JP4529310B2 - 異方性酸化物磁性体の製造方法 - Google Patents

異方性酸化物磁性体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、異方性フェライト焼結磁石等の異方性酸化物磁性体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、酸化物永久磁石材料として六方晶系のSrフェライトやBaフェライトが用いられており、これらの磁石では、磁石性能を向上させるために磁場中プレスによる異方性化が広く行われている。磁石性能に大きな影響を与える因子としては、残留磁束密度が挙げられる。残留磁束密度Brは、
式 Br=(定数)×(単位重量当たりの飽和磁化)×(密度)×(配向度)
で表される。なお、上記式において、単位重量当たりの飽和磁化(σs)は、物質固有の値である。
【0003】
したがって、異方性フェライト焼結磁石の製造においては、焼結密度と配向度とが非常に重要である。異方性フェライト焼結磁石は、フェライト粉末を磁場中で成形し、得られた成形体を焼結することにより製造される。高い配向度を得るためには、湿式成形が有効である。一方、大きな保磁力を得るためには、フェライト粉末を構成する粒子のサイズを、単磁区臨界径である1μm程度以下として単磁区化する必要があるが、このような粒子からなるフェライト粉末では、湿式成形法を用いた場合でも一般的に配向度が低下するという問題がある。その原因として、粒子の単磁区化による磁気的凝集力の増加、磁場方向に向こうとするトルクの減少、表面積増加による摩擦力の増加、などが挙げられる。
【0004】
なお、粒子サイズを小さくすると配向性が劣化するという問題は、フェライト焼結磁石の製造の場合に限らず、例えば、針状の軟磁性フェライト等の他の酸化物磁性体粒子からなる粉末を磁場配向させる場合においても同様である。
【0005】
このような問題に対し本発明者らは、優れた配向度を実現できる分散剤として、例えばグルコン酸塩を提案している(特開平11−214208号公報)。この分散剤は、湿式成形の際の分散媒として水を用いる場合に有効なものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、異方性フェライト焼結磁石等の異方性酸化物磁性体を製造する際に、環境面やコスト面で有利な、水を使用する湿式成形法を利用する場合において、湿式成形時の磁場配向性を改善することにより、高特性の異方性酸化物磁性体を得ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜()の本発明により達成される。
(1)マグネトプランバイト型六方晶フェライト相を有する酸化物磁性体粉末と水とを含むスラリーを用いて湿式粉砕を行う湿式粉砕工程と、粉砕後にスラリーを磁場中で湿式成形して異方性成形体を得る成形工程とを設け、
湿式粉砕工程において、粉砕対象のスラリーに、フェライト構成元素を含有する酸化物磁性体粉末とは異なる微粉末を含ませ、
湿式粉砕工程における粉砕時間全体の20%の時間が経過した後であって、かつ粉砕終了の20分前までに、スラリー中に分散剤としてポリカルボン酸塩を投入し、酸化物磁性体粉末と微粉末との混合物を、その比表面積が6〜11m /gとなるまで粉砕する異方性酸化物磁性体の製造方法。
)スラリー中において、酸化物磁性体粉末に対する微粉末の含有量が1〜100体積%である上記(1)の異方性酸化物磁性体の製造方法。
【0008】
【作用および効果】
前述したように本発明者らは、特開平11−214208号公報において、水系分散媒を用いる場合に有効な分散剤(グルコン酸塩等)を提案している。同公報では、湿式成形工程の前に設ける湿式粉砕工程において、フェライト粉末にこれとは異なる微粉末を混合して粉砕することにより、配向度をさらに向上させている。
【0009】
同公報には、比較対象の分散剤としてポリカルボン酸アンモニウムを使った比較例が記載されており、この比較例では、グルコン酸カルシウムを分散剤として使った場合に比べ、配向度が劣るものとなっている。
【0010】
一方、本発明は、フェライト粉末と微粉末との混合物を湿式粉砕し、かつ湿式粉砕の際にポリカルボン酸アンモニウムを添加する点で上記特開平11−214208号公報記載の比較例と同様である。しかし本発明では、同公報の比較例と異なり、ポリカルボン酸塩を湿式粉砕の途中でスラリー中に投入する。これにより、グルコン酸塩を用いた場合に比べ、より高い配向度の成形体が得られる。
【0011】
なお、特開平6−112029号公報には、フェライト粉末を含むスラリーにポリカルボン酸アンモニウムを添加した後、磁場中で圧縮成形し、焼結することによってフェライト焼結磁石を製造する方法が記載されている。同公報には、湿式微粉砕の開始および終了時点で重炭酸アンモニウムを添加した後、このスラリーにさらにポリカルボン酸アンモニウムを添加して攪拌し、次いで成形する旨が記載されている。同公報の実施例においても、湿式微粉砕開始前および終了時に重炭酸アンモニウムを添加し、次に、ポリカルボン酸アンモニウム塩を添加した後、アトライタに投入して10分間攪拌し、さらに、ミキサーで攪拌している。
【0012】
同公報記載の方法は、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウムを用いる点で本発明と類似する。しかし、同公報では、湿式微粉砕終了後にポリカルボン酸塩を添加しており、この点が本発明とは異なる。また、同公報では、本発明で用いる微粉末をフェライト粉末に混合せず、フェライト粉末だけを湿式粉砕している点でも、本発明とは異なる。本発明では、フェライト粉末と微粉末との混合物を湿式粉砕する場合において、ポリカルボン酸塩を粉砕の途中でスラリー中に投入することにより、高い配向度を実現する。そのため、フェライト粉末だけを湿式粉砕し、かつ、湿式粉砕終了後にポリカルボン酸塩を添加する上記公報記載の方法では、本発明の効果は実現しない。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明では、酸化物磁性体粉末を磁場中で湿式成形する工程を設けることにより異方性酸化物磁性体を得る。本発明で用いることのできる酸化物磁性体粉末は特に限定されず、例えば六方晶のM型、W型、X型、Y型、Z型の六方晶フェライト、形状異方性を有する針状のγ−Fe23、Co含有γ−Fe23、マグネタイト、CrO2等のいずれであってもよい。本発明が特に有効なのは、異方性フェライト焼結磁石、特に、六方晶マグネトプランバイト型(M型)フェライトを主相として有する磁石である。そこで以下では、このタイプの異方性フェライト焼結磁石について説明する。
【0014】
六方晶M型フェライトとしては、AO・nFe23(Aは、Sr、Ba、CaおよびPbの少なくとも1種、好ましくはSrおよびBaの少なくとも1種、n=4.5〜6.5)で表される組成のものが好ましい。このようなフェライトには、さらに、希土類元素、Si、Al、Ga、Sn、Zn、In、Co、Ni、Ti、Cr、Mn、Cu、Ge、Nb、Zr等が含有されていてもよい。なお、本明細書において希土類元素とは、Y、Scおよびランタノイドである。
【0015】
このようなフェライトのうち、本発明が特に有効なのは、希土類元素およびBiから選択される少なくとも1種の元素をRとし、Coおよび/またはZnをMとしたとき、前記元素A、元素R、Feおよび元素Mを含有し、全金属元素量に対するA、R、FeおよびMそれぞれの総計の比率が
A:1〜13原子%、
R:0.05〜10原子%、
Fe:80〜95原子%、
M:0.1〜5原子%
である六方晶M型フェライトを主相として有するものである。元素Rとしては、La、Pr、Ndが好ましく、特にLaが好ましく、これにBiを併用してもよい。
【0016】
異方性フェライト焼結磁石を製造するには、まず、出発原料を仮焼することにより、フェライト粒子からなる仮焼体を製造する。出発原料としては、金属(A、R、Fe、M等)の酸化物、または焼成により酸化物となる化合物を用いる。仮焼は、空気中等の酸化性雰囲気中において、例えば1000〜1350℃で1秒間〜10時間、特にM型のSrフェライトの微細粒子からなる仮焼体を得るためには、1000〜1200℃で1秒間〜3時間程度行えばよい。
【0017】
仮焼体は、実質的にM型フェライト構造をもつ顆粒状粒子から構成され、その一次粒子の平均粒径は0.1〜3μm、特に0.1〜1μmであることが好ましい。この平均粒径とは、粒子の最大粒径と最小粒径との平均値に対する数平均である。平均粒径が大きすぎると配向度の向上効果が得られ難くなる。平均粒径は走査型電子顕微鏡(SEM)により測定すればよく、通常、粒子100個以上について平均をとる。その変動係数CVは80%以下、一般に10〜70%であることが好ましい。なお、六方晶フェライト粒子の場合の好ましい平均粒径は上記のとおりであるが、針状粒子の場合の平均粒径も、0.1〜3μm、特に0.1〜1μm程度であることが好ましい。
【0018】
本発明では、磁場中成形における酸化物磁性体粉末の配向度を高くするために、分散剤を含有するスラリーを用いて湿式成形を行い、かつ、湿式成形工程の前に湿式粉砕工程を設ける。ただし、上記仮焼体は一般に顆粒状であるので、仮焼体の粗粉砕ないし解砕のために、湿式粉砕工程の前に乾式粗粉砕工程を設けることが好ましい。なお、本発明では、共沈法や水熱合成法などにより製造した酸化物磁性体粉末を用いることもできる。この場合、通常、乾式粗粉砕工程を設ける必要はない。以下では、乾式粗粉砕工程とこれに続く湿式粉砕工程とを設ける場合について説明する。
【0019】
なお、粉砕工程では、焼結助剤として、通常、SiO2およびCaCO3が添加される。SiO2およびCaCO3は、通常、湿式粉砕工程で添加するが、乾式粗粉砕工程で添加してもよい。なお、焼結助剤は、一部を仮焼前に添加してもよく、その場合には特性向上が認められる。
【0020】
乾式粗粉砕工程では、通常、窒素吸着法による比表面積が2〜10倍程度となるまで粉砕する。粉砕手段は特に限定されず、例えば乾式振動ミル、乾式アトライター(媒体攪拌型ミル)、乾式ボールミル等が使用できるが、特に乾式振動ミルを用いることが好ましい。粉砕時間は、粉砕手段に応じて適宜決定すればよい。
【0021】
乾式粗粉砕には、仮焼体粒子に結晶歪を導入して保磁力HcBおよびHcJを小さくする効果もある。保磁力の低下により粒子の磁気的凝集が抑制される結果、分散性が向上して配向度が向上する。粒子に導入された結晶歪は、後の焼結工程において解放されて保磁力が回復するので、永久磁石とすることができる。
【0022】
乾式粗粉砕の後に、仮焼体粉末と水とを含む粉砕用スラリーを調製し、これを用いて湿式粉砕を行う。本発明では、粉砕用スラリー中に、仮焼粉末とは異なる微粉末を含有させる。この微粉末は、焼成後にフェライト焼結磁石の特性を妨げないものが好ましく、焼成によりフェライト構成成分となるもの、すなわちフェライト構成元素を含む酸化物または焼成により酸化物となる化合物がより好ましい。具体的には、例えば、酸化鉄、アルミナ、炭酸ストロンチウム、希土類酸化物、酸化コバルト、炭酸バリウム、シリカが好ましく、特に、酸化鉄、アルミナ、希土類酸化物、酸化コバルトが好ましい。これらの微粉末は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合の混合比は任意である。微粉末を構成する微粒子の形状は、球状、扁平状、不定形状等のいずれであってもよい。
【0023】
粉砕用スラリーに投入される上記微粉末の平均粒径は、好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.05〜5μm、さらに好ましくは0.05〜1μmであり、また、用いる仮焼体粉末の平均一次粒径の好ましくは1/100〜10倍、より好ましくは5/100〜1倍である。なお、微粉末の平均粒径は、構成粒子の最大径と最小径の平均値に対する数平均である。また、上記微粉末の窒素吸着法による比表面積は、好ましくは0.1〜100m2/g、より好ましくは0.5〜50m2/g、さらに好ましくは1〜30m2/g、最も好ましくは2〜30m2/gである。微粉末は、湿式粉砕終了時までに、酸化物磁性体粉末(仮焼体粉末)の平均粒径より小さい平均粒径となっていることが好ましい。
【0024】
湿式粉砕終了時において、微粉末の平均粒径は、好ましくは0.01〜2μm、より好ましくは0.05〜1μm、さらに好ましくは0.05〜0.6μmであり、湿式粉砕終了時における仮焼体粉末の平均粒径の好ましくは1/100〜9/10、より好ましくは5/100〜7/10である。微粉末の平均粒径が大きすぎると配向度向上効果が小さくなる。一方、微粉末の平均粒径が小さすぎると、湿式成形が困難になる。なお、微粉末を複数種併用する場合における微粉末の平均粒径は、各微粉末の平均粒径に重量比をかけて平均した値である。窒素吸着法による仮焼体粉末と微粉末との混合物の比表面積は0.1〜100m2/gであり、より好ましくは1〜50m2/g、特に5〜10m2/gであることが好ましい。
【0025】
微粉末の添加量としては、上記酸化物磁性体粒子に対して1〜100体積%、好ましくは5〜70体積%、より好ましくは10〜50体積%である。添加量が少なすぎても多すぎても配向度向上効果が小さくなる。また、添加量が多すぎると、粉砕後の仮焼体粉末と前記微粉末との混合物の比表面積が大きくなりやすく、その結果、湿式成形時の水抜け性が悪くなりやすい。水抜け性が悪いと、生産性が低くなり、また、成形体にクラックが発生しやすくなる。
【0026】
微粉末の添加時期は特に限定されず、乾式粗粉砕時に添加してもよく、湿式粉砕時の粉砕用スラリー調製の際に添加してもよく、一部を乾式粗粉砕の際に添加し、残部を湿式粉砕の際に添加してもよい。いずれの場合でも、粉砕用スラリー中に微粉末が存在することになるので、本発明の効果は実現する。ただし、乾式粗粉砕時に添加するほうが、配向度向上効果は高くなる。なお、微粉末を複数回に分けて添加する場合には、合計添加量が前記した範囲となるように各回の添加量を設定すればよい。
【0027】
本発明では、湿式成形工程の途中で、粉砕用スラリー中に分散剤を投入する。本発明で用いる分散剤は、ポリカルボン酸塩であり、好ましくはポリカルボン酸アンモニウムである。ポリカルボン酸アンモニウムとしては、前記特開平6−112029号公報に記載されている[CH2CH(COONH4)]nが好ましい。ポリカルボン酸アンモニウムは、重量平均分子量が10,000〜80,000であることが好ましい。分散剤の添加量は、粉砕用スラリー中の固形分に対し、好ましくは0.1〜2質量%、より好ましくは0.5〜1質量%である。分散剤が少なすぎると配向度の向上が不十分となる。一方、分散剤が多すぎると、成形体や焼結体にクラックが発生しやすくなる。
【0028】
分散剤は、湿式粉砕工程における粉砕時間全体の20%、好ましくは60%の時間が経過した後であって、かつ粉砕終了の20分前、好ましくは30分前までに、粉砕用スラリー中に投入する。本発明で用いる分散剤は、粉砕を促進し、しかも、粉砕促進作用の制御が困難であるため、湿式粉砕開始時点で分散剤をスラリー中に投入しておくと、粉砕が進みすぎ、スラリー中に超微粒子が多く生成されてしまう。その結果、湿式成形時の水抜け性の悪化が生じ、また、高配向度が得られなくなる。一方、分散剤の投入が遅れると、分散剤が仮焼体粒子表面に十分に吸着ないし固着されにくく、配向度向上効果が不十分となる。
【0029】
本発明では、仮焼体粉末と前記微粉末との混合物の窒素吸着法による比表面積が、6〜11m2/g、特に7〜11m2/gとなるまで湿式粉砕することが好ましい。粉砕後の比表面積が小さすぎても大きすぎても、高特性をもつ焼結磁石が得られにくく、また、高配向度も得られにくい。また、比表面積が大きすぎると、湿式成形時の水抜け性が悪くなる。なお、粉砕時間、すなわち、適切な比表面積にするために必要な時間は、粉砕手段、その処理容量などの各種条件に応じて適宜決定すればよい。すなわち、適正な粉砕時間は、これら各種条件によって異なる。湿式粉砕に用いる粉砕手段は特に限定されないが、通常、ボールミル、アトライター、振動ミル等を用いることが好ましい。
【0030】
本発明では、粉砕時間によらず、分散剤の投入時期を上記範囲内に設定する。投入時期の限定範囲の前端を相対時間で規定したのは、分散剤の粉砕促進作用による粉砕の進みすぎを防ぐためには、分散剤存在下での粉砕時間を全粉砕時間に対し一定比率以下に抑えることが適切だからである。一方、投入時期の限定範囲の後端を絶対時間で規定したのは、仮焼体粒子表面への分散剤の吸着ないし固着には、粉砕手段によらず一定の時間が必要なためである。
【0031】
粉砕用スラリー中の固形分濃度は、10〜70質量%程度であることが好ましい。
【0032】
湿式粉砕後、粉砕用スラリーを濃縮して成形用スラリーを調製する。濃縮は、遠心分離、吸引ろ過、フィルタープレスなどによって行えばよい。成形用スラリー中の固形分濃度は、好ましくは60〜95質量%、より好ましくは70〜85質量%程度である。固形分濃度が低すぎると、脱水に長時間を要するため、成形時間が長くなって生産性が低下する。一方、固形分濃度が高すぎると、高い配向度が得られにくくなる。
【0033】
次に、成形用スラリーを用いて磁場中で湿式成形を行う。成形圧力は10〜50MPa程度、印加磁場は0.5〜1.5T程度とすればよい。
【0034】
湿式成形後、成形体を空気中または窒素中において100〜500℃の温度で熱処理して、添加した分散剤を十分に分解除去する。次いで焼結工程において、成形体を例えば空気中で好ましくは1150〜1250℃、より好ましくは1160〜1220℃の温度で0.5〜3時間程度焼結して、異方性フェライト焼結磁石を得る。
【0035】
以上では、異方性フェライト焼結磁石の製造に本発明を適用する場合について説明したが、例えば針状フェライト粒子などを用いた軟磁性フェライト焼結体等の他の酸化物磁性体の製造に適用する場合でも、本発明にしたがって分散剤を添加することにより、高配向度の酸化物磁性体が得られる。
【0036】
なお、前記微粉末と前記分散剤とを共に添加することによって配向度が向上するメカニズムは明確ではない。ただし、走査型電子顕微鏡などにより成形体やスラリーを解析すると、添加された微粉末が、酸化物磁性体粒子の表面に分散した状態で存在していることが確認できることから、これにより酸化物磁性体粒子の凝集が抑制され、その結果、磁場配向が容易になって配向度が向上するものと考えられる。
【0037】
本発明により製造されるフェライト焼結磁石を使用することにより、一般に次に述べるような効果が得られ、優れた応用製品を得ることができる。すなわち、従来のフェライト製品と同一形状であれば、磁石から発生する磁束密度を増やすことができるため、モータであれば高トルク化等を実現でき、スピーカーやヘッドホーンであれば磁気回路の強化により、リニアリティーのよい音質が得られるなど応用製品の高性能化に寄与できる。また、従来と同じ機能でよいとすれば、磁石の大きさ(厚み)を小さく(薄く)でき、小型軽量化(薄型化)に寄与できる。また、従来は界磁用の磁石を巻線式の電磁石としていたようなモータにおいても、これをフェライト焼結磁石で置き換えることが可能となり、軽量化、生産工程の短縮、低価格化に寄与できる。さらに、保磁力(HcJ)の温度特性に優れているため、従来はフェライト焼結磁石の低温減磁(永久減磁)が生じるおそれがのあった低温環境でも使用可能となり、特に寒冷地、高高度域などで使用される製品の信頼性を著しく高めることができる。
【0038】
本発明により製造されたフェライト焼結磁石は、所定の形状に加工され、製品とされる。
【0039】
本発明により製造された磁石は、例えば、フュエルポンプ用、パワーウィンドウ用、ABS用、ファン用、ワイパ用、パワーステアリング用、アクティブサスペンション用、スタータ用、ドアロック用、電動ミラー用等の自動車用モータ;FDDスピンドル用、VTRキャプスタン用、VTR回転ヘッド用、VTRリール用、VTRローディング用、VTRカメラキャプスタン用、VTRカメラ回転ヘッド用、VTRカメラズーム用、VTRカメラフォーカス用、ラジカセ等キャプスタン用、CD、LD、MDスピンドル用、CD、LD、MDローディング用、CD、LD光ピックアップ用等のOA、AV機器用モータ;エアコンコンプレッサー用、冷蔵庫コンプレッサー用、電動工具駆動用、扇風機用、電子レンジファン用、電子レンジプレート回転用、ミキサ駆動用、ドライヤーファン用、シェーバー駆動用、電動歯ブラシ用等の家電機器用モータ;ロボット軸、関節駆動用、ロボット主駆動用、工作機器テーブル駆動用、工作機器ベルト駆動用等のFA機器用モータ;その他、オートバイ用発電器、スピーカ・ヘッドホン用マグネット、マグネトロン管、MRI用磁場発生装置、CD−ROM用クランパ、ディストリビュータ用センサ、ABS用センサ、燃料・オイルレベルセンサ、マグネットラッチ等の幅広い用途に適用できる。
【0040】
【実施例】
出発原料としてSrCO3およびFe23を用意し、焼成後の組成が
SrFe1219
となるように配合し、アトライタにより湿式で混合および粉砕した。粉砕後、乾燥して整粒し、これを空気中において1200℃で3時間焼成し、顆粒状の仮焼体を得た。
【0041】
得られた仮焼体に対して、前記微粉末として平均粒径0.3μm(比表面積2.6m2/g)のα−Fe23粉末を添加した。仮焼体に対する微粉末の添加量を、表1に示す。なお、仮焼体の平均一次粒径は0.6μmであった。
【0042】
仮焼体と上記微粉末との混合物を振動ロッドミルにより10分間乾式粗粉砕した。得られた粗粉砕粉に、0.6質量%のSiO2および1.4質量%のCaCO3を添加したものを、水を分散媒としてボールミルにより湿式粉砕した。湿式粉砕の際には、開始時または粉砕中に、表1に示す分散剤を粉砕用スラリー中に添加した。スラリーの固形分(仮焼体と上記微粉末との混合物)に対する分散剤の添加量は、1質量%とした。表1に示すポリカルボン酸塩は、ポリカルボン酸アンモニウム(サンノブコ(株)社製のSNディスパーサント5468)であり、グルコン酸塩はグルコン酸カルシウムである。粉砕時間および分散剤の投入時期を表1に示す。なお、表1に示す投入時期Aは、粉砕時間全体に対する、粉砕開始時から投入時までの期間の比率であり、投入時期Bは、投入時から粉砕終了時までの絶対時間である。
【0043】
湿式粉砕後の仮焼体粉末と上記微粉末との混合物の比表面積を、窒素吸着法により測定した。また、湿式粉砕後における仮焼体粉末および微粉末の平均粒径を、走査型電子顕微鏡により測定した。これらの結果を表1に示す。
【0044】
湿式粉砕後、粉砕用スラリーを遠心分離して、スラリー中の固形分濃度が78質量%となるように調整し、成形用スラリーを得た。各成形用スラリーを、約1.3Tの磁場中で成形し、直径30mm、高さ15mmの円柱形状の成形体を得た。
【0045】
次に、各成形体の配向度を測定した。成形体では、磁気的配向度の値が成形体密度にも影響される。そのため本実施例では、成形体の表面に対しX線回折による測定を行い、X線回折パターンに現れる回折線の面指数とその強度とから成形体の結晶学的な配向度(X線配向度)を求めた。成形体のX線配向度は、それを焼結した後の磁気的配向度との相関性が高い。本明細書では、X線配向度としてΣI(00L)/ΣI(hkL)を用いる。(00L)は、(004)や(006)等のc面を総称する表示であり、ΣI(00L)は、(00L)面の回折線の強度の合計である。また、(hkL)は、検出されたすべての面を表し、ΣI(hkL)は、それらの面の回折線強度の合計である。したがってΣI(00L)/ΣI(hkL)は、c面配向の程度を表す。本実施例において、X線配向度は以下の手順で測定した。まず、各成形体の成形時の磁場印加方向と垂直な面について、X線回折を行った。次に、得られたX線回折パターンから、ΣI(00L)/ΣI(hkL)を求めた。この値を配向度として表1に示す。
【0046】
【表1】
Figure 0004529310
【0047】
表1から、本発明の効果が明らかである。すなわち、分散剤としてポリカルボン酸塩を所定の時期に粉砕用スラリーに投入して製造されたサンプルNo.2〜No.9では、極めて高い配向度が得られている。これに対し、ポリカルボン酸の投入時期が遅すぎたサンプルNo.1は、配向度が低い。また、投入時期が速すぎたサンプルNo.10では、粉砕が進みすぎた結果、配向度が著しく低くなっている。
【0048】
一方、仮焼体に微粉末を混合し、かつ、分散剤としてグルコン酸塩またはソルビトールを用いたサンプルNo.11〜No.12では、本発明サンプルに比べ配向度が低くなっている。
【0049】
また、仮焼体に微粉末を混合しなかったサンプルNo.13〜No.15では、分散剤の種類によらず配向度が低い。

Claims (2)

  1. マグネトプランバイト型六方晶フェライト相を有する酸化物磁性体粉末と水とを含むスラリーを用いて湿式粉砕を行う湿式粉砕工程と、粉砕後にスラリーを磁場中で湿式成形して異方性成形体を得る成形工程とを設け、
    湿式粉砕工程において、粉砕対象のスラリーに、フェライト構成元素を含有する前記酸化物磁性体粉末とは異なる微粉末を含ませ、
    湿式粉砕工程における粉砕時間全体の20%の時間が経過した後であって、かつ粉砕終了の20分前までに、スラリー中に分散剤としてポリカルボン酸塩を投入し、前記酸化物磁性体粉末と前記微粉末との混合物を、その比表面積が6〜11m 2 /gとなるまで粉砕する異方性酸化物磁性体の製造方法。
  2. スラリー中において、前記酸化物磁性体粉末に対する前記微粉末の含有量が1〜100体積%である請求項1の異方性酸化物磁性体の製造方法。
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