JP2000100612A - 酸化物磁性体の製造方法 - Google Patents

酸化物磁性体の製造方法

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JP2000100612A
JP2000100612A JP11299204A JP29920499A JP2000100612A JP 2000100612 A JP2000100612 A JP 2000100612A JP 11299204 A JP11299204 A JP 11299204A JP 29920499 A JP29920499 A JP 29920499A JP 2000100612 A JP2000100612 A JP 2000100612A
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Hitoshi Taguchi
仁 田口
Kiyoyuki Masuzawa
清幸 増澤
Yoshihiko Minachi
良彦 皆地
Kazumasa Iida
和昌 飯田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 異方性フェライト磁石等の酸化物磁性体の製
造工程において、環境面やコスト面で有利な、水を使用
する湿式成形時の磁場配向性を改善することにより、高
い配向度を有する酸化物磁性体を得る。 【解決手段】 酸化物磁性体粒子と水とを含む成形用ス
ラリーを磁場中で湿式成形して成形体を得る成形工程を
有する酸化物磁性体の製造方法において、水酸基および
カルボキシル基を有する有機化合物またはその中和塩も
しくはそのラクトンであるか、ヒロドキシメチルカルボ
ニル基を有する有機化合物であるか、酸として解離し得
るエノール型水酸基を有する有機化合物またはその中和
塩であって、前記有機化合物が、炭素数3〜20であ
り、酸素原子と二重結合した炭素原子以外の炭素原子の
50%以上に水酸基が結合している分散剤を添加した成
形用スラリーを使用する酸化物磁性体の製造方法とし
た。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、異方性フェライト
磁石等の酸化物磁性体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、酸化物永久磁石材料として六方晶
系のSrフェライトやBaフェライトが用いられてお
り、これらの磁石では、磁石特性を向上させるために磁
場中プレスによる異方性化が広く行われている。磁石特
性のひとつとして、残留磁束密度(Br)が挙げられ
る。残留磁束密度Brに大きな影響を与える因子には、
次の関係がある。なお、下記式における単位重量当たり
の飽和磁化(σs)は、物質固有の値である。 式 Br∝ (単位重量当たりの飽和磁化)×(密度)
×(配向度)
【0003】したがって、Brの高い異方性焼結フェラ
イト磁石を製造するためには、焼結密度と配向度を高め
ることが非常に重要である。高い配向度を得るため、フ
ェライト粒子が水中に分散されたスラリーを成形する、
いわゆる湿式成形が、従来から行われている。一方、大
きな保磁力を得るためには、フェライトの粒子サイズを
単磁区臨界径である1μm以下として単磁区化する必要
があるが、このような粒子では、湿式成形法を用いた場
合でも一般的に配向度が低下するという問題がある。こ
の原因として、粒子の単磁区化による磁気的凝集力の
増加、粒子が磁場方向に向こうとするトルクの減少、
粒子の表面積増加による摩擦力の増加、などが挙げら
れる。
【0004】本発明者らは、この問題を解決するため
に、サブミクロンフェライト粒子に粉砕歪みを導入して
粒子の保磁力を一時的に低減させることにより、磁気的
凝集力を低減させ得ることを見出した(特開平6−53
064号公報)。
【0005】さらに、水の代わりに例えばトルエンやキ
シレンのような有機溶媒を用い、かつ、例えばオレイン
酸のような界面活性剤を添加することにより、サブミク
ロンサイズのフェライト粒子を用いても最高で98%程
度の高い磁気的配向度を得ることが可能であることを見
出した(同じく特開平6−53064号公報)。しか
し、この方法は有機溶媒を使うため、人体や環境に対し
て悪影響があり、これを解決するためには回収装置など
の大がかりな設備が必要になり、コストアップになると
いう問題がある。
【0006】なお、本明細書において磁気的配向度と
は、飽和磁化(Is)に対する残留磁化(Ir)の比
(Ir/Is)である。
【0007】一方、水を用いた湿式磁場成形法における
配向度を改善するために、従来、例えばポリカルボン酸
(塩)に代表される高分子の分散剤を添加し、これを磁
性粒子表面に吸着させて立体障害と電気的な反発作用の
効果により粒子を分散し、配向度を向上させることが試
みられてきた(特開平6−112029号公報)。しか
し、得られる配向度および残留磁束密度Brは、高くな
い。
【0008】なお、粒子サイズを小さくすると配向性が
劣化するという問題は、フェライト磁石の製造の場合に
限らず、例えば、針状の軟磁性フェライト等の他の酸化
物磁性体粒子を磁場配向させる場合においても同様であ
る。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、異方
性フェライト磁石等の酸化物磁性体の製造工程におい
て、環境面やコスト面で有利な、水を使用する湿式成形
時の磁場配向性を改善することにより、高い配向度を有
する酸化物磁性体を得ることである。
【0010】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(12)の本発明により達成される。 (1) 酸化物磁性体粒子と水とを含む成形用スラリー
を磁場中で湿式成形して成形体を得る成形工程を有する
酸化物磁性体の製造方法において、水酸基およびカルボ
キシル基を有する有機化合物またはその中和塩もしくは
そのラクトンであるか、ヒロドキシメチルカルボニル基
を有する有機化合物であるか、酸として解離し得るエノ
ール型水酸基を有する有機化合物またはその中和塩であ
って、前記有機化合物が、炭素数3〜20であり、酸素
原子と二重結合した炭素原子以外の炭素原子の50%以
上に水酸基が結合している分散剤を添加した成形用スラ
リーを使用する酸化物磁性体の製造方法。 (2) 前記水酸基およびカルボキシル基を有する有機
化合物がグルコン酸である上記(1)の酸化物磁性体の
製造方法。 (3) 前記酸として解離し得るエノール型水酸基を有
する有機化合物がアスコルビン酸である上記(1)の酸
化物磁性体の製造方法。 (4) 酸化物磁性体粒子と水とを含む成形用スラリー
を磁場中で湿式成形して成形体を得る成形工程を有する
酸化物磁性体の製造方法において、クエン酸またはその
中和塩を分散剤として添加した成形用スラリーを使用す
る酸化物磁性体の製造方法。 (5) 前記成形用スラリー中に塩基性化合物が添加さ
れている上記(1)〜(4)のいずれかの酸化物磁性体
の製造方法。 (6) 前記分散剤がカルシウム塩である上記(1)〜
(4)のいずれかの酸化物磁性体の製造方法。 (7) 前記成形工程の前に湿式粉砕工程を有する上記
(1)〜(6)のいずれかの酸化物磁性体の製造方法。 (8) 前記分散剤の少なくとも一部が、前記湿式粉砕
工程において添加されたものである上記(7)の酸化物
磁性体の製造方法。 (9) 前記湿式粉砕工程の前に乾式粗粉砕工程を有す
る上記(7)または(8)の酸化物磁性体の製造方法。 (10) 前記分散剤の少なくとも一部が、前記乾式粗
粉砕工程において添加されたものである上記(9)の酸
化物磁性体の製造方法。 (11) 前記分散剤の添加量(分散剤が水溶液中にお
いてイオン化し得るものであるときは、イオン換算の添
加量)が、前記酸化物磁性体粒子に対し0.05〜3.
0重量%である上記(1)〜(10)のいずれかの酸化
物磁性体の製造方法。 (12) 前記酸化物磁性体粒子の平均粒径が1μm 以
下である上記(1)〜(11)のいずれかの酸化物磁性
体の製造方法。
【0011】本発明者らは、例えばグルコン酸のような
親水性が強い基を有する化合物を酸化物磁性体粒子表面
に吸着させることにより、酸化物磁性体粒子表面をより
親水的にして水に対する濡れ性を改善し、それによって
一次粒子の分散を向上させ、配向度を向上できると考え
た。本発明では、この考えに基づき、成形用スラリー中
に上記分散剤を存在させることにより、有機溶媒を用い
た場合に近い高い配向度を実現した。
【0012】従来用いられている高分子分散剤のほとん
どは人工的に合成されたもので、生物分解されにくく排
液処理の問題があるが、本発明で用いる分散剤の多くは
天然に存在するもので、人体や環境に対して安全であ
り、微生物等により分解できるという利点もある。
【0013】本発明で用いる分散剤のうち、特に配向度
向上効果が高いと確認された物質は、例えばグルコン酸
等のヒドロキシカルボン酸、その中和塩、そのラクトン
などであるが、ヒドロキシカルボン酸であってもグリコ
ール酸(C=2;OH=1;COOH=1)では効果が
なかった。この他、アスコルビン酸(C=6;OH=
4)にも上記ヒドロキシカルボン酸と同様な効果が認め
られた。具体的には、分散媒として水を用いてサブミク
ロンフェライト粒子を湿式粉砕して成形し、焼結したと
きの磁気的配向度は、分散剤を添加しない場合には93
〜94%であり、分散剤として従来用いられているポリ
カルボン酸型の化合物を用いた場合には94%程度であ
るが、分散剤としてグルコン酸を用いた場合には95〜
97%となる。分散媒として有機溶媒(キシレン)を用
い、分散剤としてオレイン酸を用いた場合の磁気的配向
度が97〜98%であるから、本発明では分散媒として
水を用いるにもかかわらず有機溶媒を用いた場合に近い
磁気的配向度が得られることがわかる。
【0014】本発明において水溶液中で酸としての性質
を示す分散剤(ヒドロキシカルボン酸など)を用いる場
合、塩基性化合物を添加してスラリー上澄みのpHを上
昇させれば、配向度はより向上する。
【0015】フェライト磁石の製造工程では副成分とし
てSiO およびCaCO が添加されるが、分散剤
としてヒドロキシカルボン酸やそのラクトンを用いた場
合には、成形用スラリー調製工程および湿式成形工程に
おいてSiO およびCaCOの一部が流出してし
まう。また、ヒドロキシカルボン酸やそのラクトンに加
え、pH調整のために上記塩基性化合物を添加した場合
には、流出量がより多くなる。これに対し分散剤として
ヒドロキシカルボン酸のカルシウム塩を用いた場合に
は、SiO およびCaCO の流出が抑えられ、こ
れによるHcJの低下等の特性劣化が抑えられる。
【0016】なお、本発明で用いる分散剤のうち、酒石
酸、l−アスコルビン酸、クエン酸については、泥漿鋳
込成形法において成形性向上を目的とした分散剤として
公知である(「ファインセラミックスの成形と有機材
料」第187〜188ページ、斎藤勝義著、株式会社シ
ーエムシー発行)。しかし、同書には、分散剤として1
2種類の分類が挙げられており、その中には配向度向上
効果の小さいポリカルボン酸型アニオン系界面活性剤な
どが含まれている。その分類の一つに有機酸、クエン
酸、酒石酸およびl−アスコルビン酸が含まれている
が、ここでも有機酸すべてが効果があるというものでは
ない。実際、酒石酸に比較的近い構造のこはく酸には配
向度向上効果はなく、本発明の範囲外である。同書では
本発明のように分子内に水酸基を多く持つ酸が有効であ
るといった限定的な記述はない。本発明は、泥漿鋳込成
形法において成形性向上のために使用される公知の分散
剤のうちから、酸化物磁性体の配向度向上に特に効果の
ある分散剤を選択したことを特徴とするものである。
【0017】また、本発明で用いる分散剤のうち、グル
コン酸ナトリウムについては、コンクリート工業におけ
る分散剤として公知である(「分散・凝集の化学」第9
2〜95ページ、森山登著、産業図書発行)。しかし、
コンクリート工業における分散剤添加は、流動性の改善
や減水による強度向上が目的であり、磁性体粒子を回転
させることが必要な酸化物磁性体の磁場中成形およびそ
の際の配向度向上とは直接関係はない。実際に市販され
ている高性能減水剤を酸化物磁性体の製造に適用して
も、配向度の向上効果を示すものは少なく、たとえ向上
があってもその程度は大きくない。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の具体的構成につい
て詳細に説明する。本発明は、各種酸化物磁性体の製造
に適用可能であるが、特に顕著な効果が得られることか
ら、以下の説明では異方性フェライト磁石の製造に適用
した場合を例に挙げる。
【0019】本発明が適用される異方性フェライト磁石
は、主にマグネトプランバイト型のM相、W相等の六方
晶系のフェライトである。このようなフェライトとして
は、特に、MO・nFe (Mは好ましくはSr
およびBaの1種以上、n=4.5〜6.5)であるこ
とが好ましい。このようなフェライトには、さらに、希
土類元素、Ca、Pb、Si、Al、Ga、Sn、Z
n、In、Co、Ni、Ti、Cr、Mn、Cu、G
e、Nb、Zr等が含有されていてもよい。
【0020】また、より好ましくはSr、Ba、Caお
よびPbから選択される少なくとも1種の元素をAと
し、希土類元素(Yを含む)およびBiから選択される
少なくとも1種の元素をRとし、Coおよび/またはZ
nをLとしたとき、A,R,FeおよびLそれぞれの金
属元素の総計の構成比率が、全金属元素量に対し、A:
1〜13原子%、R:0.05〜10原子%、Fe:8
0〜95原子%、L:0.1〜5原子%である六方晶マ
グネトプランバイト型(M型)フェライトを主相に有す
るものが好ましい。
【0021】この場合は、RがAサイトに存在すると
し、LがFeのサイトに存在するとして表した 式I A1−x(Fe12−y19 で表される主相を形成することが好ましい。なお、x、
y、zは上記の量から計算される値である。
【0022】さらに、好ましくは、A:3〜11原子
%、R:0.2〜6原子%、Fe:83〜94原子%、
L:0.3〜4原子%であり、特に好ましくは、A:3
〜9原子%、R:0.5〜4原子%、Fe:86〜93
原子%、L:0.5〜3原子%である。
【0023】上記各構成元素において、Aは、Sr、B
a、CaおよびPbから選択される少なくとも1種の元
素であって、Srを必ず含むことが好ましい。Aが小さ
すぎると、M型フェライトが生成しないか、α−Fe
等の非磁性相が多くなってくる。Aが大きすぎる
とM型フェライトが生成しないか、SrFeO3−x
の非磁性相が多くなってくる。A中のSrの比率は、好
ましくは51原子%以上、より好ましくは70原子%以
上、さらに好ましくは100原子%である。A中のSr
の比率が低すぎると、飽和磁化向上と保磁力の著しい向
上とを共に得ることができなくなってくる。
【0024】Rは、希土類元素(Yを含む)およびBi
から選択される少なくとも1種の元素である。Rには、
La,Pr,Ndを含有することが好ましく、特にLa
が必ず含まれることが好ましい。Rが小さすぎると、M
の固溶量が少なくなり、効果が得難くなる。Rが大きす
ぎると、オルソフェライト等の非磁性の異相が多くなっ
てくる。R中においてLaの占める割合は、好ましくは
40原子%以上、より好ましくは70原子%以上であ
り、飽和磁化向上のためにはRとしてLaだけを用いる
ことが最も好ましい。これは、六方晶M型フェライトに
対する固溶限界量を比較すると、Laが最も多いためで
ある。したがって、R中のLaの割合が低すぎるとRの
固溶量を多くすることができず、その結果、元素Lの固
溶量も多くすることができなくなり、その効果が小さく
なってくる。また、Biを併用すれば仮焼温度および焼
結温度を低くすることができるので、生産上有利であ
る。
【0025】元素Lは、Coおよび/またはZnであ
り、特にCoが必ず含まれることが好ましい。L中のC
oの比率は、好ましくは10原子%以上、より好ましく
は20原子%以上であることが好ましい。Coの比率が
低すぎると、保磁力向上が不十分となってくる。
【0026】このような異方性フェライト焼結磁石を製
造するには、フェライト組成物の原料の酸化物、または
焼成により酸化物となる化合物を仮焼前に混合し、その
後仮焼を行う。仮焼は、大気中で、例えば1000〜1
350℃で1秒間〜10時間、特にM型のSrフェライ
トの微細仮焼粉を得るときには、1000〜1200℃
で、1秒間〜3時間程度行えばよい。
【0027】このような仮焼粉は、実質的にマグネトプ
ランバイト型のフェライト構造をもつ顆粒状粒子から構
成され、その一次粒子の平均粒径は0.1〜1μm 、特
に0.1〜0.5μm であることが好ましい。平均粒径
は走査型電子顕微鏡(SEM)により測定すればよく、
その変動係数CVは80%以下、一般に10〜70%で
あることが好ましい。また、飽和磁化σsは65〜80
emu/g 、特にM型Srフェライトでは65〜71.5em
u/g 、保磁力HcJは2000〜8000Oe、特にM型S
rフェライトでは4000〜8000Oeであることが好
ましい。
【0028】本発明では、酸化物磁性体粒子と、分散媒
としての水と、分散剤とを含む成形用スラリーを用いて
湿式成形を行うが、分散剤の効果をより高くするために
は、湿式成形工程の前に湿式粉砕工程を設けることが好
ましい。また、酸化物磁性体粒子として仮焼体粒子を用
いる場合、仮焼体粒子は一般に顆粒状であるので、仮焼
体粒子の粗粉砕ないし解砕のために、湿式粉砕工程の前
に乾式粗粉砕工程を設けることが好ましい。なお、共沈
法や水熱合成法などにより酸化物磁性体粒子を製造した
場合には、通常、乾式粗粉砕工程は設けず、湿式粉砕工
程も必須ではないが、配向度をより高くするためには湿
式粉砕工程を設けることが好ましい。以下では、仮焼体
粒子を酸化物磁性体粒子として用い、乾式粗粉砕工程お
よび湿式粉砕工程を設ける場合について説明する。
【0029】乾式粗粉砕工程では、通常、BET比表面
積が2〜10倍程度となるまで粉砕する。粉砕後の平均
粒径は、0.1〜1μm 程度、BET比表面積は4〜1
0m /g程度であることが好ましく、粒径のCVは80
%以下、特に10〜70%に維持することが好ましい。
粉砕手段は特に限定されず、例えば乾式振動ミル、乾式
アトライター(媒体撹拌型ミル)、乾式ボールミル等が
使用できるが、特に乾式振動ミルを用いることが好まし
い。粉砕時間は、粉砕手段に応じて適宜決定すればよ
い。
【0030】乾式粗粉砕には、仮焼体粒子に結晶歪を導
入して保磁力HcBを小さくする効果もある。保磁力の低
下により粒子の凝集が抑制され、分散性が向上する。ま
た、配向度も向上する。粒子に導入された結晶歪は、後
の焼結工程において解放され、これによって本来の硬磁
性に戻って永久磁石となる。
【0031】なお、乾式粗粉砕の際には、通常、SiO
と、焼成によりCaOとなるCaCO とが添加さ
れる。SiO およびCaCOは、一部を仮焼前に
添加してもよく、その場合には特性向上が認められる。
【0032】乾式粗粉砕の後、仮焼体粒子と水とを含む
粉砕用スラリーを調製し、これを用いて湿式粉砕を行
う。粉砕用スラリー中の仮焼体粒子の含有量は、10〜
70重量%程度であることが好ましい。湿式粉砕に用い
る粉砕手段は特に限定されないが、通常、ボールミル、
アトライター、振動ミル等を用いることが好ましい。粉
砕時間は、粉砕手段に応じて適宜決定すればよい。
【0033】湿式粉砕後、粉砕用スラリーを濃縮して成
形用スラリーを調製する。濃縮は、遠心分離などによっ
て行えばよい。成形用スラリー中の仮焼体粒子の含有量
は、60〜90重量%程度であることが好ましい。
【0034】湿式成形工程では、成形用スラリーを用い
て磁場中成形を行う。成形圧力は0.1〜0.5ton/cm
程度、印加磁場は5〜15kOe 程度とすればよい。
【0035】本発明では、分散剤が添加された成形用ス
ラリーを用いる。本発明で用いる分散剤は、水酸基およ
びカルボキシル基を有する有機化合物であるか、その中
和塩であるか、そのラクトンであるか、ヒロドキシメチ
ルカルボニル基を有する有機化合物であるか、酸として
解離し得るエノール型水酸基を有する有機化合物である
か、その中和塩である。
【0036】上記各有機化合物は、炭素数が3〜20、
好ましくは4〜12であり、かつ、酸素原子と二重結合
した炭素原子以外の炭素原子の50%以上に水酸基が結
合しているものである。炭素数が2以下であると、本発
明の効果が実現しない。また、炭素数が3以上であって
も、酸素原子と二重結合した炭素原子以外の炭素原子へ
の水酸基の結合比率が50%未満であれば、やはり本発
明の効果は実現しない。なお、水酸基の結合比率は、上
記有機化合物について限定されるものであり、分散剤そ
のものについて限定されるものではない。例えば、分散
剤として、水酸基およびカルボキシル基を有する有機化
合物(ヒドロキシカルボン酸)のラクトンを用いると
き、水酸基の結合比率の限定は、ラクトンではなくヒド
ロキシカルボン酸自体に適用される。
【0037】上記有機化合物の基本骨格は、鎖式であっ
ても環式であってもよく、また、飽和であっても不飽和
結合を含んでいてもよい。
【0038】分散剤としては、具体的にはヒドロキシカ
ルボン酸またはその中和塩もしくはそのラクトンが好ま
しく、特に、グルコン酸(C=6;OH=5;COOH
=1)またはその中和塩もしくはそのラクトン、ラクト
ビオン酸(C=12;OH=8;COOH=1)、酒石
酸(C=4;OH=2;COOH=2)またはこれらの
中和塩、グルコヘプトン酸γ−ラクトン(C=7;OH
=5)が好ましい。そして、これらのうちでは、配向度
向上効果が高く、しかも安価であることから、グルコン
酸またはその中和塩もしくはそのラクトンが好ましい。
【0039】ヒドロキシメチルカルボニル基を有する有
機化合物としては、ソルボースが好ましい。
【0040】酸として解離し得るエノール型水酸基を有
する有機化合物としては、アスコルビン酸が好ましい。
【0041】なお、本発明では、クエン酸またはその中
和塩も分散剤として使用可能である。クエン酸は水酸基
およびカルボキシル基を有するが、酸素原子と二重結合
した炭素原子以外の炭素原子の50%以上に水酸基が結
合しているという条件は満足しない。しかし、配向度向
上効果は認められる。
【0042】上記した好ましい分散剤の一部について、
構造を以下に示す。
【0043】
【化1】
【0044】本発明で用いる分散剤は粉砕、スラリー調
整などの際に構造が変化する可能性がある。例えば遊離
のグルコン酸とその2種類のラクトン(γ-およびδ-)
は水溶液中では単独で存在せず、互いに他の2者に変化
するため混合状態で存在する。さらに、粉砕によるメカ
ノケミカル反応で、分散剤の構造が変化する可能性もあ
る。
【0045】さらに例えば加水分解反応などにより、本
発明で用いる分散剤と同一の有機化合物を生成するよう
な化合物を添加することによっても本発明の目的を達成
できる可能性もある。
【0046】磁場配向による配向度は、スラリーのpH
の影響を受ける。具体的には、pHが低すぎると配向度
は低下し、これにより焼結後の残留磁束密度が影響を受
ける。分散剤として水溶液中で酸としての性質を示す化
合物、例えばヒドロキシカルボン酸などを用いた場合に
は、スラリーのpHが低くなってしまう。したがって、
例えば、分散剤と共に塩基性化合物を添加するなどし
て、スラリーのpHを調整することが好ましい。上記塩
基性化合物としては、アンモニアや水酸化ナトリウムが
好ましい。アンモニアは、アンモニア水として添加すれ
ばよい。なお、ヒドロキシカルボン酸のナトリウム塩を
用いることにより、pH低下を防ぐこともできる。
【0047】フェライト磁石のように副成分としてSi
およびCaCO を添加する場合、分散剤として
ヒドロキシカルボン酸やそのラクトンを用いると、主と
して成形用スラリー調製の際にスラリーの上澄みと共に
SiO およびCaCOが流出してしまい、HcJが
低下するなど所望の性能が得られなくなる。また、上記
塩基性化合物を添加するなどしてpHを高くしたときに
は、SiO およびCaCO の流出量がより多くな
る。これに対し、ヒドロキシカルボン酸のカルシウム塩
を分散剤として用いれば、SiO およびCaCO
の流出が抑えられる。ただし、上記塩基性化合物を添加
したり、分散剤としてナトリウム塩を用いたりしたとき
に、SiO およびCaCOを目標組成に対し過剰
に添加すれば、磁石中のSiO 量およびCaO量の
不足を防ぐことができる。なお、アスコルビン酸を用い
た場合には、SiO およびCaCO の流出はほと
んど認められない。
【0048】上記理由により、スラリー上澄みのpH
は、好ましくは7以上、より好ましくは8〜11であ
る。
【0049】分散剤として用いる中和塩の種類は特に限
定されず、カルシウム塩やナトリウム塩等のいずれであ
ってもよいが、上記理由から、好ましくはカルシウム塩
を用いる。
【0050】なお、分散剤は2種以上を併用してもよ
い。
【0051】分散剤の添加量は、酸化物磁性体粒子であ
る仮焼体粒子に対し、好ましくは0.05〜3.0重量
%、より好ましくは0.1〜2.0重量%である。分散
剤が少なすぎると配向度の向上が不十分となる。一方、
分散剤が多すぎると、成形体や焼結体にクラックが発生
しやすくなる。
【0052】なお、分散剤が水溶液中でイオン化し得る
もの、例えば酸や金属塩などであるときには、分散剤の
添加量はイオン換算値とする。すなわち、水素イオンや
金属イオンを除く有機成分に換算して添加量を求める。
また、分散剤が水和物である場合には、結晶水を除外し
て添加量を求める。例えば、分散剤がグルコン酸カルシ
ウム一水和物である場合の添加量は、グルコン酸イオン
に換算して求める。
【0053】また、分散剤がラクトンからなるとき、あ
るいはラクトンを含むときには、ラクトンがすべて開環
してヒドロキシカルボン酸になるものとして、ヒドロキ
シカルボン酸イオン換算で添加量を求める。
【0054】分散剤の添加時期は特に限定されず、乾式
粗粉砕時に添加してもよく、湿式粉砕時の粉砕用スラリ
ー調製の際に添加してもよく、一部を乾式粗粉砕の際に
添加し、残部を湿式粉砕の際に添加してもよい。あるい
は、湿式粉砕後に撹拌などによって添加してもよい。い
ずれの場合でも、成形用スラリー中に分散剤が存在する
ことになるので、本発明の効果は実現する。ただし、粉
砕時に、特に乾式粗粉砕時に添加するほうが、配向度向
上効果は高くなる。乾式粗粉砕に用いる振動ミル等で
は、湿式粉砕に用いるボールミル等に比べて粒子に大き
なエネルギーが与えられ、また、粒子の温度が上昇する
ため、化学反応が進行しやすい状態になると考えられ
る。したがって、乾式粗粉砕時に分散剤を添加すれば、
粒子表面への分散剤の吸着量がより多くなり、この結
果、より高い配向度が得られるものと考えられる。実際
に、成形用スラリー中における分散剤の残留量(吸着量
にほぼ等しいと考えられる)を測定すると、分散剤を乾
式粗粉砕時に添加した場合のほうが、湿式粉砕時に添加
した場合よりも添加量に対する残留量の比率が高くな
る。なお、分散剤を複数回に分けて添加する場合には、
合計添加量が前記した好ましい範囲となるように各回の
添加量を設定すればよい。
【0055】成形工程後、成形体を大気中または窒素中
において100〜500℃の温度で熱処理して、添加し
た分散剤を十分に分解除去する。次いで焼結工程におい
て、成形体を例えば大気中で好ましくは1150〜12
50℃、より好ましくは1160〜1220℃の温度で
0.5〜3時間程度焼結して、異方性フェライト磁石を
得る。
【0056】なお、本発明による方法で作製した成形体
をクラッシャー等を用いて解砕し、ふるい等により平均
粒径が100〜700μm程度となるように分級して磁
場配向顆粒を得、これを乾式磁場成形した後、焼結する
ことにより焼結磁石を得てもよい。
【0057】以上では、異方性焼結フェライト磁石の製
造に本発明を適用する場合について説明したが、例えば
針状フェライト粒子などを用いた軟磁性フェライト焼結
体等の他の酸化物磁性体の製造に適用する場合でも、上
記説明に準じて分散剤を添加することにより、成形用ス
ラリー中の酸化物磁性体粒子の分散性が良好となり、そ
の結果、高配向度の酸化物磁性体が得られる。
【0058】本発明の方法により作成された焼結フェラ
イト磁石を使用することにより、一般に次に述べるよう
な効果が得られ、優れた応用製品を得ることができる。
すなわち、従来のフェライト製品と同一形状であれば、
磁石から発生する磁束密度を増やすことができるため、
モータであれば高トルク化等を実現でき、スピーカーや
ヘッドホーンであれば磁気回路の強化により、リニアリ
ティーのよい音質が得られるなど応用製品の高性能化に
寄与できる。また、従来と同じ機能でよいとすれば、磁
石の大きさ(厚み)を小さく(薄く)でき、小型軽量化
(薄型化)に寄与できる。
【0059】本発明の方法により作製された焼結フェラ
イト磁石は所定の形状に加工され、下記に示すような幅
広い用途に使用される。
【0060】例えば、フュエールポンプ用、パワーウイ
ンド用、ABS用、ファン用、ワイパ用、パワーステア
リング用、アクティブサスペンション用、スタータ用、
ドアロック用、電動ミラー用等の自動車用モータ;FD
Dスピンドル用、VTRキャプスタン用、VTR回転ヘ
ッド用、VTRリール用、VTRローディング用、VT
Rカメラキャプスタン用、VTRカメラ回転ヘッド用、
VTRカメラズーム用、VTRカメラフォーカス用、ラ
ジカセ等キャプスタン用、CD,LD,MDスピンドル
用、CD,LD,MDローディング用、CD,LD光ピ
ックアップ用等のOA、AV機器用モータ;エアコンコ
ンプレッサー用、冷蔵庫コンプレッサー用、電動工具駆
動用、扇風機用、電子レンジファン用、電子レンジプレ
ート回転用、ミキサ駆動用、ドライヤーファン用、シェ
ーバー駆動用、電動歯ブラシ用等の家電機器用モータ;
ロボット軸、関節駆動用、ロボット主駆動用、工作機器
テーブル駆動用、工作機器ベルト駆動用等のFA機器用
モータ;その他、オートバイ用発電器、スピーカ・ヘッ
ドホン用マグネット、マグネトロン管、MRI用磁場発
生装置、CD−ROM用クランパ、ディストリビュータ
用センサ、ABS用センサ、燃料・オイルレベルセン
サ、マグネットラッチ等に好適に使用される。
【0061】
【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説
明する。なお、本実施例で用いた分散剤のうち、グルコ
ン酸は市販の50%水溶液を用い、また、その他のもの
については市販の試薬をそのまま使用した。
【0062】実施例1 目標組成を Sr0.85La0.15Zn0.15Fe11.85
19 とし、出発原料としては以下のものを用いた。
【0063】 Fe粉末 15.00kg (不純物として、Mn,Cr,Si,Clを含む) SrCO粉末 2067.3g (不純物として、Ba,Caを含む) ZnO粉末 201.5g La粉末 399.6g また、添加物として、 SiO 34.5g、 CaCO 25.8g を用いた。
【0064】上記出発原料および添加物を湿式アトライ
ターで粉砕後、乾燥・整粒し、これを空気中において1
230℃で3時間焼成し、顆粒状の仮焼体を得た。
【0065】得られた仮焼体の磁気特性を試料振動式磁
力計(VSM)で測定した結果、飽和磁化σsは72em
u/g 、保磁力HcJは4.0kOe であった。
【0066】この仮焼体にSiO を0.4重量%、
CaCO を1.05重量%添加した後、110g/
バッチの振動ロッドミルにより20分間乾式粗粉砕し
た。このときに粉砕による歪みが導入され、仮焼体粒子
のHcJは1.7kOe に低下していた。
【0067】次いで、分散媒として水を、分散剤として
グルコン酸を用い、これらと上記仮焼体粒子とを混合し
て粉砕用スラリーを調製した。グルコン酸添加の際に
は、グルコン酸の中和当量の5倍に相当するアンモニア
水を加えて粉砕時のpHを調整した。粉砕用スラリー中
の固形分濃度は、34重量%とした。仮焼体粒子に対す
るグルコン酸の添加量を、表1に示す。なお、表1に示
すグルコン酸の添加量は、前述したようにグルコン酸イ
オン換算値であり、以下の実施例においてもイオン化し
得る分散剤においては同様である。
【0068】この粉砕用スラリーを用いて、ボールミル
中で湿式粉砕を40時間行った。湿式粉砕後の比表面積
は、8.5m/g(平均粒径0.5μm )であった。湿
式粉砕後のスラリーの上澄み液のpHを、表1に示す。
【0069】湿式粉砕後、粉砕用スラリーを遠心分離し
て、スラリー中の仮焼体粒子の濃度が78重量%となる
ように調整し、成形用スラリーとした。この成形用スラ
リーから水を除去しながら圧縮成形を行った。この成形
は、圧縮方向に約13kOe の磁場を印加しながら行っ
た。得られた成形体は、直径30mm、高さ18mmの円柱
状であった。
【0070】成形体では、磁気的配向度の値が成形体密
度にも影響されるため、成形体の表面に対しX線回折に
よる測定を行い、現れたピークの面指数と強度とから成
形体の結晶学的な配向度(X線配向度)を求めた。結果
を表1に示す。成形体のX線配向度は、焼結体の磁気的
配向度の値をかなりの程度支配する。なお、本明細書で
は、X線配向度としてΣI(00L)/ΣI(hkL)
を用いる。(00L)は、(004)や(006)等の
c面を総称する表示であり、ΣI(00L)は(00
L)面のすべてのピーク強度の合計である。また、(h
kL)は、検出されたすべてのピークを表し、ΣI(h
kL)はそれらの強度の合計である。したがってΣI
(00L)/ΣI(hkL)は、c面配向の程度を表
す。
【0071】次に、各成形体を空気中で1200℃また
は1220℃で1時間焼成した。なお、成形体を焼成す
る際に、グルコン酸を除去するためにあらかじめ空気中
において100〜360℃で十分に脱脂した。得られた
焼結体の残留磁束密度Br、保磁力HcJ、配向度Ir/
Is、角形比Hk/HcJおよび焼結密度を測定した。結
果を表2に示す。なお、Hkは磁気ヒステリシスループ
の第2象限において磁束密度が残留磁束密度の90%に
なるときの外部磁界強度である。Hkが低いと高エネル
ギー積が得られない。Hk/HcJは磁石性能の指標とな
るものであり、磁気ヒステリシスループの第2象限にお
ける角張りの度合いを表す。
【0072】実施例2 グルコン酸の添加時期を乾式粗粉砕時としたほかは実施
例1と同様にして、成形体および焼結体を得た。なお、
アンモニア水の添加時期は、実施例1と同様に湿式粉砕
時とした。この成形体および焼結体について、実施例1
と同様な測定を行った。結果を表1および表2に示す。
【0073】比較例1 グルコン酸を添加しなかったほかは実施例1および実施
例2と同様にして、成形体および焼結体を得た。この成
形体および焼結体について、実施例1と同様な測定を行
った。結果を表1および表2に示す。
【0074】
【表1】
【0075】表1から、グルコン酸を添加することによ
り成形体のX線配向度が向上することがわかり、また、
湿式粉砕時よりも乾式粗粉砕時にグルコン酸を添加した
場合のほうが配向度の向上率が高いことがわかる。比較
例1および実施例2の各成形体のX線回折チャートを、
図1に示す。
【0076】
【表2】
【0077】表2から、グルコン酸を添加することによ
り、特に乾式粗粉砕時に添加することにより、高い磁気
的配向度が得られ、より高いBrを達成できることがわ
かる。
【0078】なお、湿式粉砕後、スラリーの分散媒を除
去して乾燥させ、粉砕物中のグルコン酸量をTG−DT
Aにより測定したところ、グルコン酸を湿式粉砕時に添
加した実施例1では0.28重量%であったが、乾式粗
粉砕時に添加した実施例2では0.40重量%であり、
乾式粗粉砕時に添加した場合のほうがグルコン酸の吸着
率が高いことがわかった。
【0079】実施例3〜実施例10、比較例2〜比較例
乾式粗粉砕に12kg/バッチの振動ボールミルを用いて
55分間粉砕し、かつ、表3に示す分散剤を用いたほか
は実施例1と同様にして、成形体を得た。ただし、実施
例5(グルコン酸カルシウム一水和物)および実施例1
0(L(−)−ソルボース)では、湿式粉砕時のアンモ
ニア水添加を行わなかった。これらの成形体について実
施例1と同様な測定を行った。結果を表3に示す。
【0080】次に、これらの成形体を、実施例1と同様
にして焼成し、得られた焼結体について実施例1と同様
な測定を行った。結果を表4に示す。
【0081】
【表3】
【0082】表3から、これらの分散剤も配向度向上に
十分な効果を示すことがわかる。
【0083】
【表4】
【0084】表4から、上記分散剤を用いた場合でも、
磁気特性および配向度の良好な焼結体が得られることが
わかる。また、実施例4(振動ボールミル使用)と前記
実施例1(振動ロッドミル使用)との比較から、乾式粉
砕条件の違いによって焼結体の磁気特性が影響を受ける
ことがわかる。
【0085】実施例5で使用した成形用スラリーを10
00℃で1時間熱処理したものについて、SiO
よびCaOの各含有量を測定した。また、比較のため
に、分散剤を添加しなかった比較例2で使用した成形用
スラリーと、アンモニア水添加を行った実施例3で使用
した成形用スラリーとについても、同様な測定を行っ
た。結果を表5に示す。また、各例における湿式粉砕後
のスラリーの上澄みのpHを表5に示す。
【0086】
【表5】
【0087】表5から、グルコン酸に加えアンモニア水
を添加した実施例3では、SiOおよびCaCO
が流出しているが、グルコン酸のカルシウム塩を用いた
実施例5では、これらの流出がほぼ完全に抑制されてい
ることがわかる。
【0088】実施例11 グルコン酸カルシウム一水和物の添加量を表6および表
7に示すものとしたほかは実施例2と同様にして、成形
体および焼結体を得た。ただし、アンモニア水添加は行
わなかった。これらについて実施例1と同様な測定を行
った。結果を表6および表7に示す。
【0089】
【表6】
【0090】
【表7】
【0091】表6および表7から、分散剤の添加量を広
い範囲で変更した場合でも、高配向の成形体が得られ、
その結果として高特性の磁石が得られることがわかる。
なお、グルコン酸カルシウム一水和物の添加量を3.5
重量%としたところ、焼結体にクラックが発生した。
【0092】実施例12、実施例13、比較例4 表8に示す分散剤を用い、湿式粉砕時間を20時間とし
たほかは実施例3と同様にして、成形体を得た。これら
について、実施例1と同様な測定を行った。結果を表8
に示す。
【0093】
【表8】
【0094】表8に示されるように、クエン酸を用いた
場合でも配向度向上効果が認められる。
【0095】比較例5〜比較例9 前述したコンクリート工業で利用されている市販の分散
剤を用い、上記実施例3と同様にして成形体を作製し、
X線配向度を調べた。結果を表9に示す。
【0096】
【表9】
【0097】表9から、コンクリート工業において利用
されている分散剤は、磁性体粒子の配向度向上にはほと
んど無効であることがわかる。ポリカルボン酸系分散剤
を使用したものではX線配向度がやや向上しているが、
これを含む各成形体を焼成したところ、得られた焼結体
はすべて密度が4.9g/cm 以下と低いものであっ
た。
【0098】実施例14 目標組成を Sr0.8La0.2Co0.2Fe11.819 とし、出発原料としては以下のものを用いた。
【0099】 Fe 粉末 1000.0g (不純物として、Mn,Cr,Si,Clを含む) SrCO 粉末 130.3g (不純物として、Ba,Caを含む) 酸化コバルト粉末 17.56g La 粉末 35.67g また、添加物として、 SiO 2.3g、 CaCO 1.72g を用いた。
【0100】上記出発原料および添加物を湿式アトライ
ターで粉砕後、乾燥・整粒し、これを空気中において1
250℃で3時間焼成し、顆粒状の仮焼体を得た。
【0101】得られた仮焼体の磁気特性を試料振動式磁
力計(VSM)で測定した結果、飽和磁化σsは68em
u/g 、保磁力HcJは4.6kOe であった。
【0102】この仮焼体にSiO を0.4重量%、
CaCO を1.25重量%、さらに分散剤としてグ
ルコン酸カルシウムを0.6重量%添加した後、110
g/バッチの振動ロッドミルにより20分間乾式粗粉砕
した。このときに粉砕による歪みが導入され、仮焼体粒
子のHcJは1.8kOe に低下していた。
【0103】次いで、分散媒として水を用い、これらと
上記仮焼体粒子とを混合して粉砕用スラリーを調製し
た。粉砕用スラリー中の固形分濃度は、34重量%とし
た。
【0104】この粉砕用スラリーを用いて、ボールミル
中で湿式粉砕を40時間行った。湿式粉砕後の比表面積
は、8.5m/g(平均粒径0.5μm )であった。湿
式粉砕後のスラリーの上澄み液のpHは、9〜10であ
った。
【0105】湿式粉砕後、粉砕用スラリーを遠心分離し
て、スラリー中の仮焼体粒子の濃度が78重量%となる
ように調整し、成形用スラリーとした。この成形用スラ
リーから水を除去しながら圧縮成形を行った。この成形
は、圧縮方向に約13kOe の磁場を印加しながら行っ
た。得られた成形体は、直径30mm、高さ18mmの円柱
状であった。このとき、X線回折による成形体の配向度
〔ΣI(00L)/ΣI(hkL)〕は、0.6であっ
た。
【0106】次に、各成形体を空気中で1180℃から
1240℃で各々1時間焼成した。なお、成形体を焼成
する際に、グルコン酸を除去するためにあらかじめ空気
中において100〜360℃で十分に脱脂した。得られ
た焼結体の残留磁束密度Br、保磁力HcJ、配向度Ir
/Is、角形比Hk/HcJおよび焼結密度を測定した。
結果を表10に示す。また、成分の分析結果を表11に
示す。
【0107】
【表10】
【0108】
【表11】
【0109】以上の実施例の結果から、本発明の効果が
明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】成形体の配向度を調べるためのX線回折チャー
トである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 皆地 良彦 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内 (72)発明者 飯田 和昌 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸化物磁性体粒子と水とを含む成形用ス
    ラリーを磁場中で湿式成形して成形体を得る成形工程を
    有する酸化物磁性体の製造方法において、 水酸基およびカルボキシル基を有する有機化合物または
    その中和塩もしくはそのラクトンであるか、ヒロドキシ
    メチルカルボニル基を有する有機化合物であるか、酸と
    して解離し得るエノール型水酸基を有する有機化合物ま
    たはその中和塩であって、 前記有機化合物が、炭素数3〜20であり、酸素原子と
    二重結合した炭素原子以外の炭素原子の50%以上に水
    酸基が結合している分散剤を添加した成形用スラリーを
    使用する酸化物磁性体の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記水酸基およびカルボキシル基を有す
    る有機化合物がグルコン酸である請求項1の酸化物磁性
    体の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記酸として解離し得るエノール型水酸
    基を有する有機化合物がアスコルビン酸である請求項1
    の酸化物磁性体の製造方法。
  4. 【請求項4】 酸化物磁性体粒子と水とを含む成形用ス
    ラリーを磁場中で湿式成形して成形体を得る成形工程を
    有する酸化物磁性体の製造方法において、 クエン酸またはその中和塩を分散剤として添加した成形
    用スラリーを使用する酸化物磁性体の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記成形用スラリー中に塩基性化合物が
    添加されている請求項1〜4のいずれかの酸化物磁性体
    の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記分散剤がカルシウム塩である請求項
    1〜4のいずれかの酸化物磁性体の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記成形工程の前に湿式粉砕工程を有す
    る請求項1〜6のいずれかの酸化物磁性体の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記分散剤の少なくとも一部が、前記湿
    式粉砕工程において添加されたものである請求項7の酸
    化物磁性体の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記湿式粉砕工程の前に乾式粗粉砕工程
    を有する請求項7または8の酸化物磁性体の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記分散剤の少なくとも一部が、前記
    乾式粗粉砕工程において添加されたものである請求項9
    の酸化物磁性体の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記分散剤の添加量(分散剤が水溶液
    中においてイオン化し得るものであるときは、イオン換
    算の添加量)が、前記酸化物磁性体粒子に対し0.05
    〜3.0重量%である請求項1〜10のいずれかの酸化
    物磁性体の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記酸化物磁性体粒子の平均粒径が1
    μm 以下である請求項1〜11のいずれかの酸化物磁性
    体の製造方法。
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