤無添加の場合よりも残留磁束密度(Br)が向上している。これは、図16及び図17に示したように、アセチレングリコール系分散剤を添加することにより焼結密度及び磁気的配向度が向上したためであると考えられる。特に、分散剤の添加量が0.3〜1.2wt%の場合には4490G以上の残留磁束密度(Br)と3300Oe以上の保磁力(HcJ)を兼備していることが注目される。
また表2に示すように、アセチレングリコール系分散剤を添加した場合には、保磁力(HcJ)及び角型比(Hk/HcJ)についても、アセチレングリコール系分散剤無添加の場合よりも高い値を示した。
以上の結果から、多価アルコールであるアセチレングリコールは各磁気特性を劣化させることなく、カーボン添加に起因する焼結密度の低下を抑制することができる有効な添加物であることが確認できた。
続いて、上記した試料No.25及び試料No.22の焼結体を光学顕微鏡で観察した。アセチレングリコール系分散剤無添加の試料No.25の顕微鏡写真を図19(a)に、アセチレングリコール系分散剤を添加した試料No.22の顕微鏡写真を図19(b)にそれぞれ示す。
図19(a)に示すように、アセチレングリコール系分散剤無添加の場合には、顕微鏡写真中に多くの黒点が観察される。この黒点は焼結時にカーボン粉末が消失した後にできたピンホールであることは上述の通りである。一方、図19(b)に示すように、アセチレングリコール系分散剤を添加した場合には、試料No.25と同様にカーボン量が0.4wt%であっても、ほとんど黒点が観察されない。アセチレングリコール系分散剤を添加した場合にはカーボン粉末の偏析が抑制されているためにカーボン粉末が消失する際にもピンホールができにくく、そのためにカーボン量が0.4wt%と比較的多くてもほとんど黒点が存在しないものと考えられる。
以上の顕微鏡写真の観察結果は、先に示した表2中「焼結密度」の結果と対応している。また試料No.22について、200μm×200μmの視野でCV値を測定した結果、0.141であった。なお、CV値の測定条件は実施例1と同様である。
図19(a)に示すように、アセチレングリコール系分散剤無添加の場合には、顕微鏡写真中に多くの黒点が観察される。この黒点は焼結時にカーボン粉末が消失した後にできたピンホールであることは上述の通りである。一方、図19(b)に示すように、アセチレングリコール系分散剤を添加した場合には、試料No.25と同様にカーボン量が0.4wt%であっても、ほとんど黒点が観察されない。アセチレングリコール系分散剤を添加した場合にはカーボン粉末の偏析が抑制されているためにカーボン粉末が消失する際にもピンホールができにくく、そのためにカーボン量が0.4wt%と比較的多くてもほとんど黒点が存在しないものと考えられる。
以上の顕微鏡写真の観察結果は、先に示した表2中「焼結密度」の結果と対応している。また試料No.22について、200μm×200μmの視野でCV値を測定した結果、0.141であった。なお、CV値の測定条件は実施例1と同様である。
次に、試料No.21〜24について、X線回折装置を用いて相状態を同定した。X線回折の結果、いずれもW相のモル比が70%以上であることが確認された。なお、X線回折の条件は実施例1と同様である。
Claims (15)
- 原料粉末と、カーボン粉末と、一般式Cx(OH)yHz(前記一般式において、4≦x≦100、2≦y≦x、4≦z≦2x)で表される多価アルコールとを含む混合物を成形する成形工程と、
得られた成形体を焼結して焼結体を得る焼結工程と、
を備えたことを特徴とする酸化物焼結体の製造方法。 - 前記混合物は撹拌されて得られることを特徴とする請求項1に記載の酸化物焼結体の製造方法。
- 前記酸化物焼結体は磁性フェライト相を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化物焼結体の製造方法。
- 前記酸化物焼結体は組成式:AFe2+ aFe3+ bO27(前記組成式において、AはSr、Ba及びPbから選択される少なくとも1種の元素、1.1≦a≦2.4、12.3≦b≦16.1である)で表される組成を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の酸化物焼結体の製造方法。
- 前記焼結工程において前記成形体は非酸化性雰囲気で焼結されることを特徴とする請求項4に記載の酸化物焼結体の製造方法。
- 前記酸化物焼結体は六方晶W型フェライトが主相をなすことを特徴とする請求項4又は5に記載の酸化物焼結体の製造方法。
- 前記多価アルコールはソルビトールであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の酸化物焼結体の製造方法。
- 前記ソルビトールの添加量は原料粉末に対して0.1〜3.0wt%であることを特徴とする請求項7に記載の酸化物焼結体の製造方法。
- 前記多価アルコールはアセチレングリコールであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の酸化物焼結体の製造方法。
- 焼結に供される組成物であって、
前記組成物中に一般式Cx(OH)yHz(前記一般式において、4≦x≦100、2≦y≦x、4≦z≦2x)で表される多価アルコールが含有されるとともに、カーボン粉末が分散していることを特徴とする組成物。 - 前記一般式において、4≦x≦30であることを特徴とする請求項10に記載の組成物。
- 前記一般式において、x=yであることを特徴とする請求項10又は11に記載の組成物。
- 前記組成物は成形用スラリであることを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載の組成物。
- 前記組成物は成形体であることを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載の組成物。
- 200μm×200μmの視野における前記カーボン粉末のCV値(CV:Coefficient of Variation)は0.5以下であることを特徴とする請求項14に記載の組成物。
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JP2004159501A JP2005179175A (ja) | 2003-11-28 | 2004-05-28 | 酸化物焼結体の製造方法、組成物 |
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CN102615283A (zh) * | 2012-02-17 | 2012-08-01 | 湖南航天工业总公司 | 一种辐向取向烧结钐钴整体磁环的烧结方法 |
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