明 細 書
ジァゾメ タ ン誘導体の製造方法 技術分野
本発明は、 ジァゾメ タ ン誘導体の製造方法に関する 背景技術
一般式 ( 1 ) A r
C N
2 ( 1 )
A r
〔式中、 A r は置換基を有していてもよいァ リ ール基を示 す。 〕
で表わされる ジァゾメ タ ン誘導体は、 有機化合物のカルボ キシル基の保護試薬と して有用な化合物である。
従来、 一般式 ( 1 ) で表わされるジァゾメ タ ン誘導体は、 一般式 ( 2 )
A r
\
C N N H ( 2 ) A r
〔式中、 て は前記に同じ。 〕
で表わされる ヒ ドラ ゾン誘導体から、 例えば下記 ( A ) 〜
( C ) に示す方法により製造されている。
(A) 酸化水銀 (ジャ ーナル 'ォブ オーガニッ ク ケ ミ ス 卜 リ ィ ー (Journal of Organic Chemistry), 2 4, 5 6 0, 1 9 5 9 ) 、 酸化銀 (ジャ ーナル ォブ オーガ二 ッ ク ケ ミ ス ト リ イ 一 (Journal of Organic Chemistry) , 1 9, 7 1 8 , 1 9 5 4 ) 、 過酸化ニ ッ ケル (ジャ ーナル ォプ ケ ミ カル ソサイァティ 一 ケ ミ カル コ ミ ニュ ケーシ 3 ン (Journal of Chemical Society, Chemical Communication) , 2 0, 7 3 0 , 1 9 6 6 ) 、 二酸化マ ンガン (特公平 3— 1 3 2 2 2号公報) 等の金属酸化物を 使用する方法。
( B ) 過酢酸 (特公昭 5 9 — 3 4 7 0 1号公報) 、 m— ク ロ 口過安息香酸 (特公昭 5 9 — 3 4 7 0 1号公報、 イ ン ディ ア ン ジャーナル ォブ ケ ミ ス ト リ ィ ー(Indian Journal of Chemistry) , 2 0 B , 6 9 9, 1 9 8 1 ) 等 の有機過酸化物を使用する方法。
( C ) その他の酸化剤と して、 過酸化水素 (特公昭 5 9 — 3 4 7 0 1号公報ゃ特公昭 6 1 — 2 1 9 4 2号公報) 、 Ν置換ア ミ ンハライ ド (特開昭 5 9 — 1 7 0 1 4 6号公報) 等を使用する方法。
しかしながら、 上記 (Α) 〜 ( C) の方法には種々の欠 点か'める。
即ち、 (A ) の方法は、 金属酸化物の廃棄処理に伴う公 害上の問題や、 金属酸化物を再生再利用する場合でもその 活性を維持するために、 多く の注意を必要とする等の問題 を有している。 ( B ) の方法には、 安全性及び反応後に生 成する有機酸の除去等の処理上の欠点に加えて、 有機過酸 化物自体が高価であるという欠点がある。 また ( C ) の方 法には、 安全性及び酸化によつて必然的に水を生じ過酸化 水素の濃度が下がり反応速度が低下する といつた欠点、 ま たこれを防止するために過酸化水素を追加して濃度を維持 する場合は、 過酸化水素がかなり過剰に必要になるという 欠点等がある。 このよ うに (A ) 〜 ( C ) のいずれの方法 においても工業的見地からの配慮が必要であり、 工業的に 有利なものではない。
一方、 上記の方法で得られるジァゾメ タ ン誘導体を、 結 晶と して単離精製する方法も知られている (特開昭 6 0 — 1 1 4 5 0号公報) 。 しかるに、 該ジァゾメ タ ン誘導体は 一般に熱に対して不安定であるため、 溶液のまま保護試薬 と して使用されている。 この場合、 反応収率もさ るこ とな がら如何に高純度のジァゾメ タ ン誘導体を製造するか、 即 ち通常ジァゾメ タ ン誘導体製造時にアジン化合物等の副生 物の生成を如何に抑制するかが重要になる。
と こ ろで、 特公昭 5 9 — 3 4 7 0 1号公報やジャ ーナル
才ブ ケ ミ カノレ ソサイ ァティ ー (Journal of Chemical Society) , ノ、0—キ ン I (Perkin I), 2 0 3 0, 1 9 7 5 には、 ヒ ドラゾン誘導体を酸化するに当り、 有機過酸、 N — ク ロ ロ コハク酸イ ミ ド、 ク ロ ラ ミ ン丁、 過酸化水素等の 酸化剤を使用する場合、 塩基性条件下において相間移動触 媒及び無機沃素化合物の存在下で酸化する こ とが開示され ている。 その中で、 次亜塩素酸ナ ト リ ウム も酸化剤である 旨が示唆されている。
しかしながら、 特公昭 5 9 — 3 4 7 0 1号公報には次亜 塩素酸ナ ト リ ゥムを用いる具体的な実施例はな く、 該公報 において、 塩基は過酢酸等の有機過酸を使用 した場合に生 じる酢酸等の酸を中和するために用いられているに過ぎな い。
—方ジャーナル ォブ ケ ミ カル ソサイ 了ティ ー ( Jou rnal of Chemical Society) , ノ、。一キ ン I (Perkin I), 2 0 3 0 , 1 9 7 5には、 次亜塩素酸ナ ト リ ウムと沃素 I 。 を用いる方法が記載されているが、 2 0 3 2頁の表 4中、 収率が 1 3 %と低いので、 このよ う な収率では、 次亜塩素 酸ナ ト リ ゥムは酸化剤と しては不適である旨が該文献 2 0 3 2頁の右欄 1 6 - 1 8行に記載されている。
その後、 過酸化水素を酸化剤として用いる方法について、 特公昭 6 1 — 2 1 9 4 2号公報に、 アルカ リ金属炭酸塩存
在下において相間移動触媒及び無機沃素化合物の存在下、 反応系の過酸化水素濃度を 2 0 %以上に維持して酸化する 方法が開示されているが、 その収率は 9 0 %と未だ不充分 であり、 しかも高純度のジァゾメ タ ン誘導体は得られてい ない。 発明の開示
本発明者らは、 工業的なジァゾメ タ ン誘導体の合成とい う観点から、 高収率且つ高純度でジァゾメ タ ン誘導体を大 量に得る方法について、 鋭意検討を重ねた。 その過程で、 酸化剤と して、 工業用原料として最も安価で安全性が高く、 反応が容易で、 排水等の取り扱いも非常に容易である次亜 塩素酸ナ ト リ ゥム等の次亜塩素酸アル力 リ金属塩を使用す る こ とを着想した。
しかしながら、 本発明者の研究によれば、 酸化剤と して 次亜塩素酸アルカ リ金属塩を使用する場合、 上記従来技術 の教示に従い反応を行なっても、 反応収率及び/又は反応 選択性が低下する、 ァジ ン化合物等の副生成物が生成する 等の問題があり、 高収率且つ高純度のジァゾメ タ ン誘導体 を得るこ とができなかった。
と ころが、 本発明者らが更に研究を重ねた結果、 次亜塩 素酸アル力 リ金属塩、 塩基、 無機沃素化合物及び相間移動
触媒の 4つの要件のうち、 酸化剤水溶液である塩基と次亜 塩素酸アルカ リ金属塩との混合水溶液において、 塩基濃度 と次亜塩素酸アル力 リ金属塩濃度とが相互に反応収率及び 反応選択性に影響を与える こ と、 そ して、 塩基と次亜塩素 酸アル力 リ金属塩のある一定の濃度範囲を選択する場合に は、 反応収率及び反応選択性 (ジァゾメ タ ン誘導体純度) が共に著し く 向上することが見出された。 本発明は、 斯か る知見に基づき完成されたものである。
即ち、 本発明は、 上記一般式 ( 2 ) で表わされる ヒ ドラ ゾン誘導体を、
(a) 混合水溶液の全重量に対して、 苛性アルカ リを 4〜 1 4 w/w%の濃度で含み且つ次亜塩素酸アル力 リ金 属塩を 3〜 1 O w/w%の濃度で含む混合水溶液、
(b) 疎水性有機溶媒、
(c) 無機沃素化合物及び
(d) 相間移動触媒
を包含する二相系中で、 酸化するこ とを特徴とする一般式 ( 1 ) で表わされる ジァゾメ タ ン誘導体の製造方法を提供 する ものである。
本明細書において A rで示される置換基を有していても よいァ リ ール基のァリール基と しては、 例えばフヱニル基、 ナフチル基等が例示できる。
A r で示されるァ リ ール基に置換していて もよい置換基 と しては、 例えばハロゲン原子 (弗素原子、 塩素原子、 臭 素原子、 沃素原子等) 、 ニ ト ロ基、 シァノ基、 ァ リ ール基 (フ ユニル基、 ナフチル基等) 、 低級アルキル基、 特に炭 素数 1 〜 6 のアルキル基 (例えば、 メ チル基、 ェチル基、 プロ ピル基、 イ ソプロ ピル基、 ブチル基、 s e c 一ブチル 基、 t e r t 一ブチル基等) 、 低級アルコキシ基、 特に炭 素数 1 〜 6の低級アルコキシ基 (例えば、 メ トキシ基、 ェ トキシ基、 プロ ピルォキシ基等) 等が例示でき る。 A r で 示されるァ リ ール基は、 上記ハロゲン原子、 ニ ト ロ基、 シ ァノ基、 ァ リ ール基、 低級アルキル基、 低級アルコキシ基 等からなる群から選ばれる 1 〜 5個、 好ま し く は 1 〜 2個 の同一又は異なる種類の置換基で置換されていてもよい。
これら A rで示される置換ァ リ ール基のうちでも、 特に、 1 〜 2個のハロゲン原子で置換されている フ ヱニル基、 1 〜 2個のニ ト ロ基で置換されている フ ヱニル基、 1 〜 2個 のシァノ基で置換されている フ エ二ル基、 1〜 2個のァ リ ール基で置換されている フ エニル基、 1 〜 2個の低級アル キル基で置換されている フ エニル基、 1 〜 2個の低級アル コキシ基で置換されている フ ヱニル基等が好ま しい。
特に、 A r は非置換のフ ヱニル基であるのが好ま しい。 本発明の製造方法の原料である一般式 ( 2 ) の ヒ ドラゾ
ン誘導体は、 公知の化合物であるか、 又は公知の方法に従 い、 容易に製造する こ とができ る。
本発明で用いられる次亜塩素酸アルカ リ 金属塩は、 アル 力 リ金属水酸化物水溶液中に塩素を導入する こ とによ って 容易に製造され得る ものであるが、 特に、 次亜塩素酸ナ ト リ ゥムが好ま しい。 次亜塩素酸ナ ト リ ウムは、 一般には有 効塩素 ( C l 2 と して) 1 2〜 1 4 wZw%の濃度の次亜 塩素酸ナ ト リ ウム水溶液が工業用原料と して安価で容易に 入手可能であるので、 これを、 そのまま又は水で希釈して、 用いるのが望ま しい。
次亜塩素酸アルカ リ金属塩 (特に次亜塩素酸ナ ト リ ウム) の使用量は、 一般式 ( 2 ) で表わされる ヒ ドラ ゾン誘導体 1 モルに対して、 通常 1〜 5モルの範囲、 好ま し く は 1〜 2モルの範囲であるが、 9 6 %以上の反応収率と反応選択 性 (ジァゾメ タ ン誘導体純度) を得るためには、 苛性アル 力 リ と次亜塩素酸アル力 リ 金属塩との混合水溶液中の次亜 塩素酸アルカ リ金属塩濃度が、 該混合水溶液の全重量に対 して、 3〜 1 0 w/w%の範囲、 好ま し く は 4〜 8 w/w
%の範囲である こ とが重要である。
—方、 苛性アルカ リ と しては、 従来公知の苛性アル力 リ、 例えば、 水酸化リ チウム、 水酸化ナ ト リ ウム、 水酸化力 リ ゥム等のアルカ リ金属水酸化物等を広く 使用でき るが、 好
ま し く は水酸化ナ ト リ ゥムが経済性の点で優れている。 苛 性アル力 リ は、 一般に水溶液と して使用するのが操作性の 点で有利である。 また本発明においては、 この苛性アル力 リ水溶液を予め上記所定濃度範囲となるように、 次亜塩素 酸アルカ リ金属塩水溶液と混合しておき、 この混合液を使 用する こ とが望ま しい。
苛性アルカ リの使用量と しては、 一般式 ( 2 ) で表わさ れる ヒ ドラゾン誘導体 1 モルに対し、 通常 1 〜 1 0 モルの 範囲、 好ま し く は後処理の中和を考慮すると 5 モル以下、 特に 1 . 2 〜 5モル程度が望ま しいが、 9 6 %以上の反応 収率と反応選択性 (ジァゾメ タ ン誘導体純度) を得るため には、 苛性アル力 リ と次亜塩素酸アル力 リ金属塩との混合 水溶液中の苛性アル力 リ濃度が、 該混合水溶液の全重量に 対して、 4 〜 1 4 w Z w %の範囲、 好ま し く は 5 〜 : 1 2 w w %の範囲であることが重要である。
本発明の方法では、 疎水性有機溶媒と上記苛性アル力 リ 及び次亜塩素酸アル力 リ金属塩の混合水溶液との二相系、 即ち、 二相系有機溶媒一水混合物において、 反応を行なう こ とを必須とする。
用いられる疎水性有機溶媒と しては、 酸化反応に不活性 なものである限り従来公知のものを広く使用でき、 例えば、 塩素化炭化水素、 特に 1 〜 4個の塩素原子で置換されてい
る炭素数 1〜 4の塩素化炭化水素 (具体的にはジク ロ ロメ タ ン、 1, 2 — ジク ロ ロェタ ン、 ク ロ 口ホルム等) 、 脂肪 族エステル、 特にじ 丄 一 脂肪酸と ( 丄 一 c 4 アルコ ー ルとのエステル (具体的には酢酸ェチル、 酢酸ブチル等) 、 エーテル、 特にジ ((: 丄 ー C 4 アルキル) エーテル (具体 的にはジェチルエーテル、 ジイ ソプロ ピルエーテル等) 、 脂肪族炭化水素、 特に炭素数 5〜 8の直鎖若し く は分岐鎖 の又は脂環式の脂肪族炭化水素 (具体的には n—へキサン、 シク ロへキサン等) 、 芳香族炭化水素 (具体的にはべンゼ ン、 ト ルエン等) 等を例示でき る。 これらは 1種単独を使 用 してもよい し、 2種以上を混合して使用 してもよい。
これら疎水性有機溶媒の う ちでも、 原料の ヒ ドラ ゾン誘 導体及び目的化合物である ジァゾメ 夕 ン誘導体の溶解性、 安全性及び経済性の点において、 塩素化炭化水素系溶媒、 特にジク ロ ロ メ タ ンが好ま しい。
一般式 ( 2 ) で表わされる ヒ ドラ ゾン誘導体の疎水性有 機溶媒に対する濃度は、 特に制限はないが、 操作性、 特に 反応終了後の分液の容易さを考慮する と、 通常 1 0〜 1 5 O wZ v %程度、 好ま し く は 1 5〜 : L 0 0 wZ v %程度と するのがよい。 こ こで、 wZ v %とは、 下式
( w 1 / V 2 ) X 1 0 0
で表わされ、 こ こで、 V 丄 は、 使用 した疎水性有機溶媒の
量 (m l ) であり、 ェ は、 一般式 ( 2 ) で表わされる ヒ ドラゾン誘導体の量 ( g ) である。
本発明では、 上記のよう に二相系で反応を行なうが、 反 応系内の疎水性有機溶媒 (有機層) と、 苛性アル力 リ と次 亜塩素酸アルカ リ金属塩との混合水溶液 (水層) とが二相 系を形成している限り、 有機層の量と水層の量との割合は 広い範囲から適宜選択できる。 一般には、 疎水性有機溶媒 に対して、 上記混合水溶液を 1〜 5容量倍程度の量で使用 するのが好ま しい。
本発明において、 無機沃素化合物と しては、 従来公知の もの、 例えば、 沃素、 メ タ過沃素酸のアルカ リ金属塩 (具 体的にはメ タ過沃素酸ナ ト リ ウム、 メタ過沃素酸力 リ ウム) 、 沃化水素のアルカ リ金属塩 (具体的には沃化ナ ト リ ウム、 沃化カ リ ウム) 、 四級アンモニゥム塩沃化物 (具体的には 沃化ア ンモニゥム、 沃化テ トラメ チルア ンモニゥム、 沃化 テ ト ラェチルア ンモニゥム、 沃化テ ト ラ プチルア ンモニゥ ム) 等を広く 例示する こ とができる。 これらは 1種単独を 使用してもよいし、 2種以上を混合して使用してもよい。 これらのうちでも、 沃化水素のアルカ リ金属塩を用いるの が好ま しい。
本発明の反応は無機沃素化合物を共存させなく ても進行 するが、 一般に反応の進行が遅く 原料化合物が残存する傾
向になる。 こ のため無機沃素化合物の使用量は、 一般式
( 2 ) で表わされる ヒ ドラ ゾン誘導体 1 モルに対し、 通常 0 . 0 0 1〜 1 モルの範囲であり、 反応速度及び経済性の 観点からは 0 . 0 1〜 0 . 1 モルの範囲が好ま しい。 また これら無機沃素化合物は、 一般式 ( 2 ) で表わされる ヒ ド ラゾン誘導体の疎水性有機溶媒溶液側に添加するほうが好
J .でめ な 。
一方、 相間移動触媒と しても従来公知のものを広く 使用 でき、 例えば、 四級ア ンモニゥム塩、 具体的にはテ 卜 ラ メ チルア ンモニゥムク ロ リ ド、 テ ト ラ プチルア ンモニゥムク ロ リ ド、 ベンジルジメ チルォクチルアンモ二.ゥムク ロ リ ド、 ベンジル ト リ オク チルア ンモニゥムク ロ リ ド、 テ ト ラ プチ ルア ンモニゥムハイ ドロ ジェ ンサノレフ ェイ ト、 テ ト ラ プチ ルア ンモニゥム ヒ ドロキサイ ド等 ; ク ラ ウ ンエーテル類、 具体的には 1 5 — ク ラ ウ ン一 5、 1 8 —ク ラ ウ ン一 6等 ; 及びポ リ エーテル類、 具体的にはポ リエチレングリ コール、 ポ リ オキ シエチ レ ン ソ ル ビタ ン脂肪酸エステル (商品名 「ツイ 一ン(Tween) 8 0」 等) 等が例示できる。 これらは 1種単独を使用してもよいし、 2種以上を混合して使用し てもよい。 この中でも、 四級ア ンモニゥム塩が特に好ま し い。
斯かる相間移動触媒の使用量は、 一般式 ( 2 ) で表わさ
れる ヒ ドラ ゾン誘導体に対し、 通常 0 . 0 0 0 1 〜 5 0 w w %の範囲であるが、 高収率、 高純度でジァゾメ タ ン誘 導体を得るためには、 該ヒ ドラゾン誘導体に対し、 0 . 0 0 l 〜 3 w Z w %の範囲で使用するのが最も望ま しい。 即ち、 本発明の反応は相間移動触媒を共存させな く ても 進行するが、 相間移動触媒を用いない場合、 反応中及び反 応後にジァゾメ タ ン誘導体の分解が生じ、 力ルボニル化合 物等が多く副生し、 その結果ジァゾメ タ ン誘導体の収率及 び純度が著し く 低下するため、 相間移動触媒は不可欠であ る。 また相間移動触媒を上記使用量の範囲を越えて使用 し た場合にも、 反応収率及び純度が低下し、 満足のいく ジァ ゾメ タ ン誘導体を得るこ とはできないため、 極力その使用 量を少なく するほうが好ま しい。
本発明では、 これら相間移動触媒は疎水性有機溶媒側及 び苛性アル力 リ と次亜塩素酸アル力 リ金属塩の混合水溶液 側のどちらに含まれていてもよいし、 双方に含まれていて もよい。
相間移動触媒を苛性アル力 リ と次亜塩素酸アル力 リ金属 塩の混合水溶液側に添加する場合において、 これら相間移 動触媒は混合水溶液に対する溶解度が低く 、 その比重が上 記混合水溶液より も小さい場合には、 相間移動触媒が実質 的には飽和濃度以上には混合水溶液に溶けずに上相に分離
するため、 上記使用量の範囲を越えて相間移動触媒を使用 しても構わない。
本発明の反応は、 各種の方法によ り行なう こ とができる が、 一般には、 疎水性有機溶媒、 一般式 ( 2 ) のヒ ドラゾ ン誘導体、 無機沃素化合物及び相間移動触媒の混合液 (疎 水性有機溶媒層) に、 撹拌下、 苛性アルカ リ と次亜塩素酸 アルカ リ金属塩の混合水溶液を、 滴下等の方法により、 少 量ずつ添加するこ と によ り行なうのが好ま しい。 相間移動 触媒は、 上記混合水溶液に添加してもよい。
また、 本発明の反応は、 苛性アルカ リ と次亜塩素酸アル 力 リ金属塩の混合水溶液に、 撹拌下、 疎水性有機溶媒、 一 般式 ( 2 ) のヒ ドラゾン誘導体、 無機沃素化合物及び相間 移動触媒の混合液を、 滴下等の方法により、 少量ずつ添加 するこ とにより行なってもよい。 相間移動触媒は、 上記混 合水溶液に添加してもよい。
本発明の反応は、 上記滴下の際に起きるが、 発熱反応で あるため、 滴下に伴い反応系の温度が上昇するので、 反応 系の温度を一定の範囲に保つように調節しながら行なうの が好ま しい。
一般に、 本発明の反応は、 通常一 3 0〜 5 0 °Cで進行す るが、 5 0 °Cを越えるとジァゾメ タ ン誘導体の分解が生じ る傾向があるため、 より高純度のジァゾメ タ ン誘導体を得
るためには、 — 2 0〜 3 0 °Cの範囲で行なうのが好ま しい。 また、 本発明の反応は、 上記したように、 苛性アルカ リ と次亜塩素酸アル力 リ金属塩の水溶液の疎水性有機溶媒層 への滴下 (又はその逆の滴下) に伴って発熱するため、 反 応初期の温度をより低温に維持する方が有利である。 この ため、 疎水性有機溶媒層及び苛性アル力 リ と次亜塩素酸ァ ルカ リ金属塩の混合水溶液を、 反応前に予め冷却しておく こ とが好ま しい。
反応系内の圧力は、 大気圧で行なうのが通常好ま しいが、 減圧下であっても加圧下であってもよい。
苛性アル力 リ と次亜塩素酸アル力 リ金属塩の混合水溶液 の滴下速度又は疎水性有機溶媒層の滴下速度は、 反応温度 が上記範囲に維持される限り においては特に制限はない。 通常 0 . 1 〜 8時間の範囲内で滴下するのがよい。
滴下終了後も、 反応を十分完結させるために、 反応系を 上記反応温度において 5 〜 6 0分間程度撹拌しておく のが 好ま しい。
尚、 本発明の反応は二相系の不均一系の反応であるため 撹拌効率には特に注意する必要がある。 即ち、 疎水性有機 溶媒層と苛性アル力 リ と次亜塩素酸アル力 リ金属塩の混合 水溶液層が十分混合できない場合には、 反応効率 (収率) 及び反応選択性 (ジァゾメ タ ン誘導体純度) が低下するた
め、 二相が十分混合可能な撹拌方法及び撹拌速度を選択す る こ とが望ま しい。
かかる撹拌は、 従来からこの種の二相系の反応を行なう のに慣用されている従来公知の撹拌装置を用いて行えばよ い 0
上記の方法で得られた一般式 ( 1 ) のジァゾメ タ ン誘導 体を含む疎水性有機溶媒溶液は、 単に分液するのみで、 有 機化合物のカルボキシル基の保護試薬と して使用可能な純 度を有しており、 そのまま使用可能である。 また、 低温に て有機溶媒を一部蒸発することによってジァゾメ タ ン誘導 体を結晶と して取り出し、 使用する こ と もでき る。 実施例
以下に実施例を掲げ、 本発明を更に詳細に説明する。 尚、 ジァゾメ 夕 ン誘導体の分析は、 従来の U V測定法では副生 する不純物が把握できず、 ジァゾメ タ ン誘導体の収率及び 純度が実際より も大き く定量されるため、 液体ク ロマ トグ ラフィ 一 ( H P L C ) 法にて行なった。
また、 実施例及び比較例において、 「%」 は、 特に断ら ない限り 「重量%、 即ち w Z w %」 を意味する。
実施例 1
水 1 8 0 m 1 に 2 5 %水酸化ナ ト リ ゥム水溶液 2 6 7 m
1 ( N a 0 H 2. 1 3 モル) 及び有効塩素 1 3. 8 %の 次亜塩素酸ナ ト リ ウ ム水溶液 2 4 1 m l ( N a O C l 0. 5 7モル) を加え、 1 0. 4 wZw%の水酸化ナ ト リ ゥ ム及び 5. 2 w/w%の次亜塩素酸ナ ト リ ウ ムを含む混 合水溶液を調製した後、 氷冷下で撹拌冷却した。
一方、 ベンゾフ エ ノ ン ヒ ドラ ゾン ( B P H ) 8 9. 0 g ( 0. 4 5モル) を ジク ロ ロ メ タ ン 1 9 0 m l に溶解し、 これにべン ジルジメ チルォ ク チノレア ンモニゥ ム ク ロ リ ドの
5 0 %水溶液 (商品名 「Q B A — 8 1 1」 、 竹本油脂株式 会社製) 0. 1 0 m l (ベン ジルジメ チルォク チルア ンモ ニゥ ム ク ロ リ ド 0 . 0 5 g ) 及び沃化カ リ ウ ム水溶液 (K I 4. 5 g ( 0. 0 3 モル) 水 6 m l ) を加え、 氷 冷下で撹拌冷却した。
どち らの溶液も 5 °C以下になったのを確認した後、 ベン ゾフ エ ノ ン ヒ ドラ ゾンの ジク ロ 口 メ タ ン溶液に、 先に調製 した酸化剤水溶液を、 反応系の温度が 0 〜 2 0 °Cに保持さ れるよ うに、 2時間かけて徐々に滴下し、 滴下終了後、 更 に 1 0分間そのまま激し く 撹拌した。 3 0分間静置した後 に ジク 口 ロ メ 夕 ン層を分離した。
H P L C分析の結果、 このジ ク ロ ロ メ タ ン層には、 ジフ ェニルジァ ゾメ タ ン 8 6. 5 g (収率 9 8 % ) 、 ベン ゾフ ェ ノ ン 0. 8 g (収率 0. 9 %) 、 ベンゾフ エ ノ ンァ ジ ン
0. 6 g (収率 0. 8 %) が含まれていた。 この時のジフ ェニルジァゾメ タ ン量を U V測定法にて算出する と 9 0. 9 0 g (収率 1 0 3 %) となっ た。
実施例 2
水 9 0 m 1 に 2 5 %水酸化ナ ト リ ウム水溶液 1 3 4 m 1 (N a O H 1. 0 7モル) 及び有効塩素 1 3. 8 %の次 亜塩素酸ナ ト リ ウム水溶液 1 2 1 m 1 (N a O C l 0. 2 9モル) を加え、 1 0. 4 wZw%の水酸化ナ ト リ ウム 及び 5. 2 w/w%の次亜塩素酸ナ ト リ ウムを含む混合水 溶液を調製し、 これにべンジルジメ チルォクチルア ンモニ ゥムク ロ リ ドの 5 0 %水溶液 0. 1 0 m l (ベンジルジメ チルォク チルア ンモニゥムク ロ リ ド 0. 0 5 g ) を加え た後、 氷冷下で撹拌冷却 した。
—方、 ベンゾフ ヱ ノ ン ヒ ドラ ゾン 4 4 · 5 g ( 0. 2 3 モル) をジク ロ ロメ タ ン 9 5 m l に溶解し、 これに沃化カ リ ゥム水溶液 (沃化力 リ ウム 2. 2 5 g ( 0. 0 1 5モル) ノ水 3 m 1 ) を加え、 氷冷下で撹拌冷却した。
どち らの溶液も 5 °C以下にな っ たのを確認した後、 ベン ゾフ ヱ ノ ン ヒ ドラ ゾンのジク ロ ロ メ タ ン溶液に、 先に調製 した酸化剤水溶液を、 反応系の温度が 0〜 2 0 °Cに保持さ れるよ う に、 1時間かけて徐々 に滴下し、 滴下終了後更に 1 0分間撹拌した。 3 0分間静置した後にジク ロ ロメ タ ン
層を分離した。
H P L C分析の結果、 このジク ロ ロメ タ ン層には、 ジフ ヱニルジァゾメ タ ン 4 4 . 0 g (収率定量的) が含まれて いた。
実施例 3 〜 1 2
水、 2 5 %水酸化ナ ト リ ウム水溶液、 ベン ジルジメ チル ォク チルア ンモニゥムク ロ リ ドの 5 0 %水溶液及びジク ロ ロ メ タ ンの使用量を、 以下の表 1 に示すよ う に変更する以 外は、 実施例 2 と同 じ条件下反応を行なっ た。 結果を以下 の表 1 にま とめて示す。
MDC ; ジクロロメタン
QB A-811 ;ベンジルジメチルォクチルアンモニゥムクロリ ドの
50% (w/w) τ溶液
Na OH 25% (w/w)水酸化ナトリゥム水溶液
DDM ジフエニルジァゾメ夕ン
BP ベンゾフヱノン
BPA ベンゾフエノンァジン
実施例 1 3 〜 2 1
相間移動触媒をべンジルジメ チルォク チルア ンモニゥム ク ロ リ ドから表 2 に示した触媒に変更する以外は、 実施例 2 と同様の条件下反応を行なった。 結果を表 2 に示す。
表 2
ツイーン 80 :ポリオキンエチレン(20)ソルビタンモノォレエ一ト (I C
I社製:)
Peg-3000 :ポリエチレングリコール (平均分子量 =3000) QBA-444 :ベンジルトリー n—ブチルアンモニゥムクロリ ドの 50%
(W/W) 7j溶液 油脂㈱製)
n B u4 NOH 10% (w/w) 水溶液
n B u4 NC I 50% (w/w) 7]溶液
DDM ジフエニルジァゾメ夕ン
BP ベンゾフエノン
B PA ベンゾフヱノンァジン
比較例 1
実施例 1において沃化カ リ ゥム水溶液 (沃化力 リ ゥム 4. S g Z水 6 m l ) を用いない以外は、 実施例 1 と同様の条 件下反応を行な った後、 ジク ロ ロ メ タ ン層を実施例 1 と同 様に して分離した。
H P L C分析の結果、 このジク ロ ロメ タ ン層には、 ジフ ェニルジァゾメ タ ン 3 6. 6 g (収率 4 2 % ) 、 ベンゾフ ェ ノ ン 1. 3 g (収率 1. 6 %) 、 'ベンゾフ エ ノ ンァ ジ ン 0. 1 g (収率 0. 1 % ) 及び原料のベ ンゾフ ヱ ノ ン ヒ ド ラ ゾン 5 0. 4 g (収率 5 7 %) が含まれていた。
比較例 2
実施例 1 において 2 5 %水酸化ナ ト リ ゥム水溶液 2 6 7 m 1 の代わ り に水 2 6 7 m 1 を追加する以外は、 実施例 1 と同様の条件下反応を行な っ た後、 ジク ロ ロ メ タ ン層を実 施例 1 と同様に して分離した。
H P L C分析の結果、 このジク ロ ロ メ タ ン層には、 ジフ ェニルジァゾメ タ ン 1 3. 6 g (収率 1 5 % ) 、 ベンゾフ ェ ノ ン 8. l g (収率 9. 8 %) 、 ベ ンゾフ エ ノ ンァ ジ ン 2 2. 7 g (収率 2 7 %) が含まれていた。
比較例 3
実施例 1 においてベンジルジメ チルォク チルア ンモニゥ ムク ロ リ ドの 5 0 %水溶液を使用 しない以外は、 実施例 1
と同様の条件下反応を行なっ た後、 ジク ロ ロ メ タ ン層を実 施例 1 と同様に して分離した。
H P L C分析の結果、 この ジ ク ロ ロ メ タ ン層には、 ジフ ェニルジァ ゾメ タ ン 4 8. 7 g (収率 5 5 % ) 、 ベン ゾフ ェ ノ ン 1 6. 2 g (収率 1 9 %) 、 ベンゾフ エ ノ ンァ ジ ン 8. 2 g (収率 1 0 %) が含まれていた。
比較例 4
実施例 1 においてベン ジルジメ チリレオ ク チルア ンモニゥ ムク ロ リ ドの 5 0 %水溶液の使用量を 0. 1 0 m 1から 7.
5 0 m 1 に変更する以外は、 実施例 1 と同様の条件下反応 を行な った後、 ジク ロ ロメ タ ン層を実施例 1 と同様に して 分離した。
H P L C分析の結果このジク ロ ロ メ タ ン層には、 ジフ エ ニルジァゾメ タ ン 7 7. 2 g (収率 8 7 % ) 、 ベンゾフ ヱ ノ ン 4. 1 (収率 5. 0 %) 、 ベンゾフエ ノ ンァジン 4.
6 g (収率 5. 6 % ) が含まれていた。
比較例 5 ~ 8
表 3 に示す条件を採用する以外は実施例 2 と同 じ条件下 反応を行な っ た結果を表 3にま とめて示す。
表 3
NaOH (w/w%) 括弧内に示す濃度 (w/-w%) の水酸化 ナトリウム水溶液
DDM ジフエ二ルジァゾメ夕ン
BPH ベンゾフヱノンヒドラゾン
BP ベンゾフエノン
BPA ベンゾフエノンァジン