JP2002293615A - 異方性酸化物磁性体の製造方法 - Google Patents
異方性酸化物磁性体の製造方法Info
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Abstract
磁性体を製造する際に、環境面やコスト面で有利な、水
を使用する湿式成形法を利用する場合において、湿式成
形時の磁場配向性を改善することにより、高特性の異方
性酸化物磁性体を得る。 【解決手段】 酸化物磁性体粉末と水とを含むスラリー
を用いて湿式粉砕を行う湿式粉砕工程と、粉砕後にスラ
リーを磁場中で湿式成形して異方性成形体を得る成形工
程とを設け、湿式粉砕工程において、粉砕対象のスラリ
ーに、前記酸化物磁性体粉末とは異なる微粉末を含ま
せ、湿式粉砕工程における粉砕時間全体の20%の時間
が経過した後であって、かつ粉砕終了の20分前まで
に、スラリー中に分散剤としてポリカルボン酸塩を投入
する異方性酸化物磁性体の製造方法。
Description
焼結磁石等の異方性酸化物磁性体の製造方法に関する。
系のSrフェライトやBaフェライトが用いられてお
り、これらの磁石では、磁石性能を向上させるために磁
場中プレスによる異方性化が広く行われている。磁石性
能に大きな影響を与える因子としては、残留磁束密度が
挙げられる。残留磁束密度Brは、 式 Br=(定数)×(単位重量当たりの飽和磁化)×(密
度)×(配向度) で表される。なお、上記式において、単位重量当たりの
飽和磁化(σs)は、物質固有の値である。
製造においては、焼結密度と配向度とが非常に重要であ
る。異方性フェライト焼結磁石は、フェライト粉末を磁
場中で成形し、得られた成形体を焼結することにより製
造される。高い配向度を得るためには、湿式成形が有効
である。一方、大きな保磁力を得るためには、フェライ
ト粉末を構成する粒子のサイズを、単磁区臨界径である
1μm程度以下として単磁区化する必要があるが、この
ような粒子からなるフェライト粉末では、湿式成形法を
用いた場合でも一般的に配向度が低下するという問題が
ある。その原因として、粒子の単磁区化による磁気的凝
集力の増加、磁場方向に向こうとするトルクの減少、表
面積増加による摩擦力の増加、などが挙げられる。
劣化するという問題は、フェライト焼結磁石の製造の場
合に限らず、例えば、針状の軟磁性フェライト等の他の
酸化物磁性体粒子からなる粉末を磁場配向させる場合に
おいても同様である。
た配向度を実現できる分散剤として、例えばグルコン酸
塩を提案している(特開平11−214208号公
報)。この分散剤は、湿式成形の際の分散媒として水を
用いる場合に有効なものである。
ライト焼結磁石等の異方性酸化物磁性体を製造する際
に、環境面やコスト面で有利な、水を使用する湿式成形
法を利用する場合において、湿式成形時の磁場配向性を
改善することにより、高特性の異方性酸化物磁性体を得
ることを目的とする。
(1)〜(4)の本発明により達成される。 (1) 酸化物磁性体粉末と水とを含むスラリーを用い
て湿式粉砕を行う湿式粉砕工程と、粉砕後にスラリーを
磁場中で湿式成形して異方性成形体を得る成形工程とを
設け、湿式粉砕工程において、粉砕対象のスラリーに、
前記酸化物磁性体粉末とは異なる微粉末を含ませ、湿式
粉砕工程における粉砕時間全体の20%の時間が経過し
た後であって、かつ粉砕終了の20分前までに、スラリ
ー中に分散剤としてポリカルボン酸塩を投入する異方性
酸化物磁性体の製造方法。 (2) 前記湿式粉砕工程において、前記酸化物磁性体
粉末と前記微粉末との混合物を、その比表面積が6〜1
1m2/gとなるまで粉砕する上記(1)のフェライト焼結
磁石の製造方法。 (3) スラリー中において、前記酸化物磁性体粉末に
対する前記微粉末の含有量が1〜100体積%である上
記(1)または(2)の異方性酸化物磁性体の製造方
法。 (4) 前記酸化物磁性体粉末が、マグネトプランバイ
ト型六方晶フェライト相を有し、前記微粉末がフェライ
ト構成元素を含有する上記(1)〜(3)のいずれかの
異方性酸化物磁性体の製造方法。
平11−214208号公報において、水系分散媒を用
いる場合に有効な分散剤(グルコン酸塩等)を提案して
いる。同公報では、湿式成形工程の前に設ける湿式粉砕
工程において、フェライト粉末にこれとは異なる微粉末
を混合して粉砕することにより、配向度をさらに向上さ
せている。
カルボン酸アンモニウムを使った比較例が記載されてお
り、この比較例では、グルコン酸カルシウムを分散剤と
して使った場合に比べ、配向度が劣るものとなってい
る。
との混合物を湿式粉砕し、かつ湿式粉砕の際にポリカル
ボン酸アンモニウムを添加する点で上記特開平11−2
14208号公報記載の比較例と同様である。しかし本
発明では、同公報の比較例と異なり、ポリカルボン酸塩
を湿式粉砕の途中でスラリー中に投入する。これによ
り、グルコン酸塩を用いた場合に比べ、より高い配向度
の成形体が得られる。
は、フェライト粉末を含むスラリーにポリカルボン酸ア
ンモニウムを添加した後、磁場中で圧縮成形し、焼結す
ることによってフェライト焼結磁石を製造する方法が記
載されている。同公報には、湿式微粉砕の開始および終
了時点で重炭酸アンモニウムを添加した後、このスラリ
ーにさらにポリカルボン酸アンモニウムを添加して攪拌
し、次いで成形する旨が記載されている。同公報の実施
例においても、湿式微粉砕開始前および終了時に重炭酸
アンモニウムを添加し、次に、ポリカルボン酸アンモニ
ウム塩を添加した後、アトライタに投入して10分間攪
拌し、さらに、ミキサーで攪拌している。
ルボン酸アンモニウムを用いる点で本発明と類似する。
しかし、同公報では、湿式微粉砕終了後にポリカルボン
酸塩を添加しており、この点が本発明とは異なる。ま
た、同公報では、本発明で用いる微粉末をフェライト粉
末に混合せず、フェライト粉末だけを湿式粉砕している
点でも、本発明とは異なる。本発明では、フェライト粉
末と微粉末との混合物を湿式粉砕する場合において、ポ
リカルボン酸塩を粉砕の途中でスラリー中に投入するこ
とにより、高い配向度を実現する。そのため、フェライ
ト粉末だけを湿式粉砕し、かつ、湿式粉砕終了後にポリ
カルボン酸塩を添加する上記公報記載の方法では、本発
明の効果は実現しない。
磁場中で湿式成形する工程を設けることにより異方性酸
化物磁性体を得る。本発明で用いることのできる酸化物
磁性体粉末は特に限定されず、例えば六方晶のM型、W
型、X型、Y型、Z型の六方晶フェライト、形状異方性
を有する針状のγ−Fe2O3、Co含有γ−Fe2O3、
マグネタイト、CrO2等のいずれであってもよい。本
発明が特に有効なのは、異方性フェライト焼結磁石、特
に、六方晶マグネトプランバイト型(M型)フェライト
を主相として有する磁石である。そこで以下では、この
タイプの異方性フェライト焼結磁石について説明する。
Fe2O3(Aは、Sr、Ba、CaおよびPbの少なく
とも1種、好ましくはSrおよびBaの少なくとも1
種、n=4.5〜6.5)で表される組成のものが好ま
しい。このようなフェライトには、さらに、希土類元
素、Si、Al、Ga、Sn、Zn、In、Co、N
i、Ti、Cr、Mn、Cu、Ge、Nb、Zr等が含
有されていてもよい。なお、本明細書において希土類元
素とは、Y、Scおよびランタノイドである。
に有効なのは、希土類元素およびBiから選択される少
なくとも1種の元素をRとし、Coおよび/またはZn
をMとしたとき、前記元素A、元素R、Feおよび元素
Mを含有し、全金属元素量に対するA、R、Feおよび
Mそれぞれの総計の比率がA:1〜13原子%、R:
0.05〜10原子%、Fe:80〜95原子%、M:
0.1〜5原子%である六方晶M型フェライトを主相と
して有するものである。元素Rとしては、La、Pr、
Ndが好ましく、特にLaが好ましく、これにBiを併
用してもよい。
は、まず、出発原料を仮焼することにより、フェライト
粒子からなる仮焼体を製造する。出発原料としては、金
属(A、R、Fe、M等)の酸化物、または焼成により
酸化物となる化合物を用いる。仮焼は、空気中等の酸化
性雰囲気中において、例えば1000〜1350℃で1
秒間〜10時間、特にM型のSrフェライトの微細粒子
からなる仮焼体を得るためには、1000〜1200℃
で1秒間〜3時間程度行えばよい。
もつ顆粒状粒子から構成され、その一次粒子の平均粒径
は0.1〜3μm、特に0.1〜1μmであることが好ま
しい。この平均粒径とは、粒子の最大粒径と最小粒径と
の平均値に対する数平均である。平均粒径が大きすぎる
と配向度の向上効果が得られ難くなる。平均粒径は走査
型電子顕微鏡(SEM)により測定すればよく、通常、
粒子100個以上について平均をとる。その変動係数C
Vは80%以下、一般に10〜70%であることが好ま
しい。なお、六方晶フェライト粒子の場合の好ましい平
均粒径は上記のとおりであるが、針状粒子の場合の平均
粒径も、0.1〜3μm、特に0.1〜1μm程度である
ことが好ましい。
性体粉末の配向度を高くするために、分散剤を含有する
スラリーを用いて湿式成形を行い、かつ、湿式成形工程
の前に湿式粉砕工程を設ける。ただし、上記仮焼体は一
般に顆粒状であるので、仮焼体の粗粉砕ないし解砕のた
めに、湿式粉砕工程の前に乾式粗粉砕工程を設けること
が好ましい。なお、本発明では、共沈法や水熱合成法な
どにより製造した酸化物磁性体粉末を用いることもでき
る。この場合、通常、乾式粗粉砕工程を設ける必要はな
い。以下では、乾式粗粉砕工程とこれに続く湿式粉砕工
程とを設ける場合について説明する。
常、SiO2およびCaCO3が添加される。SiO2お
よびCaCO3は、通常、湿式粉砕工程で添加するが、
乾式粗粉砕工程で添加してもよい。なお、焼結助剤は、
一部を仮焼前に添加してもよく、その場合には特性向上
が認められる。
よる比表面積が2〜10倍程度となるまで粉砕する。粉
砕手段は特に限定されず、例えば乾式振動ミル、乾式ア
トライター(媒体攪拌型ミル)、乾式ボールミル等が使
用できるが、特に乾式振動ミルを用いることが好まし
い。粉砕時間は、粉砕手段に応じて適宜決定すればよ
い。
入して保磁力HcBおよびHcJを小さくする効果もある。
保磁力の低下により粒子の磁気的凝集が抑制される結
果、分散性が向上して配向度が向上する。粒子に導入さ
れた結晶歪は、後の焼結工程において解放されて保磁力
が回復するので、永久磁石とすることができる。
む粉砕用スラリーを調製し、これを用いて湿式粉砕を行
う。本発明では、粉砕用スラリー中に、仮焼粉末とは異
なる微粉末を含有させる。この微粉末は、焼成後にフェ
ライト焼結磁石の特性を妨げないものが好ましく、焼成
によりフェライト構成成分となるもの、すなわちフェラ
イト構成元素を含む酸化物または焼成により酸化物とな
る化合物がより好ましい。具体的には、例えば、酸化
鉄、アルミナ、炭酸ストロンチウム、希土類酸化物、酸
化コバルト、炭酸バリウム、シリカが好ましく、特に、
酸化鉄、アルミナ、希土類酸化物、酸化コバルトが好ま
しい。これらの微粉末は単独で用いてもよく、2種以上
を併用してもよい。2種以上を併用する場合の混合比は
任意である。微粉末を構成する微粒子の形状は、球状、
扁平状、不定形状等のいずれであってもよい。
平均粒径は、好ましくは0.01〜10μm、より好ま
しくは0.05〜5μm、さらに好ましくは0.05〜
1μmであり、また、用いる仮焼体粉末の平均一次粒径
の好ましくは1/100〜10倍、より好ましくは5/
100〜1倍である。なお、微粉末の平均粒径は、構成
粒子の最大径と最小径の平均値に対する数平均である。
また、上記微粉末の窒素吸着法による比表面積は、好ま
しくは0.1〜100m2/g、より好ましくは0.5〜5
0m2/g、さらに好ましくは1〜30m2/g、最も好ましく
は2〜30m2/gである。微粉末は、湿式粉砕終了時まで
に、酸化物磁性体粉末(仮焼体粉末)の平均粒径より小
さい平均粒径となっていることが好ましい。
径は、好ましくは0.01〜2μm、より好ましくは
0.05〜1μm、さらに好ましくは0.05〜0.6
μmであり、湿式粉砕終了時における仮焼体粉末の平均
粒径の好ましくは1/100〜9/10、より好ましく
は5/100〜7/10である。微粉末の平均粒径が大
きすぎると配向度向上効果が小さくなる。一方、微粉末
の平均粒径が小さすぎると、湿式成形が困難になる。な
お、微粉末を複数種併用する場合における微粉末の平均
粒径は、各微粉末の平均粒径に重量比をかけて平均した
値である。窒素吸着法による仮焼体粉末と微粉末との混
合物の比表面積は0.1〜100m2/gであり、より好ま
しくは1〜50m2/g、特に5〜10m2/gであることが好
ましい。
体粒子に対して1〜100体積%、好ましくは5〜70
体積%、より好ましくは10〜50体積%である。添加
量が少なすぎても多すぎても配向度向上効果が小さくな
る。また、添加量が多すぎると、粉砕後の仮焼体粉末と
前記微粉末との混合物の比表面積が大きくなりやすく、
その結果、湿式成形時の水抜け性が悪くなりやすい。水
抜け性が悪いと、生産性が低くなり、また、成形体にク
ラックが発生しやすくなる。
粗粉砕時に添加してもよく、湿式粉砕時の粉砕用スラリ
ー調製の際に添加してもよく、一部を乾式粗粉砕の際に
添加し、残部を湿式粉砕の際に添加してもよい。いずれ
の場合でも、粉砕用スラリー中に微粉末が存在すること
になるので、本発明の効果は実現する。ただし、乾式粗
粉砕時に添加するほうが、配向度向上効果は高くなる。
なお、微粉末を複数回に分けて添加する場合には、合計
添加量が前記した範囲となるように各回の添加量を設定
すればよい。
用スラリー中に分散剤を投入する。本発明で用いる分散
剤は、ポリカルボン酸塩であり、好ましくはポリカルボ
ン酸アンモニウムである。ポリカルボン酸アンモニウム
としては、前記特開平6−112029号公報に記載さ
れている[CH2CH(COONH4)]nが好ましい。
ポリカルボン酸アンモニウムは、重量平均分子量が1
0,000〜80,000であることが好ましい。分散
剤の添加量は、粉砕用スラリー中の固形分に対し、好ま
しくは0.1〜2質量%、より好ましくは0.5〜1質
量%である。分散剤が少なすぎると配向度の向上が不十
分となる。一方、分散剤が多すぎると、成形体や焼結体
にクラックが発生しやすくなる。
全体の20%、好ましくは60%の時間が経過した後で
あって、かつ粉砕終了の20分前、好ましくは30分前
までに、粉砕用スラリー中に投入する。本発明で用いる
分散剤は、粉砕を促進し、しかも、粉砕促進作用の制御
が困難であるため、湿式粉砕開始時点で分散剤をスラリ
ー中に投入しておくと、粉砕が進みすぎ、スラリー中に
超微粒子が多く生成されてしまう。その結果、湿式成形
時の水抜け性の悪化が生じ、また、高配向度が得られな
くなる。一方、分散剤の投入が遅れると、分散剤が仮焼
体粒子表面に十分に吸着ないし固着されにくく、配向度
向上効果が不十分となる。
混合物の窒素吸着法による比表面積が、6〜11m2/g、
特に7〜11m2/gとなるまで湿式粉砕することが好まし
い。粉砕後の比表面積が小さすぎても大きすぎても、高
特性をもつ焼結磁石が得られにくく、また、高配向度も
得られにくい。また、比表面積が大きすぎると、湿式成
形時の水抜け性が悪くなる。なお、粉砕時間、すなわ
ち、適切な比表面積にするために必要な時間は、粉砕手
段、その処理容量などの各種条件に応じて適宜決定すれ
ばよい。すなわち、適正な粉砕時間は、これら各種条件
によって異なる。湿式粉砕に用いる粉砕手段は特に限定
されないが、通常、ボールミル、アトライター、振動ミ
ル等を用いることが好ましい。
投入時期を上記範囲内に設定する。投入時期の限定範囲
の前端を相対時間で規定したのは、分散剤の粉砕促進作
用による粉砕の進みすぎを防ぐためには、分散剤存在下
での粉砕時間を全粉砕時間に対し一定比率以下に抑える
ことが適切だからである。一方、投入時期の限定範囲の
後端を絶対時間で規定したのは、仮焼体粒子表面への分
散剤の吸着ないし固着には、粉砕手段によらず一定の時
間が必要なためである。
70質量%程度であることが好ましい。
形用スラリーを調製する。濃縮は、遠心分離、吸引ろ
過、フィルタープレスなどによって行えばよい。成形用
スラリー中の固形分濃度は、好ましくは60〜95質量
%、より好ましくは70〜85質量%程度である。固形
分濃度が低すぎると、脱水に長時間を要するため、成形
時間が長くなって生産性が低下する。一方、固形分濃度
が高すぎると、高い配向度が得られにくくなる。
式成形を行う。成形圧力は10〜50MPa程度、印加磁
場は0.5〜1.5T程度とすればよい。
において100〜500℃の温度で熱処理して、添加し
た分散剤を十分に分解除去する。次いで焼結工程におい
て、成形体を例えば空気中で好ましくは1150〜12
50℃、より好ましくは1160〜1220℃の温度で
0.5〜3時間程度焼結して、異方性フェライト焼結磁
石を得る。
造に本発明を適用する場合について説明したが、例えば
針状フェライト粒子などを用いた軟磁性フェライト焼結
体等の他の酸化物磁性体の製造に適用する場合でも、本
発明にしたがって分散剤を添加することにより、高配向
度の酸化物磁性体が得られる。
加することによって配向度が向上するメカニズムは明確
ではない。ただし、走査型電子顕微鏡などにより成形体
やスラリーを解析すると、添加された微粉末が、酸化物
磁性体粒子の表面に分散した状態で存在していることが
確認できることから、これにより酸化物磁性体粒子の凝
集が抑制され、その結果、磁場配向が容易になって配向
度が向上するものと考えられる。
石を使用することにより、一般に次に述べるような効果
が得られ、優れた応用製品を得ることができる。すなわ
ち、従来のフェライト製品と同一形状であれば、磁石か
ら発生する磁束密度を増やすことができるため、モータ
であれば高トルク化等を実現でき、スピーカーやヘッド
ホーンであれば磁気回路の強化により、リニアリティー
のよい音質が得られるなど応用製品の高性能化に寄与で
きる。また、従来と同じ機能でよいとすれば、磁石の大
きさ(厚み)を小さく(薄く)でき、小型軽量化(薄型
化)に寄与できる。また、従来は界磁用の磁石を巻線式
の電磁石としていたようなモータにおいても、これをフ
ェライト焼結磁石で置き換えることが可能となり、軽量
化、生産工程の短縮、低価格化に寄与できる。さらに、
保磁力(HcJ)の温度特性に優れているため、従来はフ
ェライト焼結磁石の低温減磁(永久減磁)が生じるおそ
れがのあった低温環境でも使用可能となり、特に寒冷
地、高高度域などで使用される製品の信頼性を著しく高
めることができる。
石は、所定の形状に加工され、製品とされる。
フュエルポンプ用、パワーウィンドウ用、ABS用、フ
ァン用、ワイパ用、パワーステアリング用、アクティブ
サスペンション用、スタータ用、ドアロック用、電動ミ
ラー用等の自動車用モータ;FDDスピンドル用、VT
Rキャプスタン用、VTR回転ヘッド用、VTRリール
用、VTRローディング用、VTRカメラキャプスタン
用、VTRカメラ回転ヘッド用、VTRカメラズーム
用、VTRカメラフォーカス用、ラジカセ等キャプスタ
ン用、CD、LD、MDスピンドル用、CD、LD、M
Dローディング用、CD、LD光ピックアップ用等のO
A、AV機器用モータ;エアコンコンプレッサー用、冷
蔵庫コンプレッサー用、電動工具駆動用、扇風機用、電
子レンジファン用、電子レンジプレート回転用、ミキサ
駆動用、ドライヤーファン用、シェーバー駆動用、電動
歯ブラシ用等の家電機器用モータ;ロボット軸、関節駆
動用、ロボット主駆動用、工作機器テーブル駆動用、工
作機器ベルト駆動用等のFA機器用モータ;その他、オ
ートバイ用発電器、スピーカ・ヘッドホン用マグネッ
ト、マグネトロン管、MRI用磁場発生装置、CD−R
OM用クランパ、ディストリビュータ用センサ、ABS
用センサ、燃料・オイルレベルセンサ、マグネットラッ
チ等の幅広い用途に適用できる。
用意し、焼成後の組成が SrFe12O19 となるように配合し、アトライタにより湿式で混合およ
び粉砕した。粉砕後、乾燥して整粒し、これを空気中に
おいて1200℃で3時間焼成し、顆粒状の仮焼体を得
た。
て平均粒径0.3μm(比表面積2.6m2/g)のα−F
e2O3粉末を添加した。仮焼体に対する微粉末の添加量
を、表1に示す。なお、仮焼体の平均一次粒径は0.6
μmであった。
ドミルにより10分間乾式粗粉砕した。得られた粗粉砕
粉に、0.6質量%のSiO2および1.4質量%のC
aCO3を添加したものを、水を分散媒としてボールミ
ルにより湿式粉砕した。湿式粉砕の際には、開始時また
は粉砕中に、表1に示す分散剤を粉砕用スラリー中に添
加した。スラリーの固形分(仮焼体と上記微粉末との混
合物)に対する分散剤の添加量は、1質量%とした。表
1に示すポリカルボン酸塩は、ポリカルボン酸アンモニ
ウム(サンノブコ(株)社製のSNディスパーサント5
468)であり、グルコン酸塩はグルコン酸カルシウム
である。粉砕時間および分散剤の投入時期を表1に示
す。なお、表1に示す投入時期Aは、粉砕時間全体に対
する、粉砕開始時から投入時までの期間の比率であり、
投入時期Bは、投入時から粉砕終了時までの絶対時間で
ある。
混合物の比表面積を、窒素吸着法により測定した。ま
た、湿式粉砕後における仮焼体粉末および微粉末の平均
粒径を、走査型電子顕微鏡により測定した。これらの結
果を表1に示す。
て、スラリー中の固形分濃度が78質量%となるように
調整し、成形用スラリーを得た。各成形用スラリーを、
約1.3Tの磁場中で成形し、直径30mm、高さ15mm
の円柱形状の成形体を得た。
体では、磁気的配向度の値が成形体密度にも影響され
る。そのため本実施例では、成形体の表面に対しX線回
折による測定を行い、X線回折パターンに現れる回折線
の面指数とその強度とから成形体の結晶学的な配向度
(X線配向度)を求めた。成形体のX線配向度は、それ
を焼結した後の磁気的配向度との相関性が高い。本明細
書では、X線配向度としてΣI(00L)/ΣI(hk
L)を用いる。(00L)は、(004)や(006)
等のc面を総称する表示であり、ΣI(00L)は、
(00L)面の回折線の強度の合計である。また、(h
kL)は、検出されたすべての面を表し、ΣI(hk
L)は、それらの面の回折線強度の合計である。したが
ってΣI(00L)/ΣI(hkL)は、c面配向の程
度を表す。本実施例において、X線配向度は以下の手順
で測定した。まず、各成形体の成形時の磁場印加方向と
垂直な面について、X線回折を行った。次に、得られた
X線回折パターンから、ΣI(00L)/ΣI(hk
L)を求めた。この値を配向度として表1に示す。
すなわち、分散剤としてポリカルボン酸塩を所定の時期
に粉砕用スラリーに投入して製造されたサンプルNo.2
〜No.9では、極めて高い配向度が得られている。これ
に対し、ポリカルボン酸の投入時期が遅すぎたサンプル
No.1は、配向度が低い。また、投入時期が速すぎたサ
ンプルNo.10では、粉砕が進みすぎた結果、配向度が
著しく低くなっている。
散剤としてグルコン酸塩またはソルビトールを用いたサ
ンプルNo.11〜No.12では、本発明サンプルに比べ配
向度が低くなっている。
ンプルNo.13〜No.15では、分散剤の種類によらず配
向度が低い。
Claims (4)
- 【請求項1】 酸化物磁性体粉末と水とを含むスラリー
を用いて湿式粉砕を行う湿式粉砕工程と、粉砕後にスラ
リーを磁場中で湿式成形して異方性成形体を得る成形工
程とを設け、 湿式粉砕工程において、粉砕対象のスラリーに、前記酸
化物磁性体粉末とは異なる微粉末を含ませ、 湿式粉砕工程における粉砕時間全体の20%の時間が経
過した後であって、かつ粉砕終了の20分前までに、ス
ラリー中に分散剤としてポリカルボン酸塩を投入する異
方性酸化物磁性体の製造方法。 - 【請求項2】 前記湿式粉砕工程において、前記酸化物
磁性体粉末と前記微粉末との混合物を、その比表面積が
6〜11m2/gとなるまで粉砕する請求項1のフェライト
焼結磁石の製造方法。 - 【請求項3】 スラリー中において、前記酸化物磁性体
粉末に対する前記微粉末の含有量が1〜100体積%で
ある請求項1または2の異方性酸化物磁性体の製造方
法。 - 【請求項4】 前記酸化物磁性体粉末が、マグネトプラ
ンバイト型六方晶フェライト相を有し、前記微粉末がフ
ェライト構成元素を含有する請求項1〜3のいずれかの
異方性酸化物磁性体の製造方法。
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